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  • 特開-油圧供給装置及び油圧供給方法 図1
  • 特開-油圧供給装置及び油圧供給方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027040
(43)【公開日】2024-02-29
(54)【発明の名称】油圧供給装置及び油圧供給方法
(51)【国際特許分類】
   F15B 20/00 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
F15B20/00 Z
F15B20/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129743
(22)【出願日】2022-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】313000829
【氏名又は名称】HAWEジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100213436
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 直俊
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 浩一
【テーマコード(参考)】
3H082
【Fターム(参考)】
3H082AA01
3H082AA02
3H082AA30
3H082CC02
3H082DA04
3H082DA22
3H082DA39
3H082DA46
(57)【要約】
【課題】接続される油圧システムに何かしらトラブルが生じても、一定期間は一定の圧力の油圧を供給することができる油圧供給装置及び油圧供給方法を提供する。
【解決手段】油圧供給装置は、第一管路11と、第一管路11に作動油を送出するポンプ2と、第一管路11から作動油が供給される第二管路12と、第二管路12から作動油が戻る第三管路13と、第一管路11に接続されたアキュムレータ3と、第一管路11から導入した作動油を減圧して第二管路12に供給する減圧弁4と、第一管路11の作動油を第三管路13に排出する弁装置5と、を備え、第二管路12は、第一管路11に対して減圧弁5のみを介して接続されており、弁装置5は、第一管路11における作動油の圧力が第一圧力以上である場合に、第一管路11の作動油を第三管路13に排出しない状態から第一管路11の作動油を第三管路13に排出する状態に切り替わる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一管路と、
前記第一管路に作動油を送出するポンプと、
前記第一管路から前記作動油が供給される第二管路と、
前記第二管路から前記作動油が戻る第三管路と、
前記第一管路に接続されており、前記ポンプから送出される前記作動油を蓄えるアキュムレータと、
前記第一管路から導入した前記作動油を減圧して前記第二管路に供給する減圧弁と、
前記第一管路の前記作動油を第三管路に排出する弁装置と、
を備え、
前記第二管路は、前記第一管路に対して前記減圧弁のみを介して接続されており、
前記弁装置は、前記第一管路における前記作動油の圧力が第一圧力以上である場合に、前記第一管路の前記作動油を前記第三管路に排出しない状態から前記第一管路の前記作動油を前記第三管路に排出する状態に切り替わる油圧供給装置。
【請求項2】
前記第一管路に設けられた圧力センサを更に備え、
前記ポンプは、前記圧力センサで検知された前記第一管路における前記作動油の圧力が第二圧力以上になった場合に停止する請求項1に記載の油圧供給装置。
【請求項3】
前記第二圧力は、前記第一圧力未満である請求項2に記載の油圧供給装置。
【請求項4】
前記第一管路の前記作動油を前記第三管路に排出しない供給モードと、前記ポンプを停止させる停止モードとを切り替えて動作する第一動作モードと、
前記供給モードと、前記第一管路の前記作動油を第三管路に排出する循環モードとを切り替えて動作する第二動作モードとを切り替え可能である請求項2又は3に記載の油圧供給装置。
【請求項5】
第一管路に作動油を送出する作動油送出工程と、
第二管路から第三管路に前記作動油を戻す戻し工程と、
前記第一管路に送出される前記作動油をアキュムレータで蓄える蓄圧工程と、
前記第一管路から前記作動油を導入して減圧し、前記第二管路に供給する減圧供給工程と、
前記第一管路の前記作動油を第三管路に排出する排出工程と、
を含み、
前記減圧供給工程では、前記第一管路から導入して減圧した前記作動油のみを前記第二管路に供給し、
前記排出工程では、前記第一管路における前記作動油の圧力が第一圧力以上である場合に前記第一管路の前記作動油を前記第三管路に排出しない状態から前記第一管路の前記作動油を前記第三管路に排出する状態に切り替える油圧供給方法。
【請求項6】
前記第一管路の前記作動油の圧力を検知する油圧検知工程を更に含み、
前記油圧検知工程では、前記第一管路における前記作動油の圧力が第二圧力以上になった場合に前記第一管路への前記作動油の送出を停止する請求項5に記載の油圧供給方法。
【請求項7】
前記第二圧力は、前記第一圧力未満である請求項6に記載の油圧供給方法。
【請求項8】
前記第一管路の前記作動油を前記第三管路に排出しない供給モードと、前記第一管路への前記作動油の送出を停止する停止モードとを切り替えて動作する第一動作モードと、
前記供給モードと、前記第一管路の前記作動油を第三管路に排出する循環モードとを切り替えて動作する第二動作モードとを切り替える請求項6又は7に記載の油圧供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧供給装置及び油圧供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、油圧供給装置として油圧ユニットが記載されている。この油圧ユニットは、油圧ポンプと、油圧ポンプから吐出される作動油を蓄えるアキュムレータと、アキュムレータからの作動油を導入する一次側管路及び導入した作動油を排出する二次側管路のそれぞれを接続するとともに、二次側管路における作動油の圧力を一次側管路よりも低い圧力に調整するノンリーク型減圧弁とを備えている。この圧力ユニットによれば、油圧ポンプにて作動油の圧力を十分に高くしてアキュムレータに蓄えておき、この圧力ユニットに接続されるアクチュエータ等に対しては、ノンリーク型減圧弁にて所要の圧力で作動油を供給することができ、これにより、油圧ポンプの駆動回数が抑制されてエネルギー効率を大きく改善することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-028367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような油圧供給装置(油圧ユニット)では、油圧供給装置から油圧を供給される油圧システムに何かしらトラブル(例えば、油漏れ)が生じると、そのポンプの駆動回数が多くなり、作動油の温度が上昇してしまう場合がある。また、油圧供給装置から一定の圧力の油圧を供給することができなくなる場合がある。これらの場合、油圧供給装置から供給される作動油で動作する母機をそのまま正常に動作させることができなくなり、母機を停止させなければならなくなってしまう場合がある。そのため、油圧システムに何かしらトラブルが生じても、一定期間(例えば、母機の動作におけるひとまとまりの工程の終了時まで)は一定の圧力の油圧を供給することができる油圧供給装置及び油圧供給方法の提供が望まれる。
【0005】
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、接続される油圧システムに何かしらトラブルが生じても、一定期間は一定の圧力の油圧を供給することができる油圧供給装置及び油圧供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る油圧供給装置は、
第一管路と、
前記第一管路に作動油を送出するポンプと、
前記第一管路から前記作動油が供給される第二管路と、
前記第二管路から前記作動油が戻る第三管路と、
前記第一管路に接続されており、前記ポンプから送出される前記作動油を蓄えるアキュムレータと、
前記第一管路から導入した前記作動油を減圧して前記第二管路に供給する減圧弁と、
前記第一管路の前記作動油を第三管路に排出する弁装置と、
を備え、
前記第二管路は、前記第一管路に対して前記減圧弁のみを介して接続されており、
前記弁装置は、前記第一管路における前記作動油の圧力が第一圧力以上である場合に、前記第一管路の前記作動油を前記第三管路に排出しない状態から前記第一管路の前記作動油を前記第三管路に排出する状態に切り替わる。
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る油圧供給方法は、
第一管路に作動油を送出する作動油送出工程と、
前記第一管路から第二管路に前記作動油を供給する供給工程と、
第二管路から第三管路に前記作動油を戻す戻し工程と、
前記ポンプから前記第一管路に送出される前記作動油をアキュムレータで蓄える蓄圧工程と、
前記第一管路から前記作動油を導入して減圧し、前記第二管路に供給する減圧供給工程と、
前記第一管路の前記作動油を第三管路に排出する排出工程と、
を含み、
前記減圧供給工程では、前記第一管路から導入して減圧した前記作動油のみを前記第二管路に供給し、
前記排出工程では、前記第一管路における前記作動油の圧力が第一圧力以上である場合に前記第一管路の前記作動油を前記第三管路に排出しない状態から前記第一管路の前記作動油を前記第三管路に排出する状態に切り替える。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る油圧供給装置及び油圧供給方法によれば、接続される油圧システムに何かしらトラブルが生じても、一定期間は一定の圧力の油圧を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る油圧供給装置の油圧回路図である。
図2】弁装置の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面に基づいて、本発明の実施形態に係る油圧供給装置及び油圧供給方法について説明する。
【0011】
図1には、本実施形態に係る油圧供給装置の油圧回路図を示している。
【0012】
まず、本実施形態に係る油圧供給装置の概要を説明する。本実施形態に係る油圧供給装置は、第一管路11と、第一管路11に作動油を送出するポンプ2と、第一管路11から作動油が供給される第二管路12と、第二管路12から作動油が戻る第三管路13と、第一管路11に接続されており、ポンプ2から送出される作動油を蓄えるアキュムレータ3と、第一管路11から導入した作動油を減圧して第二管路12に供給する減圧弁4と、第一管路11の作動油を第三管路13に排出する弁装置5と、を備えている。第二管路12は、第一管路11に対して減圧弁4のみを介して接続されている。
【0013】
弁装置5は、第一管路11における作動油の圧力が第一圧力(一例として、16MPa)以上である場合に、第一管路11の作動油を第三管路13に排出しない状態から第一管路11の作動油を第三管路13に排出する状態に切り替わる。
【0014】
本実施形態に係る油圧供給装置では、第一管路11に作動油を送出する作動油送出工程と、第一管路11から第二管路12に作動油を供給する供給工程と、ポンプ2から第一管路11に送出される作動油をアキュムレータ3で蓄える蓄圧工程と、第一管路11から作動油を導入して減圧し、第二管路12に供給する減圧供給工程と、第一管路11の作動油を第三管路13に排出する排出工程と、を含み、減圧供給工程では、第一管路11から導入して減圧した作動油のみを第二管路12に供給し、排出工程では、第一管路11における作動油の圧力が第一圧力以上である場合に第一管路11の作動油を第三管路13に排出しない状態から第一管路11の作動油を第三管路13に排出する状態に切り替える油圧供給方法が実現される。
【0015】
以下、本実施形態に係る油圧供給装置及び油圧供給方法について詳述する。以下の説明では、作動油の通流方向における下流側を単に下流側と称する場合がある。例えば、第一管路11から作動油が供給される第二管路12は、第一管路11の下流側に接続された管路である。
【0016】
ポンプ2は、タンク71に貯留されている作動油を第一管路11送出する作動油送出工程を実現する供給装置である。ポンプ2は、タンク71に貯留されている作動油を導入する導入管路10と第一管路11とに接続されている。ポンプ2は導入管路10を介してタンク71から作動油を吸い上げて、第一管路11に送出する。ポンプ2は、例えば電動のモータ21によって駆動されてよい。
【0017】
第一管路11は減圧弁4に作動油を供給する管路である。第一管路11には、後述するように、アキュムレータ3及び弁装置5が接続されている。
【0018】
減圧弁4は第一管路11から供給された作動油の圧力(以下、単に油圧と称する)を減圧して第二管路12へ作動油を供給する減圧供給工程を実現する弁機構である。減圧弁4は、第一管路11の油圧を所定の制御圧力(一例として、10MPa)まで減圧して第二管路12へ作動油を供給する。減圧弁4は、いわゆるノンリーク型減圧弁であることが好ましい。
【0019】
第二管路12は、油圧供給装置に接続された油圧システムに作動油を送出する管路である。なお、油圧システムとは、母機の油圧駆動装置に作動油を供給するための、工場や母機の油圧回路のことである。
【0020】
第三管路13は、油圧システムに供給された作動油や第一管路11又は第二管路12の作動油をタンク71に戻す管路である(戻し工程の一例)。本実施形態では、一例として、第三管路13が、油圧システムに供給された作動油又は第二管路12の作動油をタンク71に戻す第一戻り管14と、第一管路11の作動油をタンク71に戻す第二戻り管15とを含んでいる場合を示している。図1に示すように、第一戻り管14と第二戻り管15とは下流側(タンク71に近い側)で合一してもよい。
【0021】
アキュムレータ3は、第一管路11の作動油の圧力エネルギーを蓄える蓄圧工程を実現する蓄圧機である。アキュムレータ3は、その容器中に気体が充填されており、その気体が充填された当該容器中に作動油を押込むことで作動油を蓄えるものであってよい。このようなアキュムレータ3では、作動油が気体を圧縮し、作動油がその押し込む力(圧力)に相当する量だけその容器の中に充填される。アキュムレータ3では、第一管路11の油圧がアキュムレータ3内の油圧よりも低下するとアキュムレータ3に蓄えられた作動油が第一管路11に放出されるようになっており、これにより、第一管路11の油圧低下を抑制する。アキュムレータ3は、第一管路11における、減圧弁4と弁装置5との間に配置される。すなわち、アキュムレータ3は弁装置5よりも下流側の第一管路11である下流側第一管路11bに接続される。
【0022】
弁装置5は、下流側第一管路11bの油圧が第一圧力以上である場合に、弁装置5よりも上流側の第一管路11である上流側第一管路11aの作動油を第三管路13に排出しない状態から上流側第一管路11aの作動油を第三管路13に排出する状態(排出工程の一例)に切り替わる弁機構である。
【0023】
図2には、弁装置5の構造の一例を示している。弁装置5は、上流側第一管路11aから作動油を供給される第一接続ポート57と、上流側第一管路11aから供給された作動油を第一管路11としての下流側第一管路11bに戻す第二接続ポート58と、上流側第一管路11aから供給された作動油を第二戻り管15に排出する第三接続ポート59と、第二接続ポート58から第一接続ポート57への作動油の逆流を防止する逆止弁51と、第一接続ポート57と第三接続ポート59とが連通する状態と連通しない状態とを切り替える切替弁52とを有する。
【0024】
逆止弁51は、例えば、ばね51bなどの弾性部材で支持された弁体51aを有する。
【0025】
逆止弁51では、逆止弁51の上流側(上流側第一管路11a、第一接続ポート57)から下流側(下流側第一管路11b、第二接続ポート58)への作動油の通流量が所定量以上(所定の差圧以上で)である場合は、弁体51aが第一接続ポート57と第二接続ポート58とを連通させる位置、すなわち、逆止弁51を開く位置に移動する。図2に基づいて説明すると、弁体51aが弁座51cから離れた状態(すなわち、逆止弁51を開く位置)となり、第一接続ポート57と第二接続ポート58とが連通するのである。
【0026】
逆止弁51の上流側から下流側への作動油の通流量が所定量未満となった場合(所定の差圧未満に低下した場合)、弁体51aは第一接続ポート57と第二接続ポート58とを連通させる流路を塞ぐ閉位置に移動して逆止弁51が閉状態となる。これにより、逆止弁51の下流側から上流側への作動油の逆流が防止される。図2では、弁体51aが第一接続ポート57と第二接続ポート58との間に配置された弁座51cに当接した状態で第一接続ポート57と第二接続ポート58とを連通させる流路を塞ぐ場合(逆止弁51が閉状態となる場合)を例示して図示している。
【0027】
逆止弁51では、第一接続ポート57から第二接続ポート58へ流れる作動油の通流量が所定量以上である場合、通流する作動油が逆止弁51を開く方向に弁体51aを付勢する付勢力が、逆止弁51を閉じる方向に弁体51aを付勢するばね51bの付勢力に抗して逆止弁51が開いた状態を維持し、第一接続ポート57と第二接続ポート58とが連通する状態を維持する。これにより、第一接続ポート57から第二接続ポート58への作動油の通流が許容される。
【0028】
逆止弁51では、第一接続ポート57から第二接続ポート58へ流れる作動油の通流量が所定量未満となった場合は、逆止弁51を閉じる方向に弁体51aを付勢するばね51bの付勢力が、逆止弁51を通流しようとする作動油が逆止弁51を開く方向に弁体51aを付勢する付勢力に抗して逆止弁51を閉じ、第一接続ポート57と第二接続ポート58とが連通しない閉状態とする。これにより、第一接続ポート57から第二接続ポート58への作動油の通流が阻止される。
【0029】
切替弁52は、通常は第一接続ポート57と第三接続ポート59とを連通させない閉じた状態(閉状態)となっており、下流側第一管路11bの油圧が上昇して第一圧力以上になると開いた状態(開状態)に切り替わり、第一接続ポート57と第三接続ポート59とを連通させる弁機構である。また、切替弁52は、開状態において、下流側第一管路11bの油圧が第一圧力より小さい第一復帰圧力(一例として、13.6MPa)以下まで低下すると、開状態から閉状態に切り替わるようになっている。なお、本実施形態では、切替弁52が開状態となり、第一接続ポート57と第三接続ポート59とが連通する状態に切り替わると、逆止弁51の上流側から下流側への作動油の通流量が所定量未満となり、逆止弁51は閉状態となる。
【0030】
切替弁52は、第一接続ポート57と第三接続ポート59とに接続されたシリンダ部52aと、シリンダ部52a内に収容されたピストン52bと、シリンダ部52aの延在方向におけるピストン52bの一端を付勢するばね52cなどの弾性部材と、シリンダ部52aにおけるピストン52bの他端の側(ばね52cから遠い側)と第一接続ポート57とを連通させる圧力伝達管路53とを有する。第一接続ポート57は、シリンダ部52aにおけるピストン52bの他端の側(ばね52cから遠い側)に接続されている。第三接続ポート59は、シリンダ部52aにおけるピストン52bの一端の側(ばね52cの側)に接続されている。すなわち、ピストン52bは、ばね52cにより第三接続ポート59の側から第一接続ポート57の側に向けて付勢されている。
【0031】
切替弁52が開かれる際の下流側第一管路11bの油圧、すなわち、第一圧力は、ばね52cのばね定数で調節することができる。
【0032】
切替弁52は、開状態において下流側第一管路11bの油圧が第一圧力未満である場合、圧力伝達管路53を介して伝達される作動油がピストン52bをばね52cの側に付勢する付勢力よりもばね52cの付勢力が大きくされている。これにより、切替弁52が開状態且つ下流側第一管路11bの油圧が第一圧力未満である場合、ピストン52bは、シリンダ部52aにおいて、第一接続ポート57又は第三接続ポート59を塞ぐ姿勢を維持し、これにより、第一接続ポート57から第三接続ポート59への作動油の通流が阻止される。
【0033】
切替弁52では、開状態において下流側第一管路11bの油圧が第一圧力以上となった場合、圧力伝達管路53を介して伝達される作動油がピストン52bをばね52cの側に付勢する付勢力がばね52cの付勢力よりも大きくなる。これにより、ピストン52bは、シリンダ部52aにおいて、第一接続ポート57と第三接続ポート59とがシリンダ部52aに連通する状態となる位置までばね52cの側に移動し、切替弁52が、開状態に切り替わる。そして、第一接続ポート57から第三接続ポート59への作動油の通流が許容され、第一管路11の作動油が第二戻り管15に排出される状態となる。
【0034】
下流側第一管路11bの油圧が第一圧力以上となって、開状態に切り替わった後、再び下流側第一管路11bの油圧が第一復帰圧力以下になると、切替弁52は、閉状態、すなわち、上流側第一管路11aの作動油を第三管路13に排出しない状態に戻る。
【0035】
以上で説明した逆止弁51と切替弁52との動作により、油圧供給装置は、以下のように、供給モードと循環モードとが自動的に切り替わるようになっている。
【0036】
弁装置5では、図1に示すように、ポンプ2の駆動を開始して最初に下流側第一管路11bの油圧が第一圧力に到達するまでの間は、上流側第一管路11aの作動油が弁装置5の下流側第一管路11bにのみ供給される供給モードとなる。
【0037】
弁装置5では、下流側第一管路11bの油圧が第一圧力以上に到達すると、上流側第一管路11aの作動油が第二戻り管15に排出される循環モードに切り替わる。また、弁装置5では、下流側第一管路11bの油圧が一旦第一圧力に到達し、その後第一復帰圧力まで低下した場合は、循環モードから供給モードに切り替わる。そして、再び下流側第一管路11bの油圧が第一圧力に到達するまでの間、上流側第一管路11aの作動油が弁装置5の下流側第一管路11bに供給される供給モードを維持する。再び下流側第一管路11bの油圧が第一圧力に到達すると、循環モードに切り替わる。以下、循環モードと供給モードとの切り替えを繰り返す。
【0038】
循環モードでは、ポンプ2から送出された作動油は低い圧力(各管路及び弁装置5の圧力損失に対応する圧力損失)でタンク71へ戻るようになる。すなわち、循環モードではポンプ2の送出圧力(吐出圧)が低下する。循環モードにおいては、逆止弁51が閉じて上流側第一管路11aと下流側第一管路11bとが切り離されており逆流が防止されている。そして、アキュムレータ3から供給される作動油により、下流側第一管路11bの油圧は一定期間保たれる。
【0039】
循環モードでは、ポンプ2の送出圧力が低下するため、ポンプ2の仕事量を減らすことができる。そのため、油圧供給装置で消費されるエネルギーを削減することができる。
【0040】
ところで、循環モードにおいて下流側第一管路11b及びアキュムレータ3の油圧のエネルギーが油圧システムで消費され、再び下流側第一管路11bの油圧が第一圧力未満の圧力である第一復帰圧力になると、ばね52cがピストン52bを押し戻して供給モードに戻る(図2参照)。循環モードではポンプ2を停止させないことで、下流側第一管路11bの油圧が低下した後、瞬時に下流側第一管路11bの油圧を上昇させることができる。
【0041】
循環モードから供給モードに戻る際の下流側第一管路11bの油圧、すなわち、第一復帰圧力は、ばね52cのばね定数で調節できるが、ばね52cとピストン52bとのヒステリシスにより、第一圧力より小さい第一復帰圧力になる(図2参照)。
【0042】
弁装置5の一連の動作、すなわち循環モードと供給モードとの切り替えは、油圧のエネルギーによって自動的に行われる。換言すると、本実施形態においては、循環モードと供給モードとの切り替えを行うためにソレノイドバルブ等を要せず、それゆえ電気配線や制御機構を要しない。
【0043】
本実施形態における油圧供給装置では、万一、接続される油圧システムに何かしらトラブルが生じても、アキュムレータ3による蓄圧と、弁装置5の動作により、少なくとも一定期間は一定の圧力の油圧を供給することができる。詳述すると、接続される油圧システムに何かしらトラブルが生じて下流側第一管路11bや第二管路12の圧力が低下しやすい状態になっても、アキュムレータ3による蓄圧と弁装置5の動作により、ポンプ2の仕事量を常に高い状態で維持することを回避することができる。またこれにより、作動油の温度上昇による不具合を回避することができる。その他、循環モードへの切り替えに代えてポンプ2のオンオフ制御のみを行う場合と比べると、頻繁にポンプ2の動作と停止とを繰り返す必要がないため、ポンプ2の寿命が延び、ポンプ2の故障を抑制することができる。また、下流側第一管路11bの圧力が所定の制御圧力よりも低下した場合の下流側第一管路11bの圧力の回復も瞬時に行えるようになる。更に、循環モードへの切り替えに代えてポンプ2のモータ21をインバータ駆動などとし、ポンプ2の出力を可変とする場合と比べても、ポンプ2の出力上昇と出力低下とを繰り返す必要がないため、下流側第一管路11bの圧力が低下した場合の下流側第一管路11bの圧力の回復を瞬時に行えるようになる。特に油圧システムに何かしらトラブルが生じた場合では、ポンプ2の出力上昇と出力低下とを頻繁に繰り返すこととなり、ポンプ2の駆動制御が下流側第一管路11bの圧力低下に追従できない場合も想定されるが、本実施形態における油圧供給装置では、下流側第一管路11bの圧力低下に容易に追従することができるのである。
【0044】
上述のごとく、第一管路11には、圧力センサ62及びリリーフ弁72が接続されてもよい。
【0045】
圧力センサ62は、例えば、下流側第一管路11bに接続された圧力スイッチであってよい。本実施形態に係る油圧供給装置では、圧力センサ62で検知される圧力に基づいて、下流側第一管路11bの油圧が適切である(例えば、第一復帰圧力以上である)か否かを判定したり、ポンプ2の動作状態を制御したりしてよい。
【0046】
例えば、圧力センサ62で検知される圧力に基づいて、モータ21の回転と停止とを制御し、これによりポンプ2の動作状態を制御してもよい。
【0047】
例えば圧力センサ62は、圧力スイッチとして、圧力センサ62で検知された下流側第一管路11bの油圧が第二圧力以上になった場合に所定の信号を送出してポンプ2のモータ21を停止させてよい(油圧検知工程の一例)。以下では、油圧供給装置において、ポンプ2のモータ21を停止させた状態を、停止モードと称する。
【0048】
停止モードにあっては、循環モードと同様に、逆止弁51が閉じて上流側第一管路11aと下流側第一管路11bとが切り離され、また、下流側第一管路11bの油圧は、アキュムレータ3により一定期間保たれる。
【0049】
圧力センサ62は、モータ21を停止させて油圧供給装置を循環モードから停止モードに切り替えた後、下流側第一管路11bの油圧が第二圧力未満、例えば、第二圧力より小さい第二復帰圧力(一例として、10.5MPa)まで低下した場合、所定の信号を送出してポンプ2のモータ21を駆動させ、油圧供給装置を循環モードに戻してもよい。
【0050】
このように油圧供給装置が圧力スイッチとしての圧力センサ62を更に備えることで、油圧供給装置を、供給モードと循環モードと停止モードとに切り替え可能とすることができる。なお、油圧供給装置を、供給モードと循環モードと停止モードとに切り替え可能とする場合は、第二圧力は第一圧力未満とするとよい。第二復帰圧力は、第一復帰圧力未満としてもよい。
【0051】
上記のように第一圧力、第一復帰圧力、第二圧力及び第二復帰圧力を設定することで、循環モードよりも停止モードの使用を優先したい場合は、圧力センサ62を動作させて、油圧供給装置を、供給モードと停止モードとを切り替えて動作する第一動作モードとすることができる。また、油圧システムに何かしらトラブルが生じた場合など、停止モードよりも循環モードの使用を優先したい場合は、第一動作モードから、圧力センサ62を停止させて、油圧供給装置を、供給モードと循環モードとを切り替えて動作する第二動作モードに切り替えることができる。
【0052】
第二圧力を第一圧力未満としておけば、第一動作モードで動作させたい場合に、供給モードから停止モードに切り替わる前に供給モードから循環モードに切り替わってしまうことを回避することができる。
【0053】
停止モードでは、ポンプ2が停止するため、循環モードである場合よりも更に油圧供給装置で消費されるエネルギーを低減することができる。しかし、油圧供給装置が停止モードを用いる第一動作モードでは、例えば油圧システムに何かしらトラブルが生じて下流側第一管路11bや第二管路12の圧力が低下しやすい状態において頻繁にポンプ2の動作と停止とを繰り返す必要が生じてしまうし、下流側第一管路11bの圧力がトラブルによって所定の制御圧力よりも低下した場合における下流側第一管路11bの圧力の回復にも遅延が生じる場合がある。そこで、油圧システムに何かしらトラブルが生じて下流側第一管路11bや第二管路12の圧力が低下しやすい状態にあっては、油圧供給装置を第二動作モードとすることで、ポンプ2の仕事量を常に高い状態で維持することを回避し、これにより、作動油の温度上昇による不具合を回避することができる。また、下流側第一管路11bの圧力が所定の制御圧力よりも低下した場合の下流側第一管路11bの圧力の回復も瞬時に行えるようになる。すなわち、第二動作モードは第一動作モードである場合と比べて、接続される油圧システムに何かしらトラブルが生じても、よりも長い期間、より安定して一定の圧力の油圧を供給することができるようになるのである。
【0054】
このように、第二動作モードは、第一動作モードよりも、油圧システムに何かしらトラブルが生じた場合に堅牢であるという特性を有する。しかし、第二動作モードの使用は、油圧システムに何かしらトラブルが生じた場合に限られず、油圧システムの特性(例えば、作動油の消費パターン)に応じて使い分けてよい。
【0055】
リリーフ弁72は、下流側第一管路11bから第二戻り管15に作動油を排出する弁機構である。リリーフ弁72は、通常は閉じており、下流側第一管路11bから第二戻り管15に作動油を排出しない状態を維持している。リリーフ弁72は、下流側第一管路11bの油圧が第一圧力よりも高い監視圧力(一例として18MPa)に到達した場合に開いて、下流側第一管路11bから第二戻り管15に作動油を排出する。このリリーフ弁72の動作により、下流側第一管路11bの油圧が監視圧力を超えて故障の原因となるような不具合を回避することができる。
【0056】
以下では油圧供給装置のその他の構成について説明する。油圧供給装置は、図1に示すように、後述するその他の機器類を備えてよい。
【0057】
導入管路10には、フィルタ10aを設けてよい。フィルタ10aにより、タンク71から導入される作動油の異物が除去される。
【0058】
第一管路11には、フィルタ11cを設けてよい。フィルタ11cにより、第一管路11を通流する作動油の異物が除去される。フィルタ11cは、弁装置5とアキュムレータ3との間に配置するとよい。
【0059】
第一戻り管14には、フィルタ14aと、フィルタ14aをバイパスする逆止弁14bとが設けられてよい。逆止弁14bは、上流側と下流側とに所定の差圧が生じた場合に開くものであってよい。フィルタ14aにより、第一戻り管14を通流する作動油の異物が除去される。仮にフィルタ14aが目詰まりした場合には、逆止弁14bが開いて第一戻り管14における作動油の通流を維持することができる。また、第一戻り管14には、圧力センサ61を更に設けてもよい。圧力センサ61は、例えば、第一戻り管14の管内と外部との差圧に基づいて動作する差圧スイッチであってよい。例えば、圧力センサ61をフィルタ14aよりも上流側に設けた場合、圧力センサ61で検知される差圧に基づいて、フィルタ14aが目詰まりしているか否かを判定することができる。圧力センサ61が差圧スイッチである場合、例えば、圧力センサ61で検知される差圧が所定の閾値を超えた場合に、差圧スイッチとしての圧力センサ61から送出される信号に基づいて、油圧供給装置が何かしらの警告表示を行うようにすることができる。
【0060】
下流側第一管路11aと第二戻り管15とは、ストップバルブ81を介して接続されてよい。ストップバルブ64は、例えばメンテナンス時や、異常時に開かれる。
【0061】
例えば第二管路12に圧力計12aを設けて減圧弁4の動作が正常であるか否かや、第一管路11から供給される作動油の油圧が適切である(本実施形態では第二復帰圧力以上である)か否かを監視できるようにしてもよい。
【0062】
第二管路12と第一戻り管14とは、ストップバルブ82を介して接続されてよい。ストップバルブ82は、例えばメンテナンス時や、異常時に開かれる。
【0063】
ポンプ2やモータ21、もしくはタンク71に貯留された作動油を冷却する冷却装置91を設けてもよい。冷却装置91の一例は、空冷用のファンである。図1では、ポンプ2、モータ21及びタンク71が収容室9内に収容されている場合を例示しており、冷却装置91であるファンから収容室9内に冷却風が送風される場合を示している。この場合、収容室9には圧力スイッチ92,93を設けてよい。例えば、収容室9の温度があらかじめ定めた冷却開始温度以上に上昇した場合に、圧力スイッチ92が冷却装置91の動作を開始させてよい。また、収容室9の温度があらかじめ定めた冷却停止温度以下に下降した場合に、圧力スイッチ93が冷却装置91の動作を停止させてよい。
【0064】
以上のようにして、油圧供給装置及び油圧供給方法を提供することができる。
【0065】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、油圧供給装置及び油圧供給方法に適用できる。
【符号の説明】
【0067】
10 :導入管路
10a :フィルタ
11 :第一管路
11a :上流側第一管路
11b :下流側第一管路
11c :フィルタ
12 :第二管路
13 :第三管路
14 :第一戻り管
14a :フィルタ
14b :逆止弁
15 :第二戻り管
2 :ポンプ
21 :モータ
3 :アキュムレータ
4 :減圧弁
5 :弁装置
51 :逆止弁
51a :弁体
51b :ばね
51c :弁座
52 :切替弁
52a :シリンダ部
52b :ピストン
52c :ばね
53 :圧力伝達管路
57 :第一接続ポート
58 :第二接続ポート
59 :第三接続ポート
61 :圧力センサ
62 :圧力センサ
64 :ストップバルブ
71 :タンク
72 :リリーフ弁
81 :ストップバルブ
82 :ストップバルブ
9 :収容室
91 :冷却装置
92 :圧力スイッチ
93 :圧力スイッチ
図1
図2