(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027281
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】燃料ガス製造設備
(51)【国際特許分類】
F23K 5/00 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
F23K5/00 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129954
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520346860
【氏名又は名称】エア・ウォーター北海道・産業ガス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109472
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 直之
(72)【発明者】
【氏名】岸 利華子
(72)【発明者】
【氏名】和田 彩香
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康明
(72)【発明者】
【氏名】今井 久司
【テーマコード(参考)】
3K068
【Fターム(参考)】
3K068AA02
3K068AB21
3K068BB02
3K068BB12
3K068CB01
(57)【要約】
【課題】低温液化燃料ガスのタンクとしてサイズや容量の大きなものを使用でき、温水供給設備のない事業所にも適用することができる燃料ガス製造用のユニット設備を提供する。
【解決手段】低温液化燃料ガスを気化させて燃料ガスを製造する燃料ガス製造用のユニット設備3であって、上記低温液化燃料ガスを熱媒体との熱交換により気化させて上記燃料ガスを得るための気化器20を含む機器が搭載された第1ユニット1と、上記気化器20において上記熱交換を行うための上記熱媒体を加熱する加熱器50を含む機器が搭載された第2ユニット2とを備え、上記第1ユニット1と上記第2ユニット2を組み合わせて上記ユニット設備3が構成され、上記第2ユニット2は、上記第2ユニット2に搭載された上記加熱器50を含む機器を、上記第1ユニット1に搭載された上記気化器20を含む機器に対して隔てるための隔壁5を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温液化燃料ガスを気化させて燃料ガスを製造する燃料ガス製造用のユニット設備であって、
上記低温液化燃料ガスを熱媒体との熱交換により気化させて上記燃料ガスを得るための気化器を含む機器が搭載された第1ユニットと、
上記気化器において上記熱交換を行うための上記熱媒体を加熱する加熱器を含む機器が搭載された第2ユニットとを備え、
上記第1ユニットと上記第2ユニットを組み合わせて上記ユニット設備が構成され、
上記第2ユニットは、上記第2ユニットに搭載された上記加熱器を含む機器を、上記第1ユニットに搭載された上記気化器を含む機器に対して隔てるための隔壁を有している
ことを特徴とする燃料ガス製造用のユニット設備。
【請求項2】
上記第2ユニットに搭載された上記加熱器を含む機器は非防爆性の機器であり、上記第1ユニットに搭載された上記気化器を含む機器は防爆性の機器である
請求項1記載の燃料ガス製造用のユニット設備。
【請求項3】
上記ユニット設備は、
上記気化器に導入する低温液化燃料ガスが貯留されたタンクを、上部に設置して複数階構造としうるフレームを有している
請求項1または2記載の燃料ガス製造用のユニット設備。
【請求項4】
上記第1ユニットは、上記燃料ガスの漏洩を検知するガス検知器を備え、上記ガス検知器が上記燃料ガスの漏洩を検知した場合に、上記第1ユニットと上記第2ユニットに対して供給する電源を遮断するように構成されている
請求項1または2記載の燃料ガス製造用のユニット設備。
【請求項5】
上記第1ユニットと上記第2ユニットを組み合わせて構成された上記ユニット設備が可搬式である
請求項1または2記載の燃料ガス製造用のユニット設備。
【請求項6】
上記気化器は、上記低温液化燃料ガスと上記熱媒体が長手方向に流通する長管型の気化器が縦置きに配置されたものである
請求項1または2記載の燃料ガス製造用のユニット設備。
【請求項7】
上記長管型の気化器は、上記低温液化燃料ガスが導入される内管と、上記熱媒体を流通させる外管を有した二重管式気化器である
請求項6記載の燃料ガス製造用のユニット設備。
【請求項8】
上記二重管式気化器は、上記外管に上記熱媒体を導入する導入口が、二重管の中心軸に対してずれた状態で外管の側面に設けられている
請求項7記載の燃料ガス製造用のユニット設備。
【請求項9】
上記第1ユニットは、上記タンクに対して充填する上記低温液化燃料ガスを受入れるための受入手段が搭載されている
請求項3記載の燃料ガス製造用のユニット設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温液化燃料ガスを熱媒体との熱交換により気化して燃料ガスを製造する燃料ガス製造設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業用の燃料として従来から、主として重油系の石油系燃料が用いられてきた。このような石油系燃料は、二酸化炭素排出量の削減や石油の価格変動リスクを回避するために、液化天然ガス(LNG)への転換が図られている。LNGの年間使用量が2000t以上になる大規模事業所や、500~2000t規模の中規模事業所では、LNGへの転換が進みつつある。
【0003】
しかし、年間使用量が200~500t規模の小規模事業所(たとえば食品業者や小規模製造業者等)では、LNGへの転換が進んでいない。そのネックとなっているのは、LNGサテライト設備の設置に必用な設備コストと、上記LNGサテライト設備への充填量の管理である。
【0004】
現在流通しているLNGサテライト設備は大型のものが多く、省スペースで設置可能な小型設備はほとんど流通していない。また、小規模事業所はLNGに対する特別な知識を持たないことが多いため、このようなユーザーでも容易に残液量を確認できるシステムが必要である。
【0005】
小規模事業所では、LNGサテライト設備に対して、つぎのような仕様が求められることが多い。第1は、最大貯留液量が3t~5t程度の規模であること。第2は、天然ガスの供給量として50kg/h~300kg/h程度の能力があること。
【0006】
このようなLNGサテライト設備に関する先行技術文献として、本出願人は、下記の特許文献1を把握している。
【0007】
特許文献1は、可搬式ガス製造設備に関するものであり、つぎの記載がある。
[0038]
〔全体構成〕本実施形態は、貯留タンク10と、ガス製造機器20と、ユニット化構造体50とを備えて構成されている。
[0039]
〔貯留タンク10〕上記貯留タンク10は、タンクローリー1から充填される液化ガス(この例ではLNGである)を貯留する。上記貯留タンク10は、低温液化ガスを貯留する真空断熱タイプのものを使うことができる。
[0044]
〔ガス製造機器20〕上記ガス製造機器20は、上記貯留タンク10に貯留された上記液化ガスの蒸発器21を含み、上記液化から製品ガスを製造する。この例では上記液化ガスが液化天然ガス(LNG)なので、上記製品ガスは天然ガスである。
[0045]
上記ガス製造機器20は、この例では、上記蒸発器21に加えてさらに、防爆ケース22に収容された電気制御機器、バッファタンク23、窒素ボンベ24を備えている。
[0047]
本実施形態では、上記蒸発器21は、容器内に満たした温水によってLNGを加温して気化させる。したがって、上記蒸発器21は、LNGを加温するための温水を導入する温水導入路21Aと、熱交換によって冷却された水を排出する排水路21Bが接続されている。
[0057]
〔ユニット化構造体50〕上記ユニット化構造体50は、上記貯留タンク10と上記ガス製造機器20を、搬送可能なユニット2となるように搭載するためのものである。
[0058]
上記ユニット化構造体50は、この例では、上記貯留タンク10、上記蒸発器21、バッファタンク23、防爆ケース22、窒素ボンベ24が搭載され固定される長方形の基台である。この状態で必要な配管や計器機器が接続される。
[0061]
〔重量検出器40〕本実施形態では、上記貯留タンク10を、上記ユニット化構造体50において、上記タンクローリー1から上記貯留タンク10に充填される上記液化ガスの充填重量を検出するための重量検出器40上に存在させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1の可搬式ガス製造設備は、ユニット化構造体50に、貯留タンク10とガス製造機器20が搭載されて、搬送可能なユニット2が構成されている。上記ユニット化構造体50は長方形の基台である。上記長方形の基台に、上記貯留タンク10が搭載されており、上記貯留タンク10と隣接するスペースに、上記ガス製造機器20として、蒸発器21、バッファタンク23、防爆ケース22、窒素ボンベ24が配置され固定されている。
【0010】
上記特許文献1の可搬式ガス製造設備は、上記ユニット化構造体50に、貯留タンク10とガス製造機器20を隣接させて搭載してユニット2を構成する。また、上記貯留タンク10を重量検出器40上に存在させている。さらに耐震設計上の問題もあり、上記貯留タンク10のサイズおよび容量が限定的になる。したがって、小規模事業所といえども、十分な貯留量とならないケースも出てくる。また、上記特許文献1では、上記蒸発器21に外部から温水を導入して液化ガスを気化することが行われる。したがって、上記ユニット2の設置場所の近くに温水供給設備がない事業所には適用することができない。反対に、上記ユニット2の設置場所と温水供給設備との距離が近すぎる事業所では、防爆対策の面で適用できないことになる。
【0011】
〔目的〕
本発明は、上記の課題を解決するため、つぎの目的をもってなされたものである。
低温液化燃料ガスのタンクとしてサイズや容量の大きなものを使用でき、温水供給設備のない事業所にも適用することができる燃料ガス製造用のユニット設備を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の燃料ガス製造用のユニット設備は、上記目的を達成するため、つぎの構成を採用した。
低温液化燃料ガスを気化させて燃料ガスを製造する燃料ガス製造用のユニット設備であって、
上記低温液化燃料ガスを熱媒体との熱交換により気化させて上記燃料ガスを得るための気化器を含む機器が搭載された第1ユニットと、
上記気化器において上記熱交換を行うための上記熱媒体を加熱する加熱器を含む機器が搭載された第2ユニットとを備え、
上記第1ユニットと上記第2ユニットを組み合わせて上記ユニット設備が構成され、
上記第2ユニットは、上記第2ユニットに搭載された上記加熱器を含む機器を、上記第1ユニットに搭載された上記気化器を含む機器に対して隔てるための隔壁を有している。
【0013】
請求項2記載の燃料ガス製造用のユニット設備は、請求項1記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記第2ユニットに搭載された上記加熱器を含む機器は非防爆性の機器であり、上記第1ユニットに搭載された上記気化器を含む機器は防爆性の機器である。
【0014】
請求項3記載の燃料ガス製造用のユニット設備は、請求項1または2記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記ユニット設備は、
上記気化器に導入する低温液化燃料ガスが貯留されたタンクを、上部に設置して複数階構造としうるフレームを有している。
【0015】
請求項4記載の燃料ガス製造用のユニット設備は、請求項1または2記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記第1ユニットは、上記燃料ガスの漏洩を検知するガス検知器を備え、上記ガス検知器が上記燃料ガスの漏洩を検知した場合に、上記第1ユニットと上記第2ユニットに対して供給する電源を遮断するように構成されている。
【0016】
請求項5記載の燃料ガス製造用のユニット設備は、請求項1または2記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記第1ユニットと上記第2ユニットを組み合わせて構成された上記ユニット設備が可搬式である。
【0017】
請求項6記載の燃料ガス製造用のユニット設備は、請求項1または2記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記気化器は、上記低温液化燃料ガスと上記熱媒体が長手方向に流通する長管型の気化器が縦置きに配置されたものである。
【0018】
請求項7記載の燃料ガス製造用のユニット設備は、請求項6記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記長管型の気化器は、上記低温液化燃料ガスが導入される内管と、上記熱媒体を流通させる外管を有した二重管式気化器である。
【0019】
請求項8記載の燃料ガス製造用のユニット設備は、請求項7記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記二重管式気化器は、上記外管に上記熱媒体を導入する導入口が、二重管の中心軸に対してずれた状態で外管の側面に設けられている。
【0020】
請求項9記載の燃料ガス製造用のユニット設備は、請求項3記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記第1ユニットは、上記タンクに対して充填する上記低温液化燃料ガスを受入れるための受入手段が搭載されている。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の燃料ガス製造用のユニット設備は、低温液化燃料ガスを気化させて燃料ガスを製造する燃料ガス製造用のユニット設備であり、第1ユニットと第2ユニットとを備えている。上記第1ユニットは、上記低温液化燃料ガスを熱媒体との熱交換により気化させて上記燃料ガスを得るための気化器を含む機器が搭載されている。上記第2ユニットは、上記気化器において上記熱交換を行うための上記熱媒体を加熱する加熱器を含む機器が搭載されている。上記第1ユニットと上記第2ユニットを組み合わせ、上記ユニット設備が構成されている。本ユニット設備は、気化器を有する第1ユニットと、上記気化器で使用する加熱器を有する第2ユニットとで構成されているため、本ユニット設備を搬送可能なサイズとしても、低温液化燃料ガスのタンクは可搬式とするかあるいは別途搬送して設置するものとなり、上記特許文献1に比べてサイズや容量の大きなものを使用することができる。また、第2ユニットの加熱器で加熱した熱媒体を第1ユニットの気化器で使用して低温液化燃料ガスを気化させるため、温水供給設備がない事業所にも適用することができる。さらに、上記第2ユニットは、上記第2ユニットに搭載された上記加熱器を含む機器を、上記第1ユニットに搭載された上記気化器を含む機器に対して隔てるための隔壁を有している。このため、防爆対策面への配慮が届いたものである。
【0022】
請求項2記載の燃料ガス製造用のユニット設備は、上記第2ユニットに搭載された上記加熱器を含む機器は非防爆性の機器であり、上記第1ユニットに搭載された上記気化器を含む機器は防爆性の機器である。このように、上記第1ユニットに防爆性の機器を搭載し、上記第2ユニットに非防爆性の機器を搭載するよう、第1ユニットおよび第2ユニットにそれぞれ搭載する機器を選定することにより、防爆対策面への配慮が届いたものとなる。
【0023】
請求項3記載の燃料ガス製造用のユニット設備は、上記ユニット設備は、上記気化器に導入する低温液化燃料ガスが貯留されたタンクを、上部に設置して複数階構造としうるフレームを有している。このような燃料ガス製造用のユニット設備では、上記第1ユニットと第2ユニットを一階部分とし、上階部分に上記タンクを配置することにより、接地面積を小さくすることができる。このため、単位設置面積あたりの燃料ガス製造量を特許文献1に比べて大きくすることができる。また上記ユニット設備が一階部分に配置され、上記タンクを上階部分に配置することにより、上記タンクを横置きにしたとしても、送液に必要な水頭圧を確保することが可能である。
【0024】
請求項4記載の燃料ガス製造用のユニット設備は、上記第1ユニットは、上記燃料ガスの漏洩を検知するガス検知器を備え、上記ガス検知器が上記燃料ガスの漏洩を検知した場合に、上記第1ユニットと上記第2ユニットに対して供給する電源を遮断するように構成されている。このため、万一ガス漏れが生じたときでも電源を遮断することで、引火等の事故を未然に防止できる。
【0025】
請求項5記載の燃料ガス製造用のユニット設備は、上記第1ユニットと上記第2ユニットを組み合わせて構成された上記ユニット設備が可搬式である。上記ユニット設備を搬送可能なサイズとしても、低温液化燃料ガスのタンクは可搬式とするかあるいは別途搬送して設置するものとなり、上記特許文献1に比べてサイズや容量の大きなものを使用することができる。
【0026】
請求項6記載の燃料ガス製造用のユニット設備は、上記気化器は、上記低温液化燃料ガスと上記熱媒体が長手方向に流通する長管型の気化器が縦置きに配置されたものである。このようにすることにより、上記長管型の気化器内の気相と液相が上下に分離し、熱交換による気化性能を安定化することができる。また、気化器の設置スペースを小さくできる。
【0027】
請求項7記載の燃料ガス製造用のユニット設備は、上記長管型の気化器は、上記低温液化燃料ガスが導入される内管と、上記熱媒体を流通させる外管を有した二重管式気化器である。このようにすることにより、内管を流通する低温液化ガスの周囲に存在する外管を熱媒体が流通し、中心部の低温液化ガスを周囲の熱媒体によって効率的に加温して気化することができる。
【0028】
請求項8記載の燃料ガス製造用のユニット設備は、上記二重管式気化器は、上記外管に上記熱媒体を導入する導入口が、二重管の中心軸に対してずれた状態で外管の側面に設けられている。
上記外管に導入された上記熱媒体が上記外管内をらせん状に流れることになり、内管を流通する低温液化燃料ガスに対する熱交換にむらが少なくなり、効率的な熱交換を実現できる。
【0029】
請求項9記載の燃料ガス製造用のユニット設備は、上記第1ユニットは、上記タンクに対して充填する上記低温液化燃料ガスを受入れるための受入手段が搭載されている。一階部分に存在する第1ユニットの受入手段において上記低温液化燃料ガスの受入れ作業を行うことにより、上階部分にある上記タンクに対して上記低温液化燃料ガスを充填することができる。上記タンクが上階部分にあっても、受け入れ作業を一階部分でできるため、作業性や作業効率が良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の第1実施形態の燃料ガス製造用のユニット設備を説明する図である。
【
図2】第1ユニットと第2ユニットを説明する図である。
【
図3】上記第1実施形態の配管系統を説明する図である。
【
図4】上記第1実施形態に用いる気化器の第1例を示す図である。
【
図5】上記第1実施形態に用いる気化器の第2例を示す図である。
【
図6】上記第1実施形態に用いる気化器の第3例を示す図である。
【
図7】第2実施形態の燃料ガス製造用のユニット設備を説明する図である。
【
図8】上記第2実施形態の配管系統を説明する図である。
【
図9】第3実施形態の燃料ガス製造設備を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
つぎに、本発明を実施するための形態を説明する。
【0032】
◆第1実施形態
〔全体構成〕
図1~
図2は、本発明が適用された燃料ガス製造用のユニット設備を示す第1実施形態である。
図1はユニット設備を説明する図であり、(A)は上から見た図、(B)は横から見た図である。
図2は、第1ユニットと第2ユニットを説明する図であり、(A)は斜視図、(B)は隔壁の位置を説明するために上から見た図である。
【0033】
本実施形態は、低温液化燃料ガスを気化させて燃料ガスを製造する燃料ガス製造用のユニット設備であって、第1ユニット1と第2ユニット2を組み合わせて上記ユニット設備3が構成されている。
【0034】
上記第1ユニット1は、上記低温液化燃料ガスを熱媒体との熱交換により気化させて上記燃料ガスを得るための気化器20を含む機器が搭載されている。上記第2ユニット2は、上記気化器20において上記熱交換を行うための上記熱媒体を加熱する加熱器50を含む機器が搭載されている。上記気化器20を含む機器および加熱器50を含む機器の配管系統については後述する。
【0035】
〔ユニット設備3〕
上記第1ユニット1は、この例では略立法体状となるようにフレーム4が組み立てられ、底部に床板6が敷かれて構成されている。上記第2ユニット1は同様に、この例では直方体状となるようにフレーム4が組み立てられ、底部に床板6が敷かれて構成されている。上記第1ユニット1と第2ユニット2は、組み合わせられて上記ユニット設備3を構成している。
【0036】
本実施形態では、上記第1ユニット1と上記第2ユニット2を組み合わせて構成された上記ユニット設備3が可搬式である。つまり、上記第1ユニット1および上記第2ユニットをいずれも工場で製作し、おなじく工場で上記第1ユニット1と上記第2ユニット2を組み合わせて上記ユニット設備3を構成する。上記ユニット設備3は、サイズや重量が、トラックやトレーラ等の運搬車による搬送が可能なものとされる。したがって、本実施形態の上記ユニット設備3は、工場で製作し、使用する現場に搬送して設置して使用されるものである。
【0037】
上記第2ユニット2に搭載された上記加熱器50を含む機器は非防爆性の機器であり、上記第1ユニット1に搭載された上記気化器20を含む機器は防爆性の機器である。
【0038】
ここで、上記防爆性の機器とは、可燃物の貯留や状態変化をさせる機器、電気や直火を使う機器のうち防爆性能を有しているものが含まれる。上記可燃物の貯留や状態変化をさせる機器として上記気化器20があげられる。また、上記防爆性の機器として、たとえば減圧装置や流量計をあげることができる。また、上記防爆性の機器として、バッファタンク等の高圧用(ガスの場合1MPaG以上、液の場合0.2MPaG以上)の流体機器をあげることができる。つまり、上記防爆性の機器とは、防爆性の環境に配置すべき機器類である。
【0039】
また、上記非防爆性の機器とは、上述した熱媒体の加熱器50を含む。上記加熱器50としては、たとえば温水ボイラや給湯器のような火気を使用する機器をあげることができる。また、上記非防爆性の機器として、電気機器を含めることができる。上記電気機器としては、たとえば制御盤、温水ポンプ、コンプレッサー等をあげることができる。また、低圧用(ガスの場合1MPaG未満)の減圧装置や流量計等の流体機器も非防爆性の機器に含めることができる。つまり、上記非防爆性の機器とは、後述する隔壁5によって上記防爆性の機器から隔てた環境に配置すべき機器類である。
【0040】
本実施形態は、上記第2ユニット2は、上記第2ユニット2に搭載された上記加熱器50を含む機器を、上記第1ユニット1に搭載された上記気化器20を含む機器に対して隔てるための隔壁5を有している。
【0041】
上記隔壁5は、この例では、
図2(B)に示すように、上記第1ユニット1と上記第2ユニット2の境界となる部分の前面に少なくとも配置されている。また、上記第2ユニット2は、すべての側面および天井が、隔壁5で囲われ、開放部のない構造を呈している。なお、
図2(A)では天井の隔壁を示していない。
【0042】
一方、上記第1ユニット1は、フレーム4と床板6が組み立てられただけで、側面と天井部は開放されている。このように、上記第1ユニット1は、上記第2ユニット2との境界およびフレーム4と床板6以外の部分を開放部7とすることにより、内部に設置された防爆性の機器に万が一ガス漏れが生じた際の換気性を確保している。
【0043】
上記隔壁5は、万が一、爆発が生じたときにそれを遮って防爆するためのものであり、耐火性と剛性を備えた壁材または板材から構成される。具体的には、所定厚みの鋼板を使用することができる。具体的に上記所定厚みは、たとえば6mm厚以上の厚みとすることができる。
【0044】
〔配管系統〕
図3は、本実施形態の配管系統を説明する図である。本実施形態では、上記第1ユニット1に気化器20、供給手段30、熱媒体保持器60が配置されている。上記第2ユニット2に加熱器50、循環ポンプ41が配置されている。上記循環ポンプ41、熱媒体保持器60、気化器20、加熱器50を経由するように、熱媒体循環路40が設けられている。上記第1ユニット1と第2ユニット2から構成される上記ユニット機器3の外部に、タンク10が配置される。
【0045】
上記気化器20は、上記タンク10から取り出した上記低温液化燃料ガスを熱媒体との熱交換により気化する。上記供給手段30は、上記気化器20での気化により生成された燃料ガスを燃料ガス使用設備(図示していない)に供給する。上記熱媒体循環路40は、上記気化器20において上記熱交換を行わせるように上記熱媒体を循環させる。上記加熱器50は、上記熱媒体循環路40において上記熱媒体を加熱する。
【0046】
〔タンク10〕
上記タンク10は、低温液化燃料ガスを貯留するものであり、真空断熱構造を有したものが用いられる。
【0047】
上記低温液化燃料ガスは、低温で液化させて貯留しうる燃料ガスであれば各種のものを含む趣旨である。上記低温液化燃料ガスとして具体的には、たとえば、液化天然ガス、液化メタン、液化エタン、液化バイオメタン等をあげることができる。上記液化天然ガスであれば―162℃程度、上記液化メタンおよび液化バイオメタンであれば―162℃程度、上記液化エタンであれば-89℃程度の低温である。
【0048】
〔気化器20〕
上記気化器20は、上記タンク10から取り出した上記低温液化燃料ガスを、熱媒体との熱交換により気化する。符号11は、上記タンク10から上記低温液化燃料ガスを取り出して上記気化器20に導入する取出路11である。符号31は、上記気化器20で上記低温液化燃料ガスを気化して得られた燃料ガスを供給する供給路31であり、上記供給手段30の一部として機能する。
【0049】
上記気化器20は、上記低温液化燃料ガスと上記熱媒体が長手方向に流通する長管型の気化器20が縦置きに配置されたものである。
【0050】
この例では、上記長管型の気化器20が複数並列に配置されている。図示したものは3つの気化器20が並列に配置され、それぞれに上記タンク10から低温液化燃料ガスが導入され、それぞれから燃料ガスが供給路31に排出される。上記気化器20において上記低温液化燃料ガスと熱交換するための熱媒体は、後述する熱媒体循環路40によって循環する。
【0051】
図4は、上記長管型の気化器20の第1例について詳細を説明する図である。(A)は上から見た図、(B)は横から見た断面図、(C)は下から見た図である。
【0052】
上記長管型の気化器20は、外管22内に内管21が挿通された二重管構造を呈した二重管式気化器である。上記内管21内の空間が、上記低温液化燃料ガスが導入される内流路21Aであり、上記外管と内管21のあいだの空間が、上記熱媒体を流通させる外流路22Aである。外流路22Aを流通する熱媒体と、内流路21Aを流通する低温液化燃料ガスのあいだで熱交換が行われ、内流路21A内で低温液化燃料ガスが気化されて燃料ガスとなる。
【0053】
本実施形態では、上記二重管式気化器が縦置きに配置されている。上記内管21の下端開口は低温液化燃料ガスの入口である。上記内管21の上端開口は低温液化燃料ガスが気化されて生成した燃料ガスの出口である。つまりこの例では、複数並列に配置された気化器20のそれぞれにおいて、下端の入口から低温液化燃料ガスが導入され、上端の出口から燃料ガスが排出される。
【0054】
上記外管22には、下端近傍の側面に導入口23が設けられ、上端近傍の側面に導出口24が設けられている。上記導入口23は、上記外流路22Aに上記熱媒体を導入するものであり、二重管の中心軸に対してずれた状態で外管22の側面に設けられている。上記導出口24は、上記外流路22Aから上記熱媒体を導出するものであり、二重管の中心軸に対してずれた状態で外流路22Aの側面に設けられている。上記導入口23と導出口24は、上から見た状態(または下から見た状態)において、上記二重管の中心軸に対して対称に配置される。このような導入口23と導出口24の配置により、上記導入口23から上記外流路22A内に導入された熱媒体は、上記内管21の外回りの外流路22A内をらせん状に流れて導出口24から排出される。この例では、複数並列に配置された気化器20のそれぞれにおいて、熱媒体が外流路22A内をらせん状に流れる。これにより、外流路22A内を通過する熱媒体の通過時間が長く、熱交換する時間も長くなるため、熱交換がよく行われる。
【0055】
上記二重管式気化器では、上述したように、上記内管21の下端開口(入口)から低温液化燃料ガスが導入されて上端開口(出口)から燃料ガスが排出される。上記内管21を下から上に通過するあいだの熱交換により、低温液化燃料ガスが気化して燃料ガスとなる。また、上記外管22の下端近傍に設けられた導入口23から高温の熱媒体が導入され、上端近傍の側面に設けられた導出口24から低温の熱媒体が排出される。上記外管22を下から上に通過するあいだの熱交換により、高温の熱媒体が冷却されて低温の熱媒体となる。
【0056】
縦置き配置された二重管式気化器の下端近傍において、低温液化燃料ガスが内管21に導入され、外管22に高温の熱媒体が導入される。二重管式気化器の下端近傍では、低温液化燃料ガスと熱媒体は導入されたばかりであり、温度差が大きく、熱交換が速やかにすすむ。一部の低温液化燃料ガスは気化し気泡となって二重管式気化器の上部に浮上するため、二重管式気化器の下半側は液相主体の状態が保たれる。二重管式気化器の下半側では低温液化燃料ガスが液相主体となり、熱伝導の妨げとなる気相がすくないことから、速やかに熱交換が行われる。
【0057】
本実施形態では、上記内管21の外周面に、フィン25が設けられている。上記フィン25は、帯状の金属薄板が、表裏の板面が上下に向くよう、上記内管21の外周面にらせん状に巻回されて構成されている。これにより、上記フィン25が外管22内に張り出す構造となる。上記フィン25のらせん方向は、上記外流路22A内を熱媒体が流れるらせん方向と一致させている。
【0058】
上記フィン25が存在することにより、上記内管21の外表面積が増加し、外管22内を流通する熱媒体と低温液化燃料ガスとの熱交換が促進される。つまり、上記フィン25は、上記内管21の外表面積を増加させる構造である。
【0059】
図5は、上記長管型の気化器20の第2例である。(A)は上から見た図、(B)は横から見た断面図、(C)は下から見た図である。
【0060】
この第2例も長管型の気化器20であり、外管22内に内管21が挿通された二重管構造を呈した二重管式気化器である。上記内管21内の空間が、上記低温液化燃料ガスが導入される内流路21Aであり、上記外管22と内管21のあいだの空間が、上記熱媒体を流通させる外流路22Aである。外流路22Aを流通する熱媒体と、内流路21Aを流通する低温液化燃料ガスのあいだで熱交換が行われ、内流路21A内で低温液化燃料ガスが気化されて燃料ガスとなる。
【0061】
この第2例の二重管式気化器が縦置きに配置される。上記内管21の下端開口が低温液化燃料ガスの入口である。上記内管21の上端開口が低温液化燃料ガスが気化されて生成した燃料ガスの出口である。
【0062】
上記外管22には、下端近傍の側面に導入口23が設けられ、上端近傍の側面に導出口24が設けられている。上記導入口23は、上記外流路22Aに上記熱媒体を導入するものであり、二重管の中心軸に対してずれた状態で外管22の側面に設けられている。上記導出口24は、上記外流路22Aから上記熱媒体を導出するものであり、二重管の中心軸に対してずれた状態で外流路22Aの側面に設けられている。上記導入口23と導出口24は、上から見た状態(または下から見た状態)において、上記二重管の中心軸に対して対称に配置される。このような導入口23と導出口24の配置により、上記導入口23から上記外流路22A内に導入された熱媒体は、上記内管21の外回りの外流路22A内をらせん状に流れて導出口24から排出される。
【0063】
第2例では、上記内管21は、壁面自体にらせん状となる凹凸が形成されている。上記凹凸のらせん方向は、上記外流路22A内を熱媒体が流れるらせん方向と一致させている。
【0064】
上記凹凸が存在することにより、上記内管21の外表面積が増加し、外管22内を流通する熱媒体と低温液化燃料ガスとの熱交換が促進される。つまり、上記凹凸は、上記内管21の外表面積を増加させる構造である。
【0065】
図6は、上記長管型の気化器20の第3例である。(A)は上から見た図、(B)は横から見た断面図、(C)は下から見た図である。
【0066】
この第3例も長管型の気化器20であり、外管22内に内管21が挿通された二重管構造を呈した二重管式気化器である。上記内管21内の空間が、上記低温液化燃料ガスが導入される内流路21Aであり、上記外管22と内管21のあいだの空間が、上記熱媒体を流通させる外流路22Aである。外流路22Aを流通する熱媒体と、内流路21Aを流通する低温液化燃料ガスのあいだで熱交換が行われ、内流路21A内で低温液化燃料ガスが気化されて燃料ガスとなる。
【0067】
この第3例の二重管式気化器が縦置きに配置される。上記内管21の下端開口が低温液化燃料ガスの入口である。上記内管21の上端開口が低温液化燃料ガスが気化されて生成した燃料ガスの出口である。
【0068】
上記外管22には、下端近傍の側面に導入口23が設けられ、上端近傍の側面に導出口24が設けられている。上記導入口23は、上記外流路22Aに上記熱媒体を導入するものであり、二重管の中心軸に対してずれた状態で外管22の側面に設けられている。上記導出口24は、上記外流路22Aから上記熱媒体を導出するものであり、二重管の中心軸に対してずれた状態で外流路22Aの側面に設けられている。上記導入口23と導出口24は、上から見た状態(または下から見た状態)において、上記二重管の中心軸に対して対称に配置される。このような導入口23と導出口24の配置により、上記導入口23から上記外流路22A内に導入された熱媒体は、上記内管21の外回りの外流路22A内をらせん状に流れて導出口24から排出される。
【0069】
〔供給手段30〕
図3に戻って説明する。上記供給手段30は、上記気化器20での気化により生成された燃料ガスを燃料ガス使用設備(図示していない)に供給する。上記供給手段30は、上述した供給路31と、上記供給路31に設けられた減圧弁32を含んで構成される。上記減圧弁32は、上記気化器20から排出された燃料ガスの圧力を、燃料ガス使用設備に供給する際に適切な圧力まで減圧する。
【0070】
上記供給路31には、温度センサ33が設けられている。上記温度センサ33は、気化器20の出口付近に配置され、気化器20から排出される燃料ガスの温度を検知し、所定の温度範囲を外れていないかを監視する。
【0071】
〔熱媒体循環路40〕
上記熱媒体循環路40は、上記気化器20において上記熱交換を行わせるように上記熱媒体を循環させる。上記熱媒体としては、たとえば水やスチームを使用することができる。
【0072】
上記熱媒体循環路40には、上記熱媒体を循環させる循環ポンプ41が設けられている。上記循環ポンプ41の下流側には圧力センサ42が配置され、上記循環ポンプ41の供給圧力を監視する。
【0073】
上記熱媒体循環路40は、上述した循環ポンプ41、加熱器50、熱媒体保持器60、複数並列に配置された各気化器20の順に熱媒体を循環させ、ふたたび循環ポンプ41に戻るように構成されている。このような熱媒体の循環では、上記気化器20において低温液化燃料ガスとの熱交換で冷却した熱媒体が、上記循環ポンプ41で圧送され、上記加熱器50で加熱され、熱媒体保持器60で一時的に保持され、上記気化器20に導入される。
【0074】
上記熱媒体循環路40は、閉鎖系の循環路に構成することが好ましい。閉鎖系の循環路とすることにより、熱媒体の汚染を防止し、熱媒体循環路40を構成する管路、気化器20、加熱器50、熱媒体保持器60等の熱媒体が通過する機器のメンテナンス負荷を軽減することができる。
【0075】
〔加熱器50〕
上記加熱器50は、上記熱媒体循環路40において上記熱媒体を加熱する。上記加熱器50は、上記熱媒体循環路40における上記循環ポンプ41の下流に、かつ上記熱媒体保持器60の上流に配置されている。上記加熱器50は、上記低温液化燃料ガスが気化されて得られるガスを燃料として上記熱媒体を加熱する。上記加熱器50には、上記燃料を導入する燃料路51が接続されている。上記加熱器50としては、たとえばボイラや給湯器を用いることができる。
【0076】
上記加熱器50の下流側には温度センサ43が配置され、上記加熱器50で加熱された熱媒体の温度を監視する。また、上記加熱器50の下流側には圧力センサ44が配置され、上記加熱器50で加熱された熱媒体の供給圧力を監視する。
【0077】
〔熱媒体保持器60〕
上記熱媒体循環路40には、循環する上記熱媒体を一時的に保持する熱媒体保持器60が設けられている。上記熱媒体保持器60は、上記熱媒体循環路40における上記加熱器50の下流に、かつ上記気化器20の上流に配置されている。上記熱媒体保持器60は、上記熱媒体循環路40を循環する上記熱媒体を一時的に保持したのち、上記気化器20に熱媒体を導入する。上記熱媒体循環路40の経路上に熱媒体保持器60を設けることにより、全体としての熱媒体の容量が大きくなり、熱媒体の温度が安定化する。
【0078】
この実施形態では、上記熱媒体保持器60は、上記タンク10から取り出した低温液化燃料ガスを内部の熱媒体との熱交換で気化させて上記タンク10内の加圧に使用する加圧器としても機能する。上記熱媒体保持器60には、上記タンク10から低温液化燃料ガスを取り出す取出路61と、気化した燃料ガスで上記タンク10内を加圧するための加圧路62が接続される。
【0079】
上記加圧路62には、上記タンク10内の圧力が所定値以下になったときに開弁するレリーフ弁62Aが設けられている。これにより、上記タンク10内の圧力が所定値以下になったときに、加圧器として機能する熱媒体保持器60で低温液化燃料ガスを気化させた燃料ガスが、加圧路62から上記タンク10内に導入され、上記タンク10内が加圧される。上記タンク10内の圧力が所定値以上になると、上記レリーフ弁62Aが閉弁し、上記加圧路62からの燃料ガスの導入が停止する。
【0080】
〔バイパス路45〕
上記熱媒体循環路40は、循環する熱媒体の一部を上記加熱器50に供給して加熱し、上記加熱器50で加熱した熱媒体の一部を、上記加熱器50に供給しないで循環させた熱媒体と混合するように構成されている。
【0081】
具体的には、上記熱媒体循環路40には、上記加熱器50の上流側と上記加熱器50の下流側を連結して上記加熱器50を迂回するバイパス路45が設けられている。つまり、上記熱媒体循環路40を循環する熱媒体は、その一部が加熱器50に導入されて加熱され、その他は加熱されずに上記バイパス路45を通り、上記加熱器50から出てきた高温の熱媒体と合流して混合される。
【0082】
このとき、上記加熱器50の下流側に設けられた温度センサ43もしくは加熱器50に内蔵された温度センサ(図示せず)により、上記加熱器50で加熱された熱媒体の温度を検知し、所定温度に達すれば加熱器50の燃焼をオフにし、所定の温度範囲より低すぎれば加熱器50の燃焼をオンにする、オンオフ制御を行う。
【0083】
そして、上記加熱器50から出た高温の熱媒体とバイパス路45を通った低温の熱媒体が混合され、その混合された熱媒体が上記熱媒体保持器60に導入されて一時的に保持される。このとき、上記熱媒体保持器60は、熱媒体の混合容器としても機能する。
【0084】
〔加熱器50への燃料供給〕
上記加熱器50は、上記タンク10のボイルオフガス(BOG)を燃料として上記熱媒体を加熱するように構成されている。
【0085】
具体的には、上記タンク10からボイルオフガスを取り出すBOG路52の下流端が、上記加熱器50の燃料路51に合流している。これにより、ボイルオフガスを燃料として上記加熱器50に供給し、熱媒体の加熱を行うようになっている。
【0086】
また、上記加熱器50は、さらに、上記気化器20での気化により生成された上記燃料ガスの一部を燃料として上記熱媒体を加熱するように構成されている。
【0087】
具体的には、上記供給路31の減圧弁32より下流から気化ガス路53が分岐し、上記気化ガス路53の下流端が、上記加熱器50の燃料路51に合流している。これにより、上記気化器20での気化により生成された上記燃料ガスの一部を燃料として上記加熱器50に供給し、熱媒体の加熱を行うようになっている。
【0088】
上記加熱器50は、上記タンク10の上部気相の圧力が所定値以上のときに、上記タンク10のボイルオフガスを燃料として上記熱媒体を加熱し、上記タンク10のボイルオフガスの圧力が所定値未満になったときに、BOG路52から燃料路51に気化ガスを送り、上記気化器20によって気化された上記燃料ガスの一部を燃料として上記熱媒体を加熱するように構成されている。
【0089】
具体的には、上記BOG路52には、一定圧以上で開弁するレリーフ弁52Aが設けられている。また、上記レリーフ弁52Aの設定圧力は、供給手段30の減圧弁32の設定圧力よりも高圧に設定される。
【0090】
この状態で、上記タンク10のボイルオフガスが所定値以上の圧力になると上記レリーフ弁52Aが開いて上記タンク10のボイルオフガスを上記加熱器50に燃料として供給する。上記タンク10のボイルオフガスが所定値以下の圧力では、上記レリーフ弁52Aが閉じる。上記レリーフ弁52Aが閉じた状態では、上記気化ガス路53を通った燃料ガスが上記加熱器50に燃料として供給される。上記レリーフ弁52Aが開いた状態では、レリーフ弁52Aの開放で出てくるボイルオフガスの圧力が、減圧弁32から出てくる燃料ガスの圧力よりも高いため、主としてボイルオフガスが上記加熱器50に供給される。
【0091】
本実施形態では、上記第1ユニット1は、上記燃料ガスの漏洩を検知するガス検知器15を備え、上記ガス検知器15が上記燃料ガスの漏洩を検知した場合に、上記第1ユニット1と上記第2ユニット2に対して供給する電源を遮断するように構成されている。符号16は、上記ガス検知器15が燃料ガスの漏洩を検知したどきに動作する電源遮断器16である。
【0092】
〔第1実施形態の効果〕
【0093】
第1実施形態の燃料ガス製造用のユニット設備は、低温液化燃料ガスを気化させて燃料ガスを製造する燃料ガス製造用のユニット設備3であり、第1ユニット1と第2ユニット2とを備えている。上記第1ユニット1は、上記低温液化燃料ガスを熱媒体との熱交換により気化させて上記燃料ガスを得るための気化器20を含む機器が搭載されている。上記第2ユニット2は、上記気化器20において上記熱交換を行うための上記熱媒体を加熱する加熱器50を含む機器が搭載されている。上記第1ユニット1と上記第2ユニット2を組み合わせ、上記ユニット設備3が構成されている。本ユニット設備3は、気化器20を有する第1ユニット1と、上記気化器20で使用する加熱器50を有する第2ユニット2とで構成されているため、本ユニット設備3を搬送可能なサイズとしても、低温液化燃料ガスのタンク10は可搬式とするかあるいは別途搬送して設置するものとなり、上記特許文献1に比べてサイズや容量の大きなものを使用することができる。また、第2ユニット2の加熱器50で加熱した熱媒体を第1ユニット1の気化器20で使用して低温液化燃料ガスを気化させるため、温水供給設備がない事業所にも適用することができる。さらに、上記第2ユニット2は、上記第2ユニット2に搭載された上記加熱器50を含む機器を、上記第1ユニット1に搭載された上記気化器20を含む機器に対して隔てるための隔壁5を有している。このため、防爆対策面への配慮が届いたものである。
【0094】
第1実施形態の燃料ガス製造用のユニット設備は、上記第2ユニット2に搭載された上記加熱器50を含む機器は非防爆性の機器であり、上記第1ユニット1に搭載された上記気化器20を含む機器は防爆性の機器である。このように、上記第1ユニット1に防爆性の機器を搭載し、上記第2ユニット2に非防爆性の機器を搭載するよう、第1ユニット1および第2ユニット2にそれぞれ搭載する機器を選定することにより、防爆対策面への配慮が届いたものとなる。
【0095】
第1実施形態の燃料ガス製造用のユニット設備は、上記第1ユニット1は、上記燃料ガスの漏洩を検知するガス検知器15を備え、上記ガス検知器15が上記燃料ガスの漏洩を検知した場合に、上記第1ユニット1と上記第2ユニット2に対して供給する電源を遮断するように構成されている。このため、万一ガス漏れが生じたときでも電源を遮断することで、引火等の事故を未然に防止できる。
【0096】
第1実施形態の燃料ガス製造用のユニット設備は、上記第1ユニット1と上記第2ユニット2を組み合わせて構成された上記ユニット設備3が可搬式である。上記ユニット設備3を搬送可能なサイズとしても、低温液化燃料ガスのタンク10は可搬式とするかあるいは別途搬送して設置するものとなり、上記特許文献1に比べてサイズや容量の大きなものを使用することができる。
【0097】
第1実施形態の燃料ガス製造用のユニット設備は、上記気化器20は、上記低温液化燃料ガスと上記熱媒体が長手方向に流通する長管型の気化器20が縦置きに配置されたものである。このようにすることにより、上記長管型の気化器20内の気相と液相が上下に分離し、熱交換による気化性能を安定化することができる。また、気化器20の設置スペースを小さくできる。
【0098】
第1実施形態の燃料ガス製造用のユニット設備は、上記長管型の気化器20は、上記低温液化燃料ガスが導入される内管21と、上記熱媒体を流通させる外管22を有した二重管式気化器である。このようにすることにより、内管21を流通する低温液化ガスの周囲に存在する外管22を熱媒体が流通し、中心部の低温液化ガスを周囲の熱媒体によって効率的に加温して気化することができる。
【0099】
第1実施形態の燃料ガス製造用のユニット設備は、上記二重管式気化器は、上記外管22に上記熱媒体を導入する導入口23が、二重管の中心軸に対してずれた状態で外管22の側面に設けられている。
上記外管22に導入された上記熱媒体が上記外管22内をらせん状に流れることになり、内管21を流通する低温液化燃料ガスに対する熱交換にむらが少なくなり、効率的な熱交換を実現できる。
【0100】
第1実施形態の燃料ガス製造用のユニット設備は、上記二重管式気化器は、上記内管21の外周面にフィン25が設けられている。このため、上記フィン25が存在することにより上記内管21の外表面積が増加し、外管22内を流通する熱媒体と低温液化燃料ガスとの熱交換が促進される。
【0101】
◆第2実施形態
図7は、本発明が適用された燃料ガス製造設備を示す第2実施形態である。
【0102】
この実施形態は、上記ユニット設備3は、上記気化器20に導入する低温液化燃料ガスが貯留されたタンク10を、上部に設置して複数階構造としうるフレーム4を有している。この例では、上記ユニット設備3が一階部分に配置され、上記タンク10が上階部分8に配置されている。
【0103】
図8は、上記第2実施形態の配管系統を説明する図である。上記第1ユニット1は、上記タンク10に対して充填する上記低温液化燃料ガスを受入れるための受入手段12が搭載されている。それ以外は、上記第1実施形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付して説明を省略している。
【0104】
第2実施形態では、上記ユニット設備3は、上記気化器20に導入する低温液化燃料ガスが貯留されたタンク10を、上部に設置して複数階構造としうるフレーム4を有している。このような燃料ガス製造用のユニット設備3では、上記第1ユニット1と第2ユニット2を一階部分とし、上階部分8に上記タンク10を配置することにより、接地面積を小さくすることができる。このため、単位設置面積あたりの燃料ガス製造量を大きくすることができる。
【0105】
また、第2実施形態では、上記第1ユニット1は、上記タンク10に対して充填する上記低温液化燃料ガスを受入れるための受入手段12が搭載されている。一階部分に存在する第1ユニット1の受入手段12において上記低温液化燃料ガスの受入れ作業を行うことにより、上階部分8にある上記タンク10に対して上記低温液化燃料ガスを充填することができる。上記タンク10が上階部分8にあっても、受け入れ作業を一階部分でできるため、作業性や作業効率が良い。
【0106】
さらに第2実施形態では、上記ユニット設備3が一階部分に配置され、上記タンク10を上階部分8に配置したため、タンク10を横置きにしたとしても、送液に必要な水頭圧を確保することが可能である。
【0107】
それ以外は、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0108】
◆第3実施形態
図9は、本発明が適用された燃料ガス製造設備を示す第3実施形態である。
【0109】
この実施形態は、上記第1ユニット1と第2ユニット2から構成されるユニット設備3の隣にタンク10が設置されている。それ以外は、上記第1実施形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付して説明を省略している。上記第3実施形態でも、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0110】
◆変形例
以上は本発明の特に好ましい実施形態について説明したが、本発明は図示した実施形態に限定する趣旨ではなく、各種の態様に変形して実施することができ、本発明は各種の変形例を包含する趣旨である。
【0111】
たとえば、上記各実施形態では二重管式の気化器20を用いたが、スパイラルコアを搭載した気化器や、ラジアルフィン構造の気化器など、各種の気化器も適用可能である。
【0112】
また、上記タンク10内の液量は、重量の計測でなく、タンク10内の上部と下部の圧力差を計測することにより液面で管理することができる。このようにすることにより、特別な知識がなくても誰でも簡単に残りの液量を確認することができる。
【0113】
本発明に係る燃料ガス製造設備を用いれば、ボイルオフガスを有効利用することができ、系外から余分なエネルギーを加えずに装置の駆動が可能である。そのため、地球温暖化ガスを削減でき、持続可能な開発目標(SDGs)の一部活動に貢献できる。
【符号の説明】
【0114】
1:第1ユニット
2:第2ユニット
3:ユニット設備
4:フレーム
5:隔壁
6:床板
7:開放部
8:上階部分
10:タンク
11:取出路
12:受入手段
15:ガス検知器
16:電源遮断器
20:気化器
21:内管
21A:内流路
22:外管
22A:外流路
23:導入口
24:導出口
25:フィン
30:供給手段
31:供給路
32:減圧弁
33:温度センサ
40:熱媒体循環路
41:循環ポンプ
42:圧力センサ
43:温度センサ
44:圧力センサ
45:バイパス路
50:加熱器
51:燃料路
52:BOG路
52A:レリーフ弁
53:気化ガス路
60:熱媒体保持器
61:取出路
62:加圧路
62A:レリーフ弁