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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002716
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/12 20060101AFI20231228BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20231228BHJP
   C08L 25/08 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
C08L71/12
C08L23/04
C08L25/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102088
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】望月 信介
(72)【発明者】
【氏名】東 瞭太
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB022
4J002BB032
4J002BB052
4J002BC043
4J002BH013
4J002BP013
4J002CH071
4J002FD010
4J002FD090
4J002FD130
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】本発明は、耐熱性と耐衝撃性、流動性のバランスに優れた樹脂組成物及び当該樹脂組成物を含む成形品を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂、(B)ポリエチレン、及び(C)スチレン系熱可塑性エラストマー、を含み、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計100質量部に対して、(A)成分が50~88質量部、(B)成分が10~40質量部、(C)成分が2~20質量部であり、(B)成分の粘度平均分子量(Mv)が300,000以上2,000,000以下であることを特徴とする、樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂、
(B)ポリエチレン、及び
(C)スチレン系熱可塑性エラストマー、
を含み、
前記(A)成分、前記(B)成分、及び前記(C)成分の合計100質量部に対して、前記(A)成分が50~88質量部、前記(B)成分が10~40質量部、前記(C)成分が2~20質量部であり、
前記(B)成分の粘度平均分子量(Mv)が300,000以上2,000,000以下であることを特徴とする、樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)成分の粘度平均分子量(Mv)が500,000以上1,000,000以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂組成物100質量%に対して、前記(A)成分、前記(B)成分、及び前記(C)成分の合計質量が70質量%以上である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)成分の還元粘度が0.20~0.50dL/gである、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)成分の重量平均分子量が50,000以上100,000以下である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記(C)成分が、スチレンを含む芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主体とする少なくとも1つの芳香族ビニル重合体ブロック(X)を含み、前記(C)成分100質量%中の前記芳香族ビニル重合体ブロック(X)の含有量が25~40質量%である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の樹脂組成物を含むことを特徴とする、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂の多くは樹脂成形材料として、電子・電機部品、OA機器部品、音響映像機器部品及び自動車部品などで多岐多様に利用されている。
近年、情報通信機器等の樹脂部品の通信速度高速化、小型精密化のため、熱溶融加工時の流動性の向上、部品の小型集積化のための耐熱性向上及び部品形状複雑化による折れ・割れを防止するための耐衝撃性・剛性の向上が要求されている。このような状況において、特に耐衝撃性の観点から、ポリフェニレンエーテルにポリエチレンを添加した樹脂組成物が多く提案されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2-110147号公報
【特許文献2】特表2007-500283号公報
【特許文献3】特開2008-274039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ポリフェニレンエーテルに低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)などの一般的なポリエチレンを添加した組成物は、耐衝撃性に優れるものの耐熱性が極端に低下してしまう課題があり、耐熱性、耐衝撃性、流動性を改良した樹脂組成物が求められている。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、耐熱性と耐衝撃性、流動性のバランスに優れた樹脂組成物及び当該樹脂組成物を含む成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の問題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、ポリフェニレンエーテル系樹脂、特定のポリエチレン、スチレン系熱可塑性エラストマーを特定割合で配合させることにより、耐熱性と耐衝撃性、流動性のバランスに優れた樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂、
(B)ポリエチレン、及び
(C)スチレン系熱可塑性エラストマー、
を含み、
前記(A)成分、前記(B)成分、及び前記(C)成分の合計100質量部に対して、前記(A)成分が50~88質量部、前記(B)成分が10~40質量部、前記(C)成分が2~20質量部であり、
前記(B)成分の粘度平均分子量(Mv)が300,000以上2,000,000以下であることを特徴とする、樹脂組成物。
[2]
前記(B)成分の粘度平均分子量(Mv)が500,000以上1,000,000以下である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]
前記樹脂組成物100質量%に対して、前記(A)成分、前記(B)成分、及び前記(C)成分の合計質量が70質量%以上である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]
前記(A)成分の還元粘度が0.20~0.50dL/gである、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]
前記(C)成分の重量平均分子量が50,000以上100,000以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]
前記(C)成分が、スチレンを含む芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主体とする少なくとも1つの芳香族ビニル重合体ブロック(X)を含み、前記(C)成分100質量%中の前記芳香族ビニル重合体ブロック(X)の含有量が25~40質量%である、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]
[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物を含むことを特徴とする、成形品。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、耐熱性と耐衝撃性、流動性のバランスに優れた樹脂組成物及び当該樹脂組成物を含む成形品が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。
【0010】
〔樹脂組成物〕
本実施形態に係る樹脂組成物は、(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂、(B)ポリエチレン、及び(C)スチレン系熱可塑性エラストマー、を含む樹脂組成物であって、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分の合計100質量部に対して、前記(A)成分が50~88質量部、前記(B)成分が10~40質量部、前記(C)成分が2~20質量部であり、前記(B)成分の粘度平均分子量Mvが300,000以上2,000,000以下である。
【0011】
[(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂]
本実施形態の(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂は、ポリフェニレンエーテル(本明細書において、「PPE」と記載する場合がある)とポリスチレン系樹脂とを含むことができる。上記PPE系樹脂は、PPEとポリスチレン系樹脂とからなる混合樹脂であってもよいし、PPEのみからなる樹脂であってもよい。
上記PPE系樹脂はPPEを含有するため、本実施形態の樹脂組成物は、耐熱性に一層優れる。
【0012】
上記PPEとしては、例えば、下記式(1)で表される繰り返し単位構造からなるホモ重合体、下記式(1)で表される繰り返し単位構造を有する共重合体が挙げられる。
上記PPEは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化1】
上記式(1)中、R、R、R、及びRは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~7の第1級アルキル基、炭素数1~7の第2級アルキル基、フェニル基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基、及び少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを隔てているハロ炭化水素オキシ基からなる群から選択される一価の基である。
【0013】
上記PPEは、加工時の流動性、靭性及び耐薬品性の観点から、0.5g/dLの濃度のクロロホルム溶液を用いて、30℃の条件下、ウベローデ型粘度管で測定した還元粘度が、0.15~1.0dL/gであることが好ましく、より好ましくは0.20~0.50dL/g、さらに好ましくは0.20~0.40dL/gである。
【0014】
上記PPEとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジクロロ-1,4-フェニレンエーテル)等のホモ重合体;2,6-ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6-トリメチルフェノールや2-メチル-6-ブチルフェノール)との共重合体等の共重合体;等が挙げられる。中でも、樹脂組成物としたときの靭性と剛性のバランスや、原料の入手のし易さの観点から、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、2,6-ジメチルフェノールと2,3,6-トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)がより好ましい。
【0015】
上記PPEは、公知の方法により製造することができる。PPEの製造方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、米国特許第3306874号明細書に記載のHayによる第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として用い、2,6-キシレノールを酸化重合する方法、米国特許第3306875号明細書、米国特許第3257357号明細書、米国特許第3257358号明細書、特公昭52-17880号公報、特開昭50-51197号公報、特開昭63-152628号公報等に記載の方法等が挙げられる。
【0016】
上記PPEは、上記ホモ重合体及び/又は上記共重合体と、スチレン系モノマー若しくはその誘導体、及び/又はα,β-不飽和カルボン酸若しくはその誘導体と、を反応させることによって得られる変性PPEであってもよい。ここで、上記スチレン系モノマー若しくはその誘導体及び/又はα,β-不飽和カルボン酸若しくはその誘導体のグラフト量又は付加量としては、PPE100質量%に対して、0.01~10質量%であることが好ましい。
上記変性PPEの製造方法としては、例えば、ラジカル発生剤の存在下又は非存在下で、溶融状態、溶液状態又はスラリー状態で、80~350℃の温度下で反応させる方法等が挙げられる。
【0017】
上記PPEとしては、上記ホモ重合体及び/又は上記共重合体と、上記変性PPEとの、任意の割合の混合物を用いてもよい。
【0018】
(A)成分に含まれるポリスチレン系樹脂としては、ポリスチレン、ゴム補強されたポリスチレン(ハイインパクトポリスチレン、HIPS)が好ましい。
【0019】
(A)成分としては、PPEとポリスチレン系樹脂との質量割合(PPE/ポリスチレン系樹脂)が、100/0~10/90であるポリフェニレンエーテル系樹脂を用いることができる。
かかる質量割合(PPE/ポリスチレン系樹脂)としては、流動性、耐熱性と耐衝撃性及び剛性の観点から、100/0~30/70であることがより好ましく、100/0~50/50であることがさらに好ましい。
上記ポリスチレン系樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
(A)成分は、加工時の流動性、靭性及び耐薬品性の観点から、0.5g/dLの濃度のクロロホルム溶液を用いて、30℃の条件下、ウベローデ型粘度管で測定した還元粘度が、0.20~0.50dL/gであることが好ましく、より好ましくは0.20~0.40dL/g、さらに好ましくは0.20~0.35dL/gである。
【0021】
(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂の含有量は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計100質量部に対して、50~88質量部であり、好ましくは55~80質量部、より好ましくは60~70質量部である。(A)成分の含有量が50質量部以上であると、耐熱性に優れる傾向にある。また、(A)成分の含有量が88質量部以下であると、流動性と耐衝撃性に優れる傾向にある。
【0022】
[(B)ポリエチレン]
本実施形態の(B)ポリエチレンとしては、粘度平均分子量(Mv)が300,000以上2,000,000以下であれば特に限定されず、エチレン単独重合体であってもよく、エチレンと他のコモノマーとの共重合体であってもよい。
【0023】
他のコモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、α-オレフィン、ビニル化合物等が挙げられる。
【0024】
前記α-オレフィンとしては、特に限定されないが、例えば、炭素数3~20のα-オレフィンが挙げられ、具体的には、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン等が挙げられる。
【0025】
前記ビニル化合物としては、特に限定されないが、例えば、ビニルシクロヘキサン、スチレン及びその誘導体等が挙げられる。
【0026】
また、必要に応じて、他のコモノマーとして、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン等の非共役ポリエンを使用することもできる。
【0027】
前記エチレンと他のコモノマーとの共重合体は、3元ランダム重合体であってもよい。他のコモノマーは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
本実施形態の(B)ポリエチレンが、コモノマーに由来する単位(以下、「コモノマー単位」ともいう)を含む場合、(B)ポリエチレン中のコモノマー単位の含有量は、好ましくは0.01モル%以上1モル%以下であり、より好ましくは0.01モル%以上0.5モル%以下であり、さらに好ましくは0.01モル%以上0.1モル%以下である。
【0029】
本実施形態の(B)ポリエチレンの製造方法は、特に限定されず、従来公知の重合方法を用いることができる。重合の際に用いる触媒としては、特に限定されず、例えば、特許5782558号公報や特許5829257号公報、特許4868853号公報、特開平10-218933号公報等に開示されているチーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒等が挙げられる。
【0030】
本実施形態の(B)ポリエチレンの粘度平均分子量(Mv)は、300,000以上2,000,000以下であり、好ましくは500,000以上1,500,000以下であり、より好ましくは、500,000以上1,000,000以下である。
粘度平均分子量(Mv)が300,000以上であると、樹脂組成物の耐熱性が高まる傾向にある。一方、粘度平均分子量(Mv)が2,000,000以下であると、耐衝撃性に優れる樹脂組成物が得られる傾向にある。
【0031】
(B)ポリエチレンの粘度平均分子量(Mv)は、以下に示す方法によって求めることができる。まず、溶解管に(B)ポリエチレン4.5mgを秤量し、溶解管内部の空気を真空ポンプで脱気して窒素で置換した後、20mLのデカヒドロナフタレン(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールを1g/L加えたもの、以下、「デカリン」ともいう)を加え、150℃で1.5時間攪拌して(B)ポリエチレンを溶解させ、デカリン溶液を得る。
得られたデカリン溶液について、135℃の恒温槽中で、キャノンフェンスケタイプの粘度計を用いて、標線間の落下時間(ts)を測定する。
ブランクとして(B)ポリエチレンを入れていないデカリンのみの落下時間(tb)を測定する。
下記式(i)に従って求められる(B)ポリエチレンの還元粘度(ηsp/C)を用いて、下記式(ii)により極限粘度(η)を算出する。
さらに、極限粘度(η)を用いて、下記式(iii)により粘度平均分子量(Mv)を算出する。
(ηsp/C)=(t/t-1)/C (単位:dL/g)・・・式(i)
(η)=(ηsp/C)/(1+(0.27×C×(ηsp/C))(単位:dL/g)・・・式(ii)
(Mv)=((η)/6.8×101.4925 ・・・式(iii)
なお、Cは135℃におけるデカリン溶液の濃度であり、下記式(iv)により算出される。
C=((B)ポリエチレンの質量(mg)/1000)/(デカリン溶液量(mL)×1.107)×100 (単位:g/dL) ・・・式(iv)
【0032】
(B)ポリエチレンの含有量は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計100質量部に対して、10~40質量部であり、好ましくは15~35質量部、より好ましくは20~35質量部である。(B)成分の含有量が10質量部以上であると、耐衝撃性に優れる傾向にある。また、(B)成分の含有量が40質量部以下であると、耐熱性に優れる傾向にある。
【0033】
[(C)スチレン系熱可塑性エラストマー]
本実施形態の(C)スチレン系熱可塑性エラストマーは、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主体とする少なくとも1つの芳香族ビニル重合体ブロック(X)と共役ジエン化合物に由来する構造単位を主体とする少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロック(Y)とを含む非水素化ブロック共重合体及び/又は該ブロック共重合体の水素添加物であり、上記芳香族ビニル化合物に由来する構造単位中にスチレンに由来する構造単位を50質量%以上含むものを指す。
【0034】
なお、前記芳香族ビニル重合体ブロック(X)に関して「芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主体とする」とは、当該ブロックにおいて、50質量%以上が芳香族ビニル化合物に由来する構造単位からなることを指す。より好ましくは芳香族ビニル化合物に由来する構造単位が70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
前記芳香族ビニル重合体ブロック(X)を形成するために用いる芳香族ビニル化合物としては、特に制限はなく、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもスチレンのみであることが特に好ましい。
【0035】
また、前記共役ジエン重合体ブロック(Y)の「共役ジエン化合物に由来する構造単位を主体とする」に関しても同様で、50質量%以上が共役ジエン化合物に由来する構造単位からなることを指す。より好ましくは共役ジエン化合物に由来する構造単位が70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
前記共役ジエン重合体ブロック(Y)を形成するために用いる共役ジエン化合物としては、特に制限はなく、例えば、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、1,3-ペンタジエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもブタジエン、イソプレン及びこれらの組み合わせが好ましい。
【0036】
さらに、前記芳香族ビニル重合体ブロック(X)は、例えば、芳香族ビニル重合体ブロック中にランダムに少量の共役ジエン化合物に由来する構造単位が結合されてなる共重合体ブロックであってもよい。前記共役ジエン重合体ブロック(Y)の場合も同様に、例えば、共役ジエン重合体ブロック中にランダムに少量の芳香族ビニル化合物に由来する構造単位が結合されてなる共重合体ブロックであってもよい。
【0037】
本実施形態に用いられる(C)成分は、前記芳香族ビニル重合体ブロック(X)を、(C)成分100質量%中、10~90質量%含んでいることが好ましく、より好ましくは20~60質量%、最も好ましくは25~40質量%である。
また、本実施形態に用いられる(C)成分は、前記共役ジエン重合体ブロック(Y)を、(C)成分100質量%中、10~90質量%含んでいることが好ましく、より好ましくは40~80質量%、最も好ましくは60~75質量%である。
【0038】
前記共役ジエン重合体ブロック(Y)の結合様式に関しては、特に限定されず、任意に選択することができる。ビニル結合量(共役ジエン化合物の1,2-結合様式と3,4-結合様式と1,4-結合様式のうち、1,2-結合様式と3,4-結合様式により組み込まれているものの割合)は、5~60%であることが好ましく、10~50%がより好ましく、30~40%がさらに好ましい。
なお、ビニル結合量は、赤外分光高度計や核磁気共鳴装置(NMR)を用いて求めることができる。
【0039】
また、本実施形態に用いられる(C)成分は、少なくとも一部が水素添加されたブロック共重合体(水素化ブロック共重合体)であってもよい。
ここで、水素化ブロック共重合体とは、上述の非水素化ブロック共重合体を水素添加処理することにより、芳香族ビニル重合体ブロック(X)に含まれ得る共役ジエン化合物の重合体部分と、共役ジエン重合体ブロック(Y)に含まれる共役ジエン化合物の重合体部分と、に由来する脂肪鎖二重結合が還元されたものを指す。水素化ブロック共重合体の水素添加率は、共役ジエン化合物の重合体部分に由来する脂肪鎖二重結合の総量に対して、50%以上であることが好ましく、80%以上がより好ましく、98%以上が最も好ましい。
なお、水素添加率は、赤外分光高度計や核磁気共鳴装置(NMR)を用いて求めることができる。
【0040】
本実施形態で用いられる(C)成分は、芳香族ビニル重合体ブロック(X)と共役ジエン重合体ブロック(Y)が、X-Y型、X-Y-X型、X-Y-X-Y型から選ばれる結合形式を有するブロック共重合体であることが好ましい。これらの内、異なる結合形式を有するブロック共重合体を組み合わせて用いても構わない。これらの中でもX-Y-X型、X-Y-X-Y型から選ばれる結合形式を有することがより好ましく、X-Y-X型の結合形式を有することがさらに好ましい。
【0041】
本実施形態で用いられる(C)成分の具体的な例としては、特に限定はされないが、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-(エチレン・ブチレン)ブロック共重合体、スチレン-(エチレン・ブチレン)-スチレンブロック共重合体、スチレン-(エチレン・プロピレン)ブロック共重合体、スチレン-(エチレン・プロピレン)-スチレンブロック共重合体、スチレン-(エチレン・エチレン・プロピレン)-スチレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0042】
本実施形態において、(C)成分の重量平均分子量は、50,000~220,000であることが好ましい。重量平均分子量がこの範囲にあると、(A)成分と(B)成分の相容性が向上し、耐熱性、機械的特性、成形流動性のバランスに優れ、特に耐衝撃性が著しく向上した樹脂組成物を得ることができる。
同様の観点から、前記(C)成分の重量平均分子量は、より好ましくは50,000~200,000であり、さらに好ましくは50,000~150,000であり、最も好ましくは50,000~100,000である。
なお、前記(C)成分の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(移動相:クロロホルム、標準物質:ポリスチレン)を用いて、従来公知の方法により求めることができる。
【0043】
本実施形態で用いることのできる(C)成分は、本実施形態の趣旨に反しない限り、結合形式の異なるもの、芳香族ビニル化合物種の異なるもの、共役ジエン化合物種の異なるもの、ビニル結合量の異なるもの、芳香族ビニル化合物成分含有量の異なるもの、水素添加率の異なるもの等の各々について2種以上を混合してもよい。
【0044】
また、本実施形態で用いることのできる(C)成分は、変性されたブロック共重合体であっても構わない。
ここでいう変性されたブロック共重合体とは、カルボキシ基、酸無水物基、アミノ基、ヒドロキシ基及びグリシジル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基によってブロック共重合体の主鎖及び/又は側鎖の一部が変性されたブロック共重合体を指す。
前記変性されたブロック共重合体の製造方法としては、ラジカル開始剤の存在下又は非存在下で、(1)ブロック共重合体の軟化点以上250℃以下の温度範囲で、ブロック共重合体と変性化合物を溶融混練し反応させる方法、(2)ブロック共重合体の軟化点以下の温度で、ブロック共重合体と変性化合物を溶液中で反応させる方法、(3)ブロック共重合体の軟化点以下の温度で、ブロック共重合体と変性化合物を溶融させることなく反応させる方法等が挙げられ、これらいずれの方法でも構わないが、(1)の方法が好ましく、さらには(1)の中でもラジカル開始剤存在下で行う方法が最も好ましい。
【0045】
(C)スチレン系熱可塑性エラストマーの含有量は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計100質量部に対して、2~20質量部であり、好ましくは5~15質量部、より好ましくは10~15質量部である。(C)成分の含有量が2質量部以上であると、(B)成分の分散性が向上し、耐衝撃性に優れる傾向にある。また、(C)成分の含有量が20質量部以下であると、耐熱性に優れる傾向にある。
【0046】
本実施形態の樹脂組成物は、樹脂組成物全体を100質量%としたときに、上述した(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計含有量が70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。また、85質量%以上であることができ、90質量%以上であることができ、95質量%以上であることができ、97質量%以上であることができ、99質量%以上であることができ、100質量%であってもよい。
【0047】
本実施形態の樹脂組成物は、(A)成分を含むマトリックス相と、マトリックス相中に分散する分散相とが存在していてもよい。分散相は、平均粒子径が1~50μmで分散していることが好ましく、1~20μmで分散していることがより好ましく、1~10μmで分散していることがさらに好ましい。分散相の平均粒子径が1μm以上であると耐熱性に優れる傾向にあり、平均粒子径が50μm以下であると耐衝撃性に優れる傾向にある。
分散相の平均粒子径を測定する手法は特に限定されないが、樹脂組成物をクロロホルムに溶解させた溶液を用いて、レーザー粒度計により平均粒子径(D50)を測定することができる。
【0048】
[その他の成分]
本実施形態の樹脂組成物には、本実施形態の効果を損なわない範囲で、上述した(A)成分、(B)成分、及び(C)成分に加えて、(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂及び(B)ポリエチレン以外のその他の熱可塑性樹脂、(C)スチレン系熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性エラストマー、無機充填剤、着色剤、難燃剤、その他の添加剤等(以下、まとめて「その他の成分」という。)を含むことができる。
【0049】
前記その他の成分の合計含有量は、特に限定はされないが、樹脂組成物全体を100質量%としたときに、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0050】
前記(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂及び(B)ポリエチレン以外のその他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリスルフォン、ポリカーボネート、ポリアセタール等の他、液晶性ポリマー、芳香族ポリエステル、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、α-オレフィンコポリマー、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、芳香族ナイロン等のポリアミド系樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂等を挙げることができる。その他の熱可塑性樹脂としては、熱可塑性エラストマーは含まないものとする。これらの熱可塑性樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0051】
前記(C)スチレン系熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、フッ素系、塩化ビニル系、ポリオレフィン系、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系、ポリエチレン系等の熱可塑性エラストマーが挙げられる。これらの熱可塑性エラストマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0052】
本実施形態の樹脂組成物は、前記その他の成分として無機充填剤を添加することで、耐熱性、機械的特性、寸法安定性等を向上させることができる。
前記無機充填剤としては、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、チタン酸バリウム繊維、石膏繊維、黄銅繊維、セラミックス繊維、ボロンウィスカ繊維、マイカ、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、ウォラストナイト、ゾノトライト、アパタイト、ガラスビーズ、中空ガラスビーズ、ガラスフレーク等の繊維状、針状、粒状、球状、中空状、あるいは板状の無機質強化材等が挙げられる。これらの無機充填剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、無機充填剤は、シランカップリング剤等の表面処理剤を用いて公知の方法で表面処理した物を用いても構わない。
【0053】
前記着色剤としては、特に限定はされないが、例えば、公知の有機染顔料及び無機顔料から選ばれる1種以上の着色剤を使用することができる。
前記有機染顔料としては、例えば、アゾレーキ染顔料、ベンズイミダゾロン染顔料、ジアリリド染顔料、縮合アゾ染顔料等のアゾ系染顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系染顔料、イソインドリノン染顔料、キノフタロン染顔料、キナクリドン染顔料、ペリレン染顔料、アントラキノン染顔料、ペリノン染顔料、ジオキサジンバイオレット等の縮合多環系染顔料、アジン系染顔料、カーボンブラック等が挙げられる。
前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化クロム等の金属酸化物、チタンイエロー、コバルト青、群青等の複合金属酸化物等が挙げられる。
【0054】
前記難燃剤としては、例えば、リン酸エステル系化合物、ホスフィン酸塩類、ホスファゼン類、水和金属化合物、シリコーン類等が挙げられるが、中でもリン酸エステル化合物及びホスフィン酸塩類が好ましい。
前記リン酸エステル系化合物としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート等のモノリン酸エステル類;レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)、ビフェニルビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジクレジルホスフェート)等の縮合リン酸エステル類等が挙げられる。中でも、加工時のガス発生量が少なく、熱安定性に優れることから、縮合リン酸エステル類を用いることが好ましい。
前記ホスフィン酸塩類としては、例えば、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛等が挙げられる。
前記難燃剤は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0055】
前記その他の成分は、上述したもの以外にも、その他の添加剤として、有機系又は金属系の熱安定剤(酸化防止剤)、紫外線吸収剤、光安定剤、滴下防止剤、可塑剤、流動性改良剤、滑剤、結晶核剤、離型剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、展着剤等を含むことができる。
また、銅クロム複合酸化物、銅クロムマンガン複合酸化物、銅マンガン鉄複合酸化物等の各種レーザーダイレクトストラクチャリング(LDS)添加剤を含むことができ、LDS添加剤を含んだ本実施形態の樹脂組成物は、MID(成形回路部品)等に好適に用いることができる。
【0056】
〔樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態の樹脂組成物の製造方法は、特に限定はされないが、上述した(A)成分、(B)成分及び(C)成分と、必要に応じて、上述したその他の成分とを、溶融混練することにより製造することができる。
【0057】
溶融混練を行う溶融混練機としては、特に限定されないが、例えば、単軸押出機、二軸押出機を含む多軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等による加熱溶融混練機が挙げられる。これらの中でも、混練性の観点から、二軸押出機を用いることが好ましい。該二軸押出機としては、例えば、WERNER&PFLEIDERER社製のZSKシリーズ、東芝機械(株)製のTEMシリーズ、日本製鋼所(株)製のTEXシリーズ等が挙げられる。
【0058】
押出機の構成については、特に限定されないが、例えば、原料の流れ方向に対し、上流側に第1原料供給口、該第1原料供給口より下流に第1真空ベント、該第1真空ベントの下流に第2原料供給口を設け(必要に応じて、第2原料供給口の下流に、さらに第3、第4原料供給口を設けてもよい)、さらに該第2原料供給口の下流に第2真空ベントを設けたものが好ましい。特に、第1真空ベントの上流にニーディングセクションを設け、第1真空ベントと第2原料供給口との間にニーディングセクションを設け、第2~第4原料供給口と第2真空ベントとの間にニーディングセクションを設けたものがより好ましい。
【0059】
二軸押出機を用いた、本実施形態の樹脂組成物の具体的な製造方法の態様の一つとして、例えば、各成分を、二軸押出機の第1原料供給口に供給し、加熱溶融ゾーンを熱可塑性樹脂の溶融温度以上に設定し、スクリュー回転数100~1200rpm、好ましくは200~500rpmにて溶融混練し、溶融混練する方法が挙げられる。また、各成分を二軸押出機に供給する位置は、上記のように一括して押出機の第1原料供給口から供給しても良く、第2原料供給口、第3原料供給口及び第4原料供給口を設けてそれぞれの成分を分割して供給しても構わない。
【0060】
さらに、樹脂の酸素存在下における熱履歴による架橋物や炭化物の発生を低減させる場合、各原材料の押出機への添加経路における個々の工程ラインの酸素濃度を1.0体積%未満に保持することが好ましい。上記添加経路としては、特に限定されないが、具体例としては、ストックタンクから順に、配管、リフィルタンクを保有した重量式フィーダー、配管、供給ホッパー、二軸押出機、といった構成を挙げることができる。上記のような低い酸素濃度を維持するための方法としては、特に限定されないが、気密性を高めた個々の工程ラインに不活性ガスを導入する方法が有効である。通常、窒素ガスを導入して酸素濃度1.0体積%未満に維持することが好ましい。
【0061】
〔成形品及びその製造方法等〕
本実施形態の樹脂組成物は、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形、カレンダー成形及び流延成形等の、従来公知の成形方法を用いて成形することにより、成形品を製造することができる。すなわち、本実施形態の成形品は、本実施形態の樹脂組成物を含むものである。
【0062】
成形方法としては、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。例えば、射出成形機のシリンダー内で樹脂組成物を溶融させ、所定の形状の金型内に射出することによって、所定の形状の成形品を製造することができる。
また、シリンダー温度を制御した押出機内で樹脂組成物を溶融させて、口金ノズルよりこれを紡出することによって、繊維状の成形品を製造することができる。
さらに、シリンダー温度を制御した押出機内で樹脂組成物を溶融させて、Tダイからこれを押し出すことによって、フィルム状やシート状の成形品を製造することができる。
【0063】
さらにまた、このような方法で製造された成形品は、表面に、塗料、金属や他種のポリマー等からなる被覆層を形成させてもよい。すなわち、本実施形態の成形品と、この成形品の表面の少なくとも一部に形成された被覆層と、を備える積層体とすることもできる。被覆層は、1層であってもよいし、2層以上であってもよい。積層方法としては、特に限定されず、その使用目的は成形品の形状等に鑑み、適宜好適な方法を採用することができる。
【実施例0064】
以下、本実施形態について、具体的な実施例及び比較例を挙げて説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例に用いた原料及び測定方法を以下に示す。
【0065】
〔原材料〕
<(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂>
(A-1)クロロホルム溶媒を用いて0.5g/dLの濃度に調整し、30℃でウベローデ型粘度管を用いて測定した還元粘度が0.40dL/gであるPPEを用いた。
(A-2)クロロホルム溶媒を用いて0.5g/dLの濃度に調整し、30℃でウベローデ型粘度管を用いて測定した還元粘度が0.33dL/gであるPPEを用いた。
【0066】
<(B)ポリエチレン)>
(B-1)粘度平均分子量(Mv)が300,000のポリエチレンを用いた。
(B-2)粘度平均分子量(Mv)が500,000のポリエチレンを用いた。
(B-3)粘度平均分子量(Mv)が900,000のポリエチレンを用いた。
(B-4)粘度平均分子量(Mv)が2,000,000のポリエチレンを用いた。
(B-5)粘度平均分子量(Mv)が3,000,000のポリエチレンを用いた。
(B-6)粘度平均分子量(Mv)が180,000のポリエチレンを用いた。
【0067】
<(C)スチレン系熱可塑性エラストマー>
(C-1)スチレンを主体とするブロック:30質量%、重量平均分子量:80,000のスチレン-(エチレン・ブチレン)-スチレンブロック共重合体(SEBS)を用いた。
(C-2)スチレンを主体とするブロック:42質量%、重量平均分子量:80,000のスチレン-(エチレン・ブチレン)-スチレンブロック共重合体(SEBS)を用いた。
(C-3)スチレンを主体とするブロック:20質量%、重量平均分子量:100,000のスチレン-(エチレン・ブチレン)-スチレンブロック共重合体(SEBS)を用いた。
(C-4)スチレンを主体とするブロック:32質量%、重量平均分子量:160,000のスチレン-(エチレン・ブチレン)-スチレンブロック共重合体(SEBS)を用いた。
【0068】
〔特性の測定方法〕
(1)メルトボリュームフローレート(MVR)
得られた樹脂組成物のペレットについて、ISO1133に準じて、300℃、荷重5kgでMVR(cm/10min)を評価した。値が大きい程、流動性に優れていると判定した。
【0069】
(2)荷重撓み温度(DTUL)
得られた樹脂組成物のペレットを80℃で2時間乾燥した後、シリンダー温度280℃に設定した小型射出成形機(商品名:IS-100GN、東芝機械社製)に供給し、金型温度80℃の条件で評価用JIS K7139 ISOダンベルを作製した。また、該ISOダンベルを切削し、荷重撓み温度(DTUL)測定用テストピースを作製した。上記荷重撓み温度測定用テストピースを用いて、荷重撓み温度(DTUL、ISO 75:1.8MPa荷重)(℃)の測定を行った。値が大きいほど、耐熱性に優れていると判定した。
【0070】
(3)ノッチ付シャルピー衝撃強さ
上記(2)で成形したJIS K7139 ISOダンベルを用いて、シャルピー衝撃強さ測定用のテストピースを作製した。上記シャルピー衝撃強さ測定用のテストピースを用いて、ISO179に準じて23℃の温度条件下でノッチ付シャルピー衝撃強さ(kJ/m)を測定した。値が大きい程、耐衝撃性に優れていると判定した。
【0071】
(4)誘電率(Dk)・誘電正接(Df)
得られた樹脂組成物のペレットを80℃で2時間乾燥した後、シリンダー温度300℃に設定した射出成形機(型式:EC75SXII、東芝機械社製)に供給し、金型温度90℃の条件で55×55×0.9mmの平板試験片を作製した。試験片を23℃×50%RHの雰囲気下に24時間以上静置した後、23℃×50%RHの雰囲気下において、ネットワークアナライザー(型式:N5224B、キーサイト・テクノロジー社製)を用いて下記条件で誘電率・誘電正接を測定した。3個の試験片の平均値から誘電率・誘電正接を求め、これらの値が低いほど誘電特性が優れていると判断した。
(測定条件)
共振器:スプリットポスト誘電体共振器(型式:N1501AE19、キーサイト・テクノロジー社製)
周波数:10GHz
【0072】
〔実施例1~9及び比較例1~3〕
樹脂組成物の製造装置として二軸押出機[ZSK-26MC、コペリオン社製(ドイツ)]を用いた。原材料は、押出機シリンダーの全長を1.0とした時に上流からL=0の位置の上流供給口からホッパーを用いて供給した。上流供給口からL=0.4の位置までを320℃、それより下流側を280℃に設定し、スクリュー回転数は300回転/分、吐出量は10kg/hとした。
また、中央部と、ダイ直前のシリンダーブロックにそれぞれ開口部を設け、真空吸引することにより残存揮発分及びオリゴマーの除去を行った。この時の真空度(絶対圧力)は60Torrであった。
下記表1に記載の組成に従い、それぞれの原材料を供給し、溶融混練した。
押出機ダイ先端から押出したストランドは、冷却用水を張ったSUS製ストランドバスにて冷却を行った。その後、ストランドカッターにて切断して樹脂組成物ペレットを得た。
得られた樹脂組成物ペレットを用いて、上述の各評価を行った。その結果を下記表1に示す。
【0073】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の樹脂組成物は、耐熱性と耐衝撃性、流動性のバランスと誘電特性に優れるため、自動車部品、電気・電子機器部品、工業用部品、家庭用電気製品等の部材として好適に用いることができる。特に、優れた耐熱性と誘電特性を有していることから高周波用通信・電子機器用部品として好適に用いることができ、具体的には、筐体、アンテナ、コネクタ、スイッチ、フィルタ、変換器、カプラ、サーキュレータ、アイソレータ、コンデンサ、インダクタ、コイル、共振器、FPC等に用いることができる。