(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027153
(43)【公開日】2024-02-29
(54)【発明の名称】地盤調査位置改ざん抑止システム
(51)【国際特許分類】
E02D 1/00 20060101AFI20240221BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
E02D1/00
G01C15/00 102C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023220788
(22)【出願日】2023-12-27
(62)【分割の表示】P 2021212597の分割
【原出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】508121728
【氏名又は名称】ジオサイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002103
【氏名又は名称】弁理士法人にじいろ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成田 芳文
(57)【要約】
【課題】地盤調査機による地盤調査が調査予定位置とは異なる位置で意図的に行われてしまう可能性を低減することにある。
【解決手段】地盤調査位置改ざん抑止システム1は、地盤調査機2の調査機本体3のロッド上に着脱自在に構成された第1GPSアンテナ62と、第1GPSアンテナで受信したGPS信号に基づいて第1GPS位置を計算する第1位置計算部67と、地盤調査機2の制御装置4の筐体に装備される第2GPSアンテナ52と、第2GPSアンテナで受信したGPS信号に基づいて第2GPS位置を計算する第2位置計算部57とを具備する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッドを地面に貫入して地盤を調査する調査機本体と前記調査機本体を制御する制御装置とからなる地盤調査機に適用して、地盤調査位置の改ざんを抑止する地盤調査位置改ざん抑止システムにおいて、
前記ロッド上に着脱自在に構成された第1GPSアンテナと、
前記第1GPSアンテナで受信したGPS信号に基づいて第1GPS位置を計算する第1位置計算部と、
前記地盤調査機の制御ボックスに装備される第2GPSアンテナと、
前記第2GPSアンテナで受信したGPS信号に基づいて第2GPS位置を計算する第2位置計算部と
を具備する地盤調査位置改ざん抑止システム。
【請求項2】
前記第1GPS位置と前記第2GPS位置とのデータを、外部のサーバ装置に送信する送信部をさらに備える、請求項1記載の地盤調査位置改ざん抑止システム。
【請求項3】
前記第1GPS位置の地盤調査の予定位置に対する位置ズレ量を計算する位置ズレ量計算部と、
前記第1GPS位置と前記第2GPS位置との間の装置間距離を計算する装置間距離計算部とをさらに備える、請求項1記載の地盤調査位置改ざん抑止システム。
【請求項4】
前記位置ズレ量と前記装置間距離とに基づいて、前記調査機本体による地盤調査の開始条件が成立したか否かを判定する判定部と、
前記判定の結果を前記制御装置に送信する送信部とをさらに備え、
前記制御装置は、前記判定の結果が肯定的であるとき、前記調査機本体による地盤調査の開始を許可する、請求項3記載の地盤調査位置改ざん抑止システム。
【請求項5】
前記地盤調査の開始条件は、前記位置ズレ量が第1閾値以下であり、且つ、前記装置間距離が第2閾値以下であるとき成立する、請求項4記載の地盤調査位置改ざん抑止システム。
【請求項6】
前記第2閾値は、前記調査機本体と前記制御装置とを接続するケーブルの長さ以下に設定される、請求項5記載の地盤調査位置改ざん抑止システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は地盤調査位置改ざん抑止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地盤調査は、例えばスウェーデン式サウンディング試験機などの地盤調査機を用いて原位置における地盤の貫入抵抗を測定し、その硬軟または締まり具合、さらに土層の構成を測定し、地耐力を推定するものである。この地盤調査の結果に応じて、建物の基礎が選定される。例えば、軟弱な地盤であると判断された場合には、セメント系固化剤をスラリー状態にし、対象となる地盤に注入しながら機械混合攪拌することによって、地盤土を柱状固化して地盤強化を図る地盤改良工事が行なわれている。将来にわたって安全・安心な建物を建築するためには何よりも地盤調査結果に対する信頼性が重要であり、地盤調査データの改ざんは当然にして排除されるべきである。
【0003】
地盤調査データの改ざんの種類は様々ある。地盤調査機で発生された地盤調査データを都合の良いように加工してしまうことは、地盤調査データの改ざんの代表的な例である。しかしながら、それだけではなく、そもそも予定されていた位置で調査が行われていない場合もある。これは、地盤調査の際に、測定予定位置又はその付近に木材、足場などの重量物があって、簡単にはどけられないような場合や、地盤調査を早く終わらせたい場合などに発生し得る。特に、測定予定位置から大きく離れた位置で行われた地盤調査結果を、その地盤調査結果とした場合、その地盤調査結果に基づいて地盤改良工事を行ったとしても、地盤改良が不十分となってしまい、建物の安全を担保できない可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
目的は、地盤調査位置の改ざんを抑止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係る地盤調査位置改ざん抑止システムは、ロッドを地面に貫入して地盤を調査する調査機本体と前記調査機本体を制御する制御装置とからなる地盤調査機に適用して、地盤調査位置の改ざんを抑止するために、ロッド上に着脱自在に構成された第1GPSアンテナと、第1GPSアンテナで受信したGPS信号に基づいて第1GPS位置を計算する第1位置計算部と、地盤調査機の制御ボックスに装備される第2GPSアンテナと、第2GPSアンテナで受信したGPS信号に基づいて第2GPS位置を計算する第2位置計算部とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る地盤調査位置改ざん抑止システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の制御装置及び中継装置の機能構成図である。
【
図5】
図5は、
図4の情報処理端末による地盤調査の開始条件の判定処理を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図2の中継装置によるフラグ更新処理を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図2の制御装置による調査機本体の制御開始の手順を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、本実施形態に係る地盤調査位置改ざん抑止システムを使用して、地盤調査が測定予定位置で実施される場合における各装置の位置関係を示す図である。
【
図9】
図9は、本実施形態に係る地盤調査位置改ざん抑止システムを使用して、地盤調査が測定予定位置から許容範囲内で実施される場合における各装置の位置関係を示す図である。
【
図10】
図10は、本実施形態に係る地盤調査位置改ざん抑止システムを使用して、地盤調査位置を改ざんしようとした場合における各装置の位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、本実施形態に係る地盤調査位置改ざん抑止システムを説明する。本実施形態の1つの特徴は、地盤調査機の調査機本体のGPS位置(第1GPS位置)と地盤調査機の制御装置のGPS位置(第2GPS位置)とを取得することにある。調査機本体により地盤調査が実施されたときの調査機本体のGPS位置と制御装置のGPS位置とが記録されるため、調査者による地盤調査位置の改ざんを抑止することができる。また、調査機本体のGPS位置と制御装置のGPS位置とに基づいて、調査機本体が地盤調査の予定位置に設置されているかを判定することができるため、調査者が誤った位置に調査機本体を設置してしまう、意図しない地盤調査位置の改ざんを防止することができる。さらに、判定結果に基づいて、調査機本体による地盤調査の開始の可否を制御することができる。調査機本体が地盤調査の予定位置及びその近傍位置に設置されていない状態では、そもそも調査機本体による地盤調査を開始することができないため、地盤調査位置の改ざんを防止することができる。
【0008】
本実施形態に係る地盤調査位置改ざん抑止システムは、以下の様に構成される。
図1に示すように、地盤調査位置改ざん抑止システム1は、地盤調査機2と、情報処理端末7と、地盤調査機2と情報処理端末7との間を中継する中継装置5と、を有する。地盤調査機2は、調査機本体3と制御装置4とからなり、これらは直接ケーブルで接続されている。制御装置4の筐体の内部には中継装置5が収容されている。中継装置5は、制御装置4のシリアルポートに直接ケーブルで接続され、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信規格の下、情報処理端末7に接続可能である。情報処理端末7は、インターネット10を経由して、サーバ装置8に接続可能である。地盤調査機2により発生された地盤調査データは、中継装置5を介して情報処理端末7に送信され、情報処理端末7において地盤調査IDが付され、サーバ装置8に送信される。サーバ装置8は、地盤調査IDに基づいて地盤調査データを一元的に管理する。サーバ装置8は、地盤調査会社等のクライアント端末9からの要求に呼応して、地盤調査データをクライアント端末に提供する。
【0009】
本実施形態では、地盤調査位置の改ざんを抑止するために、調査機本体3の位置情報と、調査機本体3に対して直接ケーブルで接続された制御装置4の位置情報とを収集する。地盤調査位置改ざん抑止システム1は、調査機本体3の位置情報を収集するために、調査機本体3のロッドに対して着脱自在な位置情報取得装置6を備える。位置情報取得装置6は、GPS衛星から送信されたGPS信号を受信するGPSアンテナを備える。また、制御装置4の位置情報を収集するために、制御装置4に内蔵される中継装置5はGPSアンテナを備える。位置情報取得装置6に設けられるGPSアンテナを第1GPSアンテナ、中継装置5に設けられるGPSアンテナを第2GPSアンテナとしてそれぞれを区別する。
【0010】
地盤調査機2は、地盤調査地の複数の測定位置における土の硬軟、締まり具合、土質及び土層構造を調査するために貫入抵抗を測定する例えばスウェーデン式サウンディング自動貫入試験機本体(調査機本体3)と、調査機本体3を制御する制御装置4とから構成される。
【0011】
調査機本体3は、ロッド、ロッドを地面に対して垂直に支持するスタンド、ロッドに50kg、75kg、100kg等の荷重をかけるための重り、ロッドを軸回転駆動する回転機構、貫入深度を検出するセンサ等からなる。ロッドが貫入するために必要な荷重WSW、半回転数Naが貫入抵抗として深度とともに測定される。
【0012】
制御装置4は、プロセッサ、RAM、ROM,記憶装置41及び開始スイッチ49等のハードウェアを備える。記憶装置41には、地盤調査プログラムが記憶されている。
図2に示すように、プロセッサにより地盤調査プログラムが実行されることで、制御装置4は、制御部40、データ通信部46、地盤調査データ発生部47、及び調査機本体制御部48として機能する。
【0013】
制御部40は、制御装置4を構成する各要素を統括して制御する。地盤調査データ発生部47は、調査機本体3に備えられたセンサ出力等に基づいて、深度と貫入抵抗との対応関係を表す地盤調査データを発生する。地盤調査データ発生部47により発生された地盤調査データは、制御部40により記憶装置41に記憶される。データ通信部46は、制御部40の制御のもと、中継装置5との間で各種情報の送受信を行う。具体的には、データ通信部46の処理により、制御装置4は、地盤調査データを所定のタイミングで中継装置5に送信する。開始スイッチ49が押下されたのを契機に、データ通信部46の処理により、制御装置4は、地盤調査の開始確認を中継装置5に送信し、これに呼応して中継装置5から送信された開始可能であることを示す開始許可信号又は開始不可であることを示す開始不許可信号を受信する。調査機本体制御部48は、開始スイッチ49が押下され、中継装置5から開始可能であることを示す開始許可信号を受信したことに従って、調査機本体3の制御を開始する。調査機本体制御部48は、開始スイッチ49が押下されても中継装置5から開始不可であることを示す開始不許可信号を受信したとき、調査機本体3の制御を開始しない。つまり、地盤調査は開始されない。
【0014】
中継装置5は、各種ハードウェアが実装された基板であり、制御装置4のシリアルポートに直接ケーブルで接続されている。中継装置5は、プロセッサ、RAM、ROM、記憶装置51、情報処理端末7と接続するための近距離無線通信用のモジュール、GPSモジュール等のハードウェアを備える。GPSモジュールはGPS衛星から送信されたGPS信号を受信する第2GPSアンテナ52を備える。記憶装置51には、地盤調査位置改ざん抑止システムの中継装置用のプログラムが記憶されている。プロセッサにより、中継装置用のプログラムが実行されることで、
図2に示すように、中継装置5は、制御部50、テーブル管理部53、GPS位置計算部57、近距離無線通信部58、及びデータ通信部56として機能する。
【0015】
制御部50は、中継装置5を構成する各要素を統括して制御する。
記憶装置51は、中継装置5の位置情報、地盤調査データ、開始フラグ管理テーブルを記憶する。
【0016】
GPS位置計算部57は、制御部50の制御のもと、GPSアンテナ52により受信されたGPS信号に基づいて、GPSアンテナ52の位置(第2GPS位置)を随時計算する。GPSアンテナ52の位置は、中継装置5の位置及び中継装置5が内蔵された制御装置4の位置に対応する。
【0017】
近距離無線通信部58は、制御部50の制御のもと、近距離無線通信規格を利用して情報処理端末7との間で各種情報の送受信を行う。具体的には、近距離無線通信部58の処理により、中継装置5は、地盤調査データ、中継装置5の位置情報等を情報処理端末7に送信する。近距離無線通信部58の処理により、中継装置5は、情報処理端末7から地盤調査機2による地盤調査の開始の可否の判定結果を受信する。
【0018】
テーブル管理部53は、情報処理端末7から受信した判定結果に基づいて、開始フラグ管理テーブルを随時更新する。テーブル管理部53は、判定結果が肯定的であるとき、開始フラグ管理テーブルで管理されている“開始許可/開始不可フラグ”項目を、“開始許可”に対応する数値“1”に更新し、判定結果が否定的であるとき、“開始許可/開始不可フラグ”項目を、“開始不可”に対応する数値“0”に更新する。“開始許可/開始不可フラグ”項目は初期状態では数値“0”に設定されている。
【0019】
データ通信部56は、制御部50の制御のもと、制御装置4との間で各種情報の送受信を行う。具体的には、データ通信部56の処理により、中継装置5は、制御装置4から地盤調査データ、地盤調査の開始確認を受信する。データ通信部56の処理により、中継装置5は、制御装置4から地盤調査の開始確認を受信した時点で開始フラグ管理テーブルで管理されている“開始許可/開始不可フラグ”項目が数値“1”であるとき、開始可能であることを示す開始許可信号を制御装置4に送信し、“開始許可/開始不可フラグ”項目が数値“0”またはブランクであるとき、開始不可であることを示す開始不許可信号を制御装置4に送信する。
【0020】
位置情報取得装置6は、地盤調査機2のロッドの位置、つまり実際に地盤調査が実施された位置の位置情報を取得するための装置であり、典型的には、地盤調査機2のロッドの端部に着脱自在に構成される。位置情報取得装置6は、プロセッサ、RAM、ROM、記憶装置61、情報処理端末7と接続するための近距離無線通信用のモジュール、GPSモジュール等のハードウェアを備える。GPSモジュールはGPS衛星から送信されたGPS信号を受信する第1GPSアンテナ62を備える。記憶装置61には、位置情報送信プログラムが記憶されている。プロセッサにより、位置情報送信プログラムが実行されることで、
図3に示すように、位置情報取得装置6は、制御部60、GPS位置計算部67、及び近距離無線通信部68として機能する。
【0021】
制御部60は、位置情報取得装置6を構成する各要素を統括して制御する。
記憶装置61は、位置情報取得装置6の位置情報を記憶する。
GPS位置計算部67は、制御部60の制御のもと、GPSアンテナ62により受信されたGPS信号に基づいて、GPSアンテナ62の位置(第1GPS位置)を随時計算する。GPSアンテナ62の位置は、位置情報取得装置6の位置、及び位置情報取得装置6が設置された地盤調査機2のロッドの位置に対応する。近距離無線通信部68は、制御部60の制御のもと、近距離無線通信規格を利用して情報処理端末7に位置情報取得装置6の位置情報を送信する。
【0022】
情報処理端末7は、地盤調査機2を用いて地盤を調査する調査者が所持するスマートフォン、タブレット等の移動型の情報処理端末である。情報処理端末7は、プロセッサ、RAM,ROM,記憶装置71、表示装置72、入力装置73、サーバ装置8と接続するための無線通信用のモジュール、位置情報取得装置6と接続するための近距離無線通信用のモジュール、中継装置5と接続するための近距離無線通信用のモジュール等のハードウェアを備える。記憶装置71には、地盤調査位置改ざん抑止システム1の情報処理端末用のアプリケーションがインストールされている。プロセッサにより、情報処理端末用のアプリケーションが実行されることで、
図4に示すように、情報処理端末7は、制御部70、移動体無線通信部74、第1近距離無線通信部75、第2近距離無線通信部76、位置ズレ量計算部77、装置間距離計算部78、及び判定部79として機能する。
【0023】
制御部70は、情報処理端末7を構成する各要素を統括して制御する。
記憶装置71は、地盤調査地に関する情報を地盤調査を識別する地盤調査IDに関連付けて記憶する。地盤調査地に関する情報は、地盤調査地の住所、及び地盤調査地の複数の測定予定位置に関する情報等を含む。記憶装置71は、地盤調査IDに関連付けて地盤調査データを、位置情報取得装置6の位置情報と中継装置5(制御装置4)の位置情報とともに記憶する。また、記憶装置71は、後述の判定部79による判定処理に用いられる閾値の設定情報として、位置ズレ量の閾値(第1閾値)に関する情報と、装置間距離の閾値(第2閾値)に関する情報とを記憶する。これらの情報は調査者により簡単に変更ができないように、変更不可であることが望ましい。これは、地盤調査位置の改ざん防止に寄与する。もちろん、調査者により変更可能であることを否定するものではない。第2閾値は、調査機本体3と制御装置4とを接続するケーブルの長さ以下に設定されることが望ましい。第2閾値の設定は手動であってもよいし、自動であってもよい。第2閾値を手動で設定する場合であっても、直接的にケーブル長を入力するのではなく、接続に使用したケーブルを識別する情報を入力するようにすれば、地盤調査位置を改ざんするために第2閾値を意図的に長くする意欲を抑止することができる。第2閾値を自動で設定できるように、例えば、ケーブルの種類とケーブル長とを関連付けたテーブルを保持し、接続に用いられるケーブルに、その種類を特定するためのQRコード(登録商標)、バーコード等の識別情報を付される、それにより、接続に用いられたケーブルの種類を自動的に特定し、特定したケーブル種類に対応するケーブル長を自動的に設定することができる。表示装置72は、制御部70の制御のもと、地盤調査に関連する各種ページを表示する。入力装置73は、調査者からの各種情報の入力を受け付ける。
【0024】
移動体無線通信部74は、中継装置5から受信した地盤調査データを地盤調査IDとともにサーバ装置8に送信する。移動体無線通信部74は、調査者による入力装置73の操作により選択された地盤調査地に関する情報をサーバ装置8から受信する。第1近距離無線通信部75は、中継装置5との間で各種情報を送受信する。中継装置5から受信する情報には、地盤調査データ、中継装置5の位置情報が含まれる。中継装置5に送信する情報には、後述の判定部79の判定結果が含まれる。第2近距離無線通信部76は、位置情報取得装置6から、位置情報取得装置6の位置情報を受信する。地盤調査位置が改ざんされていないとき、位置情報取得装置6の位置は調査機本体3の位置に対応する。
【0025】
位置ズレ量計算部77は、測定予定位置の位置情報と、位置情報取得装置6により取得された位置情報取得装置6の位置情報とに基づいて、測定予定位置に対する位置情報取得装置6の位置のズレ量(位置ズレ量)を計算する。位置情報取得装置6の位置情報は、調査機本体3の位置情報とみなすことができるため、位置ズレ量は、測定予定位置から調査機本体3の位置がどれだけ離れているかを表す。
【0026】
装置間距離計算部78は、位置情報取得装置6により取得された位置情報取得装置6の位置情報と、中継装置5により取得された中継装置5の位置情報とに基づいて、位置情報取得装置6と中継装置5との間の距離(装置間距離)を計算する。中継装置5の位置情報は制御装置4の位置情報とみなすことができるため、装置間距離は、調査機本体3と制御装置4とがどれだけ離れているかを表す。
【0027】
判定部79は、地盤調査の開始条件の成立/不成立を判定する。具体的には、判定部79は、位置ズレ量と装置間距離とに基づいて、地盤調査機2による地盤調査の開始の可否を判定する。具体的には、判定部79は、位置ズレ量を第1閾値に対して比較し、装置間距離を第2閾値に対して比較する。本実施形態では第1閾値を50cm、第2閾値を1mとしている。判定部79は、位置ズレ量が50cm以下であって且つ装置間距離が1m以下であるとき肯定的な判定をし、位置ズレ量が50cmよりも大きい又は装置間距離が1mよりも大きいとき否定的な判定をする。つまり、判定部79は、調査機本体3が測定予定位置又は測定予定位置に近接した位置に設置され、且つ調査機本体3と制御装置4とが互いに近接した位置に設置されているとき、肯定的な判定をし、調査機本体3が測定予定位置から大きく離れた位置に設置されている、又は調査機本体3と制御装置4とが互いに大きく離れているとき、否定的な判定をする。
【0028】
以下、
図5を参照して、地盤調査機2の調査機本体3の動作を開始するために必要な情報処理端末7による判定処理を説明する。
図5に示すように、情報処理端末7は、位置情報取得装置6から位置情報取得装置6の位置情報を受信し(S01)、中継装置5から中継装置5の位置情報を受信する(S02)。既に説明したように、位置情報取得装置6の位置情報は調査機本体3の位置情報、中継装置5の位置情報は制御装置4の位置情報としてそれぞれみなすことができる。情報処理端末7は、地盤調査地の測定予定位置の位置情報と位置情報取得装置6の位置情報とに基づいて、測定予定位置に対する調査機本体3の位置の位置ズレ量を計算する(S03)。位置ズレ量が50cm以内であるとき(S04;YES)、情報処理端末7は、位置情報取得装置6の位置情報と中継装置5の位置情報とに基づいて、調査機本体3と制御装置4との間の装置間距離を計算する(S05)。装置間距離が1m以内であるとき(S06;YES)、情報処理端末7は、中継装置5に対して調査許可信号を送信する(S07)。一方、位置ズレ量が50cmよりも大きいとき(S04;NO)、又は装置間距離が1mよりも大きいとき(S06;NO)、情報処理端末7は、中継装置5に対して開始不許可信号を送信する(S08)。
【0029】
図6に示すように、中継装置5は、起動されると開始許可/開始不可フラグを数値“0”に初期化する(S11)。開始許可/開始不可フラグは、情報処理端末7から地盤調査許可信号又は地盤調査不許可信号を受信するたびに更新される。中継装置5は、情報処理端末7から開始許可信号を受信したとき(S12;開始許可信号)、開始許可/開始不可フラグを許可を示す数値“1”に更新し(S13)。情報処理端末7から開始不許可信号を受信したとき(S12;開始不許可信号)、開始許可/開始不可フラグを不許可を示す数値“0”に更新する(S14)。中継装置5による開始許可/開始不可フラグの更新処理は、中継装置5の電源がオフされるまで、繰り返し実行され(S15;NO)、中継装置5の電源オフとともに終了される(S15;YES)。
【0030】
図7に示すように、制御装置4は、開始スイッチ39が押されるまで待機し(S21;NO)、開始スイッチ39が押されたことを契機に(S21;YES)、中継装置5に地盤調査の開始確認を要求し、開始許可/開始不可フラグを確認する(S22)。開始許可/開始不可フラグが“許可”であるとき(S23;許可)、制御装置4は、地盤調査プログラムに従って、調査機本体3を制御する(S24)。それにより、調査機本体3による地盤調査が開始される。開始許可/開始不可フラグが“不許可”であるとき(S23;不許可)、地盤調査機2による地盤調査の開始条件が成立していないことを調査者に通知するために警告音を発生する(S25)このとき、調査機本体3は動作せずに待機した状態であり、地盤調査は開始されない。
【0031】
以上説明した地盤調査位置改ざん抑止システム1によれば、情報処理端末7において、地盤調査機2による地盤調査の開始条件が成立したか否かによって、地盤調査機2による地盤調査の開始を制御することができる。開始条件は、調査機本体3が測定予定位置又は測定予定位置に近接した位置に設置され、且つ、調査機本体3と制御装置4とが互いに近接した位置に設置されているときに成立する。
【0032】
具体的には、測定予定位置から50cmの範囲AR1の内側に調査機本体3が設置され、調査機本体3から1mの範囲AR2の内側に制御装置4が設置されているとき、地盤調査の開始条件が成立したと判定され、地盤調査機2による地盤調査を開始することができる。
【0033】
地盤調査が正常に実施された場合、
図8に示すように、調査機本体3が測定予定位置に設置され、制御装置4が調査機本体3からケーブルの長さで規定される範囲AR2の内側に設置される。位置情報取得装置6は調査機本体3のロッドに装着される。このときの各装置の位置関係によれば、地盤調査の開始条件が満たされ、地盤調査機2による地盤調査を開始することができる。
【0034】
図8では、調査機本体3が測定予定位置に設置されたが、GPS信号に基づく位置特定処理は、多少の誤差を含む。したがって、調査機本体3が測定予定位置から予め設定された範囲内に設置されることを許容するようにした方が、運用上は便利である。
図9に示すように、許容する範囲は、調査位置の改ざんに利用することができないように、比較的狭い範囲、例えば、半径50cmに設定される。つまり、測定予定位置から50cmの範囲AR1の内側に調査機本体3が設置され、調査機本体3からケーブル長で規定される距離1mの範囲AR2の内側に制御装置4が設置される。位置情報取得装置6は調査機本体3のロッドに装着される。このときの各装置の位置関係によれば、地盤調査の開始条件が満たされ、地盤調査機2による地盤調査を開始することができる。
【0035】
本実施形態に係る地盤調査位置改ざん抑止システム1は、位置情報取得装置6を調査機本体3に内蔵するのではなく、調査機本体3に対して着脱自在とすることで以下のような効果を奏する。すなわち、調査機本体3にGPSモジュール等の位置情報を取得するためのハードウェアを装備させる必要はなく、既存の調査機本体3をそのまま利用することができる。また、地盤調査中は調査機本体3から取り外すことができるため、地盤調査中に調査機本体3にかかる強い振動の影響によって、GPSモジュール等が壊れてしまう事態を回避することができる。
【0036】
しかしながら、位置情報取得装置6を調査機本体3に対して着脱自在とすることで、地盤調査位置の改ざんが行われる可能性がある。すなわち、調査機本体3を測定予定位置に設置していない状態で、位置情報取得装置6だけを測定予定位置に置いて、あたかも調査機本体3が測定予定位置に設置されていたかのようにされてしまう可能性がある。このような場合であっても、開始条件さえ満たされてしまえば、地盤調査機2による地盤調査が開始できてしまい、測定予定位置ではない位置における地盤調査データを測定予定位置における地盤調査データとして収集されてしまう可能性がある。このような地盤調査位置の改ざんが行われないように又は行われたとしてもその影響を小さくするために、本実施形態では、調査機本体3と制御装置4とがケーブルで接続されていることを利用して、位置情報取得装置6の位置情報と制御装置4(中継装置5)の位置情報との2つの位置情報を取得することとした。
【0037】
図10に示すように、位置ズレ量の判定処理により、位置情報取得装置6が測定予定位置から50cm以内の範囲AR1に設置されていることを保証することができる。装置間距離の判定処理により、位置情報取得装置6から1m以内の範囲AR2に制御装置4が設置されていることを保証することができる。つまり、測定予定位置から1m50cm以内に制御装置4が設置されていることを保証することができる。制御装置4には、1mのケーブルを介して調査機本体3が接続されているため、少なくとも測定予定位置から2m50cm以内に調査機本体3が設置されていることが保証される。
【0038】
測定予定位置から制御装置4までの距離ではなく、調査機本体3から制御装置4までの距離を判定処理に用いることで、以下のような効果を奏する。つまり、測定予定位置から制御装置4までの距離ではなく、調査機本体3から制御装置4までの距離を判定処理に用いることで、より厳しい設置条件を課すことができる。また、測定予定位置から制御装置4までの距離を判定処理に用いた場合、調査機本体3と制御装置4とが実際にはあり得ない位置関係であっても、調査機本体3が測定予定位置から50cm以内、制御装置4が測定予定位置から1m50cm以内であれば、開始条件が満たされてしまい、地盤調査が開始できてしまう。調査機本体3と制御装置4とが実際にはあり得ない位置関係である可能性があれば、その位置関係の下で取得された地盤調査データの信頼性が低下してしまう。このように、実際にあり得る位置関係を満たすため、本実施形態えは、測定予定位置から制御装置4までの距離ではなく、調査機本体3から制御装置4までの距離を判定処理に用いる。
【0039】
本実施形態に係る地盤調査位置改ざん抑止システムによれば、調査機本体3のロッドに対して着脱自在な位置情報取得装置6の位置情報を収集することで、調査者が調査機本体3の位置、つまり地盤調査位置を改ざんしようとする意欲を低下させることができる。万が一、調査者が位置情報取得装置6を調査機本体3に設置せずに、地盤調査位置を改ざんしようとした場合であっても、制御装置4に対してケーブルを介して調査機本体3が接続されていることを利用して、制御装置4の位置情報を取得することにより、調査機本体3が測定予定位置からどれだけの範囲内に設置されているかを把握することができる。
【0040】
調査者が地盤調査位置を改ざんしようとした場合において、測定予定位置に対して、実際に調査機本体3が設置された位置をできるだけ測定予定位置に近づけたいのであれば、位置ズレ量に関する第1閾値と装置間距離に関する第2閾値とをもっと小さい値に設定すればよい。
【0041】
調査機本体3が位置情報を取得する機能を有することで、実際に地盤調査が行われた正確な位置を取得することができる。しかしながら、振動対策が必要、製造元の許可が必要などの様々な理由から、既存の調査機本体3に位置情報を取得するためのハードウェアを装備させることが困難である場合がある。本実施形態に係る地盤調査位置改ざん抑止システム1によれば、調査機本体3に対して位置情報取得装置6を着脱自在に構成することで、調査機本体3に位置情報を取得するためのハードウェアを実装することを不要とすることができる。位置情報取得装置6が調査機本体3に対して着脱自在であるが故に発生する調査機本体3の設置位置の改ざんのリスクを、調査機本体3と制御装置4とがケーブルで接続されていることを利用して、位置情報取得装置6の位置情報と制御装置4の位置情報とを取得することにより防止又はその改ざんによる影響を低減することができ、調査機本体3に位置情報を取得するハードウェアを装備させた場合と同等程度の効果を発揮することができる。
【0042】
GPSアンテナ52は、制御装置4の筐体に設ける必要はあるが、GPSアンテナ52で受信したGPS信号に基づいて位置を計算するGPS位置計算部57の機能は、情報処理端末7が有するようにしてもよいし、サーバ装置8が有するようにしてもよい。
【0043】
GPSアンテナ62は位置情報取得装置6に設ける必要はあるが、GPSアンテナ62で受信したGPS信号に基づいて位置を計算するGPS位置計算部67の機能は、情報処理端末7が有するようにしてもよいし、サーバ装置8が有するようにしてもよい。
【0044】
本実施形態では、GPSアンテナ52が制御装置4の筐体に設けられ、GPSアンテナ62が調査機本体3のロッドに着脱自在な位置情報取得装置6に設けられることが必須であるが、それ以外の機能は、情報処理端末7,中継装置5,制御装置4、及びサーバ装置8に分散して設けられてもよい。
【0045】
したがって、本実施形態では、地盤調査機2のハードウェアを大きく変更できなかったため、地盤調査機2の制御装置4に、位置情報取得機能と近距離無線通信機能とを有する中継装置5を接続する構成としたが、地盤調査機2のハードウェアを大きく変更できるのであれば、制御装置4が中継装置5の位置情報取得機能と近距離無線通信機能とを有する構成としてもよいし、近距離無線通信機能又は位置情報の取得機能を有するように構成してもよい。
【0046】
また、位置情報取得装置6や中継装置5が、インターネット10を介してサーバ装置8に直接接続される構成であってもよく、この場合、情報処理端末7は不要であり、情報処理端末7の機能はサーバ装置8、中継装置5、制御装置4等に設けられる。
【0047】
本実施形態では、情報処理端末7において地盤調査の開始条件の成立/不成立を判定するために、情報処理端末7が位置ズレ量計算部77、装置間距離計算部78,及び判定部79を有する構成とした。しかしながら、上記の機能は、その一部又は全てが制御装置4が有してもよいし、中継装置5が有してもよいし、サーバ装置8が有してもよい。
【0048】
本実施形態では、地盤調査の開始条件が不成立であるときに、地盤調査機2による地盤調査を開始できないようにしていた。しかしながら、調査機本体3が測定予定位置ではない位置に設置されるなどして、地盤調査開始条件が不成立であっても、それが許容される場合もある。したがって、地盤調査開始条件の不成立であるときに、地盤調査機2による地盤調査を開始できなくするのではなく、地盤調査機2による地盤調査を開始できるようにした上で、その地盤調査が地盤調査の開始条件の成立下で行われたものであるのか、不成立下で行われたものであるのかが第三者が把握できればよい。例えば、地盤調査データに、その地盤調査が地盤調査の開始条件の成立下で行われたものであるのか、不成立下で行われたものであるのかを示すデータが付帯される。
【0049】
もちろん、地盤調査データには、地盤調査の開始条件の成立、不成立に関するデータを付帯させるのではなく、位置ズレ量及び装置間距離に関するデータを付帯させてもよいし、位置情報取得装置6の位置情報及び制御装置4(中継装置5)の位置情報を付帯させてもよい。位置情報取得装置6の位置情報と中継装置5(制御装置4)の位置情報とを地盤調査IDに関連付けて管理しておけば、第三者が、各装置がどのような位置関係のもとで、地盤調査が行われたかを把握し、地盤調査位置の改ざんが行われたか否かを判断することができる。
【0050】
本実施形態では、調査機本体3と制御装置4とがケーブルで接続され、調査機本体3が制御装置4からケーブル長で規定される範囲に設置されることが保証されることを利用し、制御装置4が測定予定位置に近接した位置に配置することで、調査機本体3の位置が改ざんされた場合であっても、測定予定位置から大きく外れた位置に調査機本体3が配置され、地盤調査が実施されてしまうのを防止することができた。調査機本体3と制御装置4との間の距離を保証できるのであれば、必ずしも調査機本体3と制御装置4とがケーブル等の有線で接続しなくてもよい。例えば、調査機本体3と制御装置4とをBluetooth等の近距離無線規格で通信自在に接続し、通信強度を検出することで調査機本体3と制御装置4との間の距離を規定し、調査機本体3が制御装置4から所定の通信強度の範囲内に配置されることを保証するようにしてもよい。また、通信強度を検出することだけを目的として、ビーコンの発信機と受信機とを調査機本体3と制御装置4とにそれぞれ装備させてもよい。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0052】
7…情報処理端末、70…制御部、71…記憶装置、72…表示装置、73…入力装置、74…移動体無線通信部、75…第1近距離無線通信部、76…第2近距離無線通信部、77…位置ズレ量計算部、78…装置間距離計算部、79…判定部。