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特開2024-27047建築物省エネ性能算出支援装置、建築物省エネ性能算出支援方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027047
(43)【公開日】2024-02-29
(54)【発明の名称】建築物省エネ性能算出支援装置、建築物省エネ性能算出支援方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/13 20200101AFI20240221BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20240221BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20240221BHJP
   E04B 1/00 20060101ALI20240221BHJP
   G06F 119/08 20200101ALN20240221BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/20
G06Q50/08
E04B1/00 ESW
G06F119:08
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129752
(22)【出願日】2022-08-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】517104149
【氏名又は名称】株式会社動研
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100145481
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 昌邦
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】西村 昌児
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 豊
【テーマコード(参考)】
5B146
5L049
【Fターム(参考)】
5B146AA04
5B146DC04
5B146DC05
5B146DE11
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】建築物の設計に要する労力を軽減する。
【解決手段】建築物のエネルギー消費性能に関する法律が定めるエネルギー消費性能の算出に必要なデータの集合である必要データ集合に値の無いデータである欠損データが有るか否かの判定を行う処理である有無判定処理を実行する制御部、を備え、前記制御部は、前記有無判定処理において欠損データが有ると判定された場合に、いずれのデータが欠損データであるかを判定する処理である欠損データ判定処理を実行し、さらに、前記欠損データ判定処理の結果に基づいて、各欠損データに、各欠損データに応じた条件であって補償に関する所定の条件である補償条件を満たす補償値を入力する、建築物省エネ性能算出支援装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物のエネルギー消費性能に関する法律が定めるエネルギー消費性能の算出に必要なデータの集合である必要データ集合に値の無いデータである欠損データが有るか否かの判定を行う処理である有無判定処理を実行する制御部、
を備え、
前記制御部は、前記有無判定処理において欠損データが有ると判定された場合に、いずれのデータが欠損データであるかを判定する処理である欠損データ判定処理を実行し、さらに、前記欠損データ判定処理の結果に基づいて、各欠損データに、各欠損データに応じた条件であって補償に関する所定の条件である補償条件を満たす補償値を入力する、
建築物省エネ性能算出支援装置。
【請求項2】
前記補償条件は、欠損データに応じた値であって予め定められた所定の値、という条件である、
請求項1に記載の建築物省エネ性能算出支援装置。
【請求項3】
欠損データが外壁の断熱材の厚さを示す情報とガラスの種類及び厚さを示す情報との組であるパルスター組に存在する場合における前記パルスター組に対する補償値は、パルスターの値と所定の基準値との違いの最小値を与えるパルスター組を推定するパルスター最適化処理の実行の結果である、という補償条件を満たす補償値である、
請求項1又は2に記載の建築物省エネ性能算出支援装置。
【請求項4】
前記制御部は、予め定められた値である単位基準値で割り算した結果から整数部の値を引き算した値と、零と、の違いが所定の違い以内であるか否かを、前記必要データ集合に含まれるデータのうち次元の同じ複数のデータについて行う単位違い判定処理、を実行する、
請求項1に記載の建築物省エネ性能算出支援装置。
【請求項5】
前記制御部は、N種類の単位基準値を用いた前記単位違い判定処理の結果に基づき、予め定められた値である単位基準値で割り算した結果から整数部の値を引き算した値と、零と、の違いが所定の違い以内であると判定されたデータ、が最も多い単位基準値を支配基準値であると判定し、前記支配基準値を用いた前記単位違い判定処理による判定の結果、支配基準値で割り算した結果から整数部の値を引き算した値と、零と、の違いが所定の違い以内ではない、と判定されたデータである不適切データが有る場合、所定の出力先に、前記不適切データを出力させる、
請求項4に記載の建築物省エネ性能算出支援装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記不適切データの値を、前記支配基準値を単位量とする単位の値に変換する、
請求項5に記載の建築物省エネ性能算出支援装置。
【請求項7】
コンピュータが実行する建築物省エネ性能算出支援方法であって、
建築物のエネルギー消費性能に関する法律が定めるエネルギー消費性能の算出に必要なデータの集合である必要データ集合に値の無いデータである欠損データが有るか否かの判定を行う処理である有無判定処理を実行する制御ステップ、
を有し、
前記制御ステップは、前記有無判定処理において欠損データが有ると判定された場合に、いずれのデータが欠損データであるかを判定する処理である欠損データ判定処理を実行し、さらに、前記欠損データ判定処理の結果に基づいて、各欠損データに、各欠損データに応じた条件であって補償に関する所定の条件である補償条件を満たす補償値を入力する、
建築物省エネ性能算出支援方法。
【請求項8】
請求項1に記載の建築物省エネ性能算出支援装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物省エネ性能算出支援装置、建築物省エネ性能算出支援方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の設計においては、エネルギーの使用の合理化等に関する法律(以下「省エネ法」という。;非特許文献1)に基づき、省エネ法に定めるエネルギー消費性能(以下「省エネ基準」という。)の建築物を設計する必要がある。具体的な例としては、国立研究開発法人建築研究所が提供する「エネルギー消費性能計算プログラム(住宅版)」(非特許文献2)及び「住宅・住戸の外皮性能の計算プログラム」(非特許文献3)(以下これら建築研究所の提供するプログラムを「建研プログラム」という。)を利用し、省エネ法に定めるエネルギー消費性能が省エネ基準を満たすように、設計を行う必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】エネルギーの使用の合理化等に関する法律
【非特許文献2】国立研究開発法人建築研究所 [令和4年6月3日検索]、インターネット<URL:https://house.app.lowenergy.jp/#/select>
【非特許文献3】国立研究開発法人建築研究所 [令和4年6月3日検索]、インターネット<URL:https://envelope.app.lowenergy.jp/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、省エネ法に定めるエネルギー消費性能の算出(以下「省エネ計算」という。)に必要な所定のデータは種類が多い。さらに、各データの建築物として妥当な値も他のデータの値に依存する場合が多い。このような理由から、省エネ計算に必要なデータの入力は人手で行われており、1回の省エネ計算に必要なデータ一式を用意する作業でさえも多大な労力を必要としていた。また、そのような多大な労力を払って用意されたデータ一式であっても、建研プログラムの結果が省エネ基準を満たさない場合には、データの入力し直しが必要である。
【0005】
したがって複数回、省エネ計算に必要なデータ一式を用意する作業が行われる場合が多く、建築物の設計には多大な労力を要する場合があった。このように、建築物の設計には負担が多かった。なおこのような事情は、省エネ法に限らず建築物のエネルギー消費性能に関する法律が定めるエネルギー消費性能の算出に共通の課題であった。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、建築物の設計に要する労力を軽減する技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、建築物のエネルギー消費性能に関する法律が定めるエネルギー消費性能の算出に必要なデータの集合である必要データ集合に値の無いデータである欠損データが有るか否かの判定を行う処理である有無判定処理を実行する制御部、を備え、前記制御部は、前記有無判定処理において欠損データが有ると判定された場合に、いずれのデータが欠損データであるかを判定する処理である欠損データ判定処理を実行し、さらに、前記欠損データ判定処理の結果に基づいて、各欠損データに、各欠損データに応じた条件であって補償に関する所定の条件である補償条件を満たす補償値を入力する、建築物省エネ性能算出支援装置である。
【0008】
本発明の一態様は、コンピュータが実行する建築物省エネ性能算出支援方法であって、建築物のエネルギー消費性能に関する法律が定めるエネルギー消費性能の算出に必要なデータの集合である必要データ集合に値の無いデータである欠損データが有るか否かの判定を行う処理である有無判定処理を実行する制御ステップ、を有し、前記制御ステップは、前記有無判定処理において欠損データが有ると判定された場合に、いずれのデータが欠損データであるかを判定する処理である欠損データ判定処理を実行し、さらに、前記欠損データ判定処理の結果に基づいて、各欠損データに、各欠損データに応じた条件であって補償に関する所定の条件である補償条件を満たす補償値を入力する、建築物省エネ性能算出支援方法である。
【0009】
本発明の一態様は、上記の建築物省エネ性能算出支援装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、建築物の設計に要する労力を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の建築物省エネ性能算出支援装置の概要を説明する説明図。
図2】実施形態の建築物省エネ性能算出支援装置のハードウェア構成の一例を示す図。
図3】実施形態の建築物省エネ性能算出支援装置が実行する処理の流れの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態)
図1は、実施形態の建築物省エネ性能算出支援装置1の概要を説明する説明図である。
以下説明の簡単のため、エネルギーの使用の合理化等に関する法律(以下「省エネ法」という。)に定められたエネルギー消費性能の算出を例に説明を行う。しかしながら、エネルギー消費性能は必ずしも省エネ法に定められたものである必要は無く、建築物のエネルギー消費性能に関する法律が定めるエネルギー消費性能であればどのようなエネルギー消費性能であってもよい。
【0013】
建築物省エネ性能算出支援装置1は、省エネ法に定めるエネルギー消費性能の算出(以下「省エネ計算」という。)に必要なデータの集合(以下「必要データ集合」という。)に対して欠損データ補償処理を実行する。欠損データ補償処理は、必要データ集合に値の無いデータである欠損データが存在する場合、に実行される。欠損データ補償処理は、必要データ集合に欠損データが存在する場合に、補償に関する所定の条件(以下「補償条件」という。)を満たす値(以下「補償値」という。)を、入力対象の欠損データに入力する処理である。なお補償条件は欠損データに応じた条件である。
【0014】
なお、省エネ計算に必要なデータは例えば後述するガラスの種類を示す情報であってもよいが、このような場合、省エネ計算に必要なデータとして入力されたデータは、ガラスの種類を、例えばガラスの種類ごとに予め定められた数値で示す。ガラスの種類は例えばガラスの種類を示す文字列で示されてもよいが、文字列はコンピュータにとって数値の順序列であるので、このような場合であってもやはり、ガラスの種類は値で示される。
【0015】
欠損データは、例えば省エネ計算に必要なデータのうち、省エネ計算に必要であるにも関わらずユーザが値を入力し忘れた値である。欠損データは、例えば省エネ計算に必要なデータのうち、コンピュータのエラーによって値が消えたデータであってもよい。
【0016】
図1の例において、情報D101が必要データ集合の一例であり、情報D111が欠損データの一例である。情報D112は、省エネ計算に必要なデータであって欠損データではないデータの一例である。すなわち、情報D112は、省エネ計算に必要なデータであって値を有するデータの一例である。
【0017】
<省エネ計算に必要なデータの例>
必要データ集合は、例えば建研プログラムが省エネ計算に必要であるとして要求するデータの集合である。したがって、必要データ集合は、例えば建研プログラムにアップロードする表形式のデータである。建研プログラムは、国立研究開発法人建築研究所が提供する「エネルギー消費性能計算プログラム(住宅版)」(非特許文献2)及び「住宅・住戸の外皮性能の計算プログラム」(非特許文献3)である。
【0018】
建研プログラムにおける必要データ集合は例えば、外壁に関する情報を含む。外壁に関する情報は、例えば、外壁名称を示す情報と、壁の種類を示す情報と、熱貫流率を示す情報と、建材番号を示す情報と、建材名称を示す情報と、厚みを示す情報と、をそれぞれ省エネ計算に必要なデータとして含む。このうち厚みを示す情報は、パルスター(PAL)の算出に用いられる。
【0019】
また、建研プログラムにおける必要データ集合は例えば、窓に関する情報を含む。窓に関する情報は、例えば、開口部名称を示す情報と、窓の熱貫流率を示す情報と、窓の日射熱取得率を示す情報と、窓の性能を示す情報と、をそれぞれ省エネ計算に必要なデータとして含む。窓の性能を示す情報は、建具の種類を示す情報と、ガラスの性能を示す情報とを含む。さらにガラスの性能を示す情報は、ガラスの種類を示す情報と、熱貫流率を示す情報と、日射熱取得率を示す情報とを含む。このうち、ガラスの種類の情報はパルスターの算出に用いられる。
【0020】
補償条件は、例えば欠損データに応じた値であって予め定められた所定の値、という条件である。補償条件は例えば、欠損データが窓の熱貫流率を示す情報である場合には“1”を入力する、という条件である。
【0021】
建築物省エネ性能算出支援装置1は、必要データ集合に欠損データが有るか否かの判定の処理(以下「有無判定処理」という。)を実行する。また建築物省エネ性能算出支援装置1は、有無判定処理の結果として欠損データが有ると判定された場合に、いずれのデータが欠損データであるかを判定する処理(以下「欠損データ判定処理」という。)を実行する。欠損データ判定処理が実行される場合(すなわち有無判定処理によって欠損データが有ると判定された場合)、建築物省エネ性能算出支援装置1はさらに、欠損データ判定処理の結果に基づいて、欠損データ補償処理を実行する。欠損データ補償処理の実行により、各欠損データに、各欠損データに応じた補償条件を満たす補償値が、入力される。
【0022】
このように有無判定処理が実行されることによりユーザは、欠損データがあるか否かについて目視等の確認作業によりユーザ自身が行う必要が無くなる。したがって、建築物省エネ性能算出支援装置1は、建築物の設計に要する労力を軽減することが可能である。
【0023】
また、このように欠損データ補償処理が実行されることによりユーザは、欠損データの値の入力し直しを行わなくて済む。したがって、建築物省エネ性能算出支援装置1は、建築物の設計に要する労力を軽減することが可能である。
【0024】
<補償条件の他の例>
パルスター組に欠損データが存在する場合には、そのパルスター組自体が欠損データとして制御部11によって処理されてもよい。そして、欠損データが存在するパルスター組に対する補償条件は、例えばパルスター最適化処理の実行の結果である、という条件であってもよい。すなわち、欠損データがパルスター組に存在する場合におけるそのパルスター組に対する補償値は、例えば、パルスター最適化処理の実行の結果であるという補償条件、を満たす補償値であってもよい。
【0025】
パルスター組は、外壁の断熱材の厚さを示す情報とガラスの種類及び厚さを示す情報との組である。パルスター最適化処理は、パルスターを最適化する処理である。なお、パルスター最適化処理は例えば建築物省エネ性能算出支援装置1によって実行される。
【0026】
パルスター最適化処理をより具体的に説明する。パルスター最適化処理は、パルスターの値と所定の基準値との違いの最小値を与えるパルスター組を推定する処理である。所定の基準値は例えば1である。したがって所定の基準値が1の場合、パルスター最適化処理は、パルスターの値を最も1に近づけるパルスター組、を推定する処理である。
【0027】
パルスター最適化処理では、パルスター算出処理が実行される。パルスター算出処理は、パルスター組に基づいてパルスター値を算出する処理である。したがって、パルスター最適化処理では、パルスター組1つにつき1つのパルスター値が算出される。
【0028】
パルスター算出処理の内容は、パルスター算出処理の実行の対象のパルスター組が示すガラスの種類に応じた内容である。より具体的には、パルスター算出処理は、パルスター組が示すガラスの種類に応じた計算式であり建研プログラムで定められた計算式を、パルスター組が示す外壁の断熱材の厚さと、ガラスの厚さとの組に対して実行する処理である。
【0029】
パルスター最適化処理は、パルスターの値と所定の基準値との違いの最小値を与える組であって、外壁の断熱材の厚さとガラスの種類及び厚さとの組、を推定可能であればどのような処理であってもよい。例えばパルスター最適化処理は、第1種最適化処理であってもよい。第1種最適化処理は、予め用意された複数のパルスター組それぞれに対してパルスター算出処理を実行し、算出された複数のパルスターのうちの最小のパルスターを与えるパルスター組、をパルスター最適化処理の実行の結果として出力する処理である。
【0030】
第1種最適化処理における予め用意された複数のパルスター組は、例えば後述する記憶部14等の所定の記憶部に予め記憶済みである。
【0031】
パルスター最適化処理は、例えばサイクル処理を、所定の終了条件が満たされるまで繰り返す処理(以下「第2種最適化処理」という。)であってもよい。サイクル処理は、所定の記憶部に記憶されたパルスター組に対してパルスター算出処理を実行し、算出されたパルスターに基づき所定の規則にしたがって所定の記憶部に記憶されたパルスター組を更新し、更新後のパルスター組に対してパルスター算出処理を実行する、という一連の処理である。所定の記憶部は、例えば後述する記憶部14である。
【0032】
所定の終了条件は、例えば、サイクル処理によるパルスターの変化が所定の変化よりも小さいという条件である。所定の終了条件は例えば、パルスターと所定の基準値との違いが所定の違いよりも小さいという条件であってもよい。第2種最適化処理の場合、パルスター最適化処理の実行の結果は、所定の終了条件が満たされた時点のパルスター組、である。
【0033】
図2は、実施形態の建築物省エネ性能算出支援装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。建築物省エネ性能算出支援装置1は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサ91とメモリ92とを備える制御部11を備え、プログラムを実行する。建築物省エネ性能算出支援装置1は、プログラムの実行によって制御部11、入力部12、通信部13、記憶部14及び出力部15を備える装置として機能する。
【0034】
より具体的には、プロセッサ91が記憶部14に記憶されているプログラムを読み出し、読み出したプログラムをメモリ92に記憶させる。プロセッサ91が、メモリ92に記憶させたプログラムを実行することによって、建築物省エネ性能算出支援装置1は、制御部11、入力部12、通信部13、記憶部14及び出力部15を備える装置として機能する。
【0035】
制御部11は、建築物省エネ性能算出支援装置1が備える各種機能部の動作を制御する。制御部11は、例えば有無判定処理、欠損データ判定処理及び欠損データ補償処理を実行する。
【0036】
制御部11は、欠損データ判定処理によってパルスター組の含むデータに欠損データが存在すると判定された場合には、その欠損データを入力対象とする欠損データ補償処理においてパルスター最適化処理を実行してもよい。このような場合、パルスター最適化処理の実行の結果として、欠損データの存在するパルスター組は、パルスター最適化処理の実行により推定されたパルスター組で置き換えられる。
【0037】
入力部12は、マウスやキーボード、タッチパネル等の入力装置を含んで構成される。入力部12は、これらの入力装置を建築物省エネ性能算出支援装置1に接続するインタフェースとして構成されてもよい。入力部12は、建築物省エネ性能算出支援装置1に対する各種情報の入力を受け付ける。入力部12には、例えば必要データ集合が入力される。
【0038】
通信部13は、建築物省エネ性能算出支援装置1を外部装置に接続するための通信インタフェースを含んで構成される。通信部13は、有線又は無線を介して外部装置と通信する。外部装置は、例えば必要データ集合の送信元の装置である。通信部13は、必要データ集合の送信元の装置との通信によって必要データ集合を取得する。
【0039】
記憶部14は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などのコンピュータ読み出し可能な記憶媒体装置(a non-transitory computer readable medium)を用いて構成される。記憶部14は建築物省エネ性能算出支援装置1に関する各種情報を記憶する。記憶部14は、例えば入力部12又は通信部13を介して入力された情報を記憶する。記憶部14は、例えば入力部12又は通信部13に入力された必要データ集合を記憶する。記憶部14は、例えば算出されたパルスターを記憶する。
【0040】
出力部15は、各種情報を出力する。出力部15は、例えばCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等の表示装置を含んで構成される。出力部15は、これらの表示装置を建築物省エネ性能算出支援装置1に接続するインタフェースとして構成されてもよい。出力部15は、例えば入力部12又は通信部13に入力された情報を出力する。出力部15は、スピーカー等の音を出力する装置であってもよい。
【0041】
図3は、実施形態の建築物省エネ性能算出支援装置1が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。入力部12又は通信部13に、必要データ集合が入力される(ステップS101)。次に、制御部11は、必要データ集合に対して有無判定処理を実行する(ステップS102)。すなわち、ステップS102において制御部11は、必要データ集合に欠損データがあるか否かを判定する。
【0042】
有無判定処理の実行により欠損データが無いと判定された場合(ステップS102:NO)、制御部11は出力部15の動作を制御して、欠損データが無い旨を示す情報を出力させる(ステップS103)。ステップS103において制御部11の動作の一例は、例えば出力部15が表示装置であれば、出力部15に欠損データが無い旨を示す情報を表示させる処理である。ステップS103において制御部11の動作の一例は、例えば出力部15が音声の出力装置であれば、出力部15に欠損データが無い旨を示す音を出力させる処理である。
【0043】
一方、有無判定処理の実行により欠損データが有ると判定された場合(ステップS102:YES)、制御部11は欠損データ判定処理を実行する(ステップS104)。次に制御部11は、欠損データ判定処理の結果に基づいて欠損データ補償処理を実行する(ステップS105)。
【0044】
ステップS104において、欠損データ判定処理によってパルスター組の含むデータに欠損データが存在すると判定された場合には、制御部11は、パルスター最適化処理を実行する。そして、制御部11は、欠損データが存在するパルスター組を、パルスター最適化処理の実行の結果のパルスター組で置き換える。このような場合、パルスター組に属さない欠損データについて制御部11は、例えば欠損データに応じて予め定められた所定の値を入力対象の欠損データに入力する、という処理を行う。なお、ステップS102において欠損データが有ると判定された場合、制御部11は出力部15の動作を制御して、欠損データが有る旨を示す情報を出力させてもよい。なお、ステップS104において、欠損データ判定処理によってパルスター組の含むデータに欠損データが存在すると判定された場合には、制御部11は、出力部15の動作を制御して、パルスター組の含むデータに欠損データが存在する旨を示す情報を出力させてもよい。
【0045】
このように構成された実施形態の建築物省エネ性能算出支援装置1は、有無判定処理を実行する。そのため、ユーザは、欠損データがあるか否かについて目視等の確認作業によりユーザ自身が行う必要が無くなる。したがって、建築物省エネ性能算出支援装置1は、建築物の設計に要する労力を軽減することが可能である。
【0046】
また、このように構成された実施形態の建築物省エネ性能算出支援装置1は、欠損データ補償処理を実行する。そのためユーザは、欠損データの値の入力し直しを行わなくて済む。したがって、建築物省エネ性能算出支援装置1は、建築物の設計に要する労力を軽減することが可能である。
【0047】
(変形例)
なお制御部11は、必要データ集合に対して単位違い判定処理を実行してもよい。上述したように必要データ集合は、省エネ計算に必要なデータの集合である。したがって必要データ集合は、建築物に関する値である。建築物の設計には、設計者以外の者でも設計図を理解できるように、使用する単位を決めておく必要がある。例えば、長さはメートルを用いる、などである。しかしながら、必要データ集合に含まれるデータのうちで例えば長さに関するデータの値について、多くはメートルで測定した値であるにもかかわらずフィートで測定した値が紛れ込んでいる場合もある。
【0048】
このような誤ったデータについて、単位をメートルとして省エネ計算が行われてしまうと、適切な結果を得られない。そこで制御部11は、値が適切でないデータである可能性があるか否かを判定し、適切でない可能性がある場合には、出力部15に警告を発せさせてもよい。
【0049】
このような、値が適切でない可能性があるか否かを判定する処理が単位違い判定処理である。単位違い判定処理は、具体的には、予め定められた値(以下「単位基準値」という。)で割り算した結果から整数部の値を引き算した値と零との違いが所定の違い以内であるか否かを、必要データ集合に含まれるデータのうち次元の同じ複数のデータについて行う処理である。
【0050】
単位基準値は、例えば0.0254である。0.0254は1インチの長さをメートルで表した値である。単位基準値は、例えば0.3048である。0.3048は1フィートの長さをメートルで表した値である。単位基準値は、例えば0.9144である。0.9144は1ヤードの長さをメートルで表した値である。単位基準値は、例えば20.1168である。20.1168は1チェーンの長さをメートルで表した値である。単位基準値は、例えば201.168である。201.168は1ハロンの長さをメートルで表した値である。単位基準値は、例えば1609.344である。1609.344は1マイルの長さをメートルで表した値である。
【0051】
制御部11は、単位違い判定処理によって複数のデータを判定した結果、違いが所定の違い以内であるデータが多ければ、単位基準値による割り算の結果が所定の違いより大きいデータは、適切でない可能性があると判定する。一方、制御部11は、単位違い判定処理による複数のデータの判定の結果、違いが所定の違いより大きいデータが多ければ、単位基準値による割り算の結果が所定の違い以内であるデータは、適切でない可能性があると判定する。
【0052】
なお適切とは、予め定められた値である単位基準値で割り算した結果から整数部の値を引き算した値と、零と、の違いが所定の違い以内である、という意味である。
【0053】
制御部11は、単位違い判定処理による複数のデータの判定の結果、全てのデータについて違いが所定の違い以内であれば、単位違い判定処理の判定対象の全てのデータは適切であると判定する。制御部11は、単位違い判定処理による複数のデータの判定の結果、単位違い判定処理の判定対象の全てのデータについて違いが所定の違いより大ければ、単位違い判定処理の判定対象の全てのデータは適切でないと判定する。
【0054】
このような判定により適切でないと判定されたデータが有る場合、制御部11は例えば出力部15に、適切でないと判定されたデータがあることと、適切でないと判定されたデータとを、出力部15に出力させる。
【0055】
上述したように例えば長さの単位基準値の候補は、メートルや、フィートや、ヤードや、ハロン等複数ある。そのため単位違い判定処理で用いられる単位基準値は、必ずしも1種類である必要はない。単位違い判定処理で用いられる単位基準値は2種類以上のN種類(Nは1以上の自然数)であってもよい。このような場合、制御部11は、N種類の単位基準値の1つをまず選択し、選択した単位基準値を用いる単位違い判定処理を必要データ集合に含まれるデータのうち次元の同じ複数のデータに対して実行する。
【0056】
次に単位違い判定処理は、未だ用いられていない単位基準値の1つを選択し、選択した単位基準値を用いる単位違い判定処理を必要データ集合に含まれるデータのうち次元の同じ複数のデータに対して実行する。制御部11は、この処理をN種類全ての単位基準値について行う。
【0057】
制御部11は、N種類の単位基準値を用いた前記単位違い判定処理の結果に基づき、適切であると判定されたデータが最も多い単位基準値がどれであるか、を判定する。以下、制御部11によって、適切であると判定されたデータが最も多い単位基準値であると判定された単位基準値を支配基準値という。
【0058】
すなわち、制御部11は、N種類の単位基準値を用いた単位違い判定処理の結果に基づき、適切であると判定されたデータ、が最も多い単位基準値を支配基準値であると判定する。
【0059】
制御部11は、支配基準値を用いた単位違い判定処理による判定の結果、適切でないと判定されたデータが有る場合、出力部15等の所定の出力先に、適切でないと判定されたデータを出力させる。
【0060】
なお、支配基準値を用いた単位違い判定処理による判定結果において、適切でないと判定されたデータとは、支配基準値で割り算した結果から整数部の値を引き算した値と、零と、の違いが所定の違い以内ではない、と判定されたデータ(以下「不適切データ」という。)である。
【0061】
このような処理を行う建築物省エネ性能算出支援装置1は、単位の誤った値が入力された場合であっても、省エネ計算の実行前にユーザに不適切データ等の値が誤りである可能性があるデータ、を通知することができる。そのため建築物省エネ性能算出支援装置1は、省エネ計算の結果が不自然な値を出した場合に誤りを探し出すユーザの労力を軽減することができる。
【0062】
制御部11は、単位換算処理を実行してもよい。単位換算処理は、支配基準値を用いた単位違い判定処理の結果として不適切データである、と判定されたデータの値を、支配基準値を単位量とする単位の値に、変換する処理である。
【0063】
このような処理を行う建築物省エネ性能算出支援装置1は、単位の誤った値が入力された場合であっても、適切な単位の値に変換することができる。そのため建築物省エネ性能算出支援装置1は、省エネ計算の結果が不自然な値を出した場合に誤りを探し出すユーザの労力を軽減することができる。
【0064】
なお、建築物省エネ性能算出支援装置1は必ずしも1つの筐体で構成される必要はない。建築物省エネ性能算出支援装置1は、ネットワークを介して通信可能に接続された複数台の情報処理装置を用いて実装されてもよい。この場合、建築物省エネ性能算出支援装置1が備える各機能部は、複数の情報処理装置に分散して実装されてもよい。
【0065】
なお、建築物省エネ性能算出支援装置1の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0066】
(付記1)
建築物のエネルギー消費性能に関する法律が定めるエネルギー消費性能の算出に必要なデータの集合である必要データ集合に値の無いデータである欠損データが有るか否かの判定を行う処理である有無判定処理を実行する制御部、
を備え、
前記制御部は、前記有無判定処理において欠損データが有ると判定された場合に、いずれのデータが欠損データであるかを判定する処理である欠損データ判定処理を実行し、さらに、前記欠損データ判定処理の結果に基づいて、各欠損データに、各欠損データに応じた条件であって補償に関する所定の条件である補償条件を満たす補償値を入力する、
建築物省エネ性能算出支援装置。
【0067】
(付記2)
前記補償条件は、欠損データに応じた値であって予め定められた所定の値、という条件である、
付記1に記載の建築物省エネ性能算出支援装置。
【0068】
(付記3)
欠損データが外壁の断熱材の厚さを示す情報とガラスの種類及び厚さを示す情報との組であるパルスター組に存在する場合における前記パルスター組に対する補償値は、パルスターの値と所定の基準値との違いの最小値を与えるパルスター組を推定するパルスター最適化処理の実行の結果である、という補償条件を満たす補償値である、
付記1又は2に記載の建築物省エネ性能算出支援装置。
【0069】
(付記4)
前記制御部は、予め定められた値である単位基準値で割り算した結果から整数部の値を引き算した値と、零と、の違いが所定の違い以内であるか否かを、前記必要データ集合に含まれるデータのうち次元の同じ複数のデータについて行う単位違い判定処理、を実行する、
付記1に記載の建築物省エネ性能算出支援装置。
【0070】
(付記5)
前記制御部は、N種類の単位基準値を用いた前記単位違い判定処理の結果に基づき、予め定められた値である単位基準値で割り算した結果から整数部の値を引き算した値と、零と、の違いが所定の違い以内であると判定されたデータ、が最も多い単位基準値を支配基準値であると判定し、前記支配基準値を用いた前記単位違い判定処理による判定の結果、支配基準値で割り算した結果から整数部の値を引き算した値と、零と、の違いが所定の違い以内ではない、と判定されたデータである不適切データが有る場合、所定の出力先に、前記不適切データを出力させる、
付記4に記載の建築物省エネ性能算出支援装置。
【0071】
(付記6)
前記制御部は、前記不適切データの値を、前記支配基準値を単位量とする単位の値に変換する、
付記5に記載の建築物省エネ性能算出支援装置。
【0072】
(付記7)
コンピュータが実行する建築物省エネ性能算出支援方法であって、
建築物のエネルギー消費性能に関する法律が定めるエネルギー消費性能の算出に必要なデータの集合である必要データ集合に値の無いデータである欠損データが有るか否かの判定を行う処理である有無判定処理を実行する制御ステップ、
を有し、
前記制御ステップは、前記有無判定処理において欠損データが有ると判定された場合に、いずれのデータが欠損データであるかを判定する処理である欠損データ判定処理を実行し、さらに、前記欠損データ判定処理の結果に基づいて、各欠損データに、各欠損データに応じた条件であって補償に関する所定の条件である補償条件を満たす補償値を入力する、
建築物省エネ性能算出支援方法。
【0073】
(付記8)
付記1から3のいずれか一つに記載の建築物省エネ性能算出支援装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【0074】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1…建築物省エネ性能算出支援装置、 11…制御部、 12…入力部、 13…通信部、 14…記憶部、 15…出力部、 91…プロセッサ、 92…メモリ
図1
図2
図3