(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027261
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】アブソリュートエンコーダ及びアブソリュートエンコーダを備えるアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/04 20060101AFI20240222BHJP
G01D 5/245 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
G01D5/04 C
G01D5/245 110L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129920
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】崎枝 健
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛宏
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA28
2F077AA29
2F077AA30
2F077CC02
2F077CC07
2F077CC08
2F077DD05
2F077JJ02
2F077JJ07
2F077JJ23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】主軸センサレス型のアブソリュートエンコーダにおいて、主軸の回転量を高精度に検出することができる技術を提供する。
【解決手段】主軸ギアアッセンブリ10と、第1副軸ギアアッセンブリ30と、第2副軸ギアアッセンブリ40と、角度センサ71,72とを備え、主軸ギアアッセンブリ10は、アクチュエータ200の主軸210に対して相対回転不能に取り付けられる固定ギア11と、固定ギア11に同軸上に設けられて歯面が固定ギア11の歯面と周方向にずらされたシザーズギア13とを有し、第1副軸ギアアッセンブリ30は、固定ギア11と噛み合い、第2副軸ギアアッセンブリ40は、固定ギア11及びシザーズギア13と噛み合い、角度センサ71,72は、第1副軸ギアアッセンブリ30及び第2副軸ギアアッセンブリ40に対して設けられて各副軸ギアアッセンブリ30,40の回転角を検知して、主軸210の回転量を算出する。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータの主軸に対して相対回転不能に取り付けられる主歯車と、該主歯車に同軸上に設けられていて歯面が前記主歯車の歯面に対して周方向にずらされている少なくとも1つの副歯車と、を有する主軸ギアアッセンブリと、
前記主歯車と噛み合って回転する第1副軸ギアアッセンブリと、
前記主歯車及び前記副歯車と噛み合って回転する第2副軸ギアアッセンブリと、
前記第1副軸ギアアッセンブリ及び前記第2副軸ギアアッセンブリそれぞれに対して設けられて各副軸ギアアッセンブリの回転角を検知する、前記主軸の回転量を算出する用に供される角度センサと、
を備えることを特徴とするアブソリュートエンコーダ。
【請求項2】
前記副歯車とは反対の側に面する面で前記主歯車と同軸上に設けられていて歯面が前記主歯車の歯面及び前記副歯車の歯面に対して周方向にずらされている別の副歯車と、
前記主歯車及び前記別の副歯車と噛み合って回転する第3副軸ギアアッセンブリと、
前記第3副軸ギアアッセンブリに対して設けられて、該第3副軸ギアアッセンブリの回転角を検知する用に供される角度センサと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項3】
前記主歯車は、前記副歯車に面する面に、軸線周りに傾斜した傾斜面を有し、前記副歯車と係合する凸又は凹に形成された第1係合部を有し、
前記副歯車は、前記傾斜面に沿って傾斜した傾斜面を有し、前記第1係合部と係合する凹又は凸に形成された第2係合部を有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項4】
前記主軸ギアアッセンブリは、前記副歯車に対して同軸上に設けられて軸線方向に弾性を有する環状の付勢部材と、前記副歯車に対して同軸上に設けられて前記付勢部材を前記副歯車との間で挟み込んで前記副歯車に対して押し付ける環状の固定部材と、を有することを特徴とする請求項1に記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項5】
前記副軸ギアアッセンブリの歯数は、それぞれ異なることを特徴とする請求項1に記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項6】
請求項1に記載のアブソリュートエンコーダを備えるアクチュエータ。
【請求項7】
前記主軸は、中空状に形成されており、前記アブソリュートエンコーダのハウジングを貫通して外部に突出していることを特徴とする請求項6に記載のアブソリュートエンコーダを備えるアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アブソリュートエンコーダ及び当該アブソリュートエンコーダを備えるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種モータ等のアクチュエータにおいて、回動軸(主軸)の回転位置や回転角度を検出するために用いられるロータリエンコーダとして、絶対的な位置又は角度を検出するアブソリュート型のエンコーダ(以下、「アブソリュートエンコーダ」という)が知られている。アブソリュートエンコーダには、回動軸及び副軸の回転角度に基づいて回動軸の回転量を計測するものがある。このようなアブソリュートエンコーダは、回動軸及び副軸の先端に取り付けられたマグネットの磁界の変化に基づいて、回動軸及び副軸の回転角度を検出する。磁界の変化は、マグネットの対向に設けられた角度センサによって検出される。
【0003】
アブソリュートエンコーダには、回動軸に取り付けられた主軸歯車と、複数の副軸歯車と、各歯車の位相を検出する角度センサと、を備えるものがある。角度センサは、主軸歯車及び副軸歯車それぞれに設けられており、複数の歯車それぞれの位相の組み合わせに基づいて、回動軸の多回転量が導出される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、アクチュエータの主軸がアブソリュートエンコーダのハウジングから軸方向に貫通した軸貫通型のアブソリュートエンコーダがある。この場合、主軸の位相を検出する角度センサを主軸に対して設けることができない(主軸センサレス)。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、主軸センサレス型のアブソリュートエンコーダにおいても、主軸の回転量を高精度に検出することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るアブソリュートエンコーダは、アクチュエータの主軸に対して相対回転不能に取り付けられる主歯車と、該主歯車に同軸上に設けられていて歯面が前記主歯車の歯面に対して周方向にずらされている少なくとも1つの副歯車と、を有する主軸ギアアッセンブリと、前記主歯車と噛み合って回転する第1副軸ギアアッセンブリと、前記主歯車及び前記副歯車と噛み合って回転する第2副軸ギアアッセンブリと、前記第1副軸ギアアッセンブリ及び前記第2副軸ギアアッセンブリそれぞれに対して設けられて各副軸ギアアッセンブリの回転角を検知する、前記主軸の回転量を算出する用に供される角度センサと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、主軸センサレス型のアブソリュートエンコーダにおいても、主軸の回転量を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係るアブソリュートエンコーダを備えたアクチュエータを示す図である。
【
図2A】
図1に示すアブソリュートエンコーダを部分的に透視した透視図である。
【
図2B】本実施の形態に係るアブソリュートエンコーダの平面図である。
【
図4A】主軸ギアアッセンブリの固定ギアの斜視図である。
【
図4B】主軸ギアアッセンブリの固定ギアの一平面図である。
【
図4C】主軸ギアアッセンブリの固定ギアの側面図である。
【
図5】固定ギアを部分的に拡大して凸部を説明するための正面図である。
【
図6A】主軸ギアアッセンブリの第1シザーズギア及び第2シザーズギアを一方の側から見た斜視図である。
【
図6B】主軸ギアアッセンブリの第1シザーズギア及び第2シザーズギアを他方の側から見た斜視図である。
【
図6C】主軸ギアアッセンブリの第1シザーズギア及び第2シザーズギアを他方の側から見た平面図である。
【
図7A】
図6CのVII-VII線に沿った断面図であり、第1シザーズギアにおける凹部を説明するための図である。
【
図7B】
図6CのVII-VII線に沿った断面図であり、第2シザーズギアにおける凹部を説明するための図である。
【
図8】固定ギアの凸部とシザーズギア13,15の凹部とが係合した状態を概略的に示す図である。
【
図10A】主軸ギアアッセンブリ及び第1副軸ギアアッセンブリの平面図である。
【
図10B】
図2Bに示すXA-XA線に沿ったアブソリュートエンコーダの断面図である。
【
図11A】主軸ギアアッセンブリ及び第2副軸ギアアッセンブリの平面図である。
【
図11B】
図2Bに示すXB-XB線に沿ったアブソリュートエンコーダの断面図である。
【
図12A】主軸ギアアッセンブリ及び第3副軸ギアアッセンブリの平面図である。
【
図12B】
図2Bに示すXC-XC線に沿ったアブソリュートエンコーダの断面図である。
【
図13】本実施の形態に係るアブソリュートエンコーダを説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率等が異なる部分が含まれている場合がある。
【0011】
本発明者らは、アブソリュートエンコーダにおいて、主軸の複数回の回転(以下、「複数回転」ともいう)にわたる回転量(以下、「主軸の回転量」ともいう)を、主軸の回転に伴い減速回転する回転体(副軸歯車)の回転角度を取得することによって、特定し得ることを見出した。すなわち、回転体の回転角度を減速比で乗ずることにより、主軸の回転量を特定することができる。ここで、特定可能な主軸の回転量の範囲は、減速比に反比例して増加する。例えば、減速比が1/100であれば、主軸の100回転分の回転量を特定することができる。一方、特定可能な主軸の回転量の分解能は、減速比に比例して低下する。例えば、減速比が1/100であれば、減速比が1の場合に0.1°であった分解能が10°に低下する。
【0012】
図1は、本実施の形態に係るアブソリュートエンコーダ1を備えたアクチュエータ200を示す図である。本実施の形態に係るアブソリュートエンコーダ1を備えるアクチュエータ200は、公知のアクチュエータであり、例えば、ステッピングモータ、DCブラシレスモータ等のモータであってよい。アクチュエータ200は、例えば、減速機構を介して産業用のロボットを駆動する駆動源として適用することができる。アクチュエータ200の回転軸である中空状に形成された主軸210は、中心を通る軸線210xに沿った方向にアクチュエータ200のハウジング220及び後述する本発明に係るアブソリュートエンコーダ1のハウジング20から突出している。本発明に係るアブソリュートエンコーダ1は、主軸210の回転量をデジタル信号として出力する。
【0013】
本実施の形態に係るアブソリュートエンコーダ1は、アクチュエータ200の主軸210に対して相対回転不能に取り付けられる固定ギア11と、固定ギア11に同軸上に設けられていて歯面131a,151aが固定ギア11の歯面115aに対して周方向にずらされているシザーズギア13,15と、を有する主軸ギアアッセンブリ10と、固定ギア11と噛み合って回転する第1副軸ギアアッセンブリ30と、固定ギア11及びシザーズギア13と噛み合って回転する第2副軸ギアアッセンブリ40と、固定ギア11及びシザーズギア15と噛み合って回転する第3副軸ギアアッセンブリ50と、第1副軸ギアアッセンブリ30、第2副軸ギアアッセンブリ40及び第3副軸ギアアッセンブリ50それぞれに対して設けられて各副軸ギアアッセンブリ30,40,50の回転角度を検知する、主軸210の回転量を算出する用に供された角度センサ71,72,73と、を備えることを特徴とする。以下、アブソリュートエンコーダ1の構成について説明する。
【0014】
図2Aは、
図1に示すアブソリュートエンコーダ1を部分的に透視した透視図である。
図2Bは、本実施の形態に係るアブソリュートエンコーダ1の平面図である。アブソリュートエンコーダ1は、主軸210に対して角度センサが設けられていない主軸センサレス型のアブソリュートエンコーダである。アブソリュートエンコーダ1は、主軸ギアアッセンブリ10と、第1副軸ギアアッセンブリ30と、第2副軸ギアアッセンブリ40と、第3副軸ギアアッセンブリ50と、角度センサ71,72,73と、制御部90(
図13参照)と、を備える。第1副軸ギアアッセンブリ30、第2副軸ギアアッセンブリ40及び第3副軸ギアアッセンブリ50は、主軸ギアアッセンブリ10の周りに、互いに所定の間隔をあけて設けられており、主軸ギアアッセンブリ10と、第1副軸ギアアッセンブリ30、第2副軸ギアアッセンブリ40及び第3副軸ギアアッセンブリ50は、互いに回転自在に係合している。
【0015】
主軸ギアアッセンブリ10、第1副軸ギアアッセンブリ30、第2副軸ギアアッセンブリ40、第3副軸ギアアッセンブリ50及び角度センサ71,72,73は、ハウジング20の内部に収容されている。主軸ギアアッセンブリ10は、ハウジング20の内側でアクチュエータ200の回転駆動軸である主軸210に相対回動不能に取り付けられている。第1副軸ギアアッセンブリ30、第2副軸ギアアッセンブリ40及び第3副軸ギアアッセンブリ50は、それぞれハウジング20の底部21に回転自在に支持されている。角度センサ71,72,73は、ハウジング20の内側で、第1副軸ギアアッセンブリ30、第2副軸ギアアッセンブリ40及び第3副軸ギアアッセンブリ50に面する基板22の面に設けられている。角度センサ71,72,73は、第1副軸ギアアッセンブリ30、第2副軸ギアアッセンブリ40及び第3副軸ギアアッセンブリ50に向かい合うようにしてそれぞれ設けられている。
【0016】
図3は、主軸ギアアッセンブリ10の分解斜視図である。アブソリュートエンコーダ1の主軸ギアアッセンブリ10は、アクチュエータ200の回転駆動軸である主軸210に相対回動不能に同軸上に取り付けられている。主軸ギアアッセンブリ10は、固定ギア(主歯車)11と、第1シザーズギア(副歯車)13と、第2シザーズギア(別の副歯車)15と、2つのウェーブワッシャ(付勢部材)17と、2つのストッパリング(固定部材)19と、を備える。主軸ギアアッセンブリ10の中心を通る軸線10xは、主軸ギアアッセンブリ10が主軸210に取り付けられた状態(以下、「取付状態」ともいう)において、主軸210の軸線210xと一致又は略一致する。主軸ギアアッセンブリ10において、固定ギア11は、アクチュエータ200の主軸210に相対回動不能に同軸上に設けられている。固定ギア11、第1シザーズギア13、第2シザーズギア15と、2つのウェーブワッシャ17と、2つのストッパリング19は、それぞれ同軸上に設けられている。
【0017】
図4Aは、主軸ギアアッセンブリ10の固定ギア11の斜視図である。
図4Bは、主軸ギアアッセンブリ10の固定ギア11の一平面図である。
図4Cは、主軸ギアアッセンブリ10の固定ギア11の側面図である。固定ギア11は、例えば、金属、樹脂等の種々の材料により形成されている。固定ギア11は、ハブ部111と、歯列部112と、を有する。ハブ部111は、筒状に形成されていて、主軸210が挿通される。取付状態において、ハブ部111は、主軸210に対して相対回動不能に同軸上に取り付けられている。
【0018】
ハブ部111の外周面111a及び軸線10xに沿った方向において互いに異なる側に面する歯列部112の側面112aに複数の凸部(第1係合部)113,114を有する。3つの凸部113,114が歯列部112を挟んだハブ部111の各側にそれぞれ設けられている。各凸部113,114は、軸線10x周りの周方向において互いに等間隔をあけて設けられている。
【0019】
図5は、固定ギア11を部分的に拡大して凸部113,114を説明するための正面図である。凸部113は、主軸ギアアッセンブリ10が組み立てられた状態(以下、「組立状態」ともいう)において、シザーズギア13の側に設けられており、ハブ部111の外周面111aから径方向外側に凸に形成されている。凸部113は、上流面113aと、下流面113bと、傾斜面113cと、を有する。上流面113a及び下流面113bはそれぞれ、側面112aから軸線10xに沿って、例えば、垂直又は略垂直に延びている。上流面113aは、取付状態において、例えば、主軸210の回転方向Rの上流側に面する面であり、下流面113bは、下流側に面する面である。軸線xに沿った上流面113aの寸法は、下流面113bに対して大きくなっている。傾斜面113cは、上流面113aと下流面113bとの間に延在しており、上流面113aから下流面113bに向かって側面112aに接近するように傾斜して延びている。
【0020】
凸部114は、組立状態において、シザーズギア15の側に設けられており、ハブ部111の外周面111aから径方向外側に凸に形成されている。凸部114は、上流面114aと、下流面114bと、傾斜面114cと、を有する。上流面114a及び下流面114bはそれぞれ、側面112aから軸線Xに沿って、例えば、垂直又は略垂直に延びている。上流面114aは、取付状態において、主軸210の回転方向Rの上流側に面する面であり、下流面114bは、下流側に面する面である。軸線10xに沿った上流面114aの寸法は、下流面114bに対して小さくなっている。傾斜面114cは、上流面114aと下流面114bとの間に延在しており、下流面114bから上流面114aに向かって側面112aに接近するように傾斜して延びている。
【0021】
歯列部112は、軸線10xに沿った方向においてハブ部111の中央部分又は略中央部分に設けられている。歯列部112は、ハブ部111の外周面から径方向外側に環状に延出した部分である。歯列部112の互いに異なる側面112aの側に設けられている凸部113,114の傾斜面113c,114cは、互いに平行に延びている。つまり、歯列部112の互いに異なる側面112aの側に設けられている凸部113,114の傾斜面113c,114cは、周方向に互いに異なる方向に向かって側面112aに接近するように傾斜している。
【0022】
なお、本実施の形態において、歯列部112の互いに異なる側面112aの側に設けられている凸部113,114はそれぞれ、周方向において互いに略同じ位置に設けられているが、周方向において互いに重ならない位置に設けられていてもよい。
【0023】
歯列部112は、周方向に複数の歯115からなる歯列を有し、例えば、25個の歯115を有し、平歯車を形成する部分である。
【0024】
図6Aは、主軸ギアアッセンブリ10の第1シザーズギア13及び第2シザーズギア15を一方の側から見た斜視図である。
図6Bは、主軸ギアアッセンブリ10の第1シザーズギア13及び第2シザーズギア15を他方の側から見た斜視図である。
図6Cは、主軸ギアアッセンブリ10の第1シザーズギア13及び第2シザーズギア15を他方の側から見た平面図である。
【0025】
第1シザーズギア13及び第2シザーズギア15は、複数の歯131,151、例えば、25個の歯131,151からなる歯列を有する平歯車として形成されており、互いに同じ構成を有する。したがって、以下の説明においては、第1シザーズギア13及び第2シザーズギア15をまとめてシザーズギア13,15と記載することもある。シザーズギア13,15の各歯131,151は、軸線10x周りに放射状に延びている。シザーズギア13,15は、平面視において円形状又は略円形状の環状部材であり、例えば、金属、樹脂等の種々の材料により形成されている。シザーズギア13,15は、さらに凹部(第2係合部)133,153を有する。
【0026】
凹部133,153は、取付状態において、固定ギア11に面する側面13a,15aに対して軸線10xに沿って凹に形成されていて、内周面に径方向外側に凹に形成されている。本実施の形態においては、3つの凹部133,153が周方向に互いに等間隔をあけて設けられている。
【0027】
図7Aは、
図6CのVII-VII線に沿った断面図であり、第1シザーズギア13における凹部133を説明するための図である。凹部133は、上流面133aと、下流面133bと、傾斜面133cと、を有する。上流面133a及び下流面133bはそれぞれ、側面13aから軸線10xに沿って、例えば、垂直又は略垂直に延びている。上流面133aは、取付状態において、主軸210の回転方向Rの上流側に面する面であり、下流面133bは、下流側に面する面である。軸線10x方向における上流面133aの寸法は、下流面133bに対して大きくなっている。周方向における凹部133の上流面133aと下流面133bとの間の寸法は、周方向における凸部113の上流面113aと下流面113bとの間の寸法よりも大きくなっている。
【0028】
傾斜面133cは、上流面133aと下流面133bとの間に延在しており、上流面133aから下流面133bに向かって側面13aに向かうように傾斜して延びている。組立状態において、凹部133の上流面133aと凸部113の上流面113aとが対向し、凹部133の下流面133bと凸部113の下流面113bとが対向し、凹部133の傾斜面133cと凸部113の傾斜面113cとが対向する。
【0029】
図7Bは、
図6CのVII-VII線に沿った断面図であり、第2シザーズギア15における凹部153を説明するための図である。凹部153は、上流面153aと、下流面153bと、傾斜面153cと、を有する。上流面153a及び下流面153bはそれぞれ、側面15aから軸線10xに沿って、例えば、垂直又は略垂直に延びている。上流面153aは、取付状態において、主軸210の回転方向Rの上流側に面する面であり、下流面153bは、下流側に面する面である。軸線10x方向における上流面153aの寸法は、下流面153bに対して小さくなっている。周方向における凹部153の上流面153aと下流面153bとの間の寸法は、周方向における凸部114の上流面114aと下流面114bとの間の寸法よりも大きくなっている。
【0030】
傾斜面153cは、上流面153aと下流面153bとの間に延在しており、下流面153bから上流面153aに向かって側面15aに向かうように傾斜して延びている。組立状態において、凹部153の上流面153aと凸部114の上流面114aとが対向し、凹部153の下流面153bと凸部114の下流面114bとが対向し、凹部153の傾斜面153cと凸部114の傾斜面114cとが対向する。
【0031】
ウェーブワッシャ17は、平面視において変形又は略円形の、ばね作用を有する波板状の環状の座金であり、例えば、金属製の薄板により形成されている。ウェーブワッシャ17は、周方向に沿った波状の凹凸加工が繰り返されている。ウェーブワッシャ17は、組立状態において、固定ギア11のハブ部111に同軸上又は略同軸上に取り付けられている。ウェーブワッシャ17は、シザーズギア13,15それぞれに対して設けられており、シザーズギア13,15と、後述するストッパリング19との間で軸線10xに沿った方向に圧縮されている。ウェーブワッシャ17は、シザーズギア13,15にばね力を付勢して、シザーズギア13,15を固定ギア11に対して押圧している。
【0032】
ストッパリング19は、平面視において円形状又は略円形状の環状部材であり、例えば、金属、樹脂等の種々の材料により形成されている。ストッパリング19は、組立状態において、固定ギア11のハブ部111に同軸上又は略同軸上に取り付けられている。ストッパリング19は、ハブ部111及び主軸210に、中間ばめ又はしまりばめにより圧入されている。ストッパリング19は、各ウェーブワッシャ17に対して設けられており、ウェーブワッシャ17をシザーズギア13,15とは反対の側からシザーズギア13,15それぞれに対して押し付けた状態において、固定ギア11に取り付けられている。つまり、ウェーブワッシャ17は、固定ギア11とストッパリング19とによって挟まれている。なお、ストッパリング19は、ハブ部111又は主軸210のいずれか一方に、中間ばめ又はしまりばめにより圧入されて取付け可能である。
【0033】
図8は、固定ギア11の凸部113,114とシザーズギア13,15の凹部133,153とが係合した状態を概略的に示す図である。組立状態において、各シザーズギア13,15は、ストッパリング19及びウェーブワッシャ17により、軸線10xに沿った方向において固定ギア11に押圧されている。例えば、固定ギア11の凸部113の上流面113aとシザーズギア13の凹部133の上流面133aとは接触し、固定ギア11における凸部114の下流面114bとシザーズギア15の凹部153の下流面153bとは接触している。また、組立状態において、固定ギア11の凸部113の下流面113bとシザーズギア13の凹部133の下流面133bとの間、及び固定ギア11の凸部114の上流面114aとシザーズギア15の凹部153の上流面153aとの間には隙間Sがある。
【0034】
なお、組立状態において、固定ギア11側の傾斜面113cと、シザーズギア13,15側の傾斜面133c,153cとは互いに僅かな隙間をもって平行に離れていているが、互いに面接触していてもよい。
【0035】
図9は、主軸ギアアッセンブリ10の斜視図である。組立状態において、周方向における固定ギア11の歯115の歯面115a、シザーズギア13の歯131の歯面131a及びシザーズギア15の歯151の歯面151aは、それぞれ周方向にずれている。例えば、主軸210の回転方向Rにおいて、シザーズギア13の歯面131aは、固定ギア11の歯面115aに対して下流側にずれており、シザーズギア15の歯面151aは、固定ギア11の歯面115aに対して上流側にずれている。
【0036】
図10Aは、主軸ギアアッセンブリ10及び第1副軸ギアアッセンブリ30の平面図である。
図10Bは、
図2Bに示すXA-XA線に沿ったアブソリュートエンコーダ1の断面図である。なお、
図10A及び
図10Bにおいては、主軸ギアアッセンブリ10及び第1副軸ギアアッセンブリ30のみを示す。
第1副軸ギアアッセンブリ30は、主軸ギアアッセンブリ10の固定ギア11と噛み合って、主軸210の回転に伴い減速されて回転する。第1副軸ギアアッセンブリ30は、アブソリュートエンコーダ1のハウジング20に回転自在に取り付けられている。第1副軸ギアアッセンブリ30は、回転支持部31と、副軸ギア35と、マグネット37と、2つの軸受39と、を有する。回転支持部31は、軸部32と、収容部33と、を含む。回転支持部31は、軸部32において、第1副軸ギアアッセンブリ30の回転軸線となる軸線30xに対して同軸上又は略同軸上に副軸ギア35を貫通している。回転支持部31が副軸ギア35を貫通した状態において、回転支持部31と副軸ギア35とは、互いに相対回動不能になっている。
【0037】
軸部32は、軸線30xに沿って延びた棒状の部分である。第1副軸ギアアッセンブリ30がハウジング20に回転自在に取り付けられた状態において、回転支持部31は、軸部32でアブソリュートエンコーダ1のハウジング20に2つの軸受39を介して回転自在に支持されている。
【0038】
収容部33は、軸線30xに対して同心状又は略同心状に凹に形成された環状部分である。収容部33は、ハウジング20に支持される側とは反対の側の軸部32の端部に設けられている。回転支持部31が副軸ギア35を貫通した状態において、収容部33は、副軸ギア35に載置されている。
【0039】
収容部33にはマグネット37が収容されている。マグネット37は、収容部33において軸線30x上に設けられた永久磁石である。マグネット37は、偏平な円筒状又は略円筒状である。マグネット37は、例えば、フェライト系やNdFeB系の磁性材料から形成されているが、例えば、樹脂バインダを含むゴム磁石やボンド磁石であってもよい。マグネット37には2つの磁極(N極、S極)が設けられている。マグネット37の磁化方向に制限はないが、本実施の形態においては、後述する角度センサ71に対向する2つの磁極がマグネット37の端面に設けられている。マグネット37の回転方向Rの磁束密度分布は台形波形状であってもよく、正弦波状や矩形波形状であってもよい。
【0040】
収容部33に収容されたマグネット37の、軸部32とは反対の側に面する面は、外部に露出している。取付状態において、マグネット37に対して、後述する角度センサ71が軸線30x上に対向していて、マグネット37から発生する磁束の変化を検出する。
【0041】
副軸ギア35は、平面視において円形状又は略円形状の環状部材であり、例えば、金属、樹脂等の種々の材料により形成されている。副軸ギア35は、周方向に複数の歯36、例えば、17個の歯36からなる歯列を有し、平歯車を形成する部分である。副軸ギア35は、軸線30x周りの部分が凹に形成された凹所351を有する。副軸ギア35は、凹所351において、回転支持部31の収容部33を部分的に収容している。なお、回転支持部31及び副軸ギア35は、一体に形成されていても別体に形成されていてもよい。
【0042】
取付状態において、副軸ギア35は歯36を介して、固定ギア11(の歯115)とのみ噛み合っている。つまり、軸線30xに沿った副軸ギア35の厚さは、固定ギア11の歯列部112の厚さと同じ又は略同じである。
【0043】
2つの軸受39は、軸線30xに沿って所定の間隔をあけて軸部32に取り付けられている。回転支持部31は、軸受39を介してハウジング20に回転自在に取り付けられている。
【0044】
図11Aは、主軸ギアアッセンブリ10及び第2副軸ギアアッセンブリ40の平面である。
図11Bは、
図2Bに示すXB-XB線に沿ったアブソリュートエンコーダ1の断面図である。なお、
図11A及び
図11Bにおいては、主軸ギアアッセンブリ10及び第2副軸ギアアッセンブリ40のみを示す。第2副軸ギアアッセンブリ40は、主軸ギアアッセンブリ10の固定ギア11及び第1シザーズギア13と噛み合って、主軸210の回転に伴い減速されて回転する。第1副軸ギアアッセンブリ30は、アブソリュートエンコーダ1のハウジング20に回転自在に取り付けられている。第2副軸ギアアッセンブリ40は、回転支持部41と、副軸ギア45と、マグネット47と、2つの軸受49と、を有する。回転支持部41は、軸部42と、収容部43と、を含む。回転支持部41は、軸部42において、第2副軸ギアアッセンブリ40の回転軸線となる軸線40xに対して同軸上又は略同軸上に副軸ギア45を貫通している。回転支持部41が副軸ギア45を貫通した状態において、回転支持部41と副軸ギア45とは、互いに相対回動不能になっている。
【0045】
軸部42は、軸線40xに沿って延びた棒状の部分である。第2副軸ギアアッセンブリ40がハウジング20に回転自在に取り付けられた状態において、回転支持部41は、軸部42でアブソリュートエンコーダ1のハウジング20に2つの軸受49を介して回転自在に支持されている。
【0046】
収容部43は、軸線40xに対して同軸上又は略同軸上に凹に形成された環状部分である。収容部43は、ハウジング20に支持される側とは反対の側の軸部42の端部に設けられている。回転支持部41が副軸ギア45を貫通した状態において、収容部43は、副軸ギア45に収容されている。
【0047】
収容部43にはマグネット47が収容されている。マグネット47は、マグネット37と同じであり、収容部43において軸線40x上に設けられてた2つの磁極(N極、S極)を有する永久磁石である。収容部43に収容されたマグネット47の、軸部42とは反対の側に面する面は、外部に露出している。取付状態において、マグネット37に対して、後述する角度センサ72が軸線40x上に対向していて、マグネット47から発生する磁束の変化を検出する。
【0048】
副軸ギア45は、平面視において円形状又は略円形状の環状部材であり、例えば、金属、樹脂等の種々の材料により形成されている。副軸ギア45は、周方向に複数の歯46、例えば、16個の歯46からなる歯列を有し、平歯車を形成する部分である。副軸ギア45は、軸線40x周りの部分が凹に形成された凹所451を有する。副軸ギア45は、凹所451において、回転支持部41の収容部43全体を収容している。なお、回転支持部41及び副軸ギア45は、一体に形成されていても別体に形成されていてもよい。
【0049】
取付状態において、副軸ギア45は歯46を介して、固定ギア11(の歯115)及びシザーズギア13(の歯131)と噛み合っている。主軸210の回転方向Rにおいて副軸ギア45の歯46に対して上流側に位置するシザーズギア13の歯131は、副軸ギア45の歯46を上流側から下流側に面する固定ギア11の歯115の歯面115aに押し付けている。つまり、副軸ギア45の歯46は、主軸210の回転方向Rにおける上流側でシザーズギア13の歯131と接触し、下流側で固定ギア11の歯115と接触している。これにより、第2副軸ギアアッセンブリ40の副軸ギア45の歯46と、主軸ギアアッセンブリ10の固定ギア11の歯115との間にバックラッシ(隙間)は存在しない(バックラッシゼロ)。
【0050】
軸線40xに沿った副軸ギア45の厚さは、固定ギア11の歯列部112及びシザーズギア13を合わせた厚さと同じ又は略同じである。
【0051】
2つの軸受49は、軸線40xに沿って所定の間隔をあけて軸部42に取り付けられている。回転支持部41は、軸受49を介してハウジング20に回転自在に取り付けられている。
【0052】
図12Aは、主軸ギアアッセンブリ10及び第3副軸ギアアッセンブリ50の平面図である。
図12Bは、
図2Bに示すXC-XC線に沿ったアブソリュートエンコーダ1の断面図である。なお、
図12A及び
図12Bにおいては、主軸ギアアッセンブリ10及び第3副軸ギアアッセンブリ50のみを示す。第3副軸ギアアッセンブリ50は、主軸ギアアッセンブリ10の固定ギア11及び第2シザーズギア15と噛み合って、主軸210の回転に伴い減速されて回転する。第2副軸ギアアッセンブリ40は、アブソリュートエンコーダ1のハウジング20に回転自在に取り付けられている。第3副軸ギアアッセンブリ50は、回転支持部51と、副軸ギア55と、マグネット57と、2つの軸受59と、を有する。回転支持部51は、軸部52と、収容部53と、を含む。回転支持部51は、軸部52において、第3副軸ギアアッセンブリ50の回転軸線となる軸線50xに対して同軸上又は略同軸上に副軸ギア55を貫通している。回転支持部51が副軸ギア55を貫通した状態において、回転支持部51と副軸ギア55とは、互いに相対回動不能になっている。
【0053】
軸部52は、軸線50xに沿って延びた棒状の部分である。第3副軸ギアアッセンブリ50がハウジング20に回転自在に取り付けられた状態において、回転支持部51は、軸部52でアブソリュートエンコーダ1のハウジング20に2つの軸受59を介して回転自在に支持されている。
【0054】
収容部53は、軸線50xに対して同軸上又は略同軸上に凹に形成された環状部分である。収容部53は、ハウジング20に支持される側とは反対の側の軸部52の端部に設けられている。回転支持部51が副軸ギア55を貫通した状態において、収容部53は、副軸ギア55に載置されている。
【0055】
収容部53にはマグネット57が収容されている。マグネット57は、マグネット37と同じであり、収容部53において軸線50x上に設けられた2つの磁極(N極、S極)を有する永久磁石である。収容部53に収容されたマグネット57の、軸部52とは反対の側に面する面は、外部に露出している。取付状態において、マグネット57に対して、後述する角度センサ73が軸線50x上に対向していて、マグネット57から発生する磁束の変化を検出する。
【0056】
副軸ギア55は、平面視において円形状又は略円形状の環状部材であり、例えば、金属、樹脂等の種々の材料により形成されている。副軸ギア55は、周方向に複数の歯56、例えば、15個の歯56からなる歯列を有し、平歯車を形成する部分である。副軸ギア55は、軸線50x周りの部分が凹に形成された凹所551を有する。副軸ギア55は、凹所551において、回転支持部51の収容部53を部分的に収容している。なお、回転支持部51及び副軸ギア55は、一体に形成されていても別体に形成されていてもよい。
【0057】
取付状態において、副軸ギア55は歯56を介して、固定ギア11(の歯115)及びシザーズギア15(の歯151)と噛み合っている。主軸210の回転方向Rにおいて副軸ギア55の歯56に対して下流側に位置するシザーズギア15の歯151は、副軸ギア55の歯56を下流側から上流側に面する固定ギア11の歯115の歯面115aに押し付けている。つまり、副軸ギア55の歯56は、主軸210の回転方向Rにおける下流側でシザーズギア15の歯151と接触し、上流側で固定ギア11の歯115と接触している。これにより、第3副軸ギアアッセンブリ50の副軸ギア55の歯56と、主軸ギアアッセンブリ10の歯列部112の歯115との間にバックラッシ(隙間)は存在しない(バックラッシゼロ)。
【0058】
軸線50xに沿った副軸ギア55の厚さは、固定ギア11の歯列部112及びシザーズギア15を合わせた厚さと同じ又は略同じである。なお、副軸ギア55及び回転支持部51は、一体に形成されていても別体に形成されていてもよい。
【0059】
2つの軸受59は、軸線50xに沿って所定の間隔をあけて軸部52に取り付けられている。回転支持部51は、軸受59を介してハウジング20に回転自在に取り付けられている。
【0060】
角度センサ71,72,73は、副軸ギア35,45,55の一回転に対応する0°~360°の範囲の絶対的な回転角を検知するセンサである。各角度センサ71,72,73は検知した回転角に応じた信号(例えば、デジタル信号)を後述する制御部90に出力する。各角度センサ71,72,73は、一旦通電を停止して再通電をした場合にも、通電停止前と同じ回転角を出力する。このためバックアップ電源を備えない構成が可能である。
【0061】
図2Aに示すように、各角度センサ71,72,73は、主軸ギアアッセンブリ10、第1副軸ギアアッセンブリ30、第2副軸ギアアッセンブリ40及び第3副軸ギアアッセンブリ50等に面する基板22の面にはんだ付けや接着などの方法により固定されている。角度センサ71は、第1副軸ギアアッセンブリ30が有するマグネット37に対して隙間をあけて対向して基板22に固定されている。角度センサ72は、第2副軸ギアアッセンブリ40が有するマグネット47に対して隙間をあけて対向して基板22に固定されている。角度センサ73は、第3副軸ギアアッセンブリ50が有するマグネット57に対して隙間をあけて対向して基板22に固定されている。
【0062】
各角度センサ71,72,73には比較的分解能が高い磁気式角度センサを使用してもよい。磁気式角度センサは、それぞれの副軸ギア35,45,55の各マグネット37,47,57に対して各軸線30x,40x,50xに沿った方向に隙間あけて対向して配置され、磁極の回転に基づいてロータの回転角を特定してデジタル信号を出力する。磁気式角度センサは、一例として、磁極を検知する検知素子と、この検知素子の出力に基づいてデジタル信号を出力する演算回路と、を含む。検知素子は、例えばホールエレメントやGMR(Giant Magneto Resistive)エレメントなどの磁界検知要素を複数(例えば4つ)含んでもよい。
【0063】
演算回路は、例えば、複数の検知素子の出力の差や比をキーとしてルックアップテーブルを用いてテーブル処理によって回転角を特定するようにしてもよい。この検知素子と演算回路とは1つのICチップ上に集積されてもよい。このICチップは薄型の直方体形状の外形を有する樹脂中に埋め込まれてもよい。各角度センサ71,72,73は、図示しない配線部材を介して検知した各副軸ギア35,45,55の回転角に対応するデジタル信号である角度信号を制御部90に出力する。例えば、各角度センサ71,72,73は各副軸ギア35,45,55の回転角を複数ビット(例えば7ビット)のデジタル信号として出力する。
【0064】
図13は、本実施の形態に係るアブソリュートエンコーダ1を説明するブロック図である。制御部90は、はんだ付けや接着などの方法により、主軸ギアアッセンブリ10等に面する基板22の面に固定されている。制御部90は、CPUで構成されたマイコンであり、角度センサ71,72,73のそれぞれから出力される回転角度を表すデジタル信号を取得し、固定ギア11の回転量を演算する。制御部90の各ブロックは、マイコンとしてのCPUがプログラムを実行することによって実現されるファンクション(機能)を表したものである。
【0065】
制御部90の各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを示している。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組み合わせによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0066】
制御部90は、回転角取得部91,92,93と、対応関係テーブル94と、回転量特定部95と、出力部96と、を含む。回転角取得部91は、角度センサ71が検知した第1副軸ギアアッセンブリ30の副軸ギア35の回転角35aを取得する。回転角取得部92は、角度センサ72が検知した第2副軸ギアアッセンブリ40の副軸ギア45の回転角45aを取得する。回転角取得部93は、角度センサ73が検知した第3副軸ギアアッセンブリ50の副軸ギア55の回転角55aを取得する。
【0067】
対応関係テーブル94は、テーブル処理により取得した各回転角35a,45a,55aに対応する主軸210の回転数を特定する。回転量特定部95は、対応関係テーブル94によって特定された主軸210の回転数と、取得した回転角35a,45a,55aと、に応じて主軸210の複数回転にわたる回転量を特定する。出力部96は、特定された主軸210の複数回転にわたる回転量を所望の形式の信号に変換して出力する。
【0068】
アブソリュートエンコーダ1は、角度センサ71,72,73の検知情報に基づいて特定された主軸ギアアッセンブリ10、第1副軸ギアアッセンブリ30、第2副軸ギアアッセンブリ40及び第3副軸ギアアッセンブリ50の回転角度に応じて主軸210の回転数を特定すると共に、角度センサ71,72,73の検知情報に基づいて主軸210の回転角度を特定することができる。そして、制御部90は、特定された主軸210の回転角度に基づいて、主軸210の複数回の回転にわたる回転量を特定する。
【0069】
例えば、本実施の形態に係るアブソリュートエンコーダ1において、主軸ギアアッセンブリ10の固定ギア11の歯列部112の歯数は25であり、第1副軸ギアアッセンブリ30の副軸ギア35の歯数は17である。つまり、主軸ギアアッセンブリ10の歯列部112と第1副軸ギアアッセンブリ30の副軸ギア35とは、減速比が17/25の変速機構を構成する。また、主軸ギアアッセンブリ10のシザーズギア13の歯数は25であり、第2副軸ギアアッセンブリ40の副軸ギア45の歯数は16である。つまり、主軸ギアアッセンブリ10のシザーズギア13と第2副軸ギアアッセンブリ40の副軸ギア45とは、減速比が16/25の変速機構を構成する。また、主軸ギアアッセンブリ10のシザーズギア15の歯数は25であり、第3副軸ギアアッセンブリ50の副軸ギア55の歯数は15である。つまり、主軸ギアアッセンブリ10のシザーズギア15と第3副軸ギアアッセンブリ50の副軸ギア55とは、減速比が15/25の変速機構を構成する。
【0070】
主軸ギアアッセンブリ10に対する、第1副軸ギアアッセンブリ30、第2副軸ギアアッセンブリ40及び第3副軸ギアアッセンブリ50それぞれの回転角度(位相)のずれを角度センサ71,72,73により検出することにより、制御部90において各位相を組合せて、主軸210の多回転量が導き出される。
【0071】
以上のようなアブソリュートエンコーダ1によれば、アクチュエータ200の主軸210に対して直接的に角度センサを設けられない構成であっても、主軸210の回転量を高精度に特定することができる。例えば、固定ギア11及びシザーズギア13,15と副軸ギア45,55とが噛み合う場合、歯115,131,151,36,46,56の間にバックラッシが生じ、バックラッシが回転量の検出精度を低下させることがある。
【0072】
本実施の形態に係るアブソリュートエンコーダ1においては、固定ギア11の歯面、第2副軸ギアアッセンブリ40の副軸ギア45の歯面及び第3副軸ギアアッセンブリ50の副軸ギア55の歯面がそれぞれ周方向にずらされているので、バックラッシが除去されている。これにより、主軸210の回転数を、主軸ギアアッセンブリ10、第2副軸ギアアッセンブリ40及び第3副軸ギアアッセンブリ50を介して正確に検出することができる。
【0073】
また、本実施の形態に係るアブソリュートエンコーダ1によれば、バックラッシが除去された主軸ギアアッセンブリ10及び第2副軸ギアアッセンブリ40の組合せ、並びに、主軸ギアアッセンブリ10及び第3副軸ギアアッセンブリ50の組合せから主軸210の回転量を検出しているので、1つの組合せの場合よりも高い精度をもって主軸210の回転量を検出することができる。
【0074】
また、主軸ギアアッセンブリ10において、固定ギア11とシザーズギア13,15とは、固定ギア11の傾斜面113c,114cを有する凸部113,114及びシザーズギア13,15の傾斜面133c,153cを有する凹部133,153を介して周方向において決まった位置で互いに固定されている。各シザーズギア13,15は、軸線210xに沿った方向において両側からウェーブワッシャ17によって固定ギア11の歯列部112に向かって押圧されている。
【0075】
固定ギア11にシザーズギア13,15を取り付ける場合、固定ギア11の凸部113,114に対して、シザーズギア13,15は、その凹部133,153において傾斜面133c,153cが滑走するように取付位置、つまり、凸部113の上流面113aと凹部133の上流面133aとが接触し、かつ、凸部114の下流面114bと凹部153の下流面153bとが接触するまで移動する。これにより、固定ギア11に対してシザーズギア13,15を容易に取り付けることができる。
【0076】
さらに、組立状態において、固定ギア11とシザーズギア13,15とが相対的に回転しようとした場合、つまり、固定ギア11における凸部113の下流面113bとシザーズギア13における凹部133の下流面133bとの間の隙間、及び、固定ギア11における凸部114の上流面114aとシザーズギア15における凹部153の上流面153aとの間の隙間を詰める方向に相対的に回転しようとした場合、シザーズギア13,15は、周方向に傾斜面133c,153cにおいて固定ギア11の傾斜面113c,114cに接触するので、相対的な回転は防がれる。
【0077】
さらに、各シザーズギア13,15は、ウェーブワッシャ17によって軸線210xに固定ギア11の歯列部112に向かって抑え付けられているので、傾斜面133c,153cにおいて固定ギア11の傾斜面113c,114cに沿った周方向に斜め上方へのシザーズギア13,15の移動を抑制することができる。これにより、組立状態において、主軸ギアアッセンブリ10と、第2副軸ギアアッセンブリ40及び第3副軸ギアアッセンブリ50との間におけるバックラッシは除去されたままである。
【0078】
<その他>
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。また、例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。例えば、上記実施の形態に係るアブソリュートエンコーダ1は、固定ギア11及び2つのシザーズギア13,15を有する主軸ギアアッセンブリ10と、3つの副軸ギアアッセンブリ30,40,50と、を備えていたが、アブソリュートエンコーダ1の構成は、特にこれに限定されない。例えば、アブソリュートエンコーダ1の構成は、固定ギア11と1つのシザーズギア13;15を有する主軸ギアアッセンブリ10、第1副軸ギアアッセンブリ30及び第2副軸ギアアッセンブリ40又は第3副軸ギアアッセンブリ50を備える構成であってあってもよい。
【0079】
また、上記実施の形態において、固定ギア11及びシザーズギア13,15を互いに係止する機構は、固定ギア11に凸部113,114が設けられ、シザーズギア13,15に凹部133,153が設けられていたが特にこれに限定されない。つまり、凸部113,114が形成されている固定ギア11の位置にシザーズギア13,15の凹部133,153に相当する凹部が形成され、凹部133,153が形成されているシザーズギア13,15の位置に固定ギア11の凸部113,114に相当する凸部が形成されていてもよい。
【0080】
また、本実施の形態においては固定ギア11に3つの凸部113,114が設けられ、シザーズギア13,15に3つの凹部133,153が設けられていたが、凸部113及び凹部133,153の数は特に限定されない。
【符号の説明】
【0081】
1・・・アブソリュートエンコーダ、10・・・主軸ギアアッセンブリ、11・・・固定ギア(主歯車)、13・・・第1シザーズギア(副歯車)、15・・・第2シザーズギア(別の副歯車)、17・・・ウェーブワッシャ(付勢部材)、19・・・ストッパリング(固定部材)、30・・・第1副軸ギアアッセンブリ、40・・・第2副軸ギアアッセンブリ、50・・・第3副軸ギアアッセンブリ、71,72,73・・・角度センサ、113,114・・・凸部(第1係合部)、113c,114c・・・傾斜面、133,153・・・凹部(第2係合部)、133c,153c・・・傾斜面、200・・・アクチュエータ、210・・・主軸