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特開2024-27206積層鋼板製造装置、及び積層鋼板製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027206
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】積層鋼板製造装置、及び積層鋼板製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20240222BHJP
   B21D 28/02 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
H02K15/02 E
H02K15/02 F
B21D28/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129787
(22)【出願日】2022-08-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】393023950
【氏名又は名称】大垣精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187791
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晃志郎
(72)【発明者】
【氏名】鄭 日権
(72)【発明者】
【氏名】谷 清和
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP02
5H615PP06
5H615SS03
5H615SS05
5H615SS10
5H615SS13
(57)【要約】
【課題】周縁に突部を有するプレス鋼板及び積層鋼板を製造可能であって、簡潔な構成で突部を無効化するブランク孔を形成可能な積層鋼板製造装置、及び積層鋼板製造方法を提供する。
【解決手段】積層鋼板製造装置1は、プレス部2がプレス鋼板31の周縁にM個の突部35を形成可能である。第一プレス部21の第一ダイD1は、プレス鋼板31を打ち抜く毎に第一プレス部中心C1周りに360/N度ずつ一方向に回転可能である。第二プレス部22は、プレス鋼板31が打ち抜かれる周縁に沿って、N個の突部35を形成可能な第二パンチP2と第二ダイD2を備える。第三プレス部23は、第二プレス部22においてN個の突部35を形成可能な領域のうち、(N-M)個の突部35を包含する範囲のブランク孔3を打ち抜き可能であり、鋼板材30を打ち抜く毎に360/N度ずつ一方向に打ち抜く位置を変更可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に間欠的に搬送される帯状の鋼板材を、環状のプレス鋼板に打ち抜いて積層する装置であって、
前記搬送方向に垂直な上下方向において相対的に移動可能な上金型及び下金型と、
前記鋼板材を搬送する搬送装置と、
前記鋼板材を打ち抜く複数のプレス部を備え、
前記プレス部は、前記上金型にパンチを備え、前記下金型にダイを備え、前記プレス鋼板の周縁に突部を形成可能であり、
Nは自然数であり、MはNよりも小さい自然数であり、
前記プレス部は、前記プレス鋼板の前記突部をM個形成可能であり、
前記プレス部は、前記プレス鋼板の外形を打ち抜き可能な第一プレス部と、前記第一プレス部の前記搬送方向の上流に第二プレス部と、さらに前記第二プレス部の上流に第三プレス部を備え、
前記第一プレス部の第一ダイは、前記プレス鋼板を打ち抜く毎に第一プレス部中心周りに360/N度ずつ一方向に回転可能であり、
前記第二プレス部は、前記プレス鋼板が打ち抜かれる前記周縁に沿って、N個の前記突部を形成可能な第二パンチと第二ダイを備え、
前記第三プレス部は、前記第二プレス部においてN個の前記突部を形成可能な領域のうち、(N-M)個の前記突部を包含する範囲のブランク孔を打ち抜き可能であり、前記鋼板材を打ち抜く毎に、前記ブランク孔を打ち抜く位置を360/N度ずつ前記一方向に変更可能である積層鋼板製造装置。
【請求項2】
前記第三プレス部は、
前記突部が形成される範囲を包含して打ち抜き可能なN個の第三パンチとN個の第三ダイと、
前記上金型が下降するとき、N個の前記第三パンチのうちのM個が前記鋼板材を打ち抜き不能な状態に設定可能なパンチ設定装置を備え、
前記パンチ設定装置は、前記第三プレス部における第三プレス部中心の周りに、前記第三プレス部が前記鋼板材を打ち抜く毎に360/N度ずつ前記一方向に回転可能である請求項1に記載の積層鋼板製造装置。
【請求項3】
前記パンチ設定装置は、回転盤を備え、
前記回転盤は、前記第三プレス部における前記第三プレス部中心の周りに回転可能であり、円盤下側面において、前記第三プレス部中心を中心とする同一半径上にM個の円盤凹部が形成され、
前記第三パンチは、前記第三プレス部中心を中心とする前記同一半径上に配置され、
前記円盤凹部の直下にある前記第三パンチは、前記鋼板材を打ち抜き不能な状態であり、
(N-M)個の前記第三パンチは、前記鋼板材を打ち抜き可能であり、
前記回転盤は、前記第三プレス部が前記鋼板材を打ち抜く毎に360/N度ずつ前記一方向に回転可能である請求項2に記載の積層鋼板製造装置。
【請求項4】
前記パンチ設定装置は、前記上下方向において、前記回転盤とそれぞれの前記第三パンチとの間にバックアップピンを備え、
前記上金型が下降して前記第三パンチが前記鋼板材を打ち抜くとき、前記円盤凹部の直下の前記第三パンチは、前記バックアップピンが該円盤凹部と接触するまで浮き上がり、打ち抜き不能な状態となる請求項3に記載の積層鋼板製造装置。
【請求項5】
前記回転盤と同期回転する回転表示盤を備え、
前記回転表示盤は、前記円盤凹部の位置を表示可能な請求項3に記載の積層鋼板製造装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれかに記載の積層鋼板製造装置を使用し、前記搬送方向に間欠的に搬送される帯状の前記鋼板材を、環状の前記プレス鋼板に打ち抜いて積層鋼板を製造する方法であって、
前記第三プレス部においては、前記第二プレス部におけるN個の前記突部を形成可能な領域のうち、(N-M)個の前記ブランク孔を打ち抜く第一工程と、
前記第二プレス部において、前記プレス鋼板の前記周縁に前記突部を形成する第二工程と、
前記第一プレス部において、前記プレス鋼板の外形を打ち抜いて、すでに打ち抜かれた前記プレス鋼板に積層する第三工程を備え、
前記第一工程は、前記第三プレス部が前記鋼板材を打ち抜く毎に、360/N度ずつ前記一方向に打ち抜く位置を変更させる工程を含み、
前記第三工程は、前記第一プレス部にて前記プレス鋼板の外形を打ち抜いた後に、前記第一ダイと、すでに積層された前記プレス鋼板を360/N度ずつ前記一方向に回転させる工程を含む積層鋼板製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、順送型の積層鋼板製造装置、及び積層鋼板製造装置を用いた積層鋼板製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、種々の積層鋼板製造装置及び積層鋼板製造方法が提案されている。例えば、帯状の金属板を間欠的に送り出し、内径領域を金属板から打ち抜いて、キーとなる突起部が設けられた複数の軸孔を、各突起部が異なる角度を向くように形成する。さらに、各軸孔を含む外径領域を金属板からそれぞれ打ち抜いて、複数の打抜部材を形成することと、突起部同士が重なり合うように複数の打抜部材を転積することとを含む回転子積層鉄心の製造方法が提案されている。
【0003】
例として、特許文献1の記載によれば、薄板状の原材から、周縁に複数の突部が形成された板片を打ち抜き、その打ち抜かれた板片を他の板片に対して転積するようにした打ち抜き方法において、前記板片を打ち抜くために、前記板片の突部よりも多い数の突部用刃部が形成された打抜き刃を用い、前記打抜き刃による板片の打ち抜きに先立ち、前記原材上における突部用刃部と対応する位置であって、その突部用刃部より少ない数の位置に前記突部の形成を無効化するためのブランク孔を形成するとともに、原材に対する打ち抜きの進行にともなってそのブランク孔の位置を変位させる。
【0004】
従って、この発明の打ち抜き方法においては、打抜き刃による板片の打ち抜きに先立って、原材に対して打抜き刃上の所定の突部用刃部と対応する位置に、突部の形成を無効化するためのブランク孔があらかじめ形成される。その後に、複数の突部用刃部を有する打抜き刃により、周縁に複数個の突部を有する板片が打ち抜き形成される。この場合、打抜き刃の突部用刃部の数が、板片上の突部の数よりも多くなるように設定されている。このため、打抜き刃上の複数の突部用刃部のうち、所定の突部用刃部が原材上にあらかじめ形成されたブランク孔と対応して、その突部用刃部による突部の形成が無効化され、突部の形成数が制限される。
【0005】
これによれば、周縁に複数の突部を有する板片を、その突部の両側基部に凹部が生じることなく打ち抜き形成することができる。従って、突部の両側基部に過度な応力が集中するおそれがなく、所要の固定強度を確保することができる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-36039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、以下の課題がある。回転子鉄心片において、キー状の突部が180度の間隔をおいて二つ形成され、回転子鉄心片が90度回転されて積層した状態で固定される場合、二つのステーションによってブランク孔を形成する必要がある。すなわち、第一ステーションにて一対のブランク孔が180度の間隔をおいて打ち抜かれる。さらに、第二ステーションでは、第一ステーションで形成された一対のブランク孔に対して、90度変位した位置に一対のブランク孔が打ち抜かれる。第一ステーションと第二ステーションにおいて、交互にブランク孔が打ち抜かれる。
【0008】
これは、回転子鉄心片が90度回転して積層されるときに、キー状の突部の位置を合わせるために必要な工程であるが、二つのステーションが必要である。回転子鉄心片において、キー状の突部の数によって、ブランク孔を打ち抜くためのステーションの数が2以上となる場合があるので、装置全体が大きくなる。また、ブランク孔を打ち抜く工程が2工程にまたがるので、製造時間が増加する。さらに、キー状の突部の数が変動すると、その度に装置の改造が必要になり、回転子鉄心片の形状変更に対する対応能力が劣るという課題がある。
【0009】
本発明の目的は、従来技術の課題を解決するものであり、周縁に突部を有するプレス鋼板を打ち抜いて転積し、積層鋼板を製造するために、簡潔な構成で突部を無効化するブランク孔を形成可能な積層鋼板製造装置、及び積層鋼板製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一の態様に係る積層鋼板製造装置は、搬送方向に間欠的に搬送される帯状の鋼板材を、環状のプレス鋼板に打ち抜いて積層する装置であって、前記搬送方向に垂直な上下方向において相対的に移動可能な上金型及び下金型と、前記鋼板材を搬送する搬送装置と、前記鋼板材を打ち抜く複数のプレス部を備え、前記プレス部は、前記上金型にパンチを備え、前記下金型にダイを備え、前記プレス鋼板の周縁に突部を形成可能であり、Nは自然数であり、MはNよりも小さい自然数であり、前記プレス部は、前記プレス鋼板の前記突部をM個形成可能であり、前記プレス部は、前記プレス鋼板の外形を打ち抜き可能な第一プレス部と、前記第一プレス部の前記搬送方向の上流に第二プレス部と、さらに前記第二プレス部の上流に第三プレス部を備え、前記第一プレス部の第一ダイは、前記プレス鋼板を打ち抜く毎に第一プレス部中心周りに360/N度ずつ一方向に回転可能であり、前記第二プレス部は、前記プレス鋼板が打ち抜かれる前記周縁に沿って、N個の前記突部を形成可能な第二パンチと第二ダイを備え、前記第三プレス部は、前記第二プレス部においてN個の前記突部を形成可能な領域のうち、(N-M)個の前記突部を包含する範囲のブランク孔を打ち抜き可能であり、前記鋼板材を打ち抜く毎に、前記ブランク孔を打ち抜く位置を360/N度ずつ前記一方向に変更可能である。
【0011】
これによれば、積層鋼板製造装置の第二プレス部は、プレス鋼板が打ち抜かれる周縁に沿って、N個の突部を形成可能な第二パンチと第二ダイを備える。第三プレス部は、第二プレス部においてN個の突部を形成可能な領域のうち、(N-M)個の突部を包含する範囲のブランク孔を打ち抜き可能であり、鋼板材を打ち抜く毎に、ブランク孔を打ち抜く位置を360/N度ずつ一方向に変更可能である。よって、積層鋼板製造装置は、周縁に突部を有するプレス鋼板及び積層鋼板を製造可能であって、一つのプレス部である第三プレス部のみの簡潔な構成で、突部を無効化するブランク孔を形成可能である。
【0012】
また、前記積層鋼板製造装置の前記第三プレス部は、前記突部が形成される範囲を包含して打ち抜き可能なN個の第三パンチとN個の第三ダイと、前記上金型が下降するとき、N個の前記第三パンチのうちのM個が前記鋼板材を打ち抜き不能な状態に設定可能なパンチ設定装置を備え、前記パンチ設定装置は、前記第三プレス部における第三プレス部中心の周りに、前記第三プレス部が前記鋼板材を打ち抜く毎に360/N度ずつ前記一方向に回転可能でもよい。
【0013】
この場合、積層鋼板製造装置は、第三プレス部においてパンチ設定装置を備えるので、ブランク孔を打ち抜く位置とブランク孔を打ち抜かない位置とを設定可能である。さらに、パンチ設定装置は、鋼板材を打ち抜く毎に360/N度ずつ一方向に回転可能なので、ブランク孔を打ち抜く位置を容易に変更できる。
【0014】
また、前記積層鋼板製造装置は、前記パンチ設定装置が回転盤を備え、前記回転盤は、前記第三プレス部における前記第三プレス部中心の周りに回転可能であり、円盤下側面において、前記第三プレス部中心を中心とする同一半径上にM個の円盤凹部が形成され、前記第三パンチは、前記第三プレス部中心を中心とする前記同一半径上に配置され、前記円盤凹部の直下にある前記第三パンチは、前記鋼板材を打ち抜き不能な状態であり、(N-M)個の前記第三パンチは、前記鋼板材を打ち抜き可能であり、前記回転盤は、前記第三プレス部が前記鋼板材を打ち抜く毎に360/N度ずつ前記一方向に回転可能でもよい。
【0015】
この場合、積層鋼板製造装置は、パンチ設定装置が回転盤を備え、円盤凹部に対応する位置の第三パンチを打ち抜き不能な状態に設定できるので、回転盤を回転させることで、容易にブランク孔を打ち抜く位置と、ブランク孔を打ち抜かない位置とを設定できる。
【0016】
また、前記積層鋼板製造装置は、前記パンチ設定装置が、前記上下方向において、前記回転盤とそれぞれの前記第三パンチとの間にバックアップピンを備え、前記上金型が下降して前記第三パンチが前記鋼板材を打ち抜くとき、前記円盤凹部の直下の前記第三パンチは、前記バックアップピンが該円盤凹部と接触するまで浮き上がり、打ち抜き不能な状態でもよい。
【0017】
この場合、パンチ設定装置は、上下方向において、回転盤とそれぞれの第三パンチとの間にバックアップピンを備える。回転盤は、回転するときに直接第三パンチと接触しないので、第三パンチは周方向への負荷を受けること無く上下方向への移動精度を維持できる。
【0018】
また、前記積層鋼板製造装置は、前記回転盤と同期回転する回転表示盤を備え、前記回転表示盤は、前記円盤凹部の位置を表示可能でもよい。この場合、回転表示盤によって円盤凹部の位置を確認できるので、連続して進む工程の中でパンチ設定装置の状態を確認することができる。
【0019】
本発明の第二の態様に係る積層鋼板製造方法は、前記積層鋼板製造装置を使用し、前記搬送方向に間欠的に搬送される帯状の前記鋼板材を、環状の前記プレス鋼板に打ち抜いて積層鋼板を製造する方法であって、前記第三プレス部において、前記第二プレス部におけるN個の前記突部を形成可能な領域のうち、(N-M)個の前記ブランク孔を打ち抜く第一工程と、前記第二プレス部において、前記プレス鋼板の前記周縁に前記突部を形成する第二工程と、前記第一プレス部において、前記プレス鋼板の外形を打ち抜いて、すでに打ち抜かれた前記プレス鋼板に積層する第三工程を備え、前記第一工程は、前記第三プレス部が前記鋼板材を打ち抜く毎に、360/N度ずつ前記一方向に打ち抜く位置を変更させる工程を含み、前記第三工程は、前記第一プレス部にて前記プレス鋼板の外形を打ち抜いた後に、前記第一ダイと、すでに積層された前記プレス鋼板を360/N度ずつ前記一方向に回転させる工程を含む。
【0020】
これによれば、積層鋼板製造方法は、第一工程において(N-M)個のブランク孔を打ち抜き、360/N度ずつ一方向に打ち抜く位置を変更させる。よって、第三プレス部における工程のみで、ブランク孔の位置設定と打ち抜きを行うことができる。周縁にM個の突部を有するプレス鋼板を打ち抜き、一方向に360/N度ずつ回転させる転積を行いながら、積層方向に突部の位置を合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第一実施形態である積層鋼板製造装置1aを示す平面図であり、(a)は上金型4の構成を示し、(b)は鋼板材30が各工程において打ち抜かれる状態変化を示し、(c)は下金型5の構成を示す。
図2図1に対して、回転盤8及び第一ダイD1を時計回りに45度回転させた状態を示す。
図3図2に対して、回転盤8及び第一ダイD1を時計回りに45度回転させた状態を示す。
図4】第三プレス部23におけるパンチ設定装置7を示す平面図であり、(a)は回転盤8が停止して、第三プレス部23によって打ち抜き可能な状態を示し、(b)は回転盤8を回転させて円盤凹部Bの位置を変化させる状態を示す。
図5】パンチ設定装置7の動作を示す平面図であり、(a)は円盤凹部Bが第三パンチP31の位置にあり、(b)は円盤凹部Bが第三パンチP31の位置から第三パンチP32の位置に遷移する過程を示し、(c)は円盤凹部Bが第三パンチP32の位置に遷移した状態を示し、(d)及び(e)は円盤凹部Bが第三パンチP32から第三パンチP33へ遷移する過程を示し、(f)は円盤凹部Bが第三パンチP33の位置に遷移した状態を示す。
図6図4(b)の断面I-Iを示す断面図である。
図7図5(f)の断面II-IIを示す断面図である。
図8】プレス鋼板31aを示す平面図である。
図9図8における断面III―IIIを示す断面図であり、積層鋼板36aを示す。
図10】本発明の第二実施形態である積層鋼板製造装置1bを示す平面図であり、(a)は上金型4の構成を示し、(b)は鋼板材30が各工程において打ち抜かれる状態変化を示し、(c)は下金型5の構成を示す。
図11図10に対して、回転盤8及び第一ダイD1を時計回りに60度回転させた状態を示す。
図12】プレス鋼板31bを示す平面図である。
図13図12におけるA視図であり、積層鋼板36bを示す。
図14】本発明の制御装置50を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照し、本発明を具現化した積層鋼板製造装置1、及び積層鋼板製造方法を説明する。なお、発明を実施するための形態、及び参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものである。本発明はこれらに限定されるものではない。図面に記載されている構成は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0023】
<<積層鋼板製造装置1の各実施形態に共通の構成>>
<全体構成>
本発明の第一の態様に係る積層鋼板製造装置1に共通の構成を説明する。図1から図14までを参照して説明するが、主に第一実施形態の積層鋼板製造装置1aを例に説明する。積層鋼板製造装置1は、搬送方向に間欠的に搬送される帯状の鋼板材30を、環状のプレス鋼板31に打ち抜いて積層する装置である。特に、プレス鋼板31の内周縁、又は/及び外周縁の特定位置に突部35を形成し、転積を行って積層鋼板36を製造する装置である。図1等に示すように、積層鋼板製造装置1は、搬送方向に垂直な上下方向において相対的に移動可能な上金型4及び下金型5と、鋼板材30を搬送する搬送装置6と、鋼板材30を打ち抜く複数のプレス部2を備える。鋼板材30は、複数のプレス部2へ移動するときに、位置精度を高めるためにパイロット孔40が形成され、各プレス部2において鋼板材30を打ち抜くときに図示しないパイロットピンが挿入される。
【0024】
図1等に示すように、プレス部2は、上金型4にパンチPを備え、下金型5にダイDを備え、プレス鋼板31の周縁に突部35を形成可能である。Nは自然数であり、MはNよりも小さい自然数である。図8及び図12に示すように、プレス部2は、プレス鋼板31の突部35をM個形成可能である。図8に示す例では、M=1であり、図12に示す例では、M=3である。図1から図3、及び図10図11に示すように、プレス部2は、プレス鋼板31の外形を打ち抜き可能な第一プレス部21と、第一プレス部21の搬送方向の上流に第二プレス部22と、さらに第二プレス部22の上流に第三プレス部23を備える。
【0025】
第一プレス部21は、第一パンチP1と第一ダイD1を備える。第一ダイD1は、プレス鋼板31を打ち抜く毎に第一プレス部中心C1周りに360/N度ずつ一方向に回転可能である。この角度は、打ち抜かれたプレス鋼板31に対して打ち抜くプレス鋼板31を転積するときに、第一ダイD1を回転させる角度である。図1から図3までに示す例では、N=8であり、転積の際に第一ダイD1を回転させる角度は45度である。
【0026】
図1等に示すように、第二プレス部22は、プレス鋼板31が打ち抜かれる周縁に沿って、N個の突部35を形成可能な第二パンチP2と第二ダイD2を備える。なお、図1等に示す例では、第二プレス部22は搬送方向の下流側の第二プレス部22aと上流側の第二プレス部22bとからなり、第二プレス部22aの第二パンチP2aと第二ダイD2aがN個の突部35を打ち抜き可能に構成される。第二プレス部22bは、第二パンチP2bと第二ダイD2bを備える。
【0027】
図1等に示すように、第三プレス部23は、第二プレス部22においてN個の突部35を形成可能な領域のうち、(N-M)個の突部35を包含する範囲のブランク孔3を打ち抜き可能であり、鋼板材30を打ち抜く毎に360/N度ずつ一方向に打ち抜く位置を変更可能である。
【0028】
図1等に示すように、突部35は第三プレス部23と第二プレス部22とによって形成される。すなわち、第三プレス部23において、あらかじめ突部35を無効化するブランク孔3が(N-M)個形成され、第二プレス部22においてブランク孔3に相当する位置の第二パンチP2はブランク孔3を貫通して鋼板材30に対しては空振り状態となる。第二プレス部22は、ブランク孔3が形成されないM個の領域においてのみ突部35を形成する。
【0029】
<全体構成による効果>
以上説明した積層鋼板製造装置1の全体構成により、以下の効果を奏する。図1等に示すように、積層鋼板製造装置1の第二プレス部22は、プレス鋼板31が打ち抜かれる周縁に沿って、N個の突部35を形成可能な第二パンチP2と第二ダイD2を備える。第三プレス部23は、第二プレス部22においてN個の突部35を形成可能な領域のうち、(N-M)個の突部35を包含する範囲のブランク孔3を打ち抜き可能であり、鋼板材30を打ち抜く毎に、ブランク孔3を打ち抜く位置を360/N度ずつ一方向に変更可能である。よって、積層鋼板製造装置1は、周縁に突部35を有するプレス鋼板31及び積層鋼板36を製造可能であって、一つのプレス部2である第三プレス部23のみの簡潔な構成で、突部35を無効化するブランク孔3を形成可能である。
【0030】
<第三プレス部23の構成>
次に、第三プレス部23の構成を説明する。第三プレス部23は、突部35が形成される範囲を包含して打ち抜き可能なN個の第三パンチP3とN個の第三ダイD3を備える。上金型4が下降するとき、N個の第三パンチP3のうちのM個が鋼板材30を打ち抜き不能な状態に設定可能なパンチ設定装置7を備える。
【0031】
図1等に示すように、パンチ設定装置7は、第三プレス部23に形成される。図4及び図5に示すように、パンチ設定装置7は、第三プレス部23における第三プレス部中心C3周りに、第三プレス部23が鋼板材30を打ち抜く毎に360/N度ずつ一方向に回転可能である。図4及び図5に示す例では、N=8であり、パンチ設定装置7は、360/8=45度ずつ回転可能である。第三パンチP3及び第三ダイD3は、ブランク孔3の位置に関わらず、N=8箇所にブランク孔3を形成可能なように、それぞれN=8箇所に形成される。パンチ設定装置7の詳細な構成は後述するが、パンチ設定装置7により、第三プレス部23においてブランク孔3を打ち抜く位置と打ち抜かない位置とが設定される。
【0032】
<第三プレス部23の構成による効果>
以上説明した第三プレス部23の構成によれば、以下の効果を奏する。図4等に示すように、積層鋼板製造装置1は、第三プレス部23においてパンチ設定装置7を備えるので、ブランク孔3を打ち抜く位置とブランク孔3を打ち抜かない位置とを設定可能である。さらに、パンチ設定装置7は、鋼板材30を打ち抜く毎に360/N度ずつ一方向に回転可能なので、ブランク孔3を打ち抜く位置を容易に変更できる。
【0033】
<パンチ設定装置7の構成>
次に、パンチ設定装置7の構成を詳細に説明する。図4及び図5に示すように、パンチ設定装置7は回転盤8を備え、回転盤8は、第三プレス部23における第三プレス部中心C3を中心に回転可能である。図1(a)及び図10(a)に示すように、回転盤8は、図6等に示す円盤下側面9において、第三プレス部中心C3を中心とする同一半径R上にM個の円盤凹部Bが形成される。図4等に示す例では、M=1である。
【0034】
図1(a)等に示すように、第三パンチP3は、第三プレス部中心C3を中心とする同一半径R上に配置される。円盤凹部Bの直下にある第三パンチP3は、図6及び図7を参照して後述するが、鋼板材30を打ち抜き不能な状態であり、(N-M)個の第三パンチP3は、鋼板材30を打ち抜き可能である。例として、図5(a)に示す場合は、第三パンチP3のうち、第三パンチP31が円盤凹部Bの直下にあるため、鋼板材30を打ち抜き不能である。他の第三パンチP32から第三パンチP38までは、鋼板材30を打ち抜き可能である。すなわち、図1(b)等に示すように、第三パンチP32から第三パンチP38までの位置にブランク孔3が打ち抜かれる。
【0035】
回転盤8は、第三プレス部23が鋼板材30を打ち抜く毎に360/N度ずつ一方向に回転可能である。図5に示す例では、一方向は時計回りであり、45度ずつ回転し、図5(a)の状態から図5(c)の状態に遷移して円盤凹部Bの位置が変化する。図5(a)は、円盤凹部Bが第三パンチP31に位置し、図5(c)は円盤凹部Bが第三パンチP32へ移動したことを示す。すると、図2(b)に示すように、ブランク孔3が打ち抜かれる位置が変化する。さらに、回転盤8が回転すると、図5(d)の状態から図5(f)の状態へ遷移し、図3(b)に示すように、ブランク孔3が打ち抜かれる位置が変化する。このとき、円盤凹部Bは第三パンチP32の位置から第三パンチP33の位置へ移動する。回転盤8が回転する角度は、第一プレス部21の第一ダイD1が回転する角度と同じであり、回転方向も同じである。
【0036】
図4から図7までを参照して、パンチ設定装置7の構成をさらに詳細に説明する。図7に示すように、パンチ設定装置7を構成する各部材は、上金型4に固定されるベース38に対して回転可能に構成される。回転盤8は、ベース38の下側に配置され、回転盤軸18に止めねじ28で固定されて一体的に回転する。ベース38の上側にラチェットカム17が配置され、同様に回転盤軸18に固定される。さらに、カバー19を挟んで上側にベルトプーリ33が配置され、同様に回転盤軸18に固定される。
【0037】
図4図5、及び図7に示すように、ラチェットカム17の歯部に係合するラチェットピン14と反転防止25とが配置され、それぞれバネ26によって回転盤軸18に対して径方向に押圧されると共に移動可能である。ラチェットピン14の上側にはスイングバー12が配置され、スイングバー12にはスイングピン13が固定される。反転防止25の上側には、反転防止ケース24が取り付けられる。反転防止ケース24及びスイングバー12の上側にはスライドバー15が配置され、スイングピン13を介してスイングバー12と係合する。ベルトプーリ33の下側には、上金型4に固定されるカバー19が配置される。回転盤軸18とカバー19、ベース38等の固定された部材との間はベアリング29が取り付けられる。
【0038】
次に、図4から図6までを参照して、回転盤8を回転させる機構について説明する。図4に示すように、スイングピン13と係合するスライドバー15は、幅方向に沿って移動可能であり、エアシリンダー20によって駆動される。図4(a)は、スライドバー15が幅方向の左側に寄った状態であり、第三プレス部23によって鋼板材30を打ち抜く待機状態である。回転盤8を回転させるとき、スライドバー15が幅方向の左側から右側に移動する。このときスライドバー15は、スイングピン13を介してスイングバー12が360/N度の角度であって、図4の例では45度回転する移動量だけ移動する。
【0039】
図5(a)から図5(c)までに示すように、ラチェットピン14はスイングバー12と同期して回転し、ラチェットカム17の歯部に係合してラチェットカム17を回転させる。ラチェットカム17の歯部は、ラチェットピン14が幅方向の右側へ移動するときに互いにかみ合う形状であり、ラチェットピン14の回転に伴ってラチェットカム17が回転する。また、反転防止25は、ラチェットカム17が回転する途中に逆回転することを防止するために作用する。反転防止25は、ラチェットカム17の歯部に対してラチェットピン14とは逆のかみ合い方向である。図5(b)、図5(e)に示すように、ラチェットカム17が時計回りに回転するとき、反転防止25は、バネ26の反力に逆らって径方向にリリースする方向へ移動しながら、ラチェットカム17の回転を妨げないようする。ラチェットカム17が逆回転しようとしたときは、反転防止25が歯部にかみ合って反転を防止する。
【0040】
回転盤8は、回転盤軸18を介してラチェットカム17と同期回転するので、ラチェットカム17が回転する角度だけ回転する。回転盤8は一定角度毎に一方向に回転する。この例では時計回りに回転する。スライドバー15は、図5(c)の状態から図5(d)の状態に遷移するように、回転盤8を一定角度回転させた後、待機状態へ移る。この動作は、スライドバー15がエアシリンダー20の作用によって幅方向の左側へ移動することで行われる。このとき、ラチェットピン14は、ラチェットカム17の歯部に対してバネ26(図7参照)の反力に逆らいながらリリースする。このとき、反転防止25がラチェットカム17の歯部にかみ合うので、ラチェットカム17は反転しない。
【0041】
図5(a)から図5(d)までの一連の工程が、第三プレス部23にて鋼板材30が打ち抜かれる度に行われる。図5(d)から図5(f)までの工程は、さらにブランク孔3の位置を回転させるためのもので、円盤凹部Bの位置が第三パンチP32の位置から第三パンチP33の位置に移動する工程を示す。
【0042】
<パンチ設定装置7の構成による効果>
以上説明したパンチ設定装置7の構成によれば、以下の効果を奏する。図4から図7までに示すように、積層鋼板製造装置1は、パンチ設定装置7が回転盤8を備え、円盤凹部Bに対応する位置の第三パンチP3を打ち抜き不能な状態に設定できる。よって、回転盤8を回転させることで、容易にブランク孔3を打ち抜く位置とブランク孔3を打ち抜かない位置とを設定できる。また、回転盤8における円盤凹部Bの数を増減させることでブランク孔3の数を増減できるので、容易に突部35の数を変更することができる。
【0043】
<第三パンチP3の構成>
次に、パンチ設定装置7における第三パンチP3の構成を説明する。図6及び図7に示すように、パンチ設定装置7は、上下方向において、回転盤8とそれぞれの第三パンチP3との間にバックアップピン10を備える。第三パンチP3は、N個の第三パンチP31から第三パンチP3Nまでがそれぞれ独立して上下移動可能である。図1から図9までに示す例では、N=8であり、第三パンチP3は第三パンチP31から第三パンチP38までの8個からなる。バックアップピン10も、第三パンチP3に対応して、それぞれ独立して上下移動可能である。上金型4が下降して第三パンチP3が鋼板材30を打ち抜くとき、円盤凹部Bの直下の第三パンチP3は、バックアップピン10が円盤凹部Bと接触するまで浮き上がり、打ち抜き不能な状態となる。
【0044】
図6及び図7に示すように、第三パンチP3は、上金型4における第三パンチガイド孔37に沿って上下移動可能である。上金型4が下降すると、バックアップピン10が円盤下側面9に押されて下降し、第三パンチP3を押下する。バックアップピン10が円盤凹部Bの直下にあると、バックアップピン10は円盤凹部Bの内部に押し上げられ、直下にある第三パンチP3は鋼板材30に到達せず、打ち抜きが不能となる。バックアップピン10と第三パンチP3とは、上下方向において接触するが、独立して移動可能である。
【0045】
<第三パンチP3の構成による効果>
以上説明した第三パンチP3の構成によれば、以下の効果を奏する。図6及び図7に示すように、パンチ設定装置7は、上下方向において、回転盤8とそれぞれの第三パンチP3との間にバックアップピン10を備える。回転盤8は、回転するときに直接第三パンチP3と接触しないので、第三パンチP3は周方向への負荷を受けること無く上下方向への移動精度を維持できる。また、それぞれの第三パンチP3は独立しているので、例えばN個の第三パンチP3のうちの一つが破損したときに、破損した第三パンチP3を一つだけ交換すればよく、全ての第三パンチP3を交換する必要は無い。よって、メンテナンスによる費用を抑えることができるとともに、容易に交換できる。
【0046】
<第三プレス部23の他の構成例>
なお、以上説明した第三プレス部23の構成は、パンチ設定装置7が回転盤8を備え、N個の第三パンチP3がそれぞれ独立して上下移動可能であるが、次のような構成でもよい。図示しないが、回転盤8と第三パンチP3とが一体となり、第三パンチP3は予め(N-M)個のブランク孔3を打ち抜き可能に形成され、360/N度ずつ回転可能な構成でもよい。この場合、第三パンチP3は鋼板材30を打ち抜く位置に応じてそれぞれ上下移動可能な構成ではなく、上金型4の下降に伴って一体的に下降する構成である。
【0047】
<回転表示盤11の構成>
次に、回転表示盤11を説明する。図4に示すように、パンチ設定装置7は、回転盤8と同期回転する回転表示盤11を備える。回転表示盤11は、円盤凹部Bの位置を表示可能である。具体的には、図4(b)及び図6に示すように、ベルトプーリ33の回転に応じてベルト34が駆動され、回転表示盤11は、ベルトプーリ33が回転した位相分回転する。回転表示盤11には例として側面にN個の第三パンチP3に対応する番号が付されており、回転盤8の円盤凹部Bに対応する第三パンチP3の番号が特定の側面に現れるように構成される。
【0048】
例えば、図4(b)に示すように、回転表示盤11はN=8に対応した8面構成であり、各側面には第三パンチP3において円盤凹部Bが対応する番号が右側側面部に表示される。この場合、第三パンチP32の位置に円盤凹部Bがあり、回転表示盤11の右側側面はs2の表示が現れる。回転表示盤11の各側面は、第三パンチP3における番号順に合わせて、時計回りにs1からs8までが順に並んでいる。
【0049】
<回転表示盤11の構成による効果>
以上説明した回転表示盤11の構成によれば、以下の効果を奏する。図4に示すように、回転表示盤11は、回転盤8の回転に連動して円盤凹部Bの位置を確認できる。よって、連続して進む工程の中で、第三プレス部23の内部にあって目視確認が困難な円盤凹部Bの位置を認識できるので、パンチ設定装置7の状態を確認することができる。
【0050】
<制御装置50の説明>
次に、図14を参照して制御装置50を説明する。積層鋼板製造装置1は、制御装置50によって制御される。制御装置50は、入力装置51が入出力インターフェース60に接続され、ROM62及びRAM63からの情報を加えてCPU61に入力信号が伝達され、ダイ駆動処理、パンチ設定装置駆動処理、搬送駆動源駆動処理、及び金型昇降駆動処理が行われる。作成する積層鋼板36に必要な指示内容が入力装置51に入力され、各種の駆動処理及び制御が行われる。第一ダイD1は、制御装置50によってダイ駆動回路52が制御され、ダイ駆動装置32が駆動される。第一ダイD1は、ダイ駆動装置32によって所定角度回転する。鋼板材30は、搬送駆動回路53が制御されて搬送駆動源54が駆動され、搬送装置6によって搬送される。
【0051】
上金型4は、金型昇降駆動回路55が制御されて金型昇降駆動源56が駆動され、昇降する。パンチ設定装置7のスライドバー15は、制御装置50によってパンチ設定駆動回路57が制御され、パンチ設定装置7が駆動されて移動する。具体的には、パンチ設定装置7のうちのエアシリンダー20が駆動される。エアシリンダー20は、回転盤8を回転させる角度に応じて移動量が制御される。
【0052】
<第一実施形態の積層鋼板製造装置1aの説明>
次に、本発明の第一の態様に係る第一実施形態の積層鋼板製造装置1aを説明する。全体構成はすでに説明したとおりであるが、ここでは積層鋼板製造装置1aに固有の構成を説明する。図1から図9までに示すように、積層鋼板製造装置1aはプレス鋼板31aの内周縁の一箇所に突部35aを形成し、積層鋼板36aを製造する装置である。
【0053】
積層鋼板製造装置1aは、第一プレス部21において、プレス鋼板31aを打ち抜く毎に45度ずつ時計回りに回転して転積を行う。すなわち、N=8である。そのため、図1等に示すように、第一ダイD1は、転積する際に、N=8により45度間隔で時計回りに回転する。第三パンチP3及び第三ダイD3は、それぞれ回転盤軸18を中心に同一半径R1上に等間隔で8箇所に形成される。第三パンチP3は、Nの数に合わせてP31、P32、P33、P34、P35、P36、P37、及びP38の8個からなる。第三パンチP3の番号は、回転盤8が時計回りに回転するのに合わせて、時計回りに順番に付される。第三ダイD3は、第三パンチP3の位置に対応して、D31、D32、D33、D34、D35、D36、D37、及びD38が時計回りに順番が付されて配置される。
【0054】
なお、第三パンチP3と第三ダイD3に付された番号は便宜的なものであり、例えばアルファベット等で示してもよい。なお、これらの番号は、第三パンチP3の近傍に実際に付けてもよいし、或いは、特定の位置に目印を付けてもよい。この順番は、回転表示盤11に表示される番号等に対応するものである。勿論、実際には番号等が付されていなくてもよい。図1(a)に示す状態では、第三パンチP31の位置に円盤凹部Bがあり、第三パンチP31は鋼板材30を打ち抜かないことを示す。同様に、図2(a)は第三パンチP32に、図3(a)は第三パンチP33の位置に円盤凹部Bがあることを示す。
【0055】
図4等に示すように、パンチ設定装置7はすでに説明したように、回転盤8aを45度ずつ時計回りに回転させながら円盤凹部Bの位置を遷移させる。図1(a)等に示すように、円盤凹部Bは1箇所に形成され、図1(b)等に示すように、ブランク孔3は(N-M)=8-1=7箇所に形成される。
【0056】
ブランク孔3aは、突部35aを包含する形状であり、プレス鋼板31aの内周縁の一部を形成する。図1から図2、さらに図3に示すように、プレス鋼板31aを打ち抜く毎にブランク孔3aの位置が変化し、ブランク孔3aが形成されずに突部35aが形成される部分が、時計回りに45度回転するように変化する。
【0057】
図1(a)等に示すように、第二プレス部22aにおいて、第二パンチP2は内周縁においてN=8箇所に突部35aを打ち抜き可能な構造である。このうち、7箇所は第三プレス部23においてブランク孔3aが形成されているので、第二プレス部22aにおいて打ち抜かれる突部35aは1箇所である。
【0058】
図8に示すように、プレス鋼板31aは内周縁の1箇所に突部35aが形成される。また、図9に示すように、積層鋼板36aはプレス鋼板31aが転積されて形成される。その際に、突部35aは積層方向において重なって積層される。
【0059】
<第二実施形態の積層鋼板製造装置1bの説明>
次に、本発明の第一の態様に係る第二実施形態の積層鋼板製造装置1bを説明する。積層鋼板製造装置1bは、積層鋼板製造装置1aに対して突部35bの位置と形状及び数が異なる。図12に示すように、プレス鋼板31bの突部35bは、プレス鋼板31bの外周縁における3箇所に120度間隔で均等に形成される。また、第一プレス部21における第一ダイD1は、プレス鋼板31bの外形を打ち抜く毎に60度ずつ回転して転積する。すなわち、N=6であり、M=3である。
【0060】
図10及び図11に示すように、第三プレス部23における第三パンチP3は、第三パンチP31から第三パンチP36までの6個である。第三ダイD3は、第三パンチP3の位置に対応した位置に第三ダイD31から第三ダイD36までの6個形成される。図10(a)及び図11(a)に示すように、回転盤8bにおける円盤凹部Bは(N-M)=6-3=3箇所において、同一半径R2上に均等間隔である120度毎に形成される。図10(b)及び図11(b)に示すように、ブランク孔3は同一半径R2上に120度毎に3箇所に形成される。
【0061】
図10から図12までに示すように、プレス鋼板31bの突部35bは、外周縁に120度間隔でブランク孔3bが形成されない位置の3箇所に形成される。また、図13に示すように、積層鋼板36bはプレス鋼板31bが転積されて形成される。その際に、突部35bは積層方向において重なって積層される。
【0062】
図10図11に示すように、第二プレス部22bにおいて突部35b内部の孔が打ち抜かれ、第二プレス部22aにおいてスリット孔が打ち抜かれる。第一プレス部21において、外形と同時に突部35bが打ち抜かれる。第一プレス部21は、第一パンチP1及び第一ダイD1がそれぞれ6箇所に突部35bを形成可能な構成であり、ブランク孔3bに該当する箇所は突部35bが形成されない。
【0063】
なお、積層鋼板製造装置1aと積層鋼板製造装置1bとは、それぞれ別の装置として説明したが、一連の装置として構成してもよい。プレス鋼板31aがプレス鋼板31bの内周円の内部に収まる形状であれば、一連の装置にすることができる。例えば、積層鋼板製造装置1aを搬送方向の上流側とし、鋼板材30の幅方向のうちの中心部を使用してプレス鋼板31aを形成する。積層鋼板製造装置1bを下流側に配置し、プレス鋼板31aが打ち抜かれた鋼板材30を連続的に使用して、プレス鋼板31bを形成するようにしてもよい。この構成によれば、鋼板材30は端材が少なくなるので材料コストを低減できる。また、一連の工程によって二種類のプレス鋼板31と積層鋼板36を製造することができる。
【0064】
<積層鋼板製造方法の説明>
次に、本発明の第二の態様に係る積層鋼板製造方法を説明する。積層鋼板製造方法は、すでに説明した積層鋼板製造装置1を使用し、搬送方向に間欠的に搬送される帯状の鋼板材30を、環状のプレス鋼板31に打ち抜いて積層鋼板36を製造する方法である。積層鋼板製造装置1におけるそれぞれの構成の動作、作用はすでに説明したが、ここでは積層鋼板36の製造手順を説明する。なお、積層鋼板製造装置1aを例にして説明するが、積層鋼板製造装置1bを使用する場合も同様の手順である。
【0065】
積層鋼板製造方法は、第三プレス部23において、第二プレス部22におけるN個の突部35を形成可能な領域のうち、(N-M)個のブランク孔3を打ち抜く第一工程を備える。次に、第二プレス部22において、プレス鋼板31の周縁に突部35を形成する第二工程を備える。次に、第一プレス部21において、プレス鋼板31の外形を打ち抜いて、すでに打ち抜かれたプレス鋼板31に積層する第三工程を備える。
【0066】
第一工程は、第三プレス部23が鋼板材30を打ち抜く毎に、360/N度ずつ一方向に打ち抜く位置を変更させる工程を含む。第三工程は、第一プレス部21にてプレス鋼板31の外形を打ち抜いた後に、第一ダイD1と、すでに積層されたプレス鋼板31を360/N度ずつ一方向に回転させる工程を含む。
【0067】
具体的に説明すると、図1から図3、及び図10図11に示すように、積層鋼板製造方法は、鋼板材30に対して四つのステージによって打ち抜きを行い、プレス鋼板31を形成する。図1等の例では、第二プレス部22は二つのステージである第二プレス部22aと第二プレス部22bによって鋼板材30の打ち抜きを行う。まず、最初に第三プレス部23において、(N-M)個の突部35を包含する範囲のブランク孔3を打ち抜く。図1等の例では、N=8、M=1なので、7個のブランク孔3を打ち抜く。
【0068】
図1(a)に示すように、第二プレス部22bは、突部35以外の孔形状を打ち抜く。第二プレス部22aは、プレス鋼板31aの内周縁における突部35aと、内周部分を同時に打ち抜く。第二プレス部22aにおける第二パンチP2aは、プレス鋼板31の内周縁部において周方向に均等にN箇所である8箇所に突部35を形成可能な形状である。第二工程において突部35を打ち抜くとき、第二パンチP2はブランク孔3が無い領域において突部35を打ち抜いて形成する。ブランク孔3がある領域においては、第二パンチP2はブランク孔3を貫通するため、突部35を形成しない。すなわち、第二プレス部22aは、突部35を形成する位置に関わらず、常にN箇所に突部35を形成可能であり、ブランク孔3の位置によって突部35を形成する位置が決められる。
【0069】
第三工程は、プレス鋼板31の外形を打ち抜いて、すでに打ち抜かれたプレス鋼板31に転積する工程である。第一プレス部21の第一ダイD1は、プレス鋼板31を打ち抜く毎に360/N度の角度ずつ時計回りに回転する。突部35の位置は、第一工程において打ち抜かれたブランク孔3の位置によって決められ、第三工程においてプレス鋼板31を転積したときに、突部35の位置が積層する上下において一致する。ブランク孔3を打ち抜く位置は、すでに説明した第三プレス部23のパンチ設定装置7を駆動制御して決定する。
【0070】
<積層鋼板製造方法の効果>
以上説明した積層鋼板製造方法によれば、以下の効果を奏する。積層鋼板製造方法は、第一工程において(N-M)個のブランク孔3を打ち抜き、360/N度ずつ一方向に打ち抜く位置を変更させる。よって、第三プレス部23における工程のみで、ブランク孔3の位置設定と打ち抜きを行うことができる。周縁にM個の突部35を有するプレス鋼板31を打ち抜き、一方向に360/N度ずつ回転させる転積を行いながら、積層方向に突部35の位置を合わせることができる。
【符号の説明】
【0071】
1、1a、1b 積層鋼板製造装置
2 プレス部
3、3a、3b ブランク孔
4 上金型
5 下金型
6 搬送装置
7 パンチ設定装置
8、8a、8b 回転盤
9 円盤下側面
10 バックアップピン
11 回転表示盤
21 第一プレス部
22、22a、22b 第二プレス部
23 第三プレス部
30 鋼板材
31、31a、31b プレス鋼板
35、35a、35b 突部
36、36a、36b 積層鋼板
B 円盤凹部
C1 第一プレス部中心
C3 第三プレス部中心
D ダイ
D1 第一ダイ
D2、D2a、D2b 第二ダイ
D3 第三ダイ
P パンチ
P2 第二パンチ
P3 第三パンチ
R、R1、R2 半径

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14