(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027063
(43)【公開日】2024-02-29
(54)【発明の名称】ブラシレス単極発電機
(51)【国際特許分類】
H02K 16/02 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
H02K16/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022139552
(22)【出願日】2022-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】504036981
【氏名又は名称】大保 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】大保 輝彦
(57)【要約】
【課題】一つの回転軸に複数の導体からなる回転子を備えて直列接続させ、また外周の集電部での摩擦損をなくす、ブラシレス単極発電機を提供する。
【解決手段】磁性体からなる回転軸に支持された、同じく磁性体からなる一枚の円板状の回転子と、この回転子の両面を外から挟む、二枚一組となるドーナツ状の導体であって、直径が前記磁性体からなる回転子の直径よりもやや短い回転子と、更にこれら二枚のドーナツ状の導体からなる回転子を外から挟むように、磁場の方向をNN(又はSS)と相対させた一対のドーナツ状の磁石を取り付けて、これらの回転子が一体となって回転するようにし、左右の導体からなる回転子の外周部を銅線で繋ぐための接続通路を磁性体からなる円盤の外周部に設けることで直列接続が可能になる。またこれら左右の導体からなる回転子と一体となっている回転子の内周部の左右両側に軸受を設け、左右の導体からなる回転子の内周部と左右の軸受けとそれぞれ接続することで、ブラシレス単極発電機を提供できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は集電部にブラシを使わないブラシレス単極発電機であって、地球温暖化防止に適応される単極発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
単極発電機は
図4aで示すように非常に単純な機構である。静止している磁石が作る磁場の中を銅のような導体の回転板を回転させると、回転板の中心部と外周部との半径に電位差が生じ、回転板の回転方向によって電流は遠心方向か求心方向へと流れる。また回転板と磁石が一緒に回転しても同じように回転板の半径方向に電位差が発生する。しかし、回転板が静止し磁石が回転すると電位差は発生しないので、電流は流れない。重要な条件は磁場の中で導体の回転板が回転運動をすることである。
【0003】
また、非特許文献1で述べているように「低電圧大電流の直流機として、その原理はFaradayの昔から知られていたものである。しかし、その歴史が古い割合に実用の実績が少ないのは、従来集電に炭素ブラシを使用していたため、高速回転面から大電流を効率よく安定に集電することが困難であったことに基因している」。しかし「電解工業の電源としては,交流電源からシリコン整流器などの変流装置を通して直流を得る方式に比較して、タービン駆動の単極発電機の場合は直接に直流を得ることができ、しかも効率が高いので発電原価が安く経済的になる」と述べている。回転板とブラシとの摩擦により集電接点が摩耗し易く、ブラシの寿命が短くなるとともに、電気的接触抵抗が大きくなるという問題が有るため現在では単極発電機はあまり用いられていなが、電解分野では貢献できる。
【先行技術文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09-238458号広報
【特許文献2】特開2001-286117号広報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J-STAGEトップ/電氣學會雜誌/89巻(1969)972号/書誌「単極直流機の最近の進歩」 仲村 節男 https://doi.org/10.11526/ieejjournal1888.89.1617
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で、従来の単極発電機は「回転子の外周速度が大きいため、回転子との摩擦により集電接点が摩耗し易く、寿命が短くなるとともに、電気的接触抵抗が大きくなり、電圧降下が大きくなって、大きな出力電圧(電流)を得ることができない」と述べ、更に「その構造上、一つの回転軸に複数の回転子を備えて直列接続させることが困難であり、よって複数の単極発電機による大電流(大電力)を得ることが困難である」と述べている。本発明も単極発電機に関する解決しようとする課題は同じである。しかし、解決するための手段は異なる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
先ずは本発明の基本原理を述べる。単極発電機の特徴は、
図4で示すように磁場の方向を一方向に定めて、銅のような導体である回転板を磁場内に置き、時計回りか反時計回りに回転させると、フレミングの右手の法則に従い、回転板の中で電流の流れる方向は遠心方向か求心方向へ流れる。それ故、
図1で示すように、一つの回転軸上の二つの導体である回転板の回転方向を統一し、それぞれの回転板内の磁場の方向を右方向と左方向に異なるように設置すると、二つの回転板内の電流の流れる方向はフレミングの右手の法則が示すように遠心方向と求心方向に異なって流れる。それ故、二つの同じ方向に回転する回転板の外周を導体で連結すれば電流は内周から外周へ流れ、更に外周から内周へと直流電流の直列接続ができる。
【0008】
また、電気の流れる方向は、
図1が示すように左の回転板は内周から外周へ流れ、そして、そこからもう一方である右の回転板の外周へ導かれ、そして内周へ戻るので、集電は回転軸の近くで出来る。そこで集電に軸受を利用すればブラシを用いなくても、又特許文献2で示すように複数の回転軸を必要としなくても集電はできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の単極発電機では一つの回転軸に偶数個の導体である回転板を設け、磁場の方向を相対させることで直列接続が可能になり、更には軸受を利用し集電すると、集電接点が摩耗することなく電圧降下を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
先([0002])に単極発電機の最大の特徴は磁場の中の導体である銅円板5が回転すると、その半径に電位差が発生することを述べた。電位差が発生すると銅円板5の半径に沿って、遠心方向か求心方向に電流が流れる。さて、銅円板5の銅原子は29個の電子を持っている。そして銅原子の最外殻(N)には1個の自由電子がある。電子のスピン軸方向は通常ランダムであるが、磁場内では
図4cが示すように電子のスピン軸の方向は全てが同じ磁場方向に揃う。そして電子のスピン(自転)する方向は反時計回りである。そこで銅円板5も反時計回りに回転させると自由電子に掛かる力は遠心方向になり、銅円板5が時計回りになると自由電子に掛かる力は求心方向になる。(ここで、「電流」の流れる方向は自由電子の移動する方向とは逆方向であると表現されていることに留意。)全ての「自由電子にかかる力」の方向が電位差(電圧)を生む事になる。それ故に、銅円板5は静止し、磁石が作る磁場だけが回転しても銅円板5の「半径」に電位差は生まれない。電位差が「半径」に生じる為には「磁場の中の全ての自由電子の反時計回りのスピン(自転)に、時計回りか反時計回りの公転運動がなければならない」。
【0012】
そこで、
図2で示すように一つの磁性体の回転軸4に、強磁性体の鉄円板6を取り付け、次に該鉄円板6を中心とするように、左右にドーナッツ状の導体である銅円板5(表面は絶縁されている)をそれぞれ取り付け、更に該銅円板5の外側に、磁極が互いにNN(又はSS)と向き合うようにドーナッツ状の磁石7を左右に取り付ければ、互いの磁石7は反発することなく強磁性体の鉄円板6に強く引き付けられ、銅円板5の中を強力な磁束1が生じ、銅円板5の中の全ての自由電子のスピン軸は磁場方向に揃う。そして、これらを
図1で示すようにすべての回転板を同じ方向に回転させると、左側の銅円板5aの中で電流3は遠心方向3aに流れ、右側の銅円板5bの中では電流3は求心方向3bに流れ、該二枚の銅円板5の外周部を導体で接続すれば、一方の銅円板5aの内周からもう一方の銅円板5bの内周へと直流電流3は流れるので、直列接続ができ、電圧を高めることが出来る。
【0013】
次に
図3で示す集電に用いる軸受8を説明する。先ずは
図3で示す回転軸4の周りを絶縁体9で覆い、次に絶縁体9の周りに導体10で覆い、これら回転軸4、絶縁体9及び導体10は一体となって回転するようにし、そこに軸受8(円筒ころ軸受:シンドリカルローラーベアリング)を取り付ければ、回転軸4、絶縁体9、導体10及び軸受8の内輪8aは一体となって回転する。該軸受8の外輪8bは静止し、内輪8aと外輪8bの間にある円筒ころ8cは坂を転がるように回転し、集電接点が摩耗することはない。
【0014】
軸受8に玉軸受(ボールベアリング)を用いと集電部が複数の点になるが、円筒ころ軸受を用いると集電部は複数の線となる。さらに多くの線を求めるなら、糸状ころ軸受(ニードルローラーベアリング)を用いると大きな電流が無理なく集電出来る。
【0015】
次に電流の流れを
図2及び
図3で示す。先ずは
図2にある左の銅円板5aの内周部から外周部へと遠心方向に電流3aが発生し、次に右の銅円板5bの外周部へ流れ、そこから求心方向に電流3bが内周部へと流れ、右の軸受8へ流れる。銅円板5bの内周部から流れた電流3は
図3で示す回転軸4と共に回転する導体10、内輪8aへ流れ、そこから静止している外輪8bへと流れる。集電に用いられる軸受8には荷重をかけていないので大きな負荷はかからない。尚、本来の荷重を受ける軸受は図示されていない。
【0016】
しかし注意する点は、二枚の銅円板5を外周部で、鉄円板6を跨ぎ接続するには、
図2で示すように磁性体の鉄円板6の外周部から外向き(又は内向き)の強烈な磁場を横切ることになり、非常に大きな抵抗を受けることになる。そこで強烈な磁場を横切る為には該鉄円板6の外周に接続通路(穴、又は溝)11を施し、該接続通路11を電流が通過するようにすれば磁場の影響を受けることなく、直列接続ができる。
【0017】
また、本発明の単極発電では自由電子が流れる方向は遠心方向と求心方向の組み合わせであるので、二つの銅円板5の外周を複数個所で繋げればより多くの電子(電流)が流れやすくなる。
【0018】
更には、より高い電圧を求めるには
図2で示す左右一枚ずつの銅円板5の一組だけでなく、さらに多くの銅円板5の組み合わせにすることで多くの直列接続が可能になり、電圧を上げることができる。電気の全ては自由電子の流れに掛かる電位差(V)と、その電子の流量(A)の問題になる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
単極発電機の特徴である直流の低電圧と高電流を求める分野の一つに水電解がある。昨今の地球温暖化防止のための一つとして水を電気分解し、水素を得る技術(水電解)があるが、現在の技術は非特許文献1が述べたように、交流を直流に変換しているのであまり効率は良くない。しかし、単極発電機のように低電圧で電子の流量(A)が多くなれば、水素の発生量が多くなるので、水電解では有利である。
【0020】
又、昨今は二酸化炭素を排出するガソリン車ではなく、電気自動車(BEV)の普及が求められ、二次電池(充電池)に充電する際にも直流の低電圧・高電流が求められる。そして現在、電気自動車を駆動するモーターは磁石が回転子で、コイルが固定子のモーターで、走行中はモーターであるが、減速時にはジェネレーター(発電機)として発電し、モータージェネレーター(MG)と呼ばれている。発電された交流をダイオードなどによって整流することで直流にして鉛蓄電池などに一旦充電し、後で二次電池に充電している。
【0021】
一方、単極発電機は固定子を持たず、回転子だけで直流電気を発電するので走行中の運動量が大きな電気自動車を減速させることなく走行中に発電し、二次電池に充電できる車載直流発電機となればゲームチェンジャーとなり得る。
【符号の説明】
【0022】
1 磁場 2 回転方向
3 電流 3a 遠心方向の電流 3b 求心方向の電流
4 回転軸 5 銅円盤 6 鉄円盤
7 磁石
8 軸受 8a 内輪 8b 外輪 8c円筒ころ
9 絶縁材
10 導体
11 接続通路(穴、又は溝)
【手続補正書】
【提出日】2022-10-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体からなる回転軸と、
前記回転軸に支持された磁性体からなる一枚の円板状の回転子と、
前記磁性体からなる回転子の両面を外から挟む、二枚一組となるドーナツ状の導体であって、直径が前記磁性体からなる回転子の直径よりもやや短い回転子と、
更に前記二枚のドーナツ状の導体からなる回転子を外から挟むように、磁場の方向をNN(又はSS)と相対させた一対のドーナツ状の磁石を取り付け、
前記二枚の導体からなる回転子の外周側で互いが、前記磁性体からなる回転子を跨いで通電できるように、一つ又は複数の接続通路(穴、又は溝)を設け直列接続し、
前記一枚の磁性体からなる回転子と、前記二枚の導体からなる回転子と、前記二枚の磁石の全てが一体の回転子となる単極発電機。
【請求項2】
請求項1の単極発電機であって、前記回転軸に支持されている前記一体の回転子の左右両側に軸受を取り付け、前記回転軸と前記軸受が通電しないように絶縁体を挟み、左側の前記導体からなる回転子の内周と、前記左側の軸受けの内輪とを通電し、
右側の前記導体からなる回転子の内周と、前期右側の軸受けの内輪とを通電し、
外部からの集電は、前記左右の軸受けの外輪から集電するブラシレス単極発電機。
【請求項3】
請求項2のブラシレス単極発電機であって、前記二枚一組のドーナツ状の導体からなる回転子を複数組作り、
前記複数組の導体からなる左右の回転子の電気的な接続は前記磁性体からなる回転子の外周側と内周側に前記接続通路を作ることで更に長い直列接続を持つブラシレス単極発電機。