IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古野電気株式会社の特許一覧

特開2024-27023魚種学習装置、魚種学習方法およびプログラム
<>
  • 特開-魚種学習装置、魚種学習方法およびプログラム 図1
  • 特開-魚種学習装置、魚種学習方法およびプログラム 図2
  • 特開-魚種学習装置、魚種学習方法およびプログラム 図3
  • 特開-魚種学習装置、魚種学習方法およびプログラム 図4
  • 特開-魚種学習装置、魚種学習方法およびプログラム 図5
  • 特開-魚種学習装置、魚種学習方法およびプログラム 図6
  • 特開-魚種学習装置、魚種学習方法およびプログラム 図7
  • 特開-魚種学習装置、魚種学習方法およびプログラム 図8
  • 特開-魚種学習装置、魚種学習方法およびプログラム 図9
  • 特開-魚種学習装置、魚種学習方法およびプログラム 図10
  • 特開-魚種学習装置、魚種学習方法およびプログラム 図11
  • 特開-魚種学習装置、魚種学習方法およびプログラム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027023
(43)【公開日】2024-02-29
(54)【発明の名称】魚種学習装置、魚種学習方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 15/96 20060101AFI20240221BHJP
   G01S 7/56 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
G01S15/96
G01S7/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129707
(22)【出願日】2022-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】笠井 昭範
(72)【発明者】
【氏名】平林 祐太
(72)【発明者】
【氏名】村垣 政志
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AA02
5J083AB02
5J083AB03
5J083AC29
5J083AD06
5J083AE04
5J083AF16
5J083BE60
5J083DC05
5J083EA14
5J083EA41
(57)【要約】
【課題】魚種判別のための機械学習をより精度良く行うことが可能な魚種学習装置、魚種学習方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】サーバ20(魚種学習装置)は、単位エコー画像ごとにアノテーションデータを記憶する記憶部202と、制御部201と、を備える。制御部201は、時間的に連続する第1単位エコー画像および第2単位エコー画像のアノテーションデータから、第1単位エコー画像と第2単位エコー画像との間に跨る魚群の第1アノテーションデータおよび第2アノテーションデータをそれぞれ抽出し、抽出した第1アノテーションデータおよび第2アノテーションデータを統合して、第1単位エコー画像と第2単位エコー画像との間に跨る魚群全体のアノテーションデータを生成する。。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単位エコー画像ごとにアノテーションデータを記憶する記憶部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
時間的に連続する第1単位エコー画像および第2単位エコー画像の前記アノテーションデータから、前記第1単位エコー画像と前記第2単位エコー画像との間に跨る魚群の第1アノテーションデータおよび第2アノテーションデータをそれぞれ抽出し、
抽出した前記第1アノテーションデータおよび前記第2アノテーションデータを統合して、前記魚群全体のアノテーションデータを生成する、
ことを特徴とする魚種学習装置。
【請求項2】
請求項1に記載の魚種学習装置において、
前記制御部は、
前記第1単位エコー画像上において前記第2単位エコー画像側の第1境界付近まで延びている第1魚群と、前記第2単位エコー画像上において前記第1単位エコー画像側の第2境界付近まで延びている第2魚群とを特定し、
前記第1魚群の深度範囲と前記第2魚群の深度範囲とが略合致する場合に、前記第1魚群および前記第2魚群の前記アノテーションデータを、前記第1アノテーションデータおよび前記第2アノテーションデータとしてそれぞれ抽出する、
ことを特徴とする魚種学習装置。
【請求項3】
請求項2に記載の魚種学習装置において、
前記制御部は、前記第1魚群の深度範囲と前記第2魚群の深度範囲とが略合致するか否かを、前記第1境界付近における前記第1魚群の深度範囲と、前記第2境界付近における前記第2魚群の深度範囲との合致率に基づいて判定する、
ことを特徴とする魚種学習装置。
【請求項4】
請求項2に記載の魚種学習装置において、
前記制御部は、前記第1境界から所定の時間範囲に少なくとも一部が含まれる魚群を前記第1魚群として抽出し、前記第2境界から所定の時間範囲に少なくとも一部が含まれる魚群を前記第2魚群として抽出する、
ことを特徴とする魚種学習装置。
【請求項5】
請求項1に記載の魚種学習装置において、
前記制御部は、前記第1アノテーションデータに含まれる魚種と前記第2アノテーションデータに含まれる魚種とが相違する場合、所定の設定条件に基づき、前記魚群のアノテーションデータの魚種を設定する、
ことを特徴とする魚種学習装置。
【請求項6】
請求項5に記載の魚種学習装置において、
前記設定条件は、
前記第1アノテーションデータおよび前記第2アノテーションデータのうち新しい方のアノテーションデータの魚種に設定することを含む、
ことを特徴とする魚種学習装置。
【請求項7】
時間的に連続する第1単位エコー画像および第2単位エコー画像の前記アノテーションデータから、前記第1単位エコー画像と前記第2単位エコー画像との間に跨る魚群の第1アノテーションデータおよび第2アノテーションデータをそれぞれ抽出し、
抽出した前記第1アノテーションデータおよび前記第2アノテーションデータを統合して、前記魚群全体のアノテーションデータを生成する、
ことを特徴とする魚種学習方法。
【請求項8】
コンピュータに、
時間的に連続する第1単位エコー画像および第2単位エコー画像の前記アノテーションデータから、前記第1単位エコー画像と前記第2単位エコー画像との間に跨る魚群の第1アノテーションデータおよび第2アノテーションデータをそれぞれ抽出する機能と、
抽出した前記第1アノテーションデータおよび前記第2アノテーションデータを統合して、前記魚群全体のアノテーションデータを生成する機能と、を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、教師データ(アノテーションデータ)を用いて魚種判別のための機械学習を行う魚種学習装置、魚種学習システム、魚種学習方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中の魚群を探知する魚群探知装置が知られている。この種の魚群探知装置では、水中に超音波が送波され、その反射波が受波される。受波された反射波の強度に応じたエコーデータが生成され、生成されたエコーデータに基づいてエコー画像が表示される。ユーザは、エコー画像から魚群を確認でき、魚群の捕獲を円滑に進めることができる。
【0003】
この場合、エコー画像上の魚群について、さらに魚種が判別されて表示されると好ましい。これにより、ユーザは、自身が望む魚種の魚を効率よく捕獲できる。
【0004】
このような魚種の判別は、たとえば、機械学習モデル(機械学習アルゴリズム)を用いて行われ得る。機械学習モデルに対して、多数の教師データ(アノテーションデータ)を用いた学習が行われる。それぞれのアノテーションデータは、魚群のエコーデータと、当該魚群の範囲(水深、時間)と、当該魚群の魚種とを含んでいる。以下の特許文献1には、このようなアノテーションデータをユーザが生成する場合の構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-200175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、アノテーションデータの生成は、単位エコー画像ごとに行われる。すなわち、所定時間分の一連のエコー画像が、1フレームに対応する時間幅で複数に区切られて、アノテーションデータの生成対象とされる複数の単位エコー画像が生成される。専門家等のオペレータは、各々の単位エコー画像に対して、魚群の範囲を指定し、さらに、指定した魚群に魚種のラベルを付与する。これにより、魚群の範囲と、当該魚群の範囲の魚種と、当該魚群の範囲に含まれる画像データ(エコーデータ)とが対応付けられたアノテーションデータが生成される。
【0007】
このような生成手法では、単位エコー画像に魚群全体が含まれるとは限らない。すなわち、時間的に連続する2つの単位エコー画像に1つの魚群が跨ることが起こり得る。このような場合、1つの魚群が分断された2つの魚群部分が、2つのエコー画像にそれぞれ含まれることになる。上記生成手法では、単位エコー単位で処理が行われるため、分断された各々の魚群部分に対して個別にアノテーションデータが生成されてしまう。
【0008】
しかしながら、上記機械学習では、魚種固有に生じるエコーの尾引や分布等、魚群全体から生じる特徴が、機械学習の精度に影響を及ぼし得る。このため、上記のように、魚群の一部について生成されたアノテーションデータが機械学習に用いられると、機械学習の精度が低下することが起こり得る。
【0009】
かかる課題に鑑み、本発明は、魚種判別のための機械学習をより精度良く行うことが可能な魚種学習装置、魚種学習方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、魚種学習装置に関する。この態様に係る魚種学習装置は、単位エコー画像ごとにアノテーションデータを記憶する記憶部と、制御部と、を備える。前記制御部は、時間的に連続する第1単位エコー画像および第2単位エコー画像の前記アノテーションデータから、前記第1単位エコー画像と前記第2単位エコー画像との間に跨る魚群の第1アノテーションデータおよび第2アノテーションデータをそれぞれ抽出し、抽出した前記第1アノテーションデータおよび前記第2アノテーションデータを統合して、前記魚群全体のアノテーションデータを生成する。
【0011】
本態様に係る魚種学習装置によれば、第1単位エコー画像と第2単位エコー画像との間に跨る魚群の第1アノテーションデータおよび第2アノテーションデータが統合されて、当該魚群全体のアノテーションデータが生成される。したがって、魚群全体に対するアノテーションデータを機械学習に用いることができるため、魚種判別のための機械学習をより精度良く行うことができる。
【0012】
本態様に係る魚種学習装置において、前記制御部は、前記第1単位エコー画像上において前記第2単位エコー画像側の第1境界付近まで延びている第1魚群と、前記第2単位エコー画像上において前記第1単位エコー画像側の第2境界付近まで延びている第2魚群とを特定し、前記第1魚群の深度範囲と前記第2魚群の深度範囲とが略合致する場合に、前記第1魚群および前記第2魚群の前記アノテーションデータを、前記第1アノテーションデータおよび前記第2アノテーションデータとしてそれぞれ抽出するよう構成され得る。
【0013】
この構成によれば、1つの魚群を構成する確率が高い第1魚群および第2魚群を、第1単位エコー画像および第2単位エコー画像において円滑に特定できる。よって、これら魚群のアノテーションデータを統合することにより、1つの魚群全体のアノテーションデータを精度良く生成できる。
【0014】
この構成において、前記制御部は、前記第1魚群の深度範囲と前記第2魚群の深度範囲とが略合致するか否かを、前記第1境界付近における前記第1魚群の深度範囲と、前記第2境界付近における前記第2魚群の深度範囲との合致率に基づいて判定するよう構成され得る。
【0015】
この構成によれば、第1単位エコー画像と第2単位エコー画像との間の境界である第1境界および第2境界の付近において、第1魚群の深度範囲と第2魚群の深度範囲とが略合致するかが判定されるため、これら第1魚群および第2魚群が互いに連続するものであるかを正確に判定できる。よって、第1魚群および第2魚群のアノテーションデータから1つの魚群全体のアノテーションデータを精度良く生成できる。
【0016】
また、この構成において、前記制御部は、前記第1境界から所定の時間範囲に少なくとも一部が含まれる魚群を前記第1魚群として抽出し、前記第2境界から所定の時間範囲に少なくとも一部が含まれる魚群を前記第2魚群として抽出するよう構成され得る。
【0017】
この構成によれば、境界付近で魚の分布が疎らになっている場合も、第1単位エコー画像と第2単位エコー画像とに跨る魚群を構成する第1魚群および第2魚群を、第1単位エコー画像および第2単位エコー画像において取りこぼしなく特定できる。よって、1つの魚群全体のアノテーションデータを適正に生成できる。
【0018】
本態様に係る魚種学習装置において、前記制御部は、前記第1アノテーションデータに含まれる魚種と前記第2アノテーションデータに含まれる魚種とが相違する場合、所定の設定条件に基づき、前記魚群のアノテーションデータの魚種を設定するよう構成され得る。
【0019】
この場合、前記設定条件は、たとえば、前記第1アノテーションデータおよび前記第2アノテーションデータのうち新しい方のアノテーションデータの魚種に設定することを含み得る。
【0020】
これらの構成によれば、統合対象の第1アノテーションデータおよび第2アノテーションデータにそれぞれ含まれる魚種が互いに相違する場合、信頼性の高い魚種を、統合後のアノテーションデータに設定できる。よって、機械学習の精度を高めることができる。
【0021】
本発明の第2の態様は、魚種学習方法に関する。この態様に係る魚種学習方法は、時間的に連続する第1単位エコー画像および第2単位エコー画像の前記アノテーションデータから、前記第1単位エコー画像と前記第2単位エコー画像との間に跨る魚群の第1アノテーションデータおよび第2アノテーションデータをそれぞれ抽出し、抽出した前記第1アノテーションデータおよび前記第2アノテーションデータを統合して、前記魚群全体のアノテーションデータを生成する。
【0022】
本発明の第3の態様は、コンピュータに所定の機能を実行させるプログラムに関する。本態様に係るプログラムは、時間的に連続する第1単位エコー画像および第2単位エコー画像の前記アノテーションデータから、前記第1単位エコー画像と前記第2単位エコー画像との間に跨る魚群の第1アノテーションデータおよび第2アノテーションデータをそれぞれ抽出する機能と、抽出した前記第1アノテーションデータおよび前記第2アノテーションデータを統合して、前記魚群全体のアノテーションデータを生成する機能と、を含む。
【0023】
上記第2および第3の態様によれば、上記第1の態様と同様の効果が奏される。
【発明の効果】
【0024】
以上のとおり、本発明によれば、魚種判別のための機械学習をより精度良く行うことが可能な魚種学習装置、魚種学習方法およびプログラムを提供することができる。
【0025】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、実施形態に係る、魚種判別システムの構成を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る、魚種判別システムの構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態に係る、ニューラルネットワークによる魚種判別処理を模式的に示す図である。
図4図4は、実施形態に係る、魚種判別結果を含むエコー画像の表示例を模式的に示す図である。
図5図5は、実施形態に係る、端末装置において行われるアノテーションデータの生成方法を模式的に示す図である。
図6図6は、実施形態に係る、サーバの記憶部におけるアノテーションデータの記憶形態を示す図である。
図7図7は、実施形態に係る、サーバの制御部により実行されるアノテーションデータの統合処理を示すフローチャートである。
図8図8は、実施形態に係る、2つの単位エコー画像に跨る魚群のアノテーションデータを抽出する処理を示すフローチャートである。
図9図9(a)および図9(b)は、それぞれ、実施形態に係る、第1単位エコー画像と第2単位エコー画像との境界付近の魚群の状態を模式的に示す図である。
図10図10(a)および図10(b)は、それぞれ、実施形態に係る、第1魚群および第2魚群のアノテーションデータの統合方法を示す図である。
図11図11(a)は、変更例1に係る、第1単位エコー画像と第2単位エコー画像との境界付近の魚群の状態を模式的に示す図である。図11(b)は、変更例1に係る、第1魚群および第2魚群のアノテーションデータの統合方法を示す図である。
図12図12は、変更例2に係る、アノテーションデータの統合処理において実行される魚種の設定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0028】
以下の実施形態では、サーバ20が、特許請求の範囲に記載の「魚種学習装置」に対応する。但し、本発明に係る「魚種学習装置」は、必ずしも、サーバ20に限られるものではなく、たとえば、端末装置50等の他の装置が、本発明に係る「魚種学習装置」の機能を実行してもよい。
【0029】
図1は、魚種判別システム1の構成を示す図である。
【0030】
魚種判別システム1は、水中探知装置10と、サーバ20とを備える。水中探知装置10は、船2に設置される魚群探知機である。水中探知装置10は、外部通信網30(たとえば、インターネット)および基地局40を介して、サーバ20と通信可能である。水中探知装置10およびサーバ20は、それぞれ、相互に通信を行うためのアドレス情報を保持している。それぞれのアドレス情報は、初期設定時に、水中探知装置10およびサーバ20に設定される。
【0031】
水中探知装置10は、送受波器11と、制御ユニット12とを備える。送受波器11は、船2の船底に設置され、制御ユニット12は、船の操舵室等に設置される。送受波器11と制御ユニット12は、信号ケーブル(図示せず)で接続されている。送受波器11は、送受波用の超音波振動子を備える。送受波器11は、制御ユニット12からの制御に応じて、超音波振動子により、海底4に向かって超音波3(送信波)を送波し、その反射波を受波する。送受波器11は、受波した反射波に基づく受信信号を制御ユニット12に送信する。
【0032】
制御ユニット12は、受信信号を処理して、各深度のエコー強度を示すエコーデータを生成する。制御ユニット12は、エコーデータに基づく各深度のエコー強度を時系列に並べて、1画面分のエコー画像を生成する。制御ユニット12は、生成したエコー画像を表示部に表示させる。制御ユニット12は、超音波の送受波ごとにエコー画像を更新する。ユーザは、エコー画像を参照することで、魚群5の存在および位置を把握できる。
【0033】
さらに、制御ユニット12は、生成したエコーデータを、随時、サーバ20に送信する。サーバ20は、受信したエコーデータを記憶するとともに、制御ユニット12と同様のエコー画像を生成する。サーバ20は、機械学習モデル(機械学習アルゴリズム)により、エコー画像に含まれる魚群に対し、魚種ごとに予測確率(その魚種である確率)を算出する。
【0034】
サーバ20は、機械学習モデルにより算出した魚種ごとの予測確率に基づき、当該魚群に対する魚種の判別結果を取得する。サーバ20は、こうして取得した当該魚種の判別結果を、判別対象の魚群の範囲(深度、時間)とともに、エコーデータの受信先の水中探知装置10に送信する。
【0035】
水中探知装置10は、受信した判別結果および魚群の範囲(深度、時間)に基づき、エコー画像上の対応する範囲に魚種の判別結果を重ねて表示する。これにより、ユーザは、エコー画像上の各魚群の魚種を確認でき、所望の魚の漁獲を円滑に進めることができる。
【0036】
さらに、サーバ20は、機械学習モデルに対する学習を行うためのアノテーションデータ(教師データ)を、外部通信網30を介して、複数の端末装置50から取得する。すなわち、サーバ20は、水中探知装置10から受信したエコーデータを、複数の端末装置50の何れかに分配する。端末装置50は、受信したエコーデータからアノテーションデータを生成するために用いられる。
【0037】
すなわち、端末装置50は、専門家等の、アノテーションデータの生成を行うオペレータが所持する。オペレータは、受信したエコーデータに基づくエコー画像を端末装置50に表示させ、これらエコー画像に含まれる魚群ごとに、魚種を設定する。設定された魚種は、当該魚群の範囲(深度、時間)と、当該範囲のエコーデータとに対応付けられる。こうして対応付けられた魚種、魚群の範囲およびエコーデータによって、当該魚群に対するアノテーションデータが構成される。アノテーションデータは、当該アノテーションデータが生成されたエコー画像の識別情報とともに、サーバ20に送信される。
【0038】
サーバ20は、受信したアノテーションデータを用いて、機械学習モデルに対する学習を行う。これにより、機械学習モデルの魚種判別精度が高められる。
【0039】
なお、ここでは、サーバ20が端末装置50に提供したエコーデータに対して、アノテーションデータが生成され、生成されたアノテーションデータがサーバ20に戻されたが、サーバ20に対するアノテーションデータの提供方法は、これに限られるものではない。たとえば、サーバ20以外の装置から端末装置50にエコーデータが提供されてアノテーションデータが生成され、生成されたアノテーションデータがサーバ20に提供されてもよい。
【0040】
また、図1には、水中探知装置10が1つだけ図示されているが、実際は、多数の水中探知装置10が外部通信網30および最寄りの基地局を介して、サーバ20と通信可能である。また、サーバ20と通信を行う水中探知装置10は、図1に示すように船2に設置されるものの他、定置網に設置される水中探知装置等、漁法が異なる数種の水中探知装置が含まれ得る。
【0041】
図2は、魚種判別システム1の構成を示すブロック図である。
【0042】
水中探知装置10は、制御部101と、表示部102と、入力部103と、送受波部104と、信号処理部105と、通信部106と、位置検出部107とを備える。
【0043】
制御部101は、マイクロコンピュータおよびメモリ等により構成される。制御部101は、メモリに記憶されたプログラムに従って、水中探知装置10の各部を制御する。
【0044】
表示部102は、モニタを備え、制御部101からの制御により、所定の画像を表示させる。入力部103は、表示部102に表示された画像上でカーソルを移動させるトラックボールや、操作キー等を備え、ユーザからの操作に応じた信号を制御部101に出力する。表示部102および入力部103が、液晶タッチパネル等により一体的に構成されてもよい。
【0045】
送受波部104は、図1に示した送受波器11と、送受波器11に送信信号を供給するための送信回路と、送受波器11から出力される受信信号を処理して信号処理部105に出力する受信回路とを備える。送信回路および受信回路は、図1の制御ユニット12に含まれる。
【0046】
送受波部104は、制御部101からの制御に従って、所定周波数の送信波(超音波)を送波する。送受波部104は、送波した送信波の反射波を受波して受信信号を出力する。受信回路は、送信波の周波数の受信信号を抽出して信号処理部105に出力する。
【0047】
信号処理部105は、送受波部104から入力される受信信号から、深度に応じた反射波の強度を示すエコーデータを生成し、生成したエコーデータを制御部101に出力する。送信波を送波したタイミングからの経過時間が深度に対応する。ここで、反射波の強度は、深度が大きくなるほど減衰する。したがって、信号処理部105は、深度の差異に拘わらずエコーデータを定量的に扱えるようにするために、経過時間に応じて減衰する反射波の強度を補正し、強度を補正したエコーデータを制御部101に出力する。
【0048】
制御部101は、受信したエコーデータに基づきエコー画像を生成し、表示部102に表示させる。制御部101は、各深度におけるエコー強度を色スケールにより階調表現した深度方向の1列の画像を、エコーデータから生成する。制御部101は、現時点から所定時間前までの各列の画像を時間方向に統合して、1画面分のエコー画像を生成する。
【0049】
通信部106は、基地局40と無線通信可能な通信モジュールである。位置検出部107は、GPSを備え、水中探知装置10の位置を検出する。位置検出部107は、検出した位置情報を制御部101に出力する。
【0050】
図1を参照して説明したとおり、制御部101は、随時、通信部106を介して、エコーデータをサーバ20に送信する。また、制御部101は、通信部106を介して、サーバ20から魚種の判別結果を受信する。制御部101は、さらに、位置検出部107により検出された位置情報をサーバ20に送信する。
【0051】
図2に示すように、水中探知装置10の他にも、多数の水中探知装置10a、10b、…が外部通信網30および最寄りの基地局40a、40b、…を介して、サーバ20と通信可能である。上記のように、サーバ20と通信を行う水中探知装置10は、図1に示すように船2に設置されるものの他、定置網に設置される水中探知装置等、漁法が異なる数種の水中探知装置が含まれる。他の水中探知装置の基本的な構成は、図2の水中探知装置10と同様である。
【0052】
サーバ20は、制御部201と、記憶部202と、通信部203とを備える。制御部201は、CPU等により構成される。記憶部202は、ROM、RAM、ハードディスク等により構成される。記憶部202には、魚種判別のためのプログラムおよび機械学習のためのプログラムが記憶されている。制御部201は、記憶部202に記憶されたプログラムにより、各部を制御する。通信部203は、制御部201からの制御により、外部通信網30および基地局40を介して、水中探知装置10と通信を行う。また、サーバ20は、外部通信網30を介して、複数の端末装置50と通信を行う。
【0053】
端末装置50は、パーソナルコンピュータやタブレット型コンピュータ等の、情報を入出力可能な装置である。端末装置50は、制御部501と、記憶部502と、表示部503と、入力部504と、通信部505とを備える。
【0054】
制御部501は、CPU等により構成される。記憶部502は、ROM、RAM、ハードディスク等により構成される。記憶部502には、アノテーションデータを生成するためのプログラムが記憶されている。制御部501は、記憶部502に記憶されたプログラムにより、各部を制御する。表示部503は、液晶モニタ等により構成され、制御部501からの制御により所定の画像を表示させる。入力部504は、マウスやキーボード等の入力手段を備える。通信部505は、制御部501からの制御により、サーバ20と通信を行う。
【0055】
図3は、ニューラルネットワークによる魚種判別処理を模式的に示す図である。
【0056】
本実施形態では、機械学習として、ニューラルネットワークを用いた機械学習が適用される。たとえば、ニューロンを多段に組み合わせたディープラーニングによるニューラルネットワークが適用される。但し、適用される機械学習はこれに限られるものではなく、サポートベクターマシーンや決定木等の他の機械学習が適用されてもよい。
【0057】
サーバ20の制御部201は、処理対象の1画面分のエコーデータから魚群の範囲(深度、時間)を抽出する。エコー画像上において、エコー強度が所定の閾値以上であり、且つ、エコー強度に繋がりがある領域が魚群として抽出され、さらにこの魚群の最大時間幅および最大深度幅により構成される矩形の範囲が魚群の範囲として抽出される。魚群の抽出方法については、出願人が先に出願した国際公開第2019/003759号の記載が、参照により取り込まれ得る。
【0058】
制御部201は、抽出した魚群の範囲のエコーデータを、図3の機械学習モデル(ニューラルネットワークによる機械学習アルゴリズム)301の入力301aに適用する。
【0059】
機械学習モデル301の出力301bには、イワシ、アジ、サバなどの魚種の項目が割り当てられている。機械学習モデル301の入力301aに魚群の範囲のエコーデータが適用されると、機械学習モデル301の出力301bの各項目から、当該魚群の魚種が各項目の魚種である確率(予測確率)が出力される。図3の例では、イワシの項目から85%の予測確率が出力され、サバの項目から70%の予測確率が出力され、アジの項目から10%の予測確率が出力されている。
【0060】
各項目の予測確率は、出力条件302と照合される。出力条件302には、たとえば、予測確率が所定の下限値以上で且つ一番順位(最高)である項目の魚種を判別結果303として出力する条件が適用される。下限値は、確度が低い魚種が判別結果として出力されることを防ぐために設定される。図3の例では、予測確率が85%であるイワシが、魚種の判別結果303として出力される。
【0061】
機械学習モデル301に対する機械学習は、一連のアノテーションデータ(教師データ)を機械学習モデル301の入力301aおよび出力301bに順番に適用することにより行われる。すなわち、機械学習モデル301の入力301aに、1つのアノテーションデータに含まれる魚群のエコーデータが入力され、機械学習モデル301の出力301bには、このアノテーションデータに含まれる魚種に対応する項目に100%が設定され、その他の項目には0%が設定されて、機械学習が行われる。
【0062】
機械学習モデル301の入力301aには、魚群のエコーデータの他に、当該エコーデータが得られた位置や、その位置の海況データ等の、魚種判別に用い得る他の情報が入力されてもよい。アノテーションデータは、これらの他の情報をさらに含んでいてよい。
【0063】
図4は、魚種判別結果を含むエコー画像P1の表示例を模式的に示す図である。便宜上、図4には、エコー強度が高い部分のみに深度方向の線が付されている。
【0064】
水中探知装置10の制御部201は、サーバ20から判別結果および魚群の範囲(深度、時間)を受信すると、受信した魚群の範囲に対応する深度幅および時間幅に対応するエコー画像P1上の領域に、魚群の範囲を示す枠状のマーカーM0を表示する。さらに、制御部201は、受信した魚種の判定結果を示すラベルL0を、このマーカーM0の周囲にさらに表示する。
【0065】
図4の例では、サーバ20から受信した判別結果および魚群の範囲(深度、時間)に基づき、魚群F1~F8に対してマーカーM0が表示され、さらに、これらのマーカーM0の周囲に、魚種の判別結果を示すラベルL0が表示されている。エコー画像P1の左上の角付近には、現在の日時が表示されている。
【0066】
図4の例では、魚群F9については、図3の機械学習モデル301および出力条件302により魚種の判別結果が出力されなかったため、魚群F9には、マーカーおよびラベルの表示がなされていない。これは、たとえば、機械学習モデル301による魚群F9の予測確率が出力条件302を満たさなかった場合に起こり得る。このような場合、この魚群については判別結果がサーバ20から水中探知装置10に送信されないため、図4の魚群F9のように、魚種の判別結果が表示されないことになる。
【0067】
図5は、端末装置50において行われるアノテーションデータの生成方法を模式的に示す図である。
【0068】
アノテーションデータの生成は、端末装置50において、処理対象のエコーデータに基づくエコー画像が表示部503に表示されることにより行われる。
【0069】
専門家等のオペレータは、表示されたエコー画像上において、魚群の範囲を指定する。たとえば、魚群の範囲は、矩形の範囲で指定される。オペレータは、入力部504を操作して、矩形の対角の頂点を指定することにより、魚群の範囲を指定する。さらに、オペレータは、入力部504を操作して、各魚群に魚種を設定する。たとえば、魚群の範囲の指定に応じて、魚種の選択候補のリストが表示部503に表示される、オペレータは、このリストから設定対象の魚種を選択する。これにより、当該魚群の範囲に魚種が設定される。
【0070】
ここで、アノテーションデータの生成は、図5に示すように、単位エコー画像ごとに行われる。すなわち、所定時間分の一連のエコー画像が、1フレームに対応する時間幅で複数に区切られて、アノテーションデータの生成対象とされる複数の単位エコー画像が生成される。時間方向における単位エコー画像の境界B1、B2のうち、時間が新しい側の境界B1は、次の単位エコー画像の時間が古い側の境界B2と一致している。
【0071】
専門家等のオペレータは、各々の単位エコー画像に対して、魚群の範囲を指定し、さらに、指定した魚群に魚種を設定する。これにより、魚群の範囲と、当該魚群の範囲の魚種と、当該魚群の範囲に含まれる画像データ(エコーデータ)とが対応付けられたアノテーションデータが生成される。
【0072】
図5の例では、単位エコー画像Pnに対するアノテーション処理Anによって、6つの魚群の範囲(矩形破線の範囲)が指定され、各魚群の範囲に魚種が設定されている。また、単位エコー画像Pn+1に対するアノテーション処理An+1によって、5つの魚群の範囲(矩形破線の範囲)が指定され、各魚群の範囲に魚種が設定されている。したがって、単位エコー画像Pnからは、6つの魚群に対して、それぞれ、魚群の範囲と、当該魚群の範囲の魚種と、当該魚群の範囲に含まれる画像データ(エコーデータ)とが対応付けられたアノテーションデータが生成される。また、単位エコー画像Pn+1からは、5つの魚群に対して、それぞれ、魚群の範囲と、当該魚群の範囲の魚種と、当該魚群の範囲に含まれる画像データ(エコーデータ)とが対応付けられたアノテーションデータが生成される。
【0073】
こうして生成されたアノテーションデータは、端末装置50からサーバ20に送信され、サーバ20の記憶部202に記憶される。
【0074】
図6は、サーバ20の記憶部202におけるアノテーションデータの記憶形態を示す図である。
【0075】
記憶部202には、エコーIDおよび画像IDに対応付けて、単位エコーデータおよびアノテーションデータが記憶される。
【0076】
エコーIDは、上述の所定時間分の一連のエコー画像(エコーデータ)を識別するための識別情報である。エコーIDは、サーバ20によって固有に設定される。画像IDは、単位エコー画像を識別するための識別情報である。画像IDは、たとえば、時間が古いものから順番に各々の単位エコー画像に付される番号とされる。単位エコーデータは、各々の単位エコー画像に対応する1フレーム分のエコーデータである。アノテーションデータは、各々の単位エコー画像から生成されたアノテーションデータである。
【0077】
サーバ20の制御部201は、アノテーション処理の対象とされる所定時間分のエコーデータを新たに水中探知装置10等から受信すると、このエコーデータにエコーIDを付する。さらに、制御部201は、このエコーデータを時間が古い側の先頭から1フレーム分の時間幅ごとに区切って、各々の単位エコー画像に対応する単位エコーデータを生成する。そして、制御部201は、各々の単位エコーデータに画像IDを付し、単位エコーデータを画像IDに対応付けて記憶部202に記憶させる。これにより、図6のデータ構造のうち、エコーID、画像IDおよび単位エコーデータの部分が構成される。
【0078】
その後、制御部201は、各々の単位エコーデータを、エコーIDおよび画像IDとともに、端末装置50に送信する。端末装置50の制御部501は、受信したこれらのデータを記憶部502に記憶させ、オペレータによるアノテーション処理に供する。オペレータからアノテーション処理の操作が行われると、制御部501は、処理対象の単位エコーデータに基づく単位エコー画像を表示部503に表示させる。オペレータは、図5に示した処理により、処理対象の単位エコー画像に対しアノテーション処理を実行する。これにより、当該単位エコー画像に対するアノテーションデータが生成される。
【0079】
こうして、サーバ20から受信した全ての単位エコーデータに対するアノテーション処理が終了すると、制御部501は、単位エコー画像ごとに生成されたアノテーションデータを、それぞれの単位エコー画像の画像IDに対応付けて、エコーIDとともに、サーバ20に送信する。サーバ20の制御部201は、受信したアノテーションデータを、図6の画像IDに対応付けて、記憶部202に記憶させる。図5に示したように、各々の画像IDには、単位エコー画像に含まれる魚群の数に応じたアノテーションデータが対応付けられる。こうして、記憶部202にアノテーションデータが記憶されることにより、図6のデータ構造が全て構築される。
【0080】
ところで、図5に示した単位エコー画像には、魚群全体が含まれるとは限られず、時間的に連続する2つの単位エコー画像に1つの魚群が跨ることが起こり得る。
【0081】
たとえば、図5の例では、単位エコー画像Pnの右上のイワシの魚群は、次の単位エコー画像Pn+1の左上のイワシの魚群に繋がっていると考えられる。しかし、上記の生成手法では、単位エコー画像ごとに魚群が指定されるため、単位エコー画像Pnと単位エコー画像Pn+1とに跨るイワシの魚群が、単位エコー画像Pnの部分と単位エコー画像Pn+1の部分に分断されて指定される。そして、分断された各々の魚群部分に対して個別にアノテーションデータが生成されることになる。
【0082】
しかしながら、上述の機械学習では、魚種固有に生じるエコーの尾引や分布等、魚群全体から生じる特徴が、機械学習の精度に影響を及ぼし得る。このため、上記のように、魚群の一部について生成されたアノテーションデータが機械学習に用いられると、機械学習の精度が低下してしまう。
【0083】
このような問題を解消するため、本実施形態では、時間的に連続する2つの単位エコー画像のアノテーションデータから、これら単位エコー画像間に跨る魚群のアノテーションデータがそれぞれ抽出され、抽出された2つのアノテーションデータを統合して、当該魚群のアノテーションデータが生成される。すなわち、図5の例では、単位エコー画像Pnの右上のイワシの魚群のアノテーションデータと、単位エコー画像Pn+1の左上のイワシの魚群のアノテーションデータとが統合されて、当該イワシの魚群全体に対するアノテーションデータが生成される。
【0084】
図7は、サーバ20の制御部201により実行されるアノテーションデータの統合処理を示すフローチャートである。
【0085】
制御部201は、同じエコーIDの単位エコー画像(単位エコーデータ)のうち、時間的に連続する2つの単位エコー画像のアノテーションデータを参照する(S11)。次に、制御部201は、参照したアノテーションデータから、これら2つの単位エコー画像に跨る魚群のアノテーションデータを抽出する(S12)。そして、制御部201は、抽出したアノテーションデータを統合して、2つの単位エコー画像に跨る魚群全体のアノテーションデータを生成し、生成したアノテーションデータを記憶部202に記憶させる(S13)。制御部201は、同じエコーIDの全ての単位エコー画像(単位エコーデータ)に対して、図7の処理を実行する。
【0086】
図3の機械学習モデル301の学習には、端末装置50により生成された図6のアノテーションデータと、図7の処理により生成されたアノテーションデータが用いられる。このとき、図7の処理により統合された2つのアノテーションデータは、機械学習に用いるアノテーションデータから除外されてよい。たとえば、図7の処理により統合された2つのアノテーションデータは、記憶部202に構築された図6のデータ構造から消去されてよい。
【0087】
図8は、図7のステップS12における処理の一例を示すフローチャートである。
【0088】
便宜上、図8には、図7のステップS11、S13が含まれている。図8のステップS101~S105が、図7のステップS12に対応する。
【0089】
制御部201は、ステップS11において、時間的に連続する2つの単位エコー画像のアノテーションデータを参照し、各々のアノテーションデータにおける魚群の範囲を把握する。次に、制御部201は、これら2つの単位エコー画像のうち、時間が古い方の第1単位エコー画像において、右側の境界付近、すなわち、図5の境界B1付近に魚群が存在するか否かを判定する(S101)。第1単位エコーの右側の境界B1付近に魚群が存在しない場合(S101:NO)、制御部201は、図8の処理を終了する。第1単位エコーの右側の境界B1付近に魚群が存在する場合(S101:YES)、制御部201は、この魚群を、統合対象の第1魚群として特定する(S102)。
【0090】
次に、制御部201は、これら2つの単位エコー画像のうち、時間が新しい方の第2単位エコー画像において、左側の境界付近、すなわち、図5の境界B2付近に魚群が存在するか否かを判定する(S103)。第2単位エコーの左側の境界B2付近に魚群が存在しない場合(S103:NO)、制御部201は、図8の処理を終了する。第2単位エコーの左側の境界B2付近に魚群が存在する場合(S103:YES)、制御部201は、この魚群を、統合対象の第2魚群として特定する(S104)。
【0091】
次に、制御部201は、第1魚群の深度範囲と第2魚群の深度範囲とが略合致するか否かを判定する(S105)。より詳細には、制御部201は、第1魚群の深度範囲と第2魚群の深度範囲との合致率が所定の閾値Th1以上であるか否かを判定する。ステップS105の判定がNOの場合、制御部201は、ステップS13の処理を行うことなく図8の処理を終了する。
【0092】
ステップS105の判定がYESの場合、制御部201は、第1魚群および第2魚群は、第1単位エコー画像と第2単位エコー画像とに跨る魚群を構成するとして、第1魚群および第2魚群のアノテーションデータを統合し、魚群全体のアノテーションデータを生成する(S13)。これにより、制御部201は、これら2つの単位エコー画像のアノテーションデータに対する処理を終了する。
【0093】
制御部201は、時間的に連続する次の2つの単位エコー画像のアノテーションデータに対して、図8の処理を実行する。こうして、制御部201は、同じエコーIDが付された全ての単位エコー画像のアノテーションデータに対して、図8の処理を行う。
【0094】
図9(a)、(b)は、第1単位エコー画像と第2単位エコー画像との境界付近の魚群の状態を模式的に示す図である。
【0095】
図9(a)には、図5の単位エコー画像Pn(第1単位エコー画像)の右上の部分と単位エコー画像Pn+1(第2単位エコー画像)の左上の部分が示されている。Fa、Fbは、イワシの魚群であり、Ra、Rbは、アノテーションデータに含まれる魚群の範囲(時間範囲、深度範囲)である。上記のように、魚群の範囲Ra、Rbは矩形に設定される。
【0096】
図8のステップS101では、第1単位エコー画像Pnの境界B1から所定の時間範囲Taに魚群が存在するか否かが判定され、ステップS103では、第2単位エコー画像Pn+1の境界B2から所定の時間範囲Tbに魚群が存在するか否かが判定される。時間範囲Ta、Tbは、1つの魚群において生じ得る、エコー画像上の時間軸方向の隙間の最大値程度に設定される。時間範囲Ta、Tbは、同じ時間幅に設定されてよい。
【0097】
図9(a)の例では、魚群Fa(魚群の範囲Ra)が時間範囲Ta内に存在するため、図8のステップS101の判定がYESとなり、魚群Faが第1魚群として特定される。また、図9(a)の例では、魚群Fb(魚群の範囲Rb)が時間範囲Tb内に存在するため、図8のステップS103の判定がYESとなり、魚群Fbが第2魚群として特定される。
【0098】
これに対して、図9(b)の例では、魚群Fa(魚群の範囲Ra)が時間範囲Ta内に存在しないため、図8のステップS101の判定がNOとなり、魚群Faは第1魚群として特定されない。また、図9(b)の例では、魚群Fb(魚群の範囲Rb)が時間範囲Tb内に存在しないため、図8のステップS103の判定がNOとなり、魚群Fbは第2魚群として特定されない。
【0099】
また、図8のステップS105では、以下の式(1)による判定が行われる。
【0100】
【数1】
【0101】
図9(a)に示すように、AmaxおよびAminは、それぞれ、第1単位エコー画像Pnにおける第1魚群Fa(魚群の範囲Ra)の最大深度および最小深度であり、BmaxおよびBminは、それぞれ、第2単位エコー画像Pn+1における第2魚群Fb(魚群の範囲Rb)の最大深度および最小深度である。
【0102】
すなわち、式(1)の左辺の分母は、AminとBminの小さい方(浅い方)からAmaxとBmaxの大きい方(深い方)までの深度範囲であり、図9(a)の例ではAminからBmaxまでの深度範囲である。また、式(1)の左辺の分子は、AminとBminの大きい方(深い方)からAmaxとBmaxの小さい方(浅い方)までの深度範囲であり、図9(a)の例ではBminからAmaxまでの深度範囲である。式(1)の左辺により、第1魚群Faの深度範囲と第2魚群Fbの深度範囲との合致率が算出される。図8のステップS105では、この合致率が閾値Th1以上であるか否かによって、第1魚群Faの深度範囲と第2魚群Fbの深度範囲とが略合致するか否かが判定される。閾値Th1は、統計的に設定されたデフォルト値であってよく、あるいは、サーバ20の管理者により任意に設定されてもよい。
【0103】
図10(a)、(b)は、図8のステップS13における第1魚群および第2魚群のアノテーションデータの統合方法を示す図である。
【0104】
図8のステップS13において、制御部201は、第1魚群Faの魚群の範囲Raおよび第2魚群Fbの魚群の範囲Rbの深度範囲を整合させる。すなわち、制御部201は、図10(a)に示すように、最大深度Amax、Bmaxの小さい方(Amax)を大きい方(Amax)に整合させ、最小深度Amin、Bminの大きい方(Bmin)を小さい方(Amin)に整合させるよう、魚群の範囲Ra、Rbの深度範囲を修正する。そして、制御部201は、図10(b)に示すように、修正後の魚群の範囲Ra、Rbのアノテーションデータを統合して、魚群Fa、Fbにより構成される1つの魚群のアノテーションデータを生成する。
【0105】
生成されたアノテーションデータは、修正後の魚群の範囲Ra、Rbを統合した魚群の範囲Rabと、この魚群の範囲Rabに含まれるエコーデータと、当該魚群の魚種(ここではイワシ)とから構成される。魚群の範囲Rabも、魚群の範囲Ra、Rbと同様、矩形となり、この矩形の範囲に魚群Fa、Fbが内包される。上記のように、サーバ20の制御部201は、統合後のアノテーションデータを機械学習モデル301の学習に用いる。
【0106】
なお、図9(a)~図10(b)には、第1単位エコー画像Pnの右上の部分と第2単位エコー画像Pn+1の左上の部分の魚群が例示されたが、第1単位エコー画像と第2単位エコー画像とに跨る魚群が複数存在する場合は、それぞれの魚群に対して上記と同様の処理が行われて、統合後のアノテーションデータが複数生成される。
【0107】
また、3つ以上の単位エコー画像に1つの魚群が跨る場合は、これら単位エコー画像のうち隣り合う単位エコー画像について、上記の処理が順次行われる。これにより、3つ以上の単位エコー画像に分断された魚群の部分のアノテーションデータが統合され、1つの魚群に対するアノテーションデータが生成される。
【0108】
<実施形態の効果>
実施形態によれば、以下の効果が奏され得る。
【0109】
図7図10(b)に示したように、第1単位エコー画像Pnと第2単位エコー画像Pn+1との間に跨る魚群のアノテーションデータ(第1アノテーションデータおよび第2アノテーションデータ)が統合されて、当該魚群全体のアノテーションデータが生成される。したがって、魚群全体に対するアノテーションデータを機械学習に用いることができるため、魚種判別のための機械学習の精度を高めることができる。
【0110】
図9(a)に示したように、制御部201は、第1単位エコー画像Pn上において第2単位エコー画像Pn+1側の境界B1(第1境界)付近まで延びている魚群Faを第1魚群に特定し、第2単位エコー画像Pn+1上において第1単位エコー画像Pn側の境界B2(第2境界)付近まで延びている魚群Fbを第2魚群に特定し、魚群Fa(第1魚群)の範囲Raと魚群Fb(第2魚群)の範囲Rbとが略合致する場合に、これら魚群Fa、Fb(第1魚群、第2魚群)のアノテーションデータを、統合対象のアノテーションデータ(第1アノテーションデータおよび第2アノテーションデータ)としてそれぞれ抽出する。これにより、1つの魚群を構成する確率が高い魚群Fa、Fb(第1魚群、第2魚群)を、第1単位エコー画像Pnおよび第2単位エコー画像Pn+1において円滑に特定できる。よって、これら魚群のアノテーションデータを統合することにより、1つの魚群全体のアノテーションデータを精度良く生成できる。
【0111】
図9(a)に示したように、制御部201は、境界B1(第1境界)から所定の時間範囲Taに少なくとも一部が含まれる魚群Faを統合対象の魚群(第1魚群)として抽出し、境界B2(第2境界)から所定の時間範囲Tbに少なくとも一部が含まれる魚群Fbを統合対象の魚群(第2魚群)として抽出する。これにより、境界B1、B2付近で魚の分布が疎らになっている場合も、第1単位エコー画像Pnと第2単位エコー画像Pn+1とに跨る魚群を構成する第1魚群および第2魚群を、第1単位エコー画像Pnおよび第2単位エコー画像Pn+1において取りこぼしなく特定できる。よって、1つの魚群全体のアノテーションデータを適正に生成できる。
【0112】
<変更例1>
本発明は、上記実施形態に制限されるものではなく、また、本発明の実施形態は、上記構成の他に種々の変更が可能である。
【0113】
たとえば、上記実施形態では、アノテーションデータを構成する魚群の範囲(時間範囲、深度範囲)が矩形であったが、アノテーションデータを構成する魚群の範囲は、矩形以外の他の形状であってもよい。
【0114】
たとえば、図11(a)に示すように、魚群の範囲Ra、Rbが、魚群Fa、Fbの外縁に沿った形状であってもよい。この場合、上記のように、エコー画像上において、エコー強度が所定の閾値以上であり、且つ、エコー強度に繋がりがある領域が魚群Fa、Fbとして抽出され、抽出された魚群Fa、Fbの外縁に沿った範囲が、魚群の範囲Ra、Rbとして抽出される。端末装置50の制御部501は、オペレータがエコー画像上において魚群の位置を指示すると、指定された位置を含む魚群に対して上記処理により抽出した魚群の範囲を、エコー画像上に重ねて表示する。
【0115】
この場合も、上記実施形態1と同様、図8のステップS101では、境界B1から時間範囲Taに魚群が存在するかが判定され、ステップS103では、境界B2から時間範囲Tbに魚群が存在するかが判定される。これにより、図11(a)に示すように、魚群Fa、Fbが、それぞれ、第1魚群および第2魚群に特定される。
【0116】
また、この場合、図11(a)のステップS105では、魚群Fa(第1魚群)の深度範囲と魚群Fb(第2魚群)の深度範囲とがほぼ合致するか否かが、境界B1(第1境界)付近における魚群Fa(第1魚群)の深度範囲と、境界B2(第2境界)付近における魚群Fb(第2魚群)の深度範囲との合致率に基づいて判定される。
【0117】
すなわち、魚群Faについては、魚群の範囲Raのうち時間範囲Taに含まれる部分に対して最大深度Amaxおよび最小深度Aminが取得され、魚群Fbについては、魚群の範囲Rbのうち時間範囲Tbに含まれる部分に対して最大深度Bmaxおよび最小深度Bminが取得される。
【0118】
制御部201は、こうして取得した最大深度Amax、Bmaxおよび最小深度Amin、Bminを上記式(1)に適用して、ステップS105の判定を行う。このように、境界B1(第1境界)および境界B2(第2境界)の付近において、魚群Fa(第1魚群)の深度範囲と魚群Fb(第2魚群)の深度範囲とが略合致するかを判定することにより、これら魚群Fa、Fb(第1魚群、第2魚群)が互いに連続するものであるかを正確に判定できる。よって、魚群Fa、Fb(第1魚群、第2魚群)のアノテーションデータから1つの魚群全体のアノテーションデータを精度良く生成できる。
【0119】
この場合、図11(a)のステップS13では、図11(b)のように、最大深度Amax、Bmaxをそれぞれ取得した魚群の範囲Ra、Rbの位置を互いに接続し、最小深度Amin、Bminをそれぞれ取得した魚群の範囲Ra、Rbの位置を互いに接続することにより、魚群全体の魚群の範囲Rabが設定され得る。これにより、魚群全体のアノテーションデータを構成する魚群の範囲Rabを、円滑かつ適正に設定できる。
【0120】
但し、魚群の範囲Rabの設定方法がこれに限られるものではない。たとえば、最大深度Amax、Bmaxをそれぞれ取得した魚群の範囲Ra、Rbの位置よりもやや境界B1、B2側の魚群の範囲Ra、Rbの位置を接続し、最小深度Amin、Bminをそれぞれ取得した魚群の範囲Ra、Rbの位置よりもやや境界B1、B2側の魚群の範囲Ra、Rbの位置を接続することにより、魚群の範囲Rabが設定されてもよい。この場合も、魚群全体のアノテーションデータを構成する魚群の範囲Rabを、円滑かつ適正に設定できる。
【0121】
<変更例2>
上記実施形態では、第1魚群のアノテーションデータを構成する魚種と、第2魚群のアノテーションデータを構成する魚種とが同じであると想定された。しかしながら、魚群の画像に基づく魚種の判定は、オペレータにおいて困難な場合もある。このため、1つの魚群を構成するとして特定された第1魚群および第2魚群にそれぞれ設定されたアノテーションデータの魚種が互いに相違することが起こり得る。
【0122】
変更例2では、このような場合に、統合後のアノテーションデータに対して、所定の条件に基づき、魚種が設定される。
【0123】
図12は、図8のステップS13におけるアノテーションデータの統合処理において実行される魚種の設定処理を示すフローチャートである。
【0124】
制御部201は、統合対象の第1魚群および第2魚群のアノテーションデータの魚種が一致するか否かを判定する(S201)。両者が一致する場合(S201:YES)、制御部201は、一致した魚種を、統合後の魚群の魚種に設定する(S202)。他方、両者が一致しない場合、制御部201は、所定の設定条件に従って、統合後の魚群の魚種を設定する(S203)。
【0125】
ステップS203の設定条件は、たとえば、第1魚群および第2魚群のアノテーションデータ(第1アノテーションデータ、前記第2アノテーションデータ)のうち新しい方のアノテーションデータの魚種に設定することを含み得る。
【0126】
たとえば、図11(a)の例において、魚群Fa(第1魚群)および魚群Fb(第2魚群)のアノテーションデータをそれぞれ構成する魚種が相違する場合、制御部201は、新しい方の単位エコー画像Pn+1から取得された魚群Fbのアノテーションデータの魚種を、統合後の魚群の範囲Rabに対する魚種として設定する。
【0127】
なお、ステップS203における設定条件は、上記のように、新しい方のアノテーションデータの魚種に設定するとの条件(第1条件)に限られるものではなく、信頼性の高い魚種を統合後のアノテーションデータに設定可能な限りにおいて、他の条件であってもよい。
【0128】
たとえば、統合対象の第1魚群および第2魚群のアノテーションデータ(第1アノテーションデータ、第2アノテーションデータ)のうち魚群の範囲が大きい方のアノテーションデータの魚種を、統合後の魚群のアノテーションデータの魚種に設定するとの条件(第2条件)が、ステップS203の設定条件に含まれてもよい。
【0129】
あるいは、統合したアノテーションデータを魚種判別の機械学習モデル301で処理して得られた魚種を、統合後の魚群のアノテーションデータの魚種に設定するとの条件(第3条件)が、ステップS203の設定条件に含まれてもよい。
【0130】
この場合、たとえば、第2条件により魚種を設定できない場合(たとえば、第1魚群の範囲と第2魚群の範囲とが略同じである場合)に、第1条件または第3条件が適用されて、魚種が設定されてもよい。あるいは、第1条件から第3条件によりそれぞれ取得された魚種のうち、互いに一致する魚種の数が最も多い魚種が、統合後の魚群のアノテーションデータの魚種に設定されてもよい。設定条件は、第1条件から第3条件に限られるものではなく、他の条件をさらに含んでもよい。
【0131】
このように、魚群Fa(第1魚群)および魚群Fb(第2魚群)のアノテーションデータをそれぞれ構成する魚種が相違する場合に、ステップS203の処理を行うことで、信頼性の高い魚種を、統合後のアノテーションデータに設定できる。よって、機械学習の精度を高めることができる。
【0132】
なお、ステップS201の判定がNOの場合は、第1魚群および第2魚群のアノテーションデータを統合する処理を中止してもよい。この場合、制御部201は、第1魚群および第2魚群のアノテーションデータの両方を、機械学習モデル301の機械学習に用いるアノテーションデータの対象から除外してよく、あるいは、これらアノテーションデータの一方(たとえば、古い方または魚群の範囲が小さい方)を機械学習モデル301の機械学習に用いるアノテーションデータの対象から除外してよい。
【0133】
<その他の変更例>
上記実施形態および変更例1、2では、図7および図8の処理が、サーバ20の制御部201において行われたが、これらの処理が、サーバ20以外の他の装置で行われて、統合後のアノテーションデータがサーバ20に提供されもよい。たとえば、図7および図8の処理が、オペレータによるアノテーションデータの生成後に、端末装置50の制御部501が行い、オペレータが生成したアノテーションデータと、図7および図8の処理により生成したアノテーションデータとを、制御部501がサーバ20に送信してもよい。この場合、端末装置50が、特許請求の範囲に記載の魚種学習装置に対応する。
【0134】
また、上記実施形態および変更例1、2では、上記式(1)によって、第1魚群および第2魚群の深度範囲が略合致するか否かが判定されたが、この判定の方法は、これに限られるものではない。たとえば、図9(a)において、最大深度Amaxと最小深度Aminとの間の第1深度幅と、最大深度Bmaxと最小深度Bminとの間の第2深度幅との差分が所定の閾値より小さく、且つ、第1深度幅の中間深度と第2深度幅の中間深度との差分が所定の閾値より小さいとの条件が満たされる場合に、第1魚群および第2魚群の深度範囲が略合致し、この条件が満たされない場合に、これら魚群の深度範囲が合致しないと判定されてもよい。図11(a)の場合も、同様の判定方法にて、第1魚群および第2魚群の深度範囲が略合致するか否かが判定されてもよい。
【0135】
また、第1単位エコー画像と第2単位エコー画像とに跨る魚群のアノテーションデータを抽出する方法は、図8のステップS101~S105に示した方法に限られるものではない。たとえば、第1魚群のエコーデータおよび第2魚群のエコーデータの分布の連続性に基づいて、第1魚群および第2魚群が1つの魚群を構成するかが判定されてもよい。
【0136】
また、上記実施形態および変更例1、2では、送受波部104により送波される送信波の周波数が1つであることが想定されたが、互いに異なる2種類の周波数の送信波が送受波部104から送波されてもよい。この場合、各周波数の受信信号に基づくエコーデータが魚群ごとに機械学習モデル301に適用されて、各魚群の魚種が判別されてもよい。このように2種類の周波数で送受波が行われることにより、機械学習モデル301による魚種判別をより高精度に行うことができる。たとえば、鰾の有無によって、各周波数のエコー強度に差が生じる。このため、魚群からのエコーの強度の差を参照することによって、当該魚群の魚種を精度良く判別できる。
【0137】
この場合、単位エコー画像により生成されるアノテーションデータは、それぞれの魚群に対して周波数ごとに生成されればよい。また、図7および図8に示したアノテーションデータの統合処理は、各周波数のエコーデータ(単位エコー画像)に対して個別に行われればよい。
【0138】
また、上記実施形態では、機械学習モデル301を用いた魚種の判別処理がサーバ20側で行われたが、この判別処理が水中探知装置10側で行われてもよい。この場合、アノテーションデータにより更新された機械学習モデル301が、随時、水中探知装置10に送信され、水中探知装置10に記憶される。水中探知装置10の制御部101は、送受波部104および信号処理部105により取得したエコーデータに基づいて、上記サーバ20の制御部201と同様、機械学習モデル301を用いた魚種判別を実行し、判別結果をエコー画像に表示させる。
【0139】
また、上記実施形態では、アノテーションデータが端末装置50において生成されたが、アノテーションデータを生成する装置はこれに限られるものではない。たとえば、水中探知装置10のユーザが、自身の漁獲結果からエコー画像上の魚群とその魚種を入力し、この魚群のエコーデータと当該魚群の魚種が、アノテーションデータとしてサーバ20に送信されてもよい。
【0140】
また、上記実施形態では、水中探知装置10が魚群探知機であったが、水中探知装置10がソナー等、魚群探知機以外の装置であってもよい。
【0141】
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に記載の範囲で適宜種々の変更可能である。
【符号の説明】
【0142】
20 サーバ(機械学習装置)
201 制御部
202 記憶部
301 機械学習モデル
Pn、Pn+1 単位エコー画像(第1単位エコー画像、第2単位エコー画像)
Fa、Fb 魚群(第1魚群、第2魚群)
B1、B2 境界(第1境界、第2境界)
Ta、Tb 時間範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12