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  • 特開-電子機器 図1
  • 特開-電子機器 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027215
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   A61B 7/04 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
A61B7/04 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129822
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】720009479
【氏名又は名称】オンキヨー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】和田 浩
(57)【要約】
【課題】正常に信号の波形分析を行うことが可能な手段を提供すること。
【解決手段】電子機器は、信号のゲインを調整し、ゲインを調整した信号レベルを検出する。電子機器は、検出した信号レベルが、所定値を超えている場合、現在のゲインよりもゲインを下げて、信号のゲインを調整する。電子機器は、聴診音を採取するためのセンサーを備える。センサーは、採取した聴診音を信号として出力し、電子機器は、センサーから出力される信号のゲインを調整する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号のゲインを調整し、
ゲインを調整した信号レベルを検出し、
検出した信号レベルが、所定値を超えている場合、現在のゲインよりもゲインを下げて、信号のゲインを調整することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
複数のゲインを有し、複数のゲインのうちのいずれかのゲインで、信号のゲインを調整することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
検出した信号レベルが、所定値を超えている場合、現在のゲインよりも1つ小さいゲインで、信号のゲインを調整することを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
自機器の電源がオフからオンとなった後、複数のゲインのうち最も大きいゲインで、信号のゲインを調整することを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項5】
第1ボタンをさらに備え、
前記第1ボタンの操作を受け付けた場合、複数のゲインのうち最も大きいゲインで、信号のゲインを調整することを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項6】
第2ボタンをさらに備え、
前記第2ボタンの操作を受け付けた場合、現在のゲインよりも1つ小さいゲインで、信号のゲインを調整することを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項7】
聴診音を採取するためのセンサーを備え、
前記センサーは、採取した聴診音を信号として出力し、
前記センサーから出力される信号のゲインを調整することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項8】
アナログ信号のゲインを調整し、
ゲインを調整したアナログ信号を、デジタル信号に変換することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号のゲインを調整する機能を有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルオーディオインターフェースを備える電子機器には、アナログ信号をデジタル信号にA/D変換し、変換したデジタル信号をデジタルオーディオインターフェースに入力する入力回路(以下、「ADC入力回路」という。)が用いられる。ADC入力回路の最大許容アナログ入力レベルは、通常、グラウンド(GND)から電源電圧(TTLレベルの場合、+5V)の間に設定されている。この理由は、A/D変換後のデジタル回路が、グラウンドから電源電圧の間で動作するからである。ADC入力回路に、最大許容レベルを超えるアナログ信号(アナログ電圧)が入力された場合、入力されたアナログ信号は、正常にA/D変換されず、大きなデジタルノイズの原因となる。このため、通常、最大許容アナログ入力レベルを超えないように、アナログレベルは、設定される必要がある。
【0003】
しかしながら、従来のリミッター機能、コンプレッサー機能等の自動レベル調整(Automatic Level Control = ALC)の場合、波形の変形、圧縮を伴うため、A/D変換後のFFT(fast Fourier transform、高速フーリエ変換)等を伴う波形分析が実施される場合、波形の変形、圧縮のため、正常に波形分析ができない場合があった。なお、自動レベル調整については、特許文献1を参照されたい。
【0004】
図2は、最大許容レベルを超えるアナログ信号の波形の例を示す図である。図2において、2つの周期的な波形のうち、信号レベルが大きい波形は、ACD入力回路に入力される元の波形である。信号レベルが小さい波形は、ADC入力回路に入力された波形である。図2(a)は、リミッターダイオードなしであり、リファレンス電圧が変動しているため、正常なA/D変換を行うことができない。図2(b)は、リミッターダイオードありであり、信号レベルが小さい波形においては、波形がリミット(上下電圧カット)されている。この場合、A/D変換を行うことができるが、変換後のデジタルデータに、リミット分のデータ誤差(波形歪成分)が含まれてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-160281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、回路の許容入力を超えないように信号レベルを調整するため、自動レベル調整が用いられると、波形の変形、圧縮のため、正常に信号の波形分析ができないという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、正常に信号の波形分析を行うことが可能な手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明の電子機器は、信号のゲインを調整し、ゲインを調整した信号レベルを検出し、検出した信号レベルが、所定値を超えている場合、現在のゲインよりもゲインを下げて、信号のゲインを調整することを特徴とする。
【0009】
本発明では、検出された信号レベルが、所定値を超えている場合、現在のゲインよりもゲインを下げて、信号のゲインが調整される。従って、従来のリミッター機能、コンプレッサー機能等の自動レベル調整が行われない。これにより、信号波形の変形、圧縮がされずに、信号を回路の許容入力レベル以下にできるため、正常に信号の波形分析を行うことができる。
【0010】
第2の発明の電子機器は、第1の発明の電子機器において、複数のゲインを有し、複数のゲインのうちのいずれかのゲインで、信号のゲインを調整することを特徴とする。
【0011】
第3の発明の電子機器は、第2の発明の電子機器において、検出した信号レベルが、所定値を超えている場合、現在のゲインよりも1つ小さいゲインで、信号のゲインを調整することを特徴とする。
【0012】
第4の発明の電子機器は、第2の発明の電子機器において、自機器の電源がオフからオンとなった後、複数のゲインのうち最も大きいゲインで、信号のゲインを調整することを特徴とする。
【0013】
第5の発明の電子機器は、第2の発明の電子機器において、第1ボタンをさらに備え、前記第1ボタンの操作を受け付けた場合、複数のゲインのうち最も大きいゲインで、信号のゲインを調整することを特徴とする。
【0014】
第6の発明の電子機器は、第2の発明の電子機器において、第2ボタンをさらに備え、前記第2ボタンの操作を受け付けた場合、現在のゲインよりも1つ小さいゲインで、信号のゲインを調整することを特徴とする。
【0015】
第7の発明の電子機器は、第1の発明の電子機器において、聴診音を採取するためのセンサーを備え、前記センサーは、採取した聴診音を信号として出力し、前記センサーから出力される信号のゲインを調整することを特徴とする。
【0016】
第8の発明の電子機器は、第1の発明の電子機器において、アナログ信号のゲインを調整し、ゲインを調整したアナログ信号を、デジタル信号に変換することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、信号波形の変形、圧縮がされずに、信号を回路の許容入力レベル以下にできるため、正常に信号の波形分析を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】アナログ信号のゲイン調整を行う聴診器の処理動作を示すフローチャートである。
図2】最大許容レベルを超えるアナログ信号の波形の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、本発明が、聴診器に適用される例を説明する。本実施形態に係る聴診器は、ピエゾセンサー、増幅器、ADC入力回路、デジタルインターフェース、ノーマルゲインボタン、ローゲインボタン、電源ボタン等を備える。
【0020】
ピエゾセンサーは、聴診音を採取するためのものである。ピエゾセンサーは、ピエゾ素子等から構成されており、採取した聴診音をアナログ信号として出力する。増幅器は、ピエゾセンサーから出力されるアナログ信号を増幅する。増幅器によって増幅されたアナログ信号は、ADC入力回路に出力される。ADC入力回路は、アナログ信号をデジタル信号にA/D変換し、変換したデジタル信号をデジタルオーディオインターフェースに入力する入力回路である。ADC入力回路については、詳述する。
【0021】
デジタルオーディオインターフェースは、例えば、USBインターフェースであり、USB規格に従った信号のやり取りを行うためのものである。聴診器は、USBインターフェースを介して、USBケーブルによって、例えば、パーソナルコンピューターに接続される。聴診器からパーソナルコンピューターには、聴診器によって聴取された聴診音が、デジタル信号として出力される。パーソナルコンピューターは、聴診器から出力されるデジタル信号(聴診音)を、ハードディスク等の記憶部に記憶する。
【0022】
ノーマルゲインボタンは、入力ゲインを最大とする指示を受け付けるためのボタンである。聴診器の使用者は、ノーマルゲインボタンを操作(押下)して、入力ゲインを最大とすることを聴診器に指示することができる。聴診器は、ノーマルゲインボタンの操作を受け付けて、入力ゲインを最大とする。聴診器の使用者は、聴診音の採取開始時、ノーマルゲインを操作して、入力ゲインを最大とする。ローゲインボタンは、現在のゲインよりも1つ小さいゲインとすることの指示を受け付けるためのボタンである。聴診器の使用者は、ローゲインボタンを操作(押下)して、現在のゲインよりも1つ小さいゲインとすることを聴診器に指示することができる。聴診器は、ローゲインボタンの操作を受け付けて、現在のゲインよりも1つ小さいゲインとする。
【0023】
電源ボタンは、聴診器の電源のオン又はオフを受け付けるためのボタンである。聴診器の使用者は、電源ボタンを操作(押下)して、聴診器の電源オン又はオフを聴診器に指示することができる。聴診器は、電源ボタンの操作を受け付けて、聴診器の電源をオン又はオフとする。
【0024】
ADC入力回路は、増幅器からのアナログ信号のゲインを調整する。ADC入力回路は、ゲインを調整したアナログ信号レベルを検出する。ADC入力回路は、検出したアナログ信号レベルが、所定値を超えている場合、現在のゲインよりもゲインを下げて、信号のゲインを調整する。ここで、所定値は、ADC入力回路の許容入力レベルである。
【0025】
例えば、ADC入力回路は、複数のゲインを有し、複数のゲインのうちのいずれかのゲインで、信号のゲインを調整する。例えば、ADC入力回路は、ノーマルゲインと、ローゲインと、の2つのゲインを有する。ノーマルゲインは、ローゲインよりもゲインが大きい。ADC入力回路は、ゲインが2つである場合、聴診器の電源がオフからオンとなった後、ノーマルゲインに設定し、ノーマルゲインで、アナログ信号のゲインを調整する。ADC入力回路は、ノーマルゲインでアナログ信号のゲインを調整した後、検出した信号レベルが、所定値を超えている場合、ローゲインに設定し、ローゲインで、アナログ信号のゲインを調整する。
【0026】
また、ADC入力回路は、ノーマルゲインボタンの操作を受け付けた場合、ノーマルゲインに設定し、ノーマルゲインで、アナログ信号のゲインを調整する。また、ADC入力回路は、ローゲインボタンの操作を受け付けた場合、ノーマルゲインからローゲインに設定し、ローゲインで、アナログ信号のゲインを調整する。ADC入力回路は、ゲインを調整したアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0027】
なお、3つ以上の複数のゲインがある場合、ADC入力回路は、聴診器の電源がオフからオンとなった後、複数のゲインのうち最も大きいゲインに設定し、複数のゲインのうち最も大きいゲインで、アナログ信号のゲインを調整する。ADC入力回路は、ノーマルゲインでアナログ信号のゲインを調整した後、検出した信号レベルが、所定値を超えている場合、現在のゲインよりも1つ小さいゲインに設定し、現在のゲインよりも1つ小さいゲインで、アナログ信号のゲインを調整する。
【0028】
また、ADC入力回路は、ノーマルゲインボタンの操作を受け付けた場合、複数のゲインのうち最も大きいゲインに設定し、複数のゲインのうち最も大きいゲインで、アナログ信号のゲインを調整する。また、ADC入力回路は、ローゲインボタンの操作を受け付けた場合、現在のゲインよりも1つ小さいゲインに設定し、現在のゲインよりも1つ小さいゲインで、アナログ信号のゲインを調整する。ADC入力回路は、ゲインを調整したアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0029】
図1は、アナログ信号のゲイン調整を行う聴診器の処理動作を示すフローチャートである。聴診器の電源がオンからオフとなった後、ADC入力回路は、入力ゲインをノーマルゲインに設定する(S1)。次に、ADC入力回路は、入力されるアナログ信号が、所定値よりも大きいか否かを判断する(S2)。ADC入力回路は、入力されるアナログ信号が、所定値よりも大きくないと判断した場合(S2:No)、ローゲインボタンが押下(操作)されたか否かを判断する(S3)。ADC入力回路は、ローゲインボタンが押下されていないと判断した場合(S3:No)、電源がオフになったか否かを判断する(S4)。
【0030】
ADC入力回路は、電源がオフになっていないと判断した場合(S4:No)、ノーマルゲインボタンが押下(操作)されたか否かを判断する(S5)。ADC入力回路は、ノーマルゲインボタンが押下されていないと判断した場合(S5:No)、S2の処理を実行する。
【0031】
ADC入力回路は、入力されるアナログ信号が、所定値よりも大きいと判断した場合(S2:Yes)、ローゲインボタンが押下されたと判断した場合(S3:Yes)、入力ゲインをローゲインに設定する(S6)。また、ADC入力回路は、電源がオフになったと判断した場合(S4:Yes)、処理を終了する。
【0032】
聴診器は、心音等の聴診音を採取するために利用される。聴診音が心音である場合、心音は、繰り返し波形である。本実施形態に係る聴診器は、心音等の繰り返し波形の場合、最初の入力レベルが、許容入力レベルを超えた場合、設定されたレベル分、その入力レベルを下げて入力する。入力レベルを下げても、信号レベルが、許容入力レベルを超えている場合、聴診器は、再度設定されたレベル分、その入力レベルを下げて入力し、許容入力レベル以下になるまで、この動作を繰り返す。
【0033】
以上説明したように、本実施形態では、検出されたアナログ信号レベルが、所定値を超えている場合、現在のゲインよりもゲインを下げて、アナログ信号のゲインが調整される。従って、従来のリミッター機能、コンプレッサー機能等の自動レベル調整が行われない。これにより、信号波形の変形、圧縮がされずに、アナログ信号を、回路の許容入力レベル以下にできるため、正常に信号の波形分析を行うことができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明を適用可能な形態は、上述の実施形態には限られるものではなく、以下に例示するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることが可能である。
【0035】
上述の実施形態においては、本発明が、聴診器に適用される例について説明したが、これに限らず、本発明は、信号のゲインを調整する機能を有する電子機器に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、信号のゲインを調整する機能を有する電子機器に好適に採用され得る。
図1
図2