(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027230
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】発泡ゴムローラの製造方法及び発泡ゴムローラ
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20240222BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20240222BHJP
F16C 13/00 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
G03G15/00 551
B29C35/02
F16C13/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129855
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000143307
【氏名又は名称】株式会社荒井製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100183357
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義美
(72)【発明者】
【氏名】長塚 和彦
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 正幸
(72)【発明者】
【氏名】小須田 貴之
【テーマコード(参考)】
2H171
3J103
4F203
【Fターム(参考)】
2H171FA07
2H171FA30
2H171PA02
2H171PA03
2H171PA08
2H171PA14
2H171UA02
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2H171VA02
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2H171XA02
3J103AA02
3J103AA13
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3J103HA53
4F203AA45
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4F203DB01
4F203DC01
4F203DD01
4F203DN12
(57)【要約】
【課題】発泡ゴム層の表面のスキン層に凹凸が生じにくく、かつ、発泡ゴム層における気泡の径のバラツキが抑えられて安定した性能の発泡ゴムローラを提供する。
【解決手段】軸芯2の外周に発泡ゴム層6を被覆してなる発泡ゴムローラの製造方法において、軸芯2に未硬化のゴムコンパウンド層3aを成形する成形工程と、ゴムコンパウンド層3aの外周にゴムチューブ5を被覆するゴムチューブ被覆工程と、ゴムチューブ5を被覆させたままゴムコンパウンド層3aを加熱し発泡及び硬化させて発泡ゴム層6を成形する加硫工程と、ゴムチューブ5を発泡ゴム層6の外周から除去するゴムチューブ除去工程とを含み、これらの製造工程により製造された発泡ゴムローラを提供する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯の外周に発泡ゴム層を被覆してなる発泡ゴムローラの製造方法において、
前記軸芯に未硬化のゴムコンパウンドを被覆してゴムコンパウンド層を成形する成形工程と、
前記ゴムコンパウンド層の外周にゴムチューブを被覆するゴムチューブ被覆工程と、
前記ゴムチューブを被覆させたまま、前記ゴムコンパウンド層を加熱し発泡及び硬化させて発泡ゴム層を成形する加硫工程と、
前記ゴムチューブを前記発泡ゴム層の外周から除去するゴムチューブ除去工程と、
を含むことを特徴とする発泡ゴムローラの製造方法。
【請求項2】
前記ゴムチューブ除去工程後に、前記軸芯の端面からはみ出した前記発泡ゴム層の両端面をカットするカット工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の発泡ゴムローラの製造方法。
【請求項3】
前記ゴムチューブ除去工程後に、前記発泡ゴム層の外周表面を研磨する研磨工程を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡ゴムローラの製造方法。
【請求項4】
前記ゴムコンパウンドと前記ゴムチューブは、同種の原料ゴムを用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡ゴムローラの製造方法。
【請求項5】
前記ゴムコンパウンドと前記ゴムチューブは、同種の原料ゴムを用いることを特徴とする請求項3に記載の発泡ゴムローラの製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の発泡ゴムローラの製造方法により製造されてなることを特徴とする発泡ゴムローラ。
【請求項7】
請求項3に記載の発泡ゴムローラの製造方法により製造されてなることを特徴とする発泡ゴムローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子複写機、プリンター等のOA機器に使用される発泡ゴムローラの製造方法及び発泡ゴムローラに関する。
【背景技術】
【0002】
電子複写機やプリンター等のOA機器に使用される発泡ゴムローラの製造方法としては、発泡剤を含む未硬化のゴムコンパウンドをクロスヘッド押出機により軸芯に被覆させた後に、当該ゴムコンパウンドを加熱して発泡・硬化させることにより発泡ゴム層を成形するようにしたものがある。
【0003】
このようなクロスヘッド押出機を用いた発泡ゴムローラの製造方法は従来から存在する。例えば、
図8(特許文献1の
図2)に示されるクロスヘッド押出機10は、シリンダー11と、スクリュー12と、ヘッド部13と、口金14と、内筒15とを備えている。
そのシリンダー11内には、発泡剤を含む未硬化のゴムコンパウンド3が充填されている。ゴムコンパウンド3は、スクリュー12の回転によって前方(
図8における右方向)に進み、ヘッド部13に達した後、このゴムコンパウンド3はヘッド部13で下方に進行方向を変え、口金14から筒状に押し出される。また、その一方、内筒15の挿入口18からは軸芯2が挿入される。この軸芯2は内筒15を通過して口金14から排出され、下方に進む。その結果、口金14の近傍では、軸芯2の外周面に未硬化(未加硫・未発泡)のゴムコンパウンド3が筒状に被覆される。
【0004】
次に、ゴムコンパウンド3を加熱して発泡・硬化させて発泡ゴム層を成形する工程については、例えば、特許文献2において、発泡ゴムローラの製造方法が筒状発泡ゴム層を成形する成形工程(特許文献1参照)と、該成形された筒状発泡ゴム層を形状保持可能な程度まで加硫硬化させる一次加硫工程と、該一次加硫後の筒状発泡ゴム層の表面を研削する研削工程と、該研削後の筒状発泡ゴム層を最終的な加硫度まで加硫硬化させる二次加硫工程と、を含むことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001―310362号公報
【特許文献2】特開2008―145979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような通常の製造方法で成形される発泡ゴムローラは、加熱発泡されたゴムが硬化する段階で、発泡ゴム層の表面にスキン層(表層被膜)が形成されるが、このスキン層に凹凸が生じやすい問題があった。そして、このスキン層に生じた凹凸が大きくなると、発泡ゴム層における気泡(セル)の径のバラツキも大きくなる。
また、特許文献2に記載の発明のごとくスキン層の凹凸は研削により平滑化できるが、発泡ゴム層における気泡の径のバラツキが大きいと、その結果として、ローラの性能に悪影響を及ぼすことになる課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、このような課題を解決する目的のためになされており、発泡ゴム層の表面のスキン層に凹凸が生じにくく、かつ、発泡ゴム層における気泡の径のバラツキが抑えられて安定した性能の発泡ゴムローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、第一の発明は、軸芯の外周に発泡ゴム層を被覆してなる発泡ゴムローラの製造方法において、
前記軸芯に未硬化のゴムコンパウンドを被覆してゴムコンパウンド層を成形する成形工程と、
前記ゴムコンパウンド層の外周にゴムチューブを被覆するゴムチューブ被覆工程と、
前記ゴムチューブを被覆させたまま、前記ゴムコンパウンド層を加熱し発泡及び硬化させて発泡ゴム層を成形する加硫工程と、
前記ゴムチューブを前記発泡ゴム層の外周から除去するゴムチューブ除去工程と、
を含むことを特徴とする。
第二の発明は、第一の発明において、前記ゴムチューブ除去工程後に、前記軸芯の端面からはみ出した前記発泡ゴム層の両端面をカットするカット工程を含むことを特徴とする。
第三の発明は、第一の発明又は第二の発明において、前記ゴムチューブ除去工程後に、前記発泡ゴム層の外周表面を研磨する研磨工程を含むことを特徴とする。
第四の発明は、第一の発明又は第二の発明において、前記ゴムコンパウンドと前記ゴムチューブは、同種の原料ゴムを用いることを特徴とする。
第五の発明は、第三の発明において、前記ゴムコンパウンドと前記ゴムチューブは、同種の原料ゴムを用いることを特徴とする。
第六の発明は、第一の発明又は第二の発明に記載の発泡ゴムローラの製造方法により製造されてなる発泡ゴムローラである。
第七の発明は、第三の発明に記載の発泡ゴムローラの製造方法により製造されてなる発泡ゴムローラである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、発泡ゴム層の表面のスキン層に凹凸が生じにくく、かつ、発泡ゴム層における気泡の径のバラツキが抑えられて安定した性能の発泡ゴムローラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る軸芯に未加硫のゴムコンパウンドを被覆したローラの軸方向断面を模式的に示した略断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るゴムチューブの作製方法を説明する芯型の軸方向断面を模式的に示した略断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るゴムコンパウンドにゴムチューブを被覆させたローラの軸方向断面を模式的に示した略断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るコンパウンドを加熱発泡させたローラの軸方向断面を模式的に示した略断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るゴムチューブを除去したローラの軸方向断面を模式的に示した略断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る発泡ゴム層の端面をカットしたローラの軸方向断面を模式的に示した略断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る発泡ゴム層の表面を研磨したローラの軸方向断面を模式的に示した略断面図である。
【
図8】従来技術のクロスヘッド押出機の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、軸芯の外周に発泡ゴム層を被覆してなる発泡ゴムローラの製造方法であって、その一実施形態の製造工程を
図1~
図7を用いて説明する。なお、各工程で示されるゴムローラ1a~1fの図面上の大きさは、実寸ではなく説明上便宜的に記載しているものであって、これに限定されるものではない。
【0012】
先ずは、軸芯に未硬化(未加硫・未発泡)のゴムコンパウンドを被覆してゴムコンパウンド層を成形する成形工程である。
図1は、この成形工程で成形されたゴムローラ1aを表しており、軸芯2にゴムコンパウンド3が被覆されてゴムコンパウンド層3aを成形している。
【0013】
このようなゴムローラ1aは、例えば、
図8で示したようなクロスヘッド押出機10を用いて成形される。
図8に示されるクロスヘッド押出機10において、シリンダー11内には、発泡剤を含む未硬化(未加硫・未発泡)のゴムコンパウンド3が充填されており、このゴムコンパウンド3は、スクリュー12の回転によって前方(
図8における右方向)に進み、ヘッド部13に達した後、ヘッド部13で下方に進行方向を変え、口金14から筒状に押し出される。一方、内筒15の挿入口18からは軸芯2が挿入され、この軸芯2は内筒15を通過して口金14から排出されて、下方に進む。その結果、口金14の近傍では、軸芯2の外周面に未硬化のゴムコンパウンド3が筒状に被覆される。
【0014】
これにより、
図1に示すような軸芯2の周囲に未硬化のゴムコンパウンド層3aを有するローラ1aが成形されることになる。ここで軸芯2の外周面2aとゴムコンパウンド層3aの内周面3bとは互いに接着し、軸芯2とゴムコンパウンド層3aが一体化している。軸芯2は、ゴムコンパウンド層3aが被覆される軸芯本体2bと、ゴムコンパウンド層3aが被覆されない軸芯端部2cからなる。軸芯端部2cは、軸芯本体2bの両端面から突出し、軸芯本体2bよりも小径に形成されている。
【0015】
軸芯2の材質は、一般に金属材料が用いられ、この金属材料としては、例えば快削鋼材SUM23が好適に用いられる。その他にも、ステンレス等の金属やプラスチック等の材料を用いることができる。
また、軸芯2の表面には、防錆などの目的から、無電解ニッケルメッキを施しておくことが好ましい。
さらに軸芯2の表面(外周面)には、ゴムコンパウンド3の被覆工程前に接着剤を塗布しておく。この接着剤としては、例えば、ダウ・東レ(株) DY39-051A/Bが好適に用いられ、焼付条件は、170℃×1時間程度が好ましい。この接着剤の塗布は、クロスヘッド押出機10に軸芯2を挿入する前に行うものである。
【0016】
ゴムコンパウンド3の原料ゴムとしては、例えば、シリコーンゴムが好適に用いられる。その他にも、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、ブタジエンゴム、天然ゴム等を用いることができる。
【0017】
以下にゴムコンパウンド3の配合例を示す。
シリコーンゴム:信越化学工業(株) NT-522-U 100.0質量部
発泡剤:信越化学工業(株) KE-P-26 4.0質量部
硬化剤:信越化学工業(株) C-25A 0.3質量部
硬化剤:信越化学工業(株) C-25B 2.0質量部
着色剤:信越化学工業(株) KE-COLOR-BR 0.5質量部
【0018】
このような配合を有するゴムコンパウンド3を公知のバンバリーミキサーやニーダー等の混練り機で均一に混練りした後、
図8で示されるクロスヘッド押出機10のシリンダー11に投入することで、前述した如く、
図1に示すような軸芯2の周囲に未硬化のゴムコンパウンド層3aを有するローラ1aが成形される。
ここで実施例のローラ1aは、軸芯本体2bの外径が12mm、軸芯本体2b及びゴムコンパウンド層3aの長さが225mm、ゴムコンパウンド層3aの外径が22mmとする。
【0019】
次に、ゴムパウンド層3aの外周にゴムチューブ5を被覆するゴムチューブ被覆工程について説明する。
ここでゴムチューブは、事前に準備しておく必要があり、このゴムチューブの作製方法を
図3に示す。すなわちこの例では、ローラ状の芯型4の外周に未硬化の液状ゴムを塗布し、これを加熱して加硫硬化させてゴムチューブ5を成形した後、芯型4を引き抜くようにする。
この場合、芯型4は金属やプラスチック等の材料により成り、金属材料としては軸芯2と同じく快削鋼材SUM23が好適に用いられる。この芯型4の周面には滑り性を良くするため無電解ニッケルメッキを施しておくことが好ましく、その滑り性よってゴムチューブ5の成形後に芯型4をスムーズに抜き取ることができる。また、その他の方法として、ゴムチューブ5の成形後、ゴムチューブ5をその一端から他端に向かって全周を巻き取るようにして芯型4から剥がすようにしてもよい。
【0020】
ゴムチューブ5の材料である液状ゴムとしては、例えば液状シリコーンゴムが好適に用いられ、その他にも液状クロロプレンゴム、液状ウレタンゴム、液状イソプレンゴム、液状ニトリルゴム、液状ブタジエンゴム等を用いることができる。
【0021】
そして、このように成形されたゴムチューブ5を、
図1のゴムローラ1aのゴムコンパウンド層3aの外周に被せるようにする。
図3は、ゴムコンパウンド層3aの外周にゴムチューブ5が被覆されたゴムローラ1bを示している。
ここでゴムチューブ5の膜厚W1は、ゴムコンパウンドゴム層3aの厚みW2よりも十分に薄く成形され、薄膜状の被覆とされる。すなわち、ゴムチューブ5は、加硫発泡する際のゴムコンパウンド層3aの膨張柔軟性を損なうことのない膜厚とする。実施例では、このゴムチューブ5の膜厚W1は100μmとする。
【0022】
またゴムチューブ5は、ゴムコンパウンド層3aの外径よりやや大きい内径に成形される。実施例では、ゴムコンパウンド層3aの外径22mmに対し、ゴムチューブ5の内径は22.5mmとされ、このためゴムコンパウンド層3aの外周にゴムチューブ5をスムーズに被せることができるものである。
さらにゴムチューブ5は、ゴムコンパウンド層3aを十分に覆う長さを有し、実施例では、ゴムコンパウンド層3aの長さ225mmに対し、ゴムチューブ5の長さは250mmとしている。
さらに実施例のゴムチューブ5の硬化後特性は、硬さがデュロメータA:50度(好まくは、10~60度)、100%モジュラスが1.1MPa(好ましくは、1.0~5.0Mpa)、引張強さが12.4Mpa(好ましくは、10~20Mpa)、切断時伸びが680%(好ましくは、300%以上)とする。
【0023】
なお、このゴムチューブ5を被覆する工程では、予めゴムチューブ5をその一端から他端に向かって全周を巻き取っておき、これを巻き戻すようにしてゴムコンパウンド層3aに被せるようにしてもよい。
【0024】
次は、ゴムチューブ5を被覆させたまま、ゴムコンパウンド層3aを加熱し発泡させて発泡ゴム層6を成形する、加硫工程である。
図4は、ゴムチューブ5が被覆されたゴムコンパウンド3を形状保持可能な程度まで加硫された発泡ゴムローラ1cを示している。
【0025】
加硫工程は、一次加硫工程と二次加硫工程がある。一次加硫工程は、加熱温度が230℃(好ましくは、130~250℃)、加熱時間が30分間(好ましくは、10~40分)で加熱することにより、加硫発泡させる(加硫発泡工程)。これにより独立気泡構造を有するゴム発泡体が得られる。
【0026】
一次加硫の発泡後、さらに、発泡ゴム層6を最終的な加硫度まで加硫硬化させる二次加硫を行う。この二次加硫は、加熱温度が200℃(好ましくは、130~250℃)加熱時間が4時間(好ましくは、1~5時間)で行う。
これら加硫工程における加熱方法としては、一般的な恒温槽の他、熱空気加硫槽、電気炉、マイクロ波加硫装置(UHF)、スチーム等の加熱手段を用いることができる。
【0027】
この加硫工程では、ゴムコンパウンド3は発泡により膨張し、硬化後に発泡ゴム層6となる。実施例では、この発泡ゴム層6は外径30mmまで膨張・拡径する。そして、ゴムコンパウンド3の発泡と膨張に伴い、発泡ゴム層6と共にゴムチューブ5も膨張・拡径する。
なお、ここではゴムコンパウンドが膨張して軸芯本体2bの端面2dよりも長く伸びることで、発泡ゴム層6にはみ出しのバリ部分8が生じるが、このバリ部分8は後述するカット工程において除去される。
【0028】
また、この加硫工程では、加熱発泡されたゴムコンパウンド3が発泡ゴムへと硬化する段階で、発泡ゴム層6の表面にはスキン層(表層被膜)7が形成される。従来においては、このスキン層7に生じた凹凸が大きくなると、発泡ゴム層6における気泡(セル)の径のバラツキも大きくなりローラの性能に悪影響を及ぼす課題があったが、本発明であれば、このときスキン層7は、ゴムチューブ5の存在により、凹凸のない平滑面に形成される。
【0029】
また、本発明であれば、ゴムチューブ5の膨張による反力で、発泡中のゴムには適度な内圧が均一にかかる状態となるため、発泡ゴム層6の気泡は均一の径で安定した微細セルとなる。このような効果は、従来からの製造方法では奏することができない。
【0030】
さらに、本発明であれば、ゴムチューブ5の存在により、ゴムコンパウンド3の発泡中に発泡気が外に逃げることを抑制できるので、効率的な発泡が可能となる。これにより、発泡剤の添加量を抑えることができる。
【0031】
さらに本発明では、ゴムチューブ5とゴムコンパウンド3には、同種の原料ゴムを用いることが好ましい。例えば、ゴムコンパウンド3がシリコーンゴムコンパウンド(シリコーンゴム+発泡剤+硬化剤等)であれば、ゴムチューブ5には、液状シリコーンゴムを用いる。このように同種の原料ゴムとすれば、ゴムの親和性により、加熱発泡・硬化時の不具合(加硫障害)の減少効果が期待できる。
【0032】
次は、ゴムチューブ5を発泡ゴム層6の外周から除去するゴムチューブ除去工程である。
図5は、ゴムチューブ5が除去された発泡ゴムローラ1dを示している。ゴムチューブ5を発泡ゴム層6から除去する方法は、例えば、ゴムチューブ5をその一端から他端に向かって全周を巻き取るようにして発泡ゴム層6から剥がすようにすることで、容易に除去することができる。
【0033】
このような工程で抜き取られたゴムチューブ5は再利用が可能である。また再利用しない場合には、研磨手段によりゴムチューブを研磨除去しても構わない。ゴムチューブ5は厚さが100μmと薄膜のために容易に研磨除去が可能である。
【0034】
次は、軸芯2(軸芯本体2b)の端面2dからはみ出した発泡ゴム層6のはみ出し部(バリ部)8について、端面2dの位置でカットするカット工程である。
図6は、はみ出し部(バリ部)8を端面2dでカットした発泡ゴムローラ1eが示されている(図において、点線で表されているはみ出し部(バリ部)8の「端面カット」と矢印を参照)。
この端面カットの方法としては、ローラを回転させながら切削メスによってカットするいわゆるメスカットの手法が好適に用いられる。
【0035】
さらには、必要に応じて発泡ゴム層6の外周表面(周面)の研磨を行う(研磨工程)。
図7は、
図6の発泡ゴムローラ1eの発泡ゴム層6の外周表面に研磨を施した発泡ゴムローラ1fを示している(図において、「表面研磨」と矢印符号を参照)。実施例では、ゴムチューブ除去後の発泡ゴム層6の外径が30mmに成形されている場合に、外径を規定寸法の25mmまで研磨して調整する。このように、発泡ゴム層6の外周表面(周面)を研磨することで、さらにバリエーションが異なる発泡ゴムローラ1fを得ることができる。
【0036】
研磨手段としては、特定されるものではないが、回転砥石による研磨、ブレードによるピーリング等の公知技術が挙げられる。この内、回転砥石による研磨としては、ローラの長さよりも幅の狭い砥石を用いるトラバース研磨と、ローラの長さとほぼ同等の幅を持つ砥石を用いるプランジ研磨がある。
【0037】
以上の如き工程を経て本発明では、所要の寸法及び物性を有する発泡ゴムローラが作製される。実施例の発泡ゴムローラ1では、軸芯本体2bの外径が12mm、軸芯本体2b及び発泡ゴム層6の長さが225mm、発泡ゴム層6の外径が25mmである。また発泡ゴム層6の物性は、硬さがアスカーC:28度、密度が0.35g/cm3、気泡(セル)の平均径が250μmである。
【0038】
以上に説明したとおり、本発明は、発泡ゴムローラの製造プロセスの改良の観点から、通常の加硫工程の前後において異なる製造プロセスを採るものである。すなわち、従来の発泡ゴムローラの製造方法は、発泡剤を含む未硬化のゴムコンパウンドをクロスヘッド押出機により軸芯に被覆させる工程を経た後に、ゴムコンパウンドを加熱して発泡・硬化させる加硫工程を実施することにより発泡ゴム層を成形するようにしていた。
【0039】
これに対し、発明者は、加硫工程の前にゴムパウンド層3aの外周表面(周面)上にゴムチューブ5を被せ、その状態で加硫工程を実施した後にゴムチューブ5を除去する製造方法とすることで従来にない特有な効果が得られることを見出した。この製造方法によれば、ゴムチューブ5を被せた状態でゴムコンパウンド3を加熱発泡させて発泡ゴム層6を形成するようにしたことで、発泡ゴム層6の表面に形成されるスキン層7に凹凸が生じにくく、発泡ゴム層6における気泡の径のバラツキも抑えることができるので、安定した性能の発泡ゴムローラ1を提供することができる。
【0040】
出願人は、本発明の発泡ゴムローラと、ゴムチューブの被覆と除去に係る工程がない従来技術による発泡ゴムローラとで比較を行った。比較対象は、ゴムチューブの使用有無以外の諸条件は全く同じである。すなわち、ゴムローラの寸法、ゴムコンパウンド、軸芯、クロスヘッド押出機、押出後のローラ寸法、加硫条件、及び加硫後のローラ寸法の全てについて同じ諸条件下とし、本発明による製造方法と、ゴムチューブを使わない従来からの製造方法(
図2、
図3、
図4の工程を有しない)とによって発泡ゴムローラを作製し、比較したものである。
【0041】
比較方法は、従来からの製造方法による発泡ゴムローラの発泡ゴム層のスキン層(表層被膜)と、本発明によるゴムチューブを用いた発泡ゴムローラの発泡ゴム層のスキン層(表層被膜)を目視で確認して凹凸の度合を比較した。さらに、両方の発泡ゴム層を切断してその切断面を顕微鏡で確認し、気泡の径(セル径)の状態を比較した。
【0042】
その対比の結果、従来からの製造方法による発泡ゴムローラは表面のスキン層に凹凸が認められたのに対し、本発明の製造方法による発泡ゴムローラは表面のスキン層に凹凸がほとんど無く、平滑であることが認められた。また、従来製造方法による発泡ゴムローラは気泡の径のバラツキが大きく認められたのに対し、本発明の製造方法による発泡ゴムローラは気泡の径が全体的に均一であり、バランスよく発泡していることが認められた。
【符号の説明】
【0043】
1 ゴムローラ
2 軸芯
3 ゴムコンパウンド
3a ゴムコンパウンド層
4 芯型
5 ゴムチューブ
6 発泡ゴム層
7 スキン層
8 はみ出し部(バリ部)
10 クロスヘッド押出機
11 シリンダー
12 スクリュー
13 ヘッド部
14 口金14
15 内筒15