(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027042
(43)【公開日】2024-02-29
(54)【発明の名称】環境価値取引対価算出装置、環境価値取引対価算出方法および環境価値取引対価算出プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20240221BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129746
(22)【出願日】2022-08-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】518155155
【氏名又は名称】デジタルグリッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 祐介
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 剛久
(72)【発明者】
【氏名】小菅 賢太朗
(72)【発明者】
【氏名】泉谷 健太
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】発電事業者が安定した希望売電単価で電力および環境価値を売却可能とすると共に環境価値購入者が発電事業者に支払う環境価値取引対価の変動幅を抑制する、環境価値取引対価算出装置、環境価値取引対価算出方法および環境価値取引対価算出プログラムを提供すること。
【解決手段】非FIT非化石証書を売却したい発電事業者から非FIT非化石証書の購入者である環境価値購入者が発電事業者に支払う環境価値取引対価としての環境価値購入者支払金額を算出する環境価値取引対価算出装置であって、環境価値購入者支払金額算出手段が、少なくとも、売電単価受付手段が受け付けた希望売電単価、FIP制度における供給促進交付金の単価または額、設置場所受付手段が受け付けた設置場所におけるエリアプライス、環境価値取引対価の支払いのための一時金の額、発電量取得手段の取得した発電量に基づいて、環境価値購入者支払金額を算出すると共に一時金の額を変化させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギー発電設備により発電された電力由来の環境価値である非FIT非化石証書を売却したい発電事業者から前記非FIT非化石証書の購入者である環境価値購入者が前記発電事業者に支払う環境価値取引対価としての環境価値購入者支払金額を算出する環境価値取引対価算出装置であって、
前記発電事業者の希望する売電単価であると共に前記発電事業者が受け取る発電事業者受取単価である定額の希望売電単価の入力を受け付ける売電単価受付手段と、
前記再生可能エネルギー発電設備の設置場所の入力を受け付ける設置場所受付手段と、
前記再生可能エネルギー発電設備の発電量を計測する電力メーターが計測した所定期間の発電量を取得する発電量取得手段と、
日本卸電力取引所の提供する卸電力取引所システムからエリアプライスを取得するエリアプライス取得手段と、
前記環境価値購入者支払金額を算出する環境価値購入者支払金額算出手段とを備え、
前記環境価値購入者支払金額算出手段が、少なくとも、前記売電単価受付手段が受け付けた前記希望売電単価、FIP制度における供給促進交付金の単価または額、前記設置場所受付手段が受け付けた設置場所における前記エリアプライス、前記環境価値取引対価の支払いのための一時金の額、前記発電量取得手段の取得した発電量に基づいて、前記環境価値購入者支払金額を算出すると共に前記一時金の額を変化させることを特徴とする環境価値取引対価算出装置。
【請求項2】
前記売電単価受付手段が受け付けた前記希望売電単価、前記供給促進交付金の単価または額、前記環境価値購入者支払金額を算出するための算出手数料、前記設置場所受付手段が受け付けた設置場所における前記エリアプライス、前記環境価値取引対価の支払いのための一時金の額、前記発電量取得手段の取得した発電量に基づいて前記環境価値購入者支払金額算出手段の算出した前記環境価値購入者支払金額が0円未満であった場合、前記環境価値購入者支払金額算出手段が前記環境価値購入者支払金額を0円とすると共に前記一時金の額を変化させることを特徴とする請求項1に記載の環境価値取引対価算出装置。
【請求項3】
前記売電単価受付手段が受け付けた前記希望売電単価、前記供給促進交付金の単価または額、前記設置場所受付手段が受け付けた設置場所における前記エリアプライス、前記環境価値取引対価の支払いのための一時金の額、前記発電量取得手段の取得した発電量に基づいて前記環境価値購入者支払金額算出手段の算出した前記環境価値購入者支払金額が0円未満であった場合に、前記環境価値購入者支払金額算出手段が前記環境価値購入者支払金額を0円とすると共に一時金の額を変化させることを特徴とする請求項1に記載の環境価値取引対価算出装置。
【請求項4】
前記供給促進交付金の単価を算出する供給促進交付金算出手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の環境価値取引対価算出装置。
【請求項5】
売電単価受付手段と設置場所受付手段と発電量取得手段とエリアプライス取得手段と環境価値購入者支払金額算出手段とを備えた環境価値取引対価算出装置により再生可能エネルギー発電設備により発電された電力由来の環境価値である非FIT非化石証書を売却したい発電事業者から前記非FIT非化石証書の購入者である環境価値購入者が前記発電事業者に支払う環境価値取引対価としての環境価値購入者支払金額を算出する環境価値取引対価算出方法であって、
前記売電単価受付手段が前記発電事業者の希望する売電単価であると共に前記発電事業者が受け取る発電事業者受取単価である定額の希望売電単価の入力を受け付ける希望売電単価受付ステップと、
前記設置場所受付手段が前記再生可能エネルギー発電設備の設置場所の入力を受け付ける発電設備設置場所受付ステップと、
前記発電量取得手段が前記再生可能エネルギー発電設備の発電量を計測する電力メーターの計測した所定期間の発電量を取得する発電量取得ステップと、
前記エリアプライス取得手段が日本卸電力取引所の提供する卸電力取引所システムからエリアプライスを取得するエリアプライス取得ステップと、
前記環境価値購入者支払金額算出手段が、少なくとも、前記希望売電単価受付ステップで前記売電単価受付手段が受け付けた前記希望売電単価、FIP制度における供給促進交付金の単価または額、前記発電設備設置場所受付ステップで前記設置場所受付手段が受け付けた設置場所における前記エリアプライス、前記環境価値取引対価の支払いのための一時金の額、前記発電量取得手段が取得した発電量に基づいて、前記環境価値購入者支払金額を算出すると共に前記一時金の額を変化させる環境価値購入者支払金額算出ステップとを備えていることを特徴とする環境価値取引対価算出方法。
【請求項6】
再生可能エネルギー発電設備により発電された電力由来の環境価値である非FIT非化石証書を売却したい発電事業者から前記非FIT非化石証書の購入者である環境価値購入者が前記発電事業者に支払う環境価値取引対価としての環境価値購入者支払金額を算出する環境価値取引対価算出プログラムであって、
請求項5に記載の環境価値取引対価算出方法の各ステップを処理装置により実行することを特徴とする環境価値取引対価算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境価値取引対価算出装置、環境価値取引対価算出方法および環境価値取引対価算出プログラムに関し、特に令和4年4月1日より施行された「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」におけるFIP(Feed-in Premium)制度を活用した環境価値取引対価算出装置、環境価値取引対価算出方法および環境価値取引対価算出プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
PPA(Power Purchase Agreement)とは、小売電気事業者または需要家と発電事業者との間で締結する電力を売買する契約のことである。
そして、企業や自治体などの需要家が発電事業者から自然エネルギー(再生可能エネルギー)の電力を長期(通常15年以上)に購入する契約は、コーポレートPPAと呼ばれている。
【0003】
このコーポレートPPAには、需要家の敷地内に発電事業者が発電設備を設置して、この発電設備で発電した電力を現地(オンサイト)で供給するオンサイトPPAと、需要家の事業拠点から離れた場所にある発電設備から送配電ネットワークを経由して需要家の事業拠点に電力の供給するオフサイトPPAとが存在する。
【0004】
そして、このオフサイトPPAには、発電事業者が電力および環境価値(CO2を排出しないなどの効果)を小売電気事業者に対して固定価格で販売し、その電力および環境価値を、小売電気事業者が需要家に固定価格で販売するフィジカルPPAと、発電事業者が電力を卸電力市場で売却し、固定価格の環境価値を直接または小売電気事業者を経由して需要家に販売し、小売電気事業者が電力のみまたは電力と環境価値をセットで需要家に販売するバーチャルPPA(以下、「第1のバーチャルPPA形態」という。)とが存在する(例えば、非特許文献1、非特許文献2)。
【0005】
バーチャルPPAでは、バーチャルPPAの対象になる電力を発電事業者が全量を卸電力市場に売却するが、この時に発電事業者が得られる電力の売却価格は卸電力市場における市場価格で決まる。
しかし、発電事業者が発電設備を開発するためには金融機関等からの融資(資金調達)がほぼ必須であるところ、上述した「第1のバーチャルPPA形態」では、卸電力市場における電力の市場価格に連動して発電事業者の収入が増減し、発電事業者のキャッシュフローが安定しないため、金融機関等から融資を受けることが極めて困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「コーポレートPPA実践ガイドブック」(自然エネルギー財団);https://www.renewable-ei.org/pdfdownload/activities/REI_GuidebookCorpPPA.pdf
【非特許文献2】「日本のコーポレートPPA」(自然エネルギー財団);https://www.renewable-ei.org/pdfdownload/activities/REI_JPcorpPPA2021.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、発電事業者の収入を安定させるために、「発電事業者と需要者とのあいだで合意した電力と環境価値との合計額である固定価格と、卸電力市場における電力の実際の市場価格との差額を、実際の環境価値の代金として需要家が精算する」というバーチャルPPA(以下、「第2のバーチャルPPA形態」という。)が考えられるが、このバーチャルPPAは次のような問題点がある。
【0008】
(1)需要家の問題
卸電力市場における電力の市場価格が大きく下落した際に、需要家の負担する環境価値の代金が極めて高額(たとえば、固定価格を10数円/kWhで設定した場合、市場価格が0.01円/kWhとなると、通常1円未満/kWhで購入できる環境価値の代金が10数円/kWhになる)になってしまう。
したがって、「第2のバーチャルPPA形態」は、市場価格の変動リスクを甘受することになるため、需要家にとっては受け入れがたい契約となっている。
【0009】
(2)発電事業者の問題
発電事業者としては、「第2のバーチャルPPA形態」を採用することで、「第1のバーチャルPPA形態」における、収入が固定化できないという問題は解決するとも考えられる。
しかし、環境価値の代金について、市場価格を参照して決定するというスキームは商品先物取引法の店頭商品デリバティブ対象取引となり、特定店頭商品デリバティブ取引業者の届け出が必要になるなど、手続きが極めて煩雑となる。
加えて、上記需要家の問題で記載したように、発電事業者としては金融機関等から融資を受けるために、特定の需要家と、15年以上の長期間を契約期間とする上記の契約を締結する必要があるが、市場価格の変動リスクを甘受して契約を締結する需要家は存在しないため、上述した「第2のバーチャルPPA形態」は現実的ではない。
【0010】
そこで、2022年度4月より開始されたFIP制度を活用すると、発電事業者が市場価格の変動リスクを軽減できるため、需要家が環境価値価格を固定化でき、「発電事業者は卸電力市場における市場価格と、FIP制度における供給促進交付金と、定額の環境価値代金とを受け取り、需要家は環境価値を入手する」というバーチャルPPA(以下、「第3のバーチャルPPA形態」という。)が実現する可能性がある。
【0011】
ここで、FIP制度は、固定価格買取制度(FIT制度)の後継となる制度であり、発電事業者が卸電力取引市場や相対取引で発電した再生可能エネルギーを市場に供給した場合に、基準価格と参照価格(市場取引などによって発電事業者が期待できる収入分のことであり、卸電力取引市場価格等と連動し、1カ月単位で見直される価格)との差額をプレミアム(供給促進交付金)として交付する制度となっている。
なお、このFIP制度は、令和4年4月1日より施行される「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(旧:電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)(平成二十三年法律第百八号)」(以下、「再エネ促進法」という。)で詳細に規定されている。
そして、上記の「基準価格」の定義、「参照価格」に相当する額の算出方法、供給促進交付金の額の算出方法については、再エネ促進法および「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法施行規則(旧:電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則)(平成二十四年経済産業省令第四十六号)(以下、「再エネ促進法施行規則」という。)」で詳細に定められている。
【0012】
したがって、このFIP制度を活用することで、卸電力市場における市場価格が低い場合は、発電事業者の受け取れるプレミアムが高くなり、発電事業者の得る収入が一定程度確保されることが期待できるため、上述した「第3のバーチャルPPA形態」があり得る。
【0013】
しかし、FIP制度によると、日々変化する卸電力市場における市場価格と1ヶ月単位で見直されるFIP制度における参照価格とが月次ベースでは一致しないため、発電事業者の受け取る総額(市場価格とプレミアムと環境価値の代金との合計額)が、発電事業者の希望する価格に満たない虞がある。
すなわち、FIP制度を活用した「第3のバーチャルPPA形態」であっても、発電事業者の収入が安定しない可能性がある。
【0014】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、発電事業者が安定した希望売電単価で電力および環境価値を売却可能とすると共に環境価値購入者が発電事業者に支払う環境価値取引対価の変動幅を抑制する、環境価値取引対価算出装置、環境価値取引対価算出方法および環境価値取引対価算出プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に係る発明は、再生可能エネルギー発電設備により発電された電力由来の環境価値である非FIT非化石証書を売却したい発電事業者から前記非FIT非化石証書の購入者である環境価値購入者が前記発電事業者に支払う環境価値取引対価としての環境価値購入者支払金額を算出する環境価値取引対価算出装置であって、前記発電事業者の希望する売電単価であると共に前記発電事業者が受け取る発電事業者受取単価である定額の希望売電単価の入力を受け付ける売電単価受付手段と、前記再生可能エネルギー発電設備の設置場所の入力を受け付ける設置場所受付手段と、前記再生可能エネルギー発電設備の発電量を計測する電力メーターが計測した所定期間の発電量を取得する発電量取得手段と、日本卸電力取引所の提供する卸電力取引所システムからエリアプライスを取得するエリアプライス取得手段と、前記環境価値購入者支払金額を算出する環境価値購入者支払金額算出手段とを備え、前記環境価値購入者支払金額算出手段が、少なくとも、前記売電単価受付手段が受け付けた前記希望売電単価、FIP制度における供給促進交付金の単価または額、前記設置場所受付手段が受け付けた設置場所における前記エリアプライス、前記環境価値取引対価の支払いのための一時金の額、前記発電量取得手段の取得した発電量に基づいて、前記環境価値購入者支払金額を算出すると共に前記一時金の額を変化させることにより、前述した課題を解決するものである。
【0016】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載された環境価値取引対価算出装置の構成に加えて、前記売電単価受付手段が受け付けた前記希望売電単価、前記供給促進交付金の単価または額、前記環境価値購入者支払金額を算出するための算出手数料、前記設置場所受付手段が受け付けた設置場所における前記エリアプライス、前記環境価値取引対価の支払いのための一時金の額、前記発電量取得手段の取得した発電量に基づいて前記環境価値購入者支払金額算出手段の算出した前記環境価値購入者支払金額が0円未満であった場合、前記環境価値購入者支払金額算出手段が前記環境価値購入者支払金額を0円とすると共に前記一時金の額を変化させることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0017】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載された環境価値取引対価算出装置の構成に加えて、前記売電単価受付手段が受け付けた前記希望売電単価、前記供給促進交付金の単価または額、前記設置場所受付手段が受け付けた設置場所における前記エリアプライス、前記環境価値取引対価の支払いのための一時金の額、前記発電量取得手段の取得した発電量に基づいて前記環境価値購入者支払金額算出手段の算出した前記環境価値購入者支払金額が0円未満であった場合に、前記環境価値購入者支払金額算出手段が前記環境価値購入者支払金額を0円とすると共に一時金の額を変化させることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0018】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載された環境価値取引対価算出装置の構成に加えて、前記供給促進交付金の単価を算出する供給促進交付金算出手段を備えていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0019】
請求項5に係る発明は、売電単価受付手段と設置場所受付手段と発電量取得手段とエリアプライス取得手段と環境価値購入者支払金額算出手段とを備えた環境価値取引対価算出装置により再生可能エネルギー発電設備により発電された電力由来の環境価値である非FIT非化石証書を売却したい発電事業者から前記非FIT非化石証書の購入者である環境価値購入者が前記発電事業者に支払う環境価値取引対価としての環境価値購入者支払金額を算出する環境価値取引対価算出方法であって、前記売電単価受付手段が前記発電事業者の希望する売電単価であると共に前記発電事業者が受け取る発電事業者受取単価である定額の希望売電単価の入力を受け付ける希望売電単価受付ステップと、前記設置場所受付手段が前記再生可能エネルギー発電設備の設置場所の入力を受け付ける発電設備設置場所受付ステップと、前記発電量取得手段が前記再生可能エネルギー発電設備の発電量を計測する電力メーターの計測した所定期間の発電量を取得する発電量取得ステップと、前記エリアプライス取得手段が日本卸電力取引所の提供する卸電力取引所システムからエリアプライスを取得するエリアプライス取得ステップと、前記環境価値購入者支払金額算出手段が、少なくとも、前記希望売電単価受付ステップで前記売電単価受付手段が受け付けた前記希望売電単価、FIP制度における供給促進交付金の単価または額、前記発電設備設置場所受付ステップで前記設置場所受付手段が受け付けた設置場所における前記エリアプライス、前記環境価値取引対価の支払いのための一時金の額、前記発電量取得手段が取得した発電量に基づいて、前記環境価値購入者支払金額を算出すると共に前記一時金の額を変化させる環境価値購入者支払金額算出ステップとを備えていることにより、前述した課題を解決するものである。
【0020】
請求項6に係る発明は、再生可能エネルギー発電設備により発電された電力由来の環境価値である非FIT非化石証書を売却したい発電事業者から前記非FIT非化石証書の購入者である環境価値購入者が前記発電事業者に支払う環境価値取引対価としての環境価値購入者支払金額を算出する環境価値取引対価算出プログラムであって、請求項5に記載の環境価値取引対価算出方法の各ステップを処理装置により実行することにより、前述した課題を解決するものである。
【0021】
ここで、本発明における「発電事業者」とは、受電地点特定番号により特定される電気の発電地点を1つ以上管轄している者であり、受電地点特定番号が設定されている発電設備を保有する者(電力会社やガス会社等の電気事業法上の発電事業者、発電設備を保有して当該発電設備により発電した電力の販売を希望する発電設備保有者)を意味する。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る発明の環境価値取引対価算出装置によれば、発電事業者の希望する売電単価であると共に発電事業者が受け取る発電事業者受取単価である定額の希望売電単価の入力を受け付ける売電単価受付手段を備えていることにより、発電事業者へ支払われる金額と希望売電単価と一致するため、発電事業者が確実に希望売電単価で電力および環境価値を売却することができる。
また、環境価値購入者支払金額算出手段が、少なくとも、売電単価受付手段が受け付けた希望売電単価、FIP制度における供給促進交付金の単価または額、設置場所受付手段が受け付けた設置場所におけるエリアプライス、環境価値取引対価の支払いのための一時金の額、発電量取得手段の取得した発電量に基づいて、環境価値購入者支払金額を算出すると共に一時金の額を変化させることにより、環境価値取引対価としての環境価値購入者支払金額が、少なくとも、希望売電単価、エリアプライスおよび設置場所、供給促進交付金の単価または額に基づいて算出されるため、エリアプライスが高価になった際に環境価値取引対価としての環境価値購入者支払金額を低額にすると共に一時金の額を増加させ、エリアプライスが安価になった際には増加した一時金を切り崩して充当して環境価値取引対価としての環境価値購入者支払金額を低額に抑えることができる。
すなわち、発電事業者が安定した希望売電単価で電力および環境価値を売却可能とすると共に環境価値購入者が発電事業者に支払う環境価値取引対価の変動幅を抑制することができる。
【0023】
上述した「第2のバーチャルPPA形態」は、卸電力市場における電力の市場価格が高騰し固定価格を超えた場合、発電事業者は環境価値購入者に環境価値を販売したにもかかわらず、環境価値購入者に対して固定価格と市場価格との差分を支払わなければならないことになる。
このような精算は、商慣習になじまないだけでなく、純額決済となり、デリバティブとして、経理処理も煩雑になる。
そこで、請求項2に係る発明の環境価値取引対価算出装置によれば、請求項1に係る発明の環境価値取引対価算出装置が奏する効果に加えて、売電単価受付手段が受け付けた希望売電単価、供給促進交付金の単価または額、環境価値購入者支払金額を算出するための算出手数料、設置場所受付手段が受け付けた設置場所におけるエリアプライス、環境価値取引対価の支払いのための一時金の額、発電量取得手段の取得した発電量に基づいて環境価値購入者支払金額算出手段の算出した環境価値購入者支払金額が0円未満であった場合、環境価値購入者支払金額算出手段が環境価値購入者支払金額を0円とすると共に一時金の額を変化させることにより、希望売電単価、エリアプライス、算出手数料、供給促進交付金の単価または額などが如何なる額であっても、環境価値購入者支払金額が0円未満にならないため、会計上複雑になる純額決済を回避することができる。
また、供給促進交付金を環境価値購入者支払金額の算出に組み込むことで、FIP制度における参照価格と市場価格とが相殺されるため、環境価値購入者支払金額が市場価格を参照していないこととなり、店頭商品デリバティブ取引を規制する商品先物取引法が適用外となる。
【0024】
あるいは、請求項3に係る発明の環境価値取引対価算出装置によれば、請求項1に係る発明の環境価値取引対価算出装置が奏する効果に加えて、環境価値購入者支払金額算出手段が、売電単価受付手段が受け付けた希望売電単価、供給促進交付金の単価または額、設置場所受付手段が受け付けた設置場所におけるエリアプライス、環境価値取引対価の支払いのための一時金の額、発電量取得手段の取得した発電量に基づいて環境価値購入者支払金額算出手段の算出した環境価値購入者支払金額が0円未満であった場合に、環境価値購入者支払金額算出手段が環境価値購入者支払金額を0円とすると共に一時金の額を変化させることにより、希望売電単価、エリアプライス、供給促進交付金の単価または額などが如何なる額であっても、環境価値購入者支払金額が0円未満にならないため、会計上複雑になる純額決済を回避することができる。
また、供給促進交付金を環境価値購入者支払金額の算出に組み込むことで、FIP制度における参照価格と市場価格とが相殺されるため、環境価値購入者支払金額が市場価格を参照していないこととなり、店頭商品デリバティブ取引を規制する商品先物取引法が適用外となる。
【0025】
請求項4に係る発明の環境価値取引対価算出装置によれば、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に係る発明の環境価値取引対価算出装置が奏する効果に加えて、供給促進交付金の単価を算出する供給促進交付金算出手段を備えていることにより、電力広域的運営推進機関から供給促進交付金の単価または額を通知されるよりも早く供給促進交付金の額を計算するため、電力広域的運営推進機関による処理を待たずに調整金額や環境価値購入者支払金額を算出し、発電事業者および環境価値購入者が早期に決済をすることができる。
【0026】
請求項5に係る発明の環境価値取引対価算出方法によれば、売電単価受付手段が発電事業者の希望する売電単価であると共に発電事業者が受け取る発電事業者受取単価である定額の希望売電単価の入力を受け付ける希望売電単価受付ステップを備えていることにより、発電事業者へ支払われる金額と希望売電単価と一致するため、発電事業者が確実に希望売電単価で電力および環境価値を売却することができる。
環境価値購入者支払金額算出手段が、少なくとも、希望売電単価受付ステップで売電単価受付手段が受け付けた希望売電単価、FIP制度における供給促進交付金の単価または額、発電設備設置場所受付ステップで設置場所受付手段が受け付けた設置場所におけるエリアプライス、環境価値取引対価の支払いのための一時金の額、発電量取得手段が取得した発電量に基づいて、環境価値購入者支払金額を算出すると共に一時金の額を変化させる環境価値購入者支払金額算出ステップを備えていることにより、環境価値取引対価としての環境価値購入者支払金額が、少なくとも、希望売電単価、エリアプライスおよび設置場所、供給促進交付金の単価または額に基づいて算出されるため、エリアプライスが高価になった際に環境価値取引対価としての環境価値購入者支払金額を低額にすると共に一時金の額を増加させ、エリアプライスが安価になった際には増加した一時金を切り崩して充当して環境価値取引対価としての環境価値購入者支払金額を低額に抑えることができる。
すなわち、発電事業者が安定した希望売電単価で電力および環境価値を売却可能とすると共に環境価値購入者が発電事業者に支払う環境価値取引対価の変動幅を抑制することができる。
【0027】
請求項6に係る発明の環境価値取引対価算出プログラムによれば、発電事業者が安定した希望売電単価で電力および環境価値を売却可能とすると共に環境価値購入者が発電事業者に支払う環境価値取引対価の変動幅を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1A】発電事業者を中心とした入出金の流れを示す図。
【
図1B】本発明のコンセプトに基づく入出金の流れを示す図。
【
図2】本発明の実施例である環境価値取引対価算出装置が接続されるネットワーク構成図。
【
図3】
図2に示す環境価値取引対価算出装置の装置構成図。
【
図4A】本発明の実施例である環境価値取引対価算出方法における初期設定の手順を示すフローチャート。
【
図4B】本発明の実施例である環境価値取引対価算出方法における定常作業の手順を示すフローチャート。
【
図4C】本発明の実施例である環境価値取引対価算出方法における環境価値購入者支払金額の算出の手順を示すフローチャート。
【
図5】
図4Cに示す需要家支払金額算出ステップを示すフローチャート。
【
図6】
図4A乃至
図5に示すフローチャートにおけるデータ授受を説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の環境価値取引対価算出装置は、再生可能エネルギー発電設備により発電された電力由来の環境価値である非FIT非化石証書を売却したい発電事業者から非FIT非化石証書の購入者である環境価値購入者が発電事業者に支払う環境価値取引対価としての環境価値購入者支払金額を算出する環境価値取引対価算出装置であって、発電事業者の希望する売電単価であると共に発電事業者が受け取る発電事業者受取単価である定額の希望売電単価の入力を受け付ける売電単価受付手段と、再生可能エネルギー発電設備の設置場所の入力を受け付ける設置場所受付手段と、再生可能エネルギー発電設備の発電量を計測する電力メーターが計測した所定期間の発電量を取得する発電量取得手段と、日本卸電力取引所の提供する卸電力取引所システムからエリアプライスを取得するエリアプライス取得手段と、環境価値購入者支払金額を算出する環境価値購入者支払金額算出手段とを備え、環境価値購入者支払金額算出手段が、少なくとも、売電単価受付手段が受け付けた希望売電単価、FIP制度における供給促進交付金の単価または額、設置場所受付手段が受け付けた設置場所におけるエリアプライス、環境価値取引対価の支払いのための一時金の額、発電量取得手段の取得した発電量に基づいて、環境価値購入者支払金額を算出すると共に一時金の額を変化させ、発電事業者が安定した希望売電単価で電力および環境価値を売却可能とすると共に環境価値購入者が発電事業者に支払う環境価値取引対価の変動幅を抑制するものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0030】
また、本発明の環境価値取引対価算出方法は、売電単価受付手段と設置場所受付手段と発電量取得手段とエリアプライス取得手段と環境価値購入者支払金額算出手段とを備えた環境価値取引対価算出装置により再生可能エネルギー発電設備により発電された電力由来の環境価値である非FIT非化石証書を売却したい発電事業者から非FIT非化石証書の購入者である環境価値購入者が発電事業者に支払う環境価値取引対価としての環境価値購入者支払金額を算出する環境価値取引対価算出方法であって、売電単価受付手段が発電事業者の希望する売電単価であると共に発電事業者が受け取る発電事業者受取単価である定額の希望売電単価の入力を受け付ける希望売電単価受付ステップと、設置場所受付手段が再生可能エネルギー発電設備の設置場所の入力を受け付ける発電設備設置場所受付ステップと、発電量取得手段が再生可能エネルギー発電設備の発電量を計測する電力メーターの計測した所定期間の発電量を取得する発電量取得ステップと、エリアプライス取得手段が日本卸電力取引所の提供する卸電力取引所システムからエリアプライスを取得するエリアプライス取得ステップと、環境価値購入者支払金額算出手段が、少なくとも、希望売電単価受付ステップで売電単価受付手段が受け付けた希望売電単価、FIP制度における供給促進交付金の単価または額、発電設備設置場所受付ステップで設置場所受付手段が受け付けた設置場所におけるエリアプライス、環境価値取引対価の支払いのための一時金の額、発電量取得手段の取得した発電量に基づいて、環境価値購入者支払金額を算出すると共に一時金の額を変化させる環境価値購入者支払金額算出ステップとを備え、発電事業者が安定した希望売電単価で電力および環境価値を売却可能とすると共に環境価値購入者が発電事業者に支払う環境価値取引対価の変動幅を抑制するものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0031】
また、本発明の環境価値取引対価算出プログラムは、再生可能エネルギー発電設備により発電された電力由来の環境価値である非FIT非化石証書を売却したい発電事業者から非FIT非化石証書の購入者である環境価値購入者が発電事業者に支払う環境価値取引対価としての環境価値購入者支払金額を算出する環境価値取引対価算出プログラムであって、上記の環境価値取引対価算出方法の各ステップを処理装置により実行し発電事業者が安定した希望売電単価で電力および環境価値を売却可能とすると共に環境価値購入者が発電事業者に支払う環境価値取引対価の変動幅を抑制するものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【実施例0032】
以下、
図1A乃至
図6に基づいて、本発明の一実施例である環境価値取引対価算出装置、環境価値取引対価算出方法および環境価値取引対価算出プログラムについて説明する。
【0033】
<1.日本卸電力取引所および電力広域的運営推進機関について>
はじめに、FIP制度において重要な役割を果たす日本卸電力取引所および電力広域的運営推進機関について説明する。
【0034】
<1.1.日本卸電力取引所について>
日本卸電力取引所(JEPX)は、電力の現物取引および先渡取引などを仲介する取引所である。
そして、日本卸電力取引所は、現物電気の売却先を探している事業者と電気の需要を満たすために電気を調達したい事業者の間で、翌日渡しの電気の売買を行う一日前市場(スポット市場)や実需給の1時間前まで調整的な取引ができる当日市場(時間前市場)などを開設している。
【0035】
<1.1.1.一日前市場>
電力小売の全面自由化に伴い、2016年4月より計画値同時同量制度が導入された。
この計画値同時同量制度とは、発電量調整供給契約の契約者となる発電契約者の事前に策定した発電計画と発電契約者の実際の発電実績とを管理時間(例えば、30分)単位で一致させると共に、託送供給契約の契約者となる需要契約者の事前に策定した需要計画(電力需要計画)と需要契約者の実際の需要実績とを30分単位で一致させるという制度である。
さらに計画値同時同量制度では、発電計画および需要計画を受け取った一般送配電業者はこれらの計画値と当日の実績との差分の電力量(インバランス)を調整し、発電契約者または需要契約者はこの調整に係る対価(インバランス料金)を支払うことが求められている。
【0036】
発電事業者による発電計画および小売電気事業者(発電事業者から電気を調達して家庭や企業に電気を販売する事業者)による需要計画は、長期計画から徐々にその粒度が細かくなり、1日前には翌日の各コマ(すなわち、30分)毎の発電計画および需要計画がそれぞれ確定する。
この1日前の計画を確定する際の最終調整の場が、一日前市場(スポット市場)である。
一日前市場では、発電事業者の入札および小売事業者の入札のすべてをまとめ、突合せを行い価格と量とで調整し、発電事業者の1日前の発電計画と小売電気事業者の1日前の需要計画とを一致させている。
【0037】
この一日前市場では、1日を電力の計量単位(コマ単位。毎時0分~30分、30分~60分)で分割した48コマにおける電力を個々の商品として取引されている。
そして、一日前市場ではブラインド・シングルプライスオークション方式で約定価格や約定量が決定されている。
具体的には、以下のとおりである。
[1]他参加者の入札動向が開示されない状態(ブラインド)で入札が行われる。
[2]日本卸電力取引所は締め切り後にすべての入札を売買に分け合成し、需給カーブ(「売り」の量-価格線と「買い」の量-価格線)の交点で約定価格と量を決定する(交点が複数点ある場合、価格は交点のうち一番安い価格、量は交点のうち一番多い量を選択)。
[3]入札者は、入札した価格によらず決定された約定価格(シングルプライス)で売買する。すなわち、約定価格より低い価格で入札された売りは約定価格で売れ、約定価格より高い価格で入札された買いは約定価格で買える。
【0038】
なお、一日前市場における取引の約定の結果によっては、連系線(東京-中部エリア間の周波数変換設備など)に流せる電気の量の制約で計算を分けて行う必要が生じる。
例えば、日本全国の入札を合成して需要-供給曲線を描き、その交点を約定価格として売買を成立させた際、中部エリアから東京エリアに流す電力量が設備上流せる電力量を超える場合、東日本(北海道・東北・東京)の入札のみを合成して需要-供給曲線を描き、その交点を東日本の約定価格とし、西日本も同様に中部から九州エリアまでの入札を合成して需要-供給曲線を描き、その交点を西日本の約定価格とする(この処理を市場分断処理という)。
このような市場分断処理によって算出される約定価格をエリアプライスといい、売買はエリアプライスによって成立する。
なお、日本卸電力取引所におけるエリアプライスは、北海道・東北・東京(関東)・中部・北陸・関西・中国・四国・九州(沖縄除く)の9つのエリア毎に異なっているとなっている。
【0039】
<1.1.2.当日市場>
発電計画および需要計画は1日前の計画が最終的なものであるが、発電設備が故障したり天気予報が外れたりするなどがあると、発電計画および需要計画の変更は避けられない。
そこで、1日前計画策定後における発電計画および需要計画の調整の場が、当日市場(時間前市場)である。
【0040】
当日市場では、一日前市場と同様に、電力の計測単位(コマ単位。毎時0分~30分、30分~60分)毎に取引を行うが、一日前市場が1日分48コマを一斉に計算するのに対して、当日市場ではコマ単位の商品毎のザラ場取引となっている。
【0041】
<1.2.電力広域的運営推進機関について>
電力広域的運営推進機関(OCCTO)は、電気事業者が営む電気事業に係る電気の需給の状況の監視及び電気事業者に対する電気の需給の状況が悪化した他の小売電気事業者、一般送配電事業者、配電事業者又は特定送配電事業者への電気の供給の指示等の業務を行うことにより、電気事業の遂行に当たっての広域的運営を推進する機関である。
【0042】
そして、OCCTOは、全国規模で平常時・緊急時の需給調整機能を強化したり、中長期的な電力の安定供給を確保したり、電力系統の公平な利用環境を整備したりすることに加え、再エネ促進法に基づく納付・交付業務(算定・決定・納付金徴収・交付金交付)及び入札業務を実施している。
すなわち、再エネ促進法2条の5第1項によれば、OCCTOは、各認定事業者に対し交付すべき供給促進交付金の額を決定し、当該各認定事業者に対し、その者に対し交付すべき供給促進交付金の額その他必要な事項を通知している。
【0043】
<2.本発明のコンセプト>
次に、
図1Aおよび
図1Bに基づいて、本発明のコンセプトについて説明する。
図1Aは発電事業者を中心とした入出金の流れを示す図であり、
図1Bは本発明のコンセプトに基づく入出金の流れを示す図である。
【0044】
まず、
図1Aに示すように、再生可能エネルギー発電設備を有する発電事業者Aには、JEPXの約定価格に基づく電力取引代金と、OCCTOから供給促進交付金と、発電事業者Aの再生可能エネルギー発電設備により発電された電力由来の環境価値である非FIT非化石証書の購入者である環境価値購入者Xから環境価値取引対価である環境価値購入者支払金額Cc[円]が入金される。
【0045】
ここで、本発明における重要な前提の一つは、「発電事業者Aは、毎月固定単価での収入を得るものとする」である。
この前提に依拠すると、発電事業者Aが得たい毎月の収入額の単価(以下、「希望売電単価」という。)をcfg[円/kWh]とし、JEPXのエリアプライスをj[円/kWh]とし、供給促進交付金の単価をp[円/kWh]とし、環境価値取引対価の単価(すなわち、環境価値購入者Xが発電事業者Aに支払う対価の単価であり、以下、その額「環境価値購入者支払単価」という。)をcfc[円/kWh]とすると、
cfg=j+p+cfc ・・・ (1)
という関係から環境価値購入者支払単価cfcは、
cfc=cfg-(j+p) ・・・ (2)
となる。
したがって、エリアプライスjが高くなると、環境価値購入者支払単価cfcがマイナスになる、すなわち、発電事業者Aが環境価値購入者Xに金銭を支払うこともある。
【0046】
また、発電事業者Aは、必要に応じて、環境価値購入者支払金額Ccを算出する環境価値購入者支払金額算出業者に算出手数料f[円/kWh]を支払う。
この場合、環境価値購入者支払単価cfcは、
cfg=j+p+cfc-f ・・・ (3)
という関係から、
cfc=cfg-(j+p-f) ・・・ (4)
となる。
【0047】
以上説明した状況では、発電事業者Aは環境価値購入者Xに非FIT非化石証書を販売したにもかかわらず、環境価値購入者Xに対して金銭を支払うこともある。
このような精算は、商慣習になじまないだけでなく、純額決済となり、デリバティブとして、経理処理も煩雑になる。
【0048】
そこで、本発明のコンセプトは、「発電事業者Aが環境価値購入者Xに支払う環境価値取引対価を一時金として分別管理する」である。
すなわち、本発明における「一時金」とは、環境価値の支払いのために用いられるものである。
そして、このコンセプトを実現するために、
図1Bに示すように、「分別口座」という概念を導入した。
【0049】
この「分別口座」は、環境価値購入者支払金額Ccを算出するための便宜的な仮想口座としてもよいし、金融機関で実際に開設された口座であってもよい。
【0050】
以下、「分別口座」という概念を導入して環境価値取引対価を算出する環境価値取引対価算出方法(本出願人は、この方法を含む包括的なスキームを「Green Purchase Agreement(通称:「GPA」)」と称している。)、およびこの環境価値取引対価算出方法を実施するための環境価値取引対価算出装置、環境価値取引対価算出プログラムについて詳細に説明する。
【0051】
<3.環境価値取引対価算出装置が接続されるネットワークの概要>
そこで、
図2に基づいて、本発明の実施例である環境価値取引対価算出装置100が接続されるネットワークの概要について説明する。
図2は、本発明の実施例である環境価値取引対価算出装置が接続されるネットワーク構成図である。
【0052】
環境価値購入者支払金額Ccを算出する本発明の実施例である環境価値取引対価算出装置100は、
図2に示すように、ネットワークNWに接続されている。
このネットワークNWは、例えば、インターネットでもよいし、特定のユーザーしかアクセスできないイントラネットでもよいし、これらを組み合わせたネットワークでもよい。
【0053】
ネットワークNWには、JEPXが運営・提供する卸電力取引所システムJSや、OCCTOが運営する供給促進交付金算出システムOSなどが接続されている。
また、このネットワークNWには、電力需要バランスを維持する送配電事業者や発電事業者に代わってJPEXに売電を行う売電代行業者も接続している。
送配電事業者は、送配電網の敷設や保守を行い、送配電網の利用状況(送配電先、送配電量等)を監視している事業者である。
売電代行業者は、本実施例において、環境価値の取引も仲介も行う事業者である
【0054】
さらに、このネットワークNWには、再生可能エネルギー発電設備により発電された電力由来の環境価値である非FIT非化石証書を売却したい発電事業者の有する発電事業者端末STや、非FIT非化石証書の購入者である環境価値購入者の有する環境価値購入者端末BTも接続されている。
【0055】
発電事業者は、受電地点特定番号により特定される電気の発電地点を1つ以上有している。
この発電事業者は、再エネ促進法および再エネ促進法施行規則における再生可能エネルギー発電設備を保有し、それぞれの発電設備を制御および監視している。
発電事業者の発電地点のそれぞれには、再生可能エネルギー発電設備が発電した電力をデジタル計測すると共にネットワークNWに接続される逆潮流計量メーター(電力メーター)RSMが設置されている。
この逆潮流計量メーターRSMは、所定の周期ごとの発電量などを把握し、送配電事業者にネットワークNWを介して送信するものであり、例えば、逆潮流スマートメーター等も含む。
なお、逆潮流計量メーターRSMが発電量などを把握する周期は、例えば、デマンド制御の周期(日本国では30分周期が一般的)であるが、周期は特に限定されるものではない。
【0056】
<4.環境価値取引対価算出装置の概要>
次に、
図2および
図3に基づいて、環境価値取引対価算出装置100の概要について説明する。
図3は、
図2に示す環境価値取引対価算出装置の装置構成図である。
【0057】
環境価値取引対価算出装置100は、発電事業者Aが維持および運用する太陽光発電設備等の再生可能エネルギー発電設備により発電された電力由来の環境価値を譲渡される契約(以下、「環境価値取引契約」という。)を締結した環境価値購入者Xと発電事業者Aとの間で使用される装置である。
そして、この環境価値取引対価算出装置100は、少なくとも1台の処理装置により構成され、
図3に示すように、ネットワークNWに接続される通信部100Aと、外部からの情報を入力し、あるいは、外部へ情報を出力するマンマシンインターフェイス等の入出力部100Bと、通信部100AによりネットワークNWから入手したデータや入出力部100Bからの入力および環境価値取引対価算出プログラム等を記憶する記憶部100Cと、この記憶部100Cに記憶された環境価値取引対価算出プログラムによりネットワークNWから入手したデータや入出力部100Bから入力された情報等を処理する処理部100Dとを備えている。
記憶部100Cは、分別口座の残高および入出金が記録される分別口座データベース100C1と、エリアプライスが記憶されるエリアプライスデータベース100C2と、逆潮流計量メーターRSMから送信された発電事業者Aの管轄する再生可能エネルギー発電設備α1の発電量が記憶される発電量データベース100C3とを有している。
【0058】
このように構成された環境価値取引対価算出装置100は、
図2に示す各手段を構成する。
すなわち、環境価値取引対価算出装置100は、
図2に示すように、発電事業者Aの希望売電単価の入力を受け付ける売電単価受付手段110と、発電事業者Aの管轄する再生可能エネルギー発電設備α1の設置場所の入力を受け付ける設置場所受付手段120と、逆潮流計量メーターRSMが計測した所定期間の発電量を取得する発電量取得手段130と、発電事業者Aが受け取る供給促進交付金の額の入力を受け付ける供給促進交付金額取得手段140と、JEPXの提供する卸電力取引所システムJSから全コマ分のエリアプライスを取得するエリアプライス取得手段150と、環境価値購入者支払金額を算出する環境価値購入者支払金額算出手段160と、を備えている。
なお、本発明における「管轄」とは、「所有」という意味のみならず、「契約による管理」という意味も含む。
【0059】
<5.環境価値取引対価算出方法>
次に、
図4A乃至
図6に基づいて、
図2および
図3に示す環境価値取引対価算出装置100に記憶された環境価値取引対価算出プログラムによる環境価値取引対価算出方法により、環境価値購入者が発電事業者に支払う環境価値取引対価としての環境価値購入者支払金額の算出について説明する。
図4Aは本発明の実施例である環境価値取引対価算出方法における初期設定の手順を示すフローチャートであり、
図4Bは本発明の実施例である環境価値取引対価算出方法における定常作業の手順を示すフローチャートであり、
図4Cは本発明の実施例である環境価値取引対価算出方法における環境価値購入者支払金額の算出の手順を示すフローチャートであり、
図5は
図4Cに示す需要家支払金額算出ステップを示すフローチャートであり、
図6は
図4A乃至
図5に示すフローチャートにおけるデータ授受を説明する模式図である。
なお、
図6において入力を二点鎖線、データ移動を点線で示す。
【0060】
本発明の実施例である環境価値取引対価算出方法は、既に環境価値取引契約を締結した発電事業者Aと環境価値購入者Xとの間で実施される方法であり、下記に示す複数の手順により構成されている。
【0061】
<5.1.初期設定>
発電事業者Aと環境価値購入者Xとの間で環境価値取引契約が締結されると、
図4Aに示すように、希望売電単価受付ステップS10および発電設備設置場所受付ステップS11が順不同に実施される。
【0062】
希望売電単価受付ステップS10では、発電事業者Aと環境価値購入者Xとの間の環境価値取引を仲介する売電代行業者が、
図6に示すように売電単価受付手段110に環境価値取引契約で定められた発電事業者Aの希望売電単価cfg[円/kWh]を入力する。
すなわち、希望売電単価受付ステップS10において、売電単価受付手段110は、発電事業者Aの希望する売電単価であると共に発電事業者Aが受け取る発電事業者受取単価である定額の希望売電単価cfgの入力を受け付ける。
換言すると、売電単価受付手段110への入力は、発電事業者Aと環境価値購入者Xとの間の環境価値取引を仲介する売電代行業者が行う。
なお、発電事業者Aの希望売電単価とは、環境価値取引契約に基づくものであるから、初期設定時に入力されるものであり、環境価値取引契約が変わらない限り、変更されるものではない。
【0063】
発電設備設置場所受付ステップS11では、発電事業者Aと環境価値購入者Xとの間の環境価値取引を仲介する売電代行業者が、
図6に示すように設置場所受付手段120に環境価値取引契約で定められた発電事業者Aの再生可能エネルギー発電設備α1の設置場所を入力する。
すなわち、発電設備設置場所受付ステップS11において、設置場所受付手段120は、発電事業者Aの再生可能エネルギー発電設備α1の設置場所の入力を受け付ける。
換言すると、設置場所受付手段120への入力は、発電事業者Aと環境価値購入者Xとの間の環境価値取引を仲介する売電代行業者が行う。
なお、発電事業者Aの管轄する再生可能エネルギー発電設備α1の設置場所は、環境価値取引契約に基づくものであるから、初期設定時に入力されるものであり、環境価値取引契約が変わらない限り、変更されるものではない。
【0064】
<5.2.定常作業>
初期設定が終了した後、本発明の実施例である環境価値取引対価算出装置100は、
図4Bに示すように、定常的に発電量取得ステップS20とエリアプライス取得ステップS21とを行う。
【0065】
発電量取得ステップS20では、
図6に示すように発電量取得手段130が送配電事業者から発電事業者Aの逆潮流計量メーターRSMが再生可能エネルギー発電設備α1から計測した所定期間(30分コマ単位)の発電量を取得し続ける。
すなわち、発電量取得手段130は、環境価値取引契約で特定された発電事業者Aの発電地点a1に設置された再生可能エネルギー発電設備α1の発電量を計測する逆潮流計量メーターRSMから所定期間(30分コマ単位)の発電量を常に取得する。
なお、発電量取得手段130は、逆潮流計量メーターRSMの計測した再生可能エネルギー発電設備α1の発電量を送配電事業者から取得してもよいし逆潮流計量メーターRSMから直接取得してもよい。
【0066】
エリアプライス取得ステップS21では、
図6に示すようにエリアプライス取得手段150がJEPXの提供する卸電力取引所システムJSから全コマ分のエリアプライスj[円/kWh]を取得する。
エリアプライス取得手段150は、全コマ分のエリアプライスを取得できれば、卸電力取引所システムJSからエリアプライを1日一回、週1回、月1回等、まとめて取得してもよい。
なお、エリアプライス取得手段150が入手するエリアプライスのエリアは、全エリアであってもよいし、設置場所受付手段120が受け付けた再生可能エネルギー発電設備α1の属するエリアであってもよい。
【0067】
<5.3.環境価値購入者支払金額の算出>
OCCTO等により供給促進交付金の額P[円]が公表されると、本発明の実施例である環境価値取引対価算出方法により環境価値購入者支払金額Cc[円]が算出される。
すなわち、環境価値購入者支払金額Ccの算出は、定期的に(本実施例では、1ヶ月に1回)実施される。
【0068】
環境価値購入者支払金額Ccの算出を行うには、
図4Cに示すように、供給促進交付金額取得ステップS31、環境価値購入者支払金額算出ステップS32を実施する。
【0069】
供給促進交付金額取得ステップS31では、発電事業者Aと環境価値購入者Xとの間の環境価値取引を仲介する売電代行業者が、
図6に示すように供給促進交付金額取得手段140にOCCTO等が発電事業者Aに通知した供給促進交付金のP[円]を入力する。
すなわち、供給促進交付金額取得ステップS31において、供給促進交付金額取得手段140は、供給促進交付金の額Pの入力を受け付ける。
換言すると、供給促進交付金額取得手段140への入力は、本実施例においては売電代行業者が行う。
なお、供給促進交付金は定期的に(例えば、1月に1回)OCCTO等により発電事業者Aに通知されるものであるから、供給促進交付金額取得手段140にはこの供給促進交付金の額が定期的に入力される。
【0070】
環境価値購入者支払金額算出ステップS32では、
図6に示すように、環境価値購入者支払金額算出手段160が、売電単価受付手段110が受け付けた希望売電単価cfg[円/kWh]、供給促進交付金額取得手段140が受け付けた供給促進交付金の額P[円]、環境価値購入者支払金額Cc[円]を算出する環境価値購入者支払金額算出業者(本実施例では売電代行業者)が徴収する算出手数料f[円/kWh]、設置場所受付手段120が受け付けた設置場所におけるエリアプライスj[円/kWh]、分別口座で管理される一時金の額T[円]、発電量取得手段130の取得した発電量G[kWh]に基づいて、一時金の額T[円]および環境価値購入者支払金額Cc[円]を算出する。
【0071】
環境価値購入者支払金額算出ステップS32の具体的なステップは、以下の通りである。
【0072】
まず、以下の式(5)より月次エリアプライスjm[円/kWh]を算出する(ステップS321)。
なお、Σ(j×G)は各コマのエリアプライスと発電量とを乗じたものを環境価値購入者支払金額Ccの算出対象となる月の一ヶ月間における全日全コマ分足し合わせたものであり、ΣGは各コマの発電量を環境価値購入者支払金額Ccの算出対象となる月の一ヶ月間における全日全コマ分足し合わせたもの(すなわち、環境価値購入者支払金額Ccの算出対象となる月の総発電量)である。
jm=Σ(j×G)÷ΣG ・・・ (5)
また、供給促進交付金の額P[円]と供給促進交付金の単価p[円/kWh]とについては、次の式(6)が成り立つ。
P=p×ΣG ・・・ (6)
【0073】
そして、上記の式(4)より導出される以下の式(7)に基づき環境価値購入者支払金額Ccを算出するための環境価値購入者支払仮金額Cc1を算出する(ステップS322)。
すなわち、環境価値購入者支払仮金額Cc1は、
Cc1={cfg-(jm-f)}×ΣG-P ・・・ (7)
で算出される。
【0074】
次に、この仮算出した環境価値購入者支払仮金額Cc1が、0円未満であるか否かを判定する(ステップS323)。
【0075】
環境価値購入者支払仮金額Cc1が0円未満であった場合、すなわち、環境価値購入者Xが発電事業者Aに金銭を支払うのではなく、発電事業者Aが環境価値購入者Xに金銭を支払うことになってしまうため、分別口座に環境価値購入者支払仮金額Cc1を入金する。
すなわち、分別口座における一時金の額Tは、
T=T+(-Cc1) ・・・ (8)
に増え、発電事業者受取単価cfg[円/kWh]は、
cfg=jm+p-f+Cc1÷ΣG ・・・ (9)
となり、環境価値購入者支払金額Ccは0円となる(ステップS324)。
したがって、最終的に、発電事業者Aが環境価値購入者Xに金銭を支払うこともなければ、環境価値購入者Xが発電事業者Aに金銭を支払うこともなくなる。
【0076】
そして、ステップSS324で算出された一時金の額Tを分別口座データベース100C1に記録する(ステップS325)。
【0077】
環境価値購入者支払仮金額Cc1が0円以上であった場合、分別口座の一時金の額Tが0円であるか否かを判定する(ステップS326)。
なお、発電事業者受取単価cfg[円/kWh]は、環境価値購入者支払仮金額Cc1が0円以上であった場合でも式(9)で表せる。
【0078】
分別口座の一時金の額Tが0円である場合、環境価値購入者支払仮金額Cc1を分別口座に保管されている一時金で補填できないため、環境価値購入者支払金額Ccを、
Cc=Cc1 ・・・(10)
とし(ステップS327)、前述のステップS325へ進む。
【0079】
分別口座の一時金の額Tが0円ではない、すなわち、分別口座の一時金の額Tが0円より大きい場合、環境価値購入者支払仮金額Cc1の少なくとも一部を分別口座に保管されている一時金で補填できる。
すなわち、環境価値購入者支払仮金額Cc1は、環境価値購入者支払金額Ccと分別口座に保管されている一時金より補填する金額M[円]とにより、
Cc1=Cc+M ・・・(11)
となる。
そして、分別口座に保管されている一時金より補填する金額Mを算出するために、一時金の額Tが環境価値購入者支払仮金額Cc1以上であるか否かを判定する(ステップS328)。
【0080】
一時金の額Tが環境価値購入者支払仮金額Cc1以上である場合、環境価値購入者支払金額Cc1のすべてを一時金で充当できる。
すなわち、分別口座より補填する金額Mおよび環境価値購入者支払金額Ccは、
M=Cc1、Cc=0 ・・・(12)
となり、分別口座に保管されている一時金の額Tは、
T=T-M=T-Cc1 ・・・(13)
に減り(ステップS329)、前述のステップS325へ進む。
【0081】
一時金の額Tが環境価値購入者支払仮金額Cc1未満である場合、環境価値購入者支払仮金額Cc1の一部のみを一時金の額Tで補填できる。
すなわち、分別口座に保管されている一時金より補填する金額MはTとなることから、環境価値購入者支払金額Ccは式(11)より、
Cc=Cc1-T ・・・(14)
となり、分別口座に保管されている一時金の額Tは0円になり(ステップS330)、前述のステップS325へ進む。
【0082】
<6.まとめ>
以上説明した本実施例の環境価値取引対価算出装置100は、発電事業者の希望する売電単価であると共に発電事業者が受け取る発電事業者受取単価である定額の希望売電単価の入力を受け付ける売電単価受付手段を備えていることにより、発電事業者へ支払われる金額と希望売電単価と一致するため、発電事業者が確実に希望売電単価で電力および環境価値を売却することができる。
そして、環境価値購入者支払金額算出手段160が、少なくとも、売電単価受付手段110が受け付けた希望売電単価cfg、FIP制度における供給促進交付金の額P、設置場所受付手段120が受け付けた設置場所におけるエリアプライスj、環境価値取引対価の支払いのための一時金の額T、発電量取得手段130の取得した発電量Gに基づいて、環境価値購入者支払金額Ccを算出すると共に一時金の額Tを変化させることにより、環境価値取引対価としての環境価値購入者支払金額Ccが、少なくとも、希望売電単価cfg、エリアプライスjおよび設置場所、供給促進交付金の額Pに基づいて算出されるため、エリアプライスjが高価になった際に環境価値取引対価としての環境価値購入者支払金額Ccを低額にすると共に一時金の額Tを増加させ、エリアプライスjが安価になった際には増加した一時金を切り崩して充当して環境価値取引対価としての環境価値購入者支払金額Ccを低額に抑えることができる。
また、以上説明した本実施例の環境価値取引対価算出方法によれば、売電単価受付手段110が発電事業者の希望する売電単価であると共に発電事業者が受け取る発電事業者受取単価である定額の希望売電単価cfgの入力を受け付ける希望売電単価受付ステップS10を備えていることにより、発電事業者へ支払われる金額と希望売電単価cfgと一致するため、発電事業者が確実に希望売電単価cfgで電力および環境価値を売却することができる。
そして、環境価値購入者支払金額算出手段160が、少なくとも、希望売電単価受付ステップS10で売電単価受付手段が受け付けた希望売電単価cfg、FIP制度における供給促進交付金の額P、発電設備設置場所受付ステップS11で設置場所受付手段120が受け付けた設置場所におけるエリアプライスj、環境価値取引対価の支払いのための一時金の額T、発電量取得手段130の取得した発電量Gに基づいて、環境価値購入者支払金額Ccを算出すると共に一時金の額Tを変化させる環境価値購入者支払金額算出ステップS32を備えていることにより、環境価値取引対価としての環境価値購入者支払金額Ccが、少なくとも、希望売電単価cfg、エリアプライスjおよび設置場所、供給促進交付金の額Pに基づいて算出されるため、エリアプライスjが高価になった際に環境価値取引対価としての環境価値購入者支払金額Ccを低額にすると共に一時金の額Tを増加させ、エリアプライスjが安価になった際には増加した一時金を切り崩して充当して環境価値取引対価としての環境価値購入者支払金額Ccを低額に抑えることができる。
したがって、本実施例の環境価値取引対価算出装置100、環境価値取引対価算出方法、環境価値取引対価算出プログラムは、発電事業者が安定した希望売電単価cfgで電力および環境価値を売却可能とすると共に環境価値購入者が発電事業者に支払う環境価値取引対価の変動幅を抑制することができる。
【0083】
さらに、売電単価受付手段110が受け付けた希望売電単価cfg、供給促進交付金の額P、環境価値購入者支払金額Ccを算出するための算出手数料f、設置場所受付手段120が受け付けた設置場所におけるエリアプライスj、環境価値取引対価の支払いのための一時金の額T、発電量取得手段130の取得した発電量Gに基づいて環境価値購入者支払金額算出手段160の算出した環境価値購入者支払金額Ccが0円未満であった場合、環境価値購入者支払金額算出手段160が環境価値購入者支払金額Ccを0円とすると共に一時金の額Tを変化させることにより、希望売電単価cfg、エリアプライスj、算出手数料f、供給促進交付金の額Pなどが如何なる額であっても、環境価値購入者支払金額Cが0円未満にならないため、会計上複雑になる純額決済を回避することができる。
また、供給促進交付金を環境価値購入者支払金額Ccの算出に組み込むことで、FIP制度における参照価格と市場価格とが相殺されるため、環境価値購入者支払金額Ccが市場価格を参照していないこととなり、店頭商品デリバティブ取引を規制する商品先物取引法が適用外となる。
【0084】
<変形例>
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上記に限定されるものではない。
【0085】
例えば、環境価値取引対価算出装置100は、複数台の処理装置により構成されていてもよい。
具体的には、記憶部と処理部とが別々の処理装置の構成であってもよい。
【0086】
例えば、上述した実施例においては、環境価値取引対価算出装置100が供給促進交付金額取得手段140を備え、環境価値購入者支払金額算出手段160が一時金の額および環境価値購入者支払金額Ccを算出する際には、仲介業者が供給促進交付金額取得手段140に入力した供給促進交付金の額を使用していたが、供給促進交付金額取得手段140が直接OCCTOの供給促進交付金算出システムOSにアクセスして取得してもよい。
【0087】
また、環境価値取引対価算出装置は供給促進交付金額取得手段に代えて供給促進交付金の単価を算出する供給促進交付金算出手段を備えていてもよい。
供給促進交付金算出手段は、「再エネ促進法」および「再エネ促進法施行規則」に基づいて供給促進交付金の単価を算出する。
環境価値取引対価算出装置が供給促進交付金算出手段を備えていることにより、電力広域的運営推進機関が供給促進交付金の単価を公表するよりも早く供給促進交付金の額を計算するため、電力広域的運営推進機関による処理を待たずに調整金額や環境価値購入者支払金額を算出し、発電事業者および環境価値購入者が早期に決済をすることができる。
なお、本願における「発電事業者」は「再エネ促進法」および「再エネ促進法施行規則」における「認定事業者」に相当し、「発電設備」は「再エネ促進法」および「再エネ促進法施行規則」における「認定発電設備」に相当する。
【0088】
また、上述した実施例においては、発電事業者Aと環境価値購入者Xとの間の環境価値取引を仲介する業者(売電代行業者)が存在していたが、このような仲介する業者が存在しなくてもよい。
仲介する業者が存在しない場合あるいは仲介する業者が存在した場合であっても、売電単価受付手段110、設置場所受付手段120および供給促進交付金額取得手段140への入力は、発電事業者Aが発電事業者端末STから行ってもよいし、環境価値購入者Xが環境価値購入者端末BTから行ってもよいし、発電事業者Aまたは環境価値購入者Xが各手段に直接入力してもよい。
【0089】
また、上述した実施例においては、環境価値購入者支払金額の算出する環境価値購入者支払金額算出業者は売電代行業者であったが、環境価値購入者支払金額算出業者は売電代行業者に限定されるものではない。
また、環境価値購入者支払金額算出業者は、算出手数料を徴収しなくてもよい(すなわち、算出手数料を0円としてもよい)。
【0090】
また、上述した実施例において、供給促進交付金額取得手段140は、供給促進交付金の額の入力を受け付けていたが、供給促進交付金額取得手段140が受け付ける入力は供給促進交付金の単価であってもよい。
この場合、環境価値取引対価算出装置100が、供給促進交付金の単価に、環境価値購入者支払金額の算出対象となる月における再生可能エネルギー発電設備α1の総発電量を乗じて供給促進交付金を算出する。
【0091】
また、上述した実施例において、エリアプライス取得手段150は、エリアプライスを少なくとも毎月1回全コマ分取得していたが、環境価値取引対価を算出する際に算出対象となる月の一ヶ月分の全日の全コマのエリアプライスを取得されていればよく、エリアプライス取得手段150のエリアプライスの取得間隔はこれに限定されるものではない。
【0092】
例えば、本実施例において、種々の情報は環境価値取引対価算出装置100の記憶部100Cに保存されていたが、これらの情報は記憶部100Cへの保存に限定されるものではなく、例えばブロックチェーンデータベースに保存されてもよい。