(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002723
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】ポケット部形成装置及びブリスタ包装機
(51)【国際特許分類】
B65B 47/04 20060101AFI20231228BHJP
B65B 9/04 20060101ALI20231228BHJP
B65B 47/02 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B65B47/04
B65B9/04
B65B47/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102100
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006677
【氏名又は名称】アステラス製薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】西田 航大
(72)【発明者】
【氏名】三橋 充
(72)【発明者】
【氏名】後藤 拓也
【テーマコード(参考)】
3E050
【Fターム(参考)】
3E050AA03
3E050AA08
3E050AB02
3E050AB08
3E050BA04
3E050BA11
3E050BA12
3E050CA01
3E050CA06
3E050CB03
3E050CB07
3E050DA01
3E050DA06
3E050DD04
3E050DF06
3E050FA01
3E050FB01
3E050GB01
3E050GC07
(57)【要約】
【課題】中間層の融点が外層の融点よりも低い容器フィルムを用いる場合において、容器フィルムの加熱時における比較的低融点の中間層が溶け出すことをより確実に防止する。
【解決手段】ポケット部形成装置は、容器フィルム3の上下に配置された上加熱板1512及び下加熱板1522を有し、上加熱板1512及び下加熱板1522によって上下から容器フィルム3を挟持しつつ加熱することにより、容器フィルム3の外層3b及び中間層3aを加熱して軟化させることが可能な加熱装置15を備える。加熱装置15は、上加熱板1512及び下加熱板1522により容器フィルム3を挟持したときに、該容器フィルム3の長手方向に連続する該容器フィルム3における幅方向端縁側領域3xが上加熱板1512及び下加熱板1522によって挟持されないように構成される。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の容器フィルムに対し、内容物を収容するためのポケット部を形成するためのポケット部形成装置であって、
前記容器フィルムは、樹脂製の2つの外層と該外層に挟まれた樹脂製の中間層とを有するとともに、前記中間層の融点が前記外層の融点よりも低いものであり、
前記容器フィルムの上下に配置された上加熱板及び下加熱板を有し、前記上加熱板及び前記下加熱板によって上下から前記容器フィルムを挟持しつつ加熱することにより、前記外層及び前記中間層を加熱して軟化させることが可能な加熱手段と、
前記加熱手段により軟化した前記容器フィルムを変形させて、前記容器フィルムに前記ポケット部を形成する成形手段とを備え、
前記加熱手段は、前記上加熱板及び前記下加熱板により前記容器フィルムを挟持したときに、該容器フィルムの長手方向に連続する該容器フィルムにおける幅方向端縁側領域が前記上加熱板及び前記下加熱板によって挟持されないように構成されていることを特徴とするポケット部形成装置。
【請求項2】
前記加熱手段は、前記幅方向端縁側領域の鉛直下方に位置し、前記下加熱板における前記容器フィルムを挟持する部分よりも下方に没した端縁対応部を有し、
前記幅方向端縁側領域の幅が、前記下加熱板における前記容器フィルムを挟持する部分を基準とした前記端縁対応部の深さ未満となるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のポケット部形成装置。
【請求項3】
前記端縁対応部の表面は、フッ素樹脂でコーティングされてなることを特徴とする請求項2に記載のポケット部形成装置。
【請求項4】
容器フィルムに形成されたポケット部に内容物が収容されるとともに、該ポケット部を塞ぐように前記容器フィルムに対しカバーフィルムが取着されてなるブリスタシートを製造するためのブリスタ包装機であって、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポケット部形成装置と、
前記ポケット部形成装置により形成された前記ポケット部に内容物を充填する充填手段と、
内容物の充填された前記ポケット部を塞ぐように前記容器フィルムに対し帯状の前記カバーフィルムを取着する取着手段と、
前記容器フィルムに前記カバーフィルムが取着されてなる帯状のブリスタフィルムから前記ブリスタシートを切離す切離手段とを備えることを特徴とするブリスタ包装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を収容するためのポケット部を形成するポケット部形成装置、及び、ポケット部に内容物が収容されてなるブリスタシートを製造するためのブリスタ包装機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に医薬品や食料品等の分野において用いられるブリスタシートとして例えばPTP(プレススルーパック)シートが知られている。PTPシートは、錠剤等の内容物が収容されるポケット部を有する容器フィルムと、その容器フィルムに対しポケット部の開口側を密封するように取着されるカバーフィルムとを備えている。
【0003】
かかるPTPシートは、ブリスタ包装機の一種であるPTP包装機を用いて製造される。PTP包装機は、帯状の容器フィルムにポケット部を形成するポケット部形成装置などを備えている。
【0004】
ポケット部形成装置は、容器フィルムを加熱(予熱)するための加熱装置と、所定のプラグ(成形凸部)等を有し、加熱されて軟化状態となった容器フィルムにポケット部を形成する成形装置とを具備している。加熱装置としては、容器フィルムを挟んで上下に配置された上部加熱板及び下部加熱板を有し、これら加熱板により容器フィルムを挟み込むことで該容器フィルムを加熱するものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、昨今では、温室効果ガスの排出抑制を図るべく、バイオマスプラスチックにより中間層を形成し、この中間層をポリプロピレン等からなる外層で挟んでなる複層構造の容器フィルム(以下、「複層容器フィルム」という場合がある)を用いることが提案されている。ここで、このような複層容器フィルムを用いる場合においても、上記のように、両加熱板により容器フィルムを挟んで加熱することが考えられる。尚、複層容器フィルムの加熱時には、成形装置によるポケット部の形成に支障が生じないように、中間層及び外層がそれぞれ十分に軟化するように、これらの加熱を行う必要がある。
【0007】
しかしながら、複層容器フィルムにおいては、中間層の融点が外層の融点よりも低くなっていることがある。このような複層容器フィルムにおいて、外層が十分に軟化するように加熱を行うと、比較的低融点の中間層が溶融して、容器フィルムの幅方向端縁から溶け出すおそれがある。そして、溶け出した中間層が加熱板や成形装置、容器フィルムを所定経路に沿って搬送するためのガイド(フィルムガイド)などに異物として付着すると、結果的に、製品(例えば、PTPシート自体やPTPシートを収容する包装など)に対する異物の付着や混入といった不具合が生じるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、中間層の融点が外層の融点よりも低い容器フィルムを用いる場合において、容器フィルムの加熱時における比較的低融点の中間層が溶け出すことをより確実に防止可能なポケット部形成装置などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0010】
手段1.帯状の容器フィルムに対し、内容物を収容するためのポケット部を形成するためのポケット部形成装置であって、
前記容器フィルムは、樹脂製の2つの外層と該外層に挟まれた樹脂製の中間層とを有するとともに、前記中間層の融点が前記外層の融点よりも低いものであり、
前記容器フィルムの上下に配置された上加熱板及び下加熱板を有し、前記上加熱板及び前記下加熱板によって上下から前記容器フィルムを挟持しつつ加熱することにより、前記外層及び前記中間層を加熱して軟化させることが可能な加熱手段と、
前記加熱手段により軟化した前記容器フィルムを変形させて、前記容器フィルムに前記ポケット部を形成する成形手段とを備え、
前記加熱手段は、前記上加熱板及び前記下加熱板により前記容器フィルムを挟持したときに、該容器フィルムの長手方向に連続する該容器フィルムにおける幅方向端縁側領域が前記上加熱板及び前記下加熱板によって挟持されないように構成されていることを特徴とするポケット部形成装置。
【0011】
上記手段1によれば、両加熱板により容器フィルムを挟持したときに、容器フィルムにおける幅方向端縁側領域が両加熱板で挟持されず、積極的には加熱されないようになっている。そのため、比較的高融点の外層を軟化状態とすることが可能な温度で容器フィルムを加熱しながら、容器フィルムの幅方向端縁から比較的低融点の中間層が溶け出すことをより確実に防止できる。これにより、溶け出した中間層が両加熱板や成形手段、容器フィルムを所定経路に沿って搬送するためのガイド(フィルムガイド)などに異物として付着することを効果的に抑制できる。その結果、製品(例えば、PTPシート自体やPTPシートを収容する包装など)に対する異物の付着や混入をより確実に防止することができる。
【0012】
手段2.前記加熱手段は、前記幅方向端縁側領域の鉛直下方に位置し、前記下加熱板における前記容器フィルムを挟持する部分よりも下方に没した端縁対応部を有し、
前記幅方向端縁側領域の幅が、前記下加熱板における前記容器フィルムを挟持する部分を基準とした前記端縁対応部の深さ未満となるように構成されていることを特徴とする手段1に記載のポケット部形成装置。
【0013】
上記手段2によれば、幅方向端縁側領域の幅、つまり、容器フィルムのうち両加熱板により挟持される部分から該容器フィルムの幅方向端縁までの距離が、端縁対応部の深さ未満となるように構成される。従って、両加熱板により挟持されない幅方向端縁側領域が仮に垂れ下がったとしても、容器フィルムの幅方向端縁が加熱手段(端縁対応部)に接触しないようにすることができ、ひいては容器フィルムの幅方向端縁側に存在する中間層が、異物として加熱手段(端縁対応部)に付着することをより確実に防止できる。その結果、付着した異物による不具合の発生防止を効果的に図ることができる。
【0014】
手段3.前記端縁対応部の表面は、フッ素樹脂でコーティングされてなることを特徴とする手段2に記載のポケット部形成装置。
【0015】
上記手段3によれば、万が一中間層が僅かに溶け出して、端縁対応部の表面に異物として付着したとしても、その付着した異物を容易に除去することができる。従って、装置のメンテナンス等に係る利便性の向上を図ることができる。
【0016】
手段4.容器フィルムに形成されたポケット部に内容物が収容されるとともに、該ポケット部を塞ぐように前記容器フィルムに対しカバーフィルムが取着されてなるブリスタシートを製造するためのブリスタ包装機であって、
手段1乃至3のいずれかに記載のポケット部形成装置と、
前記ポケット部形成装置により形成された前記ポケット部に内容物を充填する充填手段と、
内容物の充填された前記ポケット部を塞ぐように前記容器フィルムに対し帯状の前記カバーフィルムを取着する取着手段と、
前記容器フィルムに前記カバーフィルムが取着されてなる帯状のブリスタフィルムから前記ブリスタシートを切離す切離手段とを備えることを特徴とするブリスタ包装機。
【0017】
上記手段4によれば、上記手段1等と同様の作用効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図5】PTP包装機の概略構成を示す模式図である。
【
図7】ポケット部の形成工程において、下型及び上型により容器フィルムを挟持する工程を示す図である。
【
図8】ポケット部の形成工程において、エアにより容器フィルムを変形させる工程を示す図である。
【
図9】ポケット部の形成工程において、プラグにより容器フィルムを変形させる工程を示す図である。
【
図10】加熱装置の概略構成を示す断面模式図である。
【
図11】下加熱板などの概略構成を示す斜視模式図である。
【
図12】上加熱板及び下加熱板と、これらにより挟持された容器フィルムとを示す断面模式図である。
【
図13】別の実施形態における上加熱板及び下加熱板と、これらにより挟持された容器フィルムとを示す断面模式図である。
【
図14】別の実施形態における下加熱板などの概略構成を示す斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず、「ブリスタシート」としてのPTPシートの構成について説明する。
図1,2に示すように、PTPシート1は、複数のポケット部2を備えた容器フィルム3と、ポケット部2を塞ぐようにして容器フィルム3に取着されたカバーフィルム4とを有している。
【0020】
PTPシート1には、その長手方向に沿って配列された5個のポケット部2からなるポケット列が、その短手方向に2列形成されている。各ポケット部2には、「内容物」としての錠剤5が1つずつ収容されている。
【0021】
また、容器フィルム3は、
図3に示すように、バイオマス由来のPE(ポリエチレン)を含む中間層3aと、PP(ポリプロピレン)を含むとともに該中間層3aを挟む2つの外層3bとを備えた複層構造をなしている。
【0022】
中間層3aは、高密度PE及び低密度PEを含み、これらのうちの少なくとも一方はバイオマス由来のものである。バイオマスとしては、例えばサトウキビ、とうもろこし、デンプン、木材チップ及びこれら材料の廃棄物等が挙げられる。
【0023】
また、中間層3aの融点は、外層3bの融点よりも低いものとなっている。従って、ポケット部2の形成時において、後述するように容器フィルム3を加熱して該容器フィルム3(つまり外層3b及び中間層3aの双方)をそれぞれ軟化させたときには、外層3bと比べて中間層3aがより軟化(溶融)しやすくなっている。
【0024】
一方、カバーフィルム4は、例えばポリプロピレン樹脂等からなるシーラントが表面に設けられた不透明材料(例えばアルミニウム箔等)により構成されている。尚、カバーフィルム4の材料等については適宜変更してもよい。
【0025】
PTPシート1は、帯状の容器フィルム3及び帯状のカバーフィルム4から形成された帯状のPTPフィルム6(
図4参照)が打抜かれることによって製造されるものであり、平面視略矩形状に形成されている。本実施形態において、PTPフィルム6は「ブリスタフィルム」を構成する。
【0026】
次に、上記PTPシート1を製造するためのPTP包装機10の概略構成について説明する。本実施形態では、PTP包装機10が「ブリスタ包装機」に相当する。
【0027】
図5に示すように、PTP包装機10の最上流側では、帯状の容器フィルム3の原反がロール状に巻回されている。ロール状に巻回された容器フィルム3の引出し端側は、ガイドロール11,12に案内されている。
【0028】
容器フィルム3は、ガイドロール12の下流側において間欠送りロール13に掛装されている。間欠送りロール13は、間欠的に回転するモータに連結されており、容器フィルム3を間欠的に搬送する。すなわち、間欠送りロール13は、容器フィルム3の搬送及び一時停止を交互に繰り返し行う。本実施形態では、間欠送りロール13が1回の搬送動作を行うことによって、容器フィルム3はPTPシート1一枚分(1シート分)だけ搬送される。尚、間欠送りロール13の1回の搬送動作により、容器フィルム3が複数シート分搬送されるようにしてもよい。本実施形態では、間欠送りロール13が「間欠搬送手段」を構成する。
【0029】
ガイドロール12と間欠送りロール13との間には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、ポケット部形成装置14が配置されている。
【0030】
ポケット部形成装置14は、帯状の容器フィルム3に対し、錠剤5を収容するためのポケット部2を形成するための装置である。ポケット部形成装置14は、加熱装置15及び成形装置16を備えており、加熱装置15及び成形装置16は、容器フィルム3の搬送経路に沿ってこの順序で配設されている。そして、加熱装置15によって容器フィルム3が加熱されて該容器フィルム3が比較的柔軟になった状態において、成形装置16によって容器フィルム3の所定位置に複数のポケット部2が形成される。ポケット部2の形成は、間欠送りロール13による容器フィルム3の搬送動作間のインターバルの際に行われる。本実施形態では、加熱装置15が「加熱手段」を構成し、成形装置16が「成形手段」を構成する。加熱装置15及び成形装置16については、後により詳しく説明する。
【0031】
間欠送りロール13から送り出された容器フィルム3は、ガイドロール17、テンションロール18及びフィルム受けロール20の順に掛装されている。フィルム受けロール20は、一定回転するモータに連結されているため、容器フィルム3を連続的に且つ一定速度で搬送する。テンションロール18は、容器フィルム3を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、間欠送りロール13とフィルム受けロール20との搬送動作の相違による容器フィルム3の弛みを防止して容器フィルム3を常時緊張状態に保持する。尚、本実施形態において、間欠送りロール13、ガイドロール17及びテンションロール18等のロールは、容器フィルム3を所定経路に沿って搬送するための「フィルムガイド」としての機能も有している。
【0032】
テンションロール18とフィルム受けロール20との間には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、充填装置21及び検査装置22が順に配設されている。
【0033】
充填装置21は、例えば所定間隔毎にシャッタを開いて錠剤5を自由落下させること等により各ポケット部2に錠剤5を充填する。本実施形態では、充填装置21が「充填手段」を構成する。
【0034】
検査装置22は、例えば錠剤5が各ポケット部2に確実に充填されているか否か、錠剤5の異常の有無、ポケット部2への異物混入の有無などに関する検査を行う。
【0035】
一方、帯状に形成されたカバーフィルム4の原反は、最上流側においてロール状に巻回されている。ロール状に巻回されたカバーフィルム4の引出し端は、ガイドロール24によって加熱ロール25の方へと案内されている。
【0036】
加熱ロール25は、前記フィルム受けロール20に圧接可能となっており、両ロール20,25間に容器フィルム3及びカバーフィルム4が送り込まれるようになっている。そして、容器フィルム3及びカバーフィルム4が、両ロール20,25間を加熱圧接状態で通過することにより、容器フィルム3にカバーフィルム4が取着され、ポケット部2がカバーフィルム4で塞がれる。その結果、錠剤5が各ポケット部2に収容された帯状のPTPフィルム6が製造される。本実施形態では、フィルム受けロール20及び加熱ロール25によって「取着手段」が構成される。
【0037】
フィルム受けロール20から送り出されたPTPフィルム6は、テンションロール27及び間欠送りロール28の順に掛装されている。間欠送りロール28は、間欠的に回転するモータに連結されているため、PTPフィルム6を間欠的に搬送する。テンションロール27は、PTPフィルム6を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、前記フィルム受けロール20と間欠送りロール28との搬送動作の相違によるPTPフィルム6の弛みを防止してPTPフィルム6を常時緊張状態に保持する。
【0038】
間欠送りロール28から送り出されたPTPフィルム6は、テンションロール31及び間欠送りロール32の順に掛装されている。間欠送りロール32は、間欠的に回転するモータに連結されているため、PTPフィルム6を間欠的に搬送する。テンションロール31は、PTPフィルム6を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、前記間欠送りロール28,32間でのPTPフィルム6の弛みを防止する。
【0039】
間欠送りロール28とテンションロール31との間には、PTPフィルム6の搬送経路に沿って、スリット形成装置33及び刻印装置34が配設されている。スリット形成装置33は、PTPフィルム6の所定位置に切離用スリットを形成する。刻印装置34は、PTPフィルム6の所定位置(例えばタグ部)に刻印を付す。尚、
図1等では、切離用スリットや刻印の図示を省略している。
【0040】
間欠送りロール32から送り出されたPTPフィルム6は、その下流側においてテンションロール35及び連続送りロール36の順に掛装されている。間欠送りロール32とテンションロール35との間には、PTPフィルム6の搬送経路に沿って、シート打抜装置37が配設されている。シート打抜装置37は、PTPフィルム6の所定位置を打抜いて、PTPフィルム6からPTPシート1を切離す機能を有する。本実施形態では、シート打抜装置37が「切離手段」を構成する。
【0041】
シート打抜装置37によって得られたPTPシート1は、コンベア39によって搬送され、完成品用ホッパ40に貯留される。但し、前記検査装置22によって不良判定がなされた場合、この不良判定に係るPTPシート1は、完成品用ホッパ40へ送られることなく、図示しない不良シート排出機構によって別途排出される。尚、得られたPTPシート1が、完成品用ホッパ40を経ることなく、後工程の装置へと直接送られるように構成し、該後工程の装置によって、PTPシート1の包装や箱詰めなどの各種処理が行われるようにしてもよい。
【0042】
前記連続送りロール36の下流側には、裁断装置41が配設されている。そして、シート打抜装置37による打抜き後に帯状に残った残材部(スクラップ部)を構成する不要フィルム部42は、テンションロール35及び連続送りロール36に案内された後、裁断装置41に導かれる。裁断装置41は、不要フィルム部42を所定寸法に裁断する。裁断された不要フィルム部42(スクラップ)はスクラップ用ホッパ43に貯留された後、別途廃棄処理される。
【0043】
次いで、加熱装置15及び成形装置16について説明する。まず、成形装置16について説明する。
【0044】
成形装置16は、加熱装置15により軟化した容器フィルム3を変形させて、ポケット部2を形成するための装置である。成形装置16は、
図6に示すように、固定状態で設置された下型161と、上下動可能であるとともに、下型161との間で容器フィルム3を挟持可能な上型162とを備えている。
【0045】
下型161には、複数の孔161aが形成されている。そして、該孔161aに対応する位置に、ポケット部2の成形型として機能するプラグ163が設けられている。プラグ163は、上下動可能であり、孔161aに挿通可能とされている。プラグ163は、容器フィルム3を押し上げることでポケット部2を形成する。
【0046】
一方、上型162における前記孔161aの鉛直上方に当たる部分には、孔162aが形成されている。そして、図示しないエア供給装置から孔162aに対し、所定のエアが供給可能とされている。
【0047】
上記のように構成された成形装置16では、次のようにしてポケット部2が形成される。すなわち、所定の初期位置に配置された上型162が下動することで、
図7に示すように、両型161,162によって、一時停止中の容器フィルム3のうち、加熱装置15によって加熱が完了した部分(本実施形態では、1シート分の領域)の周囲を挟持する。また、所定の初期位置に配置されたプラグ163が上動されて孔162aに挿通されるとともに、所定位置にて一時停止される。
【0048】
その後、
図8に示すように、孔162aに対しエアを供給することで、ポケット部2における突出側(上側)とは反対側(下側)に容器フィルム3を一旦変形させる。このとき、プラグ163の上面に容器フィルム3が接触することで、容器フィルム3の変形量が制限される。
【0049】
次いで、
図9に示すように、プラグ163の上動が再開されることで、容器フィルム3の裏側から表側に向かって、プラグ163の上面を突出させる。これにより、プラグ163によって容器フィルム3が押圧変形される。そして、プラグ163が所定位置にて停止されることで、ポケット部2が形成される。尚、孔162aに対するエアの供給は、プラグ163が容器フィルム3を押圧変形させて停止した後まで継続される。これにより、容器フィルム3がプラグ163により確実に密着することとなる。
【0050】
ポケット部2の形成後には、プラグ163を下動させるとともに、上型162を上動させることで、これらが初期位置に戻される。
【0051】
次いで、加熱装置15について説明する。加熱装置15は、
図10,11に示すように、容器フィルム3を挟んで上下に配置される一対の上加熱ブロック151及び下加熱ブロック152を備えている。尚、
図11では、下加熱ブロック152のみを図示している。両加熱ブロック151,152のうちの少なくとも一方は、所定の駆動手段(不図示)によって上下動可能とされている。尚、本実施形態において、両加熱ブロック151,152は、容器フィルム3の移動を阻害しない退避位置と、後述する両加熱板1512,1522によって容器フィルム3を挟持することとなる挟持位置との間でそれぞれ上下動可能とされている。
【0052】
上加熱ブロック151は、上ベース部1511と該上ベース部1511に固定された上加熱板1512とを備えている。一方、下加熱ブロック152は、下ベース部1521と該下ベース部1521に固定された下加熱板1522とを備えている。
【0053】
各加熱板1512,1522は、上下対称の形状をなしており、容器フィルム3を挟持するための挟持部1512a,1522aと、該挟持部1512a,1522aの幅方向端縁側に位置する段部1512b,1522bとを備えている。挟持部1512aは上加熱板1512の下面を構成する平坦面であり、挟持部1522aは下加熱板1522の上面を構成する平坦面である。各挟持部1512a,1512bは、各加熱ブロック151,152に設けられた所定のヒータ(図示略)によって、少なくとも容器フィルム3(つまり中間層3a及び外層3bの双方)を軟化させることが可能な温度で発熱可能である。
【0054】
加えて、容器フィルム3の搬送方向に沿った各挟持部1512a,1522aの長さは、複数枚のPTPシート1に対応する長さとされている。本実施形態において、各挟持部1512a,1522aは、例えば3シート分の長さを有するものとされている。
【0055】
さらに、各挟持部1512a,1522aの幅は、それぞれ容器フィルム3の幅よりも十分に小さなものとなっている。これにより、上加熱板1512(挟持部1512a)及び下加熱板1522(挟持部1522a)により容器フィルム3を挟持したときには、該容器フィルム3の長手方向に連続する該容器フィルム3における幅方向端縁側領域3xが上加熱板1512及び下加熱板1522によって挟持されないようになっている。
【0056】
段部1512b,1522bは、加熱板1512,1522に対し、幅方向端縁側領域3xが接触することを防止するためのものである。段部1512bは、幅方向端縁側領域3xの鉛直上方に位置し、挟持部1512aよりも上方に向けて窪んだ平坦面とされている。一方、段部1522bは、幅方向端縁側領域3xの鉛直下方に位置し、挟持部1522aよりも下方に没した平坦面とされている。本実施形態では、段部1522bが「端縁対応部」を構成する。
【0057】
また、容器フィルム3の幅に対する挟持部1512a,1522aの幅が調節されること等により、幅方向端縁側領域3xの幅は、挟持部1522aを基準とした段部1522bの深さ未満となるように構成されている。加えて、少なくとも段部1512b,1522bの表面全域は、フッ素樹脂〔例えばテフロン(登録商標)〕でコーティングされている。
【0058】
上記のように構成された加熱装置15では、次のようにして容器フィルム3の加熱(予熱)が行われる。すなわち、間欠送りロール13による搬送動作が停止されて容器フィルム3が一時停止されたタイミングになると、各加熱ブロック151,152が前記退避位置から前記挟持位置へと移動することで、発熱した両加熱板1512,1522(両挟持部1512a,1522a)によって容器フィルム3が挟持される(
図12参照)。但し、このとき、幅方向端縁側領域3xは、両加熱板1512,1522によって挟持されない。
【0059】
そして、容器フィルム3が予め設定された時間だけ加熱されると、各加熱ブロック151,152が前記挟持位置から前記退避位置へと移動することで、両加熱板1512,1522(両挟持部1512a,1522a)による容器フィルム3の挟持が解除される。容器フィルム3の挟持が解除されると、間欠送りロール13によって容器フィルム3が所定長さだけ搬送される。
【0060】
そして、間欠送りロール13による容器フィルム3の一時停止、加熱板1512,1522(両挟持部1512a,1522a)による容器フィルム3の挟持及び加熱、容器フィルム3の挟持解除、及び、前記間欠送りロール13による容器フィルム3の搬送が複数回(本実施形態では3回)繰り返し行われることで、容器フィルム3における、成形装置16が1回動作したときにポケット部2が形成されることとなる範囲(本実施形態では、1シート分の範囲)の加熱が完了し、該範囲における中間層3a及び外層3bが十分に軟化することとなる。尚、両加熱板1512,1522により容器フィルム3を1回挟持することで容器フィルム3における前記範囲の加熱が完了するように構成してもよい。
【0061】
以上詳述したように、本実施形態によれば、両加熱板1512,1522により容器フィルム3を挟持したときに、幅方向端縁側領域3xが両加熱板1512,1522で挟持されず、積極的には加熱されないようになっている。そのため、比較的高融点の外層3bを軟化状態とすることが可能な温度で容器フィルム3を加熱しながら、容器フィルム3の幅方向端縁から比較的低融点の中間層3aが溶け出すことをより確実に防止できる。これにより、溶け出した中間層3aが両加熱板1512,1522や成形装置16、容器フィルム3を所定経路に沿って搬送するためのガイド(間欠送りロール13等)に異物として付着することを効果的に抑制できる。その結果、製品(例えば、PTPシート1自体やPTPシート1を収容する包装など)に対する異物の付着や混入をより確実に防止することができる。
【0062】
また、幅方向端縁側領域3xの幅、つまり、容器フィルム3のうち両加熱板1512,1522により挟持される部分から該容器フィルム3の幅方向端縁までの距離が、段部1522bの深さ未満となるように構成されている。従って、両加熱板1512,1522により挟持されない幅方向端縁側領域3xが仮に垂れ下がったとしても、容器フィルム3の幅方向端縁が加熱装置15(段部1522b)に接触しないようにすることができ、ひいては容器フィルム3の幅方向端縁側に存在する中間層3aが、異物として加熱装置15(段部1522b)に付着することをより確実に防止できる。その結果、付着した異物による不具合の発生防止を効果的に図ることができる。
【0063】
さらに、段部1522bの表面はフッ素樹脂でコーティングされているため、万が一中間層3aが僅かに溶け出して、段部1522bの表面に異物として付着したとしても、その付着した異物を容易に除去することができる。従って、ポケット部形成装置14のメンテナンス等に係る利便性の向上を図ることができる。
【0064】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0065】
(a)上記実施形態では、加熱装置15によって、容器フィルム3における幅方向端縁側領域3xを除いた全領域が加熱されるように構成されているが、容器フィルム3におけるポケット部2の形成予定部位のみをピンポイントで加熱するように構成してもよい。
【0066】
この場合、
図13,14に示すように、容器フィルム3におけるポケット部2の形成予定部位に当接する凸部1513a,1523aと、容器フィルム3のうち最終的に不要フィルム部42(スクラップ)となる部位である製品外領域と当接可能な範囲外凸部1513b,1523bとを有する上加熱板1513及び下加熱板1523を用いてもよい(例えば、特開2013-159367号公報参照)。尚、
図14では、下加熱板1523のみを示しているが、両加熱板1513,1523は同様の形状を有している。また、このような加熱板1513,1523を用いる場合には、範囲外凸部1513b,1523bに段部1513c,1523cを設けてもよい。このような段部1513c,1523cを設けることで、容器フィルム3の幅方向端縁側に存在する中間層3aが、異物として加熱板1513,1523(特に範囲外凸部1513b,1523b)に付着することをより確実に防止できる。
【0067】
(b)上記実施形態で挙げた容器フィルム3は一例であって、容器フィルム3は、樹脂製の2つの外層3bと該外層3bに挟まれた樹脂製の中間層3aとを有するとともに、中間層3aの融点が外層3bの融点よりも低いものであればよい。従って、外層3bや中間層3aの構成材料を適宜変更してもよい。
【0068】
(c)上記実施形態において、成形装置16は、エアによって容器フィルム3を一旦変形させた上で、プラグ163を該容器フィルム3に押し当てることにより、ポケット部2を形成するように構成されている。すなわち、成形装置16は、いわゆるエアアシストプラグ成形法を用いてポケット部2を形成するものとされている。
【0069】
これに対し、成形装置は、ポケット部2に対応する形状の成型凹部が形成されてなる型を有し、気体の制御などにより容器フィルム3を前記型に接触させることでポケット部2を形成するものであってもよい。また、成形装置は、エアによって容器フィルム3を変形させる工程を行わず、単にプラグを容器フィルム3に押し当てることでポケット部2を形成するものであってもよい。
【0070】
(d)上記実施形態では、内容物として錠剤5を挙げているが、内容物は錠剤に限定されるものではない。
【0071】
また、上記実施形態では、錠剤5として、平面視円形状をなす円盤状の口腔内崩壊錠を挙げているが、錠剤の種別や形状等については、上記実施形態に限定されるものではない。例えば錠剤には、医薬のみならず、飲食用に用いられる錠剤なども含まれる。また、錠剤には、素錠、糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶錠及びゼラチン被包錠などが含まれるのは勿論のこと、硬カプセルや軟カプセルなどの各種カプセル錠なども含まれる。
【0072】
さらに、錠剤の形状に関しては、平面視円形状のみならず、例えば、平面視多角形状、平面視楕円形状、平面視長円形状等であってもよい。
【0073】
(e)製造されるPTPシートの構成は上記実施形態に限定されるものではない。例えばPTPシート1単位のポケット部2の配列や個数は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【0074】
また、上記実施形態において、PTPフィルム6は、その幅方向に沿って1シート分に対応する数のポケット部2が配列された構成となっているが、これに限定されるものではなく、例えば、その幅方向に沿って複数シート分に対応する数のポケット部2が配列された構成であってもよい。勿論、PTPフィルム6の構成に合わせて、加熱装置15及び成形装置16の構成を変更してもよい。
【0075】
さらに、上記実施形態では、ブリスタシートとしてPTPシート1を挙げているが、PTPシート1以外のブリスタシートに対し本発明の技術思想を適用してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…PTPシート(ブリスタシート)、2…ポケット部、3…容器フィルム、3a…中間層、3b…外層、3x…幅方向端縁側領域、4…カバーフィルム、5…錠剤(内容物)、6…PTPフィルム(ブリスタフィルム)、10…PTP包装機(ブリスタ包装機)、14…ポケット部形成装置、15…加熱装置(加熱手段)、1512…上加熱板、1522…下加熱板、1522b…段部(端縁対応部)、16…成形装置(成形手段)、20…加熱ロール(取着手段)、21…充填装置(充填手段)、25…フィルム受けロール(取着手段)、37…シート打抜装置(切離手段)。