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特開2024-27108ギアボックス、電気駆動アセンブリシステム、および車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027108
(43)【公開日】2024-02-29
(54)【発明の名称】ギアボックス、電気駆動アセンブリシステム、および車両
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20240221BHJP
【FI】
F16H57/04 J
F16H57/04 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023132346
(22)【出願日】2023-08-15
(31)【優先権主張番号】202210981889.0
(32)【優先日】2022-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522447473
【氏名又は名称】ヴァレオ、イーオートモーティブ、ジャーマニー、ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】VALEO EAUTOMOTIVE GERMANY GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ウェンホイ
(72)【発明者】
【氏名】チン、イェーチン
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA04
3J063AB01
3J063AC01
3J063BA11
3J063CA01
3J063CB13
3J063CD41
3J063XD03
3J063XD15
3J063XD32
3J063XD47
3J063XD62
3J063XD72
3J063XE22
3J063XE38
3J063XF12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電気駆動アセンブリシステムの潤滑オイル保持スペースを有するギアボックスのオイル攪拌ロスを低減する。
【解決手段】ギアボックスは、ハウジングと、前記ハウジングに収容されるとともに第1大ギア(21)を有する第1シャフト(20)であって、前記ギアボックスの軸方向に対して実質的に平行である第1回転軸を中心として回転する第1シャフト(20)と、前記ハウジングに収容されるとともに第2大ギア(31)を有する第2シャフト(30)であって、前記ギアボックスの前記軸方向に対して実質的に平行である第2回転軸を中心として回転する第2シャフト(30)と、前記第1大ギア(21)および前記第2大ギア(31)から実質的に隔離される潤滑オイル保持スペース(S)を、前記ハウジングとともに形成するオイル隔離プレート(50)と、を備えるギアボックスに関する。さらに本開示は、このようなギアボックスを備える車両に関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギアボックス(100)であって、
ハウジング(10)と、
前記ハウジング(10)に収容されるとともに第1大ギア(21)を有する第1シャフト(20)であって、前記ギアボックス(100)の軸方向に対して実質的に平行である第1回転軸(X1)を中心として回転する第1シャフト(20)と、
前記ハウジング(10)に収容されるとともに第2大ギア(31)を有する第2シャフト(30)であって、前記ギアボックス(100)の前記軸方向に対して実質的に平行である第2回転軸(X2)を中心として回転する第2シャフト(30)と、
前記第1大ギア(21)および前記第2大ギア(31)から実質的に隔離される潤滑オイル保持スペース(S)を、前記ハウジング(10)とともに形成するオイル隔離プレート(50)と、を備えるギアボックス(100)。
【請求項2】
前記ギアボックス(100)は、前記ハウジング(10)に収容されるとともに第1小ギア(41)を有する第3シャフト(40)であって、前記ギアボックス(100)の前記軸方向に対して実質的に平行である第3回転軸(X3)を中心として回転する第3シャフト(40)をさらに備え、
前記第1シャフト(20)は、第2小ギア(22)をさらに有し、前記第2小ギア(22)は、前記第1大ギア(21)に回転的に固定されるとともに、これに対して前記軸方向においてオフセットしており、前記第1小ギア(41)は前記第1大ギア(21)と噛み合い、前記第2小ギア(22)は前記第2大ギア(31)と噛み合い、
前記第1シャフト(20)の中心は、前記第2シャフト(30)の中心と前記第3シャフト(40)の中心とを結ぶラインよりも下方の高さに配置される、請求項1に記載のギアボックス(100)。
【請求項3】
前記オイル隔離プレート(50)は、本体プレート(51)と側部延出部(52)とを有し、前記本体プレート(51)は、前記ギアボックス(100)の前記軸方向に対して実質的に垂直であり、前記本体プレート(51)は、前記潤滑オイル保持スペース(S)を前記第1大ギア(21)から隔離し、前記側部延出部(52)は、前記本体プレート(51)の前記第2大ギア(31)に近接する側から垂直に延びるとともに、前記潤滑オイル保持スペース(S)を前記第2大ギア(31)から隔離する、請求項2に記載のギアボックス(100)。
【請求項4】
前記オイル隔離プレート(50)は、前記本体プレート(51)の底部から垂直に延びる底部延出部(53)であって、前記第1大ギア(21)と前記ハウジング(10)との間に挿入される底部延出部(53)をさらに有する、請求項3に記載のギアボックス(100)。
【請求項5】
前記底部延出部(53)は、前記第1大ギア(21)の円周に沿う輪郭を有し、
前記側部延出部(52)は、前記第2大ギア(31)の円周に沿う輪郭を有する、請求項4に記載のギアボックス(100)。
【請求項6】
前記本体プレート(51)の上縁部(54)は、前記第2小ギア(22)の円周の最下点の上方に、かつ前記第2小ギア(22)が前記第2大ギア(31)と噛み合う位置の下方に配置される、請求項3~5のいずれか一項に記載のギアボックス(100)。
【請求項7】
前記本体プレート(51)の前記上縁部(54)は、前記第2小ギア(22)の円周に沿う輪郭を有する凹部(55)を有する、請求項6に記載のギアボックス(100)。
【請求項8】
前記第1シャフト(20)の前記第1大ギア(21)と前記潤滑オイル保持スペース(S)とは、前記軸方向において互いに対してオフセットするとともに、前記オイル隔離プレート(50)の前記本体プレート(51)により互いに隔離され、
前記第2シャフト(30)の前記第2大ギア(31)と前記潤滑オイル保持スペース(S)とは、前記軸方向において実質的に一致するとともに、前記オイル隔離プレート(50)の前記側部延出部(52)により互いに隔離される、請求項3~5のいずれか一項に記載のギアボックス(100)。
【請求項9】
前記ハウジング(10)は、一体的に嵌合する第1ハーフハウジング(11)と第2ハーフハウジング(12)とを備え、前記第1ハーフハウジング(11)は、前記軸方向において前記第1大ギア(21)に近接し、前記第2ハーフハウジング(12)は、前記軸方向において前記第2大ギア(31)に近接する、
請求項3に記載のギアボックス(100)。
【請求項10】
前記第1ハーフハウジング(11)は、前記第1大ギア(21)に近接して配置された傾斜部(13)を有し、前記傾斜部(13)は、前記潤滑オイル保持スペース(S)に向かって下方に傾斜し、前記オイル隔離プレート(50)は、前記本体プレート(51)から垂直に突出する突出部(56)をさらに備え、前記突出部(56)は、前記傾斜部(13)と協働して前記潤滑オイル保持スペース(S)に至るオイル案内溝(14)を形成する、請求項9に記載のギアボックス(100)。
【請求項11】
前記第1ハーフハウジング(11)は、前記第1大ギア(21)に近接して配置された傾斜部(13)を有し、前記傾斜部(13)は、前記潤滑オイル保持スペース(S)に向かって下方に傾斜し、前記オイル隔離プレート(50)は、前記本体プレート(51)の底部から垂直に延びる底部延出部(53)であって、前記第1大ギア(21)と前記ハウジング(10)との間に挿入される底部延出部(53)をさらに有し、前記底部延出部(53)は、前記傾斜部(13)と協働して前記潤滑オイル保持スペース(S)に至るオイル案内溝(14)を形成する、請求項9に記載のギアボックス(100)。
【請求項12】
前記ギアボックス(100)が前方方向に進む場合、前記第1シャフト(20)の前記第1大ギア(21)から飛散する潤滑オイルの少なくとも一部は、前記第1ハーフハウジング(11)に落下して、前記オイル案内溝(14)によって前記潤滑オイル保持スペース(S)に案内され、
前記ギアボックス(100)が前記前方方向に進む場合、前記第2シャフト(30)の前記第2大ギア(31)から飛散する潤滑オイルの少なくとも一部は、前記潤滑オイル保持スペース(S)に落下する、請求項10または11に記載のギアボックス(100)。
【請求項13】
前記第2ハーフハウジング(12)は、フィルタを装着するためのフィルタ装着孔(15)をさらに備え、前記オイル隔離プレート(50)は、前記側部延出部(52)の軸方向縁部から前記本体プレート(51)に対して平行に突出するブロック部(57)をさらに備え、前記ブロック部(57)は、前記フィルタ装着孔(15)の一部を覆うことで前記フィルタ装着孔(15)を前記第2大ギア(31)から実質的に隔離する、請求項9に記載のギアボックス(100)。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の前記ギアボックス(100)を備える電気駆動アセンブリシステム。
【請求項15】
請求項14に記載の前記電気駆動アセンブリシステムを備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ギアボックスの分野に関し、特にギアから実質的に隔離された潤滑オイル保持スペースを有するギアボックスに関する。さらに、本開示は、このようなギアボックスを備えた電気駆動アセンブリシステム、および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ギアボックスは、一般的に車両に設置されている。ギアボックスのハウジングに一連の変速機部品が収容されており、動力源からの動力を車輪に伝達することで、車両が前進駆動される。ギアボックスが車両内の所定位置に設置されると、変速機部品を潤滑するためのギアボックスのケーシング内の潤滑オイルが、ケーシングの底部に集まることとなる。ギアボックス内のギアの回転により、ケーシングの底部の潤滑オイルが攪拌されることになる。これにより、潤滑オイルはギアボックス内で飛散して再びケーシングの底部に集まり、動的平衡が形成される。しかしながら、ギアボックス内のギアが潤滑オイルを攪拌しすぎると、エネルギーのロス(すなわち、オイル攪拌ロス)が生じることとなり、ギアボックスの出力が低下するとともに、駆動システムの伝達効率が低下する。車両全体の設計上の制約から、複数のギアをギアボックスの底部に配置することが必要な場合があり、結果として複数のギアが同時に潤滑オイルを攪拌することになる。さらに、これらのギアのうちの1つ以上のギアが高い回転速度を有し得るため、オイル攪拌ロスが非常に顕著になり、動力伝達効率に影響が及ぶ。車両が電気自動車である場合、このようなオイル攪拌ロスは、電気自動車の航続距離の低下も招き得る。
【発明の概要】
【0003】
本開示の目的は、上述の技術的課題を解決するギアボックスを提案することである。ギアボックスは、ギアボックスの底部に堆積した潤滑オイルがギアから実質的に隔離されることで、ギアボックスのオイル攪拌ロスが低減されるように設計されている。
【0004】
本開示によるギアボックスは、ハウジングと、前記ハウジングに収容されるとともに第1大ギアを有する第1シャフトであって、前記ギアボックスの軸方向に対して実質的に平行である第1回転軸を中心として回転する第1シャフトと、前記ハウジングに収容されるとともに第2大ギアを有する第2シャフトであって、前記ギアボックスの前記軸方向に対して実質的に平行である第2回転軸を中心として回転する第2シャフトと、前記第1大ギアおよび前記第2大ギアから実質的に隔離される潤滑オイル保持スペースを、前記ハウジングとともに形成するオイル隔離プレートと、を備える。
【0005】
本開示において、ギアボックスのハウジングとオイル隔離プレートとは、ギアボックス内のシャフトのギアから実質的に隔離される潤滑オイル保持スペースを、協働して形成する。したがって、潤滑オイル保持スペースに集まった潤滑オイルが、シャフトのギアで攪拌されることがない。これにより、オイル攪拌ロスが低減されつつ、動力伝達効率が向上する。
【0006】
また、本開示によるギアボックスは、1つ以上の以下の特徴を個別に、または組み合わせて有し得る。
【0007】
本開示の実施形態によれば、前記ギアボックスは、前記ハウジングに収容されるとともに第1小ギアを有する第3シャフトであって、前記ギアボックスの前記軸方向に対して実質的に平行である第3回転軸を中心として回転する第3シャフトをさらに備える。前記第1シャフトは、第2小ギアをさらに有し、前記第2小ギアは、前記第1大ギアに回転的に固定されるとともに、これに対して前記軸方向においてオフセットしており、前記第1小ギアは前記第1大ギアと噛み合い、前記第2小ギアは前記第2大ギアと噛み合う。前記第1シャフトの中心は、前記第2シャフトの中心と前記第3シャフトの中心とを結ぶラインよりも下方の高さに配置される。
【0008】
上述の特徴によれば、ギアボックスの第3シャフトおよび第2シャフトは、ギアの噛み合いにより第1シャフトに別個に連結する。第3シャフトおよび第2シャフトは、ギアボックスの入力シャフトまたは出力シャフトとして機能し得る。第1シャフトは、ギアボックスの中間シャフトとして機能し得る。第3シャフトが入力シャフトとして機能する場合、第3シャフトの第1小ギアは第1シャフトの第1大ギアと噛み合い、第1シャフトの回転速度は第3シャフトに比較して低下し、第1シャフトの第2小ギアは第2シャフトの第2大ギアと噛み合い、出力シャフトとして機能する第2シャフトの回転速度は、第1シャフトに比較して低下する。すなわち、ギアボックスは、ギア減速機として使用される。第2シャフトが入力シャフトとして機能する場合、第2シャフトの第2大ギアは第1シャフトの第2小ギアと噛み合い、第1シャフトの回転速度は第2シャフトに比較して増加し、第1シャフトの第1大ギアは第3シャフトの第1小ギアと噛み合い、出力シャフトとして機能する第3シャフトの回転速度は、第1シャフトに比較して増加する。すなわち、ギアボックスは、ギア増速機として使用される。
【0009】
本開示の実施形態によれば、前記オイル隔離プレートは、本体プレートと側部延出部とを有し、前記本体プレートは、前記ギアボックスの前記軸方向に対して実質的に垂直であり、前記本体プレートは、前記潤滑オイル保持スペースを前記第1大ギアから隔離し、前記側部延出部は、前記本体プレートの前記第2大ギアに近接する側から垂直に延びるとともに、前記潤滑オイル保持スペースを前記第2大ギアから隔離する。
【0010】
上述の特徴によれば、オイル隔離プレートの本体プレートと側部延出部は、第1シャフトの第1大ギアおよび第2シャフトの第2大ギアを、潤滑オイル保持スペースからそれぞれ隔離する。
【0011】
本開示の実施形態によれば、前記オイル隔離プレートは、前記本体プレートの前記底部から垂直に延びる底部延出部であって、前記第1大ギアと前記ハウジングとの間に挿入される底部延出部をさらに有する。前記底部延出部は、前記第1大ギアの円周に沿う輪郭を有する。
【0012】
ギアボックスが増速機として使用されるか減速機として使用されるかに関係なく、中間シャフトとして機能する第1シャフトの回転速度は、第2シャフトに比較して1段増加する。万一第1シャフトのギアがギアボックスの底部に集まった潤滑オイルに接触した場合、結果として生じるオイル攪拌ロスがさらに顕著になり得る。このため、オイル隔離プレートの底部延出部が、第1シャフトの第1大ギアをさらに良好に隔離させることで、オイル攪拌ロスが最小限とされる。
【0013】
本開示の実施形態によれば、前記側部延出部は、前記第2大ギアの円周に沿う輪郭を有する。すなわち、側部延出部は、第2シャフトの第2大ギアを潤滑オイル保持スペースから隔離する円弧状の輪郭を有する。
【0014】
本開示の実施形態によれば、前記本体プレートの上縁部は、前記第2小ギアの円周の最下点の上方に、かつ前記第2小ギアが前記第2大ギアと噛み合う位置の下方に配置される。
【0015】
本開示の実施形態によれば、前記本体プレートの前記上縁部は、前記第2小ギアの円周に沿う輪郭を有する凹部を有する。
【0016】
ハウジングの底部に集まった潤滑オイルは、一定の体積を占めるとともに潤滑オイルの液面を形成する。上述の構造により、本体プレートの上縁部を、潤滑オイルの液面よりも上方とすることができる。したがって、潤滑オイルが潤滑オイル保持スペースからあふれ出さないことが保証される。
【0017】
本開示の実施形態によれば、前記第1シャフトの前記第1大ギアと前記潤滑オイル保持スペースとは、前記軸方向において互いに対してオフセットするとともに、前記オイル隔離プレートの前記本体プレートにより互いに隔離される。前記第2シャフトの前記第2大ギアと前記潤滑オイル保持スペースとは、前記軸方向において実質的に一致するとともに、前記オイル隔離プレートの前記側部延出部により互いに隔離される。
【0018】
上述の特徴によれば、第1シャフトの第1大ギアと潤滑オイル保持スペースとは、オイル隔離プレートの本体プレートにより、軸方向において互いに隔離される。一方、第2シャフトの第2大ギアと潤滑オイル保持スペースとは、同一の軸方向位置を有するとともに、オイル隔離プレートの側部延出部により、軸方向に対して垂直な方向において互いに隔離される。
【0019】
本開示の実施形態によれば、前記ハウジングは、一体的に嵌合する第1ハーフハウジングと第2ハーフハウジングとを備え、前記第1ハーフハウジングは、前記軸方向において前記第1大ギアに近接し、前記第2ハーフハウジングは、前記軸方向において前記第2大ギアに近接する。
【0020】
本開示の実施形態によれば、前記第1ハーフハウジングは、前記第1大ギアに近接して配置された傾斜部を有し、前記傾斜部は、前記潤滑オイル保持スペースに向かって下方に傾斜する。オイル隔離プレートが底部延出部を有する場合、前記底部延出部は、前記傾斜部と協働して前記潤滑オイル保持スペースに至るオイル案内溝を形成する。オイル隔離プレートに底部延出部が設けられない場合、前記オイル隔離プレートは、前記本体プレートから垂直に突出する突出部を備え得る。前記突出部は、前記傾斜部と協働して前記潤滑オイル保持スペースに至るオイル案内溝を形成する。潤滑オイルは、オイル案内溝を経由して潤滑オイル保持スペースに流入し得る。
【0021】
本開示の実施形態によれば、前記ギアボックスが前方方向に進む場合、前記第1シャフトの前記第1大ギアから飛散する潤滑オイルの少なくとも一部は、前記第1ハーフハウジングに落下して、前記オイル案内溝によって前記潤滑オイル保持スペースに案内される。前記ギアボックスが前記前方方向に進む場合、前記第2シャフトの前記第2大ギアから飛散する潤滑オイルの少なくとも一部は、前記潤滑オイル保持スペースに落下する。
【0022】
ギアボックスが前方に進むことは、車両の前進に相当し、ギアボックスの動作状態の大部分をなす。上述の特徴によれば、第1シャフトの第1大ギアおよび第2シャフトの第2大ギアにより上方に運ばれて飛散した潤滑オイルは、潤滑オイル保持スペースに戻ることとなるため、潤滑オイルが潤滑オイル保持スペースの外側に集まって第1大ギアおよび第2大ギアで攪拌されるおそれが回避される。
【0023】
本開示の実施形態によれば、前記第2ハーフハウジングは、フィルタを装着するためのフィルタ装着孔をさらに備え、前記オイル隔離プレートは、前記側部延出部の軸方向縁部から前記本体プレートに対して平行に突出するブロック部をさらに備え、前記ブロック部は、前記フィルタ装着孔の一部を覆うことで前記フィルタ装着孔を前記第2大ギアから実質的に隔離する。
【0024】
フィルタは、これを流れて通過する潤滑オイルをフィルタリングすることができる。潤滑オイル保持スペース内の潤滑オイルは、ギアボックスからフィルタを介して吸引され、冷却等の動作を実施した後にギアボックスに戻る。したがって、潤滑オイル保持スペース内の潤滑オイルは、フィルタ装着孔に向かって流れる。オイル隔離プレートのブロック部により、フィルタ装着孔に向かって流れる潤滑オイルが潤滑オイル保持スペースからあふれ出すことが防止され得る。
【0025】
本開示の実施形態によれば、オイル隔離プレートの本体プレートは、2つの装着孔を備え、オイル隔離プレートは、第1ハーフハウジングに、装着孔を貫通するネジにより固定される。
【0026】
本開示は、上述のギアボックスを備える電気駆動アセンブリシステムにさらに関する。
【0027】
本開示は、上述の電気駆動アセンブリシステムを備える車両にさらに関する。
【0028】
本開示の実施形態の技術的解決策をより明瞭に説明すべく、実施形態を説明する際に使用する必要がある図面を以下に簡単に説明する。当然ながら、以下の説明における図面は、本開示の一部の実施形態に過ぎず、当業者であれば、これらの図面に基づいて発明努力を費やすことなく他の図面を得ることができるであろう。以下の図面は、実際の寸法を綿密に等比例で縮小または拡大して描かれたものではなく、本開示の大要を示すことを重点としている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本開示の実施形態によるギアボックスの斜視図である。
図2図2は、ハウジングの第2ハーフハウジングを取り外した状態のギアボックスを示す。
図3図3は、ギアボックスの3つのシャフトの上面図を示す。
図4図4は、ハウジングを取り外した状態のギアボックスを、異なる角度から示す。
図5図5は、ハウジングを取り外した状態のギアボックスを、異なる角度から示す。
図6図6は、本開示の実施形態によるオイル隔離プレートの斜視図を示す。
図7A図7Aは、ギアボックスのオイルガイド溝を示す。
図7B図7Bは、ギアボックスのオイルガイド溝を示す。
図8図8は、本開示の別の実施形態によるオイル隔離プレートの斜視図を示す。
図9A図9Aは、ハウジングの第2ハーフハウジングに配置されたフィルタ装着孔、およびオイル隔離プレートのブロック部を示す。
図9B図9Bは、ハウジングの第2ハーフハウジングに配置されたフィルタ装着孔、およびオイル隔離プレートのブロック部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
すべての図面において、同一または類似の構成要素には、同一の数字が付されている。
【0031】
本開示の技術的解決手段目的、技術的解決手段および利点を明確にするために、本開示の特定の実施形態に付随する図面と併せて、本開示の実施形態の技術的解決手段について明確かつ完全に以下に説明する。
【0032】
別途定義しない限り、本明細書で使用される技術用語または科学用語は、当業者に理解される一般的な意味を有するものとする。本開示の特許出願の明細書および特許請求の範囲において使用される「1つの」または「その」および類似の語は、数量制限を示すものではなく、少なくとも1つが存在することを意味する。「備える」、「含む」または「有する」等の語は、その語の前にある要素または対象が、他の要素または対象を除外することなく、その語の後に列挙された要素または対象およびその等価物をカバーすることを意味する。本開示の特許出願の明細書および特許請求の範囲において使用される「第1」、「第2」および同様の語は、単に異なる構成部分を区別するために使用されるものであり、いかなる順序、量または重要性を示すものではない。「上(上方、上側)」、「下(下方、下側)」、「左(左方、左側)」、「右(右方、右側)」等は、相対的な位置関係を示すためにのみ使用され、記載された対象物の絶対的な位置が変化した場合、相対的な位置関係もそれに応じて変化し得る。
【0033】
本開示による実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図面において、実質的に同一または類似の構造および機能を有する構成部品には、同一の参照符号が割り当てられ、このような構成部品について繰り返される説明は省略されることに留意されたい。
【0034】
図1図3は、ギアボックス100の外観の斜視図、ならびにその内部部品の斜視図および上面図である。
【0035】
図示のように、ギアボックス100は、第1ハーフハウジング11と第2ハーフハウジング12とを一体的に嵌合することにより形成されたハウジング10と、変速機部品としてハウジング10に配置された第1シャフト20、第2シャフト30及び第3シャフト40と、ハウジング10とともに潤滑オイル保持スペースSを形成するオイル隔離プレート50と、を備えている。
【0036】
第1シャフト20は、第1回転軸X1を中心として回転するとともに、第1大ギア21と第2小ギア22とを有している。第2シャフト30は、第2回転軸X2を中心として回転するとともに、第2大ギア31を有している。第3シャフト40は、回転軸X3を中心として回転するとともに、第1小ギア41を有している。3つの回転軸X1、X2およびX3は、互いに対して実質的に平行であるとともに、ギアボックス100の軸方向に対して実質的に平行である。
【0037】
第1シャフト20の第1大ギア21および第2小ギア22は、回転的に固定されるとともに、ギアボックス100の軸方向においてオフセットしている。第2シャフト30の第2大ギア31は、第1シャフト20の第2小ギア22と噛み合い、2つのギアの軸方向位置は、実質的に一致している。第3シャフト40の第1小ギア41は、第1シャフト20の第1大ギア21と噛み合い、2つのギアの軸方向位置は、実質的に一致している。第1大ギア21は、軸方向において第1ハーフハウジング11に近接し、第2大ギア31は、軸方向において第2ハーフハウジング12に近接している。
【0038】
動力伝達経路において、目的に応じて、第2シャフト30および第3シャフト40は、ギアボックス100の入力シャフトまたは出力シャフトとして各々機能し得る。第1シャフト20は、第2シャフト30と第3シャフト40との間に配置され、常にギアボックス100の中間シャフトとして機能する。噛み合ったギア間の歯数の観点からの関係を理由として、第3シャフト40はギアボックス100の3つのシャフトの中で最も高い回転速度を有し、第2シャフト30は最も低い回転速度を有している。第1シャフト20の回転速度は、第2シャフトの回転速度と第3シャフトの回転速度との間にある。
【0039】
ギアボックス100におけるシャフトの垂直方向における相対位置は、車両の全体設計により制約を受ける。図4に示す実施形態において、第3シャフト40の中心および第2シャフト30の中心は、第1シャフト20の上方に位置している。特に、第1シャフト20の中心は、第2シャフト30の中心と第3シャフト40の中心とを結ぶラインよりも下方の高さに配置されている。図3および図5を参照すると、第1シャフト20の第1大ギア21の半径は、第2シャフト30の第2大ギア31の半径よりもかなり小さいが、第1大ギア21の円周の輪郭の最も下の部分は、第2大ギア31の円周の輪郭の最も下の部分と同じ高さ、またはそれよりも低い高さにある。
【0040】
動作中、ギアボックス100の変速機部品は、潤滑オイルにより潤滑および/または冷却される。潤滑オイルは、ハウジング10の底部に集まり、一定の体積を占めるとともに潤滑オイルの液面を形成する。第1大ギア21および第2大ギア31はともにハウジング10の下方部分に配置されているため、潤滑オイルの液面は、第1大ギア21および第2大ギア31の両方の下半分の一部を浸すことになる。したがって、動作状態において、第1大ギア21および第2大ギア31は、ハウジング10の底部に集まった潤滑オイルを、回転しながら攪拌することになる。この攪拌により、ギアボックス100の動力が潤滑オイル内で散逸する結果、エネルギーのロス(すなわち、攪拌ロス)が生じる。そしてギアボックス100における動力伝達効率が低下する。第1大ギア21および第2大ギア31を原因とするオイル攪拌ロスが蓄積することにより、ギアボックス100における動力伝達効率が著しく低下することとなる。
【0041】
このようなオイル攪拌ロスを低減するために、ギアボックス100は、オイル隔離プレート50をさらに備えている。オイル隔離プレート50は、ハウジング10とともに、第1大ギア21および第2大ギア31から実質的に隔離された潤滑オイル保持スペースSを形成する。図4図6を参照すると、オイル隔離プレート50は、本体プレート51と側部延出部52とを備えている。本体プレート51は、ギアボックス100の軸方向に対して実質的に垂直である。側部延出部52は、本体プレート51の第2大ギア31に近接する側から垂直に延びている。図5に示すように、本体プレート51は、軸方向において、第1シャフト20の第1大ギア21と潤滑オイル保持スペースSとの間に配置されている。側部延出部52は、軸方向に対して垂直な方向において、第2シャフト30の第2大ギア31と潤滑オイル保持スペースSとの間に配置されている。そして、側部延出部52は、第2大ギア31の円周に沿う輪郭を有している。すなわち、第1大ギア21と潤滑オイル保持スペースSとは、軸方向において互いにオフセットするとともに、オイル隔離プレート50の本体プレート51により互いに隔離されている。第2大ギア31と潤滑オイル保持スペースSとは、軸方向において実質的に一致するとともに、オイル隔離プレート50の側部延出部52により互いに隔離されている。
【0042】
本体プレート51は、ハウジング10の底部から上方に延びている。その上縁部54は、第1シャフト20の第2小ギア22の円周の最下点の上方に、かつ第2小ギア22が第2シャフト30の第2大ギア31と噛み合う位置の下方に配置されている。上縁部54は、凹部55を有している。凹部55は、第2小ギア22の円周に沿う輪郭を有している。このような構成により、本体プレート51は、ハウジング10の底部から可能な限り上方に延びて、潤滑オイル保持スペースSの容積を増加させている。このため、より多くの潤滑オイルを収容できるとともに、潤滑オイルが潤滑オイル保持スペースSからあふれ出さないようになっている。
【0043】
図5および図6に示すように、オイル隔離プレート50は、底部延出部53も有し得る。底部延出部53は、本体プレート51の底部から垂直に延びて、第1シャフト20の第1大ギア21とハウジング10との間に挿入される。底部延出部53は、第1大ギア21の円周に沿う輪郭を有している。したがって、底部延出部53は、下方から第1大ギア21の円周の一部を囲むことで、第1大ギア21を、ギアボックス100の底部に集まった潤滑オイルからさらに隔離し得る。第1大ギア21は比較的高い回転速度を有しているため、これを良好に隔離することにより、ギアボックス100のオイル攪拌ロスを最小限にすることができる。
【0044】
ギアボックス100の動作中、潤滑オイルは、潤滑オイル導入手段(図示せず)によりギアボックス100に流入して、第1シャフト20、第2シャフト30、第3シャフト40、第1大ギア21、第2小ギア22、第2大ギア31、および第1小ギア41等の変速機部品を潤滑および/または冷却する。特に、第1大ギア21および第2大ギア31に到達した潤滑オイルは、2つのギアが回転する際にそこから飛散することとなる。具体的には、車両の進行方向が前方である場合、ギアボックス100は前方方向に進む。図4に示す角度で見た場合、第1シャフト20は反時計回りに回転し、第2シャフト30および第3シャフト40は時計回りに回転する。第2大ギア31が時計回りの方向に回転し、かつその軸方向位置が潤滑オイル保持スペースSと一致しているため、第2大ギア31から飛散した潤滑オイルの大部分は、潤滑オイル保持スペースSに上方から直接的に落下し得る。
【0045】
一方、第1大ギア21は潤滑オイル保持スペースSからオフセットしており、第1大ギア21から飛散した潤滑オイルは、その軸方向位置に対応する第1ハーフハウジング11に落下することとなる。図7Aおよび図7Bを参照すると、第1大ギア21に近接して配置された傾斜部13が、第1ハーフハウジング11に設けられている。傾斜部13は、潤滑オイル保持スペースSに対面するとともに、下方に傾斜している。傾斜部13は、オイル隔離プレート50の底部延出部53と協働して、潤滑オイル保持スペースSに至るオイル案内溝14を形成している。第1ハーフハウジング11に落下した潤滑オイルは、オイル案内溝14に案内されて潤滑オイル保持スペースSに入る。
【0046】
また、図8に示すように、オイル隔離プレート50は、底部延出部を有さなくてもよい。この場合、垂直に突出する突出部56が、本体プレート51に設けられ得る。突出部56の下方に傾斜した縁部が、傾斜部13と協働してオイル案内溝14を形成する。
【0047】
上述の構造により、ギアボックス100が前方に進む場合、第1大ギア21および第2大ギア31から飛散した潤滑オイルは、潤滑オイル保持スペースSに集まることとなり、潤滑オイルが潤滑オイル保持スペースSの外側に集まって第1大ギア21および第2大ギア31で攪拌されるおそれが回避される。ギアボックス100が逆方向に進む場合、潤滑オイル保持スペースSは、潤滑オイルを集める効果が小さくなる。しかしながら、ギアボックスが逆方向に進むことは車両の後退に対応し、ギアボックスの動作状態のごく一部を占めるに過ぎないため、目立つほどのオイル攪拌ロスは生じないであろう。
【0048】
図9Aおよび図9Bを参照すると、潤滑オイルの循環を達成すべく、フィルタを装着するためのフィルタ装着孔15が、ギアボックス100の第2ハーフハウジング12に設けられている。フィルタ装着孔15は、潤滑オイル保持スペースSに通じている。潤滑オイルは、潤滑オイル保持スペースSからフィルタ装着孔15に装着されたフィルタを介して吸引され、冷却等の動作を実施した後にギアボックス100に戻る。フィルタは、これを流れて通過する潤滑オイルをフィルタリングすることができる。しかしながら、フィルタ装着孔15の輪郭の一部は、オイル隔離プレート50の側部延出部52を超えて、第2シャフト30の第2大ギア31に露出している。フィルタ装着孔15に向かって流れる潤滑オイルが潤滑オイル保持スペースSからあふれ出すことを防止するとともに、フィルタ装着孔15を第2大ギア31から実質的に隔離するために、オイル隔離プレート50には、側部延出部52の軸方向縁部から本体プレート51に対して平行に突出するブロック部57がさらに設けられている。ブロック部57は、フィルタ装着孔15の一部、特に側部延出部52を超える部分を覆う。
【0049】
また、図4を参照すると、オイル隔離プレート50をハウジング10に固定するために、本体プレート51には、2つの装着孔58が設けられている。オイル隔離プレート50は、第1ハーフハウジング11に、装着孔58を貫通するネジにより固定されている。
【0050】
本開示の別の態様によれば、上述のギアボックス100を備える電気駆動アセンブリシステムが提案される。
【0051】
本開示の別の態様によれば、上述の電気駆動アセンブリシステムを備える車両が提案される。
【0052】
車両は、従来の燃料自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、バッテリ電気自動車、または他のタイプの車両であり得る。以上により、車両は、上述のギアボックスの機能を実現し得るとともに、上述の利点を有する。
【0053】
本開示の1つ以上の実施形態における特定の特徴、構成または特性は、適切に組み合わせられ得る。
【0054】
上述のものは、本開示の説明であり、本開示を限定するものとみなされるべきではない。本開示のいくつかの例示的な実施形態について説明したが、当業者であれば、本開示の本来の教示および利点から逸脱することなく、例示的な実施形態に対して多くの変更が可能であることが理解されるであろう。したがって、このような変更は、すべて特許請求の範囲により定義される本開示の範囲に含まれることが意図されている。上述のものは、本開示の説明であり、本開示を限定するものとみなされるべきではないことが理解されたい。さらに、開示した実施形態および他の実施形態に対する変更は、本開示の範囲に含まれることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
【外国語明細書】