(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027111
(43)【公開日】2024-02-29
(54)【発明の名称】電気化学的エネルギー貯蔵デバイスのための架橋バインダー含有電極
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20240221BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240221BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240221BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/139
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023132505
(22)【出願日】2023-08-16
(31)【優先権主張番号】63/398,252
(32)【優先日】2022-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517094840
【氏名又は名称】ソーラーエッジ テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドロン バーシュテイン
(72)【発明者】
【氏名】レオラ シャピロ
(72)【発明者】
【氏名】ヤニフ ダマトフ
(72)【発明者】
【氏名】エステル アブチュー
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA12
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA10
5H050CA11
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA11
5H050DA13
5H050EA23
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電極活物質及び架橋バインダーを含む電気化学的エネルギー貯蔵デバイス用の電極、並びに電極を形成する方法を提供する。
【解決手段】架橋バインダーは、モノマー単位から構成される高分子電解質であって、モノマー単位の少なくとも一部が1単位当たり少なくとも1つのカルボキシル基を有する、高分子電解質と、架橋剤であって、高分子電解質が架橋剤によって架橋されている、架橋剤と、を含む。架橋剤は、ポリリン酸塩、及びエチレンジニトリロ四酢酸(EDTA)とナトリウムイオンとの組み合わせから選択される。電極活物質は、架橋バインダーによって一体に保持されている。更に、電極を形成するための方法、架橋バインダーを含む電極スラリー、及び電極をアノード、カソード、又はその両方として用いる電気化学的エネルギー貯蔵デバイスが提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的エネルギー貯蔵デバイス用の電極であって、
電極活物質と、
架橋バインダーと、を含み、
前記架橋バインダーが、モノマー単位から構成される高分子電解質であって、前記モノマー単位の少なくとも一部が1単位当たり少なくとも1つのカルボキシル基を有する、高分子電解質と、ポリリン酸塩であって、前記高分子電解質が前記ポリリン酸塩によって架橋されている、ポリリン酸塩と、を含み、
前記電極活物質が、前記架橋バインダーによって一体に保持されている、電極。
【請求項2】
前記高分子電解質が、ポリ(アクリル酸)(PAA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸塩、キサンタンガム、アラビアゴム、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記ポリリン酸塩が、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1又は2のいずれか一項に記載の電極。
【請求項4】
前記高分子電解質と前記ポリリン酸塩との重量比が、約100:1~約4:1の範囲である、請求項1~3のいずれか一項に記載の電極。
【請求項5】
前記架橋バインダーが、ナトリウムイオン、リチウムイオン、カリウムイオン、イミダゾリウム、アンモニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピラゾリウム、ピペリジニウム、チアゾリウム、1,2,3-トリアゾリウム、1,2,4-トリアゾリウム、オキサゾリウム、イソキノリニウム、キノリニウム、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるカチオンを更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の電極。
【請求項6】
前記高分子電解質が、前記カチオンを介して前記ポリリン酸塩によって静電的に架橋されている、請求項5に記載の電極。
【請求項7】
前記ポリリン酸塩と前記カチオンとのモル比が、約5:1~約1:5の範囲であり、前記高分子電解質の前記少なくとも1つのカルボキシル基と前記ポリリン酸塩とのモル比が、約30:1~約1:1の範囲であり、かつ/又は前記高分子電解質の前記少なくとも1つのカルボキシル基と前記カチオンとのモル比が、約30:1~約1:1の範囲である、請求項5に記載の電極。
【請求項8】
前記架橋バインダーが、カルシウムイオンを含む二価金属カチオンを更に含む、請求項1に記載の電極。
【請求項9】
前記高分子電解質がポリ(アクリル酸)であり、かつ/又は前記電極活物質がグラファイトである、請求項1~7のいずれか一項に記載の電極。
【請求項10】
約50~約99.5重量%の電極活物質と、約0.5~約10重量%の高分子電解質と、約0.05~約10重量%のポリリン酸塩と、約0.2~約25重量%の導電性添加剤とを含む、請求項1に記載の電極。
【請求項11】
ケース、正端子、カソード、セパレータ、電解質、負端子、及びアノードを含む二次リチウム電池であって、前記カソード及び前記アノードのうち少なくとも1つは、請求項1~10のいずれか一項に記載の電極を含む、二次リチウム電池。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の電極を形成する方法であって、前記方法は、前記架橋バインダー及び前記電極活物質を含む混合物を所定の温度に加熱すること、及び/又は前記混合物に圧力を加えることを含む、方法。
【請求項13】
前記混合物が、
a.前記電極活物質及び前記高分子電解質を、前記高分子電解質を溶解又は分散させる1種以上の溶媒と混合することと、
b.前記ポリリン酸塩を前記電極活物質と前記高分子電解質との混合物に添加することと、によって得られる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリリン酸塩が乾燥形態で添加されるか、又は前記ポリリン酸塩が前記ポリリン酸塩を含む溶液として添加される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記混合物が、
前記電極活物質、前記高分子電解質、及び前記ポリリン酸塩を、前記高分子電解質及び前記ポリリン酸塩を溶解又は分散させる1種以上の溶媒と混合すること、又は
前記高分子電解質及び前記ポリリン酸塩を溶解又は分散させる1種以上の溶媒中で前記高分子電解質及び前記ポリリン酸塩を混合し、得られた混合物を前記電極活物質と混合すること、によって得られる、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本開示は、電極活物質及び架橋バインダーを含む電極、並びにその製造方法に関する。
【0002】
二次電池は、再充電可能であり、エネルギーを貯蔵することができ、充電と放電を繰り返すことができる。現在市販されている二次電池としては、例えば、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、亜鉛電池、及びリチウム電池などが挙げられ、リチウム電池は、自己放電率が低く、エネルギー密度が高いという特徴がある。
【0003】
リチウム二次電池(本明細書では「リチウムイオン」電池又は「Liイオン」電池とも呼ばれ、「LIB」と略される)は、2つの集電体の間に配設された2つの電極(カソード及びアノード)と、電極の間に配設され、電極を互いに電気的に分離し、その間にイオン接続性を提供するように構成されているセパレータとから構成される。リチウムイオン二次電池のカソードは、典型的には、活物質としてリチウム系酸化物又はリチウム系リン酸塩を含有するが、アノード活物質は、一般に、炭素系材料及びケイ素系材料のうちの1種以上から選択される。セパレータは、典型的には、解離したリチウム伝導性塩を含有するイオン伝導性電解質によって充填される。リチウムイオンは、充放電中にリチウムイオン電池の電極間を移動し、それぞれの活物質にインターカレートされる。
【0004】
典型的には、リチウム二次電池の電極は、好適な溶媒中に分散されたアノード又はカソード活物質を含む電極スラリーの形態である電極組成物を集電体に塗布し、次いで溶媒を蒸発させ、活物質を乾燥させることによって形成される。
【0005】
電極は、1種以上の不活性物質を更に含有してもよく、これは、とりわけコーティングプロセスを補助し、長期の電池サイクル中の電極完全性を改善し、電極の電気伝導性及び/又はイオン伝導性を向上させ得る。例えば、バインダーは、電極粒子の良好な凝集及び集電体への十分な接着を確実にするために典型的に必要とされる。
【発明の概要】
【0006】
以下は、開示される態様の基本的な理解を提供するための、これらの態様の簡略化された概要を提示する。この概要は、これらの態様の広範な概説ではない。本開示の鍵となる要素若しくは重要な要素を特定すること、又は本開示の範囲を叙述することは、意図されていない。
【0007】
本開示の態様は、電気化学的エネルギー貯蔵デバイスの1つ以上の電極において使用するための架橋バインダーに関する。架橋バインダーは、集電体に対する電極活物質の接着力を向上させ、活物質の粒子間の凝集力を増加させ、電極の物理的及び化学的劣化を減少させ、電極特性、例えば、比容量及びLiイオン伝導性を改善し得る。更なる態様は、電気化学的エネルギー貯蔵デバイス用の電極であって、上記架橋バインダーを含む電極に関する。更なる態様では、架橋バインダーを含む電極スラリー、及び架橋バインダーを含む電極を形成する方法が提供される。更なる態様は、架橋バインダーを含むアノード、又は架橋バインダーを含むカソード、又はその両方を含む、二次リチウム電池に関する。
【0008】
架橋バインダーは高分子電解質及び架橋剤を含み、高分子電解質は架橋剤によって架橋されている。高分子電解質はモノマー単位から構成され、モノマー単位の少なくとも一部は1単位当たり少なくとも1つのカルボキシル基を有する。本発明のいくつかの態様及び実施形態による、架橋バインダーは、高分子電解質及びポリリン酸塩を含み、高分子電解質はポリリン酸塩によって架橋されている。本発明の更なる態様及び実施形態によれば、架橋バインダーは、高分子電解質と、エチレンジニトリロ四酢酸(EDTA)及びナトリウムイオンの組み合わせとを含み、高分子電解質は、EDTA及びナトリウムイオンによって架橋されている。
【0009】
電気化学的エネルギー貯蔵デバイス用の電極は、電極活物質と、架橋バインダーとを含み、電極活物質は架橋バインダーによって一体に保持されている。
【0010】
電気化学的エネルギー貯蔵デバイス用の電極スラリーは、電極活物質と、架橋バインダーと、1種以上の溶媒とを含む。
【0011】
電気化学的エネルギー貯蔵デバイス用の電極を形成する方法は、架橋バインダー及び電極活物質を含む混合物を所定の温度に加熱すること、及び/又は混合物に圧力を加えることを含む。
【0012】
二次リチウム電池は、ケース、正端子、カソード、セパレータ、電解質、負端子及びアノードを含み、カソード及びアノードのうちの少なくとも1つは、電極活物質及び架橋バインダーを含み、電極活物質は、架橋バインダーによって一体に保持されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明及びその利点のより完全な理解は、添付の図面を考慮して以下の説明を参照することによって得ることができ、図中、類似の参照番号は同様の特徴を示している。
【
図1a】ポリ(アクリル酸)(PAA)のフーリエ変換赤外分光法(FTIR)スペクトルを示す。
【
図1b】EDTA二ナトリウム(Na-EDTA)のFTIRスペクトルを示す。
【
図1c】ポリ(アクリル酸)と10重量%のEDTA二ナトリウム(PAA/Na-EDTA 10%)との混合物のFTIRスペクトルを示す。
【
図1d】ポリ(アクリル酸)と30重量%のEDTA二ナトリウム(PAA/Na-EDTA 30%)との混合物のFTIRスペクトルを示す。
【
図1e】ポリ(アクリル酸)と50重量%のEDTA二ナトリウム(PAA/Na-EDTA 50%)との混合物のFTIRスペクトルを示す。
【
図2】PAA、PAA/Na-EDTA 10%、PAA/Na-EDTA 30%、及びPAA/Na-EDTA 50%のFTIRスペクトルを同じグラフ上で示す。
【
図4a】ポリ(アクリル酸)(PAA)のFTIRスペクトルを示す。
【
図4b】ピロリン酸四ナトリウム(ピロリン酸Na)のFTIRスペクトルを示す。
【
図4c】ポリ(アクリル酸)と10重量%のピロリン酸四ナトリウム(PAA/ピロリン酸Na 10%)との混合物、及びポリ(アクリル酸)と30重量%のピロリン酸四ナトリウム(PAA/ピロリン酸Na 30%)との混合物のFTIRスペクトルを示す。
【
図5】ポリ(アクリル酸)及び5重量%のピロリン酸四ナトリウム(PAA/ピロリン酸Na 5%)のFTIRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0015】
電気化学的エネルギー貯蔵デバイスにおいて使用するための電極は、典型的には、電極活物質及びバインダーから構成される。電極は、サイクル又はエージング中に形状、サイズ、及び/又は体積を変化させる電極活物質を含んでもよい。上記変化は、集電体からの電極活物質の脱離及び/又は固体電解質界面(SEI)における亀裂の形成をもたらし得る。好適なバインダーは、粒子膨張及び形状変化を制御し、並びにリチウム化の際に活性粒子を一緒に保ち、したがって電極完全性を維持し、デバイスのサイクル寿命を増加させ得る。バインダーはまた、固体電解質界面(SEI)(電池の最初の充電中にアノード活物質と電解質との反応時にアノード表面上に形成される保護層)の形成にも影響を及ぼし得る。
【0016】
従来、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)がバインダーとして使用されてきた。しかしながら、PVDFは水に溶解せず、したがって、電極調製のために、N-メチルピロリドン(NMP)などであるがこれに限定されない毒性有機溶媒の使用を必要とする。好ましくは水溶性であり、それにより、PVDFによって提供される集電体への電極活物質の接着及び長期電極安定性を損なうことなく、電極調製媒体としての水の使用を可能にする、代替の好適なバインダーを見出すことに向けられた研究が進行中である。ポリ(アクリル酸)(PAA)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)は、例えば、ケイ素系アノードにおいて、PVDFバインダーの代替物として提案されている。
【0017】
バインダーの安定化特性を向上させるために、架橋バインダーが使用され得る。架橋バインダーは、相互接続されたポリマー鎖の三次元ネットワークを有してもよく、それによって、電極活物質粒子を支持するための連続ポリマーマトリックスを提供する。複数の架橋点は、非架橋ポリマー鎖よりも、セルサイクル中に電極活物質粒子によって誘発される変形応力をより容易に緩和し得る。
【0018】
本発明の様々な態様及び実施形態によれば、ポリリン酸塩によって架橋される、PAA又はCMCなどであるがこれらに限定されない高分子電解質は、電極内のリチウムイオン輸送を向上させ得る複数の3Dネットワークを形成するように構成されている。したがって、本発明の原理による架橋バインダーを含む電極は、抵抗を低減し、二次リチウム電池の長期安定性、より高い出力密度、及びより長いサイクル寿命を提供し得る。架橋バインダーは、電極組成物が集電体上に塗布される前、及び/又は、例えば電極スラリーの調製中に、硬化される前であっても、電極組成物の安定性を更に改善し得る。PAA又はCMCはまた、EDTA及びナトリウムイオンによって架橋されてもよく、ナトリウムイオンの添加は、EDTAの架橋効率を向上させ、それによって、電極組成物スラリーの安定性を増加させ、並びにサイクル中の電極構造の完全性を維持し得る。
【0019】
ポリリン酸塩及びEDTAとナトリウムイオンとの組み合わせから選択される架橋剤による高分子電解質の架橋は、架橋剤と高分子電解質のポリマー鎖との間の静電相互作用を作り出すことによって進行し得る。理論又は作用機序に縛られることを望むものではないが、静電相互作用は、電極活物質の構造変化を緩和するのに必要な柔軟性を維持しながら、バインダーの安定化効率を高め得ると考えられる。
【0020】
ポリリン酸塩系及びEDTA系の架橋剤の更なる利点の1つは、非架橋バインダーの使用と比較して、それらの組み込みがいかなる追加のプロセス工程も必要とし得ないことである。理論又は作用機序に縛られることを望むものではないが、上記架橋剤による高分子電解質の架橋は、バインダーを硬化させるように構成されている加熱及び/又は電極組成物をプレスして最終電極構造を得ることを含む一般的な電極調製プロセスが、架橋高分子電解質バインダーを生成するのに十分であるように、熱及び圧力のうちの1つ以上を適用することによって誘導されることが企図される。
【0021】
本発明の原理による架橋バインダーを含む電極スラリー組成物の安定性は、バインダーが熱及び/又は圧力の適用前に架橋されない場合であっても改善され得る。理論又は作用機序に縛られることを望むものではないが、架橋剤と高分子電解質との間の静電相互作用は、電極スラリーの均質性を改善し、その貯蔵寿命を延ばす、スラリー中の実質的に安定なポリマーネットワークの生成を助けると考えられる。更に、架橋剤の添加は、電極スラリーのpHを安定化させる、緩衝剤として働き得る。本発明の架橋バインダーの使用は、非架橋バインダーと比較して、スラリー内でより高い固形分を使用することを更に可能にし得る。
【0022】
電極活物質
本明細書で使用される「電極活物質」という用語は、電気化学的エネルギー貯蔵デバイスにおいて、電子を生成又は受容し得る物質、又は代替的に、酸化又は還元され得る物質、又は代替的に、電荷キャリアとして機能する化学種を可逆的に組み込み及び放出することができる物質を指す。本明細書で使用される「アノード活物質」という用語は、アノードに関連する電極活物質を指し、一方、本明細書で使用される「カソード活性材料」という用語は、カソードに関連する電極活物質を指す。
【0023】
リチウムイオン電池に典型的に使用される電極活物質は、高いリチウム化学ポテンシャルを有し、放電中に電気化学的酸化を受け、電子を外部回路に、リチウムイオンを電解質に放出するアノードにおいて使用するのに適した物質と、低いリチウム化学ポテンシャルを有し、電解質からのリチウムイオンによって電気化学的還元を受け、外部回路から電子を取り込むカソードにおいて使用するのに適した物質とに分けられ得る。アノード材料及びカソード材料の両方は、インターカレーション材料、例えば、層間にリチウムイオンをホストすることができる層状材料であり得る。本明細書で使用される「インターカレーション材料」という用語は、アルカリ金属及び/又はアルカリ金属イオンなどであるがこれらに限定されない1つ以上の化学種を可逆的にインターカレート及びデインターカレートする能力を有する材料を指す。
【0024】
リチウムイオン電池におけるカソードインターカレーション材料は、一般に、LiCoO2などであるがこれに限定されない、高エネルギー密度を提供する岩塩型リチウム遷移金属酸化物、又はLiFePO4などであるがこれに限定されない、高レート能力を有するポリアニオン材料に基づく。遷移金属酸化物インターカレーション材料MO2(Mは酸化物内の1種以上の遷移金属を示す)へのリチウムインターカレーション及びそれからのリチウムデインターカレーションは、式Iによって表され得る。
MO2+xLi++xe-⇔Li(1-x)MO2 式I
式中、xは、インターカレーション/デインターカレーションを受けるMO2中に存在するリチウムの総量に基づく、リチウムの分率である。
【0025】
リチウムイオン電池におけるアノードインターカレーション材料は、一般に、グラファイトなどであるがこれに限定されない炭素系材料、及びケイ素系材料に基づく。グラファイトへのリチウムインターカレーション及びそれからのリチウムデインターカレーションは、式IIによって表され得る。
LiC6⇔C6+xLi++xe- 式II
【0026】
電極活物質は、更にリチウム合金化材料であり得る。本明細書で使用される「リチウム合金化材料」という用語は、リチウムと合金化して合金又は金属間化合物を形成する1種以上の元素を指す。リチウム合金化材料の非限定的な例としては、ケイ素、スズ、鉛、亜鉛、マグネシウム、ナトリウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、合金、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0027】
本発明の電極、電極スラリー、デバイス及び方法で使用するのに適した電極活物質は、グラファイト、非晶質炭素、メソポーラスカーボン、ケイ素、亜酸化ケイ素、二酸化ケイ素、炭素改質ケイ素系材料、スズ、アンチモン、コバルト、酸化コバルト、酸化鉄、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、リン酸リチウム鉄、リン酸リチウム鉄マンガン、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウムコバルトアルミニウム酸化物、硫黄、硫化リチウム、フッ化鉄、フッ化銅、及びそれらの組み合わせから選択され得るが、これらに限定されない。
【0028】
好適なアノード活物質の非限定的な例としては、グラファイト、非晶質炭素、メソポーラス炭素、ケイ素、亜酸化ケイ素、二酸化ケイ素、炭素改質ケイ素系材料、スズ、アンチモン、及びコバルトが挙げられる。好適なカソード活物質の非限定的な例としては、酸化コバルト、酸化鉄、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、リン酸リチウム鉄、リン酸リチウム鉄マンガン、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウムコバルトアルミニウム酸化物、硫黄、硫化リチウム、フッ化鉄、及びフッ化銅が挙げられる。
【0029】
例えば、電極は、電極活物質としてグラファイトを含有するアノードであり得る。グラファイトは、層間にリチウムがインターカレートされ得る平行なグラフェン層中に炭素原子を含有する。完全なリチウム化の際のグラファイトの総体積膨張は重要ではないが、本発明の原理による架橋バインダーの使用は、グラファイト系アノードのサイクル寿命及び性能を向上させるのに役立ち得る。
【0030】
別の例では、電極は、ケイ素、亜酸化ケイ素又はケイ素合金を電極活物質として含有するアノードであり得る。「亜酸化ケイ素」という用語は、本明細書で使用される場合、式SiOxの化合物を指し、式中、0<x<2であり、式SiOxによって表される平均組成を有するように、Si及びSiO2のうちの1つ以上を含み得る化合物の混合物も包含することを意味する。ケイ素は、リチウム化中に大きな体積膨張を受け、それによって、高い比表面積を有する電気的に分離された活物質粒子を生成し得る。このような体積膨張は、電極容量の損失、抵抗の増加、及び電解質分解反応の加速をもたらす。本発明の原理による架橋バインダーの使用は、ケイ素系アノードでの使用に特に有利であり得る。
【0031】
別の例では、電極は、炭素改質ケイ素系材料を含有するアノードであり得る。
【0032】
例えば、電極は、電極活物質としてリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物を含有するカソードであり得る。別の例では、電極は、電極活物質としてリン酸リチウム鉄を含有するカソードであり得る。カソード内の電極活物質は、充放電サイクル中に著しい体積変化を受けないが、本発明の原理による架橋バインダーの使用は、高い動作電圧でのカソードの安定性を改善し得る。
【0033】
電極活物質は、電極の総重量に基づいて約50~約99.5の範囲の重量パーセント(重量%)で電極中に存在し得る。いくつかの実施形態によれば、電極活物質は、電極の総重量に基づいて、約90~99.5、又は約92~約98、又は約94~約97の範囲の重量パーセントで電極中に存在し得る。
【0034】
電極活物質は、一般に、粒状形態で存在する。電極活物質の粒子は、球状、実質的に球状、多面体状、楕円体状、板状、針状、棒状、ワイヤ状、リボン状、又は柱状などであるがこれらに限定されない、当技術分野で公知の任意の形状を有し得る。電極活物質の平均粒径は、例えば、Malvern Panalytical(登録商標)のMastersizer(登録商標)3000などの粒径分析器を使用して、ISO 13320:2020に記載されているように測定されると、約50nm~約500μmなど、数十ナノメートル~数百マイクロメートルの範囲であり得る。
【0035】
高分子電解質
本明細書で使用される「高分子電解質」という用語は、水性媒体中に溶解又は分散されたときに、アニオン性又はカチオン性のいずれかの少なくとも1つの永久電荷を有する水溶性ポリマーを指す。好ましくは、高分子電解質はアニオン性高分子電解質(本明細書では「ポリアニオン」とも呼ばれる)である。高分子電解質は、親水コロイドポリマーを含み得る。本明細書で使用される「親水コロイドポリマー」という用語は、水中に分散されたときに粘性分散液及び/又はゲルを形成することができる親水性ポリマーを指す。「ポリマー」という用語に関連して使用される「親水コロイド」という用語は、上記ポリマーによって形成される分散液のタイプではなく、ポリマーのタイプを指すものであり、したがって、親水コロイドポリマーは、電極スラリー内で親水コロイドとして作用し、粘性分散液又はゲルを形成することを必要とされないことを理解されたい。
【0036】
上記に開示したように、本発明の原理による架橋バインダーの高分子電解質はモノマー単位から構成され、モノマー単位の少なくとも一部は1単位当たり少なくとも1つのカルボキシル基を有する。いくつかの実施形態では、高分子電解質のモノマー単位の少なくとも一部は、1単位当たり少なくとも1つのヒドロキシル基を有する。
【0037】
本明細書で使用される「カルボキシル基」という用語は、-C(=O)O-(アニオン性)基、-C(=O)OH(プロトン化又は酸性)基、並びにカルボキシル塩を包含することを意味する。本明細書で使用される「カルボキシル塩」という用語は、-C(=O)O-M+基を指し、ここで、M+は金属イオンである。M+は、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、バリウム、鉄、アルミニウム、亜鉛、及び第四級アンモニウムから選択され得るが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書で使用される「ヒドロキシル基」という用語は、-C-O-(アニオン性)基、-C-OH(プロトン化)基、並びにヒドロキシル塩を包含することを意味する。本明細書で使用される「ヒドロキシル塩」という用語は、-C-O-M+基を指し、ここで、M+は金属イオンである。M+は、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、バリウム、鉄、アルミニウム、亜鉛、及び第四級アンモニウムから選択され得るが、これらに限定されない。
【0039】
高分子電解質は、1単位当たり少なくとも1つのカルボキシル基を有する少なくとも約10%のモノマー単位を含み得る。高分子電解質は、1単位当たり少なくとも1つのカルボキシル基を有する少なくとも約30%のモノマー単位を含み得る。高分子電解質は、1単位当たり少なくとも1つのカルボキシル基を有する少なくとも約50%のモノマー単位を含み得る。高分子電解質は、1単位当たり少なくとも1つのカルボキシル基を有する少なくとも約70%のモノマー単位を含み得る。高分子電解質は、1単位当たり少なくとも1つのカルボキシル基を有する少なくとも約90%のモノマー単位を含み得る。高分子電解質はモノマー単位から構成され得、各モノマー単位は、1単位当たり少なくとも1つのカルボキシル基を有する。
【0040】
1モノマー単位当たりのカルボキシル基の数もまた様々であり得る。例えば、モノマー単位の少なくとも一部は、1単位当たり少なくとも2つのカルボキシル基、又は1単位当たり少なくとも3つのカルボキシル基を有し得る。
【0041】
いくつかの実施形態によれば、高分子電解質は、第一級、第二級、第三級、又は第四級アミンなどのアミン基を含まない。
【0042】
高分子電解質は、天然又は合成であり得る。天然高分子電解質は、多糖、ポリペプチド、プロテオグリカン、又は糖タンパク質などであるがこれらに限定されない、天然源に由来する親水コロイドポリマーであり得る。好適な多糖類の非限定的な例としては、セルロース(任意選択で置換された、例えば、カルボキシメチルセルロース)、アルギン酸塩(アルギン酸ナトリウム(SA)及びアルギン酸を含む)、キサンタンガム(XG)、及びアラビアゴム(GA)が挙げられる。合成高分子電解質としては、とりわけポリ(アクリル酸)が挙げられ得る。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態によれば、高分子電解質は、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース、及びそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0044】
ポリ(アクリル酸)は、CH2-CHCO2Hモノマーを含有するアクリル酸の誘導体である。ポリ(アクリル酸)の化学構造は、以下の式1に示され、式中、nは2より大きい。本明細書で使用される「ポリ(アクリル酸)」という用語は、ホモポリマー及びコポリマーの両方を包含することを意味し、これは、CH2-CHCO2Hモノマー、並びに部分的又は完全に脱プロトン化された誘導体及びそれらの塩を含む。中性pHの水溶液中では、PAAはアニオン性ポリマーであり、PAAの側鎖の少なくとも一部が脱プロトン化され、それによって負電荷を獲得する。以下の式2は、PAAコポリマーを示し、式中、Aは、CH2-CHCO2Hモノマーではない任意のモノマーを表す。コポリマーは、交互コポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、及びグラフトコポリマーから選択され得る。「ポリ(アクリル酸)」という用語は、1単位当たり少なくとも1つの遊離カルボキシル基を有するPAAのモノマー単位の少なくとも一部が残っている限り、ポリ(アクリル酸)のカルボキシル基と共有結合を形成することができる任意の有機分子又はポリマーによって共有結合的に架橋されたポリ(アクリル酸)ポリマーを更に包含し得る。架橋ポリマーは、例えば、それぞれ式3及び4に示されるように、同一であっても異なっていてもよく、式中、Xは任意のタイプのクロスリンカー部分であり得、Rはカルボキシル基置換基である。本明細書で使用される「遊離カルボキシル基」という用語は、ポリ(アクリル酸)のカルボキシル基と共有結合を形成することができる上記有機分子又はポリマーに結合していないカルボキシル基を指す。
【0045】
【0046】
いくつかの実施形態では、高分子電解質はPAAである。更なる実施形態では、高分子電解質は、PAAホモポリマーである。
【0047】
カルボキシメチルセルロースは、セルロース骨格を構成するグルコピラノースモノマーのヒドロキシル基のいくつかに結合したカルボキシメチル基(-CH2-COOH)を有するセルロース誘導体である。カルボキシメチルセルロースの化学構造は式5に示されており、式中、各Rは独立してH及び-CH2-COOHから選択され、nは2より大きい。本明細書で使用される「カルボキシメチルセルロース」という用語は、ホモポリマー及びコポリマーの両方を包含することを意味し、これらは、式5に示されるモノマー、並びに部分的又は完全に脱プロトン化された誘導体及びそれらの塩を含む。カルボキシメチルセルロースは、セルロース構造の置換度が異なっていてもよい。
【0048】
【0049】
特定の実施形態では、高分子電解質はCMCである。更なる実施形態では、高分子電解質は、CMCホモポリマーである。
【0050】
高分子電解質の分子量は、架橋バインダーの架橋効率に影響を及ぼし得る。本発明の態様及び実施形態での使用に適した高分子電解質は、例えば、ISO 16014-3:2019を使用して測定される場合、約50kDa~約3000kDaの範囲の数平均分子量を有し得る。いくつかの実施形態では、高分子電解質の数平均分子量は、約50kDa~約750kDa、又は約300kDa~約3000kDa、又はより具体的には、約300kDa~約600kDaの範囲である。
【0051】
いくつかの実施形態では、高分子電解質はポリ(アクリル酸)である。いくつかの実施形態では、高分子電解質は、約300kDa~600kDaの範囲の数平均分子量を有するPAAである。特定の実施形態では、高分子電解質は、450kDaの数平均分子量を有するPAAである。
【0052】
いくつかの実施形態では、高分子電解質はカルボキシメチルセルロースである。
【0053】
理論又は作用機序に縛られることを望むものではないが、本発明の原理による電極は、架橋バインダーのより高い凝集及び接着効率並びに架橋バインダーを含有する電極のより高い安定性のために、同じタイプの非架橋高分子電解質と比較して、より少量の高分子電解質を含有し得ることが企図される。
【0054】
高分子電解質は、電極の総重量に基づいて約0.5~約50の範囲の重量パーセントで電極中に存在し得る。いくつかの実施形態によれば、高分子電解質は、電極の総重量に基づいて、約0.5~約10、又はより具体的には、約1~約8の範囲の重量パーセントで電極中に存在し得る。また更なる実施形態では、高分子電解質は、電極の総重量に基づいて、約2~約5の範囲の重量パーセントで電極中に存在する。また更なる実施形態では、高分子電解質は、電極の総重量に基づいて、約10~約25の範囲の重量パーセントで電極中に存在する。
【0055】
架橋バインダー
本発明の原理による架橋バインダーは、架橋剤によって架橋された上述の高分子電解質を含む。
【0056】
本明細書で使用される「架橋された」及び「架橋」という用語は、ポリマー鎖間の架橋剤によって形成される共有結合、静電結合、水素結合、及び/又は動的架橋結合の形成を包含することを意味する。架橋剤は、高分子電解質と電極活物質との間の結合を更に形成又は強化し得、例えば、電極活物質はケイ素系材料を含む。本発明の原理による架橋剤は、例えば、炭素系電極活物質が使用される場合、ポリマーと電極活物質との間の結合を形成又は強化することなく、単にポリマー鎖間の架橋を誘導することによって、上に列挙した利点を提供し得ることが理解されるべきである。
【0057】
本明細書で使用される「架橋バインダー」という用語は、約1%~約100%などの様々な架橋度を有するバインダー、並びにバインダーと架橋剤との組み合わせを包含することを意味し、バインダーは、例えば、熱及び/又は圧力を加える前の電極スラリー中で、架橋が起こる前に架橋剤による架橋を受けるように構成されている。
【0058】
本明細書で使用される「架橋度」という用語は、高分子電解質鎖の総数に基づく、架橋剤によって相互接続されている高分子電解質鎖の百分率を指す。
【0059】
理論又は作用機序に縛られることを望むものではないが、架橋は、高分子電解質の少なくとも1つのカルボキシル基と架橋剤との間の静電相互作用を介して進行し得ると考えられる。例えば、架橋は、上記少なくとも1つのカルボキシル基と架橋剤のカルボキシル基又はオルトホスフェート基との間の静電相互作用を介して進行し得る。上記相互作用は、架橋剤の塩及び/又は追加の塩に由来し得る一価カチオンの助けを借りて形成され得る。代替的に、又は追加的に、架橋は、高分子電解質の少なくとも1つのカルボキシル基と、炭素及び水素以外の架橋剤の任意の原子(窒素及びリンなどであるが、これらに限定されない)との間の静電相互作用を介して進行し得る。
【0060】
架橋剤による高分子電解質の架橋は、とりわけフーリエ変換赤外分光法(FTIR)によって、検出され得る。定量的FTIRスペクトルが、非架橋高分子電解質試料及び架橋高分子電解質試料から記録され得、2つの試料の-OH及び-COOHバンドが比較され得る。非架橋高分子電解質試料と比較して、架橋高分子電解質試料の-OH及び-COOHバンドの任意のピークのシフト及び/又は減少若しくは消失は、架橋剤による高分子電解質の架橋に起因すると考えることができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、ポリ(アクリル酸)を含む架橋バインダーは、3000cm-1付近の-OH伸縮バンドの減少を特徴とする。いくつかの実施形態では、ポリ(アクリル酸)を含む架橋バインダーは、ポリ(アクリル酸)のC(=O)OHピークに対応する1700cm-1付近の-C=O伸縮バンドの減少を特徴とする。いくつかの実施形態では、ポリ(アクリル酸)を含む架橋バインダーは、1600cm-1付近のC(=O)O-ピークの出現を特徴とする。
【0062】
いくつかの実施形態では、ポリ(アクリル酸)を含む架橋バインダーは、
図1c~
図1e及び
図4cのいずれか1つのFTIRスペクトルを特徴とする。
【0063】
ポリリン酸塩架橋剤
本発明の様々な態様及び実施形態によれば、架橋バインダーはポリリン酸塩を含み、ポリリン酸塩は高分子電解質を架橋する架橋剤として機能する。
【0064】
本明細書で使用される「ポリリン酸塩」という用語は、リン酸無水物(P-O-P)結合で連結されたオルトリン酸塩(PO4)の繰り返し単位からなるダイマー及びポリマーを指す。繰り返し単位の数は、2~10の範囲であり得る。「ポリリン酸塩」という用語は、ポリリン酸塩の酸、アニオン、及び塩を包含することを意味することが理解されるべきである。ポリリン酸塩は、とりわけ、ナトリウム塩、カリウム塩又はリチウム塩などであるがこれらに限定されないアルカリ金属塩を含み得る。ポリリン酸塩は、イミダゾリウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、ピロリジニウム塩、ピリダジニウム塩、ピリミジニウム塩、ピラジニウム塩、ピラゾリウム塩、ピペリジニウム塩、チアゾリウム塩、1,2,3-トリアゾリウム塩、1,2,4-トリアゾリウム塩、オキサゾリウム塩、イソキノリニウム塩、又はキノリニウム塩などであるがこれに限定されないイオン液体塩を更に含み得る。
【0065】
塩が本明細書に記載の調製方法で使用される場合、好適な塩の選択は、とりわけ、得られる電極に対する塩対イオンの可能な効果に依存することが理解されるべきである。例えば、塩は、対イオン(例えば、ポリリン酸塩の場合のカチオン)が中性であるか、架橋剤の架橋効率に影響を及ぼさないか、又は電極活物質を被毒しないように選択され得る。
【0066】
本発明の電極、電極スラリー、方法、及びデバイスにおいて有用なポリリン酸塩は、約150g/モル~約700g/モルの範囲の数平均分子量を有し得る。いくつかの実施形態では、ポリリン酸塩は、約150g/モル~約350g/モルの範囲の数平均分子量を有する。
【0067】
好適なポリリン酸塩の非限定的な例としては、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、及びヘキサメタリン酸塩が挙げられる。
【0068】
ピロリン酸塩は、リン酸無水物結合中にオルトリン酸塩の2つの繰り返し単位を含有するリンオキシアニオンである。ピロリン酸塩の化学構造を式6に示す。「ピロリン酸塩」という用語は、ピロリン酸塩の酸、アニオン、及び塩を包含することを意味する。ピロリン酸二ナトリウム(Na2H2P2O7)、ピロリン酸四ナトリウム(Na4P2O7)、ピロリン酸カリウム(K4P2O7)、ピロリン酸アンモニウム(H18N4O8P2)、及びピロリン酸ピリジニウム(C20H24N4O7P2)などであるがこれに限定されない、いくつかのピロリン酸塩が存在する。ピロリン酸塩のアニオン形態はピロリン酸アニオンであり、ピロリン酸塩の酸性形態はピロリン酸を含み得る。
【0069】
【0070】
例えば、電極を形成する方法において使用されるポリリン酸塩は、ピロリン酸塩であり得、電極スラリーへの添加時に溶解される。電極において、上記ピロリン酸塩は、塩カチオンと相互作用するアニオン形態で、又は高分子電解質鎖間に架橋結合を形成することを可能にする任意の誘導体化形態で存在し得る。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ポリリン酸塩はピロリン酸塩である。更なる実施形態によれば、ポリリン酸塩は、ピロリン酸四ナトリウムである。
【0072】
トリポリリン酸塩は、リン酸無水物結合中にオルトリン酸塩の3つの繰り返し単位を含有するリンオキシアニオンである。トリポリリン酸塩の化学構造を式7に示す。「トリポリリン酸塩」という用語は、ピロリン酸塩の酸、アニオン、及び塩を包含することを意味する。例えば、トリポリリン酸塩は、とりわけ、三リン酸ナトリウム(Na5P3O10)、三リン酸五カリウム(K5O10P3)、又は三リン酸アンモニウム(H20N5O10P3)を含み得る。トリポリリン酸塩のアニオン形態はポリリン酸五アニオンであり、ピロリン酸塩の酸性形態は三リン酸を含み得る。
【0073】
【0074】
例えば、電極を形成する方法において使用されるポリリン酸塩は、トリポリリン酸塩であり得、電極スラリーへの添加時に溶解され、そのアニオン形態に変換される。電極において、上記トリポリリン酸塩は、塩カチオンと相互作用するアニオン形態で、又は高分子電解質鎖間に架橋結合を形成することを可能にする任意の誘導体化形態で存在し得る。
【0075】
いくつかの実施形態によれば、ポリリン酸塩はトリポリリン酸塩である。更なる実施形態によれば、ポリリン酸塩は、トリポリリン酸ナトリウムである。
【0076】
架橋剤、例えばポリリン酸塩は、ポリマーを架橋して3Dポリマーネットワークを形成するのに十分な量で電極中に存在し得る。好ましくは、架橋剤は、サイクル中の電極活物質の崩壊を低減又は防止する安定なネットワークの形成を可能にする量で存在する。高分子電解質とポリリン酸塩との重量比は、約100:1~約4:1の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、高分子電解質とポリリン酸塩との重量比は、約80:1~約9:1の範囲である。更なる実施形態では、高分子電解質とポリリン酸塩との重量比は、約50:1~約20:1の範囲である。重量比は、酸性形態又はアニオン形態であるポリリン酸塩、並びにポリリン酸塩の塩を指すことを理解されたい。
【0077】
高分子電解質とピロリン酸塩との重量比は、約100:1~約10:1の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、高分子電解質とピロリン酸塩との重量比は、約100:1~約20:1の範囲である。更なる実施形態では、高分子電解質とピロリン酸塩との重量比は、約100:1~約40:1の範囲である。
【0078】
高分子電解質とトリポリリン酸塩との重量比は、約100:1~約4:1の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、高分子電解質とトリポリリン酸塩との重量比は、約50:1~約4:1の範囲である。更なる実施形態では、高分子電解質とトリポリリン酸塩との重量比は、約20:1~約4:1の範囲である。
【0079】
ポリリン酸塩は、電極の総重量に基づいて、約0.05~約2の範囲の重量パーセントで電極中に存在し得る。いくつかの実施形態では、ポリリン酸塩は、電極の総重量に基づいて、約1~約1.5の範囲の重量パーセントで電極中に存在する。
【0080】
架橋剤としてポリリン酸塩を含むバインダーは、一価金属カチオン又はイオン液体カチオンのうちの少なくとも1つを更に含み得る。理論又は作用機序に縛られることを望むものではないが、上記カチオンは、高分子電解質の架橋効率を高め、電極スラリー及び固体電極の安定性、並びに電気化学的エネルギー貯蔵デバイスの性能を更に改善し得ることが企図される。
【0081】
本明細書で使用される「~価」という用語は、その原子価(最も外側の電子殻)における共有化学結合に利用可能な電子の最大数を指す。例えば、本明細書で使用される「一価」という用語は、その最も外側の電子殻において共有化学結合に利用可能な1つの電子殻を有する原子の状態を指し、いくつかの実施形態で使用される「二価」という用語は、その最も外側の電子殻において共有化学結合に利用可能な2つの電子を有する原子の状態を指す。しかしながら、「一価」という用語は、例えば、必ずしも+2の酸化状態に関連せず、したがって、二価金属カチオンが+1又は+2のいずれかの酸化状態で存在し得ることが理解されるべきである。好適な一価金属カチオンの非限定的な例としては、ナトリウムイオン(Na+)、リチウムイオン(Li+)、カリウムイオン(K+)、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0082】
本明細書で使用される「イオン液体カチオン」という用語は、約150℃以下の温度で液体である有機塩のカチオンを指す。好適なイオン液体カチオンの非限定的な例としては、イミダゾリウム、アンモニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピラゾリウム、ピペリジニウム、チアゾリウム、1,2,3-トリアゾリウム、1,2,4-トリアゾリウム、オキサゾリウム、イソキノリニウム、キノリニウム、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。イオン液体カチオンは、非置換であり得る。代替的に、イオン液体は、アルキル、エステル、アシル、及びアセチルのうちの少なくとも1つによって置換されてもよい。
【0083】
バインダー中に存在するカチオンは、ピロリン酸四ナトリウム又はピロリン酸カリウムなどであるがこれらに限定されない、電極の調製において使用されるポリリン酸塩に由来し得る。追加的に、又は代替的に、上記カチオンは、高分子電解質の塩に更に由来し得る。更に、リン酸塩などであるがこれに限定されない、追加のカチオン源が使用され得る。
【0084】
いくつかの実施形態によれば、高分子電解質は、ポリリン酸塩によって静電的に架橋される。高分子電解質は、カチオンを介してポリリン酸塩によって静電的に架橋され得る。
【0085】
ポリリン酸塩とカチオンとのモル比は、約5:1~約1:5の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、ポリリン酸塩とカチオンとのモル比は、約4:1~約1:4の範囲である。更なる実施形態では、ポリリン酸塩とカチオンとのモル比は、約3:1~約1:3の範囲である。また更なる実施形態では、ポリリン酸塩とカチオンとのモル比は、約2:1~約1:2の範囲である。特定の実施形態では、ポリリン酸塩とカチオンとのモル比は、約1:1である。
【0086】
高分子電解質の少なくとも1つのカルボキシル基とポリリン酸塩とのモル比は、約30:1~約1:1の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、高分子電解質の少なくとも1つのカルボキシル基とポリリン酸塩とのモル比は、約20:1~約10:1の範囲である。
【0087】
高分子電解質の少なくとも1つのカルボキシル基とカチオンとのモル比は、約30:1~約1:1の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、高分子電解質の少なくとも1つのカルボキシル基とカチオンとのモル比は、約20:1~約10:1の範囲である。
【0088】
本明細書に開示されるカチオンの重量百分率及び重量比又はモル比は、電極のバインダーの一部であり、高分子電解質の架橋を助けるカチオンを指すことが理解されるべきである。例えば、上記カチオンがリチウムである場合、それは、対向する電極及び/又は電解質などの追加の供給源に由来し得、したがって、架橋に必要な量よりもはるかに多い量で電極中に存在し得る。そのような場合、カチオンの示された重量百分率及び重量比又はモル比は、架橋のために電極において添加又は利用されるリチウムカチオンの部分のみを指しており、電極中に存在し、異なる機能を有するか、又はバインダー以外の異なる供給源に由来し得るリチウムカチオンの追加量を含まない。
【0089】
バインダーは、二価金属カチオンを更に含み得る。二価金属カチオンの非限定的な例は、カルシウムイオン(Ca2+)である。理論又は作用機序に縛られることを望むものではないが、カルシウムイオンなどの二価金属カチオンの添加は、ポリリン酸塩(任意選択で一価金属カチオンなどのカチオンと組み合わされる)によって形成される架橋ポリマーネットワークをある程度破壊し、上記ネットワークの柔軟性を増加させることが企図される。好ましくは、二価イオンの添加は、架橋バインダーの接着特性及び/又は凝集特性を低下させない。
【0090】
高分子電解質の少なくとも1つのカルボキシル基と二価金属カチオンとのモル比は、約300:1~約10:1の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのカルボキシル基と二価金属カチオンとのモル比は、約200:1~約100:1の範囲である。
【0091】
ポリリン酸塩と二価金属カチオンとのモル比は、約100:1~約5:1の範囲であり得る。
【0092】
架橋バインダーの架橋剤は、電極活性粒子の結合を、上記粒子との静電相互作用を形成することによって更に改善し得る。例えば、ケイ素系電極活物質がアノードにおいて使用される場合、水素結合がSi表面の自然酸化物層とバインダーの極性官能基との間に形成され得る。ポリリン酸塩は、例えば、ポリリン酸塩のヒドロキシル基と電極活物質の表面基との間に、水素結合を形成することによって電極の電極活物質と相互作用し得る。
【0093】
いくつかの実施形態では、電極は、電極活物質としてのグラファイトと、架橋バインダーとしてのピロリン酸塩によって架橋されたPAAとを含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、電極は、電極活物質としてのグラファイトと、架橋バインダーとしてのトリポリリン酸塩によって架橋されたPAAとを含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、電極は、電極活物質としてのグラファイトと、架橋バインダーとしてのピロリン酸塩によって架橋されたCMCとを含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、電極は、電極活物質としてのグラファイトと、架橋バインダーとしてのトリポリリン酸塩によって架橋されたCMCとを含む。
【0097】
EDTA及びナトリウムイオン架橋剤
本発明の様々な態様及び実施形態によれば、架橋バインダーはEDTA及びナトリウムイオンを含み、これらは、高分子電解質を架橋する架橋剤として機能する。
【0098】
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)は、以下の式8に示す化学構造を有するアミノポリカルボン酸である。EDTAは、鉄及び/又はカルシウムイオンを結合するために広く使用される強力なキレート剤である。
【0099】
本明細書で使用されるEDTAという用語は、EDTA分子の酸性形態、並びにそのアニオン形態及びその塩を指す。EDTAのアニオン形態としては、エチレンジアミン四酢酸における4つのカルボキシル基のうちの2つの脱プロトン化によって形成されたテトラカルボン酸アニオンであるエチレンジアミン四酢酸(EDTA(2-))、又はエチレンジアミン四酢酸における4つのカルボキシル基の脱プロトン化によって形成されたテトラカルボン酸アニオンであるエチレンジアミン四酢酸テトラアニオンが挙げられ得る。EDTAの塩としては、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩、エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム塩、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩、エチレンジアミン四酢酸二カリウム塩、エチレンジアミン四酢酸三カリウム塩、エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウム塩、エデト酸ナトリウムカルシウム、及びエチレンジアミン四酢酸二アンモニウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
【0101】
理論又は作用機序に縛られることを望むものではないが、EDTAと組み合わせて電極中に存在するナトリウムイオンは、高分子電解質の少なくとも1つのカルボキシル基とEDTAのカルボキシル基との間の静電相互作用を誘導することによってEDTAの架橋効率を高め、架橋バインダーの特性を改善することが企図される。電極中に存在するナトリウムイオンは、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩、エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム塩、若しくはエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩などであるがこれらに限定されない、EDTAのナトリウム塩、PAAのナトリウム塩などであるがこれに限定されない、高分子電解質のナトリウム塩、及び/又はリン酸ナトリウムなどであるがこれに限定されない、追加のナトリウムイオン源のうちの1つ以上に由来し得ることを理解されたい。ナトリウムイオンは、EDTAよりも低いモル濃度、EDTAと同じモル濃度、又はEDTAよりも高いモル濃度で電極中に存在し得る。しかしながら、架橋バインダーがEDTAに加えてナトリウムイオンを含むことが前提条件である。
【0102】
EDTAとナトリウムイオンとのモル比は、約5:1~約1:5の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、EDTAとナトリウムイオンとのモル比は、約4:1~約1:4の範囲である。更なる実施形態では、EDTAとナトリウムイオンとのモル比は、約3:1~約1:3の範囲である。また更なる実施形態では、EDTAとナトリウムイオンとのモル比は、約2:1~約1:2の範囲である。特定の実施形態では、EDTAとナトリウムイオンとのモル比は、約1:1である。
【0103】
高分子電解質とEDTAとの重量比は、約5:1~約15:1、例えば、約6:1~約13:1、又は約7:1~約11:1の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、高分子電解質とEDTAとの重量比は、約9:1である。
【0104】
高分子電解質とナトリウムイオンとの重量比は、約200:1~約50:1の範囲であり得る。
【0105】
EDTAは、電極の総重量に基づいて、約0.05~約10の範囲の重量パーセントで電極中に存在し得る。いくつかの実施形態では、EDTAは、電極の総重量に基づいて、約0.05~約2、又はより具体的には、約0.1~約1.5の範囲の重量パーセントで電極中に存在し得る。EDTAは、ナトリウム塩(Na-EDTA)などであるがこれに限定されない、塩の形態で電極中に存在し得る。
【0106】
高分子電解質は、静電結合を介してEDTA及びナトリウムイオンによって架橋され得る。いくつかの実施形態では、架橋バインダーは、EDTA及びナトリウムイオンによって静電的に架橋されたPAAを含む。
【0107】
架橋剤としてEDTA及びナトリウムイオンを含む架橋バインダーは、ナトリウムイオン以外の一価金属カチオン及びイオン液体カチオンから選択されるカチオンを更に含み得る。上記カチオンは、EDTAの架橋効率を更に高め得る。一価金属カチオン及びイオン液体カチオンは、ポリリン酸塩架橋剤に関連して本明細書中に上述したように選択され得る。ナトリウムイオンとカチオンとのモル比は、約100:1~約1:5の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、ナトリウムイオンとカチオンとのモル比は、約50:1~約1:1の範囲である。
【0108】
バインダーは、二価金属カチオンを更に含み得る。二価金属カチオンの非限定的な例は、カルシウムイオン(Ca2+)である。理論又は作用機序に縛られることを望むものではないが、カルシウムイオンなどの二価金属カチオンの添加は、EDTA及びナトリウムイオンによって形成される架橋ポリマーネットワークをある程度破壊し、上記ネットワークの柔軟性を増加させることが企図される。
【0109】
ナトリウムイオンと二価金属カチオンとのモル比は、約100:1~約10:1の範囲であり得る。
【0110】
いくつかの実施形態では、電極は、電極活物質としてのグラファイトと、架橋バインダーとしてのEDTA及びナトリウムイオンによって架橋されたPAAとを含む。
【0111】
電極添加剤
架橋バインダーを含有する電極は、電極の性能、及びそのような電極を含有するデバイスの性能を更に改善し得る1種以上の電極添加剤を更に含み得る。電極添加剤の重量百分率又は体積百分率は、電気化学的エネルギー貯蔵デバイスの意図される用途に基づいて選択され得る。例えば、エネルギー最適化セルでは、添加剤はエネルギーを貯蔵しないので、添加剤の相対量は最小化されるべきである。出力最適化セルでは、良好な接触及び伝導性がより重要であり、したがって、添加剤の相対量はより高いものであり得る。一般に、電極添加剤の量は、最大約10重量%又は体積%を構成し得る。架橋バインダーは、電極添加剤の上記量内に含まれることが理解されるべきである。
【0112】
本発明の原理による架橋バインダーの有益な特徴の1つは、電極の唯一のバインダー材料として使用され、必要とされる電極安定性を提供し得ることである。場合によっては、電極は、スチレンブタジエンゴム(SBR)ラテックス、ニトリルブタジエンゴム(NBR)ラテックス、メチルメタクリレートブタジエンゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス、カルボキシ変性スチレンブタジエンゴムラテックス、及び変性ポリオルガノシロキサン系ポリマーラテックスなどであるがこれらに限定されない、1種以上のゴム系ラテックス型バインダーを更に含み得る。
【0113】
リチウムイオン電池において、電極は、好ましくはリチウムイオン及び電子の両方の流れを可能にし、それによって良好なイオン伝導体及び電子伝導体の両方であるべきである。伝導性パーコレーションネットワークを構築するために、導電性添加剤が電極活物質に添加され得る。上記導電性添加剤は、セルのインピーダンス関連電力損失を低減するため、並びにより速い充電及び放電を可能にするために使用され得る。電極の電気的特性は、電極活物質と導電性添加剤との混合比に依存して変化し得る。
【0114】
導電性添加剤は、電子伝導性材料、イオン伝導性材料、又はそれらの組み合わせから選択され得る。
【0115】
電子伝導性材料の非限定的な例としては、炭素、グラファイト、グラフェン、還元酸化グラフェン、フラーレン、カーボンナノチューブ、及び炭素繊維などの炭素質材料;銅、ニッケル、アルミニウム、又は銀などの金属;金属硫化物;金属炭化物;金属ホウ化物;金属酸化物;及びこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、電極は、微粒子(例えば、ナノスケール粒子)の形態である1種以上の電子伝導性材料を含み、これは、パーコレーティングネットワークを形成し、電極の伝導性を向上させ得る。いくつかの実施形態では、電子伝導性材料は炭素を含む。好適な炭素の非限定的な例としては、カーボンブラック、アセチレンブラック及びケッチェンブラックが挙げられる。電子伝導性材料の使用は、ケイ素系材料などであるがこれに限定されない、電極活物質が低い電子伝導性を有する場合に、特に有益であり得る。
【0116】
電極は、イオン伝導性材料、例えば、Liイオン伝導性材料を更に含み得る。イオン伝導性材料の添加は、電極-電解質界面及び電極のバルクにおけるLiイオン輸送に関連したインピーダンス関連損失を低減し得る。イオン伝導性材料は、他の電極成分と混合された粒子の形態で、又は電極活物質表面若しくは電極表面をコーティングするコーティングの形態で存在し得る。好適なLiイオン伝導性材料の非限定的な例としては、リチウムイミド(Li3N)、酸化リチウム(Li2O)、硫酸リチウム(Li2SO4)、フッ化リチウム(LiF)、リン酸リチウム(Li3PO4)、炭酸リチウム(Li2CO3)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO)、酸化ハフニウム(HfO)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0117】
導電性添加剤は、電極の総重量に基づいて、約0.05~約25の範囲の重量パーセントで電極中に存在し得る。いくつかの実施形態では、導電性添加剤は、電極の総重量に基づいて、約0.25~5、又はより具体的には、約0.1~約4の範囲の重量パーセントで電極中に存在し得る。更なる実施形態では、導電性添加剤は、電極の総重量に基づいて、約1~約2の範囲の重量パーセントで電極中に存在する。
【0118】
いくつかの実施形態では、電極は、約50~約99.5又は、より具体的には、約90~約99.5重量%の電極活物質、約0.1~約10又は、より具体的には、約0.05~約2重量%の高分子電解質、約0.05~約10重量%のポリリン酸塩、及び約0.2~約25又は、より具体的には、約0.2~約7重量%の導電性添加剤を含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、電極は、約50~約99.5又は、より具体的には、約90~約99.5重量%の電極活物質、約0.5~約10重量%の高分子電解質、約0.05~約10又は、より具体的には、約0.05~約2重量%のNa-EDTA、及び約0.2~約25又は、より具体的には、約0.2~7重量%の導電性添加剤を含む。
【0120】
本発明の原理による電極は、多孔質電極であり得る。本明細書で使用される「多孔質」という用語は、材料全体にわたって連続的な通路及び経路が提供されるような、相互接続された細孔又は空隙の構造を指す。いくつかの実施形態では、電極の多孔率は、約10%~約70%、約10%~約50%、又は約15%~約20%などであるがこれらに限定されない、約10%~約90%である。
【0121】
電極の細孔は、特に電極が電気化学的エネルギー貯蔵デバイスに組み込まれた後に、好適な電解質で充填され得る。本明細書に開示される重量百分率は、特に明記しない限り、電解質も溶媒も含有しない電極の重量を指す。言い換えれば、上記重量百分率は、電極の乾燥分及び/又は固形分の総重量に基づいた、電極成分の相対重量を指す。
【0122】
電極添加剤は、電極活物質のバインダーへの接着を促進する接着促進剤を更に含み得る。好適な接着促進剤の非限定的な例としては、シラン、チタン酸塩、及びホスホン酸塩が挙げられる。
【0123】
例えば、電極は、約50~約99.5重量%の電極活物質と、約0.5~約10重量%の高分子電解質と、約0.05~約10重量%のポリリン酸塩と、約0.2~約25重量%の導電性添加剤とを含み得る。追加の実施形態では、電極は、約50~約99.5重量%の電極活物質と、約0.5~約10重量%の高分子電解質と、約0.05~約10重量%のNa-EDTAと、約0.2~約25重量%の導電性添加剤とを含む。
【0124】
電極スラリー
電極は、電極スラリーを形成し、上記スラリーを集電体に塗布するか、又は上記電極スラリーから自立電極を形成することによって調製され得る。本発明の様々な態様及び実施形態では、電極スラリーは、電極活物質、バインダー、及び1種以上の溶媒を含み、バインダーは、モノマー単位から構成される高分子電解質(モノマー単位の少なくとも一部は、1単位当たり少なくとも1つのカルボキシル基を有する)と、架橋剤とを含む。電極スラリーの実施形態に関連して使用される「架橋バインダー」という用語は、架橋剤によって架橋されるように構成されている高分子電解質を指し、上記架橋は、例えば、熱及び/又は圧力の適用によって誘導され得ることを理解されたい。
【0125】
架橋剤は、上で詳細に説明したように、ポリリン酸塩、及びエチレンジニトリロ四酢酸(EDTA)とナトリウムイオンとの組み合わせから選択される。
【0126】
電極活物質及び高分子電解質は、上で詳細に説明したように選択され得る。
【0127】
電極活物質は、電極スラリーの総重量に基づいて、約30~約75重量%の範囲の重量パーセントで電極スラリー中に存在し得る。「電極スラリーの総重量」という用語は、固体材料の重量+1種以上の溶媒の重量を指す。いくつかの実施形態では、電極活物質は、約45~約60重量%の範囲の重量パーセントで電極スラリー中に存在する。
【0128】
高分子電解質は、電極スラリーの総重量に基づいて、約0.175~約7.5重量%の範囲の重量パーセントで電極スラリー中に存在し得る。いくつかの実施形態では、高分子電解質は、約1~約5重量%の範囲の重量パーセントで電極スラリー中に存在する。
【0129】
ポリリン酸塩は、電極スラリーの総重量に基づいて、約0.02~約1重量%の範囲の重量パーセントで電極スラリー中に存在し得る。いくつかの実施形態では、ポリリン酸塩は、約0.1~約0.5重量%の範囲の重量パーセントで電極スラリー中に存在する。
【0130】
EDTA又はそのナトリウム塩は、電極スラリーの総重量に基づいて、約0.02~約1重量%の範囲の重量パーセントで電極スラリー中に存在し得る。いくつかの実施形態では、EDTA又はそのナトリウム塩は、約0.1~約0.5重量%の範囲の重量パーセントで電極スラリー中に存在する。
【0131】
いくつかの実施形態では、電極スラリーは、電極活物質としてのグラファイトと、高分子電解質としてのPAAと、架橋剤としてのピロリン酸塩とを含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、電極スラリーは、電極活物質としてのグラファイトと、高分子電解質としてのPAAと、架橋剤としてのトリポリリン酸塩とを含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、電極スラリーは、電極活物質としてのグラファイトと、高分子電解質としてのCMCと、架橋剤としてのピロリン酸塩とを含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、電極スラリーは、電極活物質としてのグラファイトと、高分子電解質としてのCMCと、架橋剤としてのトリポリリン酸塩とを含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、電極スラリーは、電極活物質としてのグラファイトと、架橋バインダーとしてのEDTA及びナトリウムイオンによって架橋されたPAAとを含む。
【0136】
電極スラリーは、1種以上の電極添加剤を更に含み得る。いくつかの実施形態では、電極スラリーは、上で詳細に説明したような導電性添加剤を更に含む。
【0137】
電極スラリーは、電極活物質、バインダー、及び任意選択で導電性添加剤が分散又は溶解される1種以上の溶媒を含む。溶媒は、水、水性溶媒、又は有機溶媒から選択され得る。
【0138】
例えば、電極スラリーは水性であり得る。有機溶媒の代わりに水を使用することは、環境にとって有益であり、より容易な取り扱いを可能にする。しかしながら、水性電極スラリーにおいて典型的に使用される高分子電解質バインダーは、不安定であり得、電極スラリーのレオロジー特性に強く影響を及ぼし得る。本発明の原理による架橋バインダーの使用は、高分子電解質及び水性電極スラリーの安定性を全体として増加させ、その粘度の制御を助け得る。
【0139】
好適な有機溶媒の非限定的な例としては、NMP、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、エチレンカーボネート(EC)、及びエチルメチルカーボネート(EMC)が挙げられる。
【0140】
電極スラリーの粘度は、ASTM規格D4287に従って測定されて、25℃及びせん断速度10秒-1で測定されたとき、約1000~約7500cpの範囲であり得る。
【0141】
電極スラリーは、その形成後少なくとも約1時間安定なままであり得る。電極スラリーに関して本明細書で使用される「安定な」及び「安定性」という用語は、いくつかの実施形態では、スラリーが、固体成分を溶媒内で均一に分散又は溶解された状態に維持する、並びに/又は固体成分の凝集、沈降、及び/若しくは沈殿を防止する能力を指す。
【0142】
電極スラリーの調製は、高分子電解質及び架橋剤を含む架橋バインダーと電極活物質とを混合して、架橋バインダー及び電極活物質を含む混合物を得る工程を含み得る。上記混合物は、例えば、電極活物質、高分子電解質、及び架橋剤を、高分子電解質及び架橋剤を溶解又は分散させる1種以上の溶媒と混合することによって得られ得る。追加的に、又は代替的に、上記混合物は、高分子電解質及び架橋剤を溶解又は分散させる1種以上の溶媒中で高分子電解質及び架橋剤を混合し、得られた混合物を電極活物質と混合して電極スラリーを得ることによって得られ得る。更に、上記混合物は、高分子電解質を溶解又は分散させる溶媒中で電極活物質及び高分子電解質を混合し、得られたスラリーを架橋剤と混合して電極スラリーを得ることによって得られ得る。
【0143】
架橋剤は、乾燥形態で添加され得る。架橋剤は、架橋剤を含む溶液として添加され得る。
【0144】
上記1種以上の溶媒は、水又は水性溶媒(水性緩衝剤などであるがこれに限定されない)であり得る。架橋剤を含む溶液は水溶液であり得る。代替的に、1種以上の溶媒は、上で詳述した有機溶媒を含み得る。
【0145】
電極スラリーの調製に使用するための架橋剤は、ポリリン酸塩及びEDTAとナトリウムイオンとの組み合わせから選択され得る。
【0146】
バインダーは、一価及び/又は二価金属カチオンを更に含み得る。上記一価及び/又は二価金属カチオンは、塩の形態で電極スラリーに添加され得る。いくつかの関連する実施形態では、混合することは、電極活物質、高分子電解質、架橋剤、及び上記塩を1種以上の溶媒と混合することを含む。追加的に、又は代替的に、混合することは、高分子電解質、架橋剤、及び上記塩を1種以上の溶媒中で混合することと、得られた溶液を電極活物質と混合することとを含み得る。更に、混合することは、高分子電解質を溶解又は分散させる溶媒中で電極活物質及び高分子電解質を混合することと、得られたスラリーを架橋剤及び上記塩と混合することとを含み得る。
【0147】
例えば、架橋剤はポリリン酸塩であり得、混合物は、電極活物質、高分子電解質及びポリリン酸塩を含み得る。いくつかの関連する実施形態では、上記混合物は、電極活物質、高分子電解質、及びポリリン酸塩を、高分子電解質を分散させ、ポリリン酸塩を溶解させて電極スラリーを得る1種以上の溶媒と混合することによって得られる。追加の関連する実施形態では、上記混合物は、高分子電解質を分散させ、ポリリン酸塩を溶解させる1種以上の溶媒中で高分子電解質及びポリリン酸塩を混合し、得られた混合物を電極活物質と混合することによって得られる。更なる関連する実施形態では、上記混合物は、高分子電解質を分散させる溶媒中で電極活物質及び高分子電解質を混合し、得られたスラリーをポリリン酸塩と混合することによって得られる。ポリリン酸塩は、乾燥形態又は溶液の形態で添加され得る。
【0148】
電極スラリーを調製するために、ポリリン酸塩のナトリウム塩が使用され得る。ポリリン酸塩は、溶解したナトリウム塩の形態で電極スラリー中に存在し得る。ポリリン酸塩は、上で詳細に説明したように、一価金属カチオン及びイオン液体カチオンから選択されるカチオンを含む塩の形態であり得る。いくつかの実施形態では、ポリリン酸塩は、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、及びそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0149】
高分子電解質及びポリリン酸塩は、約100:1~約4:1の範囲の重量比で混合され得る。
【0150】
混合物は、カルシウムカチオンなどであるがこれに限定されない、二価金属カチオンを更に含み得る。いくつかの実施形態では、混合物はリン酸カルシウムを含む。リン酸カルシウムは、1種以上の溶媒におけるその溶解限度以下の濃度で混合物中に存在し得る。
【0151】
例えば、架橋剤は、ナトリウムカチオンと組み合わされたEDTAであり得、混合物は、電極活物質、高分子電解質、EDTA及びナトリウムイオンを含み得る。いくつかの関連する実施形態では、上記混合物は、電極活物質及び高分子電解質を、高分子電解質を溶解又は分散させる1種以上の溶媒と混合し、EDTAのナトリウム塩(Na-EDTA)を電極活物質及び高分子電解質の混合物に添加することによって得られる。Na-EDTAは、乾燥形態又は溶液の形態で添加され得る。代替的に、混合物は、高分子電解質及びNa-EDTAを溶解又は分散させる1種以上の溶媒中で高分子電解質及びNa-EDTAを混合し、得られた溶液又は混合物を電極活物質と混合することによって得られ得る。いくつかの実施形態では、混合物は、電極活物質、高分子電解質、及びNa-EDTAを、高分子電解質及びNa-EDTAを溶解又は分散させる1種以上の溶媒と混合することによって得られる。高分子電解質及びNa-EDTAは、約5:1~約15:1の範囲の重量比で混合され得る。特定の実施形態では、高分子電解質及びNa-EDTAは、約1:1の重量比で混合される。
【0152】
混合物は、電極活物質及び高分子電解質を、高分子電解質を溶解又は分散させる1種以上の溶媒と混合し、EDTA及びナトリウム塩を電極活物質及び高分子電解質の混合物に添加することによって更に得られ得る。EDTA、ナトリウム塩、又はその両方は、乾燥形態又は1つ以上の溶液の形態で添加され得る。更なる実施形態では、混合物は、高分子電解質、EDTA、及びナトリウム塩を溶解又は分散させる1種以上の溶媒中で高分子電解質、EDTA及びナトリウム塩を混合し、得られた溶液又は混合物を電極活物質と混合することによって得られる。混合物は、電極活物質、高分子電解質、EDTA、及びナトリウム塩を、高分子電解質、EDTA、及びナトリウム塩を溶解又は分散させる1種以上の溶媒と混合することによって更に得られ得る。高分子電解質及びEDTAは、約5:1~約15:1の範囲の重量比で混合され得る。ナトリウム塩及びEDTAは、約5:1~約1:5の範囲のモル比で混合され得る。特定の実施形態では、高分子電解質及びEDTAは約1:1の重量比で混合され、ナトリウム塩及びEDTAは約1:1のモル比で混合される。
【0153】
いくつかの実施形態では、混合物は、電極活物質及び高分子電解質を、高分子電解質を溶解又は分散させる1種以上の溶媒と混合し、Na-EDTA及び追加のナトリウム塩を電極活物質及び高分子電解質の混合物に添加することによって得られる。Na-EDTA、追加のナトリウム塩又はその両方は、乾燥形態又は1つ以上の溶液の形態で添加され得る。混合物は、高分子電解質、Na-EDTA、及び追加のナトリウム塩を溶解又は分散させる1種以上の溶媒中で高分子電解質、Na-EDTA及び追加のナトリウム塩を混合し、得られた溶液又は混合物を電極活物質と混合することによって更に得られ得る。更なる実施形態では、混合物は、電極活物質、高分子電解質、Na-EDTA、及び追加のナトリウム塩を、高分子電解質、Na-EDTA、及び追加のナトリウム塩を溶解又は分散させる1種以上の溶媒と混合することによって得られる。高分子電解質及びNa-EDTAは、約5:1~約15:1の範囲の重量比で混合され得る。Na-EDTA及び追加のナトリウム塩は、約100:1~約2:1の範囲のモル比で混合され得る。
【0154】
ナトリウム塩、追加のナトリウム塩、又はその両方は、アニオンが電極の組成物又は意図される使用を妨げない任意の塩を含み得る。いくつかの実施形態では、ナトリウム塩、追加のナトリウム塩、又はその両方は、リン酸ナトリウムを含む。
【0155】
電極スラリーは、電極スラリーの総重量に基づいて、約30~約75重量%の電極活物質と、約0.175~約7.5重量%の高分子電解質と、約0.02~約1重量%のポリリン酸塩とを含有し得る。電極スラリーは、約0.1~約5重量%の導電性添加剤を更に含み得る。1種以上の溶媒は、水及び/又は水性緩衝剤を含み得る。
【0156】
いくつかの実施形態では、電極スラリーは、電極スラリーの総重量に基づいて、約30~約74.5重量%の電極活物質、約0.175~約7.5重量%の高分子電解質、及び約0.02~約1重量%のNa-EDTAを含む。電極スラリーは、約0.1~約5重量%の導電性添加剤を更に含み得る。1種以上の溶媒は、水及び/又は水性緩衝剤を含み得る。
【0157】
固体成分及び1種以上の溶媒の混合は、任意の好適な混合技術及び/又はデバイス(ミキサー、プラネタリーミキサー、ホバートミキサー、アイリッヒミキサー、脱気装置、ビーズミル、サンドミル、顔料分散機、グラインダー、超音波分散機、及びホモジナイザーなどであるがこれらに限定されない)によって行われ得る。電極活物質は、バインダー及び1種以上の溶媒と混合する前に、導電性添加剤と混合され得る。
【0158】
電極調製
本発明の様々な態様及び実施形態による電気化学的エネルギー貯蔵デバイス用の電極を形成する方法は、電極活物質と、高分子電解質及び架橋剤を含む架橋バインダーとの混合物を所定の温度に加熱すること、並びに/又は上記混合物に圧力を加えることを含む。上記混合物は、1種以上の溶媒を含み得る電極スラリーの形態であり得る。
【0159】
混合は、例えば、固体成分及び1種以上の溶媒を混合することによって、液体媒体中で行われ得る。特定のそのような実施形態では、混合工程は、電極スラリー調製に関連して上記の様々な実施形態において詳述されるように行われ得る。代替的に、混合工程は、乾燥媒体中で、例えば乾燥粉末ミキサー又はボールミルを用いて行われてもよい。
【0160】
理論又は作用機序に縛られることを望むものではないが、架橋剤による高分子電解質の架橋は、加熱し、及び/又はそれに圧力を加えることによって系に伝達されたエネルギーによって少なくとも部分的に誘導されることが企図される。架橋プロセスは、電極活物質、高分子電解質及び架橋剤が一緒にされた後、電極スラリー中で自然に開始し得るが、架橋効率を増加させるために、熱又は圧力の形態でのエネルギーの適用が必要とされる。架橋が加熱によって補助される場合、所定の温度は、好ましくは、高分子電解質のガラス転移温度から特定の温度範囲内であり得る。例えば、所定の温度は、高分子電解質のガラス転移温度から+/-2℃の範囲内であり得る。いくつかの実施形態では、所定の温度は、高分子電解質のガラス転移温度より少なくとも約2℃高い。更なる実施形態では、所定の温度は、高分子電解質のガラス転移温度より少なくとも約5℃高い。また更なる実施形態では、所定の温度は、高分子電解質のガラス転移温度より少なくとも約7℃高い。また更なる実施形態では、所定の温度は、高分子電解質のガラス転移温度より少なくとも約10℃高い。例えば、高分子電解質が、約101℃のガラス転移温度を有するPAAである場合、所定の温度は約110℃であり得る。
【0161】
理論又は作用機序に縛られることを更に望むものではないが、ナトリウムイオンと組み合わされたEDTAを架橋剤として使用することは、EDTA単独の使用と比較して、架橋反応に必要な温度を低下させることを可能にし得ると考えられる。
【0162】
電極を形成する方法は、加熱する工程及び/又は圧力を加える工程の前に、電極スラリーを集電体に塗布する工程か、又は電極スラリーを所望の形状に成形する工程を含み得る。いくつかの実施形態では、電極スラリーは集電体に塗布される。電極スラリーは、当該技術分野において既知の任意の好適なプロセスによって、例えば、ドクターブレードコーティング、スロットダイコーティング、又はリバースロールコーティングによって、集電体に塗布され得る。
【0163】
上述したように、架橋は、加熱前に電極スラリー内で開始し得、上記架橋はスラリーを安定化させ得る。安定化されたスラリーは、次いで集電体に塗布され得、熱が加えられて架橋プロセスを継続し、増進し得る。理論又は作用機序に縛られることを望むものではないが、熱を加える前に電極スラリーを集電体に塗布することは、依然として比較的可撓性である電極スラリー(高分子電解質の架橋密度が増加する前)を集電体に移動させ、次いで、例えば加熱によって、電極構造を固定することを可能にすることが企図される。
【0164】
加熱工程は、電極調製プロセスにおいて通常行われる硬化工程を構成し得る。したがって、本発明の原理による電極を形成する方法は、集電体に塗布された電極スラリーを硬化させる追加の工程を必要としないことがある。代替的に、電極を形成する方法は、電極スラリーを硬化させるように構成された追加の加熱工程を含み得る。追加の加熱工程は、架橋を誘導又は増進するように構成された加熱工程の後に行われてもよい。
【0165】
圧力を加える工程は、電極調製プロセスにおいて通常行われるカレンダー加工(「圧縮成形」とも呼ばれる)工程を構成し得る。リチウムイオン電池電極は、典型的には、集電体及びその上に塗布された電極スラリーを1つ以上の上部及び下部ローラーによってカレンダー加工することによって電極シートとして得られる。したがって、本発明の原理による電極を形成する方法は、集電体に塗布された電極スラリーをカレンダー加工する追加の工程を必要としないことがある。代替的に、電極を形成する方法は、所望の厚さ及び多孔率を得るために電極を圧縮するように、及び集電体への電極活物質の接着を更に改善するように構成された追加のプレス工程を含んでもよい。
【0166】
電極を形成する方法は、得られた混合物(例えば、電極スラリー)への加熱及び加圧の両方を含み得る。例えば、方法は、電極スラリーを集電体に塗布することと、集電体に塗布された電極スラリーに圧力を加えることと、プレス加工を受けた、集電体に塗布された電極スラリーを加熱することとを含み得る。理論又は作用機序に縛られることを望むものではないが、加熱前に集電体に塗布された電極スラリーをプレスすることは、電極の所望の多孔率を確立することを可能にすることが企図される。
【0167】
加熱は、2つの別個の工程で行われ得る。例えば、電極スラリーを集電体に塗布した後に第1の加熱工程が行われ得、圧力を加えた後に第2の加熱工程が行われ得る。好ましくは、第1の加熱工程は、第2の加熱工程よりも低い温度で行われる。第1の加熱工程の温度は、第2の加熱工程よりも少なくとも10℃低く、少なくとも約20℃低く、又は少なくとも約30℃低くてもよい。第1の加熱工程は、電極スラリーを集電体への塗布後に乾燥させるか、又は電極スラリーから1種以上の溶媒を少なくとも部分的に除去するように構成され得る。
【0168】
いくつかの実施形態では、高分子電解質はPAAであり、加熱することは、集電体に塗布された電極スラリーを約60℃~約100℃の範囲の温度で乾燥させることと、約90℃~約130℃の範囲の温度で硬化させることとを含む。
【0169】
二次リチウムイオン電池
本発明の様々な態様及び実施形態による二次リチウム電池は、ケース、正端子、カソード、セパレータ、電解質、負端子、及びアノードを含む。カソード及びアノードのうちの少なくとも1つは、電極活物質及び架橋バインダーを含み、架橋バインダーは、モノマー単位から構成される高分子電解質(モノマー単位の少なくとも一部は、1単位当たり少なくとも1つのカルボキシル基を有する)と、架橋剤とを含み、高分子電解質は架橋剤によって架橋されており、電極活物質は、架橋バインダーによって一体に保持されている。架橋剤は、上で詳細に説明したように、ポリリン酸塩、及びエチレンジニトリロ四酢酸(EDTA)とナトリウムイオンとの組み合わせから選択される。
【0170】
電極活物質及び高分子電解質は、上で詳細に説明したように選択され得る。例えば、アノード活物質は、グラファイト、非晶質炭素、メソポーラスカーボン、ケイ素、スズ、アンチモン、コバルト、及びそれらの任意の組み合わせから選択され得る。カソード活物質は、酸化コバルト、酸化鉄、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、リン酸リチウム鉄、リン酸リチウム鉄マンガン、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウムコバルトアルミニウム酸化物、硫黄、硫化リチウム、フッ化鉄、フッ化銅、及びそれらの任意の組み合わせから選択され得る。
【0171】
二次リチウム電池は、ケース、正端子、カソード、セパレータ、電解質、負端子、及びアノード活物質と架橋バインダーとを含むアノードを含み得る。
【0172】
二次リチウム電池は、ケース、正端子、カソード、セパレータ、電解質、負端子、及びアノードを含み得、上記カソードは、カソード活物質と架橋バインダーとを含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、アノードは、電極活物質としてのグラファイトと、架橋バインダーとしてのピロリン酸塩によって架橋されたPAAとを含む。いくつかの実施形態では、アノードは、電極活物質としてのグラファイトと、架橋バインダーとしてのトリポリリン酸塩によって架橋されたPAAとを含む。いくつかの実施形態では、アノードは、電極活物質としてのグラファイトと、架橋バインダーとしてのピロリン酸塩によって架橋されたCMCとを含む。いくつかの実施形態では、アノードは、電極活物質としてのグラファイトと、架橋バインダーとしてのトリポリリン酸塩によって架橋されたCMCとを含む。いくつかの実施形態では、アノードは、電極活物質としてのグラファイトと、架橋バインダーとしてのEDTA及びナトリウムイオンによって架橋されたPAAとを含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、アノードは、電極活物質としてのケイ素、亜酸化ケイ素又はケイ素合金と、架橋バインダーとしてのピロリン酸塩によって架橋されたPAAとを含む。いくつかの実施形態では、アノードは、電極活物質としてのケイ素、亜酸化ケイ素又はケイ素合金と、架橋バインダーとしてのトリポリリン酸塩によって架橋されたPAAとを含む。いくつかの実施形態では、アノードは、電極活物質としてのケイ素、亜酸化ケイ素又はケイ素合金と、架橋バインダーとしてのピロリン酸塩によって架橋されたCMCとを含む。いくつかの実施形態では、アノードは、電極活物質としてのケイ素、亜酸化ケイ素又はケイ素合金と、架橋バインダーとしてのトリポリリン酸塩によって架橋されたCMCとを含む。いくつかの実施形態では、アノードは、電極活物質としてのケイ素、亜酸化ケイ素又はケイ素合金と、架橋バインダーとしてのEDTA及びナトリウムイオンによって架橋されたPAAとを含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、カソードは、電極活物質としてのリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物と、架橋バインダーとしてのピロリン酸塩によって架橋されたPAAとを含む。いくつかの実施形態では、カソードは、電極活物質としてのリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物と、架橋バインダーとしてのトリポリリン酸塩によって架橋されたPAAとを含む。いくつかの実施形態では、カソードは、電極活物質としてのリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物と、架橋バインダーとしてのピロリン酸塩によって架橋されたCMCとを含む。いくつかの実施形態では、カソードは、電極活物質としてのリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物と、架橋バインダーとしてのトリポリリン酸塩によって架橋されたCMCとを含む。いくつかの実施形態では、カソードは、電極活物質としてのリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物と、架橋バインダーとしてのEDTA及びナトリウムイオンによって架橋されたPAAとを含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、カソードは、電極活物質としてのリン酸リチウム鉄と、架橋バインダーとしてのピロリン酸塩によって架橋されたPAAとを含む。いくつかの実施形態では、カソードは、電極活物質としてのリン酸リチウム鉄と、架橋バインダーとしてのトリポリリン酸塩によって架橋されたPAAとを含む。いくつかの実施形態では、カソードは、電極活物質としてのリン酸リチウム鉄と、架橋バインダーとしてのピロリン酸塩によって架橋されたCMCとを含む。いくつかの実施形態では、カソードは、電極活物質としてのリン酸リチウム鉄と、架橋バインダーとしてのトリポリリン酸塩によって架橋されたCMCとを含む。いくつかの実施形態では、カソードは、電極活物質としてのリン酸リチウム鉄と、架橋バインダーとしてのEDTA及びナトリウムイオンによって架橋されたPAAとを含む。
【0177】
カソード、アノード、又はその両方は、1種以上の電極添加剤を更に含み得る。いくつかの実施形態では、カソード、アノード、又はその両方は、上で詳細に説明したように導電性添加剤を更に含む。
【0178】
アノードは、負端子と電気的に接触している。アノードは、例えば、所望の形状に成形された、独立型構造を有し得る。代替的に、アノードは集電体上に支持されてもよく、これは、本明細書において「アノード集電体」とも呼ばれる。アノード集電体は、負端子に電気的に接続され得る。
【0179】
カソードは、正端子と電気的に接触している。カソードは、例えば、所望の形状に成形された、独立型構造を有し得る。代替的に、カソードは集電体上に支持されてもよく、これは、本明細書において「カソード集電体」とも呼ばれる。カソード集電体は、正端子に電気的に接続され得る。
【0180】
集電体は、当該技術分野において既知の任意の形状を有し得、電気化学的エネルギー貯蔵デバイスの他の構成要素、特に電解質に対して化学的に不活性である任意の導電性材料から作製され得る。好適な集電体材料の非限定的な例としては、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼結炭素、銅、及びアルミニウム-カドミウム合金が挙げられる。好適な集電体形状としては、フィルム、シート、箔、網、多孔質構造、発泡体、及び不織布が挙げられるが、これらに限定されない。
【0181】
リチウムイオン電池では、電解質は、有機溶媒の混合物中のリチウム塩の溶液などであるがこれに限定されない、液体電解質であり得る。好適な液体溶媒の非限定的な例としては、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、ジオキソラン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。リチウム塩は、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiN(SO2CF3)2、及びLiN(SO2CF2CF3)2から選択され得るが、これらに限定されない。
【0182】
代替的に、固体電解質、例えば、固体ポリマー電解質が用いてもよい。固体ポリマー電解質の非限定的な例としては、ポリエチレンオキシド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素含有コポリマー、ポリアクリロニトリル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0183】
本発明の原理による電極が、二次リチウム電池などの電気化学的エネルギー貯蔵デバイスのアノードとして用いられる場合、カソードは、当技術分野で知られているように、二次リチウム電池での使用に適した任意のカソードであり得る。二次リチウム電池での使用に適したカソード活物質及び導電性添加剤は、上に列挙されており、それらは、好適なカソードバインダーと組み合わされ得る。カソードバインダーは、本発明の原理による架橋バインダー、又は有機溶媒(PVDFなどであるがこれに限定されない)若しくは水のいずれかに可溶性である異なるバインダー(PAA又はCMC/SBRなどであるがこれらに限定されない)を含み得る。
【0184】
本発明の原理による電極が、二次リチウム電池などの電気化学的エネルギー貯蔵デバイスのカソードとして用いられる場合、アノードは、当技術分野で知られているように、二次リチウム電池での使用に適した任意のアノードであり得る。二次リチウム電池での使用に適したアノード活物質及び導電性添加剤は、上に列挙されており、それらは、好適なアノードバインダーと組み合わされ得る。アノードバインダーは、本発明の原理による架橋バインダー、又は有機溶媒(PVDFなどであるがこれに限定されない)若しくは水のいずれかに可溶性である異なるバインダー(PAA又はCMC/SBRなどであるがこれらに限定されない)を含み得る。
【0185】
アノード及びカソードは、円筒形状、扁平形状、又はZ折り形状などの任意の好適な形状に更に折り畳まれ得るシート状の形状などであるがこれに限定されない、二次リチウム電池のケースに挿入するのに適した任意の形状を有し得る。ケースの形状は、円筒形状、扁平楕円形状、又は正方形状から選択されて、角柱形、パウチ形、円筒形、又はコイン形のセル構成を提供し得る。ケースは、アルミニウム、ステンレス鋼、又はニッケルめっき鋼などであるがこれらに限定されない、電池の電解質に対して耐食性である任意の材料から作製され得る。
【0186】
二次リチウム電池は、様々な用途において電力供給デバイス及び/又は電力貯蔵デバイスとして用いられ得る。本発明の原理による二次リチウム電池は、所望の電力定格及び/又はエネルギー貯蔵容量を提供するスタックを形成する複数の電池を含み得る。
【0187】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、「a」、「an」、及び「the」の単数形は、内容が明らかに他のことを指示しない限り、複数形の参照を含む。したがって、例えば、「電極添加剤(an electrode additive)」への言及は、複数のそのような電極添加剤及び当業者に知られているその等価物などを含む。用語「及び」又は用語「又は」は、内容が明らかに他のことを指示しない限り、一般に「及び/又は」を含む意味で用いられることに留意されたい。
【0188】
本明細書で使用される「約」という用語は、量、持続時間などの測定可能な値を指す場合、指定された値から+/-10%、より好ましくは+/-5%、更により好ましくは+/-1%、また更により好ましくは+/-0.1%の変動を包含することを意味する。
【0189】
以下の実施例は、本発明のいくつかの実施形態をより完全に例示するために提示される。しかしながら、それらは本発明の広い範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示された原理の多くの変形及び修正を容易に考案することができる。
【実施例0190】
実施例1-架橋バインダーとしてPAA及びNa-EDTAを含む電極スラリーの調製
PAA及びEDTAのナトリウム塩を含む架橋バインダーを含む電極スラリーを以下のように調製した。
【0191】
0.7gのEDTA二ナトリウム塩二水和物(Na-EDTA)を35mLの水に添加し、Na-EDTAが完全に溶解するまで約1時間撹拌した。30gの20重量%PAA分散液(300~500kDa)をNa-EDTA溶液に添加した。PAA-Na-EDTA混合物を、PAAが完全に分散するまで約15時間撹拌した。
【0192】
15mLの蒸留(DI)水をPAA-NaEDTA混合物に添加し、続いて67gのグラファイトを添加した。混合物を約2時間撹拌した。1.5gのカーボンブラックを撹拌下で混合物にゆっくり添加し、撹拌を約5時間続けた。
【0193】
実施例2-架橋バインダーとしてPAA及びNa-EDTAを含む電極の調製
PAA及びEDTAのナトリウム塩を含む架橋バインダーを含む電極スラリーを以下のように調製した。
【0194】
1gのEDTA二ナトリウム塩二水和物(Na-EDTA)を19mLの水に添加し、Na-EDTAが完全に溶解するまで約1時間撹拌した。
【0195】
10.3、9.65及び9.05mL(総量から50%)のDI水、それぞれ2.5、5及び7.5g(バインダー量から5重量%、10重量%及び15重量%)のNa-EDTA溶液並びにそれぞれ23.8、22.5及び21.3gのPAA 10%ストック溶液を600rpmで10分間混合し、続いて0.5gのカーボンブラックを添加し、1200rpmで20分間混合した。47gのグラファイト並びにそれぞれ10.3、9.65及び9.05mL(総量から残り50%)のDI水を撹拌(600rpm)下で混合物にゆっくり添加し、1200rpmで15分間撹拌を継続した。
【0196】
実施例3-架橋バインダーとしてPAA及びNa-EDTAを含む電極の調製
PAA及びEDTAのナトリウム塩を含む架橋バインダーを含む電極を以下のように調製した。電極スラリーを実施例1に記載したように調製した。次いで、約2mLの電極スラリーを、12×25cmの銅箔上に、合計110ミクロンのギャップまで持ち上げた展延バーを使用して展延させた。
【0197】
コーティングされた箔を80℃のオーブンに約14時間入れた。乾燥後、コーティングされた箔を高温(約50℃)のカレンダーに入れ、ロールプレスによって50℃でプレスし、電極は2つの銅箔の間に位置付けた。ロールプレスによるプレスを、所望の厚さが達成されるまで繰り返した。次いで、電極を110℃に予熱したオーブンに入れ、そこで約4時間硬化させた。
【0198】
実施例3-架橋バインダーとしてPAA及びピロリン酸塩を含む電極スラリーの調製
PAA及びピロリン酸塩を含む架橋バインダーを含む電極スラリーを以下のように調製した。
【0199】
0.6gのピロリン酸四ナトリウムを35mLの水に添加し、ピロリン酸四ナトリウムが完全に溶解するまで約1時間撹拌した。30gの20重量%PAA分散液(300~500kDa)をピロリン酸塩溶液に添加した。PAA-ピロリン酸塩混合物を、PAAが完全に分散するまで約15時間撹拌した。
【0200】
15mLのDI水をPAA-ピロリン酸塩混合物に添加し、続いて67gのグラファイトを添加した。混合物を約2時間撹拌した。1.5gのカーボンブラックを撹拌下で混合物にゆっくり添加し、撹拌を約5時間続けた。
【0201】
実施例4-架橋バインダーとしてPAA及びピロリン酸塩を含む電極の調製
PAA及びピロリン酸塩を含む架橋バインダーを含む電極スラリーを以下のように調製した。
【0202】
0.98gのピロリン酸四ナトリウムを19.02mLの水に添加し、ピロリン酸四ナトリウムが完全に溶解するまで約1時間撹拌した。
【0203】
10.25、9.6及び8.95mL(総量から50%)のDI水、それぞれ2.55、5.102及び7.65g(バインダー量から5%、10%及び15%)のNa-TPSS溶液並びにそれぞれ23.8、22.5及び21.3gのPAAストックを600rpmで10分間混合し、続いて0.5gのカーボンブラックを添加し、1200rpmで20分間混合した。47gのグラファイト並びにそれぞれ10.25、9.6及び8.95mL(総量から残り50%)のDI水を撹拌(600rpm)下で混合物にゆっくり添加し、1200rpmで15分間撹拌を継続した。
【0204】
次いで、約2mLの電極スラリーを、12×25cmの銅箔上に、合計100ミクロンのギャップまで持ち上げた展延バーを使用して展延させた。
【0205】
コーティングされた箔を80℃のオーブンに一晩入れた。乾燥後、コーティングされた箔を高温(約50℃)のカレンダーに入れ、ロールプレスによって50℃でプレスし、電極は2つの銅箔の間に位置付けた。ロールプレスによるプレスを、所望の厚さが達成されるまで繰り返した。次いで、電極を110℃に予熱したオーブンに入れ、そこで約4時間硬化させた。コーティングされた箔を直径14mmのコインに切断した。
【0206】
実施例5-架橋バインダーを含むアノードを含むコインセルの調製
アルゴンを充填したグローブボックス内でコインセルを組み立てた。セルは、作用電極(WE)としての架橋バインダーを含むアノード、参照/対電極としてのリチウム箔(厚さ0.25mm、Φ15.6mm)で閉じた。電極間にポリプロピレンセパレータ(Φ19mm)及び電解質溶液100μLを入れた。
【0207】
実施例6-PAA/Na-EDTA架橋バインダーの物理的特性評価
Na-EDTAによるPAAの架橋の形成を検証するために、PAA及び架橋剤を水性媒体中に溶解することによってフーリエ変換赤外(FTIR)分析を行った。PAA及び架橋剤を水性媒体中に溶解することによって、10、30、及び50重量%のNa-EDTAを有するPAA/Na-EDTAサンプルを調製した。
【0208】
元のPAA、Na-EDTA、及び異なる含有量のNa-EDTAを有するPAA/Na-EDTAのFTIRスペクトルを
図1a~
図1eに示す。
図2は、全てのスペクトルを有する単一のグラフを示す。全てのサンプルは、3000cm
-1付近にOH伸縮バンドのピークを示した。PAAへのNa-EDTAの添加は、OHピークの減少をもたらし、最低濃度(10重量%)のNa-EDTAでさえ、OHピークに顕著な効果を与えたことを見ることができる。この結果に基づいて、PAAのプロトン化カルボキシル基の濃度は、ナトリウムイオンを介したEDTAとの相互作用に起因して脱プロトン化されるにつれて減少し、これがNa-EDTAによるPAAの静電架橋をもたらすと仮定することができる。
【0209】
PAAをNa-EDTAと混合した場合のFTIRスペクトルの更なる変化は、1700cm
-1付近のC=O伸縮ピーク付近で見ることができ、C(=O)OHピークは10重量%サンプルで減少し、30重量%サンプルで更に減少し、C(=O)O-ピークが(わずかに高いエネルギーで)現れ始める。C(=O)O-ピークは、50重量%サンプルにおいて更により顕著になり、その振幅はC(=O)OHピークよりも高い。C(=O)OHピークの減少、並びにC(=O)O-ピークの出現及び増加は、PAAがNa-EDTAと混合されるにつれてPAAのカルボキシル基が脱プロトン化され、ナトリウムイオンを介して脱プロトン化された基とEDTAとの間で架橋が起こることを示唆し得る。したがって、本発明の様々な実施形態による、Na-EDTAを含有するPAA系バインダーは、PAAがNa-EDTAによって架橋されている、架橋バインダーであることが理解できる。
図3は、PAAのカルボキシル基が脱プロトン化され、Na-EDTAと自由に相互作用することができる、架橋バインダーの化学構造を示す。
【0210】
実施例7-PAA/ピロリン酸塩架橋バインダーの物理的特性評価
ピロリン酸塩によるPAAの架橋の形成を検証するために、PAA及び架橋剤を水性媒体中に溶解することによってフーリエ変換赤外(FTIR)分析を行った。5、10及び30重量%のピロリン酸四ナトリウム(ピロリン酸Na)を有するPAA/ピロリン酸サンプルを、水性媒体中に溶解することによって調製した。
【0211】
元のPAA、(ピロリン酸Na、及び異なる含有量のピロリン酸Naを有するPAA/(ピロリン酸NaのFTIRスペクトルを
図4a~
図4cに示す。ピロリン酸Naは、3000cm
-1付近にOH伸縮バンドを有さない。PAAへのピロリン酸Naの添加は、PAAのOHピークの減少をもたらし、最低濃度(10重量%)のピロリン酸Naでさえ、OHピークに顕著な効果を与えたことを見ることができる。この結果に基づいて、PAAのプロトン化カルボキシル基の濃度は、ナトリウムイオンを介したピロリン酸塩との相互作用に起因して脱プロトン化されるにつれて減少し、これがピロリン酸NaによるPAAの静電架橋をもたらすと仮定することができる。
【0212】
追加的に、PAAとピロリン酸NaはC(=O)O-ピークを全く持たないが、このピークはPAAとピロリン酸Naを混合した場合に明確に現れることから、PAAとピロリン酸Naを混合することによりPAAのカルボキシル基が脱プロトン化され、脱プロトン化された基とピロリン酸とがナトリウムイオンを介して架橋していることが示唆される。したがって、本発明の様々な実施形態による、ピロリン酸Naを含有するPAA系バインダーは、PAAがピロリン酸Naによって架橋されている、架橋バインダーであることが理解できる。
【0213】
図5は、ポリ(アクリル酸)及び5重量%のピロリン酸四ナトリウム(PAA/ピロリン酸Na 5%)のFTIRスペクトルを示す。ピロリン酸Naは、1700cm
-1付近にプロトン化カルボキシル基(COOH)バンドを有する。COOHピークの相対高さは0.2である。追加的に、アニオン性カルボキシル基(C(=O)O-)バンドが1541cm
-1付近に現れる。C(=O)O-バンドピークの相対高さは0.053である。
【0214】
本明細書で使用するとき、質量負荷という用語は、集電体1cm当たりのアノード材料の重量であり得る。アノード材料は、アノード活物質、バインダー、添加剤など、集電体に取り付けられた全ての(固体)材料を含む。
【0215】
以下の実施例8~11は、片面アノード上の2mg/cm2~15mg/cm2の範囲のアノード質量負荷を有し、これは、両面アノード上のアノード質量負荷の4mg/cm2~30mg/cm2に相当する。特に、10mg/cm2~22mg/cm2の質量負荷の両面アノード質量負荷が使用され得る。実施例8~11における充電及び放電の試験条件は、25℃、0.1C~2Cの充電/放電速度、及び80%DoD~100%DoDの充電/放電である。実施例8及び9の試験セルは、リン酸リチウム鉄(LFP)/グラファイト及びニッケルマンガンコバルト(NMC)/グラファイト電池化学の両方に適用可能であり得る。
【0216】
実施例8-電気化学的特性評価:非架橋PAAバインダーのみを有するアノード電極と、PAA/Na-EDTA架橋バインダーを有するアノード電極との区別
Na-EDTAの有無にかかわらず、同じアノード質量負荷及び同じ総バインダー濃度を有する電極を比較して、架橋剤の包含の効果を評価することができる。アノード配合物の両面質量負荷は18mg/cm2であり、総アノード質量負荷に基づく総バインダー重量百分率は2.0%~5%の重量百分率であった。架橋バインダー配合物は、アノード質量負荷の総重量に対して0.1%~1%の重量百分率のNa-EDTA(全バインダー組成物の2重量%~20重量%)を構成した。
【0217】
Na-EDTA架橋剤を有するPPAを含むアノード配合物を有するLFP/グラファイトセルのサイクル寿命性能は、0.5C及び95%DoDのセルにおいて、非架橋PAAバインダーを含むアノードを有するセルと比較して10~70%増加した。Na-EDTA架橋剤を有するPPAを含むアノード配合物を有するLFP/グラファイトセルのサイクル寿命性能は、0.5C及び95%DoDのセルにおいて、非架橋PAAバインダーを含むアノードを有するセルと比較して少なくとも10%増加した。
【0218】
実施例9-電気化学的特性評価:非架橋PAAバインダーのみを有するアノード電極と、PAA/ピロリン酸塩架橋バインダーを有するアノード電極との区別
上記の実施例8と同様に、ピロリン酸塩の有無にかかわらず、同じアノード質量負荷及びアノード配合物中の同じ総バインダー濃度を有する電極を比較して、架橋剤の包含の効果を評価した。アノードの総質量負荷に基づく総バインダー重量百分率は、2.0%~5%の重量百分率であった。架橋バインダー配合物は、全アノード質量負荷の0.1%~1%の重量百分率のピロリン酸塩(すなわち、全バインダー組成物の2重量%~20重量%)を構成した。アノードの総質量負荷に基づく総バインダー重量百分率は、1%~15%の重量百分率であった。架橋バインダー配合物は、全アノード質量負荷の0.05%~3%の重量百分率のピロリン酸塩(すなわち、全バインダー組成物の2重量%~20重量%)を構成した。
【0219】
ピロリン酸塩架橋剤を有するPPAを含むアノード配合物を有するLFP/グラファイトセルのサイクル寿命性能は、0.5C及び95%DoDのセルにおいて、ピロリン酸塩架橋剤を含まないセルと比較して10%~70%増加した。ピロリン酸塩架橋剤を有するPPAを含むアノード配合物を有するLFP/グラファイトセルのサイクル寿命性能は、0.5C及び95%DoDのセルにおいて、非架橋PAAバインダーを含むアノードを有するセルと比較して少なくとも10%増加した。
【0220】
実施例10-接着特性評価:非架橋PAAバインダーのみを有するアノード電極と、PAA/Na-EDTA架橋バインダーを有するアノード電極との区別
実施例8において上述した改善されたサイクル寿命性能がアノード活物質と集電体との間の接着の程度に依存するかどうかを評価するために、非架橋PPAバインダーのみを含むアノード配合物を用いて、及び実施例8のアノードの基礎となるPPA/Na-EDTA架橋バインダーを含むアノード配合物を用いて、接着試験を行った。アノード質量負荷の集電体への接着を、ASTM D3330の下でYeonjin(登録商標)S-Tech CorporationによるTXA(商標)-Micro-precisionデバイスを使用して試験し、引張力が8gf/cm以上であると測定された。
【0221】
実施例11-接着特性評価:非架橋PAAバインダーを有するアノード電極と、PAA/ピロリン酸塩架橋バインダーを有するアノード電極との区別
上記の実施例10と同様に、非架橋PPAバインダーのみを含むアノード配合物を用いて、及び実施例9のアノードの基礎となるPPA/ピロリン酸塩架橋バインダーを含むアノード配合物を用いて、接着試験を行った。アノード質量負荷の集電体への接着を、ASTM D3330の下でYeonjin(登録商標)S-Tech CorporationによるTXA(商標)-Micro-precisionデバイスを使用して試験し、引張力が8gf/cm以上であると測定された。
【0222】
試験例の結果は、アノード配合物が非架橋PPAを含む場合に達成される剥離強度と比較して、PPAバインダー中にNa-EDTA架橋剤を含めること、又はPPAバインダー中にピロリン酸塩架橋剤を含めることが、剥離強度の有意な増加をもたらすことを示す。したがって、PPAバインダー中にNa-EDTA架橋剤又はピロリン酸塩架橋剤を使用することは、アノード質量負荷中に著しくより少ないバインダー材料を使用することを可能にし得る。
【0223】
二次リチウム電池の電気的性能は、アノード活物質層と集電体との間の接着に依存し得る。本明細書に開示されるバインダーの架橋は、アノード活物質層と集電体との間の強度(剥離強度など)及び接着の一貫した増加をもたらし得、それによって電極完全性を維持し、電気化学的エネルギー貯蔵デバイスのサイクル寿命を増加させ得る。
【0224】
本発明を具体的に説明してきたが、当業者であれば、多くの変形及び修正が可能であることを理解するであろう。したがって、本発明は、具体的に説明された実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、本発明の範囲及び概念は、以下の特許請求の範囲を参照することによってより容易に理解されるであろう。
【0225】
条項
条項1.電気化学的エネルギー貯蔵デバイス用の電極であって、
電極活物質と、
架橋バインダーと、を含み、
架橋バインダーが、モノマー単位から構成される高分子電解質であって、モノマー単位の少なくとも一部が1単位当たり少なくとも1つのカルボキシル基を有する、高分子電解質と、ポリリン酸塩であって、高分子電解質がポリリン酸塩によって架橋されている、ポリリン酸塩と、を含み、
電極活物質が、架橋バインダーによって一体に保持されている、電極。
条項2.高分子電解質が、ポリ(アクリル酸)(PAA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸塩、キサンタンガム、アラビアゴム、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、条項1に記載の電極。
条項3.高分子電解質とポリリン酸塩との重量比が、約100:1~約4:1の範囲である、条項1又は2に記載の電極。
条項4.ポリリン酸塩が、約150g/モル~約700g/モルの範囲の数平均分子量を有する、条項1~3のいずれか一項に記載の電極。
条項5.ポリリン酸塩が、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、条項1~4のいずれか一項に記載の電極。
条項6.ポリリン酸塩がトリポリリン酸塩である、条項5に記載の電極。
条項7.ポリリン酸塩がピロリン酸塩である、条項5に記載の電極。
条項8.ポリリン酸塩が、電極の総重量に基づいて、約0.05~約2の範囲の重量パーセントで電極中に存在する、条項1~7のいずれか一項に記載の電極。
条項9.架橋バインダーが、一価金属カチオン及びイオン液体カチオンから選択されるカチオンを更に含む、条項1~8のいずれか一項に記載の電極。
条項10.一価金属カチオンが、ナトリウムイオン(Na+)、リチウムイオン(Li+)、カリウムイオン(K+)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、条項9に記載の電極。
条項11.イオン液体カチオンが、イミダゾリウム、アンモニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピラゾリウム、ピペリジニウム、チアゾリウム、1,2,3-トリアゾリウム、1,2,4-トリアゾリウム、オキサゾリウム、イソキノリニウム、キノリニウム、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、条項9に記載の電極。
条項12.イオン液体カチオンが、アルキル、エステル、アシル、及びアセチルのうちの少なくとも1つによって置換される、条項11に記載の電極。
条項13.高分子電解質がポリリン酸塩によって静電的に架橋される、条項1~12のいずれか一項に記載の電極。
条項14.高分子電解質が、カチオンを介してポリリン酸塩によって静電的に架橋される、条項9~13のいずれか一項に記載の電極。
条項15.ポリリン酸塩とカチオンとのモル比が、約5:1~約1:5の範囲である、条項9~14のいずれか一項に記載の電極。
条項16.高分子電解質の少なくとも1つのカルボキシル基とポリリン酸塩とのモル比が、約30:1~約1:1の範囲である、条項1~15のいずれか一項に記載の電極。
条項17.高分子電解質の少なくとも1つのカルボキシル基とカチオンとのモル比が、約30:1~約1:1の範囲である、条項1~16のいずれか一項に記載の電極。
条項18.高分子電解質がポリ(アクリル酸)である、条項1~17のいずれか一項に記載の電極。
条項19.高分子電解質がカルボキシメチルセルロースである、条項1~17のいずれか一項に記載の電極。
条項20.高分子電解質が、約50kDa~約3000kDaの範囲の数平均分子量を有する、条項1~19のいずれか一項に記載の電極。
条項21.高分子電解質の数平均分子量が、約300kDa~約3000kDaの範囲である、条項20に記載の電極。
条項22.カチオンがナトリウムである、条項9~21のいずれか一項に記載の電極。
条項23.高分子電解質とカチオンとの重量比が、約400:1~約15:1の範囲である、条項9~22のいずれか一項に記載の電極。
条項24.高分子電解質が、電極の総重量に基づいて、約0.5~約50の範囲の重量パーセントで電極中に存在する、条項1~23のいずれか一項に記載の電極。
条項25.架橋バインダーが二価金属カチオンを更に含む、条項1~24のいずれか一項に記載の電極。
条項26.二価金属カチオンがカルシウムイオン(Ca2+)を含む、条項25に記載の電極。
条項27.高分子電解質の少なくとも1つのカルボキシル基と二価金属カチオンとのモル比が、約300:1~約10:1の範囲である、条項25又は26に記載の電極。
条項28.電極活物質が、リチウムインターカレーション材料及びリチウム合金化材料から選択される、項1~27のいずれか一項に記載の電極。
条項29.電極活物質が、グラファイト、非晶質炭素、メソポーラスカーボン、ケイ素、亜酸化ケイ素、二酸化ケイ素、炭素改質ケイ素系材料、スズ、アンチモン、コバルト、酸化コバルト、酸化鉄、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、リン酸リチウム鉄、リン酸リチウム鉄マンガン、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウムコバルトアルミニウム酸化物、硫黄、硫化リチウム、フッ化鉄、フッ化銅、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、条項1~27のいずれか一項に記載の電極。
条項30.電極活物質がグラファイトである、条項29に記載の電極。
条項31.電極活物質が、電極の総重量に基づいて、約50~約99.5の範囲の重量パーセントで電極中に存在する、条項1~30のいずれか一項に記載の電極。
条項32.導電性添加剤を更に含む、条項1~31のいずれか一項に記載の電極。
条項33.導電性添加剤が、電子伝導性材料、イオン伝導性材料、及びそれらの組み合わせから選択される、条項32に記載の電極。
条項34.電子伝導性材料が、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、還元酸化グラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレン、炭素繊維、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、条項33に記載の電極。
条項35.イオン伝導性材料が、リチウムイミド(Li3N)、酸化リチウム(Li2O)、硫酸リチウム(Li2SO4)、フッ化リチウム(LiF)、リン酸リチウム(Li3PO4)、炭酸リチウム(Li2CO3)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO)、酸化ハフニウム(HfO)及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるLiイオン伝導性材料である、条項33に記載の電極。
条項36.導電性添加剤が、電極の総重量に基づいて、約0.25~約25の範囲の重量パーセントで電極中に存在する、条項32~35のいずれか一項に記載の電極。
条項37.約50~約99.5重量%の電極活物質と、約0.5~約10重量%の高分子電解質と、約0.05~約10重量%のポリリン酸塩と、約0.2~約25重量%の導電性添加剤とを含む、条項32~36のいずれか一項に記載の電極。
条項38.二次リチウム電池であって、
ケース、正端子、カソード、セパレータ、電解質、負端子、及びアノードを含み、カソード及びアノードのうちの少なくとも1つは、電極活物質及び架橋バインダーを含み、架橋バインダーは、モノマー単位から構成される高分子電解質(モノマー単位の少なくとも一部は、1単位当たり少なくとも1つのカルボキシル基を有する)と、ポリリン酸塩とを含み、高分子電解質はポリリン酸塩によって架橋されており、電極活物質は架橋バインダーによって一体に保持されている、二次リチウム電池。
条項39.高分子電解質が、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、キサンタンガム、アラビアゴム、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、条項38に記載の二次リチウム電池。
条項40.ポリリン酸塩が、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、条項38又は39に記載の二次リチウム電池。
条項41.電極活物質が、グラファイト、非晶質炭素、メソポーラスカーボン、ケイ素、亜酸化ケイ素、二酸化ケイ素、炭素改質ケイ素系材料、スズ、アンチモン、コバルト、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるアノード活物質であるか、又は酸化コバルト、酸化鉄、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、リン酸リチウム鉄、リン酸リチウム鉄マンガン、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウムコバルトアルミニウム酸化物、硫黄、硫化リチウム、フッ化鉄、フッ化銅、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるカソード活物質である、条項38~40のいずれか一項に記載の二次リチウム電池。
条項42.条項1~37のいずれか一項に記載の電極を形成する方法であって、方法は、架橋バインダー及び電極活物質を含む混合物を所定の温度に加熱すること、及び/又は混合物に圧力を加えることを含む、方法。
条項43.混合物が、
電極活物質及び高分子電解質を、高分子電解質を溶解又は分散させる1種以上の溶媒と混合することと、
ポリリン酸塩を電極活物質と高分子電解質との混合物に添加することと、によって得られる、条項42に記載の方法。
条項44.ポリリン酸塩が乾燥形態で添加される、条項43に記載の方法。
条項45.ポリリン酸塩が、ポリリン酸塩を含む溶液として添加される、条項43に記載の方法。
条項46.混合物が、電極活物質、高分子電解質、及びポリリン酸塩を、高分子電解質及びポリリン酸塩を溶解又は分散させる1種以上の溶媒と混合することによって得られる、条項42に記載の方法。
条項47.混合物が、
高分子電解質及びポリリン酸塩を、高分子電解質及びポリリン酸塩を溶解又は分散させる1種以上の溶媒中で混合することと、
得られた混合物を電極活物質と混合することと、によって得られる、条項42に記載の方法。
条項48.混合物が導電性材料を更に含む、条項42~47のいずれか一項に記載の方法。
条項49.混合物が、
導電性材料及び高分子電解質を、高分子電解質を溶解又は分散させる1種以上の溶媒と混合することと、
電極活物質を導電性材料と高分子電解質との混合物に添加することと、
ポリリン酸塩を導電性材料、高分子電解質、及び電極活物質の混合物に添加することと、によって得られる、条項48に記載の方法。
条項50.ポリリン酸塩が、一価金属カチオン及びイオン液体カチオンから選択されるカチオンを含む塩の形態である、条項42~49のいずれか一項に記載の方法。
条項51.ポリリン酸塩が、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、条項50に記載の方法。
条項52.混合物がリン酸カルシウムを更に含む、条項42~51のいずれか一項に記載の方法。
条項53.加熱すること及び/又は圧力を加えることの前に、混合物を集電体に塗布することを含む、条項42~52のいずれか一項に記載の方法。
条項54.圧力を加えることが、加熱することの前に行われる、条項42~53のいずれか一項に記載の方法。
条項55.加熱することが、混合物を高分子電解質のガラス転移温度よりも少なくとも約10℃低い温度で乾燥させることと、混合物を高分子電解質のガラス転移温度よりも少なくとも約2℃高い温度で硬化させることと、を含む、条項42~53のいずれか一項に記載の方法。
条項56.圧力を加えることが、乾燥させることの後かつ硬化させることの前に行われる、条項55に記載の方法。
条項57.高分子電解質がポリ(アクリル酸)であり、加熱することが、得られた混合物を約60℃~約100℃の範囲の温度で乾燥させることと、約90℃~約130℃の範囲の温度で硬化させることと、を含む、条項42~56のいずれか一項に記載の方法。
条項58.電極スラリー組成物であって、
電極活物質と、
架橋バインダーであって、架橋バインダーが、モノマー単位から構成される高分子電解質であって、モノマー単位の少なくとも一部が1単位当たり少なくとも1つのカルボキシル基を有する、高分子電解質と、ポリリン酸塩と、を含む、架橋バインダーと、
1種以上の溶媒と、を含む、電極スラリー組成物。
条項59.高分子電解質が、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、キサンタンガム、アラビアゴム、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、条項58に記載の電極スラリー組成物。
条項60.ポリリン酸塩が、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、条項58又は59に記載の電極スラリー組成物。
条項61.電極活物質が、グラファイト、非晶質炭素、メソポーラスカーボン、ケイ素、亜酸化ケイ素、二酸化ケイ素、炭素改質ケイ素系材料、スズ、アンチモン、コバルト、酸化コバルト、酸化鉄、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、リン酸リチウム鉄、リン酸リチウム鉄マンガン、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウムコバルトアルミニウム酸化物、硫黄、硫化リチウム、フッ化鉄、フッ化銅、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、条項58~60のいずれか一項に記載の電極スラリー組成物。
条項62.1種以上の溶媒が水又は水性緩衝剤を含む、条項58~61のいずれか一項に記載の電極スラリー組成物。
条項63.電極活物質及び架橋バインダーを含む約35~約75重量%の固体と、約25~約65重量%の水又は水性緩衝剤とを含む、条項58~62のいずれか一項に記載の電極スラリー組成物。
条項64.一価金属カチオン及びイオン液体カチオンから選択されるカチオンを更に含む、条項58~63のいずれか一項に記載の電極スラリー組成物。
条項65.一価金属カチオンが、ナトリウムイオン(Na+)、リチウムイオン(Li+)、カリウムイオン(K+)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、条項64に記載の電極スラリー組成物。
条項66.イオン液体カチオンが、イミダゾリウム、アンモニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピラゾリウム、ピペリジニウム、チアゾリウム、1,2,3-トリアゾリウム、1,2,4-トリアゾリウム、オキサゾリウム、イソキノリニウム、キノリニウム、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、任意選択で、イオン液体カチオンが、アルキル、エステル、アシル、及びアセチルのうちの少なくとも1つによって置換される、条項64に記載の電極スラリー組成物。
条項67.ポリリン酸塩が、上記カチオンを含む溶解塩の形態で存在する、条項63~66のいずれか一項に記載の電極スラリー組成物。
条項68.二価金属カチオンを更に含む、条項58~67のいずれか一項に記載の電極スラリー組成物。
条項69.二価金属カチオンがカルシウムイオンを含む、条項68に記載の電極スラリー組成物。
条項70.導電性添加剤を更に含む、条項58~69のいずれか一項に記載の電極スラリー組成物。
条項71.約30~約75重量%の電極活物質と、約0.175~約7.5重量%の高分子電解質と、約0.02~約1重量%のポリリン酸塩と、約0.1~5重量%の導電性添加剤とを含む、条項70に記載の電極スラリー組成物。
条項72.電気化学的エネルギー貯蔵デバイス用の電極であって、
電極活物質と、
架橋バインダーと、を含み、
架橋バインダーは、モノマー単位から構成される高分子電解質であって、モノマー単位の少なくとも一部が1単位当たり少なくとも1つのカルボキシル基を有する、高分子電解質と、エチレンジニトリロ四酢酸(EDTA)と、ナトリウムイオン(Na+)とを含み、高分子電解質は、EDTA及びナトリウムイオンによって架橋されており、電極活物質は、架橋バインダーによって一体に保持されている、電極。
条項73.高分子電解質が、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、キサンタンガム、アラビアゴム、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、条項72に記載の電極。
条項74.EDTAとナトリウムイオンとのモル比が、約5:1~約1:5の範囲である、条項72又は73に記載の電極。
条項75.EDTAとナトリウムイオンとのモル比が1未満である、条項74に記載の電極。
条項76.高分子電解質とEDTAとの重量比が、約5:1~約15:1の範囲である、条項72~75のいずれか一項に記載の電極。
条項77.高分子電解質とEDTAとの重量比が約9:1である、条項76に記載の電極。
条項78.高分子電解質とナトリウムイオンとの重量比が、約200:1~約50:1の範囲である、条項72~77のいずれか一項に記載の電極。
条項79.EDTAが、電極の総重量に基づいて、約0.05~約10%の範囲の重量パーセントで電極中に存在する、条項72~78のいずれか一項に記載の電極。
条項80.高分子電解質がポリ(アクリル酸)である、条項72~79のいずれか一項に記載の電極。
条項81.高分子電解質がカルボキシメチルセルロースである、条項72~79のいずれか一項に記載の電極。
条項82.高分子電解質が、約50kDa~約3000kDaの範囲の数平均分子量を有する、条項72~81のいずれか一項に記載の電極。
条項83a.高分子電解質の数平均分子量が、約300kDa~約600kDaの範囲である、条項82に記載の電極。
条項83b.高分子電解質の数平均分子量が、約300kDa~約3000kDaの範囲である、条項82に記載の電極。
条項84.高分子電解質が、電極の総重量に基づいて、約0.5~約50の範囲の重量パーセントで電極中に存在する、条項72~83のいずれか一項に記載の電極。
条項85.高分子電解質が、ナトリウムイオンを介してEDTAによって静電的に架橋される、条項72~84のいずれか一項に記載の電極。
条項86.架橋バインダーが、ナトリウムイオン以外の一価金属カチオン及びイオン液体カチオンから選択されるカチオンを更に含む、条項72~85のいずれか一項に記載の電極。
条項87.一価金属カチオンが、リチウムイオン(Li+)、カリウムイオン(K+)、及びこれらの組み合わせから選択される、条項86に記載の電極。
条項88.イオン液体カチオンが、イミダゾリウム、アンモニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピラゾリウム、ピペリジニウム、チアゾリウム、1,2,3-トリアゾリウム、1,2,4-トリアゾリウム、オキサゾリウム、イソキノリニウム、キノリニウム、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、条項86に記載の電極。
条項89.イオン液体カチオンが、アルキル、エステル、アシル、及びアセチルのうちの少なくとも1つによって置換される、条項88に記載の電極。
条項90.ナトリウムイオンとカチオンとのモル比が、約100:1~約1:5の範囲である、条項72~89のいずれか一項に記載の電極。
条項91.架橋バインダーが二価金属カチオンを更に含む、条項72~90のいずれか一項に記載の電極。
条項92.二価金属カチオンがカルシウムイオン(Ca2+)を含む、条項72に記載の電極。
条項93.ナトリウムイオンと二価金属カチオンとのモル比が、約100:1~約10:1の範囲である、条項91又は92に記載の電極。
条項94.架橋バインダーがリン酸アニオンを更に含む、条項72~93のいずれか一項に記載の電極。
条項95.電極活物質が、リチウムインターカレーション材料及びリチウム合金化材料から選択される、項72~94のいずれか一項に記載の電極。
条項96.電極活物質が、グラファイト、非晶質炭素、メソポーラスカーボン、ケイ素、亜酸化ケイ素、二酸化ケイ素、炭素改質ケイ素系材料、スズ、アンチモン、コバルト、酸化コバルト、酸化鉄、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、リン酸リチウム鉄、リン酸リチウム鉄マンガン、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウムコバルトアルミニウム酸化物、硫黄、硫化リチウム、フッ化鉄、フッ化銅、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、条項72~95のいずれか一項に記載の電極。
条項97.電極活物質がグラファイトである、条項96に記載の電極。
条項98.電極活物質が、電極の総重量のうちの約50~約99.5の範囲の重量パーセントで電極中に存在する、条項72~97のいずれか一項に記載の電極。
条項99.導電性添加剤を更に含む、条項72~98のいずれか一項に記載の電極。
条項100.導電性添加剤が、電子伝導性材料、イオン伝導性材料、及びそれらの組み合わせから選択される、条項99に記載の電極。
条項101.電子伝導性材料が、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、還元酸化グラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレン、炭素繊維、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、条項100に記載の電極。
条項102.イオン伝導性材料が、リチウムイミド(Li3N)、酸化リチウム(Li2O)、硫酸リチウム(Li2SO4)、フッ化リチウム(LiF)、リン酸リチウム(Li3PO4)、炭酸リチウム(Li2CO3)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO)、酸化ハフニウム(HfO)及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるLiイオン伝導性材料である、条項100に記載の電極。
条項103.導電性添加剤が、電極の総重量に基づいて、約0.05~約25の範囲の重量パーセントで電極中に存在する、条項99~102のいずれか一項に記載の電極。
条項104.約50~約99.5重量%の電極活物質と、約0.5~約50重量%の高分子電解質と、約0.05~約10重量%のNa-EDTAと、約0.2~約25重量%の導電性添加剤とを含む、条項99~103のいずれか一項に記載の電極。
条項105.二次リチウム電池であって、
ケース、正端子、カソード、セパレータ、電解質、負端子、及びアノードを含み、カソード及びアノードのうちの少なくとも1つは、電極活物質及び架橋バインダーを含み、架橋バインダーは、モノマー単位から構成される高分子電解質(モノマー単位の少なくとも一部は、1単位当たり少なくとも1つのカルボキシル基を有する)と、EDTAと、ナトリウムイオンとを含み、高分子電解質はEDTA及びナトリウムイオンによって架橋されており、電極活物質は架橋バインダーによって一体に保持されている、二次リチウム電池。
条項106.高分子電解質が、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、キサンタンガム、アラビアゴム、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、条項105に記載の二次リチウム電池。
条項107.電極活物質が、グラファイト、非晶質炭素、メソポーラスカーボン、ケイ素、亜酸化ケイ素、二酸化ケイ素、炭素改質ケイ素系材料、スズ、アンチモン、コバルト、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるアノード活物質であるか、又は酸化コバルト、酸化鉄、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、リン酸リチウム鉄、リン酸リチウム鉄マンガン、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウムコバルトアルミニウム酸化物、硫黄、硫化リチウム、フッ化鉄、フッ化銅、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるカソード活物質である、条項105又は106に記載の二次リチウム電池。
条項108.条項1~107のいずれか一項に記載の電極を形成する方法であって、方法は、架橋バインダー及び電極活物質を含む混合物を所定の温度に加熱すること、及び/又は混合物に圧力を加えることを含む、方法。
条項109.混合物が、
電極活物質及び高分子電解質を、高分子電解質を溶解又は分散させる1種以上の溶媒と混合することと、
EDTAのナトリウム塩(Na-EDTA)を電極活物質と高分子電解質との混合物に添加することと、によって得られる、条項108に記載の方法。
条項110.Na-EDTAが乾燥形態で添加される、条項109に記載の方法。
条項111.Na-EDTAが溶液の形態で添加される、条項109に記載の方法。
条項112.混合物が、
高分子電解質及びNa-EDTAを、高分子電解質及びNa-EDTAを溶解又は分散させる1種以上の溶媒中で混合することと、
得られた混合物を電極活物質と混合することと、によって得られる、条項108に記載の方法。
条項113.混合物が、電極活物質、高分子電解質、及びNa-EDTAを、高分子電解質及びNa-EDTAを溶解又は分散させる1種以上の溶媒と混合することによって得られる、条項108に記載の方法。
条項114.高分子電解質及びNa-EDTAが、約5:1~約15:1の範囲の重量比で混合される、条項109~113のいずれか一項に記載の方法。
条項115.混合物が、
電極活物質及び高分子電解質を、高分子電解質を溶解又は分散させる1種以上の溶媒と混合することと、
EDTA及びナトリウム塩を電極活物質と高分子電解質との混合物に添加することと、によって得られる、条項108に記載の方法。
条項116.EDTA、ナトリウム塩、又はその両方が乾燥形態で添加される、条項115に記載の方法。
条項117.EDTA、ナトリウム塩、又はその両方が溶解形態で添加される、条項115に記載の方法。
条項118.混合物が、
高分子電解質、EDTA及びナトリウム塩を、高分子電解質、EDTA、及びナトリウム塩を溶解又は分散させる1種以上の溶媒中で混合することと、
得られた混合物を電極活物質と混合することと、によって得られる、条項108に記載の方法。
条項119.混合物が、電極活物質、高分子電解質、EDTA、及びナトリウム塩を、高分子電解質、EDTA、及びナトリウム塩を溶解又は分散させる1種以上の溶媒と混合することによって得られる、条項108に記載の方法。
条項120.高分子電解質及びEDTAが、約5:1~約15:1の範囲の重量比で混合される、条項115~119のいずれか一項に記載の方法。
条項121.ナトリウム塩及びEDTAが、約5:1~約1:5の範囲のモル比で混合される、条項115~119のいずれか一項に記載の方法。
条項122.混合物が、
電極活物質及び高分子電解質を、高分子電解質を溶解又は分散させる1種以上の溶媒と混合することと、
Na-EDTA及び追加のナトリウム塩を電極活物質と高分子電解質との混合物に添加することと、によって得られる、条項108に記載の方法。
条項123.Na-EDTA、追加のナトリウム塩、又はその両方が乾燥形態で添加される、条項122に記載の方法。
条項124.Na-EDTA、追加のナトリウム塩、又はその両方が溶解形態で添加される、条項122に記載の方法。
条項125.混合物が、
高分子電解質、Na-EDTA、及び追加のナトリウム塩を、Na-EDTA及び追加のナトリウム塩を溶解させる1種以上の溶媒中で混合することと、
得られた混合物を電極活物質と混合することと、によって得られる、条項108に記載の方法。
条項126.混合物が、電極活物質、高分子電解質、Na-EDTA、及び追加のナトリウム塩を、Na-EDTA、及び追加のナトリウム塩を溶解させる1種以上の溶媒と混合することによって得られる、条項108に記載の方法。
条項127.高分子電解質及びNa-EDTAが、約5:1~約15:1の範囲の重量比で混合される、条項122~126のいずれか一項に記載の方法。
条項128.Na-EDTA及び追加のナトリウム塩が、約100:1~約2:1の範囲のモル比で混合される、条項122~127のいずれか一項に記載の方法。
条項129.ナトリウム塩、追加のナトリウム塩、又はその両方がリン酸ナトリウムを含む、条項115~128のいずれか一項に記載の方法。
条項130.混合物が導電性材料を更に含む、条項115~129のいずれか一項に記載の方法。
条項131.混合物が、
導電性材料及び高分子電解質を、高分子電解質を分散させる1種以上の溶媒と混合することと、
電極活物質を導電性材料と高分子電解質との混合物に添加することと、
Na-EDTA、及び任意選択で、追加のナトリウム塩を導電性材料、高分子電解質、及び電極活物質の混合物に添加することと、によって得られる、条項121に記載の方法。
条項132.加熱すること及び/又は圧力を加えることの前に、混合物を集電体に塗布することを含む、条項108~131のいずれか一項に記載の方法。
条項133.圧力を加えることが、加熱することの前に行われる、条項108~132のいずれか一項に記載の方法。
条項134.加熱することが、高分子電解質のガラス転移温度よりも少なくとも約10℃低い温度で乾燥させることと、高分子電解質のガラス転移温度よりも少なくとも約2℃高い温度で硬化させることと、を含む、条項108~132のいずれか一項に記載の方法。
条項135.圧力を加えることが、乾燥させることの後かつ硬化させることの前に行われる、条項134に記載の方法。
条項136.高分子電解質がポリ(アクリル酸)であり、加熱することが、得られた混合物を約60℃~約100℃の範囲の温度で乾燥させることと、約90℃~約130℃の範囲の温度で硬化させることと、を含む、条項108~135のいずれか一項に記載の方法。
条項137.電極スラリー組成物であって、
電極活物質と、
架橋バインダーであって、架橋バインダーが、モノマー単位から構成される高分子電解質であって、モノマー単位の少なくとも一部が1単位当たり少なくとも1つのカルボキシル基を有する、高分子電解質と、EDTAと、ナトリウムイオンと、を含む、架橋バインダーと、
1種以上の溶媒と、を含む、電極スラリー組成物。
条項138.高分子電解質が、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、キサンタンガム、アラビアゴム、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、条項137に記載の電極スラリー組成物。
条項139.高分子電解質がポリ(アクリル酸)である、条項138に記載の電極スラリー組成物。
条項140.電極活物質が、グラファイト、非晶質炭素、メソポーラスカーボン、ケイ素、亜酸化ケイ素、二酸化ケイ素、炭素改質ケイ素系材料、スズ、アンチモン、コバルト、酸化コバルト、酸化鉄、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、リン酸リチウム鉄、リン酸リチウム鉄マンガン、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウムコバルトアルミニウム酸化物、硫黄、硫化リチウム、フッ化鉄、フッ化銅、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、条項137~139のいずれか一項に記載の電極スラリー組成物。
条項141.1種以上の溶媒が水又は水性緩衝剤を含む、条項137~140のいずれか一項に記載の電極スラリー組成物。
条項142.電極活物質及び架橋バインダーを含む約35~約75重量%の固体と、約25~約65重量%の水又は緩衝剤とを含む、条項137~141のいずれか一項に記載の電極スラリー組成物。
条項143.EDTAとナトリウムイオンとのモル比が1未満である、条項137~142のいずれか一項に記載の電極スラリー組成物。
条項144.EDTAが溶解ナトリウム塩の形態で存在する、条項137~143のいずれか一項に記載の電極スラリー組成物。
条項145.リン酸ナトリウムを含む追加のナトリウム塩を更に含む、条項137~144のいずれか一項に記載の電極スラリー組成物。
条項146.二価金属カチオンを更に含む、条項137~145のいずれか一項に記載の電極スラリー組成物。
条項147.二価金属カチオンがカルシウムイオンを含む、条項146に記載の電極スラリー組成物。
条項148.導電性添加剤を更に含む、条項137~147のいずれか一項に記載の電極スラリー組成物。
条項149.約30~約75重量%の電極活物質と、約0.175~約7.5重量%の高分子電解質と、約0.02~約1重量%のNa-EDTAと、約0.1~5重量%の導電性添加剤とを含む、条項148に記載の電極スラリー組成物。