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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027192
(43)【公開日】2024-02-29
(54)【発明の名称】車載用アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/29 20060101AFI20240221BHJP
   H01Q 1/32 20060101ALI20240221BHJP
   H01Q 9/36 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
H01Q21/29
H01Q1/32 Z
H01Q9/36
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024006663
(22)【出願日】2024-01-19
(62)【分割の表示】P 2023510854の分割
【原出願日】2022-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2021054757
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】家田 寛人
(72)【発明者】
【氏名】小和板 和博
(72)【発明者】
【氏名】金子 卓
(57)【要約】
【課題】平面アンテナの指向性を容易に制御する。
【解決手段】第1周波数帯の電波に対応する第1アンテナと、前記第1周波数帯と異なる第2周波数帯の電波に対応する第2アンテナと、を備える。また、第2アンテナを構成するエレメントの少なくとも一部は、前記第1周波数帯で共振する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の周波数帯の信号を受信可能な複合アンテナ装置であって、前記複合アンテナ装置は、
アンテナベースと、
前記アンテナベース上に載置され第1周波数帯の信号を受信可能な、放射素子を有する第1アンテナと、
前記第1周波数帯よりも低い第2周波数帯の信号を受信可能な第2アンテナと、を備え、
前記第2アンテナは、前記アンテナベースに対して高さ方向に間隔を設けて配置される容量装荷素子を有し、
前記容量装荷素子は、上面視で前記第1アンテナの前記放射素子と非重複であり、前記容量装荷素子の長手方向の延長軸上に前記放射素子が位置するように前記放射素子近傍に配置されると共に、前記第1アンテナの指向性を制御するように、前記長手方向に交差するよう設けられた少なくとも1つの切り欠き部を含む、
複合アンテナ装置。
【請求項2】
前記容量装荷素子は、前記長手方向に延在する稜線部と、前記稜線部から延在する2つの側面部と、を含む山型形状であり、
前記切り欠き部は、一方の前記側面部の下端から前記稜線部を通り、他方の前記側面部の途中まで平行に延在する2本の第1スリットと、前記他方の側面部の下端から前記稜線部を通り、前記一方の側面部の途中まで延在し、かつ、前記2本の第1スリット間に平行に位置する第2スリットと、により構成される、
請求項1に記載の複合アンテナ装置。
【請求項3】
前記第2アンテナの前記切り欠き部は、前記第1アンテナの特性が良くなるように、前記容量装荷素子の長手方向の端部から所定の距離だけ離れる位置に配置される、
請求項1または2に記載の複合アンテナ装置。
【請求項4】
前記第1アンテナは、GNSS用アンテナからなる、
請求項1~3の何れか一項に記載の複合アンテナ装置。
【請求項5】
前記第1アンテナは、複数の周波数帯に対応する、
請求項1~4の何れか一項に記載の複合アンテナ装置。
【請求項6】
前記第2アンテナは、さらに、前記容量装荷素子に一端が接続されるコイルを有し、
前記第2アンテナは、AM/FM用アンテナとして機能する、
請求項1~5の何れか一項に記載の複合アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、GPS信号用の平面アンテナと、AM/FM用アンテナとがアンテナケース内に収容された車載用アンテナ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-21856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車載用アンテナ装置の構成によっては、平面アンテナの必要な指向性を確保することが困難である。
【0005】
本発明の目的の一例は、平面アンテナの指向性を容易に制御することである。本発明の他の目的は、本明細書の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、第1周波数帯の電波に対応する第1アンテナと、前記第1周波数帯と異なる第2周波数帯の電波に対応する第2アンテナと、を備え、前記第2アンテナを構成するエレメントの少なくとも一部は、前記第1周波数帯で共振する、車載用アンテナ装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、平面アンテナの指向性を容易に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車載用アンテナ装置10の構成を示す図である。
図2】パッチアンテナ30の分解斜視図である。
図3】金属体60Aの斜視図及び金属体60Aの側面図である。
図4】車載用アンテナ装置10Xの構成を示す図である。
図5】車載用アンテナ装置10及び車載用アンテナ装置10Xにおける、パッチアンテナ30の仰角と平均利得との関係の一例を示すグラフである。
図6】パッチアンテナ30と共振部61との離間距離D及び離間距離Hの説明図である。
図7】離間距離Dと平均利得との関係、及び、離間距離Hと平均利得との関係の一例を示すグラフである。
図8】変形例の共振部61A~共振部61Cを示す図である。
図9】変形例の共振部61D及び共振部61Eを示す図である。
図10】変形例の共振部61F及び共振部61Gを示す図である。
図11】車載用アンテナ装置80Aの構成を示す図であり、図11Aは、車載用アンテナ装置80Aの斜視図であり、図11Bは、車載用アンテナ装置80Aの側面図である。
図12】車載用アンテナ装置80B及び車載用アンテナ装置80Cの構成を示す図であり、図12Aは、車載用アンテナ装置80Bの側面図であり、図12Bは、車載用アンテナ装置80Cの側面図である。
図13】車載用アンテナ装置80Xの構成を示す図である。
図14】車載用アンテナ装置80C及び車載用アンテナ装置80Xにおける、パッチアンテナ30の特性を示すグラフであり、図14Aは、仰角と平均利得との関係の一例を示すグラフであり、図14Bは、仰角20°における指向性の一例を示すグラフである。
図15】パッチアンテナ30と共振部91との離間距離Dの説明図である。
図16】離間距離Dを変化させた場合の、仰角と平均利得との関係の一例を示すグラフである。
図17】パッチアンテナ30と共振部61との位置関係の別の例を示す図であり、図17A及び図17Bは、位置関係の第1例を示す側面図及び平面図であり、図17C及び図17Dは、位置関係の第2例を示す側面図及び平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を説明する。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。
【0011】
==第1実施形態の車載用アンテナ装置10の構成==
<構成の概要>
図1は、第1実施形態である車載用アンテナ装置10の構成を示す図である。なお、図1は、ケース23を天頂方向(上方向)に取り外した車載用アンテナ装置10の斜視図を示している。以下では、まず、図1を参照しつつ、車載用アンテナ装置10の構成の概要を説明する。
【0012】
図1において、車載用アンテナ装置10が取り付けられる車両の前後方向をX方向、X方向と垂直な左右方向をY方向、X方向とY方向とに垂直な鉛直方向をZ方向とする。また、車両の運転席からフロント側を+X方向とし、右側を+Y方向とし、天頂方向(上方向)を+Z方向とする。以下、本実施形態では、車載用アンテナ装置10の前後、左右、及び上下のそれぞれの方向は、車両の前後、左右、及び上下の方向と同じであるとして説明する。また、-Z方向に車載用アンテナ装置10を見る場合を「上面視」とし、+Y方向又は-Y方向に車載用アンテナ装置10を見る場合を「側面視」とする。
【0013】
なお、上述した方向等の定義については、特記した場合を除き、本明細書の他の実施形態においても共通である。
【0014】
車載用アンテナ装置10は、車両(不図示)上面のルーフに取り付けられるアンテナ装置である。車載用アンテナ装置10は、アンテナベース20と、ケース23と、パッチアンテナ30と、パッチアンテナ31と、アンテナ32とを有する。
【0015】
アンテナベース20は、車載用アンテナ装置10の底面を構成する部材である。アンテナベース20は、例えば、樹脂製の絶縁ベースと、金属ベース21と、金属ベース22とを含み、絶縁ベースに金属ベース21,22が複数のネジ(不図示)で取り付けられている。但し、絶縁ベースは、絶縁性であれば樹脂以外の材料で形成されても良く、板状以外の形状を有していても良い。
【0016】
金属ベース21は、車載用アンテナ装置10のグランドとして機能する部材である。金属ベース21は、例えば、金属製の板状に形成されている。但し、金属ベース21は、グランドとして機能する金属製の部材であれば板状以外の形状を有していても良い。金属ベース21には、パッチアンテナ30が設置されている。
【0017】
金属ベース22は、車載用アンテナ装置10のグランドとして機能する部材である。金属ベース22は、例えば、金属製の板状に形成されている。但し、金属ベース22は、グランドとして機能する金属製の部材であれば板状以外の形状を有していても良い。金属ベース22には、パッチアンテナ31及びアンテナ32が設置されている。
【0018】
本実施形態では、上述した金属ベース21と、金属ベース22とは、不図示の金属板により電気的に接続されている。また、車載用アンテナ装置10が不図示の車両のルーフに取り付けられる際、金属ベース21と、金属ベース22と、ルーフとは電気的に接続される。これにより、金属ベース21と、金属ベース22とは、車載用アンテナ装置10のグランドとして機能する。なお、本実施形態では、金属ベース21と、金属ベース22とが別体として設けられているが、一体の金属ベースとして設けられても良い。このような一体の金属ベースを用いた場合であっても、金属ベースは、後述するパッチアンテナ31及びアンテナ32のグランドとして適切に機能する。
【0019】
なお、上述では、車載用アンテナ装置10の底面を構成する部材、及び、グランドとして機能する部材として、車載用アンテナ装置10のアンテナベース20が、絶縁ベースと、金属ベース21と、金属ベース22とを有することについて説明した。しかし、車載用アンテナ装置10は、これらの構成に限られない。
【0020】
例えば、アンテナベース20は、金属ベース21及び金属ベース22のみを有していても良いし、あるいは、金属ベース21及び金属ベース22の代わりとなる一体の金属ベースのみを有していても良い。また、アンテナベース20は、絶縁ベースと、金属ベース21と、金属プレートとを有していても良い。また、車載用アンテナ装置10は、絶縁ベースと、金属ベース21及び金属ベース22の代わりとなる一体の金属ベースとを有していても良い。さらに、車載用アンテナ装置10は、絶縁ベースと、金属ベース21及び金属ベース22と、別の金属ベースとを有していても良く、金属ベースの代わりに金属プレートであっても良い。また、アンテナベース20は、絶縁ベースと金属プレートとを有していても良い。
【0021】
したがって、本実施形態の車載用アンテナ装置10は、車載用アンテナ装置10の底面を構成する部材、及び、グランドとして機能する部材として、上述の部材を自由に組み合わせることができる。
【0022】
ケース23は、車載用アンテナ装置10において外側を覆う部材(筐体)である。本実施形態では、ケース23は、図1に示されるように、一般的なシャークフィンアンテナの筐体である。
【0023】
パッチアンテナ30は、例えば、衛星デジタルラジオ放送サービス(SDARS:Satellite Digital Audio Radio Service)の2.3GHz帯の電波に対応する平面アンテナである。本実施形態では、パッチアンテナ30は、SDARS用の2.3GHz帯の電波を受信する。なお、パッチアンテナ30が対応する通信規格及び周波数帯は、上述のものに限定するものではなく、他の通信規格及び周波数帯であっても良い。また、パッチアンテナ30は、複数の周波数帯の電波に対応しても良く、所望の周波数帯の電波を送信及び受信のうち少なくとも何れかをすれば良い。
【0024】
以下の説明では、パッチアンテナ30を、「第1アンテナ」と称することがある。また、パッチアンテナ30が対応する電波の周波数帯を、「第1周波数帯」と称することがある。
【0025】
なお、パッチアンテナ30の詳細については、後述する。
【0026】
パッチアンテナ31は、例えば、全球測位衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)の1.5GHz帯の電波に対応する平面アンテナである。本実施形態では、パッチアンテナ31は、GNSS用の1.5GHz帯の電波を受信する。なお、パッチアンテナ31が対応する通信規格及び周波数帯は、上述のものに限定するものではなく、他の通信規格及び周波数帯であっても良い。また、パッチアンテナ31は、複数の周波数帯の電波に対応しても良く、所望の周波数帯の電波を送信及び受信のうち少なくとも何れかをすれば良い。
【0027】
アンテナ32は、例えば、AM/FMラジオ用の電波に対応するアンテナである。本実施形態では、アンテナ32は、522kHz~1710kHzのAM放送用の電波と、76MHz~108MHzのFM放送用の電波とを受信する。但し、アンテナ32は、AM放送用の電波と、FM放送用の電波との何れか一方のみを受信しても良い。なお、アンテナ32が対応する通信規格及び周波数帯は、上述のものに限定するものではなく、他の通信規格及び周波数帯であっても良い。さらに、アンテナ32は、所望の周波数帯の電波を送信及び受信のうち少なくとも何れかをすれば良い。
【0028】
以下の説明では、アンテナ32を、「第2アンテナ」と称することがある。また、アンテナ32が対応する電波の周波数帯を、「第2周波数帯」と称することがある。
【0029】
なお、アンテナ32の詳細については、後述する。
【0030】
<パッチアンテナ30(第1アンテナ)の詳細>
図2は、パッチアンテナ30の分解斜視図である。以下では、上述した図1とともに、図2を参照しつつ、パッチアンテナ30の詳細を説明する。
【0031】
パッチアンテナ30は、基板70と、誘電体部材72と、放射素子73と、保持部材74と、金属体75を有する。
【0032】
基板70は、誘電体部材72が設置される回路基板である。図2に示されるように、基板70は、金属ベース21に取り付けられる。
【0033】
誘電体部材72は、セラミック等の誘電体材料で形成されている、略四辺形の板状の部材である。図2に示されるように、誘電体部材72のおもて面及びうら面は、X方向及びY方向に対して平行であり、誘電体部材72のおもて面が+Z方向に向けられ、誘電体部材72のうら面は、-Z方向に向けられている。誘電体部材72のうら面には、パターン71が設けられている。パターン71は、地導体膜(または、地導体板)として機能する導体である。誘電体部材72のうら面は、例えば接着剤(不図示)により、基板70に取り付けられる。
【0034】
ここで、「略四辺形」とは、例えば、正方形や長方形を含む、4つの辺からなる形状をいい、例えば、少なくとも一部の角が辺に対して斜めに切り欠かれていても良い。また、「略四辺形」の形状では、辺の一部に切り込み(凹部)や出っ張り(凸部)が設けられていても良い。なお、誘電体部材72の形状は、略四辺形に限られず、例えば円形や楕円形であっても良い。また、誘電体部材72は、板状以外の形状を有していても良い。
【0035】
放射素子73は、誘電体部材72のおもて面の面積より小さい、導電性の略四辺形の部材である。図2に示されるように、放射素子73は、誘電体部材72のおもて面に設けられている。また、放射素子73の放射面の法線方向は、+Z方向である。なお、放射素子73の形状は、略四辺形に限られず、例えば円形や楕円形であっても良い。つまり、放射素子73は、所望の周波数帯の信号(電波)を受信及び送信の少なくとも一方が可能な形状であれば良い。
【0036】
なお、放射素子73は、図2に示されるように、給電点78を有する。給電点78は、図2に示される給電線77が放射素子73に電気的に接続される点である。本実施形態では、放射素子73に接続される給電線77が1本のみの構成、すなわち、1給電方式が採用されている。1給電方式の放射素子73は、例えば、所望の円偏波を送信及び受信の少なくとも一方が可能となるよう、縦、横の長さが異なる略長方形の形状を有する。なお、「略長方形」は、上述した「略四辺形」に含まれる形状である。
【0037】
但し、本実施形態では、放射素子73に接続される給電線77が2本設けられている構成、すなわち、2給電方式が採用されても良い。2給電方式の放射素子73は、例えば、所望の円偏波を送受信できるよう、縦、横の長さが等しい略正方形の形状を有する。なお、「略正方形」は、上述した「略四辺形」に含まれる形状である。
【0038】
本実施形態のパッチアンテナ30では、図2に示されるように、基板70及び誘電体部材72を貫通する貫通孔76が形成されている。貫通孔76は、給電線77が放射素子73の給電点78で接続されるように形成されている。なお、2給電方式の放射素子73では、基板70及び誘電体部材72を貫通する2つの貫通孔76が形成される。そして、各々の貫通孔76において、給電線77が放射素子73の給電点78で接続される。
【0039】
保持部材74は、金属体75を保持する部材である。保持部材74は、誘電体部材72のおもて面に、放射素子73を囲むよう、樹脂製で設けられている。但し、保持部材74は、金属体75を保持することができれば、樹脂以外で形成されても良い。保持部材74の上面のY軸に平行な2つの辺のうち、+X側の辺には、+Z方向に延びる凸部74Aが、-X側の辺には、+Z方向に延びる凸部74B及び凸部74Cが設けられている。凸部74A~凸部74Cの各々は、保持部材74に対する金属体75の位置を定めるために形成された、略直方体形状の突起である。但し、凸部74A~凸部74Cの各々は、保持部材74に対する金属体75の位置を定めることができれば、略直方体形状の突起として設けられなくても良い。また、保持部材74に凸部74A~凸部74Cが設けられなくても良い。また、保持部材74は、放射素子73の全周を囲む枠形状に限定されない。例えば、ケース23内に設けられた突起に金属体75が取り付けられる構造であっても良いし、ケース23内に設けられた溝部に金属体75を嵌め込む構造であっても良い。すなわち、ケース23が保持部材74を兼ねる構造であっても良い。
【0040】
金属体75は、放射素子73と容量結合されることにより、パッチアンテナ30の放射効率を向上させ、指向性を制御する部材である。金属体75は、保持部材74に保持される略正方形の天頂板(または、天頂容量板)であり、Y軸に平行な2つの辺のうち、+X側の辺には凹部75Aが、-X側の辺には凹部75B及び凹部75Cが設けられている。本実施形態では、保持部材74の凸部74A~凸部74Cの各々が、金属体75の凹部75A~凹部75Cに嵌め合わされた状態で、金属体75は、保持部材74のおもて面に配置される。但し、保持部材74に凸部74A~凸部74Cが設けられない場合、金属体75に凹部75A~凹部75Cが設けられなくても良い。
【0041】
なお、金属体75は、略正方形の板状であるとしたが、これに限られず、略正方形以外の略四辺形であっても良いし、円形や楕円形であっても良い。さらに、金属体75は、板状の金属板を屈曲させた立体形状であっても良い。金属体75は、例えば、金属板を屈曲させることにより、逆V字型、逆U字型、山型(傘型)、アーチ型の形状をしていても良い。また、金属体75は、板状以外の形状を有していても良い。
【0042】
<アンテナ32(第2アンテナ)の詳細>
図3Aは、後述する容量装荷素子60の金属体60Aの斜視図である。図3Bは、後述する容量装荷素子60の金属体60Aの側面図である。以下では、上述した図1とともに、図3A及び図3Bを参照しつつ、アンテナ32の詳細を説明する。
【0043】
アンテナ32は、ホルダ40と、ヘリカル素子50と、容量装荷素子60と、フィルタ100とを有する。
【0044】
ホルダ40は、ヘリカル素子50及び容量装荷素子60を保持する部材である。ホルダ40は、図1に示されるように、アンテナベース20に設けられている。また、ホルダ40は、例えば、樹脂で形成されている。但し、ホルダ40は、ヘリカル素子50及び容量装荷素子60を保持することができれば、樹脂以外で形成されても良い。
【0045】
ホルダ40は、図1に示されるように、支柱部41と、取付部42とを有する。支柱部41は、ヘリカル素子50が取り付けられる部位である。取付部42は、容量装荷素子60が取り付けられる部位である。なお、取付部42は、X方向が長手方向となり、下側(-Z方向)に向かって左右の幅が広くなる略台形の断面を有する。但し、取付部42は、上述の略台形の断面を有する形状に限られない。例えば、取付部42を前方又は後方から見た場合の断面形状が、略正方形、略長方形などの略四角形状であっても良いし、取付部42を前方又は後方から見た場合の外形が、逆V字型、逆U字型、山型(傘型)、アーチ型の形状であっても良い。
【0046】
ヘリカル素子(以下、単に「コイル」と称する)50は、容量装荷素子60とともに、所望周波数帯で共振する素子である。コイル50は、図1に示されるように、ホルダ40の支柱部41に取り付けられた状態で、金属ベース22の上方に設けられる。そして、コイル50の一端は、金属ベース22に電気的に接続され、コイル50の他端は、容量装荷素子60に電気的に接続される。
【0047】
容量装荷素子60は、コイル50とともに、所望周波数帯で共振する素子である。容量装荷素子60は、図1に示されるように、前後方向(長手方向)に沿って4つに分割された金属体60A~60Dで構成される。以下の説明では、「金属体」とは、金属の部材が加工されて形成されたものであり、例えば、金属板などの板状の金属部材の他に、板状以外の立体的な形状の金属部材を含む。
【0048】
本実施形態の金属体60A~60Dの各々は、図1図3A及び図3Bに示されるように、金属板のY軸方向の両端部を、中央のX-Y平面に略平行な底面の両端から上側に折り曲げて形成されている。以下の説明では、金属体60A~60Dの各々について、中央のX-Y平面に略平行な底面部分を、単に「底面部」と称することがある。また、底面部の両端から上側に折り曲げて形成された部分のうち、左側を、単に「左側面部」と、右側を、単に「右側面部」と称することがある。なお、図3A及び図3Bでは、金属体60A~60Dのうち、金属体60Aのみを示しているが、図1に示される金属体60B~金属体60Dについても、金属体60Aと同様に、底面部、左側面部及び右側面部を有する。
【0049】
本実施形態では、4つの金属体60A~60Dの前後方向の長さは、同じであるが、これに限られない。例えば、4つの金属体60A~60Dの前後方向の長さの各々が異なっていても良く、一部が同じ長さであっても良い。また、金属体60A~60Dの各々は底面部を有する形状をしているが、底面部を有さない金属体を含んでいても良い。
【0050】
また、本実施形態では、容量装荷素子60は、4つの金属体60A~60Dを有することとしたが、これに限られない。例えば、容量装荷素子60は、1つの金属体を有しても良いし、4つ以外の複数の金属体を有しても良い。また、容量装荷素子60は、中央の底面の両端から上側に折り曲げられる形状を有しているが、形状はこれに限られない。例えば、容量装荷素子60は、両端部から下側に折り曲げられても良い。また、容量装荷素子60を前方又は後方から見た場合の外形は、例えば、逆V字型、逆U字型、山型(傘型)、アーチ型の形状をしていても良い。
【0051】
フィルタ100は、4つの金属体60A~60Dを電気的に接続するとともに、パッチアンテナ30及びパッチアンテナ31に対応する電波の周波数帯では高インピーダンスとなる部材である。本実施形態では、3つのフィルタ100を有している。そして、3つのフィルタ100の各々は、図1に示されるように、左側面部における金属体60Aと金属体60Bとの隙間と、左側面部における金属体60Bと金属体60Cとの隙間と、左側面部における金属体60Cと金属体60Dとの隙間とに設けられている。また、フィルタ100は、パッチアンテナ30及びパッチアンテナ31が対応する電波の周波数帯で、例えば並列共振する回路であり、不図示のコンデンサやコイルを含んで構成される。
【0052】
なお、本実施形態のフィルタ100の設置位置や数は、図1に示される場合に限られない。フィルタ100は、金属体60A~60Dのうち、隣り合う金属体同士を接続する位置に配置されれば良い。このため、フィルタ100は、例えば、金属体60A~60Dの頂部を含む上方の位置、または、底面部を含む下方の位置に設けられても良い。また、フィルタ100は、容量装荷素子60の右側面部のみに配置されても良い。さらに、フィルタ100は、容量装荷素子60の左側面部と右側面部とに交互に配置されても良い。
【0053】
上述したように、4つの金属体60A~60Dは、パッチアンテナ30及びパッチアンテナ31が対応する電波の周波数帯では高インピーダンスになるフィルタ100を介して電気的に接続されている。また、コイル50は、パッチアンテナ30及びパッチアンテナ31が対応する電波の周波数帯で高インピーダンスとなるように設計されている。
【0054】
フィルタ100はAM/FMの周波数帯では低インピーダンスであるため、金属体60A~60Dの全てはAM/FMの周波数帯に対してコイル50とともに単一導体として動作する。すなわち、コイル50及び容量装荷素子60は、FMの周波数帯で共振するアンテナとして動作する。なお、以下の説明では、車載用アンテナ装置10において、所望の周波数帯で共振するよう設けられた部材を「素子」又は「エレメント」と称することがある。
【0055】
<共振部61>
ところで、上述した本実施形態の車載用アンテナ装置10は、パッチアンテナ30,パッチアンテナ31及びアンテナ32を有する、いわゆる複合アンテナ装置である。このような複合アンテナ装置では、アンテナ同士の電気的干渉を考慮しつつ、個々のアンテナにおいて必要な特性を確保する必要がある。上述した本実施形態の車載用アンテナ装置10は、例えば、パッチアンテナ30において、他のアンテナとの電気的干渉を考慮しつつ、必要な指向性を確保するために、エレメント(例えば、誘電体部材72や放射素子73など)の大きさや位置を調整することが可能である。
【0056】
しかし、車載用アンテナ装置10のケース23内のスペースは限られているため、例えば、パッチアンテナ30において、エレメントの大きさや位置を調整することにより必要な指向性を確保することには限界がある。そこで、以下では、パッチアンテナ30の指向性を容易に制御することが可能な車載用アンテナ装置10について説明する。
【0057】
上述したように、金属体60Aを含む容量装荷素子60は、コイル50とともにFMの周波数帯(第2周波数帯)で共振する。本実施形態では、容量装荷素子60は、図1及,図3A及び図3Bに示されるように、共振部61が設けられる。共振部61は、パッチアンテナ30(第1アンテナ)が対応する電波の周波数帯(第1周波数帯)で共振する部位である。なお、本実施形態では、金属体60Aの全体が、共振部61として機能する。したがって、金属体60Aは、AM/FMの周波数帯(第2周波数帯)の電波に対応するアンテナ32(第2アンテナ)のエレメントの一部であるとともに、共振部61を有することにより、パッチアンテナ30(第1アンテナ)が対応する電波の周波数帯(第1周波数帯)で共振する。
【0058】
また、本実施形態では、共振部61の電気長は、パッチアンテナ30(第1アンテナ)が対応する電波の周波数帯(第1周波数帯)で共振するように形成されている。例えば、共振部61は、第1周波数帯の波長の2分の1に相当する電気長で形成されている。ここで、「第1周波数帯の波長の2分の1」とは、正確な値に限られず、所望の周波数帯で共振する値であれば良い。これは、第1周波数帯の波長が必ずしも割り切れる整数で表現されないことや、実際の共振部61の電気長が、様々な要因により変化するためである。なお、共振部61の電気長は、第1周波数帯で共振するように形成されていれば、第1周波数帯の波長の2分の1に相当するように形成されなくても良い。
【0059】
図3A及び図3Bに示されるように、金属体60Aには、スリット62が設けられている。スリット62は、金属体60Aの外縁から内側に向かって形成される切れ込み(隙間)である。金属体60Aの左側面部には、図3Bに示されるように、Z方向に並んだ3つのスリット62が設けられている。3つのスリット62は、+Z方向の順に見たときに、-X方向に形成されるスリット62と、+X方向に形成されるスリット62と、-X方向に形成されるスリット62とで構成されている。
【0060】
これにより、金属体60Aの左側面部には、図3Bに示されるように、3つの折返し64が設けられる。3つの折返し64は、+Z方向の順に見たときに、金属体60Aの+X方向側と、金属体60Aの-X方向側と、金属体60Aの+X方向側に設けられる。これにより、共振部61は、金属体60Aにおいて水平方向の折返し64を繰り返して(すなわち、ミアンダ形状で)形成される。本実施形態では、スリット62の水平方向の長さを調整するなどして、第1周波数帯で共振する電気長(例えば、第1周波数帯の波長の2分の1に相当する電気長)を形成することができる。
【0061】
なお、スリット62の数、位置、及び、延びる方向等は、図3A及び図3Bに示される場合に限られない。例えば、金属体60Aに1つのスリット62が設けられても良い。この場合、金属体60Aに1つの折返し64が設けられることになる。また、例えば、金属体60Aに3つ以外の複数のスリット62が設けられても良い。この場合、スリット62の数に対応する折返し64が設けられることになる。
【0062】
また、図3A及び図3Bでは、金属体60Aの左側面部のみにスリット62が設けられているが、例えば、金属体60Aの底面部にもスリット62が設けられても良い。
【0063】
また、図3Bに示される側面視において、スリット62の延びる方向は水平方向のみに限られず、鉛直方向であっても良い。ここで、「水平方向」又は「鉛直方向」とは、厳密な方向に限られず、所定の角度以内でずれている方向を含むこととする。これは、必ずしも金属体60Aの各部位(底面部、左側面部又は右側面部)が「水平方向」又は「鉛直方向」に平行に設けられていないためである。また。図3A及び図3Bでは、スリット62は、水平方向に沿って延びるように設けられているが、スリット62が途中から折れ曲がって設けられても良い。
【0064】
したがって、本実施形態の共振部61の電気長が、パッチアンテナ30(第1アンテナ)が対応する電波の周波数帯(第1周波数帯)で共振するように形成されるのであれば、上述のスリット62の数、位置、延びる方向等を自由に組み合わせることができる。
【0065】
なお、金属体60Aの左側面部にスリット62が設けられていることと同様に、金属体60Aの右側面部にもスリット62が設けられている。そして、スリット62の数、位置、延びる方向等は、図3Aに示されるように、金属体60Aの左側面部と、金属体60Aの右側面部とで同じである。但し、スリット62の数、位置、延びる方向等は、金属体60Aの左側面部と、金属体60Aの右側面部とで異なっても良い。
【0066】
上述では、金属体60Aが共振部61を有するとして説明したが、これに限られない。容量装荷素子60を構成する金属体60A~金属体60Dの少なくとも1つの金属体が、共振部61を有すれば良い。つまり、例えば、金属体60Bのみが共振部61を有しても良いし、金属体60Cと金属体60Dとが共振部61を有しても良い。さらに、容量装荷素子60が1つの金属体である場合に、1つの金属体が共振部61を有しても良い。したがって、アンテナ32(第2アンテナ)を構成するエレメントの少なくとも一部が、パッチアンテナ30(第1アンテナ)が対応する電波の周波数帯(第1周波数帯)で共振すれば良い。
【0067】
==比較例の車載用アンテナ装置10Xの構成==
図4は、比較例の車載用アンテナ装置10Xの構成を示す図である。車載用アンテナ装置10Xは、アンテナ32の容量装荷素子60において共振部61が設けられていない車載用アンテナ装置である。なお、車載用アンテナ装置10Xは、共振部61が設けられていないこと以外は、上述した本実施形態の車載用アンテナ装置10と同様の構成を備える。
【0068】
==車載用アンテナ装置10と車載用アンテナ装置10Xとの特性の比較==
以下では、車載用アンテナ装置10及び車載用アンテナ装置10Xにおける、パッチアンテナ30の仰角と平均利得とを計算した結果を説明する。
【0069】
図5は、車載用アンテナ装置10及び車載用アンテナ装置10Xにおける、パッチアンテナ30の仰角と平均利得との関係の一例を示すグラフである。図5において、横軸は仰角を示し、縦軸は平均利得を示している。また、図5において、車載用アンテナ装置10Xにおける計算結果を破線で示し、車載用アンテナ装置10における計算結果を実線で示している。なお、これら破線上の□印及び実線上の●印は、横軸の数値に対する縦軸の数値の位置を示すものであり、それらを区別するために便宜上□印と●印で示している。なお、以下の説明では、平均利得のことを単に「利得」と称することがある。
【0070】
図5に示されるように、比較例の車載用アンテナ装置10Xにおける利得と、本実施形態の車載用アンテナ装置10における利得とを比較すると、20°~65°の範囲において、本実施形態の車載用アンテナ装置10における利得が、比較例の車載用アンテナ装置10Xにおける利得よりも高くなっている。したがって、本実施形態の車載用アンテナ装置10は、例えば、衛星から送信される電波を受信するアンテナ装置として、パッチアンテナ30の低仰角~中仰角の少なくとも一部の仰角の範囲における平均利得が改善され、理想的な指向性を有することになる。ここで、仰角は、水平方向の角度を0°とし、天頂角を90°としている。また、低仰角とは、例えば、0°~30°の範囲をいう。また、中仰角とは、30°~60°の範囲をいう。また、高仰角とは、60°~90°の範囲をいう。
【0071】
したがって、車載用アンテナ装置10においてパッチアンテナ30の指向性が向上される結果、例えば衛星からの到来電波を効率的に受信することができる。このように、本実施形態の車載用アンテナ装置10は、共振部61を有することにより、パッチアンテナ30の指向性を容易に制御することができる。
【0072】
上述では、パッチアンテナ30の指向性について説明した。本実施形態の車載用アンテナ装置10は、詳細な説明は省略するが、別の共振部61を有することにより、パッチアンテナ30とは別のパッチアンテナ31の指向性も容易に制御することができる。つまり、本実施形態の車載用アンテナ装置10は、パッチアンテナ30やパッチアンテナ31などの平面アンテナの指向性を容易に制御することができる。
【0073】
==パッチアンテナ30と共振部61との離間距離==
ここで、図1に示される上面視及び側面視において、パッチアンテナ30と、共振部61とは、互いに非重複である。そして、パッチアンテナ30と共振部61とが、水平方向又は鉛直方向において所定距離離間しているとき、パッチアンテナ30が対応する電波の位相と、共振部61が設けられるアンテナ32が対応する電波の位相とが強め合う。本実施形態の車載用アンテナ装置10では、この電波の位相が強め合う離間距離を有するとき、パッチアンテナ30の利得がより改善する。そこで、以下では、パッチアンテナ30が対応する電波の位相と、アンテナ32が対応する電波の位相とが強め合う離間距離を検証する。
【0074】
図6は、離間距離D及び離間距離Hの説明図である。
【0075】
離間距離Dは、図6に示されるような側面視において、パッチアンテナ30と、アンテナ32の共振部61との水平方向(X方向)の離間距離である。具体的には、離間距離Dは、水平方向において、パッチアンテナ30の最も共振部61側の端と、共振部61の最もパッチアンテナ30側の端との間の距離である。
【0076】
離間距離Hは、図6に示されるような側面視において、パッチアンテナ30と、アンテナ32の共振部61との鉛直方向(Z方向)の離間距離である。具体的には、離間距離Hは、鉛直方向において、パッチアンテナ30の最も共振部61側の端と、共振部61の最もパッチアンテナ30側の端との間の距離である。
【0077】
図7Aは、離間距離Dと平均利得との関係の一例を示すグラフである。図7Bは、離間距離Hと平均利得との関係の一例を示すグラフである。
【0078】
図7Aにおいて、横軸は離間距離Dを示し、縦軸はパッチアンテナ30の平均利得を示している。図7Bにおいて、横軸は離間距離Hを示し、縦軸はパッチアンテナ30の平均利得を示している。また、図7A及び図7Bの各々において、パッチアンテナ30の仰角20°における計算結果を一点鎖線で示し、パッチアンテナ30の仰角50°における計算結果を実線で示している。また、パッチアンテナ30の必要な利得の基準として、仰角50°における平均利得の基準値をA線で示し、仰角20°における平均利得の基準値をB線で示している。
【0079】
図7Aに示されるように、仰角50°において、離間距離Dを30mm以上とすれば、平均利得の基準値(A線)以上となり、パッチアンテナ30の必要な利得が得られることがわかる。また、離間距離Dを30mm以上において、仰角20°においても、平均利得の基準値(B線)以上である。
【0080】
また、図7Bに示されるように、仰角50°において、離間距離Hを30mm以上とすれば、平均利得の基準値(A線)以上となり、パッチアンテナ30の必要な利得が得られることがわかる。また、離間距離Dを30mm以上において、仰角20°においても、平均利得の基準値(B線)以上である。
【0081】
したがって、以上から、パッチアンテナ30と共振部61とは、水平方向又は鉛直方向において、30mm以上離間することで、パッチアンテナ30の必要な利得が得られることがわかる。ここで、30mmは、パッチアンテナ30(第1アンテナ)が対応する電波の周波数帯(第1周波数帯)の波長の4分の1に相当する。したがって、本実施形態の車載用アンテナ装置10では、第1アンテナ(パッチアンテナ30)と共振部61とは、水平方向又は鉛直方向において、第1周波数帯の波長の4分の1以上離間することが望ましい。
【0082】
ここで、「第1周波数帯の波長の4分の1」とは、正確な値に限られず、パッチアンテナ30の必要な利得が得られる値であれば良い。これは、第1周波数帯の波長が必ずしも割り切れる整数で表現されないことや、実際の共振部61の電気長が、様々な要因により変化するためである。また、パッチアンテナ30と共振部61との望ましい離間距離についても、パッチアンテナ30の必要な平均利得の基準値(A線、B線)によって変化するため、第1アンテナ(パッチアンテナ30)と共振部61とは、水平方向又は鉛直方向において、第1周波数帯の波長の4分の1以上離間していなくても良い。
【0083】
==共振部61の変形例==
図8A図8Cは、変形例の共振部61A~共振部61Cを示す図である。
【0084】
上述した共振部61は、金属体60Aにおいて水平方向の折返し64を繰り返して形成されていた。しかし、共振部61は、この形状に限られない。図8Aに示される共振部61Aのように、金属体60Aの左側面部、底面部及び右側面部をまたぐように、Y-Z平面に略平行なスリット62が設けられても良い。
【0085】
金属体60Aには、図8Aに示されるように、X方向に並んだ2つのスリット62が設けられている。2つのスリット62は、-X方向の順に見たときに、左側面側~底面側~右側面側の方向に形成されるスリット62と、右側面側~底面側~左側面側の方向に形成されるスリット62とで構成されている。
【0086】
これにより、金属体60Aには、図8Aに示されるように、2つの折返し64が設けられる。2つの折返し64は、左側面部と、右側面部に設けられる。これにより、共振部61Aは、金属体60Aにおいて鉛直方向の折返し64を繰り返して形成される。共振部61Aでは、スリット62の長さを調整するなどして、第1周波数帯で共振する電気長(例えば、第1周波数帯の波長の2分の1に相当する電気長)を形成することができる。
【0087】
上述した共振部61及び共振部61Aは、スリット62が形成されていた。しかし、共振部を第1周波数帯で共振する電気長で形成するためには、スリット62を形成するだけに限られない。図8B及び図8Cに示される共振部61B及び共振部61Cのように、スロット63が形成されても良い。スロット63は、金属体60Aに形成された開口(孔又は隙間)である。
【0088】
共振部61Bには、図8Bに示されるように、金属体60Aの左側面部及び右側面部において、水平方向の折返しを繰り返すスロット63が設けられている。そして、金属体60Aの底面側において、左側面部のスロット63と、右側面部のスロット63とが接続されている。
【0089】
共振部61Cは、図8Cに示されるように、金属体60Aの左側面部、底面部及び右側面部をまたぐようにスロット63が設けられ、スロット63は、鉛直方向の折返しを繰り返している。
【0090】
図8Bで示される共振部61B、及び、図8Cに示される共振部61Cにおいても、スロット63の長さを調整するなどして、第1周波数帯で共振する電気長(例えば、第1周波数帯の波長の2分の1に相当する電気長)を形成することができる。
【0091】
図9A及び図9Bは、変形例の共振部61D及び共振部61Eを示す図である。図10A及び図10Bは、変形例の共振部61F及び共振部61Gを示す図である。
【0092】
上述した共振部61,共振部61A~共振部61Cは、中央の底面の両端部から上側に折り曲げられる形状を有する金属体60Aに設けられていた。しかし図9及び図10に示される共振部61D~共振部61Gのように、共振部は、山型(傘型)の金属体に設けられても良い。なお、山型(傘型)の金属体とは、左側面部及び右側面部の互いの上縁部が接続されており、前方又は後方から見た場合の金属体の外形が、逆V字型、逆U字型、アーチ型、略台形形状である構成を含む。
【0093】
図9Aに示される共振部61Dは、山型(傘型)の金属体に形成され、スリット62により、水平方向の折返し64を繰り返して形成される。また、図9Bに示される共振部61Eは、山型(傘型)の金属体に形成され、スリット62により、鉛直方向の折返し64を繰り返して形成される。
【0094】
また、図10Aに示される共振部61Fは、山型(傘型)の金属体に形成され、水平方向の折返しを繰り返すスロット63が形成されている。また、図10Bに示される共振部61Gは、山型(傘型)の金属体に形成され、鉛直方向の折返しを繰り返すスロット63が形成されている。
【0095】
図9A図10Bに示される共振部61D及び共振部61Gにおいても、スリット62又はスロット63の長さを調整するなどして、第1周波数帯で共振する電気長(例えば、第1周波数帯の波長の2分の1に相当する電気長)を形成することができる。
【0096】
上述の第1実施形態では、第1アンテナとしてのパッチアンテナ30と、第2アンテナとしてのAM/FMラジオ用のアンテナ32とを有する、複合アンテナ装置である車載用アンテナ装置10について説明した。具体的には、アンテナ32の容量装荷素子60は、コイル50とともにFMの周波数帯(第2周波数帯)で共振し、さらに、パッチアンテナ30(第1アンテナ)が対応する電波の周波数帯(第1周波数帯)で共振する共振部61を有する。
【0097】
しかし、第2アンテナは、AM/FMラジオ用のアンテナに限られず、他の通信規格及び周波数帯に対応するアンテナであっても良い。例えば、後述する車載用アンテナ装置80A~80Cのように、第2アンテナは、テレマティクス用のアンテナであっても良い。
【0098】
==第2実施形態の車載用アンテナ装置80A~80Cの構成==
<第1例の車載用アンテナ装置80A>
図11は、車載用アンテナ装置80Aの構成を示す図である。なお、図11Aは、車載用アンテナ装置80Aの斜視図であり、図11Bは、車載用アンテナ装置80Aの側面図である。
【0099】
車載用アンテナ装置80Aは、アンテナベース20と、パッチアンテナ30と、アンテナ33Aとを有する。なお、本実施形態では、車載用アンテナ装置80Aにおいて外側を覆う部材(筐体)、すなわち、図1に示される第1実施形態の車載用アンテナ装置10におけるケース23に相当する部材の図示を省略している。
【0100】
本実施形態のアンテナベース20は、第1実施形態の車載用アンテナ装置10におけるアンテナベース20と同様であるため、詳細な説明を省略する。また、本実施形態のパッチアンテナ30も、第1実施形態の車載用アンテナ装置10におけるパッチアンテナ30と同様であるため、詳細な説明を省略する。また、図11A及び図11Bでは、図2に示されるパッチアンテナ30における保持部材74や金属体75に相当する部材の図示を省略している。
【0101】
アンテナ33Aは、テレマティクス用のアンテナである。アンテナ33Aは、例えば、LTE(Long Term Evolution)に使用される700MHzから2.7GHz帯の電波や、5G(第5世代移動通信システム)に使用されるSub-6帯、つまり3.6GHz帯から6GHz未満の周数帯の電波に対応するアンテナである。但し、アンテナ33Aが対応する通信規格及び周波数帯は、上述のものに限定するものではなく、他の通信規格及び周波数帯であっても良い。
【0102】
アンテナ33Aは、例えば、V2X(Vehicle to Everything:車車間通信、路車間通信)、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、DABに使用される周波数帯の電波に対応するアンテナであっても良い。さらに、アンテナ33Aは、キーレスエントリー用のアンテナや、スマートエントリー用のアンテナであっても良い。
【0103】
また、アンテナ33Aは、MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)による通信に対応するアンテナであっても良い。この場合、車載用アンテナ装置80Aがアンテナ33Aと同様のアンテナをさらに有することにより、車載用アンテナ装置80Aは、MIMOによる通信に対応する。MIMOによる通信を行う車載用アンテナ装置80Aでは、車載用アンテナ装置80Aを構成する複数のアンテナの各々からデータを送信し、複数のアンテナで同時にデータを受信する。
【0104】
したがって、本実施形態の車載用アンテナ装置80Aは、パッチアンテナ30及びアンテナ33Aを有する複合アンテナ装置である。このような車載用アンテナ装置80Aにおいても、第1実施形態の車載用アンテナ装置10と同様に、後述する共振部91を有することにより、パッチアンテナ30の指向性を容易に制御することができる。
【0105】
なお、第1実施形態の車載用アンテナ装置10と異なり、以下の説明では、車載用アンテナ装置80Aのアンテナ33Aを、「第2アンテナ」と称することがある。また、アンテナ33Aが対応する電波の周波数帯を、「第2周波数帯」と称することがある。
【0106】
アンテナ33A(第2アンテナ)は、アンテナ33Aが対応する電波の周波数帯(第2周波数帯)で共振するエレメント90Aを有する。そして、エレメント90Aには、図11A及び図11Bに示されるように、共振部91が設けられる。共振部91は、パッチアンテナ30(第1アンテナ)が対応する電波の周波数帯(第1周波数帯)で共振する部位である。なお、本実施形態では、図11A及び図11Bの破線で示されるように、ミアンダ形状に形成されるエレメント90Aの一部が、共振部91として機能する。したがって、共振部91は、テレマティクス用の周波数帯(第2周波数帯)の電波に対応するアンテナ33A(第2アンテナ)のエレメント90Aの一部であるとともに、パッチアンテナ30(第1アンテナ)が対応する電波の周波数帯(第1周波数帯)で共振する。
【0107】
具体的には、共振部91の電気長は、パッチアンテナ30(第1アンテナ)が対応する電波の周波数帯(第1周波数帯)で共振するように形成されている。例えば、共振部91は、第1周波数帯の波長の4分の1に相当する電気長で形成されている。ここで、「第1周波数帯の波長の4分の1」とは、正確な値に限られず、所望の周波数帯で共振する値であれば良い。これは、第1周波数帯の波長が必ずしも割り切れる整数で表現されないことや、実際の共振部91の電気長が、様々な要因により変化するためである。なお、共振部91の電気長は、第1周波数帯で共振するように形成されていれば、第1周波数帯の波長の4分の1に相当するように形成されなくても良い。
【0108】
図11Bに示されるように、エレメント90Aには、スリット92が設けられている。スリット92は、エレメント90Aの外縁から内側に向かって形成される切れ込み(隙間)である。エレメント90Aには、図11Bに示されるように、2つのスリット92が設けられている。2つのスリット92は、図11Bに示される側面視において、エレメント90Aの上端から-Z方向に形成され、+X方向に折れ曲がって延在するスリット92と、-X方向に形成されるスリット92とで構成されている。
【0109】
これにより、エレメント90Aの一部には、図11Bに示されるように、2つの折返し93が設けられる。2つの折返し93は、+Z方向の順に見たときに、エレメント90Aの+X方向側と、エレメント90Aの-X方向側に設けられる。これにより、共振部91は、エレメント90Aにおいて水平方向の折返し93を繰り返して(すなわち、ミアンダ形状で)形成される。本実施形態では、スリット92の水平方向の長さを調整するなどして、第1周波数帯で共振する電気長(例えば、第1周波数帯の波長の4分の1に相当する電気長)を形成することができる。
【0110】
なお、スリット92の数、位置、及び、延びる方向等は、図11Bに示される場合に限られない。例えば、エレメント90Aに1つのスリット92が設けられても良い。この場合、スリット92に1つの折返し93が設けられることになる。また、例えば、エレメント90Aに2つ以外のスリット92が設けられても良い。この場合、スリット92の数に対応する折返し93が設けられることになる。
【0111】
また、図11Bに示される側面視において、スリット92の延びる方向は水平方向のみに限られず、鉛直方向であっても良い。また。図11Bでは、一方のスリット92が途中から折れ曲がって設けられているが、水平方向のみに沿って延びるように設けられても良い。また、共振部91は、エレメント90Aにおいて鉛直方向の折返しを繰り返して形成されても良い。さらに、エレメント90Aにおいて、スリットではなく、スロットが形成されても良い。
【0112】
したがって、本実施形態の共振部91の電気長が、パッチアンテナ30(第1アンテナ)が対応する電波の周波数帯(第1周波数帯)で共振するように形成されるのであれば、上述のスリット92又はスロットの数、位置、延びる方向等を自由に組み合わせることができる。
【0113】
なお、共振部91が第1周波数帯で共振するのであれば、エレメント90Aの一部がミアンダ形状に形成される構成でなくても良い。例えば、後述する車載用アンテナ装置80B及び車載用アンテナ装置80Cでは、アンテナのエレメントの幅が、第1周波数帯で共振する所定の長さに形成されている。
【0114】
図12は、車載用アンテナ装置80B及び車載用アンテナ装置80Cの構成を示す図である。なお、図12Aは、車載用アンテナ装置80Bの側面図であり、図12Bは、車載用アンテナ装置80Cの側面図である。
【0115】
<第2例の車載用アンテナ装置80B>
車載用アンテナ装置80Bは、アンテナベース20と、パッチアンテナ30と、テレマティクス用のアンテナであるアンテナ33Bとを有する。車載用アンテナ装置80Bの構成は、アンテナ33Bの形状が、上述した車載用アンテナ装置80Aにおけるアンテナ33Aの形状と異なる以外は、車載用アンテナ装置80Aの構成と同様である。このため、以下では、アンテナ33Bの詳細についてのみ説明する。
【0116】
なお、以下の説明では、車載用アンテナ装置80Bのアンテナ33Bを、「第2アンテナ」と称することがある。また、アンテナ33Bが対応する電波の周波数帯を、「第2周波数帯」と称することがある。
【0117】
アンテナ33B(第2アンテナ)は、アンテナ33Bが対応する電波の周波数帯(第2周波数帯)で共振するエレメント90Bを有する。また、車載用アンテナ装置80Bでは、エレメント90Bの幅W1が、パッチアンテナ30(第1アンテナ)が対応する電波の周波数帯(第1周波数帯)の波長の4分の1に相当する電気長で形成されている。これにより、エレメント90Bの一部が、第1周波数帯で共振する共振部91として機能する。したがって、共振部91は、テレマティクス用の周波数帯(第2周波数帯)の電波に対応するアンテナ33B(第2アンテナ)のエレメント90Bの一部であるとともに、パッチアンテナ30(第1アンテナ)が対応する電波の周波数帯(第1周波数帯)で共振する。
【0118】
なお、テレマティクス用のアンテナであるアンテナ33Bのエレメント90Bは、図12Aに示される形状に限られず、図12Bに示されるように、他の形状を有していてもよい。
【0119】
<第3例の車載用アンテナ装置80C>
車載用アンテナ装置80Cは、アンテナベース20と、パッチアンテナ30と、テレマティクス用のアンテナであるアンテナ33Cとを有する。車載用アンテナ装置80Cの構成は、アンテナ33Cの形状が、上述した車載用アンテナ装置80Bにおけるアンテナ33Bの形状と異なる以外は、車載用アンテナ装置80Bの構成と同様である。このため、以下では、アンテナ33Cの詳細についてのみ説明する。
【0120】
なお、以下の説明では、車載用アンテナ装置80Cのアンテナ33Cを、「第2アンテナ」と称することがある。また、アンテナ33Cが対応する電波の周波数帯を、「第2周波数帯」と称することがある。
【0121】
アンテナ33Cは、アンテナ33C(第2アンテナ)が対応する電波の周波数帯(第2周波数帯)で共振するエレメント90Cを有する。アンテナ33Cのエレメント90Cは、図12Aに示されるアンテナ33Bのエレメント90Bと比較すると、上端が斜めに形成されている。
【0122】
また、車載用アンテナ装置80Cでは、エレメント90Cの幅W2が、パッチアンテナ30(第1アンテナ)が対応する電波の周波数帯(第1周波数帯)の波長の4分の1に相当する電気長で形成されている。これにより、エレメント90Cの一部が、第1周波数帯で共振する共振部91として機能する。したがって、共振部91は、テレマティクス用の周波数帯(第2周波数帯)の電波に対応するアンテナ33C(第2アンテナ)のエレメント90Cの一部であるとともに、パッチアンテナ30(第1アンテナ)が対応する電波の周波数帯(第1周波数帯)で共振する。
【0123】
ここで、後述する比較例の車載用アンテナ装置80Xを用いて、車載用アンテナ装置80Xにおけるパッチアンテナ30の特性と、本実施形態の第3例の車載用アンテナ装置80Cにおけるパッチアンテナ30の特性との比較を説明する。
【0124】
==比較例の車載用アンテナ装置80Xの構成==
図13は、比較例の車載用アンテナ装置80Xの構成を示す図である。車載用アンテナ装置80Xは、図13に示されるように、パッチアンテナ30のみを有する車載用アンテナ装置である。そこで、以下の説明では、車載用アンテナ装置80Xを、「パッチアンテナ単体モデル」と称することがある。
【0125】
車載用アンテナ装置80Xは、言い換えれば、上述の車載用アンテナ装置80Cから、アンテナ33Cを取り除いた車載用アンテナ装置である。なお、車載用アンテナ装置80Xは、アンテナ33Cが設けられていないこと以外は、上述した本実施形態の第3例の車載用アンテナ装置80Cと同様の構成を備える。
【0126】
==車載用アンテナ装置80Cと車載用アンテナ装置80Xとの特性の比較==
以下では、車載用アンテナ装置80C及び車載用アンテナ装置80Xにおける、パッチアンテナ30の特性を計算した結果を説明する。
【0127】
図14は、車載用アンテナ装置80C及び車載用アンテナ装置80Xにおける、パッチアンテナ30の特性を示すグラフである。なお、図14Aは、仰角と平均利得との関係の一例を示すグラフであり、図14Bは、仰角20°における指向性の一例を示すグラフである。
【0128】
図14Aにおいて、横軸は仰角を示し、縦軸は平均利得を示している。また、図14Aにおいて、車載用アンテナ装置80Xにおける計算結果を破線で示し、車載用アンテナ装置80Cにおける計算結果を実線で示している。なお、これら破線上の○印及び実線上の△印は、横軸の数値に対する縦軸の数値の位置を示すものであり、それらを区別するために便宜上○印と△印で示している。なお、以下の説明では、平均利得のことを単に「利得」と称することがある。
【0129】
図14A及び図14Bに示されるように、比較例の車載用アンテナ装置80Xにおける利得と、本実施形態の車載用アンテナ装置80Cにおける利得とを比較すると、特に低仰角の範囲において、本実施形態の車載用アンテナ装置80Cにおける利得が、比較例の車載用アンテナ装置80Xにおける利得よりも高くなっている。したがって、本実施形態の車載用アンテナ装置80Cは、例えば、衛星から送信される電波を受信するアンテナ装置として、パッチアンテナ30の低仰角~中仰角の少なくとも一部の仰角の範囲における平均利得が改善され、理想的な指向性を有することになる。
【0130】
したがって、本実施形態の車載用アンテナ装置80Cにおいてパッチアンテナ30の指向性が向上される結果、例えば衛星からの到来電波を効率的に受信することができる。このように、本実施形態の車載用アンテナ装置80Cは、共振部91を有することにより、パッチアンテナ30の指向性を容易に制御することができる。また、詳細な検証の説明は省略するが、上述した車載用アンテナ装置80A及び車載用アンテナ装置80Bも、共振部91を有することにより、パッチアンテナ30の指向性を容易に制御することができる。
【0131】
ここで、図11B図12A及び図12Bに示される側面視において、本実施形態の車載用アンテナ装置80A~80Cにおけるパッチアンテナ30と、共振部91とは、互いに非重複である。また、不図示であるが、上面視においても、本実施形態の車載用アンテナ装置80A~80Cにおけるパッチアンテナ30と、共振部91とは、互いに非重複である。
【0132】
上述した第1実施形態の車載用アンテナ装置10と同様に、本実施形態の車載用アンテナ装置80A~80Cにおいても、パッチアンテナ30と共振部91とが、水平方向又は鉛直方向において所定距離離間している。このとき、パッチアンテナ30が対応する電波の位相と、共振部91が設けられるアンテナ33A~33Cが対応する電波の位相とが強め合う。そこで、以下では、パッチアンテナ30が対応する電波の位相と、アンテナ33A~33Cのうち、アンテナ33Cが対応する電波の位相とが強め合う離間距離を検証する。
【0133】
図15は、パッチアンテナ30と共振部91との離間距離Dの説明図である。
【0134】
離間距離Dは、図15に示されるような側面視において、パッチアンテナ30と、アンテナ33Cの共振部91との水平方向(X方向)の離間距離である。具体的には、離間距離Dは、水平方向において、パッチアンテナ30の最も共振部91側の端と、共振部91の最もパッチアンテナ30側の端との間の距離である。
【0135】
図16は、離間距離Dを変化させた場合の、仰角と平均利得との関係の一例を示すグラフである。
【0136】
図16において、横軸は仰角を示し、縦軸は平均利得を示している。また、図16において、比較例の車載用アンテナ装置80Xにおける計算結果を破線で示し、離間距離Dを変化させた場合の本実施形態の車載用アンテナ装置80Cにおける計算結果を複数の実線で示している。そして、離間距離Dを8mm、16mm、32mm、64mm、128mm、256mmと変化させた場合の計算結果を、実線上の△印や□印を使って示している。なお、これら実線上の△印や□印は、横軸の数値に対する縦軸の数値の位置を示すものであり、それらを区別するために便宜上△印と□印で示している。なお、以下の説明では、平均利得のことを単に「利得」と称することがある。
【0137】
図16に示されるように、離間距離Dが8mmの場合、特に低仰角の範囲において、車載用アンテナ装置80Cにおける利得は、車載用アンテナ装置80X(パッチアンテナ単体モデル・○印)の利得よりも低くなっている。一方、離間距離Dが16mm、32mm、64mm、128mm、256mmの場合、少なくとも低仰角の範囲において、車載用アンテナ装置80Cにおける利得は、車載用アンテナ装置80X(パッチアンテナ単体モデル・○印)の利得よりも高くなっている。
【0138】
これにより、離間距離Dが16mm以上の場合、車載用アンテナ装置80Cのパッチアンテナ30の特性は、パッチアンテナ単体モデルよりも向上することがわかる。ここで、16mmは、パッチアンテナ30(第1アンテナ)が対応する電波の周波数帯(第1周波数帯)の波長の8分の1に相当する。したがって、本実施形態の車載用アンテナ装置80Cでは、第1アンテナ(パッチアンテナ30)と共振部91とは、水平方向において、第1周波数帯の波長の8分の1以上離間することが望ましい。
【0139】
なお、図16に示されるように、離間距離Dが128mmの場合、車載用アンテナ装置80Cにおける利得は、車載用アンテナ装置80X(パッチアンテナ単体モデル・○印)の利得よりもやや高くなっている。ところが、離間距離Dが256mmの場合、車載用アンテナ装置80Cのグラフと、車載用アンテナ装置80X(パッチアンテナ単体モデル)のグラフがほぼ一致している。すなわち、離間距離Dが256mmの場合、車載用アンテナ装置80Cにおける利得は、車載用アンテナ装置80X(パッチアンテナ単体モデル)の利得とほぼ同じであることがわかる。
【0140】
これにより、離間距離Dが128mmより大きい場合、車載用アンテナ装置80Cのパッチアンテナ30の特性は、パッチアンテナ単体モデルの特性とほぼ同じである。ここで、128mmは、パッチアンテナ30(第1アンテナ)が対応する電波の周波数帯(第1周波数帯)における1波長分に相当する。したがって、本実施形態の車載用アンテナ装置80Cでは、第1アンテナ(パッチアンテナ30)と共振部91との水平方向における離間距離を、第1周波数帯における1波長以下とすることで、パッチアンテナ30の特性が向上するため、特に有利である。
【0141】
==その他==
図17は、パッチアンテナ30と共振部61との位置関係の別の例を示す図である。なお、図17A及び図17Bは、位置関係の第1例を示す側面図及び平面図であり、図17C及び図17Dは、位置関係の第2例を示す側面図及び平面図である。
【0142】
上述した図1に示される車載用アンテナ装置10では、上面視及び側面視において、パッチアンテナ30及び共振部61が互いに非重複であった。但し、上面視及び側面視の両方において、パッチアンテナ30及び共振部61が互いに非重複である必要はなく、上面視及び側面視の一方において、パッチアンテナ30及び共振部61が互いに非重複であっても良い。
【0143】
位置関係の第1例では、図17Aに示される側面視において、パッチアンテナ30と、共振部61とが、互いに重複している。しかし、図17Bに示される上面視においては、パッチアンテナ30と、共振部61とが、互いに非重複である。なお、図17Aに示される破線は、パッチアンテナ30及び共振部61が互いに重複していることを示すための補助線である。
【0144】
位置関係の第2例では、図17Cに示される側面視において、パッチアンテナ30と、共振部61とが、互いに非重複である一方、図17Dに示される上面視において、パッチアンテナ30と、共振部61とが、互いに重複している。なお、図17Cに示される破線は、パッチアンテナ30及び共振部61が互いに重複していることを示すための補助線である。
【0145】
位置関係の第1例や第2例のような、上面視及び側面視の一方において、パッチアンテナ30及び共振部61が互いに非重複である場合でも、パッチアンテナ30の指向性をさらに容易に制御することができる。
【0146】
==まとめ==
以上、本実施形態の車載用アンテナ装置10について説明した。車載用アンテナ装置10は、例えば、図1に示されるように、例えば、SDARS用の2.3GHz帯(第1周波数帯)の電波に対応するパッチアンテナ30(第1アンテナ)と、第1周波数帯と異なる、例えば、AM放送用の522kHz~1710kHz帯及びFM放送用の76MHz~108MHz帯(第2周波数帯)の電波に対応するアンテナ32(第2アンテナ)と、を備える。そして、第2アンテナを構成するエレメント(例えば、容量装荷素子60)の少なくとも一部(例えば、金属体60A)は、第1周波数帯で共振する。本実施形態の車載用アンテナ装置10によれば、平面アンテナ(例えば、パッチアンテナ30)の指向性を容易に制御することができる。
【0147】
また、本実施形態の車載用アンテナ装置80A~80Cについて説明した。車載用アンテナ装置80A~80Cは、例えば、図11及び図12に示されるように、例えば、SDARS用の2.3GHz帯(第1周波数帯)の電波に対応するパッチアンテナ30(第1アンテナ)と、第1周波数帯と異なる、例えば、テレマティクス用の周波数帯(第2周波数帯)の電波に対応するアンテナ33A~33C(第2アンテナ)と、を備える。そして、第2アンテナを構成するエレメント(例えば、エレメント90A~90C)の少なくとも一部は、第1周波数帯で共振する。本実施形態の車載用アンテナ装置80A~80Cによれば、平面アンテナ(例えば、パッチアンテナ30)の指向性を容易に制御することができる。
【0148】
また、エレメント(例えば、容量装荷素子60)の少なくとも一部(例えば、金属体60A)は、例えば、図3図8図9及び図10に示されるように、第1周波数帯で共振する電気長で形成される共振部61を有する。これにより、平面アンテナ(例えば、パッチアンテナ30)の指向性を容易に制御することができる。
【0149】
また、共振部61の電気長は、第1周波数帯の波長の2分の1である。これにより、平面アンテナ(例えば、パッチアンテナ30)の指向性を容易に制御することができる。
【0150】
また、共振部61は、例えば、図3図8図9及び図10に示されるように、少なくとも一つの折返し64を有する。これにより、共振部61において、第1周波数帯で共振する電気長を形成することができる。
【0151】
また、共振部61は、例えば、図3図8図9及び図10に示されるように、水平方向及び鉛直方向の少なくとも一方に延びる隙間(スリット62又はスロット63)が形成されている。これにより、共振部61において、第1周波数帯で共振する電気長を形成することができる。
【0152】
また、共振部61は、例えば、図3図8B図9A及び図10Aに示されるように、水平方向の折返しを繰り返して形成される。これにより、共振部61において、第1周波数帯で共振する電気長を形成することができる。
【0153】
また、例えば、図1及び図6に示されるように、上面視及び側面視において、パッチアンテナ30(第1アンテナ)と、共振部61とは、互いに非重複である。これにより、平面アンテナ(例えば、パッチアンテナ30)の指向性をさらに容易に制御することができる。
【0154】
また、例えば、図17に示されるように、上面視又は側面視において、パッチアンテナ30(第1アンテナ)と、共振部61とは、互いに非重複である。これにより、平面アンテナ(例えば、パッチアンテナ30)の指向性をさらに容易に制御することができる。
【0155】
また、パッチアンテナ30(第1アンテナ)と共振部61とは、例えば、図1及び図6に示されるように、水平方向又は鉛直方向において、所定距離離間している。これにより、平面アンテナ(例えば、パッチアンテナ30)の指向性をさらに容易に制御することができる。
【0156】
また、所定距離は、第1周波数帯の波長の4分の1以上である。これにより、平面アンテナ(例えば、パッチアンテナ30)の指向性をさらに容易に制御することができる。
【0157】
また、第2周波数帯は、第1周波数帯よりも低い。これにより、平面アンテナ(例えば、パッチアンテナ30)の指向性を容易に制御することができる。
【0158】
本実施形態で「車載」とは、車両にのせることができるとの意味であるため、車両に取り付けられているものに限らず、車両に持ち込まれ、車両内で用いられるものも含まれる。また、本実施形態のアンテナ装置は、車輪のついた乗り物である「車両」に用いられることとしたが、これに限られず、例えばドローン等の飛行体、探査機、車輪を有さない建機、農機、船舶等の移動体に用いられても良い。
【0159】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0160】
10,10X,80A~80C,80X 車載用アンテナ装置
20 アンテナベース
21,22 金属ベース
23 ケース
30 パッチアンテナ(第1アンテナ)
31 パッチアンテナ
32 アンテナ(第2アンテナ)
33A~33C アンテナ(第2アンテナ)
40 ホルダ
41 支柱部
42 取付部
50 ヘリカル素子(コイル)
60 容量装荷素子
60A~60D 金属体
61 共振部
62 スリット
63 スロット
64 折返し
70 基板
71 パターン
72 誘電体部材
73 放射素子
74 保持部材
74A~74C 凸部
75 金属体
75A~75C 凹部
76 貫通孔
77 給電線
78 給電点
90A~90C エレメント
91 共振部
92 スリット
93 折返し
100 フィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17