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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027244
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】製氷機の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F25C 1/25 20180101AFI20240222BHJP
【FI】
F25C1/25 303B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129878
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐真
(72)【発明者】
【氏名】門脇 静馬
(57)【要約】
【課題】機能を追加する場合に、コストアップや基板の大型化を抑制することができる製氷機の制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置14の第1の基板29に、マスタマイコン33と、複数の入力コネクタ34a~34cおよび複数の出力コネクタ35a~35cが設けられる。マスタマイコン33に、基本運転サイクルを製氷機で実行させる基本運転制御プログラムが記憶され、入力コネクタ34a~34cおよび出力コネクタ35a~35cに、基本運転サイクルを実行するのに必要となる検知手段および制御対象機構が接続される。機能を追加するために設けられる制御装置14の第2の基板30は、第1の基板29と物理的構成が同じであって、第2の基板30のサブマイコン36に、追加機能運転を製氷機で実行させる追加機能運転制御プログラムが記憶される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
氷塊を製造する製氷機の制御装置であって、
マイクロコンピュータと、製氷機を構成する検知手段が接続可能な入力部および製氷機を構成する制御対象機器が接続可能な出力部が設けられ、前記マイクロコンピュータに、製氷機で実行させる基本運転の制御プログラムが記憶されている第1の基板と、
該第1の基板との間で信号の入出力が可能に接続され、該第1の基板と物理的構成が同じ第2の基板と、を備え、
該第2の基板に設けたマイクロコンピュータに、製氷機で実行可能な追加機能を実行させる追加機能運転の制御プログラムを記憶させ得るよう構成した
ことを特徴とする製氷機の制御装置。
【請求項2】
前記製氷機は、
冷凍回路の圧縮機からの冷媒を製氷部の蒸発器へ供給すると共に、給水弁を介して供給される水が貯留された製氷水タンク内の水を循環ポンプによって前記製氷部へ供給して、該製氷部で氷塊を生成する製氷運転と、
前記製氷部の温度を検知する温度検知手段が製氷完了温度を検知すると、前記冷凍回路のホットガス弁を開放して前記圧縮機からの熱冷媒を前記蒸発器に供給して、前記製氷部から氷塊を離脱させる除氷運転とを交互に繰り返し、
前記製氷部で生成された氷塊が貯留される貯氷庫内に所定量の氷塊が貯留されたことを貯氷検知手段が検知すると、製氷運転と除氷運転とを交互に繰り返す製氷運転サイクルから貯氷運転に移行するよう構成され、
前記第1の基板には、検知手段としての温度検知手段および貯氷検知手段が少なくとも接続可能な入力部と、制御対象機器としての圧縮機、給水弁、ホットガス弁および循環ポンプが少なくとも接続可能な出力部が設けられている請求項1記載の製氷機の制御装置。
【請求項3】
前記第1および第2の基板のマイクロコンピュータに、基本運転および追加機能運転の制御プログラムが夫々記憶されており、
各マイクロコンピュータは、記憶された制御プログラムを複数から選択して製氷機で対応する運転を実行させ得るよう構成した請求項1または2記載の製氷機の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多量の氷塊を製造する製氷機の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製氷機構で製造された多量の氷塊を貯氷庫に貯留する製氷機が、喫茶店やレストラン等の施設その他の厨房において好適に使用されている。製氷機としては、求められる氷塊を作る製氷機構の構造の違いに応じて、クローズドセル式、オープンセル式、流下式等の機種が存在する。例えば、特許文献1に開示されるクローズドセル式の製氷機は、製氷室に設けた製氷小室に対し、製氷運転において該製氷小室の開口を閉成した水皿から製氷水を対応的に噴射供給して氷塊を製造し、氷塊が製造されると除氷運転に移行し、生成された氷塊を、製氷室に対して離間する方向に水皿を傾動することで貯氷庫に落下放出し、製氷運転および除氷運転を交互に繰り返すことで貯氷庫が氷塊で満杯となった場合は、貯氷運転に移行するよう構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-36894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記製氷機を統括的に制御する制御装置は、製氷運転-除氷運転-貯氷運転からなる基本運転サイクル(基本運転)を実行する制御プログラムが記憶されたマイクロコンピュータが設けられると共に、各種センサ等の検知手段や、ポンプ、弁等の各種の制御対象機器に接続する入出力部が設けられた基板を備え、検知手段の検知結果等に応じて制御装置が、制御プログラムに基づいて基本運転サイクルを実行させるように各種の制御対象機器を作動制御する。製氷機では、前記基本運転サイクル以外の機能、例えば、自動洗浄等の新機能を追加する要請があり、その場合は、新機能としての自動洗浄運転を実行する制御プログラムが記憶されたマイクロコンピュータを設けた別の基板を、基本運転サイクルを実行させる既存の基板に接続している。別の基板は、新機能を追加するために必要となる検知手段や切替弁等の制御対象機器を接続するための入出力部が設けられた専用の基板として作成されることから、設計コストや作成コストが嵩むと共に作成に時間が掛かる問題が指摘される。
【0005】
なお、新機能を統合した新規の大きな基板を作成したり、新機能の追加を予め見越して未使用の入出力部を設けた大きな基板を作成して対応することが考えられるが、基板サイズが大きくなることによりコストアップを招くと共に、大きな設置スペースが必要となり、他の部品の設置スペースを圧迫する難点も指摘される。
【0006】
本発明は、前述した従来技術に内在する前記課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、機能を追加する場合に、コストアップや基板の設置スペースが大きくなるのを抑制することができる製氷機の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項1の発明に係る製氷機の制御装置は、
氷塊を製造する製氷機の制御装置であって、
マイクロコンピュータ(33)と、製氷機を構成する検知手段(21,24,TH)が接続可能な入力部(34a~34c)および製氷機を構成する制御対象機器(CM,WV,HV,PM)が接続可能な出力部(35a~35c)が設けられ、前記マイクロコンピュータ(33)に、製氷機で実行させる基本運転の制御プログラムが記憶されている第1の基板(29)と、
該第1の基板(29)との間で信号の入出力が可能に接続され、該第1の基板(29)と物理的構成が同じ第2の基板(30)と、を備え、
該第2の基板(30)に設けたマイクロコンピュータ(33)に、製氷機で実行可能な追加機能を実行させる追加機能運転の制御プログラムを記憶させ得るよう構成したことを要旨とする。
請求項1の発明によれば、追加する機能を実行させるための第2の基板の物理的構成を、基本運転を実行させる第1の基板と同じとしたので、機能を追加する場合においても物理的構成が異なる基板を設計、作成する必要はなく、機能追加に係るコストを抑制することができる。また、新機能を追加する場合における基板の配置に係る設計の自由度が高く、他の部品の配置に影響を与えることも抑えられる。すなわち、新機能を統合した新規の1つの基板を作成する場合は、大型の基板を設置するために一箇所に大きなスペースが必要となることから、他の部品の設置位置を変更したりする等の設計変更が必要となるのに対し、複数の基板に機能を分散することで1つの基板自体のサイズを抑えることができ、他の部品の設置位置を変更することなく空いたスペースに基板を配置することができ、設計が容易となる。更に、基板の種類が増加しないので、部品管理が容易になる。更にまた、第2の基板のマイクロコンピュータに記憶させる制御プログラムによって、機能の種類を変更することが可能であるので、将来的に機能変更があった場合においても新規の基板を作成する必要はなく、物理的構成が同じ第2の基板を追加し、マイクロコンピュータに記憶させる制御プログラムの変更だけで対応することができ、最小限の変更に抑えてコストも抑えることができる。
【0008】
請求項2の発明では、前記製氷機は、
冷凍回路(12)の圧縮機(CM)からの冷媒を製氷部(11)の蒸発器(17)へ供給すると共に、給水弁(WV)を介して供給される水が貯留された製氷水タンク(15)内の水を循環ポンプ(PM)によって前記製氷部(11)へ供給して、該製氷部(11)で氷塊を生成する製氷運転と、
前記製氷部(11)の温度を検知する温度検知手段(TH)が製氷完了温度を検知すると、前記冷凍回路(12)のホットガス弁(HV)を開放して前記圧縮機(CM)からの熱冷媒を前記蒸発器(17)に供給して、前記製氷部(11)から氷塊を離脱させる除氷運転とを交互に繰り返し、
前記製氷部(11)で生成された氷塊が貯留される貯氷庫(13)内に所定量の氷塊が貯留されたことを貯氷検知手段(21)が検知すると、製氷運転と除氷運転とを交互に繰り返す製氷運転サイクルから貯氷運転に移行するよう構成され、
前記第1の基板(29)には、検知手段としての温度検知手段(TH)および貯氷検知手段(21)が少なくとも接続可能な入力部(34a~34c)と、制御対象機器としての圧縮機(CM)、給水弁(WV)、ホットガス弁(HV)および循環ポンプ(PM)が少なくとも接続可能な出力部が設けられていることを要旨とする。
請求項2の発明によれば、第1の基板によって、製氷運転-除氷運転-貯氷運転からなる基本運転サイクルを製氷機に実行させることができる。
【0009】
請求項3の発明では、前記第1および第2の基板(29,30A,30B)のマイクロコンピュータ(33,36)に、基本運転および追加機能運転の制御プログラムが夫々記憶されており、
各マイクロコンピュータ(33,36)は、記憶された制御プログラムを複数から選択して製氷機で対応する運転を実行させ得るよう構成したことを要旨とする。
請求項3の発明によれば、第1の基板に異常等が発生した場合に、第1の基板の機能を第2の基板に代替させることができ、製氷機で最も重要な氷塊を製造するための基本運転の機能が復帰するまでの期間を短縮することができる。また、各基板に記憶する制御プログラムを共通化することにより、メンテナンス・管理工数が減少する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る製氷機の制御装置によれば、機能を追加する場合に、物理的構成が異なる基板を設計、作成する必要はなく、コストを抑制することができる。また、基板の種類が増加しないので、部品管理が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例に係る製氷機を示す概略図である。
図2】製氷機の制御ブロック図である。
図3】基板の物理的構成を示す概略図である。
図4】別実施例に係るマイコンに記憶される制御プログラムの構成を示す説明図である。
図5】別実施例に係る制御装置における基板の構成を示す説明図である。
図6】別実施例に係る制御装置において、第1の基板に異常等が発生した場合の対処方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係る製氷機の制御装置につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。
【実施例0013】
図1は、実施例に係る製氷機の概略構成を示すものであって、該製氷機は、氷塊を連続的かつ自動的に製造する製氷機構10と、該製氷機構10の製氷室(製氷部)11の冷却および加熱を行う冷凍回路12と、製氷機構10で製造(生成)した氷塊を貯留する貯氷庫13と、を備えている。また、製氷機は、後述する各種検知手段での検知結果に基づいて、製氷機が備える各種制御対象機器を作動制御する制御装置14(図2参照)を備えている。
【0014】
前記製氷機構10として、実施例ではクローズドセル式の製氷機構が採用されている。クローズドセル式の製氷機構10は、図1に示す如く、製氷機の本体内部に水平に配置され、下方に開口する多数の製氷小室11aを備えた製氷室11と、製氷小室11aを開閉自在に閉成し、製氷水(水)を貯留する製氷水タンク15を下方に一体的に備えた水皿16とから基本的に構成される。製氷室11の上面には、冷凍回路12を構成する蒸発器17が密着的に蛇行配置され、製氷運転時に該蒸発器17に冷媒を循環させて製氷小室11aを強制冷却すると共に、除氷運転時にはホットガス(高温高圧冷媒)が蒸発器17に供給されて製氷小室11aからの氷塊の離脱を促すようになっている。水皿16は、支軸16aにより傾動可能に枢支され、水皿16および製氷水タンク15は、製氷運転時には略水平に位置して製氷小室11aを閉成する閉成位置に保持される。また水皿16は、除氷運転開始時には開閉モータAMを備える水皿開閉機構18の作動により支軸16aを中心として下方へ傾動して前記製氷小室11aを開放した開放位置まで姿勢変化するよう構成される。そして、水皿16は、除氷運転において製氷小室11aから氷塊が離脱したことを条件(後述する温度検知手段THによる除氷完了温度の検知)として、水皿開閉機構18の作動により支軸16aを中心として上方へ傾動して前記製氷小室11aを閉成する前記閉成位置に復帰するよう構成される。水皿開閉機構18は、水皿16の閉成位置および開放位置を検知可能なホールIC等の位置検知手段24を備えている。なお、製氷機構10の下方には、該製氷機構10から流下する排水(製氷残水、オーバーフロー水、結露水等)を受けるドレンパン25が配設されており、該ドレンパン25で受けた排水は機外へ排出される。
【0015】
図1に示す如く、給水部19から供給される所要量の製氷水を貯留する前記製氷水タンク15には、循環ポンプPMが接続されており、該循環ポンプPMを作動することで、製氷水タンク15に貯留されている製氷水が、水皿16に設けた各噴射孔(図示せず)から製氷室11の各製氷小室11aへ強制的に噴射供給されるよう構成される。前記給水部19は、図示しない上水道等の給水源に接続された給水管20と、該給水管20の途中に配設された給水弁WVとから構成され、該給水管20の出口部が前記水皿16(製氷水タンク15)の上方に臨んでいる。給水弁WVは、製氷機を統括的に制御する前記制御装置14により開閉制御される。そして、製氷運転の初期段階において、制御装置14によって給水弁WVが開放(ON)され、給水管20から常温の水が水皿16の表面へ供給される。給水管20から供給された水は、水皿16に設けた戻り孔(図示せず)等を介して製氷水タンク15に貯留され、製氷水として使用される。前記製氷機構10の下方には、前記貯氷庫13が設けられ、除氷運転によって製氷室11から離脱した氷塊は、該貯氷庫13に貯留される。また貯氷庫13に、庫内に所定量の氷塊が貯留された満杯状態を検知する貯氷スイッチ(貯氷検知手段)21が配設され、該貯氷スイッチ21による満杯検知によって、制御装置14は、製氷機の運転状態を、製氷運転と除氷運転とを交互に繰り返す製氷サイクル運転から貯氷運転に移行するよう構成されている。
【0016】
前記冷凍回路12は、図1に示す如く、圧縮機CM、凝縮器CD、膨張手段EVおよび蒸発器17の順番で冷媒が循環するよう構成され、各機器は冷媒配管22で連通接続されている。すなわち、前記圧縮機CMで圧縮された気化冷媒は、冷媒配管22を経て前記凝縮器CDで凝縮液化された後、前記膨張手段EVで減圧され、前記蒸発器17に流入してここで一挙に膨張して蒸発し、前記製氷室11と熱交換を行って該製氷室11を氷点下にまで強制冷却させる。そして、前記蒸発器17で蒸発し熱交換した気化冷媒は、冷媒配管22を経て圧縮機CMに帰還するサイクルを反復するよう構成される。なお、前記凝縮器CDに対向して設けられた冷却ファンFMは、前記凝縮器CDを冷却するべく機能する。
【0017】
図1に示す如く、前記冷凍回路12には、ホットガス弁HVが介挿されたバイパス管23が配設されている。このバイパス管23は、その始端が前記圧縮機CMの吐出側から凝縮器CDの吸込み側を連通する冷媒配管22に接続され、終端は前記膨張手段EVから蒸発器17の吸込み側を連通する冷媒配管22に接続されている。前記ホットガス弁HVは、制御装置14により開閉制御されて、バイパス管23内のホットガスの流通を制御する。すなわち、ホットガス弁HVは、基本的には製氷運転時にバイパス管23の管路を閉成してホットガスの流通を規制すると共に、除氷運転時にバイパス管23の管路を開放し、ホットガスの流通を許容するようになっている。実施例のホットガス弁HVは、通電により開放(ON)し、通電停止により閉成(OFF)する電磁弁や電動弁等が好適に採用される。
【0018】
前記製氷機構10における製氷室11の所要位置には、該製氷室11の温度を検知するサーミスタ等の温度検知手段THが配設されている。実施例の製氷機は、製氷室11の温度に基づき、製氷完了および除氷完了を判断するよう構成されている。すなわち、製氷室11が所定の温度まで低下すると該製氷室11の各製氷小室11aにおける氷塊の生成が完了するため、この温度を製氷完了温度として設定している。また、製氷室11が所定の温度まで上昇すると該製氷室11からの氷塊の離脱(除氷)が完了するため、この温度を除氷完了温度として設定している。
【0019】
実施例の製氷機は、製氷運転-除氷運転-貯氷運転からなる基本運転サイクル(基本運転)を実行する運転状態とは別に、製氷機構10の製氷室11、水皿16、製氷水タンク15等の製氷水が循環する循環経路を薬液(洗浄液)で洗浄する自動洗浄機能(追加機能)を有している。この自動洗浄機能を実行する洗浄機能運転(追加機能運転)では、製氷水タンク15に、液状の薬液または固形状の薬剤を水に溶かした薬液を所定量だけ貯留し、該薬液を、循環ポンプPMによって循環経路に循環させる洗浄工程と、製氷水タンク15に貯留したすすぎ水(水道水)を、循環ポンプPMによって循環経路に循環させるすすぎ工程とが行われる。そして、製氷機は、洗浄機能運転を行うために、前記製氷水タンク15に貯留される薬液やすすぎ水の液位を検知するフロートスイッチ26と、タンク内の薬液やすすぎ水をドレンパン25に排出する排出管に設けた排液弁27と、制御装置14に接続される操作パネルに設けられて洗浄機能運転を開始する洗浄開始スイッチ28とが設けられる(図2参照)。
【0020】
前記制御装置14には、図2に示すように、圧縮機CM、冷却ファンFM、開閉モータAM、ホットガス弁HV、循環ポンプPM、給水弁WVおよび排液弁27等の、製氷機を構成する各種の制御対象機器が接続される。また制御装置14には、温度検知手段TH、貯氷スイッチ21、位置検知手段24、フロートスイッチ26および洗浄開始スイッチ28等の、製氷機を構成する検知手段(センサやスイッチ)等と電気的に接続され、製氷機構10および冷凍回路12を統括的に制御する役割を果たしている。実施例の制御装置14は、製氷運転-除氷運転-貯氷運転の基本運転サイクルを実行するために必要となる検知手段や制御対象機器が接続される第1の基板29と、洗浄機能運転を実行するために必要となる検知手段や制御対象機器が接続される第2の基板30と、を備え、両基板29,30は、通信コネクタ31,31を繋ぐ通信線32によって信号の入出力が可能に接続されて、一枚の基板として機能するよう構成される(図3参照)。第1の基板29は、図3に示す如く、ROMやRAM等のメモリを内蔵したマイクロコンピュータ(以下、マイコンと称す)33が設けられると共に、基本運転サイクルを実行するために必要となる温度検知手段TH、貯氷スイッチ21および位置検知手段24が接続される入力コネクタ(入力部)34a~34cと、基本運転サイクルを実行するために必要となる圧縮機CM、冷却ファンFM、循環ポンプPM、ホットガス弁HV、開閉モータAMおよび給水弁WVが接続される出力コネクタ(出力部)35a~35cとが設けられ、これら入力コネクタ34a~34cおよび出力コネクタ35a~35cは、第1の基板29上に設けられた回路によってマイコン33に電気的に接続されている。そして、第1の基板29のマイコン33には、温度検知手段TH、貯氷スイッチ21および位置検知手段24等の検知手段の検知結果に基づいて、基本運転サイクルを、圧縮機CM、冷却ファンFM、開閉モータAM、ホットガス弁HV、循環ポンプPMおよび給水弁WV等の制御対象機器を作動制御して実行するための基本運転制御プログラムが記憶されている。
【0021】
前記第2の基板30は、図3に示す如く、前記第1の基板29と物理的構成は同じであって、マイコン36、入力コネクタ34a~34cおよび出力コネクタ35a~35c等の電子部品が設けられて、入力コネクタ34a~34cおよび出力コネクタ35a~35cが、第2の基板30に設けられた回路によってマイコン36に電気的に接続されている。なお、両基板29,30のマイコン33,36について、第1の基板29のマイコン33をマスタマイコン33、第2の基板30のマイコン36をサブマイコン36と指称して区別する。第2の基板30の入力コネクタ34a,34cには、洗浄機能運転を実行するために必要となるフロートスイッチ26と洗浄開始スイッチ28が接続され、第2の基板30の出力コネクタ35bには、洗浄機能運転を実行するために必要となる排液弁27が接続される。そして、サブマイコン36には、フロートスイッチ26および洗浄開始スイッチ28等の検知手段の検知結果に基づいて、洗浄機能運転を、循環ポンプPM、給水弁WV、開閉モータAMおよび排液弁27等の制御対象機器を作動制御して実行するための洗浄機能運転制御プログラムが記憶されている。また、制御装置14は、各種時間を計時するタイマを備え、洗浄機能運転において、洗浄工程の洗浄時間やすすぎ工程のすすぎ時間等を、タイマによって計時するよう構成される。なお、フロートスイッチ26、洗浄開始スイッチ28、排液弁27を第2の基板30に接続する入力コネクタ34a,34cや出力コネクタ35bの位置は一例であって、任意の位置の入力コネクタ34a~34cや出力コネクタ35a~35cに接続することができる。
【0022】
ここで、洗浄機能運転制御プログラムに基づいて実行される洗浄機能運転について説明する。
前記洗浄開始スイッチ28が操作されて、その操作信号が第2の基板30に入力されると、洗浄機能運転制御プログラムに基づいて、マスタマイコン33およびサブマイコン36が各制御対象機器を作動制御して洗浄機能運転が実行される。洗浄機能運転では、第2の基板30に入力された操作信号が、通信線32を介して第1の基板29に入力され、マスタマイコン33は、圧縮機CMおよび冷却ファンFMの運転を停止すると共に、ホットガス弁HVを閉成制御する。また、洗浄機能運転制御プログラムに基づいて洗浄工程が開始され、該洗浄工程では、サブマイコン36によって排液弁27が開放されて、前記製氷水タンク15に貯留されている製氷水が排出され、予め設定された排液時間をタイマが計時すると排液弁27を閉成し、前記水皿16を閉成位置に保持した状態で、マスタマイコン33によって給水弁WVが開放され、製氷水タンク15に水が供給される。製氷水タンク15への給水中に、該製氷水タンク15に固形状または液状の薬剤が供給され、該薬剤が水に溶けたり稀釈されたりし、その薬液が所定の液位まで貯留されたことを前記フロートスイッチ26が検知すると、マスタマイコン33によって給水弁WVが閉成されると共に、循環ポンプPMを洗浄時間に亘って作動することで、製氷水タンク15に貯留した薬液を循環経路に循環させる。そして、タイマによって洗浄時間が計時されると、マスタマイコン33によって循環ポンプPMが停止される。また、サブマイコン36によって排液弁27が開放され、製氷水タンク15の薬液が排出され、予め設定された排液時間をタイマが計時すると、排液弁27がサブマイコン36によって閉成されることで洗浄工程が終了する。
【0023】
洗浄工程が終了すると、マスタマイコン33は前記給水弁WVを開放し、前記製氷水タンク15にすすぎ水(水道水)を供給し、前記フロートスイッチ26が、すすぎ水が所定の水位まで貯留されたことを検知すると、給水弁WVが閉成される。また、マスタマイコン33によって循環ポンプPMをすすぎ時間に亘って作動することで、製氷水タンク15に貯留したすすぎ水を循環経路に循環させて該循環経路をすすぐ。タイマがすすぎ時間を計時すると、マスタマイコン33は循環ポンプPMを停止する。また、サブマイコン36によって排液弁27が開放され、製氷水タンク15のすすぎ水が排出され、予め設定された排液時間をタイマが計時すると、排液弁27がサブマイコン36によって閉成されることですすぎ工程が終了する。なお、すすぎ工程は、予め設定されたすすぎ回数だけ繰り返され、設定すすぎ回数に達すると、洗浄機能運転が終了される。
【0024】
実施例の製氷機の制御装置14では、図3に示す如く、製氷機において基本運転サイクルを実行させる基本運転制御プログラムを記憶させたマスタマイコン33が設けられると共に、各種検知手段や制御対象機器を接続する入力コネクタ34a~34cおよび出力コネクタ35a~35c等の電子部品を設けた第1の基板29と、基本運転サイクルとは別に製氷機で実行させる追加機能である洗浄機能運転を実行させる洗浄機能運転制御プログラムを記憶させたサブマイコン36が設けられる第2の基板30との物理的構成を同じとした。すなわち、基本運転サイクルとは別の機能を追加する場合に、追加する機能を実行させるための第2の基板30の物理的構成を、基本運転サイクルを実行させる第1の基板29と同じとしたので、機能を追加する場合においても物理的構成が異なる新規の専用基板を設計、作成する必要はなく、機能追加に係るコストを低廉に抑えることができる。また、新機能を追加する場合における基板の配置に係る設計の自由度が高く、他の部品の配置に影響を与えることも抑えられる。すなわち、新機能を統合した新規の1つの基板を作成する場合は、大型の基板を設置するために一箇所に大きなスペースが必要となることから、他の部品の設置位置を変更したりする等の設計変更が必要となるのに対し、複数の基板29,30に機能を分散することで1つの基板自体のサイズを抑えることができ、他の部品の設置位置を変更することなく空いたスペースに基板を配置することができ、設計が容易となる。更に、第1の基板29と第2の基板30とで、物理的構成が同じ共通基板を用いることで、生産性を向上し得ると共に部品管理が容易になる。更にまた、第2の基板30のサブマイコン36に記憶させる制御プログラムによって、機能の種類を変更することが可能であるので、将来的に機能変更があった場合においても新規の基板を作成する必要はなく、物理的構成が同じ第2の基板30を追加し、サブマイコン36に記憶させる制御プログラムの変更だけで対応することができ、最小限の変更に抑えてコストも抑えることができる。
【0025】
ここで、基本運転サイクルとは別に製氷機で実行させ得る追加機能としては、例えば下記の機能がある。
・ 検知手段として外気温センサを追加し、該外気温センサの検知温度に基づいて、製氷機の設置環境が低外気温時には、制御対象機器としての圧縮機CMや冷却ファンFMの能力を、過剰能力分だけ低下させる省エネ機能。
・ 貯氷スイッチ21として、貯氷庫13内の貯氷量を多段階で検知可能な貯氷スイッチに変更し、冬期のように氷塊の使用量が少ない状況では満杯となる貯氷量を少なくし、夏季のように氷塊の使用量が多くなる状況では満杯となる貯氷量を多くする等、状況に応じて貯氷庫13内の貯氷量を増減する貯氷量適正化機能。
・ 冷媒として可燃性冷媒を使用する場合に、漏れた可燃性冷媒を機外に放出する安全対策機能。この安全対策機能を追加する場合は、圧縮機CMや凝縮器CD、蒸発器17等の冷凍回路12の一部が配置される機械室または庫内に検知手段としての冷媒漏れ検知センサを配設すると共に、機械室に制御対象機器としての拡散ファンを配設する。また、貯氷庫13からの排水を行うように設けられた排水トラップにおいて、融解水等を貯留して外気の侵入を防止するトラップ部と貯氷庫13に接続する接続口との間に排気管を設けると共に、該排気管に制御対象機器としての放出弁を設け、可燃性冷媒が漏れたことを検知センサが検知した場合に、拡散ファンを作動すると共に放出弁を開放して、漏れた可燃性冷媒を排気管を介して外部に放出するよう構成される。
【0026】
上記各機能を追加する場合に、第1の基板29と物理的構成が同じ第2の基板30を追加して通信線32で接続し、その追加した第2の基板30のサブマイコン36に、対応する追加機能を実行させる追加機能運転の制御プログラム(省エネ機能運転制御プログラム、貯氷量適正化機能運転制御プログラム、安全対策機能運転制御プログラム等)を記憶させると共に、入力コネクタ34a~34cおよび出力コネクタ35a~35cに、追加機能運転に必要となる検知手段および制御対象機器を接続するだけでよく、機能を追加する場合のコストを低廉に抑えると共に、部品管理が容易となる。
【0027】
(別実施例について)
図4図6を参照して、別実施例に係る制御装置37につき説明する。なお、別実施例における実施例と同一部材には同じ符号を付して詳細説明は省略する。
【0028】
別実施例の制御装置37では、第1の基板29および第2の基板30は、実施例と同様に物理的構成が同じであって、各基板29,30のマイコン33,36に記憶される制御プログラムが、実施例とは異なっている。すなわち、別実施例の制御装置37では、マイコン33およびマイコン36には、基本運転制御プログラムとは別に、追加可能な機能を実行させるための制御プログラムが夫々記憶されている。例えば、追加機能として、前記自動洗浄機能と省エネ機能を追加する場合で説明すると、図4に示す如く、マイコン33およびマイコン36には、基本運転制御プログラム、洗浄機構運転制御プログラムおよび省エネ機能運転制御プログラムが記憶されている。また、マイコン33およびマイコン36は、記憶した制御プログラムを選択したり全て無効とするDIPスイッチ等の選択手段38が設けられ、該選択手段38によって選択された制御プログラムに基づいてマイコン33,36が対応する運転を製氷機で実行させるよう構成される。
【0029】
図4に示す如く、選択手段38では、設定値「0」で、基本運転制御プログラムが選択され、設定値「1」で、洗浄機能運転制御プログラムが選択され、設定値「2」で、省エネ機能運転制御プログラムが選択され、設定値「3」で、全ての制御プログラムを無効とするよう構成される。図5は、自動洗浄機能と省エネ機能との2つの機能を追加した制御装置37の基板構成を模式的に示すものであって、第1の基板29の選択手段38は、設定値が「0」に設定され、1つ目の第2の基板30Aの選択手段38は、設定値が「1」に設定され、2つ目の第2の基板30Bの選択手段38は、設定値が「2」に設定されている。これにより、第1の基板29のマイコン33がマスタマイコンとして設定され、第2の基板30A,30Bのマイコン36,36がサブマイコンとして設定されることになる。2つの第2の基板30A,30Bは、第1の基板29に通信線32を介して夫々接続されている。そして、第2の基板30Aには、洗浄機能運転を実行するための、前記フロートスイッチ26、洗浄開始スイッチ28、排液弁27が接続され、第2の基板30Bには、省エネ機能運転を実行するための、前記外気温センサが接続される。
【0030】
別実施例の制御装置37では、各マイコン29,30A,30Bに、基本運転制御プログラム、洗浄機能運転制御プログラムおよび省エネ機能運転制御プログラムが記憶されているので、例えば、第1の基板29に異常等が発生して基本運転サイクルが実行できなくなった場合に、例えば第2の基板30Aを、第1の基板29として代替させることで対応することができる。すなわち、図6に示す如く、異常等が発生した第1の基板29の選択手段38の設定値を「0」→「3」、第2の基板30Aの選択手段38の設定値を「1」→「0」に設定変更すると共に、第1の基板29に接続する温度検知手段TH、貯氷スイッチ21、位置検知手段24、圧縮機CM、冷却ファンFM、循環ポンプPM、ホットガス弁HV、開閉モータAM、給水弁WVを、第2の基板30Aの対応する入力コネクタ34a~34cおよび出力コネクタ35a~35cに付け替え、第2の基板30Aと第2の基板30Bとの通信線32で接続する。これにより、製氷機では、基本運転サイクルおよび省エネ機能運転が実行可能となる。なお、第2の基板30Bの選択手段38の設定値を「0」に設定変更すると共に、第1の基板29に接続する温度検知手段TH、貯氷スイッチ21、位置検知手段24、圧縮機CM、冷却ファンFM、循環ポンプPM、ホットガス弁HV、開閉モータAM、給水弁WVを、第2の基板30Bの対応する入力コネクタ34a~34cおよび出力コネクタ35a~35cに付け替えることで、製氷機では、基本運転サイクルおよび洗浄機能運転が実行可能となる。また、第2の基板30Aおよび第2の基板30Bの何れかに異常等が発生した場合に、各選択手段38の設定値を変更すると共に、接続されていた検知手段や制御対象機器を付け替えることで、重要度の高い機能を残して重要度が低い機能を無効とすることで対応することができる。
【0031】
別実施例の制御装置37では、第1の基板29に異常等が発生した場合に、第1の基板29の機能を第2の基板30A,30Bに代替させることができ、製氷機の機能として最も重要となる基本運転サイクルを長期に亘って停止することなく、基本運転サイクルを実行可能な状態に短期間で復帰させることができる。また、複数の第2の基板30A,30Bの何れかに異常等が発生した場合においても、より重要な機能を維持することができる。更に、各基板に記憶する制御プログラムを共通化することにより、メンテナンス・管理工数が減少する。
【0032】
〔変更例〕
本願は、前述した実施例や別実施例の構成に限定されるものでなく、その他の構成を適宜に採用することができる。また、以下の変更例に限らず、実施例や別実施例に記載した構成については、本発明の主旨の範囲内において種々の実施形態を採用し得る。
1.別実施例では、2つの第2の基板を接続した場合で説明したが、接続する第2の基板の数は、追加する機能に応じた数であればよい。また、選択手段で設定される設定値については、追加される第2の基板(機能)の数に応じた設定値および全ての制御プログラムを無効とする設定値を選択可能に構成すればよい。
2.製氷機構は、クローズドセル式に限らず、オープンセル式、オーガ式および流下式等の各種方式の製氷機構を採用することができる。また、第1の基板29や第2の基板30としては、オープンセル式、オーガ式および流下式等の各種方式の製氷機において、基本運転サイクルや、その他追加可能な機能を実行するために必要となる検知手段や制御対象機器を接続可能な数の入力コネクタおよび出力コネクタを設けた基板を採用すればよい。
【符号の説明】
【0033】
11 製氷室(製氷部),12 冷凍回路,13 貯氷庫,15 製氷水タンク
17 蒸発器,21 貯氷スイッチ(貯氷検知手段、検知手段)
24 位置検知手段(検知手段),29 第1の基板,30、30A、30B 第2の基板
33 マスタマイコン(マイクロコンピュータ)
34a~34c 入力コネクタ(入力部),35a~35c 出力コネクタ(出力部)
36 サブマイコン(マイクロコンピュータ),AM 開閉モータ(制御対象機器)
PM 循環ポンプ(制御対象機器),WV 給水弁(制御対象機器)
CM 圧縮機(制御対象機器),FM 冷却ファン(制御対象機器)
HV ホットガス弁(制御対象機器),TH 温度検知手段(検知手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6