(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027016
(43)【公開日】2024-02-29
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/71 20110101AFI20240221BHJP
H01R 13/631 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
H01R12/71
H01R13/631
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129694
(22)【出願日】2022-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】橋口 徹
【テーマコード(参考)】
5E021
5E223
【Fターム(参考)】
5E021FA11
5E021FB05
5E021FC07
5E021HA05
5E021HA07
5E021HB05
5E021HB07
5E223AB20
5E223AB45
5E223AC21
5E223BA07
5E223BB01
5E223BB12
5E223CA17
5E223CB31
5E223CB38
5E223CD01
5E223DA05
5E223DB25
5E223EA03
5E223EC12
5E223EC33
5E223EC42
(57)【要約】
【課題】摺動によるコンタクトと電極の摩耗を抑制する。
【解決手段】電極を有するモジュール基板とメイン基板の電気的接続を行うコネクタは、メイン基板200に搭載されるハウジング80と、接触部92とメイン基板200に接続される接続部91を有し、ハウジング80に保持されたコンタクト90と、平板部61とメイン基板200を挟む一対の側板部62を有し、一対の側板部62にカム溝と突起の一方が形成されたフレーム60と、一対の対向辺部分にカム溝と突起の他方が形成され、突起がカム溝に挿入されてフレーム60に取り付けられ、ハウジング80との間に挿入空間101を構成するスライダ70とを備え、スライダ70は挿入空間101へのモジュール基板300の挿入方向と同じ方向にスライドすることにより、モジュール基板300を接触部92に押し付け、平板部61との間にメイン基板200とハウジング80とモジュール基板300を挟み込む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦横に配列された複数の電極を一方の面に有するモジュール基板と、メイン基板との電気的接続を行うコネクタであって、
前記メイン基板に搭載される扁平なハウジングと、
前記ハウジングのメイン基板搭載面と反対面から突出する接触部と、前記メイン基板の電極に接続される接続部とを有し、前記モジュール基板の電極に対応して前記ハウジングに配列保持された複数のコンタクトと、
前記メイン基板のハウジング搭載面と反対面に位置する平板部と、前記メイン基板の、前記ハウジングが搭載されている部分を挟むように前記平板部から立ち上げられた一対の側板部とを有し、前記一対の側板部にカム機構を構成するカム溝と突起の一方が形成されているフレームと、
板状をなし、一対の対向辺部分に前記カム機構を構成するカム溝と突起の他方が形成され、前記突起が前記カム溝に挿入されて前記フレームに取り付けられることにより、前記メイン基板に搭載された前記ハウジングとの間に前記モジュール基板の挿入空間を構成するスライダとを備え、
前記スライダは前記挿入空間への前記モジュール基板の挿入方向と同じ方向にスライドすることにより、前記カム機構によって前記挿入空間に挿入された前記モジュール基板を前記接触部に押し付ける方向に変位し、前記平板部との間に前記メイン基板と前記ハウジングと前記モジュール基板とを挟み込む構造とされていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタにおいて、
前記挿入空間に挿入される前記モジュール基板の前記一方の面の幅方向の両側縁部を支持可能とされて前記挿入空間への前記モジュール基板の挿入を案内するガイド部が前記スライダの前記一対の対向辺部分に設けられていることを特徴とするコネクタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコネクタにおいて、
すべての前記接触部は前記挿入方向に延伸していることを特徴とするコネクタ。
【請求項4】
請求項3に記載のコネクタにおいて、
前記コンタクトはU字状に曲げ返されたばね部を有し、前記ばね部の遊端側に前記接触部が位置することを特徴とするコネクタ。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のコネクタにおいて、
板状をなし、4つの角部に突出部を有するプレートをさらに備え、
前記プレートは前方に位置する2つの前記突出部が前記一対の側板部の前端に形成された切欠き上に位置し、後方に位置する2つの前記突出部が前記スライダの前記一対の対向辺部分の後端に後方に突出形成された支持部上に位置して前記一対の側板部間に収容され、
前記スライダは前記プレートを介して前記モジュール基板を前記接触部に押し付けることを特徴とするコネクタ。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のコネクタにおいて、
前記挿入空間に挿入された前記モジュール基板が突き当たるストッパが前記フレームの前記平板部に設けられていることを特徴とするコネクタ。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のコネクタにおいて、
前記モジュール基板は挿入方向前端に切欠きを有し、
前記切欠きに嵌まって前記モジュール基板を幅方向に位置決めする突部が前記ハウジングもしくは前記フレームに形成されていることを特徴とするコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は基板と基板との電気的接続を行うコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
図12~14はコネクタの従来例として特許文献1に記載されているカード用コネクタの構成及び動作を示したものであり、このカード用コネクタはカバーインシュレータ10とベースインシュレータ20とコンタクト30とイジェクト機構40とを備えている。
【0003】
コンタクト30は
図14に示すようにベースインシュレータ20の下面部21に固定される固定部30aと、ICカード50のランド51に接触可能な接点部30bと、接点部30bを上方へ付勢するばね部30cと、図示しないプリント基板に接続される端子部30dとで構成されている。
【0004】
カバーインシュレータ10はICカード50の上面50aを支持するカード支持面11と、ICカード50の両側面を支持する側面部12と、ICカード50の挿入方向先端部52が突き当たる突当て部13と、ICカード50の下面50bの両側縁を支持する支持部14と、ICカード50を突当て部13へガイドするガイド面15とを備えている。カード支持面11はコンタクト30の接点部30bの上方に位置し、ベースインシュレータ20の下面部21と対向している。側面部12にはそれぞれ円柱状の突起部16,17が設けられている。
【0005】
ベースインシュレータ20の上面部22には開口23が形成され、両側面部24にはカム溝25,26が形成されている。カム溝25はカード挿入方向Dの後側に、カム溝26はカード挿入方向Dの前側にそれぞれ位置している。カム溝25の長手方向はカード挿入方向Dと平行であり、カム溝25は突起部16を案内する。カム溝26の長手方向はカード挿入方向Dに対して傾斜し、カム溝26は突起部17を斜めに案内する。これにより、カバーインシュレータ10はコンタクト30の接点部30bに接近する第1の位置とコンタクト30の接点部30bから離れる第2の位置との間で移動可能となっている。
【0006】
このカード用コネクタではICカード50を挿入する前、カバーインシュレータ10の突起部16,17はベースインシュレータ20のカム溝25の後側端部25a及びカム溝26の後側端部26aにそれぞれ位置している。この状態でベースインシュレータ20のカード挿入口27にICカード50が挿入されると、ICカード50の下面50bの両側縁はカバーインシュレータ10の支持部14に支持され、ICカード50はカード挿入方向Dと平行な状態で突当て部13へと案内される。ICカード50の下面50bはコンタクト30の接点部30bより上方に位置しており、ICカード50はコンタクト30の接点部30bと接触していない(
図14A参照)。
【0007】
ICカード50が所定挿入量(カバーインシュレータ10の突当て部13に達するまでの挿入量)を越えて挿入されると、ICカード50の先端部52がカバーインシュレータ10の突当て部13に突き当たり、その後、カバーインシュレータ10の突起部17がカム溝26に沿って斜め下方へ案内され、カバーインシュレータ10のカード挿入方向先端側がベースインシュレータ20の下面部21に近付く。ICカード50の上面50aはカード支持面11によって下方へ押し付けられるのでICカード50のランド51はコンタクト30の接点部30bに接触する(
図13,14B参照)。その結果、ICカード50とプリント基板とが電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したカード用コネクタによれば、ICカード50が挿入されると、ICカード50の先端部52がカバーインシュレータ10の突当て部13に突き当たり、その後、カバーインシュレータ10はICカード50に押され、ベースインシュレータ20のカム溝25,26に突起部16,17が案内されて第2の位置から第1の位置に移動するものとなっており、ICカード50が摺動する距離はカバーインシュレータ10が第2の位置から第1の位置へ移動するまでの短い距離となっている。
【0010】
特許文献1ではICカード50の挿入に伴い、ICカード50がコンタクト30と摺動する距離をこのように短くすることにより、ICカード50の挿入、離脱時におけるICカード50の損傷、コンタクト30の接点部30bの摩耗を抑制するものとなっている。
【0011】
しかるに、この特許文献1に記載された構成ではICカード50の挿入に伴い、ICカード50とコンタクト30とが摺動する状態が存在する点で摩耗や損傷の抑制は未だ不十分と言え、改善の余地はあると言える。
【0012】
この発明の目的はこの点に鑑み、モジュール基板の挿入に伴うコンタクトの摩耗及びコンタクトと接触するモジュール基板の電極の摩耗を従来例よりもさらに抑制することができるようにしたコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明によれば、縦横に配列された複数の電極を一方の面に有するモジュール基板とメイン基板との電気的接続を行うコネクタは、メイン基板に搭載される扁平なハウジングと、ハウジングのメイン基板搭載面と反対面から突出する接触部とメイン基板の電極に接続される接続部とを有し、モジュール基板の電極に対応してハウジングに配列保持された複数のコンタクトと、メイン基板のハウジング搭載面と反対面に位置する平板部と、メイン基板の、ハウジングが搭載されている部分を挟むように平板部から立ち上げられた一対の側板部とを有し、一対の側板部にカム機構を構成するカム溝と突起の一方が形成されているフレームと、板状をなし、一対の対向辺部分にカム機構を構成するカム溝と突起の他方が形成され、突起がカム溝に挿入されてフレームに取り付けられることにより、メイン基板に搭載されたハウジングとの間にモジュール基板の挿入空間を構成するスライダとを備え、スライダは挿入空間へのモジュール基板の挿入方向と同じ方向にスライドすることにより、カム機構によって挿入空間に挿入されたモジュール基板を接触部に押し付ける方向に変位し、前記平板部との間にメイン基板とハウジングとモジュール基板とを挟み込む構造とされている。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、モジュール基板の挿入に伴うコンタクトの摩耗及びコンタクトと接触するモジュール基板の電極の摩耗を従来例よりも抑制することができ、よって高寿命なコネクタを得ることができる。
【0015】
さらに、接続すべきメイン基板及びモジュール基板とコンタクトを保持したハウジングとを、フレームとスライダとで挟み込む構造となっているため、メイン基板やモジュール基板の撓みを抑制することができ、その点でモジュール基板の電極とコンタクトとの良好な接触力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】Aはこの発明によるコネクタの実施例1がメイン基板に取り付けられた状態を示す正面図、Bはその側面図、Cはその前方から見た斜視図、Dはその後方から見た斜視図。
【
図2】メイン基板及びモジュール基板を併せて示した
図1に示したコネクタの分解斜視図。
【
図3】Aは
図1におけるスライダの前方から見た斜視図、Bは
図1におけるスライダを後方から見た斜視図。
【
図4】
図2におけるコンタクトを保持したハウジングの拡大斜視図。
【
図5】Aは
図1に示したコネクタにモジュール基板が挿入された状態を示す正面図、Bはその側面図、Cはその前方から見た斜視図、Dはその後方から見た斜視図。
【
図7】Aはこの発明によるコネクタの実施例2がメイン基板に取り付けられた状態を示す正面図、Bはその側面図、Cはその前方から見た斜視図、Dはその後方から見た斜視図。
【
図8】メイン基板及びモジュール基板を併せて示した
図7に示したコネクタの分解斜視図。
【
図9】Aは
図7におけるスライダの前方から見た斜視図、Bは
図7におけるスライダの後方から見た斜視図。
【
図10】Aは
図7に示したコネクタにモジュール基板が挿入された状態を示す正面図、Bはその側面図、Cはその前方から見た斜視図、Dはその後方から見た斜視図。
【
図14】Aは
図12に示したカード用コネクタのカード挿入完了前の状態を示す縦断面図、Bは
図12に示したカード用コネクタのカード挿入完了時の状態を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の実施形態を図面を参照して実施例により説明する。
【実施例0018】
図1はこの発明によるコネクタの実施例1の外観を示したものであり、
図1ではコネクタ100がメイン基板200に取り付けられた状態として示している。なお、メイン基板200はコネクタ100が取り付けられている部分のみを示し、他の部分の図示は省略している。
【0019】
コネクタ100はフレーム60とスライダ70とハウジング80と多数のコンタクト90によって構成されている。
図2は
図1に示した構成を各部に分解して示したものであり、コネクタ100によりメイン基板200と電気的に接続されるモジュール基板300も併せて示している。まず、各部の構成を説明する。
【0020】
フレーム60は金属板よりなり、方形状をなす平板部61と、平板部61の左右方向両端から立ち上げられた一対の側板部62とを有する。平板部61の前端部分の中央には上方に切り起こされて互いに対向する一対の突出片63が形成されており、さらに前端部分の左右にはねじ穴64がそれぞれ形成されている。
【0021】
一対の側板部62にはそれぞれカム溝65が2つ前後方向に配列されて形成されている。カム溝65は側板部62を貫通する穴として形成されており、平板部61の板面と平行に延伸し、上下方向にずれて位置する2つの長穴65a,65bが、平板部61の板面に対し傾斜した長穴65cによって互いに連結された形状を有する。カム溝65の前側をなす長穴65aは後側をなす長穴65bよりも平板部61寄りに位置している。なお、一対の側板部62の互いに対向する内側面には側板部62の上端から長穴65bに至る凹部66がそれぞれ形成されている。
【0022】
スライダ70は金属板よりなり、方形の板部71を有して板状をなす。板部71の左右方向両端に位置する一対の対向辺部分には互いに外向きに突出する突起72が各2つ形成されており、さらにガイド部73がそれぞれ形成されている。
【0023】
ガイド部73は
図3Bに示したように板部71の裏面71aと対向して前後方向に延伸された細長い支持片73aと、板部71から折り曲げ延長されて支持片73aに至る2つの延長片73bとよりなる。支持片73aの後端には板部71の裏面71aから遠ざかる方向に延長されて誘い込み片73cが形成されている。なお、板部71には裏面71a側に方形の島状に突出するように段部74が形成されており、前端の中央部には切欠き75が形成されている。
【0024】
ハウジング80は樹脂製とされ、扁平な形状をなす。ハウジング80には多数のコンタクト90が縦横に配列されて保持されている。なお、
図1,2及び
図2を拡大した
図4ではコンタクト90はハウジング80の左右方向両端部分に位置するもののみ示し、中間部分に位置するコンタクト90の図示は省略している。これらコンタクト90はモジュール基板300の一方の面に縦横に配列された多数の電極(
図2では隠れて見えない)と対応して配列されている。
【0025】
ハウジング80の前端中央には前方に突出する延長部81が形成され、延長部81上には突部82が上方に突出して形成されている。モジュール基板300の前端にはこの突部82が嵌まる切欠き301が形成されている。
【0026】
コネクタ100が取り付けられるメイン基板200にはコンタクト90が接続される電極201が多数配列されて形成されている。なお、メイン基板200においても電極201は左右方向両端部分に位置するもののみ示し、中間部分に位置する電極201の図示は省略している。メイン基板200の前端には切欠き202が2つ形成され、さらにこれら切欠き202の互いの外側に穴203がそれぞれ形成されている。
【0027】
次に、コネクタ100の組立て及びメイン基板200への取付けについて説明する。
【0028】
まず、コンタクト90を保持したハウジング80がメイン基板200に表面実装されて搭載される。コンタクト90とメイン基板200の電極201ははんだ付けされて接続される。
【0029】
次に、フレーム60の平板部61上にメイン基板200を位置決めして搭載し、2つのねじ110をメイン基板200の穴203及びフレーム60のねじ穴64に通してメイン基板200にフレーム60をねじ止め固定する。メイン基板200とフレーム60の位置決めはフレーム60の2つの突出片63がメイン基板200の2つの切欠き202に嵌まり込むことによって行われる。
【0030】
次に、スライダ70をフレーム60に取り付ける。取付けは、スライダ70の一対の対向辺部分に形成されている各2つの突起72をフレーム60の一対の側板部62に形成されているカム溝65に凹部66からそれぞれ挿入することによって行われる。
【0031】
以上により、コネクタ100の組立て及びメイン基板200への取付けが完了し、
図1に示した構成となる。
図1に示したように、フレーム60の平板部61はメイン基板200のハウジング80の搭載面と反対面に位置し、一対の側板部62はメイン基板200の、ハウジング80が搭載されている部分を挟むように位置する。
【0032】
図5は上述したコネクタ100にモジュール基板300が挿入されてモジュール基板300とメイン基板200が電気的に接続された状態を示したものであり、以下、このコネクタ100におけるモジュール基板300の挿入、接続の動作について説明する。
【0033】
図6Aはモジュール基板300挿入前の断面(
図1に示した状態の断面)を示したものであり、スライダ70はフレーム60のカム溝65に挿入されている突起72がカム溝65の後端側即ち長穴65bに位置してフレーム60から後方に大きく突出した状態となっている。スライダ70の板部71はハウジング80やメイン基板200と平行となっており、ハウジング80との間にモジュール基板300の挿入空間101が構成されている。
【0034】
ハウジング80に保持されているコンタクト90は一端がメイン基板200の電極201に接続される接続部91とされ、
図6Aでは電極201の図示は省略しているが接続部91は電極201にはんだ接続されている。コンタクト90の他端は挿入空間101に挿入されるモジュール基板300の電極と接触する接触部92とされ、ハウジング80の上面(メイン基板搭載面と反対面)から突出している。なお、コンタクト90はU字状に曲げ返されたばね部93を有し、ばね部93の遊端側が接触部92とされている。接触部92はモジュール基板300の挿入方向に延伸している。
【0035】
モジュール基板300はスライダ70の板部71とガイド部73との間に挿入される。モジュール基板300は電極が配列されている一方の面(下面)の幅方向(左右方向)の両側縁部がそれぞれガイド部73に支持され、挿入空間101への挿入が案内される。モジュール基板300はこのようにガイド部73に支持、案内されることによりコンタクト90と接触することなく、挿入される。
【0036】
挿入空間101に挿入されたモジュール基板300は前端がフレーム60の一対の突出片63に突き当たることで、それ以上の挿入が規制され、さらに挿入方向前端に形成されている切欠き301がハウジング80に設けられている突部82に嵌まることで左右方向(幅方向)に位置決めされる。
【0037】
モジュール基板300挿入後、スライダ70をモジュール基板300の挿入方向と同じ方向にスライドさせる。スライダ70の突起72はフレーム60のカム溝65を移動してカム溝65の前端側即ち長穴65aに至る。これによりスライダ70は挿入空間101に挿入されているモジュール基板300をコンタクト90の接触部92に押し付ける方向に変位し、モジュール基板300の電極とコンタクト90とが接触して電気的に接続される。
図6Bはこの状態を示したものである。なお、スライダ70の前端に形成されている切欠き75はハウジング80の突部82に対する逃げであってハウジング80の突部82とスライダ70が干渉することはない。
【0038】
図6Bに示したように、このコネクタ100ではスライダ70が上記のように変位することにより、メイン基板200とハウジング80とモジュール基板300がスライダ70とフレーム60の平板部62とによって挟み込まれる構造となっており、このように挟み込み構造を採用したことによりスライダ70の変位(押し付け)によって例えばメイン基板200が撓むといったことを抑制することができる。
【0039】
以上、この発明によるコネクタの実施例1について説明したが、上述したコネクタ100によれば下記の効果を得ることができる。
【0040】
(1)スライダ70には従来例と異なり、挿入されたモジュール基板300が突き当たる突当て部はなく、即ちモジュール基板300はスライダ70と一体にスライドするのではなく、モジュール基板300を所定位置まで挿入完了後、スライダ70をスライドさせてモジュール基板300をコンタクト90の接触部92に押し付けることができるものとなっている。よって、モジュール基板300とコンタクト90とは従来例と異なり、モジュール基板300の挿入に伴って摺動することはなく、その点でコンタクト90やモジュール基板300の電極の摩耗を従来例よりも抑制することができ、摩耗による接触抵抗の増大を抑制することができるため、その分、従来例よりもコネクタの高寿命化を図ることができる。
【0041】
(2)モジュール基板300の挿入、接続完了状態では上述したような挟み込み構造によりメイン基板200の撓みを抑制することができるため、メイン基板200の撓みによりコンタクト90の接触力が低下するといったことを抑制することができる。
【0042】
(3)スライダ70に方形の島状に突出するように設けた段部74はスライダ70とモジュール基板300の接触範囲を限定し、モジュール基板300への押圧力を集中させるものであって、これによりモジュール基板300の接続完了状態でのモジュール基板300の反りを抑制すると共にモジュール基板300の電極とコンタクト90との良好な接触力を得られるものとなっている。
【0043】
(4)コネクタ100からのモジュール基板300の抜去はスライダ70を挿入時と反対方向にスライドさせ、モジュール基板300をコンタクト90から離れる方向に移動させて行う。この時、スライダ70と一緒にモジュール基板300が移動するといったことが起こり得るが、この例ではコンタクト90の接触部92はモジュール基板300の挿入方向に延伸しているため、スライダ70と一緒にモジュール基板300が移動しても接触部92はモジュール基板300の移動方向と同じ方向に移動することからコンタクト90とモジュール基板300との摺動量を抑えることができる。
プレート120は略方形の板状をなし、4つの角部には突出部121がそれぞれ突出形成されている。なお、実施例1においてスライダ70に形成されていた段部74はこの例ではスライダ70’にはなく、プレート120に段部74に相当する段部122が形成されている。
ハウジング80’はこの例では実施例1のハウジング80と異なり、モジュール基板300を位置決めする突部82はなく、モジュール基板300はフレーム60’の平板部61の前端に設けられている2つの突出片63によって左右方向に位置決めされるものとなっている。モジュール基板300には2つの突出片63が嵌まる2つの切欠き302が挿入方向前端に形成されている。
フレーム60’の2つの突出片63はこの例では挿入されてくるモジュール基板300が突き当たるストッパとして機能し、さらにメイン基板200の位置決めに加え、モジュール基板300の位置決めとしても機能するものとなっている。モジュール基板300の位置決めにこのようにハウジング80に形成した樹脂製の突部82ではなく、フレーム60’の金属製の突出片63を用いることにより位置決め部の強度の向上を図ることができる。
フレーム60’の平板部61にはこの例ではメイン基板200の搭載面側に方形の島状に突出するように段部67が形成されており、一対の側板部62の前端にはそれぞれ切欠き68が形成されている。
コネクタ100’におけるスライダ70’及びプレート120のフレーム60’への取付けは、プレート120の上にスライダ70’を重ね、プレート120の後方に位置する2つの突出部121の下にスライダ70’の支持部76をそれぞれもぐり込ませた状態としてスライダ70’とプレート120とを組み立て、その状態でスライダ70’をフレーム60’に取り付けることによって行われる。
この実施例2のコネクタ100’ではこのようにスライダ70’とモジュール基板300との間にプレート120が介在するため、スライダ70’のスライドに伴いモジュール基板300が一緒に移動するといったことは発生しにくく、よって実施例1のようにコンタクト90の接触部92の延伸方向をモジュール基板300の挿入方向と必ずしも一致させる必要はない。
なお、この実施例2ではプレート120にモジュール基板300と接触する範囲を限定する段部122を設け、さらにフレーム60’にもメイン基板200と接触する範囲を限定する段部67を設けているため、これら段部122と67でメイン基板200とハウジング80’とモジュール基板300とが挟み込まれることにより、モジュール基板300の電極とコンタクト90との良好な接触力が得られ、メイン基板200やモジュール基板300の撓みを良好に抑制することができるものとなっている。
以上、この発明の実施例について説明したが、カム機構を構成するカム溝と突起は実施例1,2の構成に限らず、スライダにカム溝を設け、フレームに突起を設けてもよい。