(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000272
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】樹脂成形金型及びインサート成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/26 20060101AFI20231225BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20231225BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20231225BHJP
B29C 45/56 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C45/00
B29C45/14
B29C45/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098968
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 心貴
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊文
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AD03
4F202AH55
4F202AM32
4F202AR07
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CK06
4F202CK54
4F202CK75
4F202CQ03
4F206AD03
4F206AH55
4F206AM32
4F206AR074
4F206JA07
4F206JB12
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】インサート成形を行う場合に、樹脂成形金型の内部の物体の位置が樹脂の供給により変化することを抑制する。
【解決手段】樹脂成形金型1は、可動金型2と固定金型3とを有し、可動金型2及び固定金型3で囲まれたキャビティ空間Kにコア200を収容した状態で、コア200の周囲に供給された樹脂を成形し、キャビティ空間Kにてコア200を支持するコア支持部4と、コア200を間に挟んで配置されると共にコア200の側面203に向けて樹脂を噴射する複数の樹脂流入ゲート5aとを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動金型と固定金型とを有すると共に、前記可動金型及び前記固定金型で囲まれたキャビティ空間に物体を収容した状態で、前記物体の周囲に供給された樹脂を成形する樹脂成形金型であって、
前記キャビティ空間にて前記物体を支持する物体支持部と、
前記物体を間に挟んで配置されると共に前記物体の側面に向けて前記樹脂を噴射する複数の樹脂流入ゲートと
を備える
ことを特徴とする樹脂成形金型。
【請求項2】
前記物体の中心部を間に挟んで対向配置される2つの前記樹脂流入ゲートからなる樹脂流入ゲート対を有することを特徴とする請求項1記載の樹脂成形金型。
【請求項3】
複数の樹脂流入ゲート対を有することを特徴とする請求項1または2記載の樹脂成形金型。
【請求項4】
前記物体支持部として、
前記物体の上面に当接する上面当接部と、
前記物体の底面に当接する底面当接部と、
前記物体の側面のうち前記樹脂流入ゲートと対向する領域を避けて前記物体の側面に当接する側面当接部と
を備える
ことを特徴とする請求項1または2記載の樹脂成形金型。
【請求項5】
前記側面当接部は、前記樹脂流入ゲートの上方に位置し、
前記樹脂流入ゲートからの前記樹脂の噴射方向に沿った方向から見て、前記側面当接部の下方に位置する前記樹脂流入ゲートは、水平方向にて前記側面当接部の幅の範囲に位置する
ことを特徴とする請求項4記載の樹脂成形金型。
【請求項6】
前記物体支持部を弾性支持するバネ部材を備えることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂成形金型。
【請求項7】
可動金型と固定金型とを有すると共に、前記可動金型及び前記固定金型で囲まれたキャビティ空間に物体を収容した状態で、前記物体の周囲に供給された樹脂を成形する樹脂成形金型を用いてインサート成形品を形成するインサート成形品の製造方法であって、
前記樹脂成形金型は、
前記キャビティ空間にて前記物体を支持する物体支持部と、
前記物体を間に挟んで配置されると共に前記物体の側面に向けて前記樹脂を噴射する複数の樹脂流入ゲートと
を備える
ことを特徴とするインサート成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形金型及びインサート成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、インサート成形によってモールドトランスを形成する方法が開示されている。特許文献1においては、トランス本体をモールド金型の内部にコア位置決めピンで保持し、コア位置決めピンに保持されたトランス本体の周囲に樹脂を供給することでモールドトランスを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、モールド金型の内部に保持されたトランス本体の下側から金型の内部に樹脂を供給している。このような特許文献1に開示された金型では、金型の内部空間であるキャビティに樹脂を射出した際に、キャビティ内に収容されたトランス本体等の物体に対して、一方向に射出圧が作用することになる。このため、キャビティ内に収容された物体が形状誤差を有している場合には、樹脂供給時の物体のキャビティ内での位置が定まらない。この結果、キャビティ内の物体に位置が変化し、物体に対して想定外の圧力が作用する場合がある。例えば、キャビティ内の物体が圧粉体のように損傷しやすい場合には、物体が損傷する可能性もある。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、インサート成形を行う場合に、樹脂成形金型の内部の物体の位置が樹脂の供給により変化することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
本発明の第1の態様は、可動金型と固定金型とを有すると共に、上記可動金型及び上記固定金型で囲まれたキャビティ空間に物体を収容した状態で、上記物体の周囲に供給された樹脂を成形する樹脂成形金型であって、上記キャビティ空間にて上記物体を支持する物体支持部と、上記物体を間に挟んで配置されると共に上記物体の側面に向けて上記樹脂を噴射する複数の樹脂流入ゲートとを備えるという構成を採用する。
【0008】
本発明の第2の態様は、可動金型と固定金型とを有すると共に、上記可動金型及び上記固定金型で囲まれたキャビティ空間に物体を収容した状態で、上記物体の周囲に供給された樹脂を成形する樹脂成形金型を用いてインサート成形品を形成するインサート成形品の製造方法であって、上記樹脂成形金型が、上記キャビティ空間にて上記物体を支持する物体支持部と、上記物体を間に挟んで配置されると共に上記物体の側面に向けて上記樹脂を噴射する複数の樹脂流入ゲートとを備えるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、キャビティ空間に収容された物体を間に挟むように配置された複数の樹脂流入ゲートから、物体の側面に当たるように樹脂が供給される。このため、物体の側面に対して複数の方向から樹脂が当たり、樹脂が当たることで物体に作用する力が相殺される。したがって、本発明によれば、インサート成形を行う場合に、樹脂成形金型の内部の物体の位置が樹脂の供給により変化することを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態における樹脂成形金型を用いて形成される電子部品の概略構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態における樹脂成形金型を含む模式的な断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態における樹脂成形金型が有する樹脂流路の概略構成を示す模式的な斜視図である。
【
図4】本発明の第1実施形態における樹脂成形金型が有する樹脂流入ゲートとコアとの位置関係を示す模式図である。
【
図5】本発明の第1実施形態における樹脂成形金型が有する側面当接部と樹脂流入ゲートとの位置関係を示す模式図である。
【
図6】本発明の第2実施形態における樹脂成形金型を含む模式的な断面図である。
【
図7】本発明の第3実施形態における樹脂成形金型が有する樹脂流入ゲートとコアとの位置関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明に係る樹脂成形金型及びインサート成形品の製造方法の一実施形態について説明する。なお、以下の説明においては、本発明によって、コアとモールド樹脂とが一体化された電子部品を製造する例について説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の樹脂成形金型1(
図2参照)を用いて形成される電子部品100の概略構成を模式的に示す斜視図である。電子部品100は、例えば
図1に示すように、コア200(物体)と、モールド樹脂300とを備えている。電子部品100は、例えばモールドトランスである。なお、
図1には省略しているが、電子部品100は、例えばコイル等を備えてもよい。
【0013】
コア200は、例えば磁性体粉を圧縮成形して得られる圧粉体からなる。本実施形態においてコア200は、
図1に示すように、円柱状に形成されている。つまり、コア200は、円形状の上面201と、円形状の底面202と、側面203とを有している。コア200の側面203は、上面201の縁部と底面202の縁部とを接続しており、これらの縁部に沿って環状に湾曲している。
【0014】
モールド樹脂300は、コア200を内包する樹脂部材である。このモールド樹脂300は、樹脂成形金型1によって形成される樹脂成形体である。
図1に示すように、本実施形態において、モールド樹脂300は、コア200を露出する開口301を有している。本実施形態では、モールド樹脂300は、コア200の上面201を露出される開口301と、コア200の底面202を露出させる開口301(不図示)と、コア200の側面203を露出させる開口301とを有している。コア200の側面203を露出させる開口301は、コア200の側面203の周方向に沿って等間隔で4つ設けられている。コア200の側面203を露出させる開口301は、各々が略矩形状に形成されている。
【0015】
図2は、本実施形態の樹脂成形金型1を含む模式的な断面図である。本実施形態の樹脂成形金型1は、樹脂の射出成形に用いる金型である。より具体的には、樹脂成形金型1は、内部空間(キャビティ空間K)にコア200が配置された状態で射出成形を行うインサート成形を行うための金型である。
図2に示すように、本実施形態の樹脂成形金型1は、可動金型2と、固定金型3と、コア支持部4(物体支持部)とを備えている。
【0016】
可動金型2は、樹脂成形金型1の一部であり、固定金型3に対して当接した位置と固定金型3に対して離間した位置との間に移動可能である。なお、インサート成形を行う場合の樹脂成形金型1の姿勢は限定されるものではない。ただし、以下の説明においては、説明の便宜上、可動金型2の移動方向を上下方向として説明する。つまり、本実施形態においては、
図2における上下方向に可動金型2は移動可能である。
【0017】
可動金型2は、固定金型3側の面から上方に向けて窪む凹部2aを有している。この凹部2aは、樹脂成形金型1のキャビティ空間Kの一部を形成する。凹部2aは、上方から見て、コア200よりも大きく形成されており、少なくともコア200の上部を収容可能な容積を有している。
【0018】
固定金型3は、樹脂成形金型1の一部であり、可動金型2が当接可能である。固定金型3は、可動金型2が固定金型3に当接された場合に、可動金型2の凹部2aと接続される凹部3aを有している。凹部3aは、可動金型2側の面から下方に向け窪むように形成されている。凹部3aは、上方から見てコア200よりも大きく形成されており、少なくともコア200の下部を収容可能な容積を有している。
【0019】
可動金型2の凹部2aと固定金型3の凹部3aとが接続されることで、キャビティ空間Kが形成される。キャビティ空間Kは、インサート成形の際に、コア200が収容される空間である。また、キャビティ空間Kは、コア200が収容された状態で、不図示の樹脂供給装置から溶融状態の樹脂が供給される空間である。
【0020】
本実施形態においては、
図2に示すように、キャビティ空間Kに収容されたコア200の下部は、固定金型3の凹部3aの内部に位置する。このため、コア200の側面203の下部は、可動金型2と固定金型3との境界面よりも下方に位置する。
【0021】
また、本実施形態の樹脂成形金型1は、モールド樹脂300の形成材料である樹脂X(
図2参照)をキャビティ空間Kまで案内する樹脂流路5を有している。
図3は、樹脂流路5の概略構成を示す模式的な斜視図である。
【0022】
図3に示すように、樹脂流路5は、2つの樹脂流入ゲート5aと、各々の樹脂流入ゲート5aに接続されたランナ5bと、ランナ5b同士を接続するスプール5cとを有している。
【0023】
樹脂流入ゲート5aは、キャビティ空間Kと直接的に接続された部位である。樹脂Xは、樹脂流入ゲート5aからキャビティ空間Kに流入する。
図4は、2つの樹脂流入ゲート5aとコア200との位置関係を示す模式図である。
図4に示すように、2つの樹脂流入ゲート5aは、コア200の中心部210を間に挟んで対向配置されている。これらの2つの樹脂流入ゲート5aは、1つの樹脂流入ゲート対6を形成している。つまり、本実施形態において樹脂成形金型1は、コア200の中心部210を間に挟んで対向配置される2つの樹脂流入ゲート5aからなる樹脂流入ゲート対6を有している。
【0024】
各々の樹脂流入ゲート5aは、キャビティ空間Kに収容されたコア200の側面203に向けて樹脂Xを噴射するように、コア200の側面203に噴射口5dが対向する位置に設けられている。各々の樹脂流入ゲート5aは、
図2に示すように、固定金型3の上面に設けられた溝部3bが可動金型2の下面で上方から塞がれることで形成されている。
【0025】
ランナ5bは、スプール5cと樹脂流入ゲート5aとを接続する部位である。スプール5cは、不図示の樹脂供給装置と接続される部位である。これらのランナ5b及びスプール5cは、固定金型3の内部に形成されている。
【0026】
このような樹脂流入ゲート5aを介してキャビティ空間Kに溶融状態の樹脂Xが供給され、キャビティ空間Kに供給された樹脂Xが硬化することでモールド樹脂300が形成される。
【0027】
ここで、
図2における左側に位置する樹脂流入ゲート5aの噴射口5dから射出された樹脂Xは、コア200の側面203に対して左側から右側に向けて当たる。この結果、コア200は、右側に向かう噴射圧を受ける。一方、
図2における右側に位置する樹脂流入ゲート5aの噴射口5dから射出された樹脂Xは、コア200の側面203に対して右側から左側に向けて当たる。この結果、コア200は、左側に向かう噴射圧を受ける。つまり、コア200は、
図2における左側と右側との両方から噴射圧を受ける。このため、これらの噴射圧に基づいてコア200に作用する力が相殺され、樹脂Xの噴射圧によってコア200が移動することを抑止できる。
【0028】
また、
図2における左側に位置する樹脂流入ゲート5aの噴射口5dから射出される樹脂Xの噴射方向と、
図2における右側に位置する樹脂流入ゲート5aの噴射口5dから射出される樹脂Xの噴射方向とは、コア200の中心部210を通過する直線に沿って配列されている。このため、これらの樹脂流入ゲート5aの噴射口5dから射出された樹脂Xがコア200の側面203に当たった場合に、コア200に対して中心部210を中心とするモーメントが作用することを抑止できる。
【0029】
コア支持部4は、キャビティ空間Kにてコア200を支持する。本実施形態においては、コア支持部4として、上面当接部4aと、底面当接部4bと、側面当接部4cとを備えている。
【0030】
上面当接部4aは、可動金型2に設けられており、先端面が下方に向くように可動金型2の凹部2a内に突出している。上面当接部4aは、キャビティ空間Kに収容されたコア200の上面201に当接される。この上面当接部4aがコア200に当接した状態でキャビティ空間Kに樹脂が供給されるため、モールド樹脂300に対してコア200の上面201を露出する開口301が形成される。
【0031】
底面当接部4bは、固定金型3に設けられており、先端面が上方に向くように固定金型3の凹部3a内に突出している。底面当接部4bは、キャビティ空間Kに収容されたコア200の底面202に当接される。この底面当接部4bがコア200に当接した状態でキャビティ空間Kに樹脂が供給されるため、モールド樹脂300に対してコア200の底面202を露出する開口301が形成される。
【0032】
側面当接部4cは、可動金型2に設けられており、先端面が側方を向くように可動金型2の凹部2a内に突出している。側面当接部4cは、キャビティ空間Kに主要されたコア200の側面203に当接される。この側面当接部4cがコア200に当接した状態でキャビティ空間Kに樹脂が供給されるため、モールド樹脂300に対してコア200の側面203を露出する開口301が形成される。
【0033】
本実施形態において側面当接部4cは、コア200を囲むように4つ設けられている。これらの4つの側面当接部4cは、不図示のスライド機構によって可動金型2に対して水平方向に移動可能である。より具体的には、可動金型2が固定金型3から離間する場合に、各々の側面当接部4cは、コア200から遠ざかるように移動される。このように側面当接部4cが可動金型2に対して移動されることで、モールド樹脂300が形成された電子部品100を可動金型2の凹部2aから取り出すことが可能となる。
【0034】
各々の側面当接部4cは、コア200の側面203のうち樹脂流入ゲート5aと対向する領域を避けてコア200の側面203に当接する。
図5は、側面当接部4cと樹脂流入ゲート5aとの位置関係を示す模式図である。
図5に示すように、いずれか1つの側面当接部4cは、1つの樹脂流入ゲート5aの上方に位置する。
図5に示す樹脂流入ゲート5aは、樹脂流入ゲート5aからの樹脂Xの噴射方向に沿った方向(
図5の紙面垂直方向)から見て、側面当接部4cの下方に位置する。さらに、
図5に示す樹脂流入ゲート5aは、水平方向にて側面当接部4cの幅の範囲に位置する。つまり、側面当接部4cの下方に位置する樹脂流入ゲート5aは、自らの上方に位置する側面当接部4cから水平方向に食み出ることなく、自らの上方に位置する側面当接部4cの水平方向の一端から他端までの範囲Hに収まるように配置されている。
【0035】
電子部品100を製造する場合には、樹脂成形金型1を用いたインサート成形を行う。つまり、本実施形態では、可動金型2と固定金型3とを有すると共に、可動金型2及び固定金型3で囲まれたキャビティ空間Kにコア200を収容した状態で、コア200の周囲に供給された樹脂を成形する樹脂成形金型1を用いてインサート成形品である電子部品100を形成する。
【0036】
具体的には、可動金型2と固定金型3とが離れている状態で、固定金型3の凹部3aにコア200を配置する。ここでは、コア200は、例えば底面当接部4bの先端面上に配置する。続いて、可動金型2を固定金型3に対して当接させる。このように可動金型2が固定金型3に当接されることで、キャビティ空間Kにコア200が収容された状態となる。
【0037】
また、キャビティ空間Kに収容されたコア200の上面201には、上面当接部4aが当接される。また、キャビティ空間Kに収容されたコア200の側面203には、複数の側面当接部4cが当接される。
【0038】
続いて、キャビティ空間Kに対して、樹脂流路5を介して、樹脂Xを供給する。樹脂流路5を流れる樹脂Xは、樹脂流入ゲート5aからキャビティ空間Kに供給される。樹脂流入ゲート5aからキャビティ空間Kに供給された樹脂Xは、コア200と可動金型2との間、及び、コア200の固定金型3との間に充填される。その後、樹脂X及びコア200を加圧しつつ冷却することで、樹脂Xが硬化されてモールド樹脂300が形成される。
【0039】
モールド樹脂300が形成されることで、コア200とモールド樹脂300とが一体化されてなる電子部品100となる。このような電子部品100は、可動金型2が固定金型3から離間することで、樹脂成形金型1から取り出される。
【0040】
以上のような本実施形態の樹脂成形金型1は、可動金型2と固定金型3とを有する。また、樹脂成形金型1は、可動金型2及び固定金型3で囲まれたキャビティ空間Kにコア200を収容した状態で、コア200の周囲に供給された樹脂を成形する。また、樹脂成形金型1は、キャビティ空間Kにてコア200を支持するコア支持部4と、コア200を間に挟んで配置されると共にコア200の側面203に向けて樹脂を噴射する複数の樹脂流入ゲート5aとを備える。
【0041】
本実施形態の樹脂成形金型1によれば、キャビティ空間Kに収容されたコア200を間に挟むように配置された複数の樹脂流入ゲート5aから、コア200の側面203に当たるように樹脂Xが供給される。このため、コア200の側面203に対して複数の方向から樹脂Xが当たり、樹脂Xが当たることでコア200に作用する力が相殺される。したがって、本実施形態の樹脂成形金型1によれば、インサート成形を行う場合に、樹脂成形金型1の内部のコア200の位置が樹脂Xの供給により変化することを抑制することが可能となる。
【0042】
また、本実施形態の樹脂成形金型1は、コア200の中心部210を間に挟んで対向配置される2つの樹脂流入ゲート5aからなる樹脂流入ゲート対6を有する。このような本実施形態の樹脂成形金型1においては、一方の樹脂流入ゲート5aの噴射口5dから射出される樹脂Xの噴射方向と、他方の樹脂流入ゲート5aの噴射口5dから射出される樹脂Xの噴射方向とが、コア200の中心部210を通過する直線に沿って配列される。このため、これらの樹脂流入ゲート5aの噴射口5dから射出された樹脂Xがコア200の側面203に当たった場合に、コア200に対して中心部210を中心とするモーメントが作用することを抑止できる。
【0043】
また、本実施形態の樹脂成形金型1は、コア支持部4として、コア200の上面201に当接する上面当接部4aと、コア200の底面202に当接する底面当接部4bと、コア200の側面203のうち樹脂流入ゲート5aと対向する領域を避けてコア200の側面203に当接する側面当接部4cとを備える。
【0044】
このような本実施形態の樹脂成形金型1によれば、コア支持部4によってキャビティ空間K内においてコア200が支持される。このため、インサート成形を行う場合に、樹脂成形金型1の内部のコア200の位置が樹脂Xの供給により変化することを、より確実に抑止することが可能となる。
【0045】
また、本実施形態の樹脂成形金型1において、側面当接部4cは、樹脂流入ゲート5aの上方に位置する。また、樹脂流入ゲート5aからの樹脂Xの噴射方向に沿った方向から見て、側面当接部4cの下方に位置する樹脂流入ゲート5aは、水平方向にて側面当接部4cの幅の範囲に位置する。
【0046】
このような本実施形態の樹脂成形金型1によれば、樹脂流入ゲート5aから噴射された樹脂Xが側面当接部4cの両側に対して流れ込み、樹脂Xの流れに偏りが生じにくい。このため、樹脂成形金型1の内部のコア200の位置が樹脂Xの供給により変化することを、より確実に抑止することが可能となる。
【0047】
また、本実施形態の電子部品100(インサート成形品)の製造方法は、樹脂成形金型1を用いて電子部品100を形成する。樹脂成形金型1は、可動金型2と固定金型3とを有する。本実施形態の電子部品100の製造方法では、可動金型2及び固定金型3で囲まれたキャビティ空間Kにコア200を収容した状態で、コア200の周囲に供給された樹脂を成形する。さらに、樹脂成形金型1は、キャビティ空間Kにてコア200を支持するコア支持部4と、コア200を間に挟んで配置されると共にコア200の側面203に向けて樹脂を噴射する複数の樹脂流入ゲート5aとを備える。
【0048】
このような本実施形態の電子部品100の製造方法によれば、キャビティ空間Kに収容されたコア200を間に挟むように配置された複数の樹脂流入ゲート5aから、コア200の側面203に当たるように樹脂Xが供給される。このため、コア200の側面203に対して複数の方向から樹脂Xが当たり、樹脂Xが当たることでコア200に作用する力が相殺される。したがって、本実施形態の電子部品100の製造方法によれば、インサート成形を行う場合に、樹脂成形金型1の内部のコア200の位置が樹脂Xの供給により変化することを抑制することが可能となる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、
図6を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0050】
図6は、本実施形態の樹脂成形金型1Aを含む模式的な断面図である。この図に示すように、本実施形態の樹脂成形金型1Aは、バネ部材7を備えている。バネ部材7は、底面当接部4bを除く各々のコア支持部4に対して設けられており、各々がコア支持部4を弾性支持する。つまり、本実施形態においては、上面当接部4aと、4つの側面当接部4cとの各々に対してバネ部材7が設けられている。
【0051】
各々のバネ部材7は、各々のコア支持部4をコア200と反対側から弾性支持する。バネ部材7が弾性変形することで、各々のコア支持部4は、コア200から遠ざかる方向に移動可能である。
【0052】
このような本実施形態の樹脂成形金型1Aによれば、寸法誤差等に起因してコア200の形状が予め定められた形状に対して変化している場合であっても、確実にコア支持部4をコア200に対して当接させることができる。したがって、本実施形態の樹脂成形金型1Aによれば、より確実にキャビティ空間K内にてコア200を支持することが可能となる。
【0053】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について、
図7を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0054】
図7は、本実施形態の樹脂成形金型1Bにおける樹脂流入ゲート5aとコア200との位置関係を示す模式図である。この図に示すように、本実施形態の樹脂成形金型1Bは、
図7に示すように、4つの樹脂流入ゲート5aを有している。
【0055】
これらの4つの樹脂流入ゲート5aは、2つの樹脂流入ゲート対6を形成している。上述のように、コア200の中心部210を間に挟んで配向配置された2つの樹脂流入ゲート5aが、1つの樹脂流入ゲート対6を形成する。つまり、このような本実施形態の樹脂成形金型1Bは、2つの樹脂流入ゲート対6を備えている。
【0056】
このような本実施形態の樹脂成形金型1Bにおいては、1つの樹脂流入ゲート対6を形成する2つの樹脂流入ゲート5aから噴射された樹脂Xがコア200の側面203に対して反対方向から当たる。このため、本実施形態の樹脂成形金型1Bによれば、インサート成形を行う場合に、樹脂成形金型1Bの内部のコア200の位置が樹脂Xの供給により変化することを抑制することが可能となる。
【0057】
また、1つの樹脂流入ゲート対6を形成する2つの樹脂流入ゲート5aの一方の樹脂流入ゲート5aの噴射口5dから射出される樹脂Xの噴射方向と、同じ樹脂流入ゲート対6を形成する他方の樹脂流入ゲート5aの噴射口5dから射出される樹脂Xの噴射方向とが、コア200の中心部210を通過する直線に沿って配列される。このため、これらの樹脂流入ゲート5aの噴射口5dから射出された樹脂Xがコア200の側面203に当たった場合に、コア200に対して中心部210を中心とするモーメントが作用することを抑止できる。
【0058】
なお、本実施形態においては、2つの樹脂流入ゲート対6を備える構成について説明した。しかしながら、3つ以上の樹脂流入ゲート対6を備える構成を採用することも可能である。
【0059】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0060】
例えば、上記実施形態においては、樹脂流入ゲート5aは、2つあるいは4つ設けられた構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。樹脂流入ゲート5aを3つ以上の奇数個とすることも可能である。樹脂流入ゲート5aを奇数個とする場合であっても、コア200を環状に囲むように樹脂流入ゲート5aを配置することで、樹脂成形金型の内部のコア200の位置が樹脂Xの供給により変化することを抑制することが可能となる。
【0061】
なお、上記実施形態については、例えば以下の付記のようにも記載できる。
【0062】
(付記1)
可動金型と固定金型とを有すると共に、上記可動金型及び上記固定金型で囲まれたキャビティ空間に物体を収容した状態で、上記物体の周囲に供給された樹脂を成形する樹脂成形金型であって、
上記キャビティ空間にて上記物体を支持する物体支持部と、
上記物体を間に挟んで配置されると共に上記物体の側面に向けて上記樹脂を噴射する複数の樹脂流入ゲートと
を備える
ことを特徴とする樹脂成形金型。
【0063】
(付記2)
上記物体の中心部を間に挟んで対向配置される2つの上記樹脂流入ゲートからなる樹脂流入ゲート対を有することを特徴とする付記1記載の樹脂成形金型。
【0064】
(付記3)
複数の樹脂流入ゲート対を有することを特徴とする付記1または2記載の樹脂成形金型。
【0065】
(付記4)
上記物体支持部として、
上記物体の上面に当接する上面当接部と、
上記物体の底面に当接する底面当接部と、
上記物体の側面のうち上記樹脂流入ゲートと対向する領域を避けて上記物体の側面に当接する側面当接部と
を備える
ことを特徴とする付記1~3のいずれか一つに記載の樹脂成形金型。
【0066】
(付記5)
上記側面当接部は、上記樹脂流入ゲートの上方に位置し、
上記樹脂流入ゲートからの上記樹脂の噴射方向に沿った方向から見て、上記側面当接部の下方に位置する上記樹脂流入ゲートは、水平方向にて上記側面当接部の幅の範囲に位置する
ことを特徴とする付記4記載の樹脂成形金型。
【0067】
(付記6)
上記物体支持部を弾性支持するバネ部材を備えることを特徴とする付記1~5のいずれか一つに記載の樹脂成形金型。
【0068】
(付記7)
可動金型と固定金型とを有すると共に、上記可動金型及び上記固定金型で囲まれたキャビティ空間に物体を収容した状態で、上記物体の周囲に供給された樹脂を成形する樹脂成形金型を用いてインサート成形品を形成するインサート成形品の製造方法であって、
上記樹脂成形金型は、
上記キャビティ空間にて上記物体を支持する物体支持部と、
上記物体を間に挟んで配置されると共に上記物体の側面に向けて上記樹脂を噴射する複数の樹脂流入ゲートと
を備える
ことを特徴とするインサート成形品の製造方法。
【符号の説明】
【0069】
1……樹脂成形金型、1A……樹脂成形金型、1B……樹脂成形金型、2……可動金型、2a……凹部、3……固定金型、3a……凹部、3b……溝部、4……コア支持部(物体支持部)、4a……上面当接部、4b……底面当接部、4c……側面当接部、5……樹脂流路、5a……樹脂流入ゲート、5b……ランナ、5c……スプール、5d……噴射口、6……樹脂流入ゲート対、7……バネ部材、100……電子部品(インサート成形品)、200……コア(物体)、201……上面、202……底面、203……側面、210……中心部、300……モールド樹脂、301……開口、K……キャビティ空間、X……樹脂