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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027272
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】粘着剤組成物及び粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/06 20060101AFI20240222BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20240222BHJP
   C09J 133/02 20060101ALI20240222BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240222BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20240222BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240222BHJP
【FI】
C09J133/06
C09J133/14
C09J133/02
C09J11/06
C09J11/08
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129940
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000109635
【氏名又は名称】星光PMC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522327670
【氏名又は名称】新綜工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100164828
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦 康宏
(72)【発明者】
【氏名】飯田 直人
(72)【発明者】
【氏名】貝原 寛哉
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004FA08
4J040DF011
4J040DF031
4J040DF061
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA26
4J040LA06
4J040NA17
4J040NA19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、粘着剤層が薄い場合でも、高い粘着性を示す粘着剤組成物及び粘着テープを提供することを目的とする。
【解決手段】アクリル重合体(A)100質量部、粘着付与樹脂(B)30~50質量部、及び架橋剤(C)0.01~10質量部を含む粘着剤組成物であって、アクリル重合体(A)が、水酸基を含まない(メタ)アクリレートモノマー90~98.9質量部と、水酸基を含む(メタ)アクリレートモノマー0.1~5質量部と、イタコン酸、無水イタコン酸、及びマレイン酸の群から選ばれる少なくとも1種の酸モノマー1~5質量部とを含むモノマー混合物を重合して得られるアクリル重合体であり、粘着付与樹脂(B)の軟化点が100~160℃であり、前記粘着剤を用いて50μmPET上に作製された粘着剤層の厚さが5μmの粘着テープの粘着力が15N/25mm以上であることを特徴とする粘着剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル重合体(A)100質量部、粘着付与樹脂(B)30~50質量部、及び架橋剤(C)0.01~10質量部を含む粘着剤組成物であって、
アクリル重合体(A)が、
水酸基を含まない(メタ)アクリレートモノマー90~98.9質量部と、
水酸基を含む(メタ)アクリレートモノマー0.1~5質量部と、
イタコン酸、無水イタコン酸、及びマレイン酸の群から選ばれる少なくとも1種の酸モノマー1~5質量部と
を含むモノマー混合物を重合して得られるアクリル重合体であり、
粘着付与樹脂(B)の軟化点が100~160℃であり、
前記粘着剤を用いて50μmPET上に作製された粘着剤層の厚さが5μmの粘着テープの粘着力が15N/25mm以上であることを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の粘着剤組成物を用いて作製された粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜であっても高い粘着力を有する粘着剤組成物及びそれを用いて作製された粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルや携帯型電子デバイスは薄型化が進んでおり、粘着剤層も薄膜化が要求されるようになっており、薄膜の粘着層に高い粘着力が要求されるようになってきている。
【0003】
しかしながら、粘着テープの粘着力は、粘着剤層の厚さの減少に伴って低下することが一般的である。特に粘着剤層の厚さが10μm以下となる領域では、粘着力は顕著に低下する。このため、薄膜において充分に強い粘着力を発現させる事は困難であり、薄膜でも高い粘着力を有する粘着テープの開発が強く望まれている。
【0004】
たとえば特許文献1では、無水マレイン酸を特定の割合で配合したポリマーを用いた粘着剤が提案されている。特許文献2では水酸基を含まない(メタ)アクリレートモノマーを用いた粘着剤が提案されている。しかし、このような粘着剤では粘着テープに設けられた粘着層の厚みを10μm以下にした場合には十分な粘着力を得ることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-320606号公報
【特許文献2】特開2010-215906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、粘着剤層の厚さが10μm以下となる場合でも、高い粘着性を示す粘着剤組成物及び粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、アクリル重合体、粘着付与樹脂及び架橋剤を含む粘着剤組成物において、特定のモノマー成分を重合して得られるアクリル重合体と、特定の軟化点を有する粘着付与樹脂(B)及び架橋剤を特定の割合で含む粘着剤組成物が、粘着層が薄い場合でも高い粘着性を示すことを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち本発明の目的は、以下の手段により達成される。
(1)アクリル重合体(A)100質量部、粘着付与樹脂(B)30~50質量部、及び架橋剤(C)0.01~10質量部を含む粘着剤組成物であって、
アクリル重合体(A)が、
水酸基を含まない(メタ)アクリレートモノマー90~98.9質量部と、
水酸基を含む(メタ)アクリレートモノマー0.1~5質量部と、
イタコン酸、無水イタコン酸、及びマレイン酸の群から選ばれる少なくとも1種の酸モノマー1~5質量部と
を含むモノマー混合物を重合して得られるアクリル重合体であり、
粘着付与樹脂(B)の軟化点が100~160℃であり、
前記粘着剤を用いて50μmPET上に作製された粘着剤層の厚さが5μmの粘着テープの粘着力が15N/25mm以上であることを特徴とする粘着剤組成物、
(2)前記(1)に記載の粘着剤組成物を用いて作製された粘着テープ、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粘着剤組成物は、粘着層が薄い場合でも、粘着力が高い粘着テープを提供することができる。さらには、薄い粘着テープであっても高い粘着力を示すため、小型のOA機器や電子機器に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の発明を実施する形態の記載に限定されるものではない。
【0011】
本発明においてアクリル重合体(A)は、粘着層が粘着力を発揮するための主体となる成分であり、
水酸基を含まない(メタ)アクリレートモノマー90~98.9質量部と、
水酸基を含む(メタ)アクリレートモノマー0.1~5質量部と、
イタコン酸、無水イタコン酸、及びマレイン酸の群から選ばれる少なくとも1種の酸モノマー1~5質量部、
の比率で含有するモノマー混合物を重合して得られるアクリル重合体である。
前記モノマーを前記比率で重合させる事でアクリル重合体(A)の構造中に分岐構造が増加し、その分岐構造により被着体との接点が増えて、粘着層と被着体の密着力が向上するものと推察する。
なお、本発明における「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート又はメタクリレート」と同義である。
【0012】
水酸基を含まない(メタ)アクリレートモノマーとしては、架橋性官能基を有さない、直鎖、分岐、環状のアルキル基を含む(メタ)アクリレートや芳香族基を含む(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのなかでもアルキル基の炭素数は1以上20以下が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、又は2種以上を併用してもよい。水酸基を含まない(メタ)アクリレートモノマーは90~98.9質量部である必要がある。好ましくは95.5~98質量部である。
【0013】
直鎖アルキル基を含む(メタ)アクリレートモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0014】
分岐アルキル基を含む(メタ)アクリレートモノマーとしては、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0015】
環状アルキル基を含む(メタ)アクリレートモノマーとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレートなどの単環式構造を含む(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレートなどの多環式構造を含む(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0016】
芳香族基を含む(メタ)アクリレートモノマーとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0017】
これらのなかでも、水酸基を含まない(メタ)アクリレートモノマーとしては、直鎖もしくは分岐アルキル基を含む(メタ)アクリレートモノマーが好ましく、炭素数1以上8以下の直鎖もしくは分岐アルキル基を含む(メタ)アクリレートモノマーがより好ましく、とりわけメチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0018】
水酸基を含む(メタ)アクリレートモノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物、ポリエチレングリコール構造単位を含む(メタ)アクリレート類などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、又は2種以上を併用してもよい。好ましくは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、である。水酸基を含む(メタ)アクリレートモノマーの含有比率は、保持力の低下を起こすことなく高い粘着力が得るためにも、0.1~5質量部である必要がある。好ましくは0.1~0.5質量部である。
【0019】
酸モノマーは、イタコン酸、無水イタコン酸、及びマレイン酸の群から選ばれる少なくとも1種である。中でも他のモノマーとの共重合性の観点からイタコン酸が好ましい。酸モノマーの含有量は、十分な密着力向上効果を得るのに1~5質量部である必要がある。好ましくは1.5~4質量部である。
【0020】
また、本発明のアクリル重合体(A)中には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて共重合可能なその他モノマーを含有する事ができる。
【0021】
アクリル重合体(A)に含有させることができる共重合可能なその他モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N置換(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;アルコキシ基を含む(メタ)アクリレート類;酸素ヘテロ環基を含む(メタ)アクリレート類;カルボキシル基、スルホン酸基、エポキシ基などの水酸基以外の架橋性官能基を含む(メタ)アクリレート類;スチレン、p-ヒドロキシスチレンなどのスチレン又はその誘導体;酢酸ビニル、アクリロニトリル、アリルアルコール、(メタ)アクリル酸などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、又は2種以上を併用してもよい。アクリル重合体(A)の共重合に供するその他のモノマーは、粘着剤のタッキネスの観点からアクリル重合体(A)のポリマー成分中の含有割合が10質量%を限度として用いることができる。
【0022】
本発明のアクリル重合体(A)のガラス転移温度(以下、Tgと略することがある。)は、粘着層のタッキネスと内部凝集力の観点から、-60℃以上、-20℃未満であると内部凝集力が十分となるので凝集破壊を起こしにくく、十分な保持力とタッキネスが得られるため好ましい。
【0023】
ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)にて得られたDSC曲線において、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点である中間点ガラス転移温度とする。測定はJIS K7121に準拠し、窒素雰囲気下にて下記の条件で行った。
測定装置:示差走査熱量計(EXSTAR6000 DSC6200、セイコーインスツルメンツ株式会社製)
昇温速度:10℃/分
測定温度範囲:-100~100℃
【0024】
本発明のアクリル重合体(A)の重量平均分子量(以下、Mwと略することがある。)は、40万~120万であると内部凝集力が十分となるので十分な保持力が得られるうえ、糊残りが発生せず、被着体との密着性に優れ高い粘着力が得られるため好ましい。
【0025】
なお、本発明における重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した際の標準ポリスチレン換算の値であり、以下の条件にて測定したものである。
測定装置:高速GPC装置(HLC-8320GPC、東ソー株式会社製)
カラム:TSKGEL SUPERMULTIPORE-HZ H、TSKGEL SUP
ERMULTIPORE-HZ M(いずれも東ソー株式会社製)を2本連結して使用
ガードカラム:TSKguardcolumn SuperMP(HZ)-M(東ソー株
式会社製)
溶離液: テトラヒドロフラン
流速:0.35mL/分
カラム温度:40℃
サンプル濃度:0.1%
標準:TSKgel標準ポリスチレン(東ソー株式会社製)
【0026】
本発明において粘着付与樹脂(B)としては、ロジンエステル樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル重合体(A)以外のアクリル樹脂が挙げられ、これらを単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。中でも、粘着力向上効果の観点からテルペンフェノール樹脂、クマロンインデン樹脂が好ましい。
【0027】
ロジンエステル樹脂としては、ペンセルD-135、ペンセルD-160:ロジンエステル樹脂(荒川化学工業株式会社製)、スーパーエステルA-100A-115、A-125:特殊ロジンエステル樹脂(荒川化学工業株式会社製)、ハリタックシリーズ:ロジンエステル樹脂(ハリマ化成株式会社製)ハリマックシリーズ:変性ロジンエステル樹脂(ハリマ化成株式会社製)などが挙げられる。
【0028】
テルペンフェノール樹脂としては、YSポリスターUシリーズ、YSポリスターTシリーズ、YSポリスターGシリーズ、YSポリスターKシリーズ、YSポリスターNシリーズ(以上、ヤスハラケミカルズ株式会社製)、が挙げられる。
【0029】
クマロンインデン樹脂としては、ニットレジンクマロンV-120、V-120S(以上、日塗化学株式会社製)が挙げられる。
【0030】
石油系樹脂としては、クイントンA、B、R、CXシリーズ(以上、日本ゼオン株式会社製)、アルコンP-90、アルコンP-100、アルコンP-115、アルコンP-125、アルコンP-135、アルコンM-90、アルコンM-100、アルコンM-115(以上、荒川化学工業株式会社製)、日石ネオポリマーL-90、120、130、140、150、170S、S、T-REZHA085、HA103、HA105、HA125(以上、JXTGエネルギー株式会社製)が挙げられる。
【0031】
スチレン系樹脂としては、FMR-0150、FTR-0100、FTR-2120、FTR-2140、FTR-6100、FTR-6110、FTR-6125、FTR-7100、FTR-8100、FTR-8120(以上、三井化学株式会社製)が挙げられる。
【0032】
アクリル重合体(A)以外のアクリル樹脂としては、MICARESTAR ATF-2133、ATF-2242(以上、星光PMC株式会社製)が挙げられる。
【0033】
粘着付与樹脂(B)は粘着剤組成物中に混和して用い、粘着テープの粘着力を向上させるために用いる。粘着付与樹脂(B)の含有量はアクリル重合体(A)100質量部に対して、30~50質量部である必要がある。30質量部より少ないと十分な粘着付与効果が得られず、粘着力が不足し、50質量部より多いとタッキネスが低下しやすい。
【0034】
粘着付与樹脂(B)の軟化点は100℃~160℃である必要がある。100℃より低いと十分な粘着付与効果が得られず、粘着力が不足しやすい。160℃を超えると粘着層のタッキネスが損なわれやすい。なお、本発明における樹脂の軟化点は、フローテスター((株)島津製作所製、CFT―500D)を用い、試料として1gの樹脂を昇温速度4℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出し、温度に対するフローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度とした。
【0035】
架橋剤(C)としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤が挙げられる。中でも架橋構造のコントロールのしやすさの観点からイソシアネート系架橋剤を用いることが好ましい。
【0036】
イソシアネート系架橋剤は、反応性基としてイソシアネート基を1分子中に2つ以上含む化合物である。
【0037】
イソシアネート系架橋剤としては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシレンジイソシアネート、1,4-キシレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどの脂環族イソシアネート;ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネート、及びこれらイソシアネート化合物と各種のポリオールとの付加物、イソシアヌレート結合、ビューレット結合、アロファネート結合などで多官能化した変性ポリイソシアネートが挙げられる。これらのうち、芳香族イソシアネートや芳香族イソシアネートの変性ポリイソシアネートを用いることが好ましく、芳香族イソシアネートの変性ポリイソシアネートがより好ましい。これらイソシアネート系架橋剤は単独で用いてもよいし、又は2種以上を併用してもよい。
【0038】
エポキシ系架橋剤は、反応性基としてエポキシ基を1分子中に2つ以上含む化合物である。
【0039】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ系樹脂、ビスフェノールF型エポキシ系樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらエポキシ系架橋剤は単独で用いてもよいし、又は2種以上を併用してもよい。
【0040】
金属キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属に、アルコキシド、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル等が配位した化合物が挙げられる。具体的には、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムセカンダリーブチレート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネートが挙げられる。これら金属キレート系架橋剤は単独で用いてもよいし、又は2種以上を併用してもよい。
【0041】
これら架橋剤は単独で用いてもよいし、又は2種以上を併用してもよい。
【0042】
本発明の粘着剤組成物において、架橋剤(C)は粘着テープの粘着剤層とした際にアクリル重合体(A)と反応させ、粘着剤層中に架橋構造を生じさせるために用いる。架橋剤(C)はアクリル重合体(A)100質量部に対して、0.01~10質量部である必要がある。上記範囲外であると、粘着剤層と基材層との密着性が低下したり、架橋が不十分で凝集力が低下し粘着力の低下や糊残りが発生したりする。0.2~1.5質量部であることが好ましい。
【0043】
本発明の粘着剤組成物には、必要に応じて、帯電防止剤、光増感剤、架橋促進剤、架橋遅延剤、ぬれ性調整剤、可塑剤、軟化剤、有機微粒子、無機微粒子、充填剤、顔料、染料、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、ワックスなどの各種添加剤を含有していてもよく、有機溶媒を使用して塗工に適するよう調整することが好ましい。これらの添加剤は粘着剤組成物が塗工に供される前に適宜、混和させて使用することができる。
【0044】
本発明の粘着剤組成物は、粘着テープの作製に用いることができる。粘着テープの作製方法は特に限定されず公知の方法が何れも適用でき、基材または剥離基材上に本発明の粘着剤組成物を所望の厚さで塗工乾燥させて粘着剤層を形成した後、アクリル重合体(A)と架橋剤(C)とを反応させるための養生を行うことで粘着テープを得ることができる。なお、前述の養生条件としては、23~60℃で2日間~7日間程度が好ましい。本発明の粘着剤組成物を基材もしくは剥離基材に塗工する際に用いることのできるコーターとしては、ロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター、コンマコーター、リップコーターなどが挙げられる。
【0045】
本発明の粘着テープは、粘着剤層の両面に剥離基材が貼付されているもの、基材の片面に粘着剤層を有するもの、又は基材の両面に粘着剤層を有するものである。基材を用いるものは粘着剤層における基材と接していない面に剥離基材が貼付されていてもよい。
【0046】
粘着剤層の厚さは、粘着テープの使用用途に応じて調整すれば良く特に限定されない。本発明の粘着テープは、粘着テープの薄型化に対応するものであり、粘着剤層の厚さが1μm~10μmであっても、被着体を保持するのに十分な粘着力が得られることに特徴を有する。通常は1~15μmの範囲で適宜調整される。
【0047】
本発明の粘着テープで用いることができる基材としては、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリアミド(ナイロン)、ポリイミド、ポリ塩化ビニル(PVC)などのプラスチックフィルムが挙げられる。また、基材としてはガラス、紙、不織布等も挙げられる。なお、基材は粘着テープを薄くする場合は、平滑であるためプラスチックフィルムであることが好ましく、強度、扱いやすさの観点から、基材はPETであることがより好ましい。また、基材は必要に応じてコロナ処理などの易接着処理が施されていてもよい。基材の厚みは、特に限定されるものではないが、通常は1~100μmであり、粘着テープの薄型化の観点から好ましくは1~15μmである。
【0048】
[剥離基材]
本発明の粘着テープでは、剥離性を有する剥離基材を用いることができる。剥離基材とは剥離層を有する剥離性を示す基材であり、粘着剤層の表面を保護する機能を有する剥離テープもしくはフィルムを意味する。剥離基材は、一般的に剥離層としてシリコーン樹脂系剥離剤、フッ素樹脂系剥離剤、ポリプロピレン系樹脂、長鎖アルキル化合物などの公知の剥離剤を基材フィルムに処理したものである。基材フィルムは必要な強度と柔軟性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンナフタレートフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリテトラメチレンテレフタレートフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、ポリ塩化ビニルフィルムなどが挙げられる。剥離基材の厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは1~100μmである。また、帯電防止処理された剥離基材を用いてもよい。
【実施例0049】
以下、実施例及び比較例を提示して本発明をさらに具体的に説明するが、これら実施例は本発明を限定するものではない。また、特に断りのない限り、表中の成分量に関する数値は全て質量部である。
【0050】
(アクリル重合体(A)の合成)
[合成例1]
撹拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度センサーを備えたフラスコに、ブチルアクリレート(96.8質量部)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(0.5質量部)、イタコン酸(2.7質量部)、重合溶剤として酢酸エチル(120質量部)を仕込み、フラスコ内を窒素置換後、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(0.05質量部)を加え、70℃8時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルを加え、アクリル重合体(A-1)を含む酢酸エチル溶液を得た。得られたアクリル重合体(A-1)はMwが62万でTgは-42℃であった。
【0051】
[合成例2~11、比較合成例1~4]
表1に示す配合に変更したほかは合成例1と同様にしてアクリル重合体(A-2~A-11、A’-1~A’-4)の酢酸エチル溶液を得た。得られた各アクリル重合体のMw及びTgは表1中に記載する。
【0052】
【表1】
【0053】
なお、表1中、略語の意味は下記の通りである。
BA:ブチルアクリレート
2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
EA:エチルアクリレート
2HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート
IA:イタコン酸
IAn:無水イタコン酸
MA:マレイン酸
AA:アクリル酸
MAn:無水マレイン酸
AIBN:2,2’-アゾビスイソブチロニトリル
EAC:酢酸エチル
【0054】
(粘着剤組成物を含む酢酸エチル溶液の調製)
[実施例1]
得られたアクリル重合体(A-1)を含む酢酸エチル溶液を、アクリル重合体(A-1)として100質量部になるよう用い、アクリル重合体(A-1)100質量部に対して、粘着付与樹脂(B)として、YSポリスターT160(ヤスハラケミカル株式会社製)を35質量部、架橋剤(C)として、コロネートL45E(東ソー株式会社製、イソシアネート系架橋剤)を1.13質量部配合し、酢酸エチルで希釈して粘着剤組成物(X-1)を含む酢酸エチル溶液を得た。
【0055】
[実施例2~15、比較例1~12]
アクリル重合体(A)の種類、粘着付与樹脂(B)の種類及び配合量、及び架橋剤(C)の配合量を表2、表3に示すように変えたほかは、製造例1と同様にして、アクリル重合体(A)100質量部に対し、粘着付与樹脂(B)と架橋剤(C)を配合し、酢酸エチルで希釈して粘着剤組成物(X-2~X-15、X’-1~X’-12)を含む酢酸エチル溶液を得た。
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
なお、表2及び表3中、略語の意味は下記の通りである。
(テルペンフェノール樹脂)
T160:YSポリスターT160(軟化点160℃、ヤスハラケミカル株式会社製)
T145:YSポリスターT145(軟化点145℃、ヤスハラケミカル株式会社製)
T130:YSポリスターT130(軟化点130℃、ヤスハラケミカル株式会社製)
T100:YSポリスターT100(軟化点100℃、ヤスハラケミカル株式会社製)
T80:YSポリスターT80(軟化点80℃、ヤスハラケミカル株式会社製)
(クロマンインデン樹脂)
V-120S:ニットレジンクマロンV-120S(軟化点120℃、日塗化学株式会社製)
【0059】
(粘着テープの調製)
[実施例16~30、比較例13~24]
得られた粘着剤組成物(X-1~X-15、X’-1~X’-12)を乾燥後の粘着剤層の厚さが5μmとなるように、ポリエチレンテレフタレートフィルム基材(FE2002、厚さ50μm、フタムラ化学株式会社製)上に塗工し、乾燥後、粘着剤層側を剥離基材としての剥離層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(PET-38-SCA0、厚さ38μm、株式会社フジコー製)と貼り合わせ、40℃にて7日間養生し、粘着テープを得た。得られた粘着テープは、次の粘着テープの評価に供した。
【0060】
(粘着力)
粘着テープを幅25mm×長さ100mmに切断し、試験片を調製した。この試験片の剥離基材を剥がし、表面を洗浄したステンレス鋼板(SUS304BA)に、2kgの圧着ローラーを用いて圧着し、常温下にて30分放置した後、初期粘着力を測定した。
測定条件は、JIS Z0237に準拠し、下記の条件で行った。
測定装置:テンシロン万能試験機(RTG-1210型、エー・アンド・デイ社製)
剥離速度:300mm/min
剥離距離:50mm
剥離角:180°
【0061】
(保持力)
25mm幅の試験片にて、JIS Z 0237:2009に記載の保持力測定方法で試験した。すなわち、粘着テープを25mmに裁断し試験片とした。その後、PET剥離フィルムを剥離し、露出した他方の粘着剤層面をSUS板に貼り付け、2kgのローラーを用いて圧着した。貼付面積は25mm×25mmとした。貼付から20分後に、80℃の乾燥炉内で1kgの荷重を粘着剤層面と平行方向にかけ、1時間後のもとの位置からのズレの距離(mm)を測定した。表中、「○」はズレの距離が0.5mm以下であることを意味し、「×」は落下した事を意味する。保持力が○評価であれば実用化可能である。
【0062】
上記評価した結果を表4、表5に示す。
【0063】
【表4】
【0064】
【表5】
【0065】
本願発明で規定する範囲に含まれる実施例は、いずれも粘着剤層の厚さが5μmの粘着テープにおいても粘着力が15N/25mm以上であり、かつ実用化できる保持力を確保することができた。一方、本願発明の範囲外である比較例はいずれも粘着力が15N/25mmに及ばず、保持力が不足する場合もあった。