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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027009
(43)【公開日】2024-02-29
(54)【発明の名称】コンクリートの処理方法
(51)【国際特許分類】
   B28C 7/04 20060101AFI20240221BHJP
   B28C 7/16 20060101ALI20240221BHJP
   B28C 5/42 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
B28C7/04
B28C7/16
B28C5/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129683
(22)【出願日】2022-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】511123429
【氏名又は名称】テクニカ合同株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520328947
【氏名又は名称】株式会社中部シー・アイ・アイ
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 好太
(72)【発明者】
【氏名】藤田 洋克
(72)【発明者】
【氏名】市川 祐介
(72)【発明者】
【氏名】酒井 秋浩
【テーマコード(参考)】
4G056
【Fターム(参考)】
4G056AA06
4G056CB31
4G056CD48
4G056CD64
4G056DA09
(57)【要約】
【課題】作業者の勘や経験に頼らずに加水コンクリートを適切に処理し、無駄なく再利用することを可能にするコンクリートの処理技術を確立する。
【解決手段】未使用コンクリート(A重量部)の収容部から未使用コンクリート(a重量部)を採取するサンプリング工程と、洗浄水(b重量部)を所定範囲内で段階的に添加・混合して加水コンクリートを調製する加水工程と、高分子凝集剤を所定範囲内で段階的に添加・混合して複数の検体を調製し、各検体のスランプ試験を行う検査工程と、スランプ値が0であり、且つ表面に空隙が認められた検体における高分子凝集剤の添加量(c重量部)を確認したことを以って、造粒化されたと判定する判定工程と、a重量部、b重量部、及びc重量部に基づいて、洗浄水の投入量(B重量部)、及び高分子凝集剤の投入量(C重量部)を算出する算出工程と、を包含するコンクリートの処理方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
未使用コンクリートに洗浄水が添加された加水コンクリートを、高分子凝集剤を用いて処理するコンクリートの処理方法であって、
未使用コンクリート(A重量部)を収容する収容部から、サンプルとして少量の未使用コンクリート(a重量部)を採取するサンプリング工程と、
採取した未使用コンクリートに洗浄水(b重量部)を所定範囲内で段階的に添加・混合して加水コンクリートを調製する加水工程と、
前記加水コンクリートに高分子凝集剤(c重量部)を所定範囲内で段階的に添加・混合して複数の検体を調製し、各検体をスランプコーンに充填してスランプ試験を行う検査工程と、
前記検査工程において、スランプ試験後のスランプ値が0であり、且つ表面に空隙が認められた検体における前記高分子凝集剤の添加量(c重量部)を確認したことを以って、前記加水コンクリートが造粒化されたと判定する判定工程と、
前記a重量部、前記b重量部、及び前記c重量部に基づいて、前記未使用コンクリート(A重量部)を収容する前記収容部への洗浄水の投入量(B重量部)、及び高分子凝集剤の投入量(C重量部)を算出する算出工程と、
を包含するコンクリートの処理方法。
【請求項2】
前記加水工程において調製された前記加水コンクリートは、前記未使用コンクリートに対する加水率が10v/v%未満となり、且つセメント比が95%未満となるように設定されている請求項1に記載のコンクリートの処理方法。
【請求項3】
前記サンプリング工程において、サンプルとして採取される未使用コンクリートの採取量(a重量部)は、前記収容部に収容されている未使用コンクリートの収容量(A重量部)の0.02%以上である請求項1又は2に記載のコンクリートの処理方法。
【請求項4】
投入量が算出された洗浄水(B重量部)、及び高分子凝集剤(C重量部)を、未使用コンクリート(a重量部)の採取を行ってから24時間以内に前記収容部に投入する投入工程を実施する請求項1又は2に記載のコンクリートの処理方法。
【請求項5】
前記高分子凝集剤は、アニオン性高分子凝集剤を含む請求項1又は2に記載のコンクリートの処理方法。
【請求項6】
前記スランプ試験で使用する前記スランプコーンのサイズは、上端内径50mm×下端内径100mm×高さ150mm、又は上端内径100mm×下端内径200mm×高さ300mmである請求項1又は2に記載のコンクリートの処理方法。
【請求項7】
前記収容部は、アジテータ車に搭載されたドラム、生コンクリート用ミキサー、生コンクリート製造用ミキサー、生コンクリートバケット、又は生コンクリートホッパーである請求項1又は2に記載のコンクリートの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未使用コンクリートに洗浄水が添加された加水コンクリートを再利用するためのコンクリートの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設工事や土木工事等で使用される生コンクリート(JIS規格品)は、時間の経過とともに硬化するため、本来であれば使い切ることが望ましい。ところが、実際の工事現場では、生コンクリートの使用量に余裕を持たせて多めに発注されることから、使用されなかった余剰分の生コンクリートが発生し、これが産業廃棄物として廃棄されることになる。なお、未使用の生コンクリートには、「残コン」と称される工事現場で余ったコンクリートや、「戻りコン」と称される全く使用されずに製造業者や販売業者に戻されるコンクリート等が含まれる。
【0003】
このような廃棄される生コンクリートを有効に活用すべく、本出願人は、未使用の生コンクリートに高分子凝集剤を添加し、これを混合することによって得られるコンクリート造粒体を、舗装路や駐車場の路盤材として使用可能なクラッシャランとして再利用する技術を開発した(例えば、特許文献1及び2を参照)。
【0004】
特許文献1に記載の再生材の製造方法は、未使用の生コンクリートに特定の粒径を有する粉末状の高分子凝集剤を添加及び混合して、高分子凝集剤の凝集作用により生コンクリートを造粒化するものである。
【0005】
特許文献2に記載の再生材の製造方法は、未使用の生コンクリートに液体状の両性高分子凝集剤を添加及び混合して、高分子凝集剤の凝集作用により生コンクリートを造粒化するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第7103608号公報
【特許文献2】特開2022-39907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、未使用の生コンクリートを再利用すべく、コンクリート容器から生コンクリートを排出するにあたっては、コンクリート容器の洗浄を同時に行うことから、生コンクリートに洗浄水が混入することになる。この未使用の生コンクリートに洗浄水が添加されたものを、本明細書では「加水コンクリート」と称する。加水コンクリートは、もはやJIS規格を満たすものではなく、性状が一定していないため、一般に取り扱いが難しいとされている。そのため、加水コンクリートを再利用するためには、造粒性を向上させたり、流動性を抑制する等の改質が必要となる。
【0008】
特許文献1及び2においても、高分子凝集剤の添加により未使用コンクリートの改質(造粒化)が行われているが、洗浄水が混入した加水コンクリートの状態で高分子凝集剤を添加するとコンクリートが適切に造粒化しない場合があり、最適条件を見つけるのは容易ではない。加水コンクリートを処理するにあたっては、これまでは作業者の勘や経験に頼っていたのが現状である。そして、加水コンクリートを再利用するにあたり、加水コンクリートに対する高分子凝集剤の添加量を誤ると、処理したコンクリートが再生材としての使用に耐え得る強度を発現することができず、結局は廃棄せざるを得なくなることがあった。この場合、再利用できないコンクリート廃棄物が大量に発生し、環境性、経済性、労力等の点において大きな負担となっていた。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、作業者の勘や経験に頼らずに加水コンクリートを適切に処理し、無駄なく再利用することを可能にするコンクリートの処理技術を確立することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明にかかるコンクリートの処理方法の特徴構成は、
未使用コンクリートに洗浄水が添加された加水コンクリートを、高分子凝集剤を用いて処理するコンクリートの処理方法であって、
未使用コンクリート(A重量部)を収容する収容部から、サンプルとして少量の未使用コンクリート(a重量部)を採取するサンプリング工程と、
採取した未使用コンクリートに洗浄水(b重量部)を所定範囲内で段階的に添加・混合して加水コンクリートを調製する加水工程と、
前記加水コンクリートに高分子凝集剤(c重量部)を所定範囲内で段階的に添加・混合して複数の検体を調製し、各検体をスランプコーンに充填してスランプ試験を行う検査工程と、
前記検査工程において、スランプ試験後のスランプ値が0であり、且つ表面に空隙が認められた検体における前記高分子凝集剤の添加量(c重量部)を確認したことを以って、前記加水コンクリートが造粒化されたと判定する判定工程と、
前記a重量部、前記b重量部、及び前記c重量部に基づいて、前記未使用コンクリート(A重量部)を収容する前記収容部への洗浄水の投入量(B重量部)、及び高分子凝集剤の投入量(C重量部)を算出する算出工程と、
を包含することにある。
【0011】
本構成のコンクリートの処理方法によれば、加水コンクリートを処理して再利用するにあたり、収容部に収容されている未使用コンクリート(A重量部)からサンプルとして少量の未使用コンクリート(a重量部)を採取し、このサンプルについて洗浄水(b重量部)及び高分子凝集剤(c重量部)を所定範囲内で段階的に添加・混合して条件の異なる複数の検体を調製し、各検体についてスランプ試験を行うことで、加水コンクリートが造粒化される条件を見い出すことができる。そして、加水コンクリートが造粒化されたと判定した条件(a重量部、b重量部、及びc重量部)に基づいて、未使用コンクリート(A重量部)を収容する収容部への洗浄水の投入量(B重量部)、及び高分子凝集剤の投入量(C重量部)を算出し、工事現場等で実際に戻りコンや残コンの処理を行うことができる。このように、本構成のコンクリート処理方法によれば、事前に行うスランプ試験によって、加水コンクリートが造粒化される条件を把握することができるので、作業者の勘や経験に頼らずに加水コンクリートを適切に処理し、無駄なく再利用することが可能となる。
【0012】
本発明にかかるコンクリートの処理方法において、
前記加水工程において調製された前記加水コンクリートは、前記未使用コンクリートに対する加水率が10v/v%未満となり、且つセメント比が95%未満となるように設定されていることが好ましい。
【0013】
本構成のコンクリートの処理方法によれば、未使用コンクリートに洗浄水を添加・混合して加水コンクリートの調製を行うにあたり、未使用コンクリートに対する加水率、及びセメント比が適切に設定されているため、取り扱い易い加水コンクリートを得ることができる。また、このような取り扱い易い加水コンクリートは、造粒化のための高分子凝集剤の添加量の幅を広く設定することができる。
【0014】
本発明にかかるコンクリートの処理方法において、
前記サンプリング工程において、サンプルとして採取される未使用コンクリートの採取量(a重量部)は、前記収容部に収容されている未使用コンクリートの収容量(A重量部)の0.02%以上であることが好ましい。
【0015】
本構成のコンクリートの処理方法によれば、複数の条件でスランプ試験を行うための未使用コンクリートを必要十分量採取できるため、加水コンクリートが造粒化される条件をより細かく調べることができる。また、サンプルとして採取される未使用コンクリートの採取量が過剰にならないため、スランプ試験を終えて廃棄される廃棄物(試験に使用したコンクリート)の量を低減することができる。
【0016】
本発明にかかるコンクリートの処理方法において、
投入量が算出された洗浄水(B重量部)、及び高分子凝集剤(C重量部)を、未使用コンクリート(a重量部)の採取を行ってから24時間以内に前記収容部に投入する投入工程を実施することが好ましい。
【0017】
本構成のコンクリートの処理方法によれば、収容部に収容されている未使用コンクリートが硬化する前(サンプル採取から24時間以内)に当該収容部に洗浄水及び高分子凝集剤を添加・混合し、確実にコンクリートの処理を行うことができる。
【0018】
本発明にかかるコンクリートの処理方法において、
前記高分子凝集剤は、アニオン性高分子凝集剤を含むことが好ましい。
【0019】
本構成のコンクリートの処理方法によれば、高分子凝集剤としてアニオン性高分子凝集剤を使用することで、加水コンクリートの造粒化がより促進される。また、アニオン性高分子凝集剤は、魚毒性等の問題もないため、環境に与える影響がカチオン性高分子凝集剤と比べて少ないものとなる。
【0020】
本発明にかかるコンクリートの処理方法において、
前記スランプ試験で使用する前記スランプコーンのサイズは、上端内径50mm×下端内径100mm×高さ150mm、又は上端内径100mm×下端内径200mm×高さ300mmであることが好ましい。
【0021】
本構成のコンクリートの処理方法によれば、ミニスランプ試験、又はスランプ試験により検査を行うことができる。ミニスランプ試験は、加水コンクリートの水分含有量(加水率)が多く、検体が崩れやすい場合に有効である。また、少量の検体で加水コンクリートが造粒可能な条件を確認することができる。スランプ試験は、JISに準拠した信頼性の高い試験を行いたい場合に有効である。
【0022】
本発明にかかるコンクリートの処理方法において、
前記収容部は、アジテータ車に搭載されたドラム、生コンクリート用ミキサー、生コンクリート製造用ミキサー、生コンクリートバケット、又は生コンクリートホッパーであることが好ましい。
【0023】
本構成のコンクリートの処理方法によれば、殆どの生コンクリートを施工する工事現場、及び生コンクリートの製造現場において発生し得る余剰の未使用の生コンクリートを処理し、無駄なく再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明のコンクリートの処理方法を説明するフローチャートである。
図2図2は、ミニスランプ試験の結果の一例であり、(a)は「○」と判定した検体の一例であり、(b)は「×」と判定した検体の一例である。
図3図3は、粉末状アニオン性高分子凝集剤組成物を用いた加水コンクリートの造粒試験結果に基づいて作成した判定マップである。
図4図4は、液体状アニオン性高分子凝集剤組成物を用いた加水コンクリートの造粒試験結果に基づいて作成した判定マップである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のコンクリートの処理方法にかかる実施形態について説明する。ただし、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
【0026】
〔処理対象、及び使用薬剤〕
初めに、本発明のコンクリートの処理方法において、処理対象となる加水コンクリート、及びその処理に使用する薬剤等について説明する。
【0027】
<加水コンクリート>
本発明において処理対象となる加水コンクリートは、未使用の生コンクリートに洗浄水が添加されたものである。生コンクリートは、JIS A 5308に準拠したレディーミクスコンクリートに相当するものであり、セメント、水、細骨材、粗骨材、及び混和剤を混合して製造される。セメントとしては、ポルトランドセメント(JIS R 5210)、高炉セメント(JIS R 5211)、シリカセメント(JIS R 5212)、フライアッシュセメント(JIS R 5213)、エコセメント(JIS R 5214)等が挙げられる。細骨材としては、砂、砕砂等が挙げられる。粗骨材としては、砂利、砕石等が挙げられる。混和剤としては、AE剤、減水剤、硬化促進剤、流動化剤等が挙げられる。
【0028】
<洗浄水>
生コンクリートを収容する収容部から未使用の生コンクリートを排出するとき、収容部の洗浄が同時に行われるため、未使用の生コンクリートは洗浄水と混合された加水コンクリートとなる。この場合、洗浄水としては淡水であればよく、例えば、上水道水、工業用水、脱イオン水、地下水、井戸水、河川水、湖沼水等が使用可能であるが、入手容易性、及び調製した加水コンクリートの品質安定性の点から、上水道水、又は工業用水が好ましく使用される。
【0029】
<高分子凝集剤>
加水コンクリートには高分子凝集剤が添加される。ここで、高分子凝集剤は、それ単独(すなわち、高分子凝集剤が100%である形態)であってもよいし、他の成分を含む高分子凝集剤組成物(すなわち、高分子凝集剤が100%ではない形態)であっても構わない。以後、本明細書において「高分子凝集剤」というとき、特に断りがなければ、「高分子凝集剤」と「高分子凝集剤組成物」との両方の意味を含むものとする。高分子凝集剤の種類としては、アニオン性高分子凝集剤、カチオン性高分子凝集剤、両性高分子凝集剤、及びノニオン性高分子凝集剤の何れも使用可能であるが、後述する加水コンクリートの造粒性が優れている点や、環境に与える影響が少ないという点から、アニオン性高分子凝集剤が好ましく使用される。また、両性高分子凝集剤のうち、アニオン性基がカチオン性基より多いアニオンリッチ両性高分子凝集剤についても、アニオン性高分子凝集剤と同様に使用可能である。
【0030】
アニオン性高分子凝集剤としては、例えば、ポリカルボン酸塩又はポリカルボン酸塩とアクリルアミドとの共重合物、ポリスルホン酸塩又はポリスルホン酸塩とアクリルアミドとの共重合物、並びにこれらの誘導体が挙げられる。ポリカルボン酸塩を形成するためのポリカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、及びマレイン酸等が挙げられる。ポリスルホン酸塩を形成するためのポリスルホン酸としては、アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、及びスチレンスルホン酸等が挙げられる。
【0031】
カチオン系高分子凝集剤としては、例えば、アルキルアミノアクリレート塩重合体又はアルキルアミノアクリレート塩重合体とアクリルアミドとの共重合物、アルキルアミノメタクリレート塩重合体又はアルキルアミノメタクリレート塩重合体とアクリルアミドとの共重合物、並びにこれらの誘導体が挙げられる。アルキルアミノアクリレート塩重合体としては、アクリル酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、アクリロイル2-ヒドロキシプロピルリド等が挙げられる。アルキルアミノメタクリレート塩重合体としては、メタアクリル酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピルメタアクリルアミド、メタアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、メタアクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、メタアクリロイル2-ヒドロキシプロピルリド等が挙げられる。
【0032】
両性高分子凝集剤としては、アニオン性高分子凝集剤の構成単位であるアニオン性モノマーと、カチオン性高分子凝集剤の構成単位であるカチオン性モノマーと、ノニオン性モノマー(必要に応じて)とのランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体が挙げられるが、安定性の点からランダム共重合体又は交互共重合体が好ましい。アニオン性モノマーとカチオン性モノマーとの重合比は、アニオン性基が30~45mol%、好ましくは35~42mol%であり、カチオン性基が0.1~10.0mol%、好ましくは0.1~4.0mol%であり、残部がノニオン性基である。両性高分子凝集剤は、アニオン性高分子凝集剤が有するアニオン性基と、カチオン性高分子凝集剤が有するカチオン性基とが同一の高分子構造中に存在するが、アニオン性高分子凝集剤とカチオン性高分子凝集剤との混合物のように相分離することがないため、安定した凝集性(造粒性)を発揮することができる。
【0033】
高分子凝集剤の分子量は、重量平均分子量(Mw)として、1.0×10~2.5×10が好ましく、1.3×10~2.2×10がより好ましい。高分子凝集剤の分子量が上記の範囲にあれば、加水コンクリートの造粒性に優れるとともに、形成した造粒体の強度についても優れたものとなる。
【0034】
高分子凝集剤の粒径は、50メッシュパス(約0.3mm)以下であることが好ましい。高分子凝集剤の粒径が50メッシュパス以下であれば、加水コンクリートに添加したときの分散性が良好なものとなり、処理に要する時間を短縮することができる。また、加水コンクリートに含まれるセメントと高分子凝集剤との接触面積が大きくなり、加水コンクリートの造粒性の向上にも寄与し得る。なお、高分子凝集剤として、アニオン性高分子凝集剤を使用する場合、アニオン性高分子凝集剤(アニオン性高分子凝集剤組成物)は一般に顆粒状のものとして販売されていることから粒径が50メッシュパスより大きい場合があるが、そのような場合は、顆粒状のアニオン性高分子凝集剤をボールミル等で粉砕し、さらに必要に応じて篩分けすることで、粒径を50メッシュパス以下に調整すればよい。
【0035】
<その他の薬剤>
本発明のコンクリートの処理方法においては、高分子凝集剤の他に、必要に応じて、分散剤、pH調整剤等を使用することも可能である。分散剤は、加水コンクリートに高分子凝集剤を添加・混合するとき、高分子凝集剤が「ダマ」になることを防止するためのものである。分散剤としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、カオリン、クレー、ベントナイト、及びゼオライト等の無機系粉末材料が挙げられる。pH調整剤は、高分子凝集剤としてアニオン性高分子凝集剤又は両性高分子凝集剤を使用した場合、凝集性(造粒性)を最適化するためのものである。pH調整剤としては、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物、酸化物、及びリン酸塩等が挙げられる。
【0036】
〔コンクリートの処理方法〕
次に、本発明のコンクリートの処理方法について説明する。図1は、本発明のコンクリートの処理方法を説明するフローチャートである。本発明のコンクリートの処理方法は、未使用コンクリートに洗浄水が添加された加水コンクリートを、高分子凝集剤を用いて処理するものであり、サンプリング工程、加水工程、検査工程、判定工程、及び算出工程の各工程を実施するものである。また、必要に応じて、投入工程をさらに実施することができる。以下、図1のフローチャートを参照しながら、各工程について説明する。
【0037】
<ステップ1:サンプリング工程>
生コンクリートは、通常、収容部に収容されている。収容部を例示すると、アジテータ車に搭載されたドラム、生コンクリート用ミキサー、生コンクリート製造用ミキサー、生コンクリートバケット、及び生コンクリートホッパーが挙げられる。また、収容部は前掲した人工的な構造物には限定されず、例えば、地面を掘削して穴や溝を形成し、その穴や溝にアジテータ車等から生コンクリートを排出して溜める態様においては、地面に形成した穴や溝を収容部と見なすことができる。収容部に収容されている生コンクリートは、全てが使用されるとは限らず、一部が使用されない未使用コンクリートとして残留する。そこで、この未使用生コンクリートを処理するにあたり、未使用コンクリートを収容する収容部から、サンプルとして少量の未使用コンクリートを採取する(S1;サンプリング工程)。ここで、処理対象となる収容部に残留している未使用コンクリートの重量をA重量部とし、サンプルとして採取した少量の未使用コンクリートの重量をa重量部とする。未使用コンクリートの採取量(a重量部)は、後述するスランプ試験に用いるスランプコーンの容量(1L、6L)以上とすればよく、例えば、収容部に収容されている未使用コンクリートの収容量(A重量部)の0.02%以上とすることができる。スランプコーンの容量(1L、6L)にあわせると、未使用コンクリートの比重を2.27とすれば、未使用コンクリートの採取量(a重量部)は、2.27kg(1Lの場合)、又は13.62kg(6Lの場合)となる。なお、未使用コンクリートの採取量(a重量部)の上限について特に制限はないが、例えば、収容部に収容されている未使用コンクリートの収容量(A重量部)の5%以下とすることができる。
【0038】
<ステップ2:加水工程>
次に、サンプルとして採取した少量の未使用コンクリート(a重量部)に対して、洗浄水(b重量部)を所定範囲内で段階的に添加・混合して加水コンクリートを調製する(S2;加水工程)。これは、実際の収容部の洗浄作業では、作業員によって洗浄水の使用量にある程度のばらつきが出ることを考慮したものである。洗浄水の添加量(b重量部)は、例えば、0~115gの範囲内で、約13~15gずつ増加させた複数の点とすることができる。ちなみに、この加水工程で調製された加水コンクリートは、未使用コンクリートに対する加水率が10v/v%未満となり、且つセメント比(セメントに対する水の割合)が95質量%未満となるように設定されていることが好ましい。このような設定とすることで、取り扱い易い加水コンクリートを得ることができる。また、このような取り扱い易い加水コンクリートは、造粒化のための高分子凝集剤の添加量の幅を広く設定することができる。
【0039】
<ステップ3:検査工程>
次に、加水コンクリートに高分子凝集剤(c重量部)を所定範囲内で段階的に添加・混合して複数の検体を調製し、各検体をスランプコーンに充填してスランプ試験を行う(S3;検査工程)。スランプコーンへの検体の充填は、例えば、検体を3回に分けてスランプコーンの開口から投入し、各回毎に検体表面を突き棒で25回突き、最後に検体表面がスランプコーンの開口と面一になるように表面を均して検体が密に充填された状態にする。高分子凝集剤の添加量(c重量部)は、高分子凝集剤組成物を使用する場合、当該高分子凝集剤組成物中の高分子凝集剤の含有量に応じて、高分子凝集剤組成物の添加量を適宜調整すればよい。例えば、高分子凝集剤組成物の添加量(c重量部)は、0.0~2.0gの範囲内で、0.1gずつ増加させた複数の点とすることができる。スランプ試験は、一般に、JIS A 1101:2020に準拠した「コンクリートのスランプ試験方法」において使用されるスランプ試験機(上端内径100mm×下端内径200mm×高さ300mm)を用いて行われるが、このスランプ試験機よりも小型のミニスランプ試験機(上端内径50mm×下端内径100mm×高さ150mm)を用いて行ってもよい。ミニスランプ試験機による検査は、加水コンクリートの水分含有量(加水率)が多く、検体が崩れやすい場合に有効である。また、少量の検体で加水コンクリートが造粒可能な条件を確認することができる。後述の実施例においても、ミニスランプ試験機によるスランプ試験を実施した。
【0040】
<ステップ4:判定工程>
次に、各検体について、スランプ試験後のスランプ値が0であるか否かを判定する(S4-1)。ここで、「スランプ値が0である」とは、検体を充填したスランプコーンを平板に載置し、スランプコーンを上方に引き上げた後、円錐台形の検体の頂部が実質的に下がらないことを意味するが、スランプコーンの引き上げ直後に円錐台形の検体の内部応力が外方に発散され、それに伴って頂部が一瞬低下したとしても、直ちに頂部の低下が停止したものについては、スランプ値は0であると判定する。先ず、一つ目の検体について、スランプ試験後のスランプ値が0であるか否かを判定し、0でないもの(S4-1;No)は、造粒化されていないと判定する(S4-3)。0であるもの(S4-1;Yes)は、さらに表面に空隙が認められるか否かを判定する(S4-2)。ここで、「表面に空隙が認められる」とは、検体の表面に細骨材と略同程度のサイズの孔が肉眼で複数認められることを意味する。表面に空隙が認められないもの(S4-2;No)は、造粒化されていないと判定する(S4-3)。表面に空隙が認められたもの(S4-2;Yes)については、当該検体における高分子凝集剤の添加量(c重量部)を確認したことを以って、造粒化されていると判定する(S4-4)。そして、上記の各工程(S4-1~S4-4)は、洗浄水及び高分子凝集剤の添加量を所定範囲内で段階的に変更した全ての検体について繰り返され(S4-5)、全ての検体の判定が完了すると、加水コンクリートが粒状化される条件の全体像を把握することができる(S4;判定工程)。このとき、例えば、列方向(横)に洗浄水の添加量(加水量)をとり、行方向(縦)に高分子凝集剤の添加量をとって判定マップを作成し、この判定マップに全ての検体の判定結果を記入してマッピングすれば、加水コンクリートが粒状化される条件の全体像の把握が容易なものとなる。
【0041】
<ステップ5:算出工程>
次に、採取した未使用コンクリートの重量(a重量部)、添加した洗浄水の重量(b重量部)、及び造粒化したと判断した検体の高分子凝集剤の添加量(c重量部)に基づいて、未使用コンクリートを収容する収容部への洗浄水の投入量(B重量部)、及び高分子凝集剤の投入量(C重量部)を算出する(S5;算出工程)。ここで、B重量部、及びC重量部は、以下の計算式によって求められる。
B = b × A/a
C = c × A/a
この算出工程は、上記判定工程で判定した検体のうち、造粒化されていると判定された全ての検体について行うことが望ましいが、判定マップにおいて、少なくとも造粒化されていないと判定された検体に隣接する造粒化された検体のみについて算出工程を行えばよい。
【0042】
<ステップ6:投入工程>
上記算出工程により算出された洗浄水(B重量部)、及び高分子凝集剤(C重量部)を、必要に応じて、未使用コンクリートが収容されている収容部に投入する(S6;投入工程)。ここで、投入工程は、未使用コンクリート(a重量部)の採取を行ってから24時間以内に行われることが好ましい。この場合、収容部に収容されている未使用コンクリートが硬化する前(サンプル採取から24時間以内)に、確実にコンクリートの処理を行うことができる。
【実施例0043】
実施例として、本発明のコンクリートの処理方法に基づいて行った加水コンクリートの造粒試験について説明する。この造粒試験で使用した材料及び試験機器、並びに試験方法を以下に示す。
【0044】
<材料>
(1)未使用コンクリート(比重:2.27)
・ポルトランドセメント(JIS R 5210) 293kg/m
・水 177kg/m
・細骨材(山砂) 530kg/m
・細骨材(硬質砂岩砕砂) 363kg/m
・粗骨材(硬質砂岩砕石2013) 541kg/m
・粗骨材(硬質砂岩砕石1305) 360kg/m
・混和剤(AE減水剤) 4.102kg/m
(2)洗浄水
・上水道水
(3)高分子凝集剤
・粉末状アニオン性高分子凝集剤組成物(テクニカ合同株式会社製の再生処理剤「コンバラス(登録商標)、アニオン性高分子凝集剤28重量%含有品)
重量平均分子量(Mw)が1.6×10~2.2×10、アニオン性単量体が25~100モル%のアニオン性ポリアクリルアミド系高分子凝集剤(剤型:粉末状)
・液体状アニオン性高分子凝集剤組成物(テクニカ合同株式会社製の再生処理剤「コンバラス(登録商標)、アニオン性高分子凝集剤40重量%含有品)
重量平均分子量(Mw)が1.6×10~2.2×10、アニオン性単量体が25~100モル%のアニオン性ポリアクリルアミド系高分子凝集剤(剤型:液体状(エマルジョン))
【0045】
<試験機器>
・ミニスランプ試験機
メーカー:株式会社土木試験機製作所
スランプコーンのサイズ:上端内径50mm×下端内径100mm×高さ150mm
【0046】
<試験方法>
[1]アジテータ車のドラムを想定したコンクリート容器に、JIS A 5308に準拠したセメント比(セメントに対する水の割合)60%の未使用コンクリート(1m)を入れ、その重量(A)を求めた。ここで、未使用コンクリートの比重は2.27であるから、本実施例において、コンクリート容器に収容されている未使用コンクリートの重量(A)は、2270kgと計算された。
[2]コンクリート容器から、サンプルとして少量の未使用コンクリート(a)を採取した。本実施例では、ミニスランプ試験用として1L(1L×2.27=2.27kg)の未使用コンクリートを採取した。
[3]採取した未使用コンクリート(2.27kg)に対し、上水道水(b)を、以下の〔1〕~〔9〕に示す量:
〔1〕0g(0.0v/v%、60%)
〔2〕13g(1.3v/v%、65%)
〔3〕28g(2.8v/v%、70%)
〔4〕43g(4.3v/v%、75%)
〔5〕57g(5.7v/v%、80%)
〔6〕72g(7.2v/v%、85%)
〔7〕87g(8.7v/v%、90%)
〔8〕100g(10.0v/v%、95%)
〔9〕115g(11.5v/v%、100%)
添加し、約10分間攪拌しながら混合し、加水コンクリートを調製した。なお、添加量(g)の後のカッコ書きの記載は、加水率(v/v%)、セメント比(%)である。
[4]加水コンクリート〔1〕~〔9〕の夫々について、(A)粉末状アニオン性高分子凝集剤組成物(c)、又は(B)液体状アニオン性高分子凝集剤組成物(c)を、以下の〔a〕~〔u〕に示す量:
〔a〕0.0g(0.000g、0.000g)
〔b〕0.1g(0.028g、0.040g)
〔c〕0.2g(0.056g、0.080g)
〔d〕0.3g(0.084g、0.120g)
〔e〕0.4g(0.112g、0.160g)
〔f〕0.5g(0.140g、0.200g)
〔g〕0.6g(0.168g、0.240g)
〔h〕0.7g(0.196g、0.280g)
〔i〕0.8g(0.224g、0.320g)
〔j〕0.9g(0.252g、0.360g)
〔k〕1.0g(0.280g、0.400g)
〔l〕1.1g(0.308g、0.440g)
〔m〕1.2g(0.336g、0.480g)
〔n〕1.3g(0.364g、0.520g)
〔o〕1.4g(0.392g、0.560g)
〔p〕1.5g(0.420g、0.600g)
〔q〕1.6g(0.448g、0.640g)
〔r〕1.7g(0.476g、0.680g)
〔s〕1.8g(0.504g、0.720g)
〔t〕1.9g(0.532g、0.760g)
〔u〕2.0g(0.560g、0.800g)
添加し、約10分間攪拌しながら混合し、検体を調製した。なお、添加量(g)の後のカッコ書きの記載は、順に、(A)粉末状アニオン性高分子凝集剤組成物に含まれる正味のアニオン性高分子凝集剤の添加量(g)、(B)液体状アニオン性高分子凝集剤組成物に含まれる正味のアニオン性高分子凝集剤の添加量(g)である。各検体をミニスランプ試験機のスランプコーンに充填し、ミニスランプ試験を行った。
[5]ミニスランプ試験において、スランプ値が0であり、且つ表面に空隙が認められた検体を「〇」とした。これに対し、スランプ値が0でなかったり、0であったとしても表面に空隙が認められなかった検体「×」とした。ミニスランプ試験の結果の一例を図2に示す。図2(a)は「○」と判定した検体の一例であり、図2(b)は「×」と判定した検体の一例である。そして、全ての検体のミニスランプ試験の結果について、列方向(横)に加水量をとり、行方向(縦)にアニオン性高分子凝集剤組成物(アニオン性高分子凝集剤)の添加量をとってマッピングし、判定マップを作成した。粉末状アニオン性高分子凝集剤組成物を用いた加水コンクリートの造粒試験結果に基づいて作成した判定マップを図3に示し、液体状アニオン性高分子凝集剤組成物を用いた加水コンクリートの造粒試験結果に基づいて作成した判定マップを図4に示す。
【0047】
<投入量の算出>
図3及び図4の判定マップに示されるサンプルとして採取した未使用コンクリートの重量[a(kg)=2.27kg]、加水量[b(g)]、高分子凝集剤組成物(液体状アニオン性高分子凝集剤組成物、又は粉末状アニオン性高分子凝集剤組成物)の添加量[c(g)]に基づいて、未使用コンクリート[A(kg)=2270kg]を収容するコンクリート容器への上水道水の投入量[B(g)]、高分子凝集剤組成物(液体状アニオン性高分子凝集剤組成物、又は粉末状アニオン性高分子凝集剤組成物)の投入量[C(g)]を、以下の計算式によって求めた。
B(g) = b × 2270/2.27
C(g) = c × 2270/2.27
例えば、図3に示す判定マップにおいて、2eの欄(加水量(b)が13g、粉末状アニオン性高分子凝集剤組成物の添加量(c)が0.4g)は判定結果が「○」であるから、コンクリート容器への上水道水の投入量(B)、及び粉末状アニオン性高分子凝集剤組成物の投入量(C)は、以下のように算出される。
B(g) = 13 × 2270/2.27 = 13000g(13kg)
C(g) = 0.4 × 2270/2.27 = 400g(0.4kg)
その他の判定結果が「○」の欄についても同様に、コンクリート容器への上水道水の投入量(B)、及び粉末状アニオン性高分子凝集剤組成物の投入量(C)が算出される。なお、算出した全ての又は一部の投入量について、図3及び図4と同様に、列方向(横)に上水道水の投入量(B)をとり、行方向(縦)に高分子凝集剤組成物(高分子凝集剤)の投入量(C)をとり、これらをマッピングして投入量マップを予め作成しておけば、工事現場において、作業者は一目で、未使用コンクリート(A)に対する適正な上水道水の投入量(B)、及び高分子凝集剤組成物(高分子凝集剤)の投入量(C)を確認することができるため、作業効率や利便性が飛躍的に高まる。このように、本発明によれば、作業者の勘や経験に頼らずに加水コンクリートを適切に処理し、無駄なく再利用することが可能となる。
【0048】
<考察>
本実施例の加水コンクリートの造粒試験の結果より、加水コンクリートを造粒化するための条件として、以下の知見が得られた。
(1)未使用コンクリート(1m=2270kg)に対して、上水道水の添加量が0kgであれば、粉末状アニオン性高分子凝集剤組成物の添加量は400~1800g(アニオン性高分子凝集剤として112~504g)とし、液体状アニオン性高分子凝集剤組成物の添加量は400~1700g(アニオン性高分子凝集剤として160~680g)とする。
(2)未使用コンクリート(1m=2270kg)に対して、上水道水の添加量が13kgであれば、粉末状アニオン性高分子凝集剤組成物の添加量は400~1800g(アニオン性高分子凝集剤として112~504g)とし、液体状アニオン性高分子凝集剤組成物の添加量は400~1700g(アニオン性高分子凝集剤として160~680g)とする。
(3)未使用コンクリート(1m=2270kg)に対して、上水道水の添加量が28kgであれば、粉末状アニオン性高分子凝集剤組成物の添加量は400~1700g(アニオン性高分子凝集剤として112~476g)とし、液体状アニオン性高分子凝集剤組成物の添加量は500~1500g(アニオン性高分子凝集剤として200~600g)とする。
(4)未使用コンクリート(1m=2270kg)に対して、上水道水の添加量が43kgであれば、粉末状アニオン性高分子凝集剤組成物の添加量は500~1600g(アニオン性高分子凝集剤として140~448g)とし、液体状アニオン性高分子凝集剤組成物の添加量は500~1400g(アニオン性高分子凝集剤として200~560g)とする。
(5)未使用コンクリート(1m=2270kg)に対して、上水道水の添加量が57kgであれば、粉末状アニオン性高分子凝集剤組成物の添加量は500~1500g(アニオン性高分子凝集剤として140~420g)とし、液体状アニオン性高分子凝集剤組成物の添加量は500~1300g(アニオン性高分子凝集剤として200~520g)とする。
(6)未使用コンクリート(1m=2270kg)に対して、上水道水の添加量が72kgであれば、粉末状アニオン性高分子凝集剤組成物の添加量は500~1200g(アニオン性高分子凝集剤として140~336g)とし、液体状アニオン性高分子凝集剤組成物の添加量は800~1000g(アニオン性高分子凝集剤として320~400g)とする。
(7)未使用コンクリート(1m=2270kg)に対して、上水道水の添加量が87kgであれば、粉末状アニオン性高分子凝集剤組成物の添加量は800~1200g(アニオン性高分子凝集剤として224~336g)とし、液体状アニオン性高分子凝集剤組成物の添加量は800~1000g(アニオン性高分子凝集剤として320~400g)とする。
(8)上記以外の条件では、加水コンクリートは造粒化しないため、適切に処理することは困難である。
(9)図3及び図4の判定マップより、加水工程においては、未使用コンクリートに対する加水率が10v/v%未満となり、且つセメント比が95%未満となるように設定することが必要となる。
(10)因みに、上記のミニスランプ試験に代えて、スランプコーン(上端内径100mm×下端内径200mm×高さ300mm)を用いたスランプ試験を行った場合においても、図3及び図4に準じた判定マップを作成することができ、当該判定マップから未使用コンクリート(A)に対する適正な上水道水の投入量(B)、及び高分子凝集剤組成物(高分子凝集剤)の投入量(C)を算出できることを確認している(データの提示は省略)。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のコンクリートの処理方法は、土木工事、建設工事、鉄道工事、地下工事、トンネル掘削工事等により発生した未使用コンクリート(残コン、戻りコン)を再利用するために利用することができる。
図1
図2
図3
図4