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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027052
(43)【公開日】2024-02-29
(54)【発明の名称】A/Dコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H03K 9/02 20060101AFI20240221BHJP
   H03M 1/12 20060101ALI20240221BHJP
   H04L 25/02 20060101ALI20240221BHJP
   H04L 25/49 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
H03K9/02
H03M1/12 C
H04L25/02 R
H04L25/49 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129765
(22)【出願日】2022-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 晋一
【テーマコード(参考)】
5J022
5K029
【Fターム(参考)】
5J022AA06
5J022BA00
5J022CD03
5J022CF00
5J022CF01
5K029FF02
5K029HH08
(57)【要約】
【課題】多値PAM信号を整形可能なイコライザ回路を提供する。
【解決手段】A/Dコンバータ700は、PAM4の差動信号を複数のしきい値と比較して量子化する。差動バッファ710は、差動信号INP/INNを受ける。電圧シフト回路720は、差動バッファ710の差動出力DP/DNをレベルシフトし、コモン電圧が異なる第1差動信号D0P/D0Nおよび第2差動信号D2P/D2Nを生成する。第1コンパレータ730は、第2差動信号D2の逆相信号D2Nと第1差動信号D0の正相信号D0Pを比較する。第2コンパレータ732は、第1差動信号D0の正相信号D0Pと第1差動信号D0の逆相信号D0Nを比較する。第3コンパレータ734は、第2差動信号D2の正相信号D2Pと第1差動信号D0の逆相信号D0Nを比較する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PAM4信号を複数のしきい値と比較して量子化するA/Dコンバータであって、
前記PAM4信号を受ける差動バッファと、
前記差動バッファの差動出力をレベルシフトし、コモン電圧が異なる第1差動信号および第2差動信号を生成する電圧シフト回路と、
前記第2差動信号の逆相信号と前記第1差動信号の正相信号を比較する第1コンパレータと、
前記第1差動信号の正相信号と前記第1差動信号の逆相信号を比較する第2コンパレータと、
前記第2差動信号の正相信号と前記第1差動信号の逆相信号を比較する第3コンパレータと、
を備える、A/Dコンバータ。
【請求項2】
前記電圧シフト回路は、
第1端が前記差動バッファの非反転出力ノードと接続された第1抵抗と、
第1端が前記差動バッファの反転出力ノードと接続された第2抵抗と、
前記差動バッファの前記非反転出力ノードと接地の間に直列に接続された第3抵抗および第1電流源と、
前記差動バッファの前記反転出力ノードと接地の間に直列に接続された第4抵抗および第2電流源と、
を含み、
前記第1抵抗の第2端の信号が、前記第1差動信号の正相信号であり、
前記第2抵抗の第2端の信号が、前記第1差動信号の逆相信号であり、
前記第3抵抗と前記第1電流源の接続ノードの信号が前記第2差動信号の正相信号であり、
前記第4抵抗と前記第2電流源の接続ノードの信号が前記第2差動信号の逆相信号である、請求項1に記載のA/Dコンバータ。
【請求項3】
前記電圧シフト回路は、コモン電圧が、前記第1差動信号のコモン電圧と前記第2差動信号のコモン電圧の中央に位置する第3差動信号をさらに生成し、
前記A/Dコンバータは、
前記第3差動信号の逆相信号と前記第1差動信号の正相信号を比較する第4コンパレータと、
前記第3差動信号の正相信号と前記第1差動信号の逆相信号を比較する第5コンパレータと、
をさらに備える、請求項1に記載のA/Dコンバータ。
【請求項4】
前記電圧シフト回路は、
第1端が前記差動バッファの非反転出力ノードと接続された第1抵抗と、
第1端が前記差動バッファの反転出力ノードと接続された第2抵抗と、
前記差動バッファの前記非反転出力ノードと接地の間に直列に接続された第3抵抗、第4抵抗および第1電流源と、
前記第3抵抗および前記第4抵抗の直列接続に対して並列に接続された第5抵抗と、
前記差動バッファの前記反転出力ノードと接地の間に直列に接続された第6抵抗、第7抵抗および第2電流源と、
前記第6抵抗および前記第7抵抗の直列接続に対して並列に接続された第8抵抗と、
を含み、
前記第1抵抗の第2端の信号が、前記第1差動信号の正相信号であり、
前記第2抵抗の第2端の信号が、前記第1差動信号の逆相信号であり、
前記第4抵抗と前記第1電流源の接続ノードの信号が前記第2差動信号の正相信号であり、
前記第7抵抗と前記第2電流源の接続ノードの信号が前記第2差動信号の逆相信号であり、
前記第3抵抗と前記第4抵抗の接続ノードの信号が前記第3差動信号の正相信号であり、
前記第6抵抗と前記第7抵抗の接続ノードの信号が前記第3差動信号の逆相信号である、請求項3に記載のA/Dコンバータ。
【請求項5】
前記差動バッファは、
入力差動対を構成する第1トランジスタおよび第2トランジスタと、
前記第1トランジスタのドレインと接続された第9抵抗と、
前記第2トランジスタのドレインと接続された第10抵抗と、
前記第1トランジスタのソースおよび前記第2トランジスタのソースと接続された第3電流源と、
を含む、請求項1から4のいずれかに記載のA/Dコンバータ。
【請求項6】
前記差動バッファは、
入力差動対を構成する第1トランジスタおよび第2トランジスタと、
前記第1トランジスタのドレインと接続された第9抵抗と、
前記第2トランジスタのドレインと接続された第10抵抗と、
前記第1トランジスタのソースと接続された第4電流源と、
前記第2トランジスタのソースと接続された第5電流源と、
を含む、請求項1から4のいずれかに記載のA/Dコンバータ。
【請求項7】
前記差動バッファは、前記第1トランジスタのソースと前記第2トランジスタのソースの間に並列に接続された、第11抵抗およびキャパシタをさらに含む、請求項6に記載のA/Dコンバータ。
【請求項8】
ひとつの半導体基板に一体集積化される、請求項1から4のいずれかに記載のA/Dコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多値PAM信号の復調に使用されるA/Dコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシリアルデータ伝送は、NRZ(Non Return to Zero)方式が主流であったが、より高い伝送レートが求められる用途では、PAM(Pulse Amplitude Modulation)4などの多値PAM方式が採用されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】"6.5: A 64Gb/s PAM-4 Transceiver Utilizing an Adaptive Threshold ADC in 16nm FinFET", 2018 IEEE International Solid-State Circuits Conference
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は係る状況に応じてなされたものであり、その例示的な目的の一つは、多値PAM信号の復調に好適なA/Dコンバータの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のある態様は、PAM4信号を複数のしきい値と比較して量子化するA/Dコンバータに関する。A/Dコンバータは、PAM4信号を受ける差動バッファと、差動バッファの差動出力をレベルシフトし、コモン電圧が異なる第1差動信号および第2差動信号を生成する電圧シフト回路と、第2差動信号の逆相信号と第1差動信号の正相信号を比較する第1コンパレータと、第1差動信号の正相信号と第1差動信号の逆相信号を比較する第2コンパレータと、第2差動信号の正相信号と第1差動信号の逆相信号を比較する第3コンパレータと、を備える。
【0006】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明あるいは本開示の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0007】
本開示のある態様によれば、多値PAM信号を量子化できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るN値PAM(PAM-N)信号の伝送システムのブロック図である。
図2図2は、A/Dコンバータおよびその周辺のブロック図である。
図3図3は、PAM4信号と基準レベルの関係を示すレベルダイアグラムである。
図4図4は、PAM4シグナリングで発生する遷移を示す波形図である。
図5図5は、PAM4信号のアイパターンを示す図である。
図6図6は、実施形態1に係るA/Dコンバータのブロック図である。
図7図7は、図6のA/Dコンバータの動作を説明する図である。
図8図8は、図6のA/Dコンバータの動作を説明する図である。
図9図9は、差動2入力コンパレータを示す回路図である。
図10図10は、A/Dコンバータの構成例を示す回路図である。
図11図11は、実施形態2に係るA/Dコンバータの回路図である。
図12図12は、図11のA/Dコンバータの波形図である。
図13図13は、図11のA/Dコンバータの構成例を示す回路図である。
図14図14は、実施形態3に係るA/Dコンバータの回路図である。
図15図15は、実施形態4に係るA/Dコンバータの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0010】
一実施形態に係るA/Dコンバータは、PAM4信号を複数のしきい値と比較して量子化する。A/Dコンバータは、PAM4信号を受ける差動バッファと、差動バッファの差動出力をレベルシフトし、コモン電圧が異なる第1差動信号および第2差動信号を生成する電圧シフト回路と、第2差動信号の逆相信号と第1差動信号の正相信号を比較する第1コンパレータと、第1差動信号の正相信号と第1差動信号の逆相信号を比較する第2コンパレータと、第2差動信号の正相信号と第1差動信号の逆相信号を比較する第3コンパレータと、を備える。
【0011】
PAM4信号の多値レベルの判定のためには、差動信号を、3つのしきい値電圧と比較する必要がある。上記構成では、第1コンパレータ、第2コンパレータ、第3コンパレータはそれぞれ、電圧シフト回路におけるコモン電圧のシフト量に応じた基準電圧を持つこととなり、複数の基準電圧を生成せずに、PAM4信号を量子化できる。そして第1コンパレータ、第2コンパレータ、第3コンパレータは、差動1入力のコンパレータを用いることができるため、回路構成を簡素化できる。
【0012】
一実施形態において、電圧シフト回路は、第1端が差動バッファの非反転出力ノードと接続された第1抵抗と、第1端が差動バッファの反転出力ノードと接続された第2抵抗と、差動バッファの非反転出力ノードと接地の間に直列に接続された第3抵抗および第1電流源と、差動バッファの反転出力ノードと接地の間に直列に接続された第4抵抗および第2電流源と、を含んでもよい。第1抵抗の第2端の信号が、第1差動信号の正相信号であり、第2抵抗の第2端の信号が、第1差動信号の逆相信号であり、第3抵抗と第1電流源の接続ノードの信号が第2差動信号の正相信号であり、第4抵抗と第2電流源の接続ノードの信号が第2差動信号の逆相信号であってもよい。第3抵抗および第4抵抗に発生する電圧降下によって、コモン電圧のシフト量を規定することができる。また第1抵抗と第2抵抗を設けることにより、第1差動信号と第2差動信号の伝搬遅延を揃えることができる。
【0013】
一実施形態において、電圧シフト回路は、コモン電圧が、第1差動信号のコモン電圧と第2差動信号のコモン電圧の中央に位置する第3差動信号をさらに生成してもよい。A/Dコンバータは、第3差動信号の逆相信号と第1差動信号の正相信号を比較する第4コンパレータと、第3差動信号の正相信号と第1差動信号の逆相信号を比較する第5コンパレータと、をさらに備えてもよい。この構成によれば、PAM4信号の遷移のタイミングを検出することができる。
【0014】
一実施形態において、電圧シフト回路は、第1端が差動バッファの非反転出力ノードと接続された第1抵抗と、第1端が差動バッファの反転出力ノードと接続された第2抵抗と、差動バッファの非反転出力ノードと接地の間に直列に接続された第3抵抗、第4抵抗および第1電流源と、第3抵抗および第4抵抗の直列接続に対して並列に接続された第5抵抗と、差動バッファの反転出力ノードと接地の間に直列に接続された第6抵抗、第7抵抗および第2電流源と、第6抵抗および第7抵抗の直列接続に対して並列に接続された第8抵抗と、を含んでもよい。第1抵抗の第2端の信号が、第1差動信号の正相信号であり、第2抵抗の第2端の信号が、第1差動信号の逆相信号であり、第4抵抗と第1電流源の接続ノードの信号が第2差動信号の正相信号であり、第7抵抗と第2電流源の接続ノードの信号が第2差動信号の逆相信号であり、第3抵抗と第4抵抗の接続ノードの信号が第3差動信号の正相信号であり、第6抵抗と第7抵抗の接続ノードの信号が第3差動信号の逆相信号であってもよい。
【0015】
一実施形態において、差動バッファは、入力差動対を構成する第1トランジスタおよび第2トランジスタと、第1トランジスタのドレインと接続された第9抵抗と、第2トランジスタのドレインと接続された第10抵抗と、第1トランジスタのソースおよび第2トランジスタのソースと接続された第3電流源と、を含んでもよい。
【0016】
一実施形態において、差動バッファは、入力差動対を構成する第1トランジスタおよび第2トランジスタと、第1トランジスタのドレインと接続された第9抵抗と、第2トランジスタのドレインと接続された第10抵抗と、第1トランジスタのソースと接続された第4電流源と、第2トランジスタのソースと接続された第5電流源と、を含んでもよい。
【0017】
一実施形態において、差動バッファは、第1トランジスタのソースと第2トランジスタのソースの間に並列に接続された、第11抵抗およびキャパシタをさらに含んでもよい。
【0018】
一実施形態において、A/Dコンバータはひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0019】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0020】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0021】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に接続された(設けられた)状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0022】
また本明細書において、電圧信号、電流信号などの電気信号、あるいは抵抗、キャパシタ、インダクタなどの回路素子に付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値、あるいは回路定数(抵抗値、容量値、インダクタンス)を表すものとする。
【0023】
図1は、実施形態に係るN値PAM(PAM-N)信号の伝送システム100のブロック図である。伝送システム100は、送信回路200、受信回路(デシリアライザ)300を備える。送信回路200と受信回路300の間は、伝送ケーブル102を介して接続される。
【0024】
(送信回路)
送信回路200は、図示しない外部回路から、受信回路300に送信すべきデータS1を受信し、N値のPAM信号S2に変換して受信回路300に送信するシリアライザIC(Integrated Circuit)である。パラレルデータS1の種類は限定されないが、たとえば大容量を高速伝送する必要がある画像データなどが例示される。
【0025】
(受信回路)
受信回路300は、送信回路200からPAM-N信号S2を受信し、受信したデータS3を、図示しない別の外部回路に出力するデシリアライザICである。送信回路200と受信回路300の間の信号伝送は、差動信号が利用される。
【0026】
ここではPAM-N信号として、4値(N=4)のPAM(PAM4)を例とするが、PAM信号の階調数は限定されず、8値や16値、64値にも本開示は適用可能である。
【0027】
はじめに送信回路200の構成を説明する。PAMエンコーダ210は、データS1aをPAM形式のデータS1bに変換する。PAMエンコーダ210において、データS1bにクロック信号が埋め込まれる。PAMエンコーダ210におけるエンコード方式は特に限定されないが、8b10b、10b12b、64b66bなどのDCバランスエンコード方式を用いることができる。
【0028】
P/S変換器220は、PAMエンコーダ210が生成したデータS1bをシリアルデータS1cに変換する。PAMドライバ230は、シリアルデータS1cを、アナログのPAM-N信号S2に変換して出力する。
【0029】
続いて受信回路300の構成を説明する。受信回路300は、波形整形回路310、A/Dコンバータ320、PAM位相比較器330、クロックリカバリ回路340、S/P変換器350、PAMデコーダ360を備える。
【0030】
PAM-N信号S2が伝送ケーブル102を伝送する間に、PAM-N信号S2の波形は歪む。この波形歪みを改善するために波形整形回路310が設けられる。波形歪みは、伝送ロスによる減衰や、伝送ケーブル102のローパス作用による波形歪みなどが例示される。波形整形回路310は、理想的なPAM信号に近づくように、PAM-N信号S2を波形整形する。
【0031】
詳しくは後述するが、波形整形回路310は、PAM-N信号S2を可変ゲインで増幅し、PAM-N信号S2の直流(DC)振幅を調節するVGA(Variable Gain Amplification)機能と、PAM-N信号S2の周波数特性を補正するイコライジング(EQ)機能を備える。波形整形回路310の動作パラメータ、具体的には、DCゲインやイコライジング特性は、後述する自動調節機能によって動的に最適化される。
【0032】
A/Dコンバータ320は、波形整形回路310によって波形整形後のPAM-N信号S2aを量子化して、比較信号S2bに変換する。
【0033】
図2は、A/Dコンバータ320およびその周辺のブロック図である。A/Dコンバータ320は、シンボル判定部322と、振幅判定部324を含む。
【0034】
シンボル判定部322は、スライサと呼ばれる低い分解能を有するフラッシュ型のA/Dコンバータであり、PAM-N信号S2aを、複数の基準レベル(しきい値)Ref11,Ref12,Ref13と比較する。N値のPAM信号に対して、基準レベルの個数は(N-1)である。
【0035】
具体的には、シンボル判定部322は、複数のレベル判定用コンパレータ(以下、単にコンパレータという)COMP11~COMP13を含む。各コンパレータCOMP1i(i=1,2,3)は、PAM-N信号S2aを、対応する基準レベルRef2iと比較する。なおPAM4信号は実際には差動信号であるから、コンパレータCOMP11~COMP13は差動コンパレータであり、差動PAM4信号の差動成分を基準レベルRef11~Ref13と比較し、比較結果を示すビットb1~b3を出力する。
【0036】
図3は、PAM4信号と基準レベルの関係を示すレベルダイアグラムである。図3には、PAM4信号の差動成分(もしくはP成分)Dが示される。シンボルと信号の関係は以下の通りである。
D<Ref11 …シンボル00
Ref11<D<Ref12 …シンボル01
Ref12<D<Ref13 …シンボル10
Ref13<D …シンボル11
【0037】
複数のコンパレータCOMP11~COMP13の出力は、COMP11の出力b1を最下位ビット、COMP13の出力b3を最上位ビットとするサーモメータコードTCと把握できる。コンパレータCOMP1iは、D>Ref1iのとき1、D<Ref1iのとき0を出力する場合の、サーモメータコードTCとシンボルの関係は以下の通りである。
TC=[000] …シンボル00
TC=[001] …シンボル01
TC=[011] …シンボル10
TC=[111] …シンボル11
【0038】
このサーモメータコードTCが、比較信号S2bとしてPAM位相比較器330に供給される。
【0039】
PAM位相比較器330は、比較信号S2b(サーモメータコードTC)を受け、クロックリカバリ回路340が生成するクロック信号CLK(データストローブ信号)と同期して、比較信号S2bを構成する複数のビットb1~b3をラッチする。PAM位相比較器330は、クロック信号CLKでラッチした比較信号S2bを、サーモメータコードから2ビットのバイナリコード(シンボルデータ)S2cに変換する。
【0040】
図1に戻る。S/P変換器350は、バイナリコードS2cを、パラレルデータS2eに変換する。PAMデコーダ360は、送信回路200のPAMエンコーダ210と逆処理を行い、DCバランスエンコードされたパラレルデータS2eをデコードし、データS3を出力する。
【0041】
再び図2を参照する。振幅判定部324は、M個の中間レベル判定コンパレータCOMP21~COMP2Mを含む。ただし、2≦M≦N-2であり、この例ではM=2となっている。
【0042】
中間レベル判定コンパレータCOMP21は、PAM-N信号S2aの差動成分を、第1中間基準値Ref21と比較し、比較結果を示す信号c1を出力する。同様に、中間レベル判定コンパレータCOMP22は、PAM-N信号S2aの差動成分を、第2中間基準値Ref22と比較し、比較結果を示す信号c2を出力する。第1中間基準値Ref21は、理想状態において、PAM-N信号S2がとる中間レベルのひとつであり、この例では、図3に示すようにシンボル01に対応する信号レベルである。第2中間基準値Ref22も同様であり、シンボル10に対応する信号レベルである。
【0043】
振幅判定部324において生成される2つの信号c1,c2は、2ビットの比較信号S2dとしてPAM位相比較器330に供給される。この2ビットの比較信号S2dは、比較信号S2bとともに、クロックリカバリ回路340が生成するクロック信号CLKの周波数あるいは位相の調節に用いられる。
【0044】
図4は、PAM4シグナリングで発生する遷移を示す波形図である。PAM4シグナリングでは、12通りのレベル遷移が発生する。
【0045】
図5は、PAM4信号のアイパターンを示す図である。図5には、クロックリカバリ回路340が生成するクロック信号CLKが示される。図5を参照して、PAM位相比較器330およびクロックリカバリ回路340の動作を説明する。
【0046】
この例では、クロック信号CLKの一方のエッジ(ポジティブエッジ)がデータストローブに使用される。PAM位相比較器330は、クロック信号CLKのポジティブエッジのタイミングで、比較信号S2bをラッチし、2ビットのバイナリコード(シンボルデータ)S2cを生成する。
【0047】
またPAM位相比較器330は、2ビットの比較信号S2d(c1,c2)を、クロック信号CLKのポジティブエッジ(データストローブタイミング)においてラッチし、信号S2fを生成する。この信号S2fは、S/P変換器350によりパラレルデータS2gに変換される。後述のように、パラレルデータS2gは、開口の大きさを示すことから、開口判定データと称する。波形整形回路310の特性は、開口判定データS2gにもとづいて調節してもよい。
【0048】
また、クロック信号CLKの他方のエッジ(ネガティブエッジ)が、クロック信号CLKのタイミング制御および/または周波数制御に使用される。12通りのいずれかの遷移が発生すると、PAM4信号は、複数の基準レベルRef11,Ref21,Ref12,Ref22,Ref13のいずれかとクロスするため、複数の比較信号S2bおよびS2d(図2のb1~b3,c1,c2)のいずれかが変化する。
【0049】
PAM位相比較器330は、複数の比較信号b1~b3,c1,c2のひとつが変化するタイミングと、クロック信号CLKのネガティブエッジのタイミングを比較し(位相比較)、2つのタイミングの前後関係にもとづいて、クロックリカバリ回路340の周波数あるいは位相を調節する。この調節により、クロック信号CLKの周波数および位相が、最適化される。
【0050】
続いて、受信回路300におけるA/Dコンバータ320の代替として利用可能なA/Dコンバータ700について説明する。
【0051】
(実施形態1)
図6は、実施形態1に係るA/Dコンバータ700のブロック図である。A/Dコンバータ700は、図2のシンボル判定部322に対応し、差動信号INP,INNを、基準レベルRef11,Ref12,Ref13と比較する。
【0052】
A/Dコンバータ700は、差動バッファ710、電圧シフト回路720、第1コンパレータ730、第2コンパレータ732、第3コンパレータ734を備える。
【0053】
差動バッファ710は、PAM4変調された差動信号INP/INNを受ける。
【0054】
電圧シフト回路720は、差動バッファ710の差動出力DP/DNをレベルシフトし、コモン電圧が異なる第1差動信号D0P/D0Nおよび第2差動信号D2P/D2Nを生成する。
D2P=D0P-ΔV
D2N=D0N-ΔV
【0055】
電圧のシフト量ΔVは、PAM4信号の振幅に応じて定めることができる。隣接する基準レベルRef11,Ref12の電位差をΔRefとするとき、電圧のシフト量ΔVは、
ΔV=ΔRef×1.5
である。
【0056】
第1コンパレータ730は、第2差動信号の逆相信号D2Nと第1差動信号の正相信号D0Pを比較し、比較結果に応じた差動信号OUT0P/OUT0Nを生成する。
【0057】
第2コンパレータ732は、第1差動信号の正相信号D0Pと第1差動信号の逆相信号D0Nを比較し、比較結果に応じた差動信号OUT2P/OUT2Nを生成する。
【0058】
第3コンパレータ734は、第2差動信号の正相信号D2Pと第1差動信号の逆相信号D0Nを比較し、比較結果に応じた差動信号OUT4P/OUT4Nを生成する。
【0059】
なお、第1コンパレータ730の出力が入れ替えられていることに留意されたい。出力を入れ替える代わりに、第1コンパレータ730の2つの入力を入れ替えてもよい。
【0060】
以上がA/Dコンバータ700の構成である。
【0061】
図7は、図6のA/Dコンバータ700の動作を説明する図である。多値シンボル00、11を受信したときの、第1差動信号D0P/D0Nおよび第2差動信号D2P/D2Nと、第1コンパレータ730、第2コンパレータ732、第3コンパレータ734それぞれの出力信号(正相信号のみ)を示す。
【0062】
シンボル00が入力されたとき、
OUT0P= L
OUT2P= L
OUT4P= L
【0063】
シンボル11が入力されたとき、
OUT0P= H
OUT2P= H
OUT4P= H
【0064】
図8は、図6のA/Dコンバータ700の動作を説明する図である。多値シンボル01、10を受信したときの、第1差動信号D0P/D0Nおよび第2差動信号D2P/D2Nと、第1コンパレータ730、第2コンパレータ732、第3コンパレータ734それぞれの出力信号(正相信号のみ)を示す。
【0065】
シンボル01が入力されたとき、
OUT0P= H
OUT2P= L
OUT4P= L
【0066】
シンボル10が入力されたとき、
OUT0P= H
OUT2P= H
OUT4P= L
【0067】
図2のPAM位相比較器330は、3つのコンパレータ出力OUT0,OUT2,OUT4にもとづいて、PAM信号の多値レベルを判定できる。
【0068】
以上がA/Dコンバータ700の動作である。続いてその利点を説明する。
【0069】
A/Dコンバータ700の利点は、図2のシンボル判定部322との対比によって明確となる。図2のシンボル判定部322では、各コンパレータCOMP1#(#=1,2,3)は、差動信号を、基準レベルRef1#と比較する必要がある。そのため、コンパレータCOMP1#は、差動2入力のコンパレータとして構成する必要がある。図9は、差動2入力コンパレータを示す回路図である。差動2入力コンパレータは、増幅能力が低いため、高速動作の点で不利である。もし、高速シリアル信号の受信に利用しようとした場合、ゲインを大きくするために、差動2入力コンパレータの後段に増幅用のコンパレータをさらに複数段、接続する必要があり、回路規模が大きくなる。
【0070】
これに対して、図6のA/Dコンバータ700によれば、第1コンパレータ730、第2コンパレータ732、第3コンパレータ734はそれぞれ、電圧シフト回路720におけるコモン電圧のシフト量ΔVに応じた基準電圧を持つこととなり、複数の基準電圧を生成せずに、PAM4信号を量子化できる。そして第1コンパレータ、第2コンパレータ、第3コンパレータは、差動1入力のコンパレータを用いることができるため、回路構成を簡素化できる。
【0071】
また差動1入力のコンパレータは、差動2入力のコンパレータに比べてゲインが高いため、高速シリアル信号の受信に好適であり、後段に、高速な増幅用のコンパレータを接続する必要がないか、あるいは接続したとしても、その段数を減らすことができる。
【0072】
続いてA/Dコンバータ700の具体的な構成例を説明する。
【0073】
図10は、A/Dコンバータ700の構成例を示す回路図である。
【0074】
差動バッファ710は、第1トランジスタM21、第2トランジスタM22、第9抵抗R21、第10抵抗R22、第3電流源CS21を含む。第1トランジスタM21および第2トランジスタM22は、入力差動対を形成している。第9抵抗R21は、第1トランジスタM21のドレインと電源ラインの間に接続され、第10抵抗R22は、第2トランジスタM22のドレインと電源ラインの間に接続される。第3電流源CS21は、第1トランジスタM21および第2トランジスタM22のソースと、接地の間に接続される。
【0075】
電圧シフト回路720は、第1抵抗R11,第2抵抗R12、第3抵抗R13、第4抵抗R14、第1電流源CS11、第2電流源CS12を含む。
【0076】
第1抵抗R11は、その第1端が差動バッファ710の非反転出力ノードDPと接続される。第2抵抗R12は、その第1端が差動バッファ710の反転出力ノードDNと接続される。第3抵抗R13および第1電流源CS11は、差動バッファ710の非反転出力ノードDPと接地の間に直列に接続される。第4抵抗R14および第2電流源CS12は、差動バッファ710の反転出力ノードDNと接地の間に直列に接続される。
【0077】
第1抵抗R11の第2端の信号が、第1差動信号D0の正相信号D0Pであり、第2抵抗R12の第2端の信号が、第1差動信号D0の逆相信号D0Nである。また第3抵抗R13と第1電流源CS11の接続ノードの信号が、第2差動信号D2の正相信号D2Pであり、第4抵抗R14と第2電流源CS12の接続ノードの信号が、第2差動信号D2の逆相信号D2Nである。
【0078】
第3抵抗R13および第4抵抗R14の抵抗値をR、第1電流源CS11および第2電流源CS12が生成する定電流をIcとするとき、シフト量ΔVは、
ΔV=R×Ic
となる。
【0079】
第1抵抗R11および第2抵抗R12は、第3抵抗R13および第4抵抗R14と同じ抵抗値を有していることが好ましい。これにより、第1差動信号D0P/D0Nの伝搬経路と第2差動信号D2P/D2Nの伝搬経路は同じインピーダンスを有するため、遅延量を揃えることができる。
【0080】
(実施形態2)
図11は、実施形態2に係るA/Dコンバータ700Aの回路図である。A/Dコンバータ700Aは、図2のシンボル判定部322および振幅判定部324に対応し、差動信号INP,INNを、基準レベルRef11,Ref12,Ref13およびRef21,Ref22と比較する。
【0081】
A/Dコンバータ700Aは、差動バッファ710、電圧シフト回路720A、第1コンパレータ730、第2コンパレータ732、第3コンパレータ734、第4コンパレータ736、第5コンパレータ738を備える。
【0082】
電圧シフト回路720Aは、第1差動信号D0P/D0Nおよび第2差動信号D2P/D2Nに加えて、第3差動信号D1P/D1Nを生成する。第3差動信号D1P/D1Nのコモン電圧は、第1差動信号D0P/D0Nのコモン電圧と第2差動信号D2P/D2Nのコモン電圧の中央に位置する。つまり以下の関係が成り立つ。
D1P=D0P-ΔV/2=D2P+ΔV/2
D1N=D0N-ΔV/2=D2N+ΔV/2
【0083】
第4コンパレータ736は、第3差動信号D1の逆相信号D1Nと第1差動信号D0の正相信号D0Pを比較する。第5コンパレータ738は、第3差動信号D1の正相信号D1Pと第1差動信号D0の逆相信号D0Nを比較する。
【0084】
以上がA/Dコンバータ700Aの構成である。続いてその動作を説明する。
【0085】
図12は、図11のA/Dコンバータ700Aの波形図である。図12の左には、多値シンボル00,11を受信しているときの波形が示され、図12の右には、多値シンボル01,10を受信しているときの波形が示される。
【0086】
PAM位相比較器330は、第1コンパレータ730~第3コンパレータ734の出力にもとづいて、多値シンボルを判定することができる。またPAM位相比較器330は、第1コンパレータ730~第3コンパレータ734の出力に加えて、第4コンパレータ736および第5コンパレータ738の出力にもとづいて、差動信号と基準レベルRef21,Ref22の比較結果を得ることができる。
【0087】
図13は、図11のA/Dコンバータ700Aの構成例を示す回路図である。差動バッファ710の構成は、図10の差動バッファ710と同様である。
【0088】
電圧シフト回路720Aは、第1抵抗R11~第8抵抗R18、第1電流源CS11、第2電流源CS12を含む。
【0089】
第1抵抗R11は、その第1端が差動バッファ710の非反転出力ノードDPと接続される。第2抵抗R12は、その第1端が差動バッファ710の反転出力ノードDNと接続される。
【0090】
第3抵抗R13、第4抵抗R14および第1電流源CS11は、差動バッファ710の非反転出力ノードDPと接地の間に直列に接続される。第5抵抗R15は、第3抵抗R13および第4抵抗R14の直列接続に対して並列に接続される。
【0091】
第6抵抗R16、第7抵抗R17および第2電流源CS12は、差動バッファ710の反転出力ノードDNと接地の間に直列に接続される。第8抵抗R18は、第6抵抗R16および第7抵抗R17の直列接続に対して並列に接続される。
【0092】
第1抵抗R11の第2端の信号が、第1差動信号D0の正相信号D0Pであり、第2抵抗R12の第2端の信号が、第1差動信号D0の逆相信号D0Nである。第4抵抗R14と第1電流源CS11の接続ノードの信号が第2差動信号D2の正相信号D2Pであり、第7抵抗R17と第2電流源CS12の接続ノードの信号が第2差動信号D2の逆相信号D2Nである。
【0093】
第3抵抗R13と第4抵抗R14の接続ノードの信号が、第3差動信号D1の正相信号D1Pであり、第6抵抗R16と第7抵抗R17の接続ノードの信号が、第3差動信号D1の逆相信号D1Nである。
【0094】
(実施形態3)
図14は、実施形態3に係るA/Dコンバータ700Bの回路図である。この実施形態3では、差動バッファ710Bの構成が、図13と異なっている。
【0095】
差動バッファ710Bは、第1トランジスタM21、第2トランジスタM22、第9抵抗R21、第10抵抗R22、第11抵抗R23、第4電流源CS22、第5電流源CS23を含む。第9抵抗R21は、第1トランジスタM21のドレインと電源ラインの間に接続され、第10抵抗R22は、第2トランジスタM22のドレインと電源ラインの間に接続される。第4電流源CS22は、第1トランジスタM21のソースと接地の間に接続され、第5電流源CS23は、第2トランジスタM22のソースと接地の間に接続される。第11抵抗R23は、第1トランジスタM21のソースと第2トランジスタM22のソースの間に接続される。この差動バッファ710Bは、電圧調整用バッファ(振幅調整用のゲインアンプ)として機能する。
【0096】
前段の差動バッファ710Bを、電位変換用バッファとして構成してもよい。その場合、差動バッファ710BをPMOS入力の差動アンプで構成すればよい。具体的には、トランジスタM21,M22をPMOSトランジスタに置き換え、天地を反転した構成となる。PMOSトランジスタであるトランジスタM21のゲートはINNと接続され、PMOSトランジスタであるトランジスタM22のゲートはINPと接続される。
【0097】
(実施形態4)
図15は、実施形態4に係るA/Dコンバータ700Cの回路図である。このA/Dコンバータ700Cは、図2のA/Dコンバータ320の機能に加えて、波形整形回路310の機能を備える。具体的には実施形態4では、差動バッファ710Cの構成が、図14と異なっており、差動バッファ710Cは、イコライジング機能を有する。
【0098】
差動バッファ710Cは、図14の差動バッファ710Bに加えて、キャパシタC21を備える。第9抵抗R21およびキャパシタC21は、第1トランジスタM21のソースと、第2トランジスタM22のソースの間に、並列に接続されている。
【0099】
(付記)
本明細書に開示される技術は、一側面において以下のように把握できる。
【0100】
(項目1)
PAM4信号を複数のしきい値と比較して量子化するA/Dコンバータであって、
前記PAM4信号を受ける差動バッファと、
前記差動バッファの差動出力をレベルシフトし、コモン電圧が異なる第1差動信号および第2差動信号を生成する電圧シフト回路と、
前記第2差動信号の逆相信号と前記第1差動信号の正相信号を比較する第1コンパレータと、
前記第1差動信号の正相信号と前記第1差動信号の逆相信号を比較する第2コンパレータと、
前記第2差動信号の正相信号と前記第1差動信号の逆相信号を比較する第3コンパレータと、
を備える、A/Dコンバータ。
【0101】
(項目2)
前記電圧シフト回路は、
第1端が前記差動バッファの非反転出力ノードと接続された第1抵抗と、
第1端が前記差動バッファの反転出力ノードと接続された第2抵抗と、
前記差動バッファの前記非反転出力ノードと接地の間に直列に接続された第3抵抗および第1電流源と、
前記差動バッファの前記反転出力ノードと接地の間に直列に接続された第4抵抗および第2電流源と、
を含み、
前記第1抵抗の第2端の信号が、前記第1差動信号の正相信号であり、
前記第2抵抗の第2端の信号が、前記第1差動信号の逆相信号であり、
前記第3抵抗と前記第1電流源の接続ノードの信号が前記第2差動信号の正相信号であり、
前記第4抵抗と前記第2電流源の接続ノードの信号が前記第2差動信号の逆相信号である、項目1に記載のA/Dコンバータ。
【0102】
(項目3)
前記電圧シフト回路は、コモン電圧が、前記第1差動信号のコモン電圧と前記第2差動信号のコモン電圧の中央に位置する第3差動信号をさらに生成し、
前記A/Dコンバータは、
前記第3差動信号の逆相信号と前記第1差動信号の正相信号を比較する第4コンパレータと、
前記第3差動信号の正相信号と前記第1差動信号の逆相信号を比較する第5コンパレータと、
をさらに備える、項目1に記載のA/Dコンバータ。
【0103】
(項目4)
前記電圧シフト回路は、
第1端が前記差動バッファの非反転出力ノードと接続された第1抵抗と、
第1端が前記差動バッファの反転出力ノードと接続された第2抵抗と、
前記差動バッファの前記非反転出力ノードと接地の間に直列に接続された第3抵抗、第4抵抗および第1電流源と、
前記第3抵抗および前記第4抵抗の直列接続に対して並列に接続された第5抵抗と、
前記差動バッファの前記反転出力ノードと接地の間に直列に接続された第6抵抗、第7抵抗および第2電流源と、
前記第6抵抗および前記第7抵抗の直列接続に対して並列に接続された第8抵抗と、
を含み、
前記第1抵抗の第2端の信号が、前記第1差動信号の正相信号であり、
前記第2抵抗の第2端の信号が、前記第1差動信号の逆相信号であり、
前記第4抵抗と前記第1電流源の接続ノードの信号が前記第2差動信号の正相信号であり、
前記第7抵抗と前記第2電流源の接続ノードの信号が前記第2差動信号の逆相信号であり、
前記第3抵抗と前記第4抵抗の接続ノードの信号が前記第3差動信号の正相信号であり、
前記第6抵抗と前記第7抵抗の接続ノードの信号が前記第3差動信号の逆相信号である、項目3に記載のA/Dコンバータ。
【0104】
(項目5)
前記差動バッファは、
入力差動対を構成する第1トランジスタおよび第2トランジスタと、
前記第1トランジスタのドレインと接続された第9抵抗と、
前記第2トランジスタのドレインと接続された第10抵抗と、
前記第1トランジスタのソースおよび前記第2トランジスタのソースと接続された第3電流源と、
を含む、項目1から4のいずれかに記載のA/Dコンバータ。
【0105】
(項目6)
前記差動バッファは、
入力差動対を構成する第1トランジスタおよび第2トランジスタと、
前記第1トランジスタのドレインと接続された第9抵抗と、
前記第2トランジスタのドレインと接続された第10抵抗と、
前記第1トランジスタのソースと接続された第4電流源と、
前記第2トランジスタのソースと接続された第5電流源と、
を含む、項目1から4のいずれかに記載のA/Dコンバータ。
【0106】
(項目7)
前記差動バッファは、前記第1トランジスタのソースと前記第2トランジスタのソースの間に並列に接続された、第11抵抗およびキャパシタをさらに含む、項目6に記載のA/Dコンバータ。
【0107】
(項目8)
ひとつの半導体基板に一体集積化される、項目1から7のいずれかに記載のA/Dコンバータ。
【0108】
本開示に係る実施形態について、具体的な用語を用いて説明したが、この説明は、理解を助けるための例示に過ぎず、本開示あるいは請求の範囲を限定するものではない。本発明の範囲は、請求の範囲によって規定されるものであり、したがって、ここでは説明しない実施形態、実施例、変形例も、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0109】
700 A/Dコンバータ
710 差動バッファ
M21 第1トランジスタ
M22 第2トランジスタ
R21 第9抵抗
R22 第10抵抗
R23 第11抵抗
C21 キャパシタ
CS21 第3電流源
CS22 第4電流源
CS23 第5電流源
720 電圧シフト回路
R11 第1抵抗
R12 第2抵抗
R13 第3抵抗
R14 第4抵抗
R15 第5抵抗
R16 第6抵抗
R17 第7抵抗
R18 第8抵抗
CS11 第1電流源
CS12 第2電流源
730 第1コンパレータ
732 第2コンパレータ
734 第3コンパレータ
736 第4コンパレータ
738 第5コンパレータ
100 伝送システム
102 伝送ケーブル
200 送信回路
210 PAMエンコーダ
220 P/S変換器
230 PAMドライバ
300 受信回路
310 波形整形回路
320 A/Dコンバータ
322 シンボル判定部
324 振幅判定部
330 PAM位相比較器
340 クロックリカバリ回路
350 S/P変換器
360 PAMデコーダ
S2 多値PAM信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15