(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027249
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】イオン発生装置
(51)【国際特許分類】
H01T 23/00 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
H01T23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129889
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】319006047
【氏名又は名称】シャープセミコンダクターイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤山 利也
(57)【要約】
【課題】正イオンの濃度と負イオンの濃度とのアンバランスの発生を抑制しながら、正イオンの濃度および負イオンの濃度が減少することを抑制することができるイオン発生回路およびイオン発生装置を提供する。
【解決手段】イオン発生装置は、一対の正イオン発生電極および一対の負イオン発生電極を含むイオン発生回路と、前記イオン発生回路を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記一対の正イオン発生電極の間への第1リンギング電圧波形の負側が除去された波形の正電圧の印加と、前記一対の負イオン発生電極の間への第2リンギング電圧波形の正側が除去された波形の負電圧の印加と、を異なる期間に行われるように、前記イオン発生回路を制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の正イオン発生電極および一対の負イオン発生電極を含むイオン発生回路と、
前記イオン発生回路を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記一対の正イオン発生電極の間への第1リンギング電圧波形の負側が除去された波形の正電圧の印加と、前記一対の負イオン発生電極の間への第2リンギング電圧波形の正側が除去された波形の負電圧の印加と、が異なる期間に行われるように、前記イオン発生回路を制御する、イオン発生装置。
【請求項2】
前記イオン発生回路は、
直流電源に接続された一次側コイルを有する一次側回路と、
前記一次側コイルと協働してトランスを構成し、前記一次側コイルに印加された電圧を上昇させる二次側コイルを有する二次側回路と、を含み、
前記二次側回路は、前記一対の正イオン発生電極および前記一対の負イオン発生電極を含み、
前記制御部は、前記第1リンギング電圧波形の負側が除去された波形および前記第2リンギング電圧波形の正側が除去された波形の生成が前記二次側回路で行われるように、前記二次側回路を制御する、請求項1に記載のイオン発生装置。
【請求項3】
前記一次側回路は、直流電源と前記一次側コイルとの間に直列接続された第1スイッチング素子を含み、
前記二次側回路は、
前記二次側コイルの一方端に第1アノードが電気的に接続された第1ダイオードと、
前記一対の正イオン発生電極の一方を構成し、前記第1ダイオードの第1カソードに電気的に接続された第1放電電極と、
前記一対の正イオン発生電極の他方を構成し、前記二次側コイルの他方端に電気的に接続され、かつ、前記第1放電電極と協働して放電を引き起こす第1受電電極と、
前記第1カソードと前記第1放電電極との間の第1電気経路と、前記二次側コイルの他方端から延びる第2電気経路と、を接続する第3電気経路に電気的に接続された第2スイッチング素子と、
前記二次側コイルの前記一方端に第2カソードが電気的に接続された第2ダイオードと、
前記一対の負イオン発生電極の一方を構成し、前記第2ダイオードの第2アノードに電気的に接続された第2放電電極と、
前記一対の負イオン発生電極の他方を構成し、前記二次側コイルの他方端に電気的に接続され、かつ、前記第2放電電極と協働して放電を引き起こす第2受電電極と、
前記第2アノードと前記第2放電電極との間の第4電気経路と、前記第2電気経路と、を接続する第5電気経路に電気的に接続された第3スイッチング素子と、
を備えた、
請求項2に記載のイオン発生装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1スイッチング素子のON/OFF動作を制御することにより、前記一次側コイルに一次側リンギング電圧波形を生成させ、それにより、前記二次側コイルに二次側リンギング電圧波形を生成させ、
前記第2スイッチング素子のON/OFF動作を制御することにより、前記第1リンギング電圧波形の負側が除去された波形の正電圧として、前記二次側リンギング電圧波形のうちの正側波形の電圧を、前記第1放電電極と前記第1受電電極との間に印加し、
前記第3スイッチング素子のON/OFF動作を制御することにより、前記第2リンギング電圧波形の正側が除去された波形の負電圧として、前記二次側リンギング電圧波形のうちの負側波形の電圧を、前記第2放電電極と前記第2受電電極との間に印加する、
請求項3に記載のイオン発生装置。
【請求項5】
前記イオン発生回路は、
直流電源に接続された一次側コイルを有する一次側回路と、
前記一次側コイルと協働してトランスを構成し、前記一次側コイルに印加された電圧を上昇させる二次側コイルを有する二次側回路と、を含み、
前記二次側回路は、前記一対の正イオン発生電極および前記一対の負イオン発生電極を含み、
前記制御部は、前記第1リンギング電圧波形の負側が除去された波形および前記第2リンギング電圧波形の正側が除去された波形の生成が前記一次側回路で行われるように、前記一次側回路を制御する、請求項1に記載のイオン発生装置。
【請求項6】
前記一次側回路は、
直流電源の正電極および負電極の一方に電気的に接続され得る第1スイッチング素子と、
前記一次側コイルの他方端に電気的に接続され、かつ、前記直流電源の前記正電極および前記負電極の他方に電気的に接続され得る第2スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子と前記一次側コイルの一方端との間の第1電気経路、ならびに、前記第2スイッチング素子と前記直流電源の前記正電極および前記負電極の他方との間の第2電気経路のそれぞれに接続された第3電気経路に電気的に接続された第3スイッチング素子と、
前記直流電源の前記正電極および前記負電極の一方と前記第1スイッチング素子との間の第4電気経路、および、前記一次側コイルの他方端と前記第2スイッチング素子との間の第5電気経路のそれぞれに接続された第6電気経路に電気的に接続された第4スイッチング素子と、
を備えた、
請求項5に記載のイオン発生装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記一次側コイルに前記第1リンギング電圧波形の正側の波形のみが生成される正期間および前記一次側コイルに前記第2リンギング電圧波形の負側の波形のみが生成される負期間が存在するように、前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子、および前記第4スイッチング素子のそれぞれのON/OFF動作を制御する、
請求項6に記載のイオン発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、イオン発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、正イオンおよび負イオンの双方を発生させるイオン発生回路と、イオン発生回路を制御する制御部と、を備えたイオン発生装置の開発が行われている。このようなイオン発生装置においては、イオン発生回路に設けられた共振回路によって発生するリンギング電圧波形を利用して、正イオンおよび負イオンの双方を同時に発生させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したイオン発生装置によれば、正イオンおよび負イオンの双方を同時に発生させているため、空気中で発生した正イオンと負イオンとが再結合する確率が高い。その結果、空気中の正イオンおよび負イオンの濃度が減少する。
【0005】
本開示は、上述の問題に鑑みなされたものである。本開示の目的は、正イオンの濃度および負イオンの濃度が減少することを抑制することができるイオン発生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様のイオン発生装置は、一対の正イオン発生電極および一対の負イオン発生電極を含むイオン発生回路と、前記イオン発生回路を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記一対の正イオン発生電極の間への第1リンギング電圧波形の負側が除去された波形の正電圧の印加と、前記一対の負イオン発生電極の間への第2リンギング電圧波形の正側が除去された波形の負電圧の印加と、が異なる期間に行われるように、前記イオン発生回路を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態1のイオン発生装置の概要を説明するための機能ブロック図である。
【
図2】実施の形態1のイオン発生回路および制御部を含むイオン発生装置を示す回路図である。
【
図3】実施の形態1のイオン発生装置の制御部が実行するスイッチング処理を説明するためのタイミングチャートである。
【
図4】実施の形態2のイオン発生装置の概要を説明するための機能ブロック図である。
【
図5】実施の形態2のイオン発生回路および制御部を含むイオン発生装置を示す回路図である。
【
図6】実施の形態2のイオン発生装置の制御部が実行するスイッチング処理を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施の形態のイオン発生装置を、図面を参照しながら説明する。なお、図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は繰り返さない。
【0009】
(実施の形態1)
図1~
図3を用いて、実施の形態1のイオン発生装置100を説明する。
【0010】
図1は、実施の形態1のイオン発生装置100の概要を説明する機能ブロック図である。
【0011】
図1に示されるように、イオン発生装置100は、高電圧制御部CT1、高電圧発生部HG、イオン発生部IG、および出力クランプ制御部CT2を備えている。高電圧制御部CT1は、高電圧発生部HGを制御する。高電圧発生部HGは、後述されるトランスを介して、イオン発生部IGに交流電圧を伝達する。イオン発生部IGは、伝達された交流電圧の波形の一部を利用して、イオンを発生させる。具体的には、出力クランプ制御部CT2は、イオン発生部IGの一対の正イオン発生電極に印加される電圧波形の負側をクランプし、イオン発生部IGの一対の負イオン発生電極に印加される電圧波形の正側をクランプする。それにより、正イオンおよび負イオンを時系列的に交互に発生させる。そのため、発生した正イオンおよび負イオンが再結合によって消滅する確率を低減することができる。その結果、正イオンの濃度および負イオンの濃度が減少することを抑制することができる。以下、このことを具体的に説明する。
【0012】
図2は、実施の形態1のイオン発生回路10および制御部CTを含むイオン発生装置100を示す回路図である。
【0013】
図2に示されるように、イオン発生装置100は、イオン発生回路10と制御部CTとを備えている。
図2から分かるように、イオン発生装置100は、
図1を用いて説明した高電圧制御部CT1、高電圧発生部HG、イオン発生部IG、および出力クランプ制御部CT2を備えている。なお、制御部CTは、高電圧制御部CT1および出力クランプ制御部CT2を含む。
【0014】
以下、本実施の形態のイオン発生回路10および制御部CTを具体的に説明する。
【0015】
イオン発生回路10は、正イオンおよび負イオンを発生させるための電気回路である。イオン発生回路10は、トランスTRを介して、一次側回路PCRと二次側回路SCRとを含んでいる。トランスTRは、一次側回路PCRの一次側コイルPCに供給された交流電力を、一次側コイルPCに供給された電力の周波数を変えることなく、二次側回路SCRの二次側コイルSCへ伝達する。トランスTRは、直流電源DPの電圧を変換するためのものであるため、一次側コイルPCに印加される交流電圧(たとえば、100V)の振幅と、二次側コイルSCに印加される交流電圧(たとえば、4KV)の振幅とは異なっている。本実施の形態のトランスTRは、一次側コイルPCと一次側コイルPCに印加される電圧を上昇させる二次側コイルSCとを有する昇圧回路である。
【0016】
一次側回路PCRは、第1スイッチング素子SW1および一次側コイルPCを含んでいる。本実施の形態においては、一次側回路PCRは、直流電源DPを含んでいないものとする。この場合、一次側回路PCRは、建物または設備等に付随して設けられている汎用の直流電源DPに電気的に接続可能に構成されていればよい。ただし、一次側回路PCRが直流電源DPを含んでいてもよい。直流電源DPは、電池であってもよく、また、交流電源を直流電源へ変換するAD-DC変換器であってもよい。より具体的に説明すると、一次側回路PCRは、次のような構成を備えている。
【0017】
本実施の形態においては、第1スイッチング素子SW1は、直流電源DPに直列接続されている。一次側コイルPCは、第1スイッチング素子SW1を介して、直流電源DPに直列接続されている。直流電源DPの正電極PEが第1スイッチング素子SW1の一方側の端子に電気的に接続されている。第1スイッチング素子SW1の他方側の端子が一次側コイルPCの一方端に電気的に接続されている。一次側コイルPCの他方端が直流電源DPの負電極NEに電気的に接続されている。
【0018】
二次側回路SCRは、二次側コイルSC、第1ダイオードD1、第2ダイオードD2、第1放電電極DE1、第1受電電極RE1、第2放電電極DE2、第2受電電極RE2、第2スイッチング素子SW2、および第3スイッチング素子SW3を備えている。より具体的に説明すると、二次側回路SCRは、次のような構成を備えている。
【0019】
二次側コイルSCは、一次側コイルPCと協働してトランスTRを構成する。第1ダイオードD1の第1アノードA1は、二次側コイルSCの一方端に電気的に接続されている。第1ダイオードD1の第1カソードK1は、第1放電電極DEに電気的に接続されている。第2ダイオードD2の第2アノードA2は、第2放電電極DE2に電気的に接続されている。第2ダイオードD2の第2カソードK2は、二次側コイルSCの一方端に電気的に接続されている。
【0020】
見方を変えると、イオン発生回路10は、二次側回路SCRにおいて、一対の正イオン発生電極PIおよび一対の負イオン発生電極NIを含んでいる。一対の正イオン発生電極PIは、一方の電極として、第1放電電極DE1を有し、他方の電極として第1受電電極RE1を有している。一対の負イオン発生電極NIは、一方の電極として、第2放電電極DE2を有し、他方の電極として第2受電電極RE2を有している。
【0021】
制御部CTは、イオン発生回路10を制御する。具体的には、高電圧制御部CT1がスイッチング素子SW1を制御する。出力クラインプ制御部CT2がスイッチング素子SW2およびスイッチング素子SW3を制御する。本実施の形態においては、制御部CTは、プログラムに基づいてイオン発生回路10の複数のスイッチング素子を制御する1または複数のプロセッサを含む。複数のスイッチング素子は、後に詳述される。ただし、制御部CTは、イオン発生回路10の複数のスイッチング素子のON/OFF動作を制御するものであれば、1または複数の専用の回路を含むものであってもよい。なお、本実施の形態においては、回路という用語は、電気回路または電子回路を意味する。
【0022】
また、本実施の形態においては、一対の正イオン発生電極PIは、針状部材により構成された第1放電電極DE1と平板状部材により構成された第1受電電極RE1とを含む。しかしながら、一対の正イオン発生電極PIの形状は、互いの間に電圧が印加されることにより、互いの間に正イオンを発生できる形状であれば、いかなるものであってもよい。一対の負イオン発生電極NIは、本実施の形態においては、針状部材により構成された第2放電電極DE2と平板状部材により構成された第2受電電極RE2とを含む。しかしながら、一対の負イオン発生電極NIの形状は、互いの間に電圧が印加されることにより、互いの間に負イオンを発生できる形状であれば、いかなるものであってもよい。
【0023】
第1放電電極DE1は、第1ダイオードD1の第1カソードK1に電気的に接続されている。第1受電電極RE1は、二次側コイルSCの他方端に電気的に接続されている。第1受電電極RE1と第1放電電極DE1とは、一対の正イオン発生電極PIを構成し、協働して第1受電電極RE1と第1放電電極DE1との間に放電を引き起こす。第2放電電極DE2は、第2ダイオードD2の第2アノードA2に電気的に接続されている。第2受電電極RE2は、二次側コイルSCの他方端に電気的に接続されている。第2放電電極DE2と第2受電電極RE2とは、一対の負イオン発生電極NIを構成し、協働して第2放電電極DE2と第2受電電極RE2との間に放電を引き起こす。
【0024】
第2スイッチング素子SW2は、第1カソードK1と第1放電電極DE1との間の第1電気経路EP1と、二次側コイルSCの他方端から延びる第2電気経路EP2と、を接続する第3電気経路EP3に電気的に接続されている。第3スイッチング素子SW3は、第2アノードA2と第2放電電極DE2との間の第4電気経路EP4と、第2電気経路EP2と、を接続する第5電気経路EP5に電気的に接続されている。
【0025】
制御部CTは、プログラムが内蔵されたプロセッサを含む。制御部CTは、プログラムに基づいて、イオン発生回路10を制御する。制御部CTは、第1スイッチング素子SW1、第2スイッチング素子SW2、および第3スイッチング素子SW3を制御する。制御部CTの高電圧制御部CT1は、第1スイッチング素子SW1のON/OFF動作を制御する。このとき、高電圧制御部CT1は、一次側コイルPCに一次側リンギング電圧波形を生成させ、それにより、二次側コイルPCに二次側リンギング電圧波形を生成させる。制御部CTの出力クランプ制御部CT2は、第2スイッチング素子SW2のON/OFF動作を制御する。それにより、出力クランプ制御部CT2は、二次側リンギング電圧波形のうちの正側波形の電圧を、第1放電電極DE1と第1受電電極RE1との間に印加する。制御部CTの出力クランプ制御部CT2は、第3スイッチング素子SW3のON/OFF動作を制御する。それにより、出力クランプ制御部CT2は、二次側リンギング電圧波形のうちの負側波形の電圧を、第2放電電極DE2と第2受電電極RE2との間に印加する。
【0026】
第1スイッチング素子SW1、第2スイッチング素子SW2、および第3スイッチング素子SW3のそれぞれは、トランジスタにより構成されている。制御部CTは、第1スイッチング素子SW1、第2スイッチング素子SW2、および第3スイッチング素子SW3のそれぞれのゲート電極に印加される電圧を制御する。それにより、制御部CTは、第1スイッチング素子SW1、第2スイッチング素子SW2、および第3スイッチング素子SW3のそれぞれのON/OFF動作を制御する。その結果、制御部CTは、第1スイッチング素子SW1、第2スイッチング素子SW2、および第3スイッチング素子SW3のそれぞれのソース電極からドレイン電極へ流れる電流を制御する。
【0027】
図3は、実施の形態1のイオン発生装置100の制御部CTが実行するスイッチング処理を説明するためのタイミングチャートである。
【0028】
図3に示されるように、期間PPにおいては、スイッチング素子SW1は、ONからOFFへ切り替えられた後の状態である。このとき、スイッチング素子SW2は、OFFからONへ切り替えられた後の状態である。このとき、スイッチング素子SW3は、OFF状態を継続している。それにより、期間PPにおいて、第1リンギング電圧波形の負側が除去された波形R+の正電圧が、一対の正イオン発生電極PIの間に印加される。
【0029】
その後、期間NPにおいては、スイッチング素子SW1は、再び、ONからOFFへ切り替えられた後の状態である。このとき、スイッチング素子SW2は、OFF状態を継続している。また、スイッチング素子SW3は、OFFからONへ切り替えられた後の状態である。それにより、期間NPにおいて、第2リンギング電圧波形の正側が除去された波形R-の負電圧が一対の負イオン発生電極NIの間に印加される。
【0030】
つまり、一対の正イオン発生電極PIの間への第1リンギング電圧波形の負側が除去された波形R+の正電圧の印加と、一対の負イオン発生電極NIの間への第2リンギング電圧波形の正側が除去された波形R-の負電圧の印加と、が異なる期間に行われる。具体的には、一対の正イオン発生電極PIの間への第1リンギング電圧波形の負側が除去された波形R+の正電圧の印加と、一対の負イオン発生電極NIの間への第2リンギング電圧波形の正側が除去された波形R-の負電圧の印加と、が交互に繰り返される。
【0031】
なお、本実施の形態においては、第1リンギング電圧波形および第2リンギング電圧波形のそれぞれは、振幅が徐々に小さくなるように減衰振動する仮想の波形である。ただし、リンギング波形は、正の電圧波形と負の電圧波形とを含むように振動する波形であれば、いかなるものであってもよい。
【0032】
本実施の形態のイオン発生回路10およびイオン発生装置100によれば、空気中での正イオンの濃度および負イオンの濃度が減少することを抑制することができる。
【0033】
また、本実施の形態においては、第1スイッチング素子SW1が一次側回路PCRに設けられており、第2スイッチング素子SW2および第3スイッチング素子SW3が二次側回路SCRに設けられている。そのため、第1リンギング電圧波形および第2リンギング電圧波形に対応する一次側のリンギング電圧波形の生成が一次側回路PCRで行われる。また、第1リンギング電圧波形の負側が除去された波形および第2リンギング電圧波形の正側が除去された波形の生成が二次側回路SCRで行われる。これによれば、後述される実施の形態2に比較して、スイッチング素子の数を少なくすることができる。
【0034】
(実施の形態2)
図4~
図6を用いて、実施の形態2のイオン発生回路10およびイオン発生装置100を説明する。なお、下記において実施の形態のイオン発生回路10およびイオン発生装置100と同様である点についての説明は繰り返さない。本実施の形態のイオン発生回路10およびイオン発生装置100は、以下の点で、実施の形態1のイオン発生回路10およびイオン発生装置100と異なる。
【0035】
図4は、実施の形態2のイオン発生装置100の概要を説明する機能ブロック図である。
【0036】
図4から分かるように、本実施の形態のイオン発生装置100は、出力クランプ制御部CT2が、イオン発生部IGではなく、高電圧制御部HGを制御する点において、実施の形態1のイオン発生装置100と異なる。
【0037】
図5は、実施の形態2のイオン発生回路10および制御部CTを含むイオン発生装置100を示す回路図である。
【0038】
図5に示されるように、イオン発生回路10は、第1、2、および3スイッチング素子SW1、SW2、およびSW3の代わりに、第11、22、33、および44スイッチング素子SW11、SW22、SW33、およびSW44を備えている。また、本実施の形態の説明においては、第1、2、3、4、および5電気経路EP1、EP2、EP3、EP4、EP5は用いられない。本実施の形態の説明においては、それらの代わりに、第11、22、33、44、55、および66電気経路EP11、EP22、EP33、EP44、EP55、およびEP66が用いられる。
【0039】
本実施の形態においては、第1スイッチング素子SW11は、直流電源DPの正電極PEに電気的に接続されている。一次側コイルPCの一方端は、第1スイッチング素子SW11に電気的に接続されている。第2スイッチング素子SW22は、一次側コイルPCの他方端に電気的に接続されている。第2スイッチング素子SW22は、直流電源DPの負電極NEに電気的に接続され得るように構成されている。
【0040】
第3スイッチング素子SW33は、第3電気経路EP33に電気的に接続されている。第3電気経路EP33の一方端は、第1スイッチング素子SW11と一次側コイルPCの一方端との間の第1電気経路EP11に接続されている。また、第3電気経路EP33の他方端は、第2スイッチング素子SW22と直流電源DPの負電極NEとの間の第2電気経路EP22に接続されている。
【0041】
第4スイッチング素子SW44は、第6電気経路EP66に電気的に接続されている。第6電気経路EP66の一方端は、直流電源DPの正電極PEと第1スイッチング素子SW11との間の第4電気経路EP44に接続されている。また、第6電気経路EP66の他方端は、一次側コイルPCの他方端と第2スイッチング素子SW22との間の第5電気経路EP55に接続されている。
【0042】
本実施の形態の二次側回路SCRは、実施の形態の二次側回路SCRとほぼ同様であるが、スイッチング素子を有していない点において異なる。そのため、本実施の二次側回路SCRに流れる電流は、一次側回路PCRの一次側コイルPCに生じる電流の変化のみに起因して変化する。
【0043】
本実施の形態の制御部CTは、第1スイッチング素子SW11、第2スイッチング素子SW22、第3スイッチング素子SW33、および第4スイッチング素子SW44のそれぞれのON/OFF動作を制御する。具体的には、高電圧制御部CT2は、第1スイッチング素子SW11および第4スイッチング素子SW44のON/OFFを制御する。また、出力クランプ制御部CT2は、第2スイッチング素子SW22および第3スイッチング素子SW33のそれぞれのON/OFF動作を制御する。それにより、一次側コイルPCにリンギング電圧波形の正側の波形のみが生成される正期間(
図6のPP参照)および一次側コイルPCにリンギング電圧波形の負側の波形のみが生成される負期間NP(
図6のNP参照)が存在するようになる。
【0044】
本実施の形態においても、第1スイッチング素子SW11、第2スイッチング素子SW22、第3スイッチング素子SW33、および第4スイッチング素子SW44のそれぞれは、トランジスタにより構成されている。また、制御部CTは、第1スイッチング素子SW11、第2スイッチング素子SW22、第3スイッチング素子SW33、および第4スイッチング素子SW44のそれぞれのゲート電極に印加される電圧を制御する。それにより、制御部CTは、第1スイッチング素子SW11、第2スイッチング素子SW22、第3スイッチング素子SW33、および第4スイッチング素子SW44のそれぞれのソース電極からドレイン電極へ流れる電流を制御する。
【0045】
図6は、実施の形態2のイオン発生装置100の制御部CTが実行するスイッチング処理を説明するためのタイミングチャートである。
【0046】
制御部CTは、第1スイッチング素子SW11、第2スイッチング素子SW22、第3スイッチング素子SW33、および第4スイッチング素子SW44のそれぞれを制御する。
図6では、一対の正イオン発生電極PIの間への第1リンギング電圧波形の負側が除去された波形R+の正電圧の印加と、一対の負イオン発生電極NIの間への第2リンギング波形の正側が除去された波形R-の負電圧の印加と、が異なる期間に行われる。したがって、本実施の形態のイオン発生回路10およびイオン発生装置100によっても、空気中での正イオンの濃度と負イオンの濃度とのアンバランスの発生を抑制しながら、空気中で正イオンの濃度および負イオンの濃度が減少することを抑制することができる。
【0047】
また、本実施の形態によれば、第1スイッチング素子SW11、第2スイッチング素子SW22、第3スイッチング素子SW33、および第4スイッチング素子SW44の全てが一次側回路PCRに設けられている。そのため、第1リンギング電圧波形の負側が除去された波形、および、第2リンギング電圧波形の正側が除去された波形の生成が一次側回路PCRで行われる。したがって、二次側回路SCRの構成をシンプルにすることができる。また、一次側回路PCRは、二次側回路SCRに比較して低い電圧を処理するため、実施の形態1に比較して、スイッチング素子SW11、SW22、SW33、SW44、SW55、SW66のそれぞれにかかる負荷を低減することができる。
【符号の説明】
【0048】
10 イオン発生回路
100 イオン発生装置
A1 第1アノード
A2 第2アノード
CT 制御部
D1 第1ダイオード
D2 第2ダイオード
DE1 第1放電電極
DE2 第2放電電極
DP 直流電源
EP1 第1電気経路
EP2 第2電気経路
EP3 第3電気経路
EP4 第4電気経路
EP5 第5電気経路
EP11 第1電気経路
EP22 第2電気経路
EP33 第3電気経路
EP44 第4電気経路
EP55 第5電気経路
EP66 第6電気経路
K1 第1カソード
K2 第2カソード
NE 負電極
PC 一次側コイル
PCR 一次側回路
PE 正電極
RE1 第1受電電極
RE2 第2受電電極
SC 二次側コイル
SCR 二次側回路
SW1 第1スイッチング素子
SW2 第2スイッチング素子
SW3 第3スイッチング素子
SW11 第1スイッチング素子
SW22 第2スイッチング素子
SW33 第3スイッチング素子
SW44 第4スイッチング素子
TR トランス