(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027098
(43)【公開日】2024-02-29
(54)【発明の名称】ポリイミド組成物、フレキシブルスマートウィンドウ及びフレキシブルスマートウィンドウの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 73/14 20060101AFI20240221BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
C08G73/14
B32B27/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126481
(22)【出願日】2023-08-02
(31)【優先権主張番号】10-2022-0102278
(32)【優先日】2022-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】パク ヒェ ジン
(72)【発明者】
【氏名】ユン チョル ミン
【テーマコード(参考)】
4F100
4J043
【Fターム(参考)】
4F100AK49
4F100AK49A
4F100AK49E
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100AR00D
4F100AR00E
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA06
4F100BA07
4F100GB48
4F100JA02
4F100JA02A
4F100JA02E
4F100JG01
4F100JG01B
4F100JG01E
4F100JN28
4F100JN28E
4F100YY00B
4F100YY00C
4F100YY00D
4F100YY00E
4J043PC015
4J043PC016
4J043PC145
4J043PC146
4J043QB26
4J043RA06
4J043RA35
4J043SA06
4J043SB01
4J043TA22
4J043UA122
4J043UA131
4J043UA132
4J043UA232
4J043UB022
4J043UB401
4J043VA021
4J043ZA35
4J043ZB47
(57)【要約】
【課題】アッシュおよびクラックが低減されたポリイミド基板を含むフレキシブルスマートウィンドウおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリイミド組成物は、ジアミン系化合物を含む第1単量体およびカルド(cardo)グループ含有二無水物系化合物を含む第2単量体から誘導された構造単位を含むポリイミド前駆体またはポリイミドを含む。カルド(cardo)グループ含有二無水物系化合物は、前記第2単量体の全モル数を基準に12モル%~20モル%の範囲で含まれる。ポリイミド組成物から、アッシュおよびクラックが低減されたポリイミド基板を含むフレキシブルスマートウィンドウおよびそれを製造する方法が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアミン系化合物を含む第1単量体およびカルド(cardo)グループ含有二無水物系化合物を含む第2単量体から誘導された構造単位を含むポリイミド前駆体またはポリイミドを含み、
前記カルド(cardo)グループ含有二無水物系化合物は、前記第2単量体の全モル数を基準に12モル%~20モル%の範囲で含まれる、ポリイミド組成物。
【請求項2】
前記第2単量体は、カルドグループ非含有二無水物系化合物をさらに含む、請求項1に記載のポリイミド組成物。
【請求項3】
前記第2単量体に対する前記第1単量体のモル比は0.9~1.1である、請求項2に記載のポリイミド組成物。
【請求項4】
前記カルドグループ非含有二無水物系化合物は、単一のベンゼン環を含有する二無水物系化合物である、請求項2に記載のポリイミド組成物。
【請求項5】
前記第1単量体はカルドグループを含まない、請求項1に記載のポリイミド組成物。
【請求項6】
前記第1単量体は、下記化学式1で表される化合物を含む、請求項1に記載のポリイミド組成物。
【化1】
(化学式1中、R
1及びR
2は、それぞれ独立してハロゲン基、ヒドロキシル基(-OH)、チオール基(-SH)、ニトロ基(-NO
2)、シアノ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~4のハロゲノアルコキシ基、炭素数1~10のハロゲノアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、
Xは、直接結合、-O-、-CR
3R
4-、またはこれらの組み合わせを含み、R
3及びR
4は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~10のアルキル基または炭素数1~10のフルオロアルキル基である。)
【請求項7】
前記カルドグループ含有二無水物系化合物は、下記化学式2で表される、請求項1に記載のポリイミド組成物。
【化2】
(化学式2中、Y
1及びY
2は、それぞれ直接結合、-O-またはフェニレン基である。)
【請求項8】
請求項1に記載のポリイミド組成物から形成された第1ポリイミド基板および第2ポリイミド基板と、
前記第1ポリイミド基板と前記第2ポリイミド基板との間に配置されたエレクトロクロミック素子構造体とを含む、フレキシブルスマートウィンドウ。
【請求項9】
前記エレクトロクロミック素子構造体は、前記第1ポリイミド基板の上面から順次積層された第1導電層、イオン貯蔵層、電解質層、変色層および第2導電層を含む、請求項8に記載のフレキシブルスマートウィンドウ。
【請求項10】
前記第1ポリイミド基板および前記第2ポリイミド基板の熱膨張係数は、それぞれ12ppm/K以下である、請求項8に記載のフレキシブルスマートウィンドウ。
【請求項11】
前記第1ポリイミド基板および前記第2ポリイミド基板の熱膨張係数は、それぞれ-10ppm/K~12ppm/Kである、請求項10に記載のフレキシブルスマートウィンドウ。
【請求項12】
第1キャリア基板および第2キャリア基板上にそれぞれ請求項1に記載のポリイミド組成物を用いて第1ポリイミド基板および第2ポリイミド基板を形成するステップと、
前記第1ポリイミド基板上に第1導電層およびイオン貯蔵層を順次積層して第1積層体を形成するステップと、
前記第2ポリイミド基板上に第2導電層および変色層を順次積層して第2積層体を形成するステップと、
電解質層を挟んで前記イオン貯蔵層と前記変色層が向き合うように前記第1積層体および前記第2積層体を結合して接合積層体を形成するステップと、
前記接合積層体からレーザリフトオフ工程によって前記第1キャリア基板および第2キャリア基板を剥離するステップとを含む、フレキシブルスマートウィンドウの製造方法。
【請求項13】
前記レーザリフトオフ工程における光エネルギーは、300mJ/cm2~340mJ/cm2である、請求項12に記載のフレキシブルスマートウィンドウの製造方法。
【請求項14】
前記第1積層体を形成するステップおよび前記第2積層体を形成するステップは、それぞれ450℃以上の温度で行われる熱処理を含む、請求項12に記載のフレキシブルスマートウィンドウの製造方法。
【請求項15】
前記第1キャリア基板と前記第1ポリイミド基板との間、および前記第2キャリア基板と前記第2ポリイミド基板との間にそれぞれ犠牲層を形成するステップをさらに含む、請求項12に記載のフレキシブルスマートウィンドウの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリイミド組成物、フレキシブルスマートウィンドウ及びフレキシブルスマートウィンドウの製造方法に関する。より詳細には、本開示は、ジアミンおよび二無水物を含むポリイミド組成物、それを用いて製造されたフレキシブルスマートウィンドウ、並びにそれを用いたフレキシブルスマートウィンドウの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ装置を含む各種電子素子または電気化学素子にフレキシブル特性が付加され、フレキシブルディスプレイのようなフレキシブル電気素子が開発されている。フレキシブル電気素子に必要な十分な柔軟性を提供しながら機械的信頼性および耐熱性を確保するために、ポリイミド基板がフレキシブル基板の素材として用いられている。
【0003】
素子の製造工程では、高温の熱処理工程が含まれる場合、工程安定性を確保するためにキャリア基板を利用した素子工程が採用されている。例えば、ガラス基板のようなキャリア基板上にポリイミド基板を形成し、ポリイミド基板上に電子素子または電気化学素子の素子工程を行うことができる。その後、ポリイミド基板を前記キャリア基板から剥離し、前記ポリイミド基板を含むフレキシブル電気素子を製造することができる。
【0004】
前記ポリイミド基板を前記キャリア基板から剥離するためには、レーザリフトオフ(laser lift off)工程を行うことができる。前記レーザリフトオフ工程からのエネルギーによって、前記ポリイミド基板の表面には損傷および副生物が発生することがある。
【0005】
例えば、前記フレキシブル電気素子が光学素子またはディスプレイ素子である場合、前記ポリイミド基板の損傷および変性によって透過率およびディスプレイの品質が劣化することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の1つの課題は、向上した化学的、機械的、熱的安定性を有するポリイミド組成物を提供することである。
【0007】
本開示の1つの課題は、前記ポリイミド組成物を用いて製造されたフレキシブルスマートウィンドウを提供することである。
【0008】
本開示の1つの課題は、前記ポリイミド組成物を用いるフレキシブルスマートウィンドウの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
例示的な実施形態によるポリイミド組成物は、ジアミン系化合物を含む第1単量体、およびカルド(cardo)グループ含有二無水物系化合物を含む第2単量体から誘導された構造単位を含むポリイミド前駆体またはポリイミドを含む。前記カルド(cardo)グループ含有二無水物系化合物は、前記第2単量体の全モル数を基準に12モル%~20モル%の範囲で含まれ得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記第2単量体は、カルドグループ非含有二無水物系化合物をさらに含むことができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記第2単量体に対する前記第1単量体のモル比は、0.9~1.1であってもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記カルドグループ非含有二無水物系化合物は、単一のベンゼン環を含有する二無水物系化合物であってもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記第1単量体は、カルドグループを含まなくてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記第1単量体は、下記化学式1で表される化合物を含むことができる。
【0015】
【0016】
(化学式1中、R1及びR2は、それぞれ独立してハロゲン基、ヒドロキシル基(-OH)、チオール基(-SH)、ニトロ基(-NO2)、シアノ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~4のハロゲノアルコキシ基、炭素数1~10のハロゲノアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、
Xは、直接結合、-O-、-CR3R4-、またはこれらの組み合わせを含み、R3及びR4は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~10のアルキル基または炭素数1~10のフルオロアルキル基である。)
【0017】
いくつかの実施形態では、前記カルドグループ含有二無水物系化合物は、下記化学式2で表すことができる。
【0018】
【0019】
(化学式2中、Y1及びY2は、それぞれ直接結合(単結合)、-O-またはフェニレン基である。)
【0020】
例示的な実施形態によるフレキシブルスマートウィンドウは、前述の実施形態のポリイミド組成物から形成された第1ポリイミド基板および第2ポリイミド基板と、前記第1ポリイミド基板と前記第2ポリイミド基板との間に配置されたエレクトロクロミック素子構造体とを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記エレクトロクロミック素子構造体は、前記第1ポリイミド基板の上面から順次積層された第1導電層、イオン貯蔵層、電解質層、変色層および第2導電層を含むことができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記第1ポリイミド基板および前記第2ポリイミド基板の熱膨張係数は、それぞれ12ppm/K以下であってもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記第1ポリイミド基板および前記第2ポリイミド基板の熱膨張係数は、それぞれ-10ppm/K~12ppm/Kであってもよい。
【0024】
例示的な実施形態によるフレキシブルスマートウィンドウの製造方法では、第1キャリア基板および第2キャリア基板上にそれぞれ前述した実施形態のポリイミド組成物を用いて第1ポリイミド基板および第2ポリイミド基板を形成する。前記第1ポリイミド基板上に第1導電層およびイオン貯蔵層を順次積層して第1積層体を形成する。前記第2ポリイミド基板上に第2導電層および変色層を順次積層して第2積層体を形成する。電解質層を挟んで前記イオン貯蔵層と前記変色層が向き合うように前記第1積層体および前記第2積層体を結合して接合積層体(combined stack structure)を形成する。前記接合積層体からレーザリフトオフ工程により、前記第1キャリア基板および第2キャリア基板を剥離する。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記レーザリフトオフ工程における光エネルギーは、300mJ/cm2~340mJ/cm2であってもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記第1積層体の形成および前記第2積層体の形成時、450℃以上の温度で行われる熱処理を行うことができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記第1キャリア基板と前記第1ポリイミド基板との間、および前記第2キャリア基板と前記第2ポリイミド基板との間にそれぞれ犠牲層を形成することができる。
【発明の効果】
【0028】
例示的な実施形態によるポリイミド組成物は、ジアミン系化合物を含む第1単量体と、カルドグループ含有二無水物系化合物を所定のモル比で含む第2単量体とを含むことができる。前記カルドグループ含有二無水物系化合物により、光照射を利用したレーザリフトオフ(LLO)工程に対する保護単位を提供することができる。
【0029】
これにより、上部/下部LLO工程が共に行われるフレキシブルスマートウィンドウ工程におけるポリイミド基板のバーニング(burning)およびアッシュ(ash)の発生を低減することができる。また、ポリイミド基板の熱的変形が低減し、フレキシブルスマートウィンドウの上部及び下部における熱膨張特性の差異による素子変形を抑制することができる。
【0030】
前記フレキシブルスマートウィンドウ工程は、例えば450℃以上の高温熱処理工程を含み、前記ポリイミド組成物から製造されたポリイミド基板を使用して安定した工程安定性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、例示的な実施形態によるフレキシブルスマートウィンドウを示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、例示的な実施形態によるフレキシブルスマートウィンドウの製造方法を説明するための概略断面図である。
【
図3】
図3は、例示的な実施形態によるフレキシブルスマートウィンドウの製造方法を説明するための概略断面図である。
【
図4】
図4は、例示的な実施形態によるフレキシブルスマートウィンドウの製造方法を説明するための概略断面図である。
【
図5】
図5は、例示的な実施形態によるフレキシブルスマートウィンドウの製造方法を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示によって提供される実施形態によれば、ジアミン系化合物および二無水物(dianhydride)系化合物、またはこれらの重合体を含むポリイミド組成物が提供される。また、本開示の実施形態によれば、前記ポリイミド組成物から製造されたポリイミド基板を含むフレキシブルスマートウィンドウ及びその製造方法が提供される。
【0033】
以下、図面及び実験例を参照して、本発明の実施形態をより具体的に説明する。ただし、本明細書に添付される図面及び実験例は、本発明の好適な実施形態を例示するものであって、発明の詳細な説明とともに本発明の技術思想をさらに理解する一助となる役割を果たすものであるため、本発明は図面及び実験例に記載された事項のみに限定されて解釈されるものではない。
【0034】
<ポリイミド組成物>
本出願で使用される用語「ポリイミド組成物」とは、ポリイミドフィルムまたはポリイミド基板を製造するための組成物を指す。前記ポリイミド組成物は、ポリイミド重合体、ポリイミドの前駆体(例えば、ポリアミック酸系重合体)又はその単量体を含む溶液であってもよい。
【0035】
例示的な実施形態によれば、前記ポリイミド組成物は、ジアミン系化合物を含む第1単量体および二無水物(dianhydride)系化合物を含む第2単量体、または前記第1単量体および第2単量体の重合体を含むことができる。前記重合体は、前記ポリイミド前駆体を含むことができ、前記ポリイミド前駆体は、前記第1単量体および前記第2単量体に由来する構造単位を含むことができる。
【0036】
前記第1単量体は、芳香族ジアミン系化合物を含むことができる。本明細書で使用される用語「芳香族」とは、化合物全体として芳香族性を有する化合物または化合物分子構造内にベンゼン環のような芳香族環が含まれる化合物を包括する意味で使用される。
【0037】
例えば、前記第1単量体は、下記化学式1で表される化合物を含むことができる。
【0038】
【0039】
化学式1中、Xは直接結合(単結合)、-O-、-CR3R4-またはこれらの組み合わせを含むことができる。R3及びR4は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~10のアルキル基または炭素数1~10のフルオロアルキル基であってもよい。
【0040】
R1及びR2は、それぞれ独立して-F、-Cl、-Brまたは-Iで表されるハロゲン基、ヒドロキシル基(-OH)、チオール基(-SH)、ニトロ基(-NO2)、シアノ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~4のハロゲノアルコキシ基、炭素数1~10のハロゲノアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であってもよい。
【0041】
一実施形態では、R1及びR2は、それぞれ独立してフルオロ(-F)基または炭素数1~10のフルオロアルキル基であってもよい。
【0042】
一実施形態では、前記第1単量体は、分子内アミド基、エステル基、尿素基またはウレタン結合を含まなくてもよい。これにより、後述する第2単量体のカルドグループの作用を阻害することなく、剥離工程におけるアッシュ(ash)の発生をより効果的に防止することができる。また、ポリイミド基板のヘイズを抑制し、透過度を向上させることができる。
【0043】
例えば、前記第1単量体は、下記化学式1-1で表される化合物を含むことができる。
【0044】
【0045】
一実施形態では、前記化学式1-1中、Xは直接結合を示すことができる。この場合、前記第1単量体は、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフロオロメチル)ビフェニルのようなTFMB系化合物を含むことができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、前記第1単量体は、分子内にカルドグループ(cardo group)(またはフルオレニル基)を含まなくてもよい。これにより、ポリイミド基板の熱膨張係数(CTE)の過度の増加または黄変現象を防止することができる。
【0047】
例示的な実施形態によれば、前記第2単量体は、カルドグループと結合した二無水物系化合物を含むことができる。
【0048】
例えば、前記第2単量体は、下記化学式2で表される化合物を含むことができる。
【0049】
【0050】
化学式2中、Y1及びY2は、それぞれ直接結合(単結合)、-O-またはフェニレン基であってもよい。
【0051】
一実施形態では、Y1及びY2は、それぞれ直接結合を示すことができる。この場合、前記第2単量体は、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレンジアンヒドリド(BPAF)を含むことができる。
【0052】
前記カルドグループは二無水物に含まれ、後述するレーザリフトオフ(LLO)工程における安定性および耐熱性を向上させることができる。例えば、カルドグループはポリイミド構造内に所定の範囲に分布し、ポリイミド基板の剥離面におけるアッシュ(ash)の発生を防止する保護単位として機能することができる。
【0053】
また、前記カルドグループにより、ポリイミド樹脂またはポリイミド基板の過度の熱変形を防止することができる。これにより、前記ポリイミド基板の熱膨張係数が減少し、安定したフレキシブル素子工程を実現することができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、前記第2単量体は、カルドグループを含まない(カルドグループ非含有)二無水物系化合物をさらに含むことができる。例えば、前記第2単量体は、カルドグループ非含有芳香族二無水物をさらに含むことができる。
【0055】
前記カルドグループ非含有芳香族二無水物は、ベンゼン環を含むテトラカルボン酸二無水物を含むことができる。例えば、前記カルドグループ非含有芳香族二無水物は、下記の化学式3または化学式4で表される化合物を含むことができる。
【0056】
【0057】
【0058】
化学式4中、Yは直接結合(単結合)、-O-、-CR5R6-、-(C=O)-、-(S=O)-、-(SO2)-、またはこれらの組み合わせを含むことができる。R5及びR6は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~10のアルキル基または炭素数1~10のフルオロアルキル基であってもよい。例えば、R5及びR6は、それぞれ炭素数1~10のフルオロアルキル基であってもよい。
【0059】
一実施形態では、前記カルドグループ非含有芳香族二無水物は、化学式3のように単一のベンゼン環を含む化合物を含むことができる。これにより、芳香族単位の含有量の過度の増加によるポリイミド基板の柔軟性の低下を防止することができる。
【0060】
一実施形態では、前記第2単量体は、分子内アミド基、エステル基、尿素基またはウレタン結合を含まなくてもよい。これにより、前述の第2単量体のカルドグループの作用を阻害することなく、剥離工程におけるアッシュ(ash)の発生、及びポリイミド基板の透過度の低下をより効果的に防止することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、前記ポリイミド組成物に含まれる単量体または重合体は、ケイ素含有グループ(例えば、シロキサングループ)を含まなくてもよい。これにより、前記ケイ素含有グループによるポリイミド基板の脆化(brittleness)を防止し、LLO工程または高温素子工程におけるポリイミド基板の割れやクラックの発生を抑制することができる。
【0062】
例示的な実施形態によれば、前記第2単量体の全モル数に対して、前記カルドグループ含有二無水物系化合物は、12モル%~20モル%の範囲で含むことができる。
【0063】
例えば、前記カルドグループ含有二無水物系化合物の含有量が12モル%未満であると、前記カルドグループによるアッシュの低減および耐熱性の上昇効果が十分に実現されないことがある。また、ポリイミド基板の熱膨張係数(CTE)が過度に減少(例えば、負の値に過度に減少)することがある。これにより、前記ポリイミド基板をキャリア基板から剥離するとき、ポリイミド基板のカール(curl)、反り(warpage)またはシワ(wrinkle)などが発生することがある。
【0064】
前記カルドグループ含有二無水物系化合物の含有量が20モル%を超えると、ポリイミド基板の熱膨張係数(CTE)が過度に増加したり、LLO工程でポリイミド基板のクラックのような機械的損傷が発生することがある。
【0065】
一実施形態では、前記カルドグループ含有二無水物系化合物の含有量は、12モル%~18モル%、例えば13モル%~18モル%(例えば、13.5モル%~17.5モル%)であってもよい。
【0066】
いくつかの実施形態では、前記第2単量体の全モル数に対して、脂肪族二無水物の含有量は10モル%以下であってもよい。本開示で使用される用語「脂肪族二無水物」とは、分子構造内に芳香族環が含まれない二無水物系化合物を指すことができる。
【0067】
一実施形態では、前記第2単量体の全モル数に対して、脂肪族二無水物の含有量は10モル%未満であってもよい。例えば、脂肪族二無水物の含有量は、5モル%以下、1モル%以下、または0.5モル%以下であってもよい。前記範囲では、ポリイミド基板におけるヘイズの発生および透過度の低下を効果的に防止することができる。一実施形態では、前記第2単量体は脂肪族二無水物を含まなくてもよい。
【0068】
前記ポリイミド組成物は、前記第1単量体および前記第2単量体の重合体の形態であるポリイミド前駆体またはポリイミドを含むことができる。前記ポリイミド前駆体は、ポリアミック酸重合体構造を有することができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、前記ポリアミック酸重合体構造は、分子内アミド基、エステル基、尿素基またはウレタン結合を含まなくてもよい。
【0070】
前記ポリアミック酸重合体及びそれから形成されたポリイミド重合体は、前記第1単量体由来の単位及び前記第2単量体由来の単位を含み、前記第2単量体由来の単位において、前記カルドグループ含有二無水物系化合物由来の単位のモル比を、前述の範囲に調整または維持することができる。
【0071】
前記ポリイミド組成物において、前記第1単量体(又はそれに由来する単位)と前記第2単量体(又はそれに由来する単位)は、実質的に同じ当量で含まれてもよい。
【0072】
例えば、前記第2単量体に対する前記第1単量体のモル比は、0.9~1.1、0.95~1.05、または0.98~1.02であってもよい。
【0073】
前記ポリイミド組成物は、前記第1単量体および第2単量体、またはそれらが重合して形成されたポリイミド前駆体を溶解する有機溶媒をさらに含むことができる。例えば、前記第1単量体および前記第2単量体が前記有機溶媒中に混合して溶液重合し、前記ポリイミド前駆体の形態で組成物中に存在してもよい。
【0074】
例えば、前記有機溶媒は、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、1-メトキシ-2-プロパノールアセテート、1-メトキシ-2-プロパノール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、乳酸エチル、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ヘプタノン、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、m-クレゾール、N,N-ジエチルアセトアミドなどを含むことができる。これらは単独でまたは2以上を組み合わせて使用することができる。
【0075】
<フレキシブルスマートウィンドウ及びその製造方法>
図1は、例示的な実施形態によるフレキシブルスマートウィンドウを示す概略断面図である。
【0076】
本出願で使用される用語「スマートウィンドウ」とは、電圧がかかると、光の透過性が変化してディスプレイ機能を実現できる電気素子を指す。例示的な実施形態によれば、前記スマートウィンドウは、電気変色(electrochromic)素子を含むことができる。
【0077】
図1を参照すると、フレキシブルスマートウィンドウ50は、第1ポリイミド基板100aと第2ポリイミド基板100bとの間に配置されたエレクトロクロミック素子構造体180を含むことができる。
【0078】
ポリイミド基板100a,100bは、前述の例示的な実施形態によるポリイミド組成物を用いて形成することができる。例えば、前記ポリイミド組成物に含まれるポリアミック酸重合体の形態のポリイミド前駆体を、イミド化反応によってポリイミド重合体に変換することができる。
【0079】
例示的な実施形態によれば、ポリイミド基板100a,100bの熱膨張係数(CTE)は、それぞれ12ppm/K以下、例えば12ppm/K未満であってもよい。
【0080】
一実施形態では、ポリイミド基板100a,100bの熱膨張係数(CTE)は、それぞれ-10ppm/K~12ppm/Kであってもよい。前記範囲では、ポリイミド基板100a,100bの剥離工程におけるクラックやシワを共に防止することができる。例えば、ポリイミド基板100a,100bの熱膨張係数(CTE)は、-9ppm/K以上及び12ppm/K未満、-7ppm/K以上及び12ppm/K未満、又は0以上及び12ppm/K未満であってもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、ポリイミド基板100a,100bの黄色度(Yellow Index: YI)は10~30、一実施形態では10~25、例えば20~23であってもよい。
【0082】
ポリイミド基板100a,100bによってサンドイッチされた構造を含む例示的な実施形態によるフレキシブルスマートウィンドウでは、熱膨張係数を前述の範囲に調整することにより、素子の上部層及び下部層における熱変形を抑制し、安定したフレキシブル特性を実現することができる。
【0083】
第1及び第2ポリイミド基板100a,100bのガラス転移温度は、それぞれ約450℃以上であってもよい。これにより、第1及び第2ポリイミド基板100a,100bは、450℃~500℃の高温工程を伴うエレクトロクロミック素子工程に安定して適用できる。したがって、高温工程で製造されたエレクトロクロミック素子構造体180は、電流/電圧の印加時、向上した可変応答速度および電気変色性能を提供することができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、第1及び第2ポリイミド基板100a,100bの厚さは、それぞれ1μm~50μmであってもよく、例えば3μm~20μm、または5μm~10μmであってもよい。前記厚さの範囲では、外部からの衝撃および汚染からエレクトロクロミック素子構造体180を十分に保護しながらも向上した透明性およびフレキシブル特性を実現することができる。
【0085】
エレクトロクロミック素子構造体180は、第1ポリイミド基板100aの上面から順次積層された第1導電層110a、イオン貯蔵層120、電解質層140、変色層130および第2導電層110bを含むことができる。
【0086】
第1導電層110aおよび第2導電層110bは、それぞれ透明導電性酸化物を含むことができる。前記透明導電性酸化物は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、TTO(Tantalum doped Tin Oxide)、In2O3(Indium Oxide)、IGO(Indium Gallium Oxide)、FTO(Fluor doped Tin Oxide)、AZO(Aluminium doped Zinc Oxide)、GZO(Gallium doped Zinc Oxide)、ATO(Antimony doped Tin Oxide)、IZO(Indium doped Zinc Oxide)、NTO(Niobium doped Titanium Oxide)、ZnO(Zink Oxide)、CTO(Cesium Tungsten Oxide)などを含むことができる。これらは、単独でまたは2以上を組み合わせて含むことができる。
【0087】
一実施形態では、エレクトロクロミック素子構造体180の透明性および応答速度を考慮して、第1導電層110aおよび第2導電層110bは、ITO及び/又はTTOを含むことができる。
【0088】
第1導電層110aおよび第2導電層110bのそれぞれの厚さは、20nm~400nmであってもよく、例えば50nm~350nm、または100nm~300nmであってもよい。前記厚さの範囲では、厚みの過度の増加を抑制しながら、向上した導電性および透過度を有するフレキシブルスマートウィンドウを容易に実現することができる。
【0089】
イオン貯蔵層120は、電気変色反応に使用される電解質イオンを貯蔵および伝達する層として含むことができる。例えば、イオン貯蔵層120は、Ni、CoおよびMnの少なくとも1つの酸化物または水酸化物を含むことができる。
【0090】
例えば、イオン貯蔵層120の厚さは50nm~500nmであってもよい。一実施形態では、イオン貯蔵層120の厚さは、80nm~450nm、または100nm~250nmであってもよい。前記厚さの範囲では、十分な量の電解質イオンを含有しながらも変色層130との電荷バランスを維持することができる。
【0091】
変色層130は、電流が供給されると透過度または色が変化する物質を含むことができ、実質的な電気変色素子層として提供することができる。
【0092】
例えば、変色層130は、還元性変色物質および酸化性変色物質の少なくとも一つを含むことができる。例えば、還元性変色物質は、Ti、Nb、Mo、Ta、Wなどから選択される少なくとも1つの酸化物を含むことができる。前記酸化性変色物質は、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Rh、Irなどから選択される少なくとも1つの酸化物または水酸化物、またはプラシアンブルーを含むことができる。
【0093】
例えば、変色層130の厚さは20nm~400nmであってもよい。一実施形態では、変色層130の厚さは、30nm~350nm、または50nm~100nmであってもよい。前記厚さの範囲では、薄型素子を実現しながら十分な量の変色物質および向上した解像度を提供することができる。
【0094】
電解質層140は、電気変色反応に関与する電解質イオンを変色層130に伝達することができる。例えば、電解質層140を介して、イオン貯蔵層120から変色層130に電解質イオンを伝達することができる。
【0095】
例えば、電解質層140は、液体電解質、ゲルポリマー電解質、または無機固体電解質の少なくとも1つを含むことができる。
【0096】
一実施形態では、電解質層140は金属塩および溶媒を含むことができる。前記金属塩は、例えば、H+、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+などを含むことができる。これらは、単独でまたは2以上を組み合わせて含むことができる。例えば、電解質層140は、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6のようなリチウム塩化合物、NaClO4のようなナトリウム塩化合物などを含むことができる。
【0097】
図2~
図5は、例示的な実施形態によるフレキシブルスマートウィンドウの製造方法を説明するための概略断面図である。
【0098】
図2を参照すると、第1キャリア基板90aおよび第2キャリア基板90b上に、それぞれ第1ポリイミド基板100aおよび第2ポリイミド基板100bを形成することができる。
【0099】
例示的な実施形態によれば、第1キャリア基板90aおよび第2キャリア基板90b上に、前述の例示的な実施形態によるポリイミド組成物をコーティングして予備ポリイミド層を形成することができる。その後、前記ポリイミド層を熱硬化して、第1ポリイミド基板100aおよび第2ポリイミド基板100bを形成することができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、前記熱硬化工程は450℃以上の高温熱処理を含むことができる。前記範囲のカルドグループを含む第2単量体またはポリイミド前駆体を用いることにより、前記高温熱処理においても黄変現象が防止され、高透過度、高耐熱性および高いガラス転移温度を有するポリイミド基板を形成することができる。
【0101】
一実施形態では、前記熱硬化工程は、450℃~550℃、または450℃~500℃の範囲で行われる高温熱処理を含むことができる。
【0102】
一実施形態では、前記熱硬化工程は、50℃~100℃の範囲で行われる第1熱処理、および450℃以上の温度で行われる第2熱処理を含むことができる。前記第1熱処理および前記第2熱処理は、順次に行うことができる。
【0103】
相対的に低温で行われる第1熱処理を先に行うことにより、重合体に含まれるカルドグループの位置を安定して維持し、均一に分布させることができる。また、急激な高温脱水縮合による熱的特性の低下を防止することができる。
【0104】
いくつかの実施形態では、第1キャリア基板90aと第1ポリイミド基板100aとの間、および第2キャリア基板90bと第2ポリイミド基板100bとの間には、それぞれ犠牲層95を形成することができる。犠牲層95は、後述するレーザリフトオフ(LLO)工程におけるポリイミド基板100a,100bの剥離を促進することができる。
【0105】
例えば、犠牲層95は、キャリア基板90a,90b上に窒化ケイ素(SiNx)、非晶質シリコン(a-Si)、窒化ガリウム(GaN)などの無機物質を蒸着して形成することができる。いくつかの実施形態では、犠牲層95は省略することができる。
【0106】
図3を参照すると、それぞれ第1ポリイミド基板100aおよび第2ポリイミド基板100bをそれぞれ含む第1積層体160aおよび第2積層体160bを形成することができる。
【0107】
第1ポリイミド基板100a上に前述の透明導電性酸化物を蒸着して第1導電層110aを形成することができる。第1導電層110a上にイオン貯蔵層120を形成して第1積層体160aを得ることができる。第1積層体160aは、カソード積層体として提供することができる。
【0108】
例えば、Ni、Co及びMnから選ばれる1つ以上の酸化物または水酸化物、溶媒及びシラン系化合物を含むコーティング組成物を第1導電層110a上に塗布し、450℃以上の温度で焼成してイオン貯蔵層120を形成することができる。
【0109】
例えば、450℃以上の温度でアルコールなどの溶媒が除去され、シラン系化合物の凝縮および加水分解反応により固体相のイオン貯蔵層120を形成することができる。一実施形態では、イオン貯蔵層120を形成するための焼成温度は450℃~500℃であってもよい。
【0110】
第2ポリイミド基板100b上に前述の導電性酸化物を蒸着して第2導電層110bを形成することができる。第2導電層110b上に変色層130を形成して第2積層体160bを得ることができる。第2積層体160bは、アノード(anode)積層体として提供することができる。
【0111】
例えば、第2導電層110b上に前述の変色物質、溶媒及びシラン系化合物を含むコーティング組成物を塗布し、450℃以上の温度で焼成して変色層130を形成することができる。
【0112】
例えば、450℃以上の温度でアルコール等の溶媒が除去され、シラン系化合物の凝縮および加水分解反応によって個体相の変色層130を形成することができる。一実施形態では、変色層130を形成するための焼成温度は450℃~500℃であってもよい。
【0113】
いくつかの実施形態によれば、変色層130を形成するための焼成温度とイオン貯蔵層120を形成するための焼成温度とは、互いに異なっていてもよい。例えば、変色層130を形成するための焼成温度は、イオン貯蔵層120を形成するための焼成温度よりも高くてもよい。この場合には、エレクトロクロミック素子構造体180の繰り返し変色駆動信頼性および耐久性をより向上させることができる。
【0114】
前述のように、フレキシブルスマートウィンドウのエレクトロクロミック素子工程では、450℃以上の高温焼成または高温熱処理工程を含むことができる。これにより、エレクトロクロミック素子構造体180の高温駆動または繰り返し変色駆動の安定性を向上させることができる。
【0115】
例示的な実施形態によれば、前述のポリイミド組成物から形成されたポリイミド基板100a,100bは、前記エレクトロクロミック素子工程の支持体として機能することができる。
【0116】
これにより、ガラス材料またはPETのような樹脂基板などで確保できない高温安定性を提供することができ、十分なガラス転移温度を提供することができる。これにより、前記エレクトロクロミック素子工程における基板損傷による柔軟性の低下、透過度の低下などを防止することができる。
【0117】
図4を参照すると、第1積層体160a及び第2積層体160bを、電解質層140を挟んで結合して、第1及び第2ポリイミド基板100a,100bの間に配置されるエレクトロクロミック素子構造体180を形成することができる。
【0118】
例示的な実施形態によれば、変色層130およびイオン貯蔵層120が電解質層140とそれぞれ接するように、第1積層体160aと第2積層体160bとを互いに接合することができる。
【0119】
図5を参照すると、レーザリフトオフ(LLO)工程により、第1キャリア基板90aおよび第2キャリア基板90bを、それぞれ第1ポリイミド基板100aおよび第2ポリイミド基板100bから剥離することができる。
【0120】
いくつかの実施形態では、犠牲層95もまた、キャリア基板90a,90bと共に除去または剥離することができる。
【0121】
例えば、第1キャリア基板90aを介して犠牲層95にレーザ光を照射することにより、第1キャリア基板90aおよび犠牲層95を第1ポリイミド基板100aから分離することができる。
【0122】
例えば、第2キャリア基板90bを介して犠牲層95にレーザ光を照射することにより、第2キャリア基板90bおよび犠牲層95を第2ポリイミド基板100bから分離することができる。
【0123】
前記レーザ光は、キャリア基板90a,90bを透過して犠牲層95に吸収され得る。例えば、前記レーザ光によって犠牲層95が炭化することにより、ポリイミド基板100a,100bとの接着力が低下し得る。これにより、犠牲層95によって、キャリア基板90a,90bの剥離を促進することができる。
【0124】
いくつかの実施形態では、犠牲層95は省略することができ、前記レーザ光の照射後、キャリア基板90a,90bをポリイミド基板100a,100bから直接剥離することができる。
【0125】
いくつかの実施形態では、前記レーザ光は、波長領域190nm~345nm、例えば250nm~340nm、または290nm~310nmの光であってもよい。
【0126】
いくつかの実施形態では、前記LLO工程により、300mJ/cm2~340mJ/cm2の光エネルギーを印加することができる。前記範囲では、ポリイミド基板100a,100bの変性およびアッシュを抑制しながら犠牲層95の炭化を十分に誘導することができる。
【0127】
前述のように、ポリイミド基板100a,100bは、所定含有量の範囲のカルドグループを含むポリイミド樹脂を含むことができる。前記カルドグループは、前記ポリイミド樹脂の保護単位として樹脂骨格内に分布することができる。これにより、前記LLO工程において、ポリイミド基板100a,100bから発生するアッシュを抑制または低減することができる。
【0128】
例えば、前記剥離工程におけるキャリア基板90a,90bに印加されるストレスによるクラックを、前記カルド単位により抑制または低減することができる。
【0129】
いくつかの実施形態では、ポリイミド基板100a,100bの剥離面には、それぞれ保護フィルムを貼り付けることができる。
【0130】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示するが、これらの実施例は本発明を例示するものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を制限するものではない。これらの実施例に対し、本発明の範疇および技術思想の範囲内で種々の変更および修正を加えることが可能であることは当業者にとって明らかであり、これらの変形および修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然のことである。
【0131】
実施例1
ポリイミド組成物の製造
有機溶媒としてのジメチルアセトアミド(dimethylacetamide、DMAc)中で、表1に示すモル比で第1単量体(TFMB)および第2単量体(カルドグループ含有二無水物:BPAF、カルドグループ非含有二無水物:PMDA)を反応器内で混合した。反応器の温度を25℃に維持した状態で一定時間溶解させて撹拌し、ポリイミド組成物を製造した。製造されたポリイミド組成物の固形分は8wt%~13wt%、粘度は2,500cp~5,000cpの範囲に調整された。
【0132】
ポリイミド基板の製造
0.7mm厚の非アルカリ性ガラス(non-alkali glass)から製造されたキャリア基板をそれぞれ準備した。
【0133】
前記キャリア基板上に前述のポリイミド組成物を塗布し、100LPM以下の酸素濃度下で5℃/分の昇温速度で昇温し、80℃で30分間の第1熱処理及び480℃で25分間の第2熱処理を行い、ポリイミド基板を形成した(厚さ4μm)。
【0134】
他の実施例および比較例
下記の表1及び表2に示すように、ポリイミド組成物中に含有される単量体の種類および含有量(モル比)を変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリイミド基板のサンプルを製造した。
【0135】
【0136】
【0137】
表1及び表2に示す化合物は以下の通りである。
i)TFMB:2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-Bis(trifluoromethyl)benzidine)
ii)BPAF:9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(9,9-Bis(3,4-dicarboxyphenyl)fluorene Dianhydride)
iii)PMDA:ピロメリット酸二無水物(Pyromellitic Dianhydride)
iv)6FDA:4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(4,4’-(Hexafluoroisopropylidene)diphthalic Anhydride)
v)TPC:p-テレフタロイルクロリド(p-terephthaloyl chloride)
vi)CBDA:1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(1,2,3,4-Cyclobutanetetracarboxylic Dianhydride)
vii)BAF:下記化学式5の化合物
【0138】
【0139】
実験例
(1)剥離可能な光エネルギーの測定
実施例および比較例により製造されたポリイミド基板のサンプルに含まれるキャリア基板に向かって308nmのレーザ光を照射した。光照射と共に、キャリア基板がポリイミド基板から完全に剥離可能な最小の光エネルギーを測定した。
【0140】
(2)クラックの発生の評価
前述のように、最小の光エネルギーでLLO工程を行った後、ポリイミド基板の表面のクラックを目視観察した。クラックが観察されない場合を○、観察される場合をXと評価した。
【0141】
(3)アッシュ(ash)の発生の評価
実施例および比較例により製造されたポリイミド基板のサンプルに含まれるキャリア基板に向かって308nmのレーザ光を用いて総光エネルギー量340mJ/cm2で光照射を行った後、キャリア基板をポリイミド基板から剥離した。
前記LLO工程の後、ポリイミド基板の表面のアッシュの発生を目視で観察した。アッシュが観察されない場合を○、アッシュが観察される場合をXと評価した。
【0142】
(4)黄変の評価
実施例および比較例のポリイミド組成物を4μm厚、480℃の条件下で硬化した後、Color Quest(Hunter Lab社製)機器を用いて黄色度(YI)を評価した。
比較例5の場合は、高温硬化ができなくて300℃で硬化して評価した。
【0143】
(5)熱膨張係数の評価
前述の実施例および比較例のポリイミドフィルムの熱膨張係数を熱機械分析器(TMA450、TA Instruments社製)を用いて測定した。
【0144】
具体的には、ポリイミドフィルムの試料を5mm×20mmの大きさ(長さ:16mm)に用意して熱機械分析器にロードした。前記試料が引かれる力を0.02Nに設定し、100℃~450℃の範囲で4℃/分の昇温速度で1次昇温工程を行った後、450~50℃の範囲で5℃/分の速度で一次冷却を行った。
【0145】
その後、50~490℃の範囲で4℃/分の昇温速度で2次昇温工程を行った。このとき、特定温度の範囲内でポリイミドフィルムの熱膨張係数(CTE)を測定した(Tgが存在する場合は100℃~Tgの範囲でCTEを測定し、Tgが存在しない場合は100℃~480℃でCTEを測定した。)。
測定結果を下記の表3及び表4に示す。
【0146】
【0147】
【0148】
表3及び表4を参照すると、前述のモル比でカルドグループ含有二無水物単量体を含んでいる実施例では、LLO工程の後、アッシュ/クラックが防止されながら向上した透過度および熱安定性が確保された。また、比較例に比べて、相対的に低いエネルギーでLLO工程が実現された。
【0149】
比較例1~3の場合は、カルドグループ含有二無水物単量体の量が過度に増加することにより、CTEが過度に増加し、LLO工程後にクラックが発生した。
【0150】
比較例4~6、7の場合は、カルドグループ含有二無水物単量体が第2単量体に含まれないことにより、LLO工程後にポリイミド基板の全領域でアッシュが観察された。比較例7では、CTEが負の値に減少した。
【0151】
比較例5では、カルドグループ含有二無水物単量体が第2単量体に含まれず、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸樹脂)内に脂肪族アミド結合が含まれることから、ポリイミド基板にヘイズ現象が観察されて透過度が低下した。
【0152】
比較例6では、カルドグループが第1単量体(ジアミン化合物)に含まれることにより、剥離可能な最小光エネルギーおよびCTEが上昇してポリイミド基板において黄変現象が増加した。