(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027219
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
A61B 7/04 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
A61B7/04 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129826
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】720009479
【氏名又は名称】オンキヨー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 誠
(72)【発明者】
【氏名】武島 儀忠
(57)【要約】
【課題】ハムノイズの混入を防止可能な手段を提供すること。
【解決手段】聴診器1(電子機器)は、回路と、回路を収容する筐体2と、筐体2に設けられ、外部に露出したアースプレート6と、を備える。聴診器1は、回路が載置される基板をさらに備える。筐体2は、基板を収容している。アースプレート6は、基板の回路が載置された側であって、回路を囲う位置に設けられている。筐体2は、人体に接触する接触面に対して、略垂直な方向に延びる側壁2a、2bを有している。アースプレート6は、側壁2a、2bに設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路と、
前記回路を収容する筐体と、
前記筐体に設けられ、外部に露出したアースプレートと、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記回路が載置される基板をさらに備え、
前記筐体は、前記基板を収容し、
前記アースプレートは、前記基板の前記回路が載置された側であって、前記回路を囲う位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記筐体は、対象物に接触する接触面に対して、略垂直な方向に延びる側壁を有し、
前記アースプレートは、前記側壁に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記筐体は、対象物に接触する接触面に対して、略垂直な方向に延びる側壁を有し、
前記側壁は、接触面側に凹んでいることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
前記アースプレートは、前記側壁の凹んだ部分に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記筐体は、対象物に接触する接触面と対向する上壁を有し、
前記アースプレートは、前記上壁に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項7】
ピエゾ素子をさらに備え、
前記回路には、前記ピエゾ素子からの信号が入力されることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項8】
前記回路は、前記ピエゾ素子からの信号を増幅する増幅器を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項9】
聴診器であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項10】
前記基板は、GND層を備えることを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
聴診器の中には、マイク等のセンサーにより電子的に心音等の音を採取し、採取した音を増幅し、増幅した音を医師等に聴取させる、いわゆる電子聴診器と呼ばれるものがある(例えば、特許文献1参照。)。また、心電図を計測するための心電計がある。電子聴診器においては、生体音(聴診音)を取得するため、また、心電計においては、心電図を取得するため、人体に近づけられる。これら電子機器(電子聴診器、心電計)には、電子回路が含まれているため、電子回路が人体近くに位置すると、電灯線のハムノイズ等、周囲環境からのノイズが問題となる場合がある。この原因は、(1)電子回路と周囲の電位の変動とが、電磁的に結合すること、また、センサーが含まれている場合、(2)センサーの入力回路は、ハイインピーダンスの入力回路となっていること、等である。
【0003】
人体に接触させて測定し、生体音を取得する電子聴診器においては、例えば、ピエゾ素子が用いられており、特に、ハイインピーダンスのピエゾ素子を含む回路において、ノイズが顕著となる。
【0004】
心電計のように、人体の電位そのものを測定する機器では、アースを個別のクリップでとったり、GNDプレートを設けたりしている(特許文献2の段落0018には、GND電極が設けられていることが記載されている。)。ここで、直接、人体の電位を測定しない電子聴診器には、GNDプレートは、設けられていない。しかしながら、ハイインピーダンス入力の増幅器を人体に近づけることによるハムノイズの混入は避けられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-242849号公報
【特許文献2】特開2021-078596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、電子機器が人体に近づけられた場合、ハムノイズが混入するという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、ハムノイズの混入を防止可能な手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明の電子機器は、回路と、前記回路を収容する筐体と、前記筐体に設けられ、外部に露出したアースプレートと、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明では、アースプレートは、筐体に設けられ、外部に露出している。電子機器の使用者が、電子機器を人体に近づけようとしたとき、筐体を手で握って、電子機器を人体に近づけるため、必然的に手がアースプレートに接触する。これにより、ハムノイズの混入を防止することができる。
【0010】
ここで、「アースプレート」とは、「アース」をとるためのプレートを意味しているが、「グラウンド(GND)」をとるための「グラウンド(GND)プレート」を含む概念である。
【0011】
第2の発明の電子機器は、第1の発明の電子機器において、前記回路が載置される基板をさらに備え、前記筐体は、前記基板を収容し、前記アースプレートは、前記基板の前記回路が載置された側であって、前記回路を囲う位置に設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明では、アースプレートは、基板の回路が載置された側であって、回路を囲う位置に設けられている。このため、グラウンドと信号とが作るループを最小化することができ、よりハムノイズの混入を防ぐことができる。
【0013】
第3の発明の電子機器は、第1の発明の電子機器において、前記筐体は、対象物に接触する接触面に対して、略垂直な方向に延びる側壁を有し、前記アースプレートは、前記側壁に設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明では、アースプレートは、対象物に接触する接触面に対して、略垂直な方向に延びる側壁に設けられている。電子機器の使用者は、側壁を掴んで使用するため、使用者の手がアースプレートに接触しやすい。
【0015】
第4の発明の電子機器は、第1の発明の電子機器において、前記筐体は、対象物に接触する接触面に対して、略垂直な方向に延びる側壁を有し、前記側壁は、接触面側に凹んでいることを特徴とする。
【0016】
本発明では、対象物に接触する接触面に対して、略垂直な方向に延びる筐体の側壁は、接触面側に凹んでいる。このため、電子機器の使用者は、側壁の凹んだ部分を掴んで使用しやすい。
【0017】
第5の発明の電子機器は、第4の発明の電子機器において、前記アースプレートは、前記側壁の凹んだ部分に設けられていることを特徴とする。
【0018】
本発明では、アースプレートは、筐体の側壁の凹んだ部分に設けられている。電子機器の使用者は、側壁の凹んだ部分を掴んで使用するため、使用者の手がアースプレートに接触しやすい。
【0019】
第6の発明の電子機器は、第1の発明の電子機器において、前記筐体は、対象物に接触する接触面と対向する上壁を有し、前記アースプレートは、前記上壁に設けられていることを特徴とする。
【0020】
本発明では、アースプレートは、対象物に接触する接触面と対向する筐体の上壁に設けられている。電子機器の使用者は、筐体を掴んで接触面を対象物に接触させるため、使用者の手が、接触面と対向する筐体の上壁に設けられたアースプレートに接触しやすい。
【0021】
第7の発明の電子機器は、第1の発明の電子機器において、ピエゾ素子をさらに備え、前記回路には、前記ピエゾ素子からの信号が入力されることを特徴とする。
【0022】
ピエゾ素子は、ハイインピーダンスであるため、ピエゾ素子からの信号が入力される回路も、ハイインピーダンスとなり、ハムノイズが混入しやすくなる。本発明では、電子機器は、ピエゾ素子を備えているが、アースプレートにより、ハムノイズの混入を防止することができる。
【0023】
第8の発明の電子機器は、第1の発明の電子機器において、前記回路は、前記ピエゾ素子からの信号を増幅する増幅器を含んでいることを特徴とする。
【0024】
ピエゾ素子は、ハイインピーダンスであるため、ピエゾ素子からの信号を受け、増幅する増幅器もハイインピーダンスとなり、ハムノイズが混入しやすくなる。本発明では、電子機器は、増幅器を備えているが、アースプレートにより、ハムノイズの混入を防止することができる。
【0025】
第9の発明の電子機器は、第1の発明の電子機器において、聴診器であることを特徴とする。
【0026】
第10の発明の電子機器は、第2の発明の電子機器において、前記基板は、GND層を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ハムノイズの混入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態に係る聴診器を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る聴診器を示す斜視図である。
【
図3】筐体内のプリント基板、回路を示すイメージ図である。
【
図4】筐体内のプリント基板、回路を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、及び、
図2は、本発明の実施形態に係る聴診器1(電子機器)を示す斜視図である。以下では、ピエゾ素子3が設けられ、聴診対象に接触する接触面側を正面、正面と反対側を背面として説明する。聴診器1の使用者は、聴診器1の背面側から、聴診器1を手で握って、聴診器1の正面側を聴診対象に当てて、使用する。
【0030】
聴診器1は、正面視、略砂時計形状である。聴診器1は、筐体2と、ピエゾ(圧電)素子3と、ホルダー4と、等を備える。筐体2は、内部に、プリント基板、バッテリー等を収容する。本実施形態では、聴診器1の正面側に、2つのピエゾ素子3が設けられている。なお、本実施形態では、2つのピエゾ素子3が設けられているが、ピエゾ素子3の数は、2つに限られず、1つ、3つ以上であってもよい。ピエゾ素子3は、扁平な略円盤形状である。ピエゾ素子3は、ホルダー4に取り付けられている。
【0031】
本実施形態では、ネジ5によって、ピエゾ素子3は、ホルダー4に3か所で固定されている。具体的には、ネジ5は、ピエゾ素子3の外縁(外周)を3か所でホルダー4に固定している。
【0032】
聴診器1は、上述の通り、人体(対象物)に接触する接触面を有する。接触面は、ピエゾ素子3に対応した箇所に位置し、ピエゾ素子3に対応した形状である。本実施形態では、ピエゾ素子3は、略円盤形状であるため、接触面は、これに対応した略円形状である。また、ピエゾ素子3は、2つであるため、接触面も、2つである。
【0033】
筐体2は、接触面に対して、略垂直な方向に延びる側壁2a、2bを有する。側壁2a、2bは、聴診器1の長手方向に延びている部分である。言い換えれば、側壁2a、2bは、ピエゾ素子3の並び方向に延びている部分である。側壁2a、2bは、接触面側、言い換えれば、内側に凹んでいる。また、筐体2は、人体に接触する接触面と対向する上壁2cを有している。
【0034】
聴診器1は、さらに、アースプレート6を備えている。アースプレート6は、筐体2に設けられ、筐体2から外部に露出している。具体的には、アースプレート6は、筐体2の両側壁2a、2bにそれぞれ設けられている。さらに具体的には、アースプレート6は、両側壁2a、2bの凹んだ部分に設けられている。
【0035】
上述したように、筐体2は、プリント基板を収容している。プリント基板には、増幅器をはじめ、回路が載置されている。増幅器は、ピエゾ素子3によって採取された聴診音を増幅する。
図3、及び、
図4は、筐体2内のプリント基板、回路を示すイメージ図である。
図3は、筐体2の長手方向から見たイメージ図である。プリント基板の裏側には、GND層(グラウンド層)が設けられている。アースプレート6は、上述したように、両側壁2a、2bの凹んだ部分に設けられているが、この位置は、プリント基板の回路が載置された側であって、回路を囲う位置である。すなわち、アースプレート6は、プリント基板の回路が載置された側であって、回路を囲う位置に設けられている。また、アースプレート6は、回路の直近に設けられている。回路には、入力回路等、ハイインピーダンスの回路が含まれている。
【0036】
なお、アースプレートは、上壁2cに設けられていてもよい。本実施形態では、上壁2cに、聴診器1を身体に固定するためのベルトが挿通されるベルトループを構成する部材7が設けられているが、この位置に、アースプレートが設けられていてもよい。
【0037】
なお、「アースプレート」とは、「アース」をとるためのプレートを意味しているが、「グラウンド(GND)」をとるための「グラウンド(GND)プレート」を含む概念である。
【0038】
以上説明したように、本実施形態では、アースプレート6は、筐体2に設けられ、外部に露出している。聴診器1の使用者が、聴診器1を人体に近づけようとしたとき、筐体2を手で握って、聴診器1を人体に近づけるため、必然的に手がアースプレート6に接触する。これにより、ハムノイズの混入を防止することができる。
【0039】
また、本実施形態では、アースプレート6は、プリント基板の回路が載置された側であって、回路を囲う位置に設けられている。このため、グラウンドと信号とが作るループを最小化することができ、よりハムノイズの混入を防ぐことができる。
【0040】
また、本実施形態では、アースプレート6は、人体に接触する接触面に対して、略垂直な方向に延びる側壁2a、2bに設けられている。聴診器1の使用者は、側壁2a、2bを掴んで使用するため、使用者の手がアースプレートに接触しやすい。
【0041】
また、本実施形態では、人体に接触する接触面に対して、略垂直な方向に延びる筐体2の側壁2a、2bは、接触面側に凹んでいる。このため、聴診器1の使用者は、側壁2a、2bの凹んだ部分を掴んで使用しやすい。
【0042】
また、本実施形態では、アースプレート6は、筐体2の側壁2a、2bの凹んだ部分に設けられている。聴診器1の使用者は、側壁2a、2bの凹んだ部分を掴んで使用するため、使用者の手がアースプレート6に接触しやすい。
【0043】
また、本実施形態では、聴診器1は、ピエゾ素子3を備えている。ピエゾ素子3は、ハイインピーダンスであるため、ピエゾ素子からの信号が入力される回路も、ハイインピーダンスとなり、ハムノイズが混入しやすくなる。しかしながら、アースプレート6により、ハムノイズの混入を防止することができる。
【0044】
また、本実施形態では、聴診器1は、増幅器を備えている。上述のように、ピエゾ素子3は、ハイインピーダンスであるため、ピエゾ素子3からの信号を受け、増幅する増幅器もハイインピーダンスとなり、ハムノイズが混入しやすくなる。しかしながら、アースプレート6により、ハムノイズの混入を防止することができる。
【0045】
また、アースプレートは、人体に接触する接触面と対向する筐体2の上壁2cに設けられていてもよい。聴診器1の使用者は、筐体2を掴んで接触面を対象物に接触させるため、使用者の手が、接触面と対向する筐体2の上壁2cに設けられたアースプレートに接触しやすい。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明を適用可能な形態は、上述の実施形態には限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、電子機器に好適に採用され得る。
【符号の説明】
【0048】
1 聴診器(電子機器)
2 筐体
2a、2b 側壁
2c 上壁
3 ピエゾ素子
6 アースプレート