(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002705
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
F16K 11/065 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
F16K11/065 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102065
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000241267
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトフルードパワーシステム
(72)【発明者】
【氏名】都築 生眞
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA17
3H067BB08
3H067CC60
3H067DD33
3H067EA05
3H067FF11
3H067GG12
3H067GG22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】潤滑油を潤滑必要部分に供給する際に、潤滑油に空気が混入することを良好に防止し得る弁装置を提供する。
【解決手段】切換弁本体1内へ切換弁体10を軸方向へ移動自在に嵌装し、潤滑油を供給する供給流路5と潤滑必要個所Aへ接続する負荷流路6との間を連通してタンクT側に接続する排出流路7を遮断する第1位置と、負荷流路6と排出流路7との間を連通して供給流路5を遮断する第2位置とを有し、切換弁体10の移動で第1位置と第2位置とに切換自在に設けた切換弁9と、排出流路7に配設してチェック弁体15をばね16で付勢して弁座17に着座し、切換弁9側からタンクT側への流れをばね11力に基づくクラッキング圧力以上で許容すると共に、タンクT側から切換弁9側への流れを阻止するばね付チェック弁14とを備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切換弁本体内へ切換弁体を軸方向へ移動自在に嵌装し、液体を供給する供給流路と負荷へ接続する負荷流路との間を連通して低圧側に接続する排出流路を遮断する第1位置と、負荷流路と排出流路との間を連通して供給流路を遮断する第2位置とを有し、切換弁体の移動で第1位置と第2位置とに切換自在に設けた切換弁と、排出流路に配設してチェック弁体をばねで付勢して弁座に着座し、切換弁側から低圧側への流れをばね力に基づくクラッキング圧力以上で許容すると共に、低圧側から切換弁側への流れを阻止するばね付チェック弁とを備え、切換弁体とチェック弁体とを軸方向へ直列に配設したことを特徴とする弁装置。
【請求項2】
前記チェック弁体をチェック弁本体の内部に収装し、チェック弁本体を前記切換弁体の軸方向背部で前記切換弁本体へ着脱自在に取付けたことを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
【請求項3】
前記供給流路の圧力を設定圧力に設定するリリーフ弁を設け、リリーフ弁のリリーフ弁体を前記切換弁体と軸方向に対向して配置し、前記供給流路を二股状に形成し、二股状の一方流路を前記切換弁体に接続すると共に、二股状の他方流路をリリーフ弁体に接続したことを特徴とする請求項1または2のいずれか一つに記載の弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁装置に関し、特に、負荷としての各種機器の潤滑必要部分に液体としての潤滑油を供給する潤滑ユニットに用いて好適な弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の弁装置は切換弁を備え、切換弁は弁体としてのスプールの移動によりポンプからの潤滑油を潤滑必要部分に供給する第1位置と、潤滑必要部分を低圧側に連通する第2位置とに切換自在に設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、かかる従来の弁装置では、潤滑必要部分を低圧側に連通する切換弁の第2位置において、大気開放している低圧側から潤滑必要部分に至る管路に空気が混入するため、切換弁を第1位置に切換て潤滑必要部分に潤滑油を供給する際に、潤滑油に空気が混入してしまう問題点があった。
【0005】
本発明の課題は、負荷に供給する液体に空気が混入することを良好に防止し得る弁装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
切換弁本体内へ切換弁体を軸方向へ移動自在に嵌装し、液体を供給する供給流路と負荷へ接続する負荷流路との間を連通して低圧側に接続する排出流路を遮断する第1位置と、負荷流路と排出流路との間を連通して供給流路を遮断する第2位置とを有し、切換弁体の移動で第1位置と第2位置とに切換自在に設けた切換弁と、排出流路に配設してチェック弁体をばねで付勢して弁座に着座し、切換弁側から低圧側への流れをばね力に基づくクラッキング圧力以上で許容すると共に、低圧側から切換弁側への流れを阻止するばね付チェック弁とを備え、切換弁体とチェック弁体とを軸方向へ直列に配設したことを特徴とする弁装置がそれである。
【0007】
この場合、前記チェック弁体をチェック弁本体の内部に収装し、チェック弁本体を前記切換弁体の軸方向背部で前記切換弁本体へ着脱自在に取付けてもよい。また、前記供給流路の圧力を設定圧力に設定するリリーフ弁を設け、リリーフ弁のリリーフ弁体を前記切換弁体と軸方向に対向して配置し、前記供給流路を二股状に形成し、二股状の一方流路を前記切換弁体に接続すると共に、二股状の他方流路をリリーフ弁体に接続してもよい。
【発明の効果】
【0008】
以上詳述したように、請求項1に記載の発明は、切換弁本体内へ切換弁体を軸方向へ移動自在に嵌装し、液体を供給する供給流路と負荷へ接続する負荷流路との間を連通して低圧側に接続する排出流路を遮断する第1位置と、負荷流路と排出流路との間を連通して供給流路を遮断する第2位置とを有し、切換弁体の移動で第1位置と第2位置とに切換自在に設けた切換弁と、排出流路に配設してチェック弁体をばねで付勢して弁座に着座し、切換弁側から低圧側への流れをばね力に基づくクラッキング圧力以上で許容すると共に、低圧側から切換弁側への流れを阻止するばね付チェック弁とを備えた。このため、切換弁が第2位置に位置する状態で、負荷流路にはばね付チェック弁により低圧側から空気が流入することを阻止できるから、切換弁を第1状態に切換て供給流路から負荷流路を流通して液体を負荷に供給する際に、液体に空気が混入することを良好に防止できる。また、切換弁体とチェック弁体とを軸方向へ直列に配設した。このため、二つの弁体を近傍にまとめて配置することができ、弁装置をコンパクトにすることができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、チェック弁体をチェック弁本体の内部に収装し、チェック弁本体を切換弁体の軸方向背部で切換弁本体へ着脱自在に取付けた。このため、切換弁本体へのチェック弁本体の取付けで、切換弁体とチェック弁体とを軸方向へ直列に配設できるから、弁装置を簡単に制作することができる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、供給流路の圧力を設定圧力に設定するリリーフ弁を設け、リリーフ弁のリリーフ弁体を切換弁体と軸方向に対向して配置し、供給流路を二股状に形成し、二股状の一方流路を切換弁体に接続すると共に、二股状の他方流路をリリーフ弁体に接続した。このため、弁装置は切換弁とばね付チェック弁の機能に加えて供給流路の圧力を設定するリリーフ弁の機能を得るのに、二股状の供給流路を切換弁本体に設けることで切換弁体とリリーフ弁体とを単一の切換弁本体に収めることができ、リリーフ弁を加えた弁装置をコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態を示した弁装置の縦断面図である。
【
図3】
図1とは異なる作動状態を示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
図1および
図2において、1は切換弁本体で、略直方体形状に形成している。2はねじ孔で、切換弁本体1の一側面1Aに開口して軸方向へ穿設している。3はねじ孔2より小径の嵌装孔で、ねじ孔2の軸方向奥部に連設して切換弁本体1に形成している。4は収装孔4で、切換弁本体1の一側面1Aと対向する他側面1Bに開口して軸方向へ穿設し、他側面1Bへの開口側にねじ部を形成している。嵌装孔3と収装孔4とは同芯に形成している。
【0013】
5は圧力源Pからの液体としての潤滑油を供給する供給流路で、切換弁本体1の一側面1A、他側面1Bと直交する底面1Cに開口して切換弁本体1に形成している。供給流路5は二股状に形成し、二股状の一方流路5Aを嵌装孔3の先端面に開口すると共に、二股状の他方流路5Bを収装孔4の先端面に開口している。6は負荷としての機器の潤滑必要部分Aへ接続する負荷流路で、切換弁本体1の底面1Cに供給流路5と軸方向に間隙を有して開口すると共に、嵌装孔3の先端面と軸方向に間隙を有した嵌装孔3の内周面に開口している。7は排出流路で、低圧側としてのタンクTに接続している。タンクTは潤滑油を貯蔵し、大気開放している。8はタンクTに接続する第2排出流路で、切換弁本体1の一側面1A、他側面1Bと直交して底面1Cと対向する平面1Dに開口すると共に、収装孔4の先端面と軸方向に間隙を有した嵌装孔4の内周面に開口している。
【0014】
9は2位置3ポートの切換弁で、スプール状の切換弁体10を切換弁本体1の嵌装孔3へ移動自在に嵌装し、供給流路5と負荷流路6との間を連通して排出流路7を遮断する第1位置9Aと、負荷流路6と排出流路7との間を連通して供給流路5を遮断する第2位置9Bとを有している。切換弁9は嵌装孔3に収装したばね11のばね力で切換弁体10を収装孔3の先端面に向けて付勢して第2位置9Bに切換えると共に、切換弁体10の先端に作用する供給流路5の一方流路5Aの圧力に基づく作用力でばね11力に抗して一側面1Aへの開口側に向けて移動して第1位置9Aに切換自在に設ける。切換弁体10には、一端を先端面に開口して他端を外周面に開口する切換路12を形成し、切換路12の外周面開口箇所へ軸方向の切換弁体10背部側に隣接してランド部10Aと環状溝13を順に形成している。切換弁9の第1位置9Aでは、
図3に示す如く、切換路12が負荷流路6に連通し、負荷流路6と環状溝13との間がランド部10Aで遮断される。切換弁9の第2位置9Bでは、
図1に示す如く、切換路12と負荷流路6との間がランド部10Aで遮断され、負荷流路6と環状溝13との間が連通される。
【0015】
14は排出流路7に配設したばね付チェック弁で、球状のチェック弁体15をばね16で付勢して弁座17に着座し、切換弁9側からタンクT側への流れをばね16力に基づくクラッキング圧力以上で許容すると共に、タンクT側から切換弁9側への流れを阻止する。18はばね付チェック弁14のチェック弁本体で、ねじ孔2に螺着して切換弁体10の軸方向背部で切換弁本体1の一側面1Aへ着脱自在に取付けている。チェック弁本体18は、切換弁本体1への取付けにより自身の頭部でばね11を支持し、内部に弁座17を形成してチェック弁体15、ばね16を収装している。19はばね受け部材で、C字状の止め輪20でチェック弁本体18に固定し、ばね16を支持している。ばね受け部材18には排出流路7に連通する切り欠き21を形成している。ばね付チェック弁14は切換弁9が第2位置9Bにある状態で、負荷流路6の圧力をクラッキング圧力に設定する。負荷流路6の圧力がばね付チェック弁14の設定圧力を超えると、負荷流路6の潤滑油が切換弁体10の環状溝13、弁座17より離脱したチェック弁体15、切り欠き21を流れて排出流路7よりタンクTに排出される。
【0016】
23は供給流路5の圧力を設定圧力に設定するリリーフ弁で、球状のリリーフ弁体24を切換弁体10と軸方向に対向して収装孔4に配置し、リリーフ弁体24をばね25で付勢して収装孔4と供給流路5の他方流路5Bとの連設段部に形成した弁座26に着座している。27はばね力調整部材で、収装孔4のねじ部へ外部から回動操作自在に螺合し、回動操作によりばね25力を調整してリリーフ弁23の設定圧力を調整自在に設けている。28はロックナット部材で、ばね力調整部材27に螺合し、切換弁本体1の他側面1Bへの当接でばね力調整部材27を回動不能にして固定する。リリーフ弁23は供給流路5の圧力が設定圧力を超えると、リリーフ弁体24が弁座26から離脱して供給流路5の潤滑油を収装孔4、第2排出流路8を流してタンクTに排出し、供給流路5の圧力を設定圧力に設定する。
【0017】
次に、かかる構成の作動を説明する。
図1および
図2は、切換弁9が第2位置9Bに位置する状態を示し、供給流路5は遮断され、負荷流路6は排出流路7に連通してばね付チェック弁14のクラッキング圧力に設定されている。
【0018】
この状態で、圧力源Pから潤滑油を供給すると、切換弁体10は先端に作用する供給流路5の圧力に基づく作用力でばね11力に抗して移動し、
図3の状態となり、切換弁9は第1位置9Aに切換る。
【0019】
切換弁9が、
図3に示す第1位置9Aに切換った状態では、排出流路7は遮断され、負荷流路6は切換路12と連通し、供給流路5の潤滑油が切換路12、負荷流路6を流れて潤滑必要部分Aを潤滑する。リリーフ弁23は供給流路5の圧力をばね25力に基づく設定圧力に設定する。
【0020】
この状態で、圧力源Pから供給流路5への潤滑油の供給を停止すると、切換弁体10はばね11力で
図1の位置へ復帰移動し、切換弁9は第2位置9Bに復帰する。そして、供給流路5は遮断され、負荷流路6は排出流路7に連通してばね付チェック弁14のばね16力に基づくクラッキング圧力に設定される。
【0021】
かかる作動において、切換弁本体1内へ切換弁体10を軸方向へ移動自在に嵌装し、潤滑油を供給する供給流路5と潤滑必要個所Aへ接続する負荷流路6との間を連通してタンクT側に接続する排出流路7を遮断する第1位置9Aと、負荷流路6と排出流路7との間を連通して供給流路5を遮断する第2位置9Bとを有し、切換弁体10の移動で第1位置9Aと第2位置9Bとに切換自在に設けた切換弁9と、排出流路7に配設してチェック弁体15をばね16で付勢して弁座17に着座し、切換弁9側からタンクT側への流れをばね11力に基づくクラッキング圧力以上で許容すると共に、タンクT側から切換弁9側への流れを阻止するばね付チェック弁14とを備えた。このため、切換弁9が第2位置9Bに位置する状態で、負荷流路6にはばね付チェック弁14によりタンクT側から空気が流入することを阻止できるから、切換弁9を第1状態9Aに切換て供給流路5から負荷流路6を流通して潤滑油を潤滑必要部分Aに供給する際に、潤滑油に空気が混入することを良好に防止できる。また、切換弁体10とチェック弁体15とを軸方向へ直列に配設した。このため、二つの弁体10、15を近傍にまとめて配置することができ、弁装置をコンパクトにすることができる。
【0022】
また、チェック弁体15をチェック弁本体18の内部に収装し、チェック弁本体18を切換弁体10の軸方向背部で切換弁本体1へ着脱自在に取付けた。このため、切換弁本体1へのチェック弁本体18の取付けで、切換弁体10とチェック弁体15とを軸方向へ直列に配設できるから、弁装置を簡単に制作することができる。
【0023】
また、供給流路5の圧力を設定圧力に設定するリリーフ弁23を設け、リリーフ弁23のリリーフ弁体24を切換弁体10と軸方向に対向して配置し、供給流路5を二股状に形成し、二股状の一方流路5Aを切換弁体10に接続すると共に、二股状の他方流路5Bをリリーフ弁体24に接続した。このため、弁装置は切換弁9とばね付チェック弁14の機能に加えて供給流路5の圧力を設定するリリーフ弁23の機能を得るのに、二股状の供給流路5を切換弁本体1に設けることで切換弁体10とリリーフ弁体24とを単一の切換弁本体1に収めることができ、リリーフ弁23を加えた弁装置をコンパクトにすることができる。
【0024】
なお、前述の実施形態では、切換弁体10をスプール状としたが、ポペット状や球状でもよい。また、チェック弁体15、リリーフ弁体24を球状としたが、ポペット状としてもよい。また、液体を潤滑油としたが、これに限定されるものでないことは勿論である。
【符号の説明】
【0025】
1:切換弁本体
5:供給流路
6:負荷流路
7:排出流路
9:切換弁
9A:第1位置
9B:第2位置
10:切換弁体
14:ばね付チェック弁
15:チェック弁体
16:ばね
17:弁座