(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027010
(43)【公開日】2024-02-29
(54)【発明の名称】脱気ブロック、射出ユニット及び射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/17 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
B29C45/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129684
(22)【出願日】2022-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】FCLコンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】大口 健
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM36
4F206JA07
4F206JE12
4F206JF06
4F206JF12
4F206JL02
4F206JM01
4F206JQ03
(57)【要約】
【課題】銀条の発生を抑制できるとともに、メンテナンス性にも優れた脱気ブロック、射出ユニット及び射出成形機を提供する。
【解決手段】ホッパー12とシリンダー14との間に着脱可能に設けられる脱気ブロック26は、ホッパー12の出口ポート22と、シリンダー14の入口ポート24とを連通する貫通孔28と、貫通孔28と脱気ブロック26の外面とを流体的に連通する脱気孔32と、貫通孔28に挿通され、脱気ブロック26のシリンダー側端部から突出する胴部40を有するインナースリーブ30と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホッパーとシリンダーとの間に着脱可能に設けられる脱気ブロックであって、
前記ホッパーの出口ポートと、前記シリンダーの入口ポートとを連通する貫通孔と、
前記貫通孔と、前記脱気ブロックの外面とを流体的に連通する脱気孔と、
前記貫通孔に挿通され、前記脱気ブロックのシリンダー側端部から突出する胴部を有するインナースリーブと、
を有する脱気ブロック。
【請求項2】
前記胴部は、先細形状を有する、請求項1に記載の脱気ブロック。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の脱気ブロックと、前記ホッパーと、前記シリンダーとを有する射出ユニット。
【請求項4】
請求項3に記載の射出ユニットと、前記シリンダーから供給される樹脂材料を型締めするように構成された型締めユニットと、を有する射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱気ブロック、射出ユニット及び射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、キートップ等の種々の樹脂部品を製造するための装置であり、樹脂材料を投入するホッパー及び樹脂材料を加熱・溶融するシリンダー等を含む射出ユニットと、溶融した樹脂材料を金型に注入して成形する型締めユニットとを有する。
【0003】
射出成形機に関する問題として、成形品の表面に銀条と称される銀色の痕が生じることがある。銀条が発生する理由としては、樹脂材料の乾燥が不十分であることや、樹脂材料の熱分解等によって生じたガスが金型内に流入すること等が挙げられる。
【0004】
銀条の発生を抑制する技術として、スクリューが挿嵌されたシリンダーや、ホッパーとスクリューとの間にガス抜き孔を設けた構成が知られている。また樹脂材料を間欠的に供給することで形成されたガス抜き用の空間から、発生したガスを排出するようにした構成も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3016781号公報
【特許文献2】実開平01-125608号公報
【特許文献3】特開2011-088331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガスに起因する銀条の発生を抑制するためには、ホッパーからスクリュー迄の樹脂材料の滞留時間を減らすことと、発生したガスを外部に排出することが有効である。一方で、樹脂の種類を頻繁に変更する必要がある場合等に、ホッパーからスクリューまでの樹脂材料が通る経路を容易に清掃できる構造が望まれる。
【0007】
そこで本発明は、銀条の発生を抑制できるとともに、メンテナンス性にも優れた脱気ブロック、射出ユニット及び射出成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、ホッパーとシリンダーとの間に着脱可能に設けられる脱気ブロックであって、前記ホッパーの出口ポートと、前記シリンダーの入口ポートとを連通する貫通孔と、前記貫通孔と、前記脱気ブロックの外面とを流体的に連通する脱気孔と、前記貫通孔に挿通され、前記脱気ブロックのシリンダー側端部から突出する胴部を有するインナースリーブと、を有する、脱気ブロックである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、脱気ブロック内にインナースリーブを配置した構成により、ホッパーからシリンダーまでの内部空間に滞留する樹脂材料の体積を減らして樹脂材料の滞留時間も減らすことができるので、ガスの発生量を低減できるとともに、発生したガスを外部に排出するための流路も確保できる。さらに、ホッパーとシリンダーとの間を着脱可能な構造としたことにより、清掃等のメンテナンスも容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る樹脂成形機の概略構成図である。
【
図2】第1実施例に係るホッパー周りの構造を示す斜視図である。
【
図4】第1実施例に係るインナースリーブの部品図である。
【
図5】第2実施例に係るホッパー周りの構造を示す断面図である。
【
図6】第2実施例に係るインナースリーブの部品図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施形態に係る射出成形機10の全体構成を示す概略図である。射出成形機10は、例えばペレット状の樹脂材料(図示せず)を貯蔵するホッパー12及びホッパー12から供給される樹脂材料を加熱・溶融する可塑化シリンダー14を含む射出ユニット16と、射出ユニット16から供給される溶融樹脂を金型に注入して成形するように構成された型締めユニット18と、射出ユニット16及び型締めユニット18を制御する制御装置20とを有する。型締めユニット18及び制御装置20については概ね従来のものと同様でよいので、詳細な説明は省略する。
【0012】
(第1実施例)
図2は、第1実施例に係る射出ユニット16の要部の概略構成図であり、
図3は、
図2の部分断面図である。樹脂材料を排出可能なホッパー12の出口ポート22と、樹脂材料を受容可能なシリンダー14の入口ポート24との間に、着脱可能な脱気ブロック26が配置される。脱気ブロック26は、出口ポート22と入口ポート24とを連通する貫通孔28を有し、貫通孔28内には、貫通孔28より断面積が小さいインナースリーブ30が配置される。
【0013】
インナースリーブ30は、ホッパー12内の樹脂材料が、好ましくはその自重で、インナースリーブ30を通ってシリンダー14内に落下できるように構成される。また樹脂材料の滞留時間をできるだけ短くするために、インナースリーブ30を
図3に示すような直線状の管とし、入口ポート24は出口ポート22の鉛直方向の真下に配置されることが好ましい。
【0014】
脱気ブロック26は、貫通孔28と脱気ブロック26の外面との間を流体的に連通する脱気孔32を有する。脱気孔32は、脱気管34等を介して図示しないガス吸引装置に接続される。ガス吸引装置は、射出成形機10の稼働中は連続運転することが好ましいが、適当なタイミングで間欠運転するようにしてもよい。このような構成により、シリンダー14内で発生したガスは、入口ポート24から、貫通孔28の内面とインナースリーブ30の外面との間の空間を通って、脱気孔32から外部に排出される。よって、シリンダー14から型締めユニット18側に流入するガスは排除又は著しく低減される。
【0015】
図4は、インナースリーブ30の一構成例を示す。インナースリーブ30は、出口ポート22又は後述するスライドレール36に取り付け可能なフランジ部38と、フランジ部38に接続された円筒状の胴部40とを有する。胴部40は、入口ポート24とスクリューが挿入される挿入穴44とを連通する樹脂の流路42内に少なくとも部分的に進入しており、換言すれば胴部40の先端は、脱気ブロック26の下端よりもシリンダー14側に突出している。
【0016】
流路42より小径の胴部40が、脱気ブロック26の下端から突出して流路42内に少なくとも部分的に進入することにより、インナースリーブ30がない場合と比較して、出口ポート22から挿入穴44(スクリューは図示せず)までの樹脂の滞留部分の体積を大きく低減でき、故に樹脂の滞留時間も低減される。これに伴い、樹脂の熱分解等に伴うガスの発生量も低減される。また、貫通孔28とインナースリーブとの間に、発生したガスを吸引するためのガス流路も確保される。胴部40の先端から挿入穴44までの距離d1は、目標とする樹脂の滞留時間等に基づいて適宜設定可能である。d1の好適な範囲は例えば15mm~20mmである。
【0017】
インナースリーブ30を有する脱気ブロック26を着脱可能に構成したので、ホッパー12及びシリンダー14の形状や大きさは変更せずに、樹脂流量等の種々の製造条件に対して、脱気ブロック26及びインナースリーブ30の変更だけで適切な樹脂の滞留時間が得られるようになる。また射出成形機10で使用する樹脂材料の種類を頻繁に変更する際の樹脂の混在等を防ぐため、ホッパー12からシリンダー14までの流路を清掃する必要があるが、脱気ブロック26を着脱式としたことで清掃も極めて容易となる。さらに、脱気ブロック26の長さを変更することで、シリンダー14に対するホッパー12の高さを任意に変えることができるので、射出ユニットと他機器との干渉等の回避も容易に行うことができる。脱気ブロック26及びインナースリーブ30は例えば金属であるが、その材料に特段の制約はない。
【0018】
任意に、出口ポート22と脱気ブロック26との間に、ホッパー12をスライド可能に支持するスライドレール36を設けてもよい。スライドレール36には、脱気ブロック26の貫通孔28に連通する穴以外に、少なくとも1つ(図示例では2つ)の穴37が形成されている。例えばホッパー12内の材料の種類を変更する場合、ホッパー12をスライドレール36に沿ってスライドさせて出口ポート22を穴37に連通させることにより、ホッパー12内の材料を穴37から排出させることができる等、効率的な作業が可能となる。
【0019】
(第2実施例)
図5は、第2実施例に係る射出ユニット16の要部の部分断面図である。ここでは、第1実施例と異なる構成要素についてのみ説明し、第1実施例と同様でよい構成要素については同じ参照符号を付して詳細な説明は省略する。
【0020】
第1実施例におけるインナースリーブ30は、断面形状が長手方向に沿って概ね一定の円筒形状であるが、第2実施例におけるインナースリーブ46は、先細のテーパ形状を有する。
【0021】
図6に例示するように、インナースリーブ46は、出口ポート22又はスライドレール36に取り付け可能なフランジ部48と、フランジ部48に接続された先細のテーパ形状の胴部50とを有する。胴部50は、入口ポート24と挿入穴44とを連通する流路42内に少なくとも部分的に進入しており、換言すれば胴部50の先端は、脱気ブロック26の下端よりもシリンダー14側に突出している。
【0022】
流路42より小径の胴部50が、脱気ブロック26の下端から突出して流路42内に少なくとも部分的に進入する。このため、インナースリーブ46がない場合と比較して、出口ポート22から挿入穴44までの樹脂の滞留時間が低減され、故に樹脂の熱分解等に伴うガスの発生量も低減される。なお胴部50の先端から挿入穴44までの距離d2は、第1実施例のd1と同様に、目標とする樹脂の滞留時間等に基づいて適宜設定可能である。d2の好適な範囲は例えば15mm~20mmである。
【0023】
第1実施例は、射出成形機10によって製造される部品が比較的大型であり、よってホッパー12からの樹脂材料の供給速度も比較的大きく、故にホッパー12とシリンダー14との間の樹脂の滞留部分の体積が大きくても滞留時間は然程大きくならない場合に適している。一方、第2実施例は、射出成形機によって製造される部品が比較的小型であり、樹脂の供給速度も比較的小さく、第1実施例よりもホッパー12とシリンダー14との間の樹脂の滞留部分の体積を小さくすべき場合に適している。第2実施例では、樹脂の供給速度が小さい場合でも、インナースリーブ46を先細としたことで、ホッパー12とシリンダー14との間の樹脂の滞留体積を大きく低減できるので、樹脂材料の滞留時間を減らしてガスの発生量を抑制することができる。さらに、インナースリーブが先細形状であることにより、貫通孔28が比較的小径であっても、流路42の内面又は貫通孔28の内面とインナースリーブ46の外面との間に、発生したガスが通るのに十分な流路が確保される。なお
図5には示していないが、脱気ブロック26には、第1実施例と同様に脱気孔32及び脱気管34を設け、図示しないガス吸引装置で貫通孔28内のガスを吸引して排出することができる。
【0024】
インナースリーブ46の形状は、出口ポート22や入口ポート24の形状に合わせて適宜変更可能である。例えば、フランジ部48に形成される開口部52は、出口ポート22の大きさ及び形状に概ね等しくすることが好ましく、図示例では楕円又は長円状である。また胴部50の先端形状は、入口ポート24の大きさ及び形状に概ね等しくすることが好ましく、図示例では楕円又は長円状の断面を有する。
【0025】
第1実施例及び第2実施例のように、脱気ブロックとインナースリーブとを組み合わせ、それらの形状や寸法を適切に決定することにより、比較的大型又は小型の部品の双方において、滞留時間の低減と十分なガス抜き流路の確保とが実現できる。
【符号の説明】
【0026】
10 射出成形機、12 ホッパー、14 シリンダー、16 射出ユニット、
18 型締めユニット、20 制御装置、22 出口ポート、 24 入口ポート、
26 脱気ブロック、28 貫通孔、30,46 インナースリーブ、32 脱気孔、
34 脱気管、36 スライドレール、38,48 フランジ部、40,50 胴部、
52 開口部