(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027080
(43)【公開日】2024-02-29
(54)【発明の名称】玉ねぎの表皮除去方法及び玉ねぎの表皮除去装置
(51)【国際特許分類】
A23N 15/08 20060101AFI20240221BHJP
B26F 3/00 20060101ALI20240221BHJP
B26D 7/18 20060101ALI20240221BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20240221BHJP
A23N 12/02 20060101ALN20240221BHJP
【FI】
A23N15/08 A
B26F3/00 Z
B26D7/18 D
G01C3/06 120Z
A23N12/02 N
A23N12/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018828
(22)【出願日】2023-02-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2022129650
(32)【優先日】2022-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】522325229
【氏名又は名称】大星電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148862
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179811
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 良和
(72)【発明者】
【氏名】原 博文
(72)【発明者】
【氏名】志賀 大三
(72)【発明者】
【氏名】窪田 瑛
(72)【発明者】
【氏名】松尾 和秀
(72)【発明者】
【氏名】若松 隆
(72)【発明者】
【氏名】神志那 昇
【テーマコード(参考)】
2F112
3C060
4B061
【Fターム(参考)】
2F112AD10
2F112CA12
2F112DA25
3C060AA20
3C060CA07
3C060CE23
4B061AA01
4B061AB04
4B061BA03
4B061BB07
4B061CA04
4B061CA13
4B061CB02
4B061CB12
(57)【要約】
【課題】玉ねぎの表皮を容易に除去することができ、表皮を除去する際に可食部に傷が入るのを抑制することができる玉ねぎの表皮除去方法及び玉ねぎの表皮除去装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る玉ねぎの表皮除去方法は、玉ねぎの表皮を選択的に切断しうる条件で、レーザーを前記表皮に照射し、前記表皮に切れ目を入れる工程Aと、前記玉ねぎから前記切れ目が入った前記表皮を除去する工程Bとを有する。前記レーザーの波長が、300~500nmであることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
玉ねぎの表皮を選択的に切断しうる条件で、レーザーを前記表皮に照射し、前記表皮に切れ目を入れる工程Aと、
前記玉ねぎから前記切れ目が入った前記表皮を除去する工程Bと
を有する
玉ねぎの表皮除去方法。
【請求項2】
前記レーザーの波長が、300~500nmである
請求項1に記載の玉ねぎの表皮除去方法。
【請求項3】
前記工程Bにおいて、空気を吹き付け、前記玉ねぎから前記切れ目が入った前記表皮を除去する
請求項1に記載の玉ねぎの表皮除去方法。
【請求項4】
前記工程Aにおいて、前記玉ねぎを回転させつつ、前記レーザーを前記表皮に照射する
請求項1に記載の玉ねぎの表皮除去方法。
【請求項5】
前記工程Aにおいて、前記レーザーを走査させつつ、前記レーザーを前記表皮に照射する
請求項1に記載の玉ねぎの表皮除去方法。
【請求項6】
前記工程Aにおいて、前記レーザーを照射するレーザー照射部から前記表皮までの距離を計測する計測工程を有する
請求項1に記載の玉ねぎの表皮除去方法。
【請求項7】
前記切れ目は、X字形状である
請求項1に記載の玉ねぎの表皮除去方法。
【請求項8】
前記工程Aの前に、前記玉ねぎの表面に付着している付着物を除去するための前処理を行う工程Cを有する
請求項1に記載の玉ねぎの表皮除去方法。
【請求項9】
玉ねぎの表皮を選択的に切断しうる条件で、レーザーを前記表皮に照射し、前記表皮に切れ目を入れることが可能なレーザー照射部と、
前記玉ねぎから前記切れ目が入った前記表皮を除去する表皮除去部と
を有する
玉ねぎの表皮除去装置。
【請求項10】
前記レーザーの波長が、300~500nmである
請求項9に記載の玉ねぎの表皮除去装置。
【請求項11】
前記表皮除去部は、前記切れ目が入った前記表皮に対して空気を吹き付ける空気吹き付け手段を有する
請求項10に記載の玉ねぎの表皮除去装置。
【請求項12】
さらに、前記玉ねぎを回転させる回転機構を備える
請求項11に記載の玉ねぎの表皮除去装置。
【請求項13】
前記回転機構は、回転軸が水平方向に平行に配置された一対のローラーを備え、
一対の前記ローラーのそれぞれは、両端から内側に向かって径が小さくなるよう構成され、
前記レーザー照射装置は、一対の前記ローラーの隙間を通して、前記玉ねぎに前記レーザーを照射する位置に配されている
請求項12に記載の玉ねぎの表皮除去装置。
【請求項14】
前記回転機構は、前記玉ねぎの芽を下にした状態で、前記玉ねぎの上下方向を回転軸として回転可能に前記玉ねぎを保持する保持部と、
前記玉ねぎの根側から前記玉ねぎに当接し、前記回転軸を中心に前記玉ねぎを回転させる回転部と
を有する
請求項12に記載の玉ねぎの表皮除去装置。
【請求項15】
前記レーザー照射部は、前記表皮上のレーザー照射位置を移動させる走査機構を備える
請求項9に記載の玉ねぎの表皮除去装置。
【請求項16】
さらに、前記レーザー照射部から前記表皮までの距離を計測する計測手段を備える
請求項9に記載の玉ねぎの表皮除去装置。
【請求項17】
前記玉ねぎの表面に付着している付着物を除去する前処理部を有する
請求項9に記載の玉ねぎの表皮除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玉ねぎの表皮除去方法及び玉ねぎの表皮除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の外食産業の発展により、玉ねぎの需要が高まってきている。玉ねぎを調理するには、表皮を除去する必要があり、表皮を玉ねぎから除去する装置が種々開発されている。
特許文献1には、一定の方向に低速移動する玉ねぎの支持盤と、該支持盤の上方にあって上下に昇降し、適度の間隔を介して前後に配置された玉ねぎの根芯除去部材及び玉ねぎの表皮に対して縦方向に複数個のスリットを入れるためのスリット付与部材と、前記支持盤の下側で前記根芯除去部材の対応位置に設置された玉ねぎの芽芯除去カッターとからなり、前記玉ねぎの支持盤に開口かす円筒状の支持穴に玉ねぎを倒立状態に置き、支持盤の移動に伴い玉ねぎが前記根芯除去部材の位置に到達したとき該根芯除去部材が下降して玉ねぎの根芯部を除去すると同時に芽芯除去カッターが玉ねぎの芽芯を切除し、つぎに、玉ねぎがスリット付与部材の位置に到達すると該スリット付与部材が下降して玉ねぎの表皮に対して縦方向に複数個のスリットを入れるようになることを特徴とする玉ねぎの自動皮剥装置が記載されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献2には、対象物の外表面に、略等間隔に複数の縦方向のスリットを切り込むスリット形成装置において、昇降装置により昇降動し、搬送路にセットされた対象物に接近乃至離間する基板と、該基板に設けられて下方に延び、基板の下降により下端が前記対象物の上部に衝合する伸縮可能なセンターロッドと、該センターロッドを中心にした周方向に等間隔に配置されて下方に延びると共に、前記基板に上部が枢着された複数のアームと、該アームが前記センターロッドから離間する方向へ枢動すると接近方向に付勢させる付勢手段と、前記アームの下方に軸支されて、下端のトレッド面がアーム及び刃部よりも下方に設定されたガイドローラと、前記アームの下方であってガイドローラの枢着位置と重なる位置で、アームの下方に着脱可能なカッター取付片を介して固定されて、先端の刃先が前記ガイドローラの外周面よりもセンターロッドの軸線方向寄りに突出した刃先を有する刃部とからなっており、前記昇降装置により下降する基板により、センターロッドの下端が前記対象物の中央上部に衝合し、更に基板が下降すると、センターロッドが短縮して前記衝合姿勢を保ち、アームは、ガイドローラのトレッド面が対象物の外周面に倣って転動することで、センターロッドから離間又は接近する方向へ枢動し、刃部の刃先が対象物の外表面を切り裂いてスリットを形成することを特徴とするスリット形成装置が記載されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-135570号公報
【特許文献2】特許第5787424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1及び2に記載された装置では、玉ねぎの表皮だけでなく可食部にまで切り込みが入るため、表皮だけでなく可食部も除去されてしまう問題があった。また、刃が可食部にも接触するため、刃部の洗浄が必要で、さらに、定期的に刃部を交換する必要があり、装置の取り扱いが煩雑であった。
【0006】
そこで、本発明は、玉ねぎの表皮を容易に除去することができ、表皮を除去する際に可食部に傷が入るのを抑制することができる玉ねぎの表皮除去方法及び玉ねぎの表皮除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る玉ねぎの表皮除去方法は、
玉ねぎの表皮を選択的に切断しうる条件で、レーザーを前記表皮に照射し、前記表皮に切れ目を入れる工程Aと、
前記玉ねぎから前記切れ目が入った前記表皮を除去する工程Bと
を有する。
また、本発明に係る玉ねぎの表皮除去装置は、
玉ねぎの表皮を選択的に切断しうる条件で、レーザーを前記表皮に照射し、前記表皮に切れ目を入れることが可能なレーザー照射部と、
前記玉ねぎから前記切れ目が入った前記表皮を除去する表皮除去部と
を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、玉ねぎの表皮を容易に除去することができ、表皮を除去する際に可食部に傷が入るのを抑制することができる玉ねぎの表皮除去方法及び玉ねぎの表皮除去装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る玉ねぎの表皮除去装置を示す模式的斜視図である。
【
図2】
図1の玉ねぎの表皮除去装置を示す模式的上面図である。
【
図3】
図1の玉ねぎの表皮除去装置を示す模式的側面図である。
【
図4】玉ねぎの表皮及び可食部の吸収スペクトルとその差を示すグラフである。
【
図5】レーザー照射部と表皮除去部との位置関係を表した模式図である。
【
図6】レーザー照射部及び表皮までの距離を計測する計測手段を示す模式図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る玉ねぎの表皮除去装置を示す模式的側面図である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係る玉ねぎの表皮除去装置を示す模式的側面図である。
【
図9】本発明の第4実施形態に係る玉ねぎの表皮除去装置を示す模式的側面図である。
【
図10】本発明の第5実施形態(a)、第6実施形態(b)に係る玉ねぎの表皮除去装置を示す模式的側面図である。
【
図11】本発明の第7実施形態に係る玉ねぎの表皮除去装置を示す模式的側面図である。
【
図12】玉ねぎの表皮に形成した切れ目の形状を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<玉ねぎの表皮除去方法及び玉ねぎの表皮除去装置>
[玉ねぎの表皮除去装置の第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る玉ねぎの表皮除去装置を示す模式的斜視図、
図2は、
図1の玉ねぎの表皮除去装置を示す模式的上面図、
図3は、
図1の玉ねぎの表皮除去装置を示す模式的側面図、
図4は、玉ねぎの表皮及び可食部の吸収スペクトルとその差を示すグラフである。
【0011】
本実施形態に係る玉ねぎの表皮除去装置1は、
図1~3に示すように、玉ねぎ10の表皮を選択的に切断しうる条件で、レーザーを表皮に照射し、表皮に切れ目を入れることが可能なレーザー照射部11と、玉ねぎ10から切れ目の入った表皮を除去する表皮除去部12と、玉ねぎ10を回転させる回転機構20とを有している。また、本実施形態に係る玉ねぎの表皮除去装置1を用いた玉ねぎの表皮除去方法は、玉ねぎ10の表皮を選択的に切断しうる条件で、レーザーを表皮に照射し、表皮に切れ目を入れる工程Aと、玉ねぎ10から切れ目の入った表皮を除去する工程Bとを有している。
【0012】
レーザー照射部11では、玉ねぎ10の表皮を選択的に切断しうる条件で、レーザーを玉ねぎ10の表皮に照射し、表皮に切れ目を入れる(工程A)。なお、「選択的に切断」とは、「表皮のみ切断」する場合だけでなく、表皮が切断されていて可食部にはレーザー照射の軽微な痕跡(切断までは行かない軽微な傷やレーザーによる軽微な焦げ跡)がある場合も含む。
ところで、玉ねぎの表皮には一般にケルセチンという成分が多く含まれていることから、レーザーの波長によってはその吸収率が玉ねぎの表皮と玉ねぎの可食部とでは異なっているはずである。発明者らはその点に着目し、表皮での吸収率が高く、可食部では吸収率が低い波長のレーザーを用いれば、可食部へのレーザーの影響をより小さくし、表皮を選択的に切断できるという考えに至った。そこで、一般的な玉ねぎの表皮と玉ねぎの可食部とで吸収スペクトルを測定したところ、
図4のような関係が得られた。
図4のグラフ中、Aは表皮の吸収スペクトル曲線、Bは可食部の吸収スペクトル曲線、Cは表皮と可食部の吸収率の差を示す曲線である。
図4のグラフからは、300~500nmの波長域のレーザーが、表皮における吸収率と可食部における吸収率との差が大きいとともに、可食部での吸収率が低いことが解る。すなわち、表皮に照射するレーザーの波長は、300~500nmであることが好ましく、350~450nmであることがより好ましい。これにより、可食部へのレーザー照射の影響を抑制しつつ、玉ねぎ10の表皮を選択的に切断することができる。
【0013】
レーザーの種類としては、YAGレーザー(波長355nm:第三高調波(THG))、固体レーザー(波長303、355nm:紫外線固体レーザー、491nm:青色固体レーザー)、LD(半導体)レーザー(波長375、405、445、450nm)等を挙げることができる。なお、図示の構成では、レーザー照射部11が2つ設けられているが、1つでもよいし、3つ以上であってもよい。
なお、レーザーによって玉ねぎ10の表皮を選択的に切断しうる条件を、工程Aの前にあらかじめ検討し決定しておくことが好ましい。すなわち、工程Aの前に、表皮を選択的に切断しうる条件を検討し決定する条件決定工程を有することが好ましい。条件決定工程では、照射するレーザーの種類によって、レーザーの照射強度、レーザーの照射時間や玉ねぎの回転速度等を調整し、玉ねぎ10の表皮を選択的に切断しうる条件を検討し決定する。
【0014】
表皮除去部12は、レーザーによって切れ目を入れた表皮を玉ねぎ10から除去する機能を有している(工程B)。表皮を除去する手段としては、例えば、切れ目の入った表皮に空気を吹き付ける空気吹き付け手段、切れ目の入った表皮に水を吹き付ける水吹き付け手段等が挙げられる。これらの中でも、空気を吹き付けて表皮を除去する空気吹き付け手段を用いることが好ましい。なお、本実施形態では、表皮除去部12が玉ねぎ10の上部に設けられているがこれに限定されず、例えば、
図5(a)に示すように、レーザー照射部11と一体となっている構成であってもよいし、
図5(b)に示すように、レーザー照射部11からのレーザー照射位置に向けて空気や水を吹き付けるような構成であってもよい。
【0015】
回転機構20は、玉ねぎ10を回転させる機能を備えている。すなわち、工程Aにおいて、玉ねぎ10を回転させつつ、レーザーを表皮に照射することが好ましい。なお、回転機構20はなくてもよく、その場合は、
図8に示すように、玉ねぎ10は動かずに、レーザー照射部が移動しつつ、玉ねぎ10の表皮にレーザーを照射する構成であることが好ましい。回転機構20は、一対のローラー13、14と、駆動モーター15と、ローラー13及びローラー14の回転を同期させる駆動ベルト16とを備えている。
【0016】
ローラー13、14は、回転軸が水平方向において平行に配置されている。ローラー13、14のそれぞれは、両端から内側に向かって径が小さくなるよう構成されている。
本実施形態では、
図1~3に示すように、ローラー13、14は、一方に向かって漸次小径となる横倒した切頭円錐状のローラー構成部13a、14aを、中間に隙間を隔てて外側が大径となるように左右対称に一対に配置し、それぞれ回転軸13b、14bに固定している。ローラー13、14は、前後に隙間を隔てて直列に配置されており、その中央部に玉ねぎ10を保持する窪みXが形成されている。駆動モーター15から伝えられる動力は、駆動ベルト16を介して、ローラー13、14を同方向に回転させ、ローラー13、14の中央の窪みXに保持された玉ねぎ10を、ローラー13、14とは逆に回転させる。
【0017】
本実施形態において、レーザー照射部11は、ローラー13、14の下部に配置されており、ローラー13、14の隙間、具体的には、ローラー13、14の間の窪みXを通して、玉ねぎ10に対してレーザーを照射するよう構成されている。このような構成とすることにより、玉ねぎ10が入れ替わっても、玉ねぎ10の位置をローラー13、14で特定することができ、レーザー照射部11から玉ねぎ10までの距離を推定することが容易となり、レーザーの焦点を表皮に合わせやすくなる。
【0018】
また、玉ねぎの表皮除去装置1は、レーザー照射部11から表皮までの距離を計測する計測手段17を備えることが好ましい。これにより、レーザー照射部11から照射されるレーザーの焦点をさらに容易に調整することができる。計測手段17としては、
図6(a)の構成のような光学式や音波式の非接触式距離測定装置を用いてもよいし、
図6(b)の構成のようなガイドフィンガーを備えた接触式距離測定装置を用いてもよい。なお、計測手段17の配置は、図示の構成に限定されない。
また、玉ねぎの表皮を除去する前又は除去した後に、玉ねぎの根や芯を除去する工程を有していてもよい。すなわち、玉ねぎの表皮除去装置1は、玉ねぎの根を除去する根除去装置と玉ねぎの芯を除去する芯除去装置を有していてもよい。
【0019】
[玉ねぎの表皮除去装置の第2実施形態]
次に、玉ねぎの表皮除去装置の第2実施形態について説明する。
図7は、本発明の第2実施形態に係る玉ねぎの表皮除去装置を示す模式的側面図である。
本実施形態に係る玉ねぎの表皮除去装置1は、前述した第1実施形態と同様に、玉ねぎ10の表皮にレーザーを照射し、表皮に切れ目を入れるレーザー照射部11と、切れ目の入った表皮を除去する表皮除去部12と、玉ねぎ10を回転させる回転機構20とを有している。
本実施形態では、回転機構20が、ろくろのように回転する回転台で構成されており、回転台上に玉ねぎ10を載置した状態で、回転台を回転させることで玉ねぎ10を回転させる構成となっている。なお、レーザー照射部11は複数設けてもよい。
また、第2実施形態の玉ねぎの表皮除去装置では、上述したような計測手段17によりレーザー照射部11から表皮までの距離を計測した後に、レーザー照射を行うことが好ましい。これにより、レーザー照射部11から照射されるレーザーの焦点をより容易に調整することができる。
【0020】
[玉ねぎの表皮除去装置の第3実施形態]
次に、玉ねぎの表皮除去装置の第3実施形態について説明する。
図8は、本発明の第3実施形態に係る玉ねぎの表皮除去装置を示す模式的側面図である。
本実施形態に係る玉ねぎの表皮除去装置1は、前述した第1実施形態と同様に、玉ねぎ10の表皮にレーザーを照射し、表皮に切れ目を入れるレーザー照射部11と、切れ目の入った表皮を除去する表皮除去部12(
図8では省略)とを有している。
本実施形態では、レーザー照射部11が、マニピュレーター18によって移動し、表皮に対するレーザーの照射位置を変更することが可能となっている。すなわち、本実施形態では、玉ねぎ10は回転せずに、レーザー照射部11が移動して表皮に切れ目を入れる構成となっている。
また、第3実施形態の玉ねぎの表皮除去装置では、上述したような計測手段17によりレーザー照射部11から表皮までの距離を計測した後、または、計測しつつ、レーザー照射を行うことが好ましい。これにより、レーザー照射部11から照射されるレーザーの焦点をより容易に調整することができる。
【0021】
[玉ねぎの表皮除去装置の第4実施形態]
次に、玉ねぎの表皮除去装置の第4実施形態について説明する。
図9は、本発明の第4実施形態に係る玉ねぎの表皮除去装置を示す模式的側面図である。
本実施形態に係る玉ねぎの表皮除去装置1は、前述した第1実施形態と同様に、玉ねぎ10の表皮にレーザーを照射し、表皮に切れ目を入れるレーザー照射部11と、切れ目の入った表皮を除去する表皮除去部12とを有している。
本実施形態では、レーザー照射部11が、表皮上のレーザー照射位置を移動させる走査機構19を備えている。走査機構19としては、ガルバノミラーやポリゴンミラー等の各種ミラーを備えたレーザー走査に用いる一般的な装置を用いることができる。本実施形態では、第1実施形態とは異なり、玉ねぎ10を回転させずに、レーザー走査によってレーザー照射位置を変更し、表皮に切れ間を入れる構成となっている。
また、第2実施形態の玉ねぎの表皮除去装置では、上述したような計測手段17によりレーザー照射部11から表皮までの距離を計測した後、または、計測しつつ、レーザー照射を行うことが好ましい。これにより、レーザー照射部11から照射されるレーザーの焦点をより容易に調整することができる。
【0022】
[玉ねぎの表皮除去装置の第5実施形態及び第6実施形態]
次に、玉ねぎの表皮除去装置の第5実施形態及び第6実施形態について説明する。
図10は、本発明の第5実施形態(a)、第6実施形態(b)に係る玉ねぎの表皮除去装置を示す模式的側面図である。
第5実施形態及び第6実施形態に係る玉ねぎの表皮除去装置1は、
図10に示すように、前述した第1実施形態と同様に、玉ねぎ10の表皮を選択的に切断しうる条件で、レーザーを表皮に照射し、表皮に切れ目を入れることが可能なレーザー照射部11と、玉ねぎ10から切れ目の入った表皮を除去する表皮除去部12と(図示せず)、玉ねぎ10を回転させる回転機構20とを有している。
【0023】
第5実施形態では、
図10(a)に示すように、回転機構20が、玉ねぎ10の芽を下にした状態で、玉ねぎ10の上下方向を回転軸として回転可能に玉ねぎ10を保持する保持部21と、玉ねぎ10の根側から玉ねぎ10に当接し、前記回転軸を中心に玉ねぎ10を回転させる回転部22とを有している。
第5実施形態において、保持部21は、底面が上を向いた円錐形状(逆円錐形状)をなしている。また、保持部21は、円錐の底面が開口しており、玉ねぎ10を挿入できるように内部が空洞となっている。そして、保持部21は、その空洞に玉ねぎ10を芽を下にして挿入することで、玉ねぎ10の芽を下にした状態で保持することが可能となっている。また、空洞の内壁は、玉ねぎの表面との摩擦を低減する加工が施されていることが好ましい。これにより、より滑らかに玉ねぎ10を回転させることができる。このような加工としては、例えば、フッ素樹脂加工や滑性の高い膜を貼る等の加工を挙げることができる。なお、保持部21の形状は、円錐形状に限定されず、三角錐形状、四角錐形状等であってもよいし、五角以上の錐形状であってもよいし、これらの錐の先端が切り取られた切頭錐形状であってもよい。
また、第5実施形態において、回転部22は、玉ねぎ10の根側から玉ねぎ10に当接する当接部221と、当接部221に接続された回転軸222とを備えている。回転軸222は図示せぬモーターに接続されており、モーターにより回転した回転軸222の回転力が当接部221を介して玉ねぎ10に伝わり、玉ねぎ10を回転させるよう構成されている。
【0024】
第6実施形態では、前述した第5実施形態とは、保持部21が複数のローラー211で構成されている点で異なっている。第6実施形態において、保持部21は、4本のローラー211で構成されている。4本のローラー211は、それぞれの下端が玉ねぎ10の回転軸に近くなるように傾斜しており、このような構成とすることにより、玉ねぎ10は下に落ちず保持される。そして、ローラー211は玉ねぎ10が回転するとその玉ねぎ10の回転を損なわない方向に回転する。すなわち、4本のローラー211で構成される保持部21は、玉ねぎ10を回転可能に保持する。なお、ローラー211の数は、玉ねぎ10を保持することができれば、特に限定されず、3本であってもよいし、5本以上であってもよい。
【0025】
[玉ねぎの表皮除去装置の第7実施形態]
次に、玉ねぎの表皮除去装置の第7実施形態について説明する。
図11は、本発明の第7実施形態に係る玉ねぎの表皮除去装置を示す模式的側面図、
図12は、玉ねぎの表皮に形成した切れ目の形状を示す模式図である。
本実施形態に係る玉ねぎの表皮除去装置1は、玉ねぎ10の表皮にレーザーを照射し、表皮に切れ目3を入れるレーザー照射部11を有するレーザー処理部7と、切れ目3の入った表皮を除去する表皮除去部12とを有している。本実施形態において、レーザー照射部11は、前述した実施形態と同様のものを用いることができるが、小ストロークの2軸または3軸の直行加工装置やスキャナを用いることが好ましい。表皮除去装置12については前述した実施形態と同様のものを用いることができる。
【0026】
また、本実施形態では、さらに、
図11に示すように、玉ねぎ10の搬送路4と、前処理部5とを有している。
本実施形態では、搬送路4は傾斜しており、玉ねぎ10の自重により、玉ねぎ10が搬送される構成となっている。また、搬送路4には、各処理部の手前にストッパー41が設けられており、玉ねぎ10が一つずつ各処理部に送られるよう構成されている。なお、玉ねぎ10の搬送は、ベルトコンベアやローラーコンベア等の搬送手段を用いて行ってもよい。
【0027】
前処理部5では、表皮に切れ目3を入れる前の玉ねぎ10の表面に付着している付着物を除去するための前処理を行う(工程C)。ところで、玉ねぎの表面には、玉ねぎの表皮の切れ端等の付着物が存在する場合がある。このような付着物が存在すると、付着物の厚さや大きさ等にもよるが、レーザーによる表皮の切断を一部阻害する場合がある。しかしながら、このような前処理を行うことにより、工程Aにおいてより確実に表皮に切れ目を入れることができる。
付着物を除去する方法としては、例えば、空気を吹き付けて除去する方法、水を吹き付けて除去する方法、ブラシで擦って除去する方法等が挙げられ、これらの中でも、空気を吹き付けて除去する方法を用いることが好ましい。
なお、このような前処理(工程C)は、前述した第1~6実施形態においても行うことが好ましい。これにより、各実施形態における表皮の除去をより確実に行うことができる。
【0028】
前処理を施された玉ねぎ10は、その後、搬送路4を搬送され、レーザー処理部7に運ばれる。
レーザー処理部7には、リフター71と、レーザー照射部11が設けられている。
リフター71は、レーザー処理部7に運ばれてきた玉ねぎ10を
図11に示すように、レーザー照射部11方向に持ち上げて、レーザー照射部11と玉ねぎ10の表面との距離を調整する機能を備えている。なお、レーザー照射部11が玉ねぎ10に向かって移動するよう構成してもよい。
【0029】
本実施形態において、レーザー処理部7では、レーザー照射部11によって玉ねぎ10の表皮に、
図12に示すように、X字形状の切れ目3を入れるよう構成されている。これにより、表皮除去部12において、表皮の除去をより効率よく行うことができる。
切れ目3のX字形状は、切れ目が交差した形状であれば特に限定されないが、
図12に示すように、芽と根を上下方向としたX字形状であることが好ましい。これにより、表皮除去部12において、表皮の除去をさらに効率よく行うことができる。
【0030】
また、切れ目3が芽と根を上下方向としたX字形状である場合、玉ねぎ10の芽と根を結ぶ上下方向と、切れ目3を構成する一本の切れ目とのなす角度(
図12中のα)が、45°よりも小さいことが好ましく、20~42°であることがより好ましく、25~40°であることがさらに好ましい。角度αがこのような範囲であると、X字形状の切れ目3の上下方向の長さのほうが左右方向の長さよりも長くなるため、表皮を除去する際に、まず上下方向に大きく剥がれてから左右方向に剥がれるようになる。その結果、表皮をさらに効率よく除去することができる。これに対して、X字形状の切れ目3の上下方向の長さのほうが左右方向の長さよりも短い場合は、左右方向に先に剥がれ始めて行き、芽や根の近傍部分が残ってしまう場合がある。
【0031】
また、X字形状の切れ目3は、
図12(a)に示すように、玉ねぎ10に1個つけてもよいし、
図12(b)に示すように、玉ねぎ10に2個つけてもよいし、3個以上つけてもよいが、玉ねぎ10に2個以上つけることが好ましい。これにより、表皮除去部12において、表皮の除去をさらに効率よく行うことができる。
【0032】
切れ目3を入れられた玉ねぎ10は、搬送路4を搬送され、表皮除去部12に運ばれ、上述した各実施形態と同様にして表皮が除去される。
【0033】
以上のような本発明に係る玉ねぎの表皮除去方法及び玉ねぎの表皮除去装置1によれば、玉ねぎの表皮を容易に除去することができ、表皮を除去する際に可食部に傷が入るのを抑制することができる。
以上、本発明の玉ねぎの表皮除去方法及び玉ねぎの表皮除去装置の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【実施例0034】
以下の条件で、玉ねぎの表皮及び可食部の切断試験を行った。
[試験例1]
・使用したレーザー照射部:445nm半導体レーザー
・レーザー出力:10W
・加工速度(レーザー照射部の移動速度):60mm/sec
・照射回数:3回
その他条件及び結果を表1に示す。なお、試験は、レーザー照射側に第1層が来るように設置した。
【0035】
【0036】
[試験例2]
・使用したレーザー照射部:445nm半導体レーザー
・レーザー出力:20W
・加工速度(レーザー照射部の移動速度):60mm/sec
・照射回数:3回
その他条件及び結果を表2に示す。なお、試験は、レーザー照射側に第1層が来るように設置した。
【0037】
【0038】
表1及び2から、本発明に係る方法を用いることで、表皮を選択的に切断することができることが解る。
また、表皮にカッターで切れ目を入れた玉ねぎと、試験例2の条件で表皮にレーザーで切れ目を入れた玉ねぎとを、室温で3ヶ月放置したところ、前者の玉ねぎは、切れ目部分に可食部の傷みによる腐食や乾燥が見られたが、後者の玉ねぎ10では、表皮及び可食部ともに目立った変化は見られなかった。