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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027110
(43)【公開日】2024-02-29
(54)【発明の名称】照明設備
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20240221BHJP
   C04B 35/44 20060101ALI20240221BHJP
   C04B 35/50 20060101ALI20240221BHJP
   C09K 11/80 20060101ALI20240221BHJP
   F21V 29/502 20150101ALI20240221BHJP
   F21V 3/08 20180101ALI20240221BHJP
   F21V 3/00 20150101ALI20240221BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240221BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20240221BHJP
【FI】
G02B5/20
C04B35/44
C04B35/50
C09K11/80
F21V29/502 100
F21V3/08
F21V3/00 340
F21Y115:10
F21Y115:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023132358
(22)【出願日】2023-08-15
(31)【優先権主張番号】10 2022 120 647.5
(32)【優先日】2022-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アルブレヒト ザイドル
(72)【発明者】
【氏名】ウルリケ シュテーア
(72)【発明者】
【氏名】ジルヴィア ビーデンベンダー
【テーマコード(参考)】
2H148
4H001
【Fターム(参考)】
2H148AA01
2H148AA07
2H148AA11
2H148AA19
4H001XA08
4H001XA13
4H001XA39
4H001XA58
4H001XA71
(57)【要約】      (修正有)
【課題】一次光源と、一次光が照射され、一次光に対して波長が変化した二次光を放出する光変換素子とを備えた照明設備に関する。
【解決手段】一次光を放出するための光源と、光変換ユニットとを備えた照明設備であって、光変換ユニットは、前面と背面とを有する光変換素子によって形成されているか、またはそれを備えており、光変換素子は、その前面に一次光が照射され、一次光に対して波長が変化した二次光をその前面で放出するように設計されており、光変換素子は、光変換セラミック材料を含む第1の相と、さらなるセラミック材料を含む第2の相とを含み、第2の相は、第1の相よりも高い熱伝導率を有し、光変換素子は、複数の細孔を含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明設備であって、前記照明設備は、
一次光を放出するための光源であって、特にレーザーまたは発光ダイオードとして形成された光源と、
光変換ユニットと
を備え、前記光変換ユニットは、
前面と背面とを有する光変換素子であって、前記光変換素子は、その前面に前記一次光が照射され、前記一次光に対して波長が変化した二次光をその前面で放出するように設計されているものとする光変換素子と、
任意に基材であって、前記光変換素子の前記背面に直接または間接的に接合され、有利にはヒートシンクとして形成されているものとする基材と、
任意に接合材であって、前記光変換素子と前記基材との間に位置するものとする接合材と
によって形成されているか、またはそれを備えており、
前記光変換素子は、光変換セラミック材料を含む第1の相と、さらなるセラミック材料を含む第2の相とを含み、前記第2の相は、前記第1の相よりも高い熱伝導率を有し、
前記光変換素子は、複数の細孔を含む、照明設備。
【請求項2】
前記光変換素子が、少なくとも0.5%、有利には少なくとも1.5%、特に好ましくは少なくとも3%、さらに好ましくは3%~7%の気孔率を有し、かつ/または
前記光変換素子が、断面において、1平方ミリメートル当たり少なくとも200個の細孔、有利には1平方ミリメートル当たり少なくとも300個の細孔、特に好ましくは1平方ミリメートル当たり少なくとも400個の細孔を有する、請求項1記載の照明設備。
【請求項3】
前記細孔の直径、特に断面に存在する前記細孔の直径の中央値が、100nm~3000nm、有利には300nm~1500nm、特に好ましくは400nm~1200nmであり、かつ/または
前記第1の相が、複数の晶子を含み、前記晶子の直径の中央値は、有利には300nm~5000nm、特に好ましくは500nm~3000nmであり、かつ/または
前記第2の相が、複数の晶子を含み、前記晶子の直径の中央値は、有利には300nm~5000nm、特に好ましくは500nm~3000nmである、請求項1または2記載の照明設備。
【請求項4】
前記細孔、特に前記断面に存在する細孔の直径の中央値と、前記第1の相および/または前記第2の相の前記晶子、特に前記断面に存在する前記第1の相および/または前記第2の相の前記晶子の直径の中央値との比が、0.02~10、有利には0.06~5、特に好ましくは0.13~2.4である、請求項1から3までのいずれか1項記載の照明設備。
【請求項5】
前記細孔、特に前記断面に存在する細孔の有利には少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%が、前記細孔が前記第1の相の材料とのみ境を接するように前記第1の相に包含されており、かつ/または
前記細孔、特に前記断面に存在する細孔の有利には少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%が、前記細孔が前記第2の相の材料とのみ境を接するように前記第2の相に包含されており、かつ/または
前記細孔、特に前記断面に存在する細孔の有利には少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%が、前記細孔が前記第1の相の材料と前記第2の相の材料との双方と境を接するように前記第1の相と前記第2の相との間に位置している、請求項1から4までのいずれか1項記載の照明設備。
【請求項6】
前記細孔が、焼結プロセス中に生じたものであり、特に例えば選択的エッチングによって後から導入されたものではなく、かつ/または
前記気孔率、前記1平方ミリメートル当たりの前記細孔の数および/もしくは前記細孔の直径の中央値が、前記光変換素子において均一となるように設計されており、かつ/または前記光変換素子の表面において、前記光変換素子の内部の断面と同じであるか、もしくは前記光変換素子の内部の断面とせいぜい10%しか差がない、請求項1から5までのいずれか1項記載の照明設備。
【請求項7】
前記第1の相が、500nmで、1.8以上、特に1.8~1.9の屈折率を有し、かつ/または
前記第2の相が、500nmで、1.8以下、特に1.7~1.8の屈折率を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の照明設備。
【請求項8】
前記500nmでの光変換素子の第1の相の屈折率が、前記500nmでの光変換素子の第2の相の屈折率と同じかまたはそれを上回っており、有利には、前記500nmでの光変換素子の第1の相の屈折率と前記500nmでの光変換素子の第2の相の屈折率との差が、0.15以下、好ましくは0.1以下、特に好ましくは0.7以下、さらに好ましくは0.5以下である、請求項1から7までのいずれか1項記載の照明設備。
【請求項9】
波長600nmでの前記光変換素子の散乱係数が、150cm-1より大きく、好ましくは300cm-1より大きく、特に好ましくは300cm-1~1200cm-1である、請求項1から8までのいずれか1項記載の照明設備。
【請求項10】
前記第1の相を、組成(A1-y12と記述することができ、ここで、Aは、ランタノイドおよびYの群の1つ以上の元素を含み、Rは、ランタノイドの群の1つ以上の元素を含み、Bは、Al、Ga、Inの群の1つ以上の元素を含み、yは、結晶格子のAサイトでのR原子の割合を表し、0<y<0.02、好ましくは0<y<0.012、特に好ましくは0.001<y<0.009が成り立つ、請求項1から9までのいずれか1項記載の照明設備。
【請求項11】
Aが、元素Y、Gd、Luのうちの1つ以上から構成されており、かつBが、元素Al、Ga、Inのうちの1つ以上から構成されている、請求項10記載の照明設備。
【請求項12】
前記第2の相が、酸化アルミニウムを含むかまたはそれからなる、請求項1から11までのいずれか1項記載の照明設備。
【請求項13】
前記第2の相の体積分率zについて、0.05<z<0.95、好ましくは0.3<z<0.7、特に好ましくは0.45<z<0.7が成り立つ、請求項1から12までのいずれか1項記載の照明設備。
【請求項14】
系[(Y1-yCeAl121-z[Al、[(Lu1-yCeAl121-z[Al、[(Y1-x-yGdCeAl121-z[Al、[(Lu1-yCe(Al1-wGa121-z[Alのうちの1つ以上を含み、ここで、0<x<0.2であり、かつ0<w<0.3である、請求項1から13までのいずれか1項記載の照明設備。
【請求項15】
前記光変換素子の熱伝導率が、室温で10W/mKより大きく、好ましくは12W/mKより大きく、特に好ましくは14W/mKより大きい、請求項1から14までのいずれか1項記載の照明設備。
【請求項16】
光変換ユニットであって、前記光変換ユニットは、
前面と背面とを有する光変換素子であって、前記光変換素子は、その前面に前記一次光が照射され、前記一次光に対して波長が変化した二次光をその前面で放出するように設計されているものとする光変換素子と、
任意に基材であって、前記光変換素子の前記背面に直接または間接的に接合され、有利にはヒートシンクとして形成されているものとする基材と、
任意に接合材であって、前記光変換素子と前記基材との間に位置するものとする接合材と
によって形成されているか、またはそれを備えており、
前記光変換素子は、光変換セラミック材料を含む第1の相と、さらなるセラミック材料を含む第2の相とを含み、前記第2の相は、前記第1の相よりも高い熱伝導率を有し、
前記光変換素子は、複数の細孔を含む、光変換ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次光源と、一次光が照射され、一次光に対して波長が変化した二次光を放出する光変換素子とを備えた照明設備に関する。
【0002】
光変換素子、特にセラミックコンバータは、通常、発光体として特定の材料、例えばCeドープイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)またはCeドープルテチウムアルミニウムガーネット(LuAG)を含む。特定の発光体は特に、吸収スペクトルおよび発光スペクトルを決定づけ、これらが、ひいては光変換素子の熱伝導率に影響を及ぼす。
【0003】
コンバータ材料の熱伝導率は、発光体の温度が高すぎるために量子効率が低下し、光出力がさらに増加しても発光出力や輝度が増加しなくなる、すなわち放射照度限界に達する前に、励起光の出力がどの程度高くてもよいかや、励起光の輝度がどの程度であってよいかに影響を及ぼす。
【0004】
広く使用され、記載されているCeドープガーネットセラミックの熱伝導率は、正確な組成にもよるが(室温で)およそ5~10W/mKの範囲であり、他の酸化物と比較してすでに比較的高い値となっている(多くの酸化物、またはガラスも、熱伝導率はわずか1~2W/mKの範囲である)。
【0005】
しかし、ガーネットに比べて著しく高い熱伝導率を有する酸化物も存在する。これには、例えば、約30W/mKのAl(特にコランダム)、約40W/mKのMgO(マグネシア)、または約300W/mKのBeOが挙げられる。これらの文献値は、単結晶材料に関するものであるのに対し、セラミック構造体の値は、大幅に低くなる可能性があることに留意すべきである。
【0006】
Ceドープガーネットよりも高い熱伝導率を有する材料をそれらと組み合わせて混合セラミックを形成した場合、この混合セラミックによって、特定の条件下で、同一条件下で同一寸法の単相の類似のセラミックよりも著しく高い「放射照度」または著しく高い「光出力」が可能となり得る。
【0007】
コンバータ素子における混合セラミックの使用は、文献や特許出願から一般に知られている。時には、コンバータセラミックの特定の体積分率や粒径、粒形、粒界の長さなどを有する特定のコンバータ材料が説明に用いられることもある。
【0008】
しかし、従来の文献では総じて、例えばLED照明分野の用途での透過性に関する設計が対象とされている。
【0009】
対照的に、本発明は、反射的設計を有する効率的な照明設備に向けて混合セラミックの利点を利用するという課題に基づいている。
【0010】
この目的のために、本発明は、一次光を放出するための光源であって、特にレーザーまたは発光ダイオードとして形成された、好ましくはレーザーとして形成された光源と、光変換ユニットとを備えた照明設備を開示する。
【0011】
光変換ユニットは、前面と背面とを有する光変換素子によって形成されているか、またはそれを備えており、光変換素子は、その前面に一次光が照射され、一次光に対して波長が変化した二次光をその前面で放出するように設計されている。
【0012】
任意に、光変換ユニットはさらに、光変換素子の背面に直接または間接的に接合され、有利にはヒートシンクとして形成されている基材を備える。
【0013】
有利には、基材の全体または大部分が、30W/mKより大きい熱伝導率、有利には100W/mKより大きい熱伝導率、さらにより好ましくは150W/mKより大きい熱伝導率、さらにより好ましくは350W/mKより大きい熱伝導率を有する材料からなり、かつ/または少なくとも1つのセラミックおよび/または少なくとも1つの金属および/または少なくとも1つのセラミック-金属複合材を含む。特に好ましくは、基材は、有利にはCu、Al、FeまたはNiから選択される少なくとも1つの金属、特にCu、例えばNi-P被覆および/またはAu被覆Cuを含む。
【0014】
また任意に、光変換ユニットはさらに、接合材を含み、この接合材は、光変換素子と基材との間に位置し、有利には有機接着剤、ガラス、セラミック接着剤、無機接着剤、焼結された焼結型ペーストおよび/または金属はんだ接合材として、有利には金属はんだ接合材または焼結された焼結型ペーストとして、好ましくは金属はんだ接合材として形成されている。
【0015】
光変換素子は、光変換セラミック材料を含む第1の相と、さらなるセラミック材料を含む第2の相とを含み、第2の相は、第1の相よりも高い熱伝導率を有する。
【0016】
さらに光変換素子は、複数の細孔を含む。細孔は特に、光を散乱させる役割を果たす。
【0017】
光散乱の程度(散乱係数)は、(吸収係数と共に)特に、変換された、後方散乱性の、特に青色の励起放射線の割合がどの程度大きいか、また、励起放射線が完全に吸収されるまでコンバータ内でどの程度拡散するか、さらに、変換された光が再び有用な光としてコンバータから出るまでコンバータ内でどの程度拡散するかに影響を及ぼす。部品の効率や発光スポットの大きさといった重要な特性値は、散乱の影響を受ける。反射性(照射と発光が同一面で行われる)照明設備では、光散乱係数を十分に大きくすることが目標とされる。
【0018】
多数の細孔を含む光変換素子により、光変換素子における光散乱の増大が有利に可能となる。これにより、特に混合セラミックを、例えばSSL(ソリッドステートライティング)のような反射様式で効率的に使用することができる。特に、屈折率の変化が小さい相を有する混合セラミックでは、細孔による散乱の増大が特に有利である。例えば、Alの屈折率は約1.77であり、これは、YAGの屈折率(約1.83)をごくわずかにしか下回らない。したがって、混合セラミックのみによる光散乱効果は低く、細孔によって光散乱効果が著しく増大する。
【0019】
対照的に、既知の、特に透過性の照明では、気孔率は通常、意図的に抑制される。場合によっては、高密度セラミックを実現するために、熱間等方圧加圧(HIP)や「スパークプラズマ焼結」などのプロセスが挙げられる。透過性ジオメトリの場合には、さらなる異種成分によって、反射性照明設備よりもわずかな光散乱がすでに十分に引き起こされる場合がある。
【0020】
任意に、光変換ユニットは、少なくとも1つの高反射性コーティングを含み、この高反射性コーティングは有利には、金属コーティングおよび/または金属含有コーティングおよび/または誘電体コーティングであり、特に好ましくはAgコーティングまたはAg含有コーティングである。例えば、光変換素子が、その背面に、特に金属性の、有利にはAgを有するかまたはそれからなる鏡面膜を有し、これが特に、光変換素子の背面が鏡面膜で被覆されており、この鏡面膜が有利には、蒸着、スパッタリング(薄膜)または印刷(厚膜)によって光変換素子の背面に施与されているように行われることを提供することができる。
【0021】
一実施形態では、光変換素子は、薄膜である鏡面膜を有する。有利には、薄膜は、Agを含むかまたはそれからなり、かつ/または50nm~500nm、好ましくは100nm~350nm、さらに好ましくは125nm~300nm、特に好ましくは150nm~250nmの膜厚を有する。いくつかの実施形態では、光変換素子は、Agを含むかまたはそれからなる薄膜と、Auを含むかまたはそれからなるさらなる薄膜とを有する。有利には、さらなる薄膜は、蒸着またはスパッタリングによって施与される。有利には、Auを含むかまたはそれからなる薄膜は、50nm~500nm、好ましくは100nm~350nm、さらに好ましくは125nm~300nm、特に好ましくは150nm~250nmの膜厚を有する。Auを含むかまたはそれからなる薄膜は、特に高温で、例えば光変換素子を基材に例えば焼結型ペーストで接合する際に起こり得る酸化反応から、Agを含むかまたはそれからなる鏡面膜を保護する役割を果たすことができる。
【0022】
一実施形態では、光変換素子は、Ag含有厚膜である鏡面膜を有する。有利には、厚膜は、1μm~25μm、好ましくは5μm~20μm、特に好ましくは10μm~15μmの膜厚を有する。
【0023】
代替的または追加的に、光変換素子の背面は、特に最大反射率に向けて最適化された誘電体膜系で鏡面加工されていてよい。
【0024】
誘電体膜系は有利には、外側が金属鏡面膜で封止されていてよい。したがって、膜の順序は、コンバータ素子-誘電体膜系-金属鏡面膜である。
【0025】
光変換素子の背面に高反射性コーティングを施す代わりに、またはそれに加えて、光変換素子の背面は、鏡体、有利にはAg鏡または銀メッキ基材と接合されていてよく、鏡体は有利には、基材によって形成されているか、または基材に施与されている。
【0026】
光変換ユニットが少なくとも1つの光学分離膜を備え、この光学分離膜が有利には、少なくとも1つの高反射膜と光変換素子の背面との間に位置し、少なくとも1つの光学分離膜が有利には、透明であり、かつ/または光変換素子の屈折率よりも低い屈折率を有し、少なくとも1つの光学分離膜が有利には、SiOを含むかまたはこれからなることを提供することができる。
【0027】
光学分離膜は有利には、5μm以下、好ましくは3μm以下、好ましくは0.5~1.5μmの範囲、特に好ましくは0.8~1.2μmの範囲の厚さを有する。光学分離膜は、コンバータ背面に到達する二次光の、コンバータ背面での反射および場合により全反射と、二次光のうちコンバータ背面を通過する部分の、高反射膜、特に金属鏡体での反射とを分離する役割を果たすことができる。
【0028】
少なくとも1つの高反射膜、好ましくは金属コーティングまたは金属含有コーティングと光学分離膜との間に、透明な接着促進膜が存在し、この接着促進膜が有利には、SnO、TiO、YおよびLa、好ましくはYからなる群から選択される1つ以上の酸化物を含むかまたはそれからなることを提供することができる。有利には、接着促進膜は、1nm以上および/または100nm未満、好ましくは75nm未満、さらに好ましくは50nm未満、好ましくは35nm未満、特に好ましくは20nm未満の厚さを有する。
【0029】
任意に含まれる接合材は、少なくとも1つの有機接着剤、少なくとも1つのガラス、少なくとも1つのセラミック接着剤、少なくとも1つの無機接着剤、少なくとも1つの焼結された焼結型ペーストおよび/または少なくとも1つの金属はんだ接合材であってよい。
【0030】
接合材は特に、接合膜として形成されていてよい。
【0031】
好ましい一実施形態では、接合膜は、少なくとも1つの接着剤から形成される。適切な接着剤は、例えば耐熱性、熱伝導率、透明性および硬化挙動に関して、それぞれのコンバータの特定の用途および特定の構造に適した特性を有する有機接着剤である。
【0032】
好ましい一実施形態では、これは、充填および非充填のエポキシ樹脂およびシリコーンである。接着剤系の接合膜は典型的には、5~70μm、好ましくは10~60μm、より好ましくは20~50μm、特に好ましくは30~50μmの膜厚を有する。
【0033】
さらなる好ましい一実施形態では、接合膜はガラスであり、好ましくは、はんだガラスまたは薄板ガラスから選択されるガラスである。
【0034】
はんだガラスとは特に、軟化温度が750℃以下、好ましくは560℃以下と比較的低い特殊ガラスである。原則として、ガラスはんだは、様々な形態で使用することができ、例えば粉末として、液体媒体中のペーストとして、またはコンバータ基材もしくはコンバータ部品に施与されるマトリックスに埋め込まれた状態で使用することができる。施与は、ストランド施与により、スクリーン印刷により、吹付けにより、またはルーズな粉末の形態で行うことができる。その後、コンバータの個々の部品が組み合わされる。
【0035】
好ましい一実施形態では、ガラス粉末を含むペースト、例えば、PbO系ガラス、Bi系ガラス、ZnO系ガラス、SO系ガラス、B系ガラスまたはケイ酸塩系ガラス、特に好ましくはケイ酸塩系ガラスを含むペーストが使用される。
【0036】
本願の趣意における薄板ガラスとは、最大厚さが50μm以下、軟化温度が750℃以下、好ましくは560℃以下の薄板ガラスである。このようなガラスを、コンバータ部品とコンバータ基材との間に配置し、十分に高い温度および十分に高い圧力で圧縮することができる。適切な薄板ガラスは、特に例えばSCHOTT社からD263(登録商標)として入手可能なホウケイ酸ガラスである。
【0037】
ガラス系接合膜は例えば、15~70μm、好ましくは20~60μm、特に好ましくは30~50μmの膜厚を有する。
【0038】
別の一実施形態では、光変換素子は、セラミック接着剤により基材に接合されている。
【0039】
このようなセラミック接着剤は通常、有機成分を実質的に含まず、高い耐熱性を示す。好ましくは、セラミック接着剤は、得られる接合膜の熱膨張係数および機械的特性、例えばヤング率が、基材および/またはコンバータの対応する特性に適合するように選択される。
【0040】
適切なセラミック接着剤は例えば、無機の、好ましくは粉末状の固体および液体媒体、好ましくは水から製造される。無機固体は例えば、MgO系、SiO系、TiO系、ZrO系および/またはAl系の固体であってよい。好ましくは、無機固体は、SiO系および/またはAl系の固体であり、特に好ましくはAl系の固体である。粉末状固体はさらに、例えばセラミック接着剤の硬化を支援するさらなる粉末状成分を含むことができる。このような成分は例えば、ホウ酸、ホウ酸塩またはケイ酸ナトリウムのようなアルカリ金属ケイ酸塩であり得る。
【0041】
セラミック接着剤は例えば、使用の直前に粉末状の固体および水から混合し、室温で硬化させることができる。
【0042】
この場合、この固体は好ましくは、1~100μm、好ましくは10~50μmの平均粒径d50を有する。好ましくは、セラミック接着剤は、5~15×10-6 1/K、特に好ましくは6~10×10-6 1/Kの熱膨張係数を有する。適切なセラミック接着剤は例えば、Resbond 920またはResbond 940 HT(Polytec PT GmbH)から製造される。
【0043】
セラミック接着剤系接合膜は例えば、50~500μm、好ましくは100~350μm、特に好ましくは150~300μmの膜厚を有する。
【0044】
有利な一実施形態では、接合材は、金属はんだであり、有利には2種以上の金属の合金を含む金属はんだである。適切な金属はんだ接合材が有する融点は、光変換ユニットの個々の成分の融点および/もしくは分解点よりも低く、かつ/またははんだと接する光変換素子の、動作中に到達する最高温度よりも高い。金属はんだ接合材の融点は、好ましくは150℃~450℃、より好ましくは180℃~320℃、特に好ましくは200~300℃である。適切な金属はんだ接合材は、例えば銀はんだおよび金はんだであり、好ましくはAg/Snはんだ、Ag/AuはんだおよびAu/Snはんだ、特に好ましくはAu/Snはんだ、例えばAuSn8020である。
【0045】
接合材は、焼結された焼結型ペーストとして形成されていてもよく、有利にはAg含有焼結型ペーストとして形成されていてよい。
【0046】
有利には、焼結された焼結型ペーストは、1μm~50μm、有利には5μm~40μm、好ましくは10μm~30μm、特に好ましくは15μm~25μmの膜厚を有する。
【0047】
有利には、焼結された焼結型ペーストは、少なくとも50W/mK、好ましくは少なくとも100W/mK、特に好ましくは少なくとも150W/mKの熱伝導率を有する。
【0048】
特に、接合材が焼結された焼結型ペーストである実施形態では、光変換素子の表面と、一緒に接合される基材の表面とが、コーティングを有することが有利である。有利には、光変換素子は、Ag含有薄膜、任意にさらにAu含有薄膜を有するか、またはCu含有薄膜もしくはAg含有厚膜でコーティングされている。Ag含有薄膜およびAu含有薄膜およびAg含有厚膜の好ましい実施形態は、上述されており、ここでも同様に適用される。有利な実施形態では、基材の表面は、コーティングを有し、コーティングは有利には、Au含有コーティングおよび/またはNiPコーティングである。有利には、基材の表面は、NiP膜を有し、NiP膜は有利には、1μm~10μm、有利には3μm~7μmの膜厚を有し、かつ/またはAu膜は有利には、50nm~500nm、有利には100nm~400nm、好ましくは150nm~300nmの膜厚を有する。
【0049】
接合材が焼結された焼結型ペーストである実施形態では、光変換素子と基材との接合は、以下の工程により行われる:
a)基材および光変換素子を提供する工程;
b)焼結型ペーストを基材の表面の少なくとも一部および/または光変換素子の表面の少なくとも一部に施与する工程;
c)基材の表面と光変換素子の表面とを接触させ、その際、基材の表面の少なくとも一部および/または光変換素子の表面の少なくとも一部が焼結型ペーストで覆われているものとする工程;
d)工程c)で得られた接合体を焼結させる工程。
【0050】
本方法の工程a)では、基材および光変換素子を提供する。有利には、基材および/または光変換素子の表面は、上記で詳述したコーティングを有する。
【0051】
工程b)では、焼結型ペーストを基材の表面の少なくとも一部および/または光変換素子の表面の少なくとも一部に施与する。有利には、基材の少なくとも一部に焼結型ペーストを施与する。典型的には、この量の焼結型ペーストの供給を、焼結工程d)の後に、焼結された焼結型ペーストが1μm~50μm、有利には5μm~40μm、特に好ましくは10μm~30μm、特に好ましくは15μm~25μmの膜厚を有するように行う。
【0052】
工程c)では、基材の表面と光変換素子の表面とを互いに接触させ、その際、基材の表面の少なくとも一部および/または光変換素子の表面の少なくとも一部が焼結型ペーストで覆われている。有利には、光変換素子の表面と基材の表面の一部とを接触させ、その際、基材の表面の一部が少なくとも部分的に焼結型ペーストで覆われている。有利には、この接触を、有利には少なくとも15mN/mm、好ましくは30mN/mm超、特に好ましくは60mN/mm超の圧力を用いて行う。
【0053】
工程d)では、工程d)で得られた接合体の焼結を行う。焼結は、酸素含有雰囲気下で、あるいは空気中で、または保護ガス雰囲気下で、特にNもしくはAr雰囲気中で行うことができる。焼結を、180℃~300℃の範囲の温度で行う。
【0054】
有利には、焼結型ペーストは、300℃以下、有利には280℃以下、好ましくは250℃以下の焼結温度を有する。有利には、接合体を所望の焼結温度まで加熱することによって焼結を行い、その際有利には、第1の段階で第1の温度まで、有利には少なくとも0.5K/分、好ましくは少なくとも0.75K/分でかつ/または3K/分以下、好ましくは2K/分以下で加熱する。有利には、第1の温度は、70℃~120℃、有利には80℃~105℃の範囲である。有利には、第1の温度に達した後、温度を、1分間~60分間、有利には5分間~45分間、好ましくは20分間~40分間保持する。有利には、その後、第2の段階で接合体を第2の温度まで、有利には少なくとも1.0K/分、有利には少なくとも1.5K/分でかつ/または3.5K/分以下、好ましくは3K/分以下で加熱する。有利には、第2の温度は、180℃~300℃、有利には200℃~280℃の範囲であり、これは焼結温度に対応する。有利には、第2の温度、すなわち焼結温度に達した後、温度を、少なくとも10分間、好ましくは少なくとも20分間または少なくとも30分間でかつ/または60分間以下、好ましくは50分間または40分間以下保持する。その後、接合体の冷却を、有利には室温まで行う。
【0055】
光変換素子の背面が鏡体、有利にはAg鏡体または銀メッキ基材に接合されており、鏡体が有利には、基材によって形成されているかまたは基材に施与されている実施形態では、鏡体または鏡面加工された基材と光変換素子との間に接合材が存在し、該接合材が有利には、光学的に透明な有機もしくは無機接着剤を有するかもしくはそれからなり、かつ/または光変換素子の屈折率よりも低い屈折率を有する透明材料からなり、好ましくは光変換素子の屈折率よりも低い屈折率を有する光学的に透明な有機接着剤を有し、接合材が有利には、30μm以下の範囲、好ましくは10~20μmの範囲の厚さを有することを提供することができる。
【0056】
入射光に面する光変換素子の表面の一部または全体に、単層または多層の反射防止コーティングが施されていることを提供することができる。
【0057】
本発明の好ましい一実施形態では、光変換素子は、特に光変換素子の全容積に対する細孔容積に関して、少なくとも0.5%、有利には少なくとも1.5%、特に好ましくは少なくとも3%、さらに好ましくは3%~7%の気孔率を有する。
【0058】
代替的または付加的に、光変換素子は、断面において、1平方ミリメートル当たり少なくとも200個の細孔、有利には1平方ミリメートル当たり少なくとも300個の細孔、特に好ましくは1平方ミリメートル当たり少なくとも400個の細孔を有することができる。
【0059】
光変換素子の断面は、特に走査型電子顕微鏡法(SEM)によって調べることができる。このような光変換素子の断面はさらに、研磨されていてもよい。その場合、研磨された断面(研磨面)では特に、研磨された細孔が視認可能である場合があり、これをさらに、特にSEMによって視認可能である場合がある。例えば、61800μmの面積の断面を観察し、評価することができる。
【0060】
特に、例えばそのような61800μmの面積の断面に、1cm当たり少なくとも20000個の細孔、好ましくは1cm当たり少なくとも30000個の細孔、特に好ましくは1cm当たり少なくとも40000個の細孔が存在し得る。代替的または付加的に、断面に、1cm当たり20000~200000個の細孔、好ましくは1cm当たり30000~150000個の細孔、特に好ましくは1cm当たり40000~120000個の細孔が存在し得る。
【0061】
細孔の直径、特に断面に存在する細孔の直径の中央値は、100nm~3000nm、有利には300nm~1500nm、特に好ましくは400nm~1200nmであってよい。
【0062】
中央値は、データセット、サンプルまたは分布、この場合には例えば、断面に存在する細孔の直径または晶子の直径を、これらの値、すなわち細孔直径が、一方の半分では中央値以下となり、他方では中央値以上となるように2等分する。
【0063】
光変換素子の第1の相は、複数の晶子を含むことができ、これらの晶子の直径の中央値は、有利には300nm~5000nm、特に好ましくは500nm~3000nmである。
【0064】
光変換素子の第2の相は、複数の晶子を含むことができ、これらの晶子の直径の中央値は、有利には300nm~5000nm、特に好ましくは500nm~3000nmである。
【0065】
細孔、特に断面に存在する細孔の直径の中央値と、第1の相および/または第2の相の晶子、特に断面に存在する第1の相および/または第2の相の晶子の直径の中央値との比が、0.02~10、有利には0.06~5、特に好ましくは0.13~2.4であることを提供することができる。
【0066】
さらに、細孔、特に断面に存在する細孔の有利には少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%が、これらの細孔が第1の相の材料とのみ境を接するように第1の相に包含されていることを提供することができる。
【0067】
細孔、特に断面に存在する細孔の有利には少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%は、これらの細孔が第2の相の材料とのみ境を接するように第2の相に包含されていてよい。
【0068】
細孔、特に断面に存在する細孔の有利には少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%は、これらの細孔が第1の相の材料と第2の相の材料との双方と境を接するように第1の相と第2の相との間に位置することができる。
【0069】
示された%値は特にそれぞれ、断面において求められた細孔の総数に対する、断面において求められた特定の細孔の数を表す。
【0070】
好ましくは、細孔は、焼結プロセス中に生じたものであり、その際、有利には細孔形成剤は使用されず、細孔は、特に例えば選択的エッチングによって後に導入されたものではない。
【0071】
特に断面における気孔率、特に断面における1平方ミリメートル当たりの細孔の数および/もしくは特に断面における細孔の直径の中央値は有利には、光変換素子において均一となるように設計されており、かつ/または光変換素子の表面において、光変換素子の内部の断面と同じであるか、もしくは光変換素子の内部の断面とせいぜい10%しか差がない。
【0072】
光変換素子の第1の相は、500nmで、1.8以上、特に1.8~1.9の屈折率を有する。
【0073】
光変換素子の第2の相は、500nmで、1.8以下、特に1.7~1.8の屈折率を有する。
【0074】
有利には、500nmでの光変換素子の第1の相の屈折率は、500nmでの光変換素子の第2の相の屈折率と同じかまたはそれを上回る。有利には、500nmでの光変換素子の第1の相の屈折率と500nmでの光変換素子の第2の相の屈折率との差は、0.15以下、好ましくは0.1以下、特に好ましくは0.7以下、さらに好ましくは0.5以下である。
【0075】
光変換素子の第1の相の屈折率および光変換素子の第2の相の屈折率は例えば、両面を研磨した各材料の既知の厚さの試料について、エリプソメトリーを用いて求めることができる。
【0076】
本発明の一実施形態では、波長600nmでの光変換素子の散乱係数は、150cm-1より大きく、好ましくは300cm-1より大きく、特に好ましくは300cm-1~1200cm-1である。
【0077】
散乱係数は、V. Hagemann, A. Seidl, G. Weidmann: Static ceramic phosphor assemblies for high power high luminance SSL-light sources for digital projection and specialty lighting, Proc. of SPIE Vol. 11302 113021N-11, SPIE OPTO, San Francisco 2020に記載のモデルを、600nmでの後方散乱の実測値に当てはめることによって求められる。
【0078】
本発明の一実施形態では、第1の相を、組成(A1-y12と記述することができ、ここで、Aは、ランタノイドおよびYの群の1つ以上の元素を含み、Rは、ランタノイドの群の1つ以上の元素を含み、Bは、Al、Ga、Inの群の1つ以上の元素を含み、yは、結晶格子のAサイトでのR原子の割合を表し、0<y<0.02、好ましくは0<y<0.012、特に好ましくは0.001<y<0.009が成り立つ。
【0079】
上記実施形態では、Aは、元素Y、Gd、Luのうちの1つ以上から構成されていてよく、かつ/またはBは、元素Al、Ga、Inのうちの1つ以上から構成されていてよい。
【0080】
本発明の一実施形態では、光変換素子の第2の相が、酸化アルミニウムを含むかまたはそれからなることが提供される。
【0081】
第2の相の体積分率zについては、以下が成り立ち得る:0.05<z<0.95、好ましくは0.3<z<0.7、特に好ましくは0.45<z<0.7。
【0082】
一実施形態では、光変換素子は、系[(Y1-yCeAl121-z[Al、[(Lu1-yCeAl121-z[Al、[(Y1-x-yGdCeAl121-z[Al、[(Lu1-yCe(Al1-wGa121-z[Alのうちの1つ以上を含み、ここで特に、0<x<0.2であり、かつ0<w<0.3である。
【0083】
光変換素子の熱伝導率が、室温で10W/mKより大きく、好ましくは12W/mKより大きく、特に好ましくは14W/mKより大きいことを提供することができる。
【0084】
本発明はさらに、前面と背面とを有する光変換素子によって形成されたまたはそれを備えた光変換ユニットであって、光変換素子が、その前面に一次光が照射され、一次光に対して波長が変化した二次光をその前面で放出するように設計されている、光変換ユニットに関する。
【0085】
光変換ユニットは任意に、光変換素子の背面に直接または間接的に接合され、有利にはヒートシンクとして形成されている基材と、任意に、光変換素子と基材との間に位置し、有利には有機接着剤、ガラス、セラミック接着剤、無機接着剤、焼結された焼結型ペーストおよび/または金属はんだ接合材として、有利には金属はんだ接合材または焼結された焼結型ペーストとして、好ましくは金属はんだ接合材として形成されている接合材とを含む。
【0086】
光変換素子は、光変換セラミック材料を含む第1の相と、さらなるセラミック材料を含む第2の相とを含み、第2の相は、第1の相よりも高い熱伝導率を有する。
【0087】
光変換素子は、複数の細孔を含み、これらの細孔は特に、光を散乱させる役割を果たす。
【0088】
上記の照明設備あるいは光変換ユニットは例えば、「動的」用途(カラーホイール)または「静的」用途(ヒートシンク上のダイ)で使用することができる。
【0089】
以下、添付図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0090】
図1】各気孔率における、Alを添加したおよび添加していないコンバータセラミックの実験的に求められた反射スペクトルを示す図である。
図2】各気孔率における、Alを添加したおよび添加していないコンバータセラミックの、反射率測定値から算出された散乱係数を示す図である。
図3】組成[(Y0.993Ce0.007Al120.46[Al0.54の混合セラミックのSEM像を示す図であり、明色の相:YAG、暗色の相:Alおよび細孔を示す。
図4】表2の材料の20℃での熱伝導率を示す図である(このオーダーの気孔率では、熱伝導率は、気孔率の増加とともに直線的に減少し、混合セラミックは、純相のYAGセラミックよりも著しく高い熱伝導率を示す)。
図5】組成[(Y0.989Ce0.011Al120.65[Al0.35の混合セラミックのSEM像を示す図であり、明色の相:(Y0.989Ce0.011Al12、暗色の相:Alを示し、いくつかの視認可能な細孔(完全に暗色)に、例示的に印が付されている。
図6】組成[(Lu0.9937Ce0.008Al120.5[Al0.5の混合セラミックのSEM像を示す図である。
図7】組成[(Lu0.9937Ce0.008Al120.5[Al0.5の混合セラミックのSEM像を示す図であり、存在する視認可能な細孔(完全に暗色)、明色の相:(Lu0.9937Ce0.008Al12、暗色の相:Alを示す。
図8】表3のコンバータセラミックの、反射率測定値から算出された散乱係数を示す図である。
図9】断面(研磨面)における、nm単位で示される細孔直径の分布を示す図である。
【0091】
混合セラミックを含む光変換素子を備えた効率的な反射性照明設備、特にSSL(ソリッドステートライティング)に関して、細孔によって十分に大きな散乱(十分に大きな散乱係数)が可能となる。これは特に、AlおよびYAGの材料に該当する。
【0092】
Alの屈折率とYAGの屈折率とには、大きな差はなく、Alの屈折率は、約1.77であり、YAGの屈折率は、約1.83である。したがって、混合セラミック単独による光散乱効果は、細孔がなければ比較的低いものと推定できる。
【0093】
このことは、独自の研究でも実験的に証明されている。気孔率の異なる(すなわち、散乱特性の異なる)コンバータセラミックを、Ce:LuAGから、一部はAlを添加せずに、一部は酸化アルミニウムを添加して製造した。(ここではLuAl12の)理論密度ρおよび(ここではAlの)ρ、ならびに重量mおよびmから、混合セラミックの理論密度ρthが決定される:
【数1】
【0094】
製造された焼結体の密度ρを測定し、そこから焼結体の気孔率Pが得られる:
【数2】
【0095】
気孔率の異なる焼結体から、100~250μmの範囲で一定の厚さの(両面研磨)試料を作製した。緑色ないし赤色のスペクトル範囲における反射率を測定した(ここでは、吸収は無視できるほどわずかであるため)。このようにして求めた反射率には、フレネル反射と後方散乱との双方が含まれる。
【0096】
V. Hagemann, A. Seidl, G. Weidmann: Static ceramic phosphor assemblies for high power high luminance SSL-light sources for digital projection and specialty lighting. Proc. of SPIE Vol. 11302 113021N-11, SPIE OPTO, San Francisco 2020で説明されているモデルを適用した。
【0097】
上記のモデルを使用して、これらの実験条件をシミュレートすることができる。このスペクトル範囲での吸収は無視できるため、反射強度は、両面研磨されたプレートレットの屈折率、その厚さおよび散乱係数に依存する。(場合により平均)屈折率および厚さは既知であるため、このような測定から散乱係数を算出することが可能である。
【0098】
図1は、このようにして測定された9種類の例示的な試料の反射スペクトルを示す。
【0099】
表1は、測定およびシミュレーションの結果をまとめたものである。
【0100】
【表1】
【0101】
図2は、測定された材料において、散乱係数が、気孔率にほぼ比例して増加することを示しており、これも予想されたことである(散乱係数は常に、散乱中心の数に比例する)。しかし特に重要なことは、Alの割合が非常に高くても、この材料が、Alを含まない材料よりも著しく散乱することはないということである。
【0102】
光が光変換素子の前面に当たり、二次光もこの前面から放出されるような反射性ジオメトリでは、用途にもよるが、約150~約1200cm-1の散乱係数が好ましい。このような散乱係数を達成するためには、材料中のAlの存在にかかわらず、有利には少なくとも1%の気孔率が提供される。
【0103】
反射性照明設備は特に、細孔を含む混合セラミックを有する。換言すれば、混合セラミックは、多孔質混合セラミックとして製造されていてよい。有利には、これにより、散乱係数を150cm-1~1200cm-1の範囲に調整することができる。有利には、光変換素子の第2は、Alを含むことができる。
【0104】
このような多孔質混合セラミックの製造は、様々な様式で行うことができる。
【0105】
方法の1つには、酸化イットリウム、酸化ルテチウム、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化ガドリニウムおよび酸化セリウムの純粋な酸化物の粉末を、所望の組成および化学量論にしたがって混合することが挙げられる。「化学量論的に過剰に」添加された酸化アルミニウムは、マトリックス中のAl相となり、残りはそれぞれの所望のガーネット相となる。エタノール(または水、またはその他の流体)、分散助剤、加圧助剤を添加した後、粉砕用ボールをスラリーに加え、ローラー台を用いてバレル内で微粉砕する。その後、スラリーを乾燥させ、次いで圧縮して未焼成体を形成する。この未焼成体を、約500℃を上回る温度で脱バインダー処理し、その後、所望の密度または気孔率に達するまで、空気中、酸素中またはさらには真空中で約1400℃を上回る十分に高い温度で反応焼結を行う。それでも気孔率が高すぎる場合には、目標値に達するまでさらに1回以上の焼結を続けることができる。
【0106】
もう1つの方法は、所望の組成の予備合成済みガーネットの粉末をAl粉末と混合することである。ガーネット粉末にまだCeが含まれていない場合は、酸化セリウム粉末を所望量だけ添加することもできる。エタノール(または水、またはその他の流体)、分散助剤、加圧助剤を添加した後、粉砕用ボールをスラリーに加え、ローラー台を用いてバレル内で微粉砕する。その後、スラリーを乾燥させ、次いで圧縮して未焼成体を形成する。この未焼成体を、約500℃を上回る温度で脱バインダー処理し、その後、所望の密度または気孔率に達するまで、空気中、酸素中またはさらには真空中で1400℃を上回る十分に高い温度で反応焼結を行う。それでも気孔率が高すぎる場合には、目標値に達するまでさらに1回以上の焼結を続けることができる。
【0107】
これを、[(A1-y121-z[Alの表記に従うすべての組成に対して行うことができ、ここで、Aは、ランタノイドおよびYの群の1つ以上の元素を含み、Rは、ランタノイドの群の1つ以上の元素を含み、Bは、Al、Ga、Inの群の1つ以上の元素を含み、yは、結晶格子のAサイトでのR原子の割合を表し、zは、セラミックマトリックスの固体中の(すなわち、細孔を考慮しない場合の)Alの体積分率を表し、0<y<0.02であり、かつ0.05<z<0.95である。
【0108】
好ましくは、Aは、Y、Gd、Luの1つ以上の元素であり、Bは、Al、Gaの1つ以上の元素であり、0<y<0.012であり、かつ0.3<z<0.7である。
【0109】
系[(Y1-yCeAl121-z[Al、[(Lu1-yCeAl121-z[Al、[(Y1-x-yGdCeAl121-z[Al、[(Lu1-yCe(Al1-wGa121-z[Al(0<x<0.2であり、かつ0<w<0.3である)について、特に好ましくは0.001<y<0.009であり、かつ0.45<z<0.7である。
【0110】
特に純粋な酸化物からの合成経路では、成分Rの酸化物のすべてがガーネット格子に取り込まれるわけではなく、セラミックマトリックス中の酸化アルミニウム以外の第2の酸化物として(非常に小さい体積分率で)残る可能性がある。Alの体積分率zが高いほど、すべてのRがガーネットに取り込まれない確率が高くなる。Alへのランタノイドの溶解度は、確かに無視できるほどにわずかであるが、痕跡量の成分RがAlなどの第2の相の体積分率に残り、YAGなどの第1の相に取り込まれない可能性がある。はかり入れる酸化物を算出する際に、必要に応じてこのことを考慮しなければならない。例えば、セラミックにおいてガーネット格子での所望の割合yを得るためには、完全に取り込まれると仮定した算出結果よりも若干多めにCeOをはかり入れる必要がある。
【0111】
このようにして製造されたセラミック体をさらに加工することで、例えばSSL部品などの照明設備用部品が得られる。
【0112】
実施形態例1:
292.0gのY、715.0gのAlおよび3.0gのCeOを上述のように混合して焼結させることで、気孔率の異なるセラミック体を得た。Ceが完全に取り込まれると仮定すると、この量比は算出上、[(Y0.993Ce0.007Al120.46[Al0.54の組成に相当する。
【0113】
図3は、このようにして得られたセラミックのマトリックス(ここでは例示的に、測定された気孔率が2%であるサンプル1-4)を示す。
【0114】
表2は、製造した変形例と、それらについて測定した熱伝導率の一覧であり、これを、Alを添加せずに製造した参照体とともに示す。Alの添加により、熱伝導率が約60%増加している。これは、図3にも示されている。
【0115】
【表2】
【0116】
実施形態例2:
716.8gのY、1270.4gのAlおよび12.8gのCeOを上述のように混合して焼結させることで、気孔率の異なるセラミック体を得た。Ceが完全に取り込まれると仮定すると、この量比は算出上、[(Y0.989Ce0.011Al120.65[Al0.35の組成に相当する。
【0117】
図5は、このようにして得られたセラミックのマトリックス(ここでは例示的に、測定された気孔率が7%であるサンプル2.3)を示す。
【0118】
実施形態例3:
482.9gのLu、617.1gのAlおよび3.3gのCeOを上述のように混合して焼結させることで、気孔率の異なるセラミック体を得た。Ceが完全に取り込まれると仮定すると、この量比は算出上、[(Lu0.992Ce0.008Al120.5[Al0.5の組成に相当する。
【0119】
図6および図7は、このようにして得られたセラミックのマトリックス(ここでは例示的に、測定された気孔率が4%であるサンプル3.4)を示す。
【0120】
図8および表3は、製造した変形例と、それらについて測定した散乱係数(「課題設定」の項も参照のこと)の一覧であり、これを、Alを添加せずに製造した参照体とともに示す。Alの添加は、多孔質セラミックにおいて散乱係数に大きな影響を与えない。
【0121】
【表3】
【0122】
実施形態例4:
光変換素子の断面(研磨面)のSEM像を生成した。倍率を2000倍に設定し、105μm×150μmの画像を4枚ずつ生成した。これは、1画像あたり0.01575mmに相当する。
【0123】
画像解析により細孔面積を決定し、そこから細孔分布の評価を行った。このために、各細孔に、円形の細孔面積に対応する直径を割り当てた。
【0124】
図9は、nm単位での細孔直径の分布を示したものである。補足データを以下に表形式で示す:
【表4】
【0125】
このような分布の中央値を考慮すると、プロセス制御および使用される出発粉末の粒径分布に応じて、細孔直径の好ましい中央値は100nm~3000nm、特に好ましくは300nm~1500nm、さらにより好ましくは400nm~1200nmとなる。YAG、LuAGおよびAlの粒径は、同様のオーダーであるが、分布がより広く、時にはわずかに高い中央値を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【外国語明細書】