(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027289
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/13 20060101AFI20240222BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20240222BHJP
H01L 25/00 20060101ALI20240222BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
H01L23/12 C
H01L23/12 F
H01L25/00 B
H01L21/60 311S
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129970
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】506334171
【氏名又は名称】トレックス・セミコンダクター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128532
【弁理士】
【氏名又は名称】村中 克年
(72)【発明者】
【氏名】徳田 修
(72)【発明者】
【氏名】辻村 光明
(72)【発明者】
【氏名】武内 謙一
【テーマコード(参考)】
5F044
【Fターム(参考)】
5F044KK04
5F044LL01
5F044RR18
(57)【要約】
【課題】ICチップで発生した熱の放散効率を向上させ、同時に実装基板との間の配線構造に起因する抵抗を低減する半導体装置を提供する。
【解決手段】脚部1Aと、蓋部1Bとを有し、蓋部1Bを経由して脚部1Aに至る内部に所定の配線構造が形成されたインターポーザ1と、該インターポーザ1の凹部1Cの底面に形成されたランド1Dに、チップ電極2Aを介して一方の面を固定したICチップ2と、ICチップ2の他方の面を固定する実装基板8とを有するとともに、インターポーザ1は、前記配線構造がそれぞれ形成されたセラミックス基板1A1,1A2,1B1,1B2,1B3を積層して形成し、該セラミック基板の上層と下層の前記配線構造は、さらにビアホール21A,~,22Bで連絡するとともに、いずれか一方のビアホールの径が他方のビアホールの径よりも大径となるように形成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周縁部に形成した脚部と、該脚部を覆う蓋部との内側の空間で形成した凹部を有するとともに前記蓋部を経由して前記脚部に至る内部に所定の配線構造が形成されたインターポーザと、
第1の導電接続部を介して前記インターポーザの前記凹部の底面に形成された第1のランドに、チップ電極を介して一方の面を固定することにより前記底面に臨む前記配線構造の一端との間の電気的な導通を確保したICチップと、
表面に形成した第2のランドに第2の導電接続部を介して前記脚部の端面を固定するとともに、前記端面に臨む前記配線構造の他端との電気的な導通を確保し、さらに前記表面に形成した第3のランドに第3の導電接続部を介して前記ICチップの他方の面を固定して電気的に接続した実装基板とを有する半導体装置であって、
前記インターポーザは、前記配線構造がそれぞれ形成されたセラミック基板を積層して形成し、該セラミック基板の上層と下層の前記配線構造は、ビアホールで連絡するとともに、いずれか一方のビアホールの径が他方のビアホールの径よりも大径となるように形成したものであることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載する半導体装置において、
前記底面と反対側の面である前記インターポーザの上面に配設された第4のランドと、
前記上面に対向する面である下面に配設された部品電極を備えた外付け部品とを有し、
前記部品電極を第4の導電接続部を介して前記第4のランドに固定することにより前記外付け部品を前記ICチップに対する外付け部品とすることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載する半導体装置において、
前記第1の導電接続部、第2の導電接続部および第3の導電接続部は、IMC(inter-metallic-compound)により前記第1のランド、前記第2のランドまたは前記第3のランドのいずれかにそれぞれ固定したことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項2に記載する半導体装置において、
前記第1の導電接続部、第2の導電接続部、第3の導電接続部および第4の導電接続部は、IMC(inter-metallic-compound)により前記第1のランド、前記第2のランド、前記第3のランドまたは前記第4のランドのいずれかにそれぞれ固定したことを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置に関し、特にインターポーザを有するものに適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の小型化を実現する技術としてWL CSP(Wafer level Chip Size Package)が提案されている。このCSPとは、半導体部品のパッケージ形式の一種であり、ボンディング・ワイヤーによる内部配線を行なわず、半導体の一部が露出したままの、ほぼ最小となる半導体パッケージであり、プリント基板上に単体の高集積度半導体を表面実装する際に小さな占有面積で済ませることができるという特長を有している。
【0003】
図5は従来技術に係るWL CSPの一例を示す縦断面図である。同図に示すように、当該半導体装置(WL CSP)IIIにおいてICチップ01は、その底面で外部に露出する銅配線02を介してハンダボール03により実装基板05の表面に形成されたランド04に接合されている。かくしてICチップ01と実装基板05との電気的な導通が確保される。
【0004】
従来技術に係る半導体装置においてICチップ01で発生した熱は、銅配線02、ハンダボール03、ランド04を介して実装基板05に伝達され、この実装基板05で主に周囲に放散される。このように、半導体装置では、ICチップ01で発生した熱の伝熱経路06(図中に太い矢印で示す)が、銅配線02、ハンダボール03、ランド04を経由して実装基板05に至る一本のみである。このため、熱の放散効率を向上させるには銅配線02のハンダボール03に対する接合部を増やす等、放熱面積を増やすことでしか対処できなかった。このことは、半導体装置のさらなる小型化を図る場合の障害となる。
【0005】
なお、WL CSPである半導体装置を開示する公知文献として特許文献1を、さらに特許文献1に対し、放熱効率の向上を企図したインターポーザ方式のWL CSP半導体装置を開示する公知文献として特許文献2を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-10016号公報
【特許文献2】特開2022-25294号公報
【0007】
ところで、特許文献1は、
図5に示すWL CSP半導体装置と同様の課題が残る。また、特許文献2は、インターポーザをセラミックス基板を積層して形成した場合に、インターポーザの脚部の配線構造における電気抵抗が大きくなるという問題が発生する。すなわち、前記インターポーザをセラミック基板を積層して構成し、しかも前記配線構造の少なくとも一部を上下方向に貫通するビアホールで形成した場合、上層および下層のビアホール相互の間で位置ズレを生起する場合が生じ、この場合にはインターポーザにおける電気抵抗が増大して電気的特性の劣化を生起するばかりか、ビアホールの接合部位が新たな発熱源となってしまう場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術に鑑み、ICチップで発生した熱の放散効率を向上させることができるばかりでなく、ICチップと実装基板との間の配線構造に起因する抵抗を可及的に小さくすることができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の第1の態様は、
周縁部に形成した脚部と、該脚部を覆う蓋部との内側の空間で形成した凹部を有するとともに前記蓋部を経由して前記脚部に至る内部に所定の配線構造が形成されたインターポーザと、
第1の導電接続部を介して前記インターポーザの前記凹部の底面に形成された第1のランドに、チップ電極を介して一方の面を固定することにより前記底面に臨む前記配線構造の一端との間の電気的な導通を確保したICチップと、
表面に形成した第2のランドに第2の導電接続部を介して前記脚部の端面を固定するとともに、前記端面に臨む前記配線構造の他端との電気的な導通を確保し、さらに前記表面に形成した第3のランドに第3の導電接続部を介して前記ICチップの他方の面を固定して電気的に接続した実装基板とを有する半導体装置であって、
前記インターポーザは、前記配線構造がそれぞれ形成されたセラミック基板を積層して形成し、該セラミック基板の上層と下層の前記配線構造は、ビアホールで連絡するとともに、いずれか一方のビアホールの径が他方のビアホールの径よりも大径となるように形成したものであることを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の態様は、
第1の態様に記載する半導体装置において、
前記底面と反対側の面である前記インターポーザの上面に配設された第4のランドと、
前記上面に対向する面である下面に配設された部品電極を備えた外付け部品とを有し、
前記部品電極を第4の導電接続部を介して前記第4のランドに固定することにより前記外付け部品を前記ICチップに対する外付け部品とすることを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の態様は、
第1の態様に記載する半導体装置において、
前記第1の導電接続部、第2の導電接続部および第3の導電接続部は、IMC(inter-metallic-compound)により前記第1のランド、前記第2のランドまたは前記第3のランドのいずれかにそれぞれ固定したことを特徴とする。
【0012】
本発明の第4の態様は、
第2の態様に記載する半導体装置において、
前記第1の導電接続部、第2の導電接続部、第3の導電接続部および第4の導電接続部は、IMC(inter-metallic-compound)により前記第1のランド、前記第2のランド、前記第3のランドまたは前記第4のランドのいずれかにそれぞれ固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は発熱体であるICチップをインターポーザの凹部の底面と実装基板の表面との間に挟んだサンドイッチ構造となっているので、ICチップで発生した熱が、ICチップから第1の導電接続部およびインターポーザの底面を介してインターポーザの本体に至り、その脚部および第2の導電接続部を介して実装基板に至る第1の伝熱経路と、ICチップの他方の面から直接実装基板に至る第2の伝熱経路との二つの熱経路を介して外部に放散される。この結果、当該半導体装置の小型化を阻害することなく高効率の熱放散を図ることができる。
【0014】
また、インターポーザは、配線構造がそれぞれ形成されたセラミックス基板を積層して形成し、該セラミック基板の上層と下層の前記配線構造をビアホールで連絡するとともに、いずれか一方のビアホールの径が他方のビアホールの径よりも大径となるように形成したので、ビアホールが形成された上層と下層とのセラミック基板における導電部材の接触面積を大きくすることができる。この結果、ICチップから実装基板に至る配線構造における電気抵抗を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態に係る半導体装置を示す図で、
図2~
図4のD-D‘線矢視図である。
【
図5】従来技術に係る半導体装置(WL CSP)を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の実施の形態に係る半導体装置を示す図で、
図2~
図4のD-D´線矢視図である。同図に示すように、インターポーザ1は、脚部1A、蓋部1Bおよび凹部1Cを有している。ここで、脚部1Aは当該インターポーザ1の周縁部に形成してある矩形の枠体である。蓋部1Bは脚部1Aで形成された前記枠体を覆う部材である。凹部1Cは脚部1Aと蓋部1Bとの内側に形成された空間である。
【0018】
かくしてインターポーザ1には、蓋部1Bを経由して脚部1Aに至る内部に、ICチップ2と実装基板8とを電気的に接続する所定の配線構造(それ自体は図示せず)が形成されている。脚部1Aおよび蓋部1Bは、それぞれ所定の配線構造が形成された複数枚(本形態では脚部1Aが2枚、蓋部1Bが3枚)のセラミック基板1A1,1A2,1B1,1B2,1B3を積層して形成してある。ここで、積層するセラミック基板1A1,1A2、1B1~1B3の枚数は、複数枚であれば特別な制限はない。必要に応じ、枚数を適宜決定すれば良い。
【0019】
各セラミック基板1A1,1A2,1B1,1B2,1B3には上下各層の各セラミック基板1A1~1A2、1B1~1B3の配線構造を相互に接続する所定のビアホール21A,21B,21C,22A,22Bが形成してある。なお、ビアホール21A~21C、22A~22Bの詳細な構造に関しては、
図2~
図4に基づき後に詳述する。
【0020】
ICチップ2は、例えばDC/DCコンバータの所定の回路が形成されたフェイスダウン実装チップである。このICチップ2は、インターポーザ1の凹部1Cが形成する空間に配設してある。具体的には、ICチップ2のチップ電極2Aが第1の導電接続部であるIMC(inter-metallic-compound;以下同じ)12を介してランド1Dに接続されている。かくして、凹部1Cの底面に形成されたランド1Dを介してインターポーザ1の銅配線(図示せず)にICチップ2が電気的に接続される。ここで、IMCとは、Sn-CUをベースとし、ナノマイズ法により製造した均一、均質な細粒構造をもつ接合材料をいう。IMCは、熱伝導効率にも優れた特性を有する材料である。ただ、この種の接合材料として汎用されているハンダであっても構わない。
【0021】
本形態では、IMC12で接合した後のICチップ2の上面と凹部1Cとの間の空間にはアンダーフィル(UF)材3が充填してある。UF材3は、樹脂状部材であり、これを充填することにより耐久性、耐振性の向上等を図っているが、必要に応じ充填すれば良い。
【0022】
実装基板8は、その表面に形成したランド6に、脚部1Aの下端面に形成したランド4を第2の導電接続部であるIMC13を介して固定するとともに、下端面に臨む配線構造の他端との電気的な導通を確保している。さらに実装基板8には、その中央部の表面に形成したランド7に、ICチップ2の他方の面(図では下面)に形成した放熱基板裏面メタル5を、放熱基板15を介して第3の導電接続部であるIMC14で接合してある。ここで、放熱基板15は熱伝導効率に優れるセラミック材で形成してあり、ICチップ2で発生し、IMC14を介して伝達される熱を良好に放散する。同時に、放熱基板15は放熱基板裏面メタル5とランド7間のスペーサとしても機能させてある。
【0023】
本形態では、ICチップ2に対する外付け部品としてDC/DCコンバータのコイル9を実装している。ここで、コイル9は、インターポーザ1の上面(蓋部1Bの上面)に対向する面である下面に配設された部品電極9Aを備えており、インターポーザ1の上面に配設されたランド10にIMC11を介して固定されている。
【0024】
かかる本形態においては発熱体であるICチップ2をインターポーザ1の凹部1Cの底面と実装基板8の表面との間に挟んだサンドイッチ構造となっているので、ICチップ2で発生した熱が、ICチップ2からIMC12およびインターポーザ1の底面を介してインターポーザ1の本体(蓋部1B)に至り、その脚部1Aおよびランド4,IMC13およびランド6を介して実装基板8に至る第1の伝熱経路と、ICチップ2の他方の面から放熱基板裏面メタル5,放熱基板15,IMC14およびランド7を介して直接実装基板8に至る第2の伝熱経路との二つの熱経路を介して外部に放散される。この結果、当該半導体装置の小型化を阻害することなく高効率の熱放散を図ることができる。また、本形態の場合、コイル9である外付け部品で発生した熱もコイル9の部品電極9AからIMC11およびランド10を介して第1の伝熱経路に合流する第3の伝熱路を介して容易に放散される。
【0025】
図2は
図1のA-A´線矢視図、
図3は
図1のB-B´線矢視図、
図4は
図1のC-C´線矢視図をそれぞれ示す。これらの図に示すように、セラミック基板1B1,1B2,1B3,1A1,1A2には多くのビアホール21A,21B,21C,22A,22Bが形成されている。かかるセラミック基板1B1~1B3、1A1,1A2は所定の配線構造がそれぞれ形成してあり、これらを積層して形成してある。ここで、セラミック基板1B1~1B3およびセラミック基板1A1,1A2の上層と下層の前記配線構造は、ビアホール21A~21Cおよびビアホール22A,22Bで連絡するとともに、いずれか一方のビアホール21A~21Cおよびビアホール22A,22Bの径が他方のビアホール21A~21Cおよびビアホール22A,22Bの径よりも大径となるように形成してある。
【0026】
かくして、本形態によれば、セラミック基板1B1~1B3およびセラミック基板1A1,1A2に形成された上層と下層とのビアホール21A~21Cおよびビアホール22A,22Bにおける導電部材の接触面積を大きくすることができる。この結果、ICチップ2から実装基板8に至る配線構造における電気抵抗を小さくすることができる。
【0027】
以上、実施形態とともに本発明を具体的に説明したが、本発明の範囲には、次のような変形例も含まれる。
1)上記実施形態におけるICチップ2はDC/DCコンバータに限定するものではない。一般の電子部品で代替できる。
2)外付け部品は、コイル7に限定するものではない。ICチップ2の電子部品との関係で必要になる受動素子および能動素子のいずれとも代替し得る。また、必ずしも必要ではない場合もある。
3)ビアホールは全てが実装基板8に接続されるとは限らない。電気的に浮いた状態で途中で遮断したものであっても良い。
4)電極とランドの接合はIMCに限るものではない。ハンダでも同様の機能を発揮させることができる。しかし、接合強度はIMCの方が強力であり、またIMCの方が放熱特性には優れる。
5)ICチップ2はインターポーザ1の凹部1Cが形成する空間に収まるのであれば、複数個平面的に並べて配設しても、また縦方向に複数個を積み上げて配設しても良い。
【符号の説明】
【0028】
1 インターポーザ
1A 脚部
1B 蓋部
1C 凹部
1D,5,6,7 ランド
1A1,1A2,1B1,1B2,1B3 セラミック基板
2 ICチップ
8 実装基板
9 コイル
11,12,13 IMC
21A,21B,21C,22A,22B ビアホール