(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027292
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】逐次比較型AD変換回路
(51)【国際特許分類】
H03M 1/38 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
H03M1/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129975
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】網永 博之
【テーマコード(参考)】
5J022
【Fターム(参考)】
5J022AA02
5J022AB04
5J022BA06
5J022CB01
5J022CE08
5J022CF01
5J022CF07
5J022CF08
5J022CG01
(57)【要約】
【課題】逐次比較型AD変換回路の消費電力を低減させる。
【解決手段】逐次比較型AD変換回路において、キャパシタアレイ及びスイッチアレイを有するキャパシタ型DAC(10)は、サンプリング期間にてアナログ入力信号に応じた電荷をキャパシタアレイに蓄積させ、逐次比較期間にて蓄積電荷に基づく第1比較電圧(V1)を第1比較配線(WR1)に発生させる。逐次比較期間において、制御回路(30)は第1比較電圧と第2比較電圧(V2)との比較結果信号(S
CMP)に基づきスイッチアレイの状態を制御しつつデジタル出力信号の値を決定する。第1比較配線及びグランド間にグランド短絡用スイッチ(S
G)を設ける。基準変更用キャパシタ(C
RC)の第1端は第1比較配線に接続される。基準変更用スイッチ(S
RC)は基準変更用キャパシタの第2端に対し電源電圧又はグランド電圧を選択的に与える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換するよう構成される逐次比較型AD変換回路において、
キャパシタアレイ及び前記キャパシタアレイに接続されるスイッチアレイを有し、サンプリング期間にて前記アナログ入力信号が加わる配線を前記スイッチアレイを介して前記キャパシタアレイに接続することで前記アナログ入力信号に応じた電荷を前記キャパシタアレイ中の各キャパシタに蓄積させ、前記サンプリング期間後の逐次比較期間において所定の電源電圧又はグランド電圧を前記スイッチアレイを介し前記キャパシタアレイ中の各キャパシタに供給した状態で前記キャパシタアレイの蓄積電荷に基づく第1比較電圧を第1比較配線に発生するよう構成されるキャパシタ型DACと、
前記第1比較配線と第2比較電圧が加わる第2比較配線に接続され、前記逐次比較期間において前記第1比較電圧と前記第2比較電圧を比較して比較結果信号を生成するよう構成されるコンパレータと、
前記逐次比較期間において前記比較結果信号に基づき前記スイッチアレイの状態を制御しつつ前記デジタル出力信号の値を決定するよう構成される制御回路と、
前記第1比較配線とグランドとの間に設けられるグランド短絡用スイッチと、
前記第1比較配線に接続された第1端を有する基準変更用キャパシタと、
前記基準変更用キャパシタの第2端に対し、前記電源電圧又は前記グランド電圧を選択的に与えるよう構成された基準変更用スイッチと、を備える
、逐次比較型AD変換回路。
【請求項2】
前記制御回路は、前記サンプリング期間にて前記グランド短絡用スイッチをオンにすることで前記第1比較配線に前記グランド電圧を与え、前記逐次比較期間にて前記グランド短絡用スイッチをオフとし、
前記制御回路は、前記基準変更用スイッチの制御を通じて、前記基準変更用キャパシタの第2端に対し、前記サンプリング期間にて前記グランド電圧を与え、前記逐次比較期間にて前記電源電圧を与える
、請求項1に記載の逐次比較型AD変換回路。
【請求項3】
前記基準変更用キャパシタの第2端に与えられる電圧が前記グランド電圧から前記電源電圧に切り替えられることで前記第1比較配線の電圧が所定電圧量だけ上昇し、
前記逐次比較期間において前記第2比較電圧は前記所定電圧量を電圧値として持つ
、請求項2に記載の逐次比較型AD変換回路。
【請求項4】
前記基準変更用スイッチは、前記電源電圧が加わる第1切替端子、前記グランド電圧が加わる第2切替端子及び前記基準変更用キャパシタの第2端に接続される共通端子を有し、
前記制御回路は、前記サンプリング期間から前記逐次比較期間へ遷移させる際、前記グランド短絡用スイッチをオンからオフに切り替える第1遷移切替動作と、前記基準変更用スイッチにおける前記共通端子の接続先を前記第2切替端子から前記第1切替端子に切り替える第2遷移切替動作とを同時行う、又は、前記第1遷移切替動作を行ってから前記第2遷移切替動作を行う
、請求項2に記載の逐次比較型AD変換回路。
【請求項5】
前記制御回路は、前記逐次比較期間において前記比較結果信号に基づき、バイナリサーチにより前記スイッチアレイの状態を順次切り替えながら前記デジタル出力信号の値をビットごとに決定する
、請求項1~4の何れかに記載の逐次比較型AD変換回路。
【請求項6】
前記デジタル出力信号は第1~第N番目のビットを有するNビットのデジタル信号であり、
前記キャパシタアレイは、第1~第N番目のビットに対応し、各々に第1端及び第2端を有する第1~第Nキャパシタを有し、
前記スイッチアレイは、第1~第Nキャパシタに対応する第1~第Nスイッチを有し、
前記第1比較配線は前記第1~第Nキャパシタの各第1端側に設けられ、
第iスイッチは、第1切替端子、第2切替端子、第3切替端子及び第iキャパシタの第2端に接続される共通端子を有し、
前記第1~第Nスイッチの夫々において、前記第1切替端子に前記アナログ入力信号が加わり、前記第2切替端子及び前記第3切替端子の何れか一方に前記電源電圧が加わり且つ他方に前記グランド電圧が加わり、
前記制御回路は、前記サンプリング期間において前記第1~第Nスイッチの夫々における前記共通端子に前記第1切替端子を接続させ、その後の前記逐次比較期間において、前記第1~第Nスイッチの夫々における前記共通端子に前記第2又は第3切替端子を選択的に接続させた状態での前記比較結果信号に基づき、バイナリサーチにより前記デジタル出力信号の各ビットの値を決定し、
Nは2以上の整数を表し、iはN以下の自然数を表す
、請求項5に記載の逐次比較型AD変換回路。
【請求項7】
前記第1~第Nキャパシタの第1端は全て前記第1比較配線に接続される、或いは、前記第1~第Nキャパシタの内、一部のキャパシタの第1端は前記第1比較配線に接続される一方で残りのキャパシタの第1端と前記第1比較配線との間にスケーリングキャパシタが直列に設けられる
、請求項6に記載の逐次比較型AD変換回路。
【請求項8】
第1アナログ入力信号及び第2アナログ入力信号間の差信号をデジタル出力信号に変換するよう構成される逐次比較型AD変換回路において、
第1キャパシタアレイ及び前記第1キャパシタアレイに接続される第1スイッチアレイを有し、サンプリング期間にて前記第1アナログ入力信号が加わる配線を前記第1スイッチアレイを介して前記第1キャパシタアレイに接続することで前記第1アナログ入力信号に応じた電荷を前記第1キャパシタアレイ中の各キャパシタに蓄積させ、前記サンプリング期間後の逐次比較期間において所定の電源電圧又はグランド電圧を前記第1スイッチアレイを介し前記第1キャパシタアレイ中の各キャパシタに供給した状態で前記第1キャパシタアレイの蓄積電荷に基づく第1比較電圧を第1比較配線に発生するよう構成される第1キャパシタ型DACと、
第2キャパシタアレイ及び前記第2キャパシタアレイに接続される第2スイッチアレイを有し、前記サンプリング期間にて前記第2アナログ入力信号が加わる配線を前記第2スイッチアレイを介して前記第2キャパシタアレイに接続することで前記第2アナログ入力信号に応じた電荷を前記第2キャパシタアレイ中の各キャパシタに蓄積させ、前記逐次比較期間において前記電源電圧又は前記グランド電圧を前記第2スイッチアレイを介し前記第2キャパシタアレイ中の各キャパシタに供給した状態で前記第2キャパシタアレイの蓄積電荷に基づく第2比較電圧を第2比較配線に発生するよう構成される第2キャパシタ型DACと、
前記第1比較配線及び前記第2比較配線に接続され、前記逐次比較期間において前記第1比較電圧と前記第2比較電圧を比較して比較結果信号を生成するよう構成されるコンパレータと、
前記逐次比較期間において前記比較結果信号に基づき前記第1スイッチアレイ及び前記第2スイッチアレイの各状態を制御しつつ前記デジタル出力信号の値を決定するよう構成される制御回路と、
前記第1比較配線とグランドとの間に設けられる第1グランド短絡用スイッチと、
前記第1比較配線に接続された第1端を有する第1基準変更用キャパシタと、
前記第1基準変更用キャパシタの第2端に対し、所定の電源電圧又はグランド電圧を選択的に与えるよう構成された第1基準変更用スイッチと、
前記第2比較配線とグランドとの間に設けられる第2グランド短絡用スイッチと、
前記第2比較配線に接続された第1端を有する第2基準変更用キャパシタと、
前記第2基準変更用キャパシタの第2端に対し、前記電源電圧又は前記グランド電圧を選択的に与えるよう構成された第2基準変更用スイッチと、を備える
、逐次比較型AD変換回路。
【請求項9】
前記制御回路は、前記サンプリング期間にて前記第1グランド短絡用スイッチ及び第2グランド短絡用スイッチをオンにすることで前記第1比較配線及び前記第2比較配線に前記グランド電圧を与え、前記逐次比較期間にて前記第1グランド短絡用スイッチ及び第2グランド短絡用スイッチをオフとし、
前記制御回路は、前記第1基準変更用スイッチ及び第2基準変更用スイッチの制御を通じて、前記第1基準変更用キャパシタ及び前記第2基準変更用キャパシタの各第2端に対し、前記サンプリング期間にて前記グランド電圧を与え、前記逐次比較期間にて前記電源電圧を与える
、請求項8に記載の逐次比較型AD変換回路。
【請求項10】
前記第1基準変更用キャパシタの第2端に与えられる電圧が前記グランド電圧から前記電源電圧に切り替えられることで前記第1比較配線の電圧が所定電圧量だけ上昇し、
前記第2基準変更用キャパシタの第2端に与えられる電圧が前記グランド電圧から前記電源電圧に切り替えられることで前記第2比較配線の電圧が前記所定電圧量だけ上昇する
、請求項9に記載の逐次比較型AD変換回路。
【請求項11】
前記第1基準変更用スイッチは、前記電源電圧が加わる第1切替端子、前記グランド電圧が加わる第2切替端子及び前記第1基準変更用キャパシタの第2端に接続される共通端子を有し、
前記第2基準変更用スイッチは、前記電源電圧が加わる第1切替端子、前記グランド電圧が加わる第2切替端子及び前記第2基準変更用キャパシタの第2端に接続される共通端子を有し、
前記制御回路は、前記サンプリング期間から前記逐次比較期間へ遷移させる際、前記第1及び第2グランド短絡用スイッチをオンからオフに切り替える第1遷移切替動作と、前記第1及び第2基準変更用スイッチの夫々において前記共通端子の接続先を前記第2切替端子から前記第1切替端子に切り替える第2遷移切替動作とを同時行う、又は、前記第1遷移切替動作を行ってから前記第2遷移切替動作を行う
、請求項9に記載の逐次比較型AD変換回路。
【請求項12】
前記制御回路は、前記逐次比較期間において前記比較結果信号に基づき、バイナリサーチにより前記第1及び第2スイッチアレイの状態を順次切り替えながら前記デジタル出力信号の値をビットごとに決定する
、請求項8~11の何れかに記載の逐次比較型AD変換回路。
【請求項13】
前記デジタル出力信号は第1~第N番目のビットを有するNビットのデジタル信号であり、
各キャパシタアレイは、第1~第N番目のビットに対応し、各々に第1端及び第2端を有する第1~第Nキャパシタを有し、
各スイッチアレイは、第1~第Nキャパシタに対応する第1~第Nスイッチを有し、
前記第1比較配線は前記第1キャパシタアレイにおける前記第1~第Nキャパシタの各第1端側に設けられ、
前記第2比較配線は前記第2キャパシタアレイにおける前記第1~第Nキャパシタの各第1端側に設けられ、
各スイッチアレイにおいて、第iスイッチは、第1切替端子、第2切替端子、第3切替端子及び第iキャパシタの第2端に接続される共通端子を有し、
前記第1スイッチアレイにおける前記第1~第Nスイッチの夫々において、前記第1切替端子に前記第1アナログ入力信号が加わり、前記第2切替端子及び前記第3切替端子の何れか一方に前記電源電圧が加わり且つ他方に前記グランド電圧が加わり、
前記第2スイッチアレイにおける前記第1~第Nスイッチの夫々において、前記第1切替端子に前記第2アナログ入力信号が加わり、前記第2切替端子及び前記第3切替端子の何れか一方に前記電源電圧が加わり且つ他方に前記グランド電圧が加わり、
前記制御回路は、前記サンプリング期間において各スイッチアレイの前記第1~第Nスイッチの夫々における前記共通端子に前記第1切替端子を接続させ、その後の前記逐次比較期間において、各スイッチアレイの前記第1~第Nスイッチの夫々における前記共通端子に前記第2又は第3切替端子を選択的に接続させた状態での前記比較結果信号に基づき、バイナリサーチにより前記デジタル出力信号の各ビットの値を決定し、
Nは2以上の整数を表し、iはN以下の自然数を表す
、請求項12に記載の逐次比較型AD変換回路。
【請求項14】
前記第1キャパシタアレイにおける前記第1~第Nキャパシタの第1端は全て前記第1比較配線に接続され、且つ、前記第2キャパシタアレイにおける前記第1~第Nキャパシタの第1端は全て前記第2比較配線に接続される、或いは、
前記第1キャパシタアレイにおける前記第1~第Nキャパシタの内、一部のキャパシタの第1端は前記第1比較配線に接続される一方で残りのキャパシタの第1端と前記第1比較配線との間にスケーリングキャパシタが直列に設けられ、且つ、前記第2キャパシタアレイにおける前記第1~第Nキャパシタの内、一部のキャパシタの第1端は前記第2比較配線に接続される一方で残りのキャパシタの第1端と前記第2比較配線との間に他のスケーリングキャパシタが直列に設けられる
、請求項13に記載の逐次比較型AD変換回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、逐次比較型AD変換回路に関する。
【背景技術】
【0002】
逐次比較型AD変換回路は、一般に、DAC(デジタル-アナログ変換器)、コンパレータ、及び、逐次比較を担う論理回路(制御回路)を備える。DACとしてキャパシタ型DAC(容量性DAC)が用いられることも多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャパシタ型DACを用いてアナログ入力信号をサンプリングする際、通常、基準電圧源を作動させ、基準電圧に対してアナログ入力信号のサンプリングを行う。但し、この方法では、サンプリング時に基準電圧源の電力消費が発生し、低電力化に不利である。
【0005】
本開示は、消費電力の低減に寄与する逐次比較型AD変換回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る逐次比較型AD変換回路は、アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換するよう構成される逐次比較型AD変換回路において、キャパシタアレイ及び前記キャパシタアレイに接続されるスイッチアレイを有し、サンプリング期間にて前記アナログ入力信号が加わる配線を前記スイッチアレイを介して前記キャパシタアレイに接続することで前記アナログ入力信号に応じた電荷を前記キャパシタアレイ中の各キャパシタに蓄積させ、前記サンプリング期間後の逐次比較期間において所定の電源電圧又はグランド電圧を前記スイッチアレイを介し前記キャパシタアレイ中の各キャパシタに供給した状態で前記キャパシタアレイの蓄積電荷に基づく第1比較電圧を第1比較配線に発生するよう構成されるキャパシタ型DACと、前記第1比較配線と第2比較電圧が加わる第2比較配線に接続され、前記逐次比較期間において前記第1比較電圧と前記第2比較電圧を比較して比較結果信号を生成するよう構成されるコンパレータと、前記逐次比較期間において前記比較結果信号に基づき前記スイッチアレイの状態を制御しつつ前記デジタル出力信号の値を決定するよう構成される制御回路と、前記第1比較配線とグランドとの間に設けられるグランド短絡用スイッチと、前記第1比較配線に接続された第1端を有する基準変更用キャパシタと、前記基準変更用キャパシタの第2端に対し、前記電源電圧又は前記グランド電圧を選択的に与えるよう構成された基準変更用スイッチと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、消費電力の低減に寄与する逐次比較型AD変換回路を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態に係るADコンバータの全体構成図である。
【
図2】
図2は、本開示の第1実施形態に係り、スイッチアレイにおける1つのスイッチの内部構成及び周辺回路を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の第1実施形態に係り、スイッチアレイにおける1つのスイッチの4状態を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の第1実施形態に係り、基準変更用キャパシタ及び基準変更用スイッチの拡大図である。
【
図5】
図5は、本開示の第1実施形態に係り、基準変更用スイッチの3状態を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の第1実施形態に係り、キャパシタアレイにおける複数のキャパシタの静電容量値の関係を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の第1実施形態に係り、AD変換動作のフローチャートである。
【
図8】
図8は、本開示の第1実施形態に係り、サンプリング動作が行われるときのADコンバータの状態を示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の第1実施形態に係り、状態遷移動作のフローチャートである。
【
図10】
図10は、本開示の第1実施形態に係り、状態遷移動作に関わるADコンバータの状態を示す図である。
【
図11】
図11は、本開示の第1実施形態に係り、電圧生成回路の構成例を示す図である。
【
図13】
図13は、本開示の第1実施形態に係り、電圧生成回路の他の構成例を示す図である。
【
図14】
図14は、本開示の第1実施形態に係り、逐次比較動作のフローチャートである。
【
図15】
図15は、本開示の第1実施形態に係り、制御回路内のレジスタの構成図である。
【
図16】
図16は、本開示の第1実施形態に係り、逐次比較動作が行われるときのADコンバータの状態を示す図である。
【
図17】
図17は、参考ADコンバータのサンプリング動作の説明図である。
【
図18】
図18は、参考ADコンバータの逐次比較動作の説明図である。
【
図19】
図19は、本開示の第2実施形態に係り、1つのスケーリングキャパシタを有するDACの構成図である。
【
図20】
図20は、
図19のキャパシタアレイにおける複数のキャパシタの静電容量値の関係を示す図である。
【
図21】
図21は、本開示の第2実施形態に係り、2つのスケーリングキャパシタを有するDACの構成図である。
【
図22】
図22は、
図21のキャパシタアレイにおける複数のキャパシタの静電容量値の関係を示す図である。
【
図23】
図23は、本開示の第3実施形態に係るADコンバータの全体構成図である。
【
図24】
図24は、本開示の第3実施形態に係り、サンプリング動作が行われるときのADコンバータの状態を示す図である。
【
図25】
図25は、本開示の第3実施形態に係り、状態遷移動作に関わるADコンバータの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“WR1”によって参照される比較配線は(
図1参照)、比較配線WR1と表記されることもあるし、配線WR1と略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。本明細書において、任意の回路素子、配線、ノードなど、回路を形成する複数の部位間についての接続とは、特に記述なき限り、電気的な接続を指すと解して良い。
【0010】
<<第1実施形態>>
本開示の第1実施形態を説明する。
図1に第1実施形態に係るADコンバータ1の全体構成図を示す。ADコンバータ1は逐次比較型A/D変換回路である。ADコンバータ1に対してアナログ入力信号Ainが入力される。ADコンバータ1はアナログ入力信号Ainに対するAD変換動作を行う。アナログ入力信号Ainに対するAD変換動作では、アナログ入力信号Ainをバイナリサーチによってデジタル信号に変換し、得られたデジタル信号をデジタル出力信号Doutとして出力する。
【0011】
デジタル出力信号DoutはNビットのデジタル信号である。即ち、デジタル出力信号Doutは、第1番目のビットから第N番目のビットまでの計Nビットを有する。Nは2以上の任意の整数であり、例えば、8、10、12、14又は16である。ここで、第i番目のビットから見て第(i+1)番目のビットが上位側のビットであるとする。故に、第1番目~第N番目のビットの内、第1番目のビットが最下位ビットであり、第N番目のビットが最上位ビットである。iは任意の整数を表し、N以下の自然数を表すと解して良い。
【0012】
ADコンバータ1は、DAC10、コンパレータ20、制御回路30及び電圧生成回路40を備えると共に、スイッチSG、スイッチSRC及びキャパシタCRCを備える。配線WR_Ainはアナログ入力信号Ainが加わるアナログ入力配線である。配線WR_VDDは所定の電源電圧VDDが加わる電源配線である。配線WR_GNDはグランドに接続される。グランドとは、基準となる0V(ゼロボルト)の電位を有する基準導電部を指す又は0Vの電位そのものを指す。基準導電部は金属等の導体を用いて形成されて良い。配線WR_GNDはグランド電圧が加わるグランド配線である。配線WR_GNDそのものがグランドであると解しても良い。グランド電圧はグランドの電位を有し、故に0Vである。電源電圧VDDは正の直流電圧値(例えば5V)を有する。アナログ入力信号Ainは0V以上且つ電源電圧VDD以下の電圧値を有する。
【0013】
DAC10はキャパシタ型DAC(キャパシタ型デジタル-アナログ変換器)である。キャパシタ型DACは一般に容量性DACとも称される。DAC10はキャパシタアレイ11及びスイッチアレイ12を備える。キャパシタアレイ11はキャパシタC[1]~C[N]を備え、スイッチアレイ12はスイッチS[1]~S[N]を備える。
【0014】
キャパシタC[1]~C[N]は各々に第1端及び第2端を備え、第1端及び第2端間に電荷を蓄積する。
図1の構成では、キャパシタC[1]~C[N]の第1端は全て比較配線WR1に接続される。キャパシタC[1]~C[N]に対応して、夫々、スイッチS[1]~S[N]が設けられる。即ちキャパシタC[i]に対応してスイッチS[i]が設けられる。また、キャパシタC[i]はデジタル出力信号Doutにおける第i番目のビットに対応する。キャパシタC[1]~C[N]の第2端に対し、スイッチS[1]~C[N]を介して、アナログ入力信号Ain、電源電圧VDD又はグランド電圧が印加され得る。比較配線WR1に加わる電圧を比較電圧V1と称する。
【0015】
図2にキャパシタC[i]とスイッチS[i]と配線WR_Ain、WR_VDD及びWR_GNDとの接続関係を示す。スイッチS[1]~S[N]は各々に共通端子T
COM及び切替端子Ta、Tb及びTcを備える。スイッチS[1]~S[N]の共通端子T
COMは、夫々、キャパシタC[1]~C[N]の第2端に接続される。即ち例えば、スイッチS[1]の共通端子T
COMはキャパシタC[1]の第2端に接続され、スイッチS[2]の共通端子T
COMはキャパシタC[2]の第2端に接続される。スイッチS[3]等も同様である。スイッチS[1]~S[N]の各切替端子Taは配線WR_Ainに接続されてアナログ入力信号Ainを受ける。スイッチS[1]~S[N]の各切替端子Tbは配線WR_VDDに接続されて電源電圧VDDを受ける。スイッチS[1]~S[N]の各切替端子Tcは配線WR_GNDに接続されてグランド電圧を受ける。
【0016】
制御回路30の制御の下、スイッチS[1]~S[N]の夫々において、共通端子TCOMが切替端子Ta、Tb及びTcの何れか1つに選択的に接続される。但し、スイッチS[i]において共通端子TCOMが切替端子Ta、Tb及びTcの何れとも接続されないことがあっても良い。
【0017】
図3を参照し、以下では、任意のスイッチS[i]において、共通端子T
COMが切替端子Ta、Tb、Tcに接続される状態を、夫々、信号入力状態、電源接続状態、グランド接続状態と称し、共通端子T
COMが切替端子Ta、Tb及びTcの何れとも接続されない状態を開放状態と称する。スイッチS[i]の信号入力状態、電源接続状態、グランド状態では、夫々、アナログ入力信号Ain、電源電圧VDD、グランド電圧がキャパシタC[i]の第2端に加わる。尚、
図1では例として、スイッチS[1]~S[N]が全て信号入力状態とされる様子が示されている。
【0018】
スイッチS
Gはグランド短絡用スイッチであり、比較配線WR1及びグランド間に直列に設けられる。即ち、スイッチS
Gの第1端は比較配線WR1に接続され、スイッチS
Gの第2端はグランドに接続される(換言すれば配線WR_GNDに接続される)。制御回路30によりスイッチS
Gはオン状態又はオフ状態に制御される。オン状態、オフ状態は、以下、夫々、単にオン、オフと表現され得る。スイッチS
Gがオンであるとき、スイッチS
Gの第1端及び第2端間が導通し、比較配線WR1の電圧(即ち比較電圧V1)は0Vに固定される。スイッチS
Gがオフであるとき、スイッチS
Gの第1端及び第2端間は遮断され(非導通となり)、スイッチS
Gは比較電圧V1に影響を与えない。尚、
図1では例として、スイッチS
Gがオフとされる様子が示されている。
【0019】
キャパシタCRCは基準変更用キャパシタであり、スイッチSRCは基準変更用スイッチである。キャパシタCRC及びスイッチSRCにて基準変更回路が構成される。詳細は後述の説明から明らかとなるが、アナログ入力信号Ainのサンプリングの後、基準変更回路により比較電圧V1の基準となる電圧が高レベル側に変更(シフト)される。
【0020】
図4に示す如く、スイッチS
RCは切替端子T
1及びT
2並びに共通端子T
3を備える。キャパシタC
RCの第1端は比較配線WR1に接続される。キャパシタC
RCの第2端はスイッチS
RCの共通端子T
3は接続される。スイッチS
RCの切替端子T
1は配線WR_VDDに接続されて電源電圧VDDを受ける。スイッチS
RCの切替端子T
2は配線WR_GNDに接続されてグランド電圧を受ける。
【0021】
制御回路30の制御の下、スイッチSRCにおける共通端子T3が切替端子T1又はT2に選択的に接続される。但し、スイッチSRCにおいて共通端子T3が切替端子T1及びT2の何れとも接続されないことがあっても良い。
【0022】
図5を参照し、以下では、スイッチS
RCにおいて、共通端子T
3が切替端子T
1、T
2に接続される状態を、夫々、電源接続状態、グランド接続状態と称し、共通端子T
3が切替端子T
1及びT
2の何れとも接続されない状態を開放状態と称する。スイッチS
RCの電源接続状態、グランド状態では、夫々、電源電圧VDD、グランド電圧がキャパシタC
RCの第2端に加わる。尚、
図1では例として、スイッチS
RCがグランド接続状態とされる様子が示されている。
【0023】
スイッチS[1]~[N]、SG及びSRCの夫々を、MOSFET等の任意のスイッチング素子にて構成できる。MOSFETは“metal-oxide-semiconductor field-effect transistor”の略称である。スイッチS[1]~[N]及びSRCはマルチプレクサであって良い。尚、任意のスイッチに関し、制御回路30が当該スイッチを或る注目した状態に制御するとは、制御回路30が当該スイッチの状態を当該注目した状態に設定することと同義である。
【0024】
コンパレータ20は比較配線WR1及びWR2に接続される。上述したように比較配線WR1には比較電圧V1が加わる。一方、比較配線WR2には比較電圧V2が加わる。コンパレータ20は比較電圧V1及びV2を比較し、比較電圧V1及びV2の比較結果(高低関係)を示す比較結果信号SCMPを生成及び出力する。比較結果信号SCMPは“0”又は“1”の値を有する二値化信号である。コンパレータ20は非反転入力端子、反転入力端子及び出力端子を有し、ここでは、反転入力端子が比較配線WR1に接続され且つ非反転入力端子が比較配線WR2に接続されるものとする。
【0025】
コンパレータ20は、“V1<V2”の成立時において“1”の値を有する比較結果信号SCMPを自身の出力端子から出力し、“V1>V2”の成立時において“0”の値を有する比較結果信号SCMPを自身の出力端子から出力する。“V1=V2”の成立時において比較結果信号SCMPは“0”又は“1”の値を有する。“V1>V2”は比較電圧V1が比較電圧V2よりも高いことを表し、“V1<V2”は比較電圧V1が比較電圧V2よりも低いことを表す。電圧等の物理量を含む他の式についても同様である。
【0026】
制御回路30は比較結果信号SCMPを受ける。制御回路30はAD変換動作を全体的に制御し、AD変換動作によって得られたデジタル出力信号Doutを出力する。制御回路30にはレジスタ31が設けられ、レジスタ31にデジタル出力信号Doutの値を格納することができる。制御回路30はDAC10に対して制御信号CNTDAC(DAC入力信号)を供給することで、スイッチS[1]~S[N]の状態を個別に制御する。制御回路30はスイッチSGに対して制御信号CNTGを供給し且つスイッチSRCに対して制御信号CNTRCを供給することで、スイッチSG及びSRCの状態を個別に制御する。
【0027】
電圧生成回路40は比較電圧V1と対比されるべき比較電圧V2を生成し、生成した比較電圧V2を比較配線WR2に供給する。比較電圧V2を基準電圧と称することもでき、この場合、電圧生成回路40を基準電圧生成回路と称することもできる。
【0028】
図1のDAC10において、任意の整数iに関し、キャパシタC[i+1]の静電容量値はキャパシタC[i]の静電容量値よりも大きい。ここでは、
図6に示す如く、DAC10内のキャパシタC[i]は“2
i-1・C
UNT”の静電容量値を有するものとする。故に、
図1のDAC10において、任意の整数iに関し、キャパシタC[i+1]の静電容量値はキャパシタC[i]の静電容量値の2倍である。C
UNTは所定の単位容量値を表す。
【0029】
図7にAD変換動作のフローチャートを示す。AD変換動作では、まずステップS1のサンプリング動作が行われ、次いで、ステップS2の状態遷移動作を経てからステップS3の逐次比較動作が行われ、最後にステップS4の結果出力動作が行われる。以下、サンプリング動作が行われる期間をサンプリング期間と称し、逐次比較動作が行われる期間を逐次比較期間と称する。
【0030】
図8はサンプリング期間におけるADコンバータ1の状態を示す。サンプリング期間は所定時間長さを有する。サンプリング期間において、制御回路30は、DAC10内の全スイッチS[1]~S[N]を信号入力状態に制御し、且つ、スイッチS
Gをオンに制御し、且つ、スイッチS
RCをグランド接続状態に制御する。
【0031】
サンプリング期間において、配線WR_Ainがスイッチアレイ12を介してキャパシタアレイ11に接続されることで、アナログ入力信号Ainに応じた電荷がキャパシタアレイ11中の各キャパシタ(C[1]~C[N])に蓄積される。サンプリング期間において、比較配線WR1はスイッチSGを介してグランドに接続されるため、キャパシタアレイ11中の各キャパシタ(C[1]~C[N])はグランド電圧を基準にしてアナログ入力信号Ainにより充電される。一方、サンプリング期間においてスイッチSRCはグランド接続状態とされるため、キャパシタCRCの両端間電圧は0Vである。尚、サンプリング期間においてコンパレータ20及び電圧生成回路40の動作は停止していて良い。
【0032】
ステップS2における状態遷移動作の流れの一例を
図9に示す。
図9の例では、状態遷移動作において、ステップS21、S22、S23、S24の動作が、この順番で実行される。ステップS21、S22、S23、S24の動作を、夫々、接続解消動作、第1遷移切替動作、第2遷移切替動作、逐次比較準備動作と称する。
【0033】
ステップS21の接続解消動作では、DAC10のスイッチS[1]~S[N]の状態が全て信号入力状態から開放状態に切り替えられる。ステップS22の第1遷移切替動作では、スイッチSGの状態がオンからオフに切り替えられる。ステップS22の後、ステップS3の逐次比較動作が完了するまでスイッチSGはオフ状態に維持される。ステップS23の第2遷移切替動作では、スイッチSRCの状態がグランド接続状態から電源接続状態に切り替えられる。ステップS23の後、ステップS3の逐次比較動作が完了するまでスイッチSRCは電源接続状態に維持される。ステップS24の逐次比較準備動作では、DAC10のスイッチS[1]~S[N]の状態が電源接続状態又はグランド接続状態に切り替えられる。
【0034】
図10に、ステップS21~S24の動作を経た後のADコンバータ1の状態を示す。
図10の例では、ステップS24にてDAC10のスイッチS[1]~S[N]の状態が全てグランド接続状態に切り替えられることが想定されている。
【0035】
状態遷移動作においてスイッチS[1]~S[N]、SG及びSRCの各状態の遷移タイミングは、様々に変更可能である。
即ち例えば、状態遷移動作において、ステップS21、S22及びS23の動作を同時に行い、その後にステップS24の動作を行っても良い。
或いは、状態遷移動作において、ステップS21及びS22の動作を同時に行ってから、ステップS23の動作を行い、その後にステップS24の動作を行っても良い。或いは、ステップS21及びS22の動作を同時に行ってから、ステップS23及びステップS24の動作を同時に行っても良い。
或いは、状態遷移動作において、ステップS21の動作を行ってから、ステップS22及びS23の動作を同時に行い、その後にステップS24の動作を行っても良い。或いは、ステップS21の動作を行ってからステップS22の動作を行い、その後にステップS23及びS24の動作を同時に行っても良い。或いは、状態遷移動作において、ステップS21の動作を行ってから、ステップS22、S23及びS24の動作を同時に行っても良い。
【0036】
ステップS24において、スイッチS[1]~S[N]は全てグランド接続状態されるか或いは全て電源接続状態とされ得る。或いは、ステップS24において、スイッチS[1]~S[N]の状態は、ステップS3の逐次比較動作でのスイッチS[1]~S[N]の初期状態(後述の“j=N”におけるステップS32の状態:
図14参照)に設定されて良い。ステップS24の動作は省略され得る。
【0037】
スイッチS[1]~S[N]のグランド接続状態において、スイッチSGがオフとされた上でスイッチSRCの状態がグランド接続状態から電源接続状態に切り替えられると、比較配線WR1における比較電圧V1が所定の電圧量V1SFTだけ上昇する。
【0038】
電圧量V1SFTは、DAC10におけるキャパシタC[1]~C[N]の合成容量の値(即ちキャパシタC[1]~C[N]の並列接続回路が有する静電容量値)と、キャパシタCRCの静電容量値と、電源電圧VDDの値と、に依存して定まる。キャパシタC[1]~C[N]の各静電容量値及び電源電圧VDDの値が固定されているとすれば、キャパシタCRCの静電容量値の調整により電圧量V1SFTを任意に調整できる。後述の逐次比較動作においてスイッチS[1]~S[N]の各状態に応じて比較電圧V1は変動し、スイッチS[1]~S[N]が全てグランド接続状態であるときに比較電圧V1は最も低くなる。また、逐次比較動作における比較電圧V1はサンプリング期間中のアナログ入力信号Ainにも依存する。アナログ入力信号Ainの変動範囲を考慮しつつ、逐次比較動作においてスイッチS[1]~S[N]が全てグランド接続状態であるときにも比較電圧V1が常に0V以上となるよう、上述の電圧量V1SFTが決定される(換言すればキャパシタCRCの静電容量値が決定される)。このため、コンパレータ20に負電源は必要ない。即ち、コンパレータ20はグランド電圧を電源電圧VDD(又は他の正の直流電圧)に基づき駆動する。
【0039】
電圧生成回路40が生成する比較電圧V2は上記電圧量V1SHTを電圧値として持つ(即ち、“V2=V1SHT”である)。但し、サンプリング期間における比較電圧V2は任意で良い。少なくとも逐次比較期間において電圧量V1SHT分の電圧値を有する比較電圧V2が電圧比較回路40にて生成され且つ比較配線WR2に加われば良い。
【0040】
図11の電圧生成回路40aは電圧生成回路40の一例である。電圧生成回路40aは、キャパシタC
REF及びC
RC’とスイッチS
G’及びS
RC’を備える。スイッチS
G’はスイッチS
Gと同一の構造を有し、スイッチS
RC’はスイッチS
RCと同一の構造を有する。スイッチS
G’の第1端、キャパシタC
REFの第1端及びキャパシタC
RC’の第1端は配線WR2に接続される。スイッチS
G’の第2端及びキャパシタC
REFの第2端はグランドに接続される。キャパシタC
RC’の第2端はスイッチS
RC’の共通端子T
3に接続される。スイッチS
RC’の切替端子T
1は配線WR_VDDに接続されて電源電圧VDDを受ける。スイッチS
RC’の切替端子T
2は配線WR_GNDに接続されてグランド電圧を受ける。制御回路30はスイッチS
Gと同様にスイッチS
G’のオン、オフを制御する。制御回路30の制御の下、スイッチS
RC’にて共通端子T
3が切替端子T
1又はT
2に選択的に接続される。但し、スイッチS
RC’において共通端子T
3が切替端子T
1及びT
2の何れとも接続されないことがあっても良い。
【0041】
電圧生成回路40aが電圧生成回路40として用いられる場合、
図12に示す如く、サンプリング期間において、スイッチS
G’がオンに制御され且つスイッチS
RC’の共通端子T
3が切替端子T
2に接続されることでキャパシタC
RC’の第2端にグランド電圧が印加される。その後、逐次比較期間において、スイッチS
G’がオフに制御され且つスイッチS
RC’の共通端子T
3が切替端子T
1に接続されることでキャパシタC
RC’の第2端に電源電圧VDDが印加される。
【0042】
ここで、式“CTOTAL:CRC=CREF:CRC’”が成立する。この式において、CTOTALは、DAC10におけるキャパシタC[1]~C[N]の合成容量の値(即ちキャパシタC[1]~C[N]の並列接続回路が有する静電容量値)を表し、CRC、CREF、、CRC’は、夫々、キャパシタCRC、CREF、、CRC’の静電容量値を表す。上記式が成立するよう各キャパシタが構成されることで、逐次比較期間中における比較電圧V2の値は上記の電圧量V1SHTと一致する。
【0043】
或いは、
図13の電圧生成回路40bを電圧生成回路40として用いても良い。電圧生成回路40bは分圧抵抗R1及びR2を有する。電圧生成回路40bにおいて、分圧抵抗R1の第1端に電源電圧VDDが印加され、分圧抵抗R1の第2端及び分圧抵抗R2の第1端は比較配線WR2に接続される。分圧抵抗R2の第2端はグランドに接続される。電圧生成回路40bが電圧生成回路40として用いられる場合、電源電圧VDDが分圧抵抗R1及びR2にて分圧されること比較配線WR2に比較電圧V2が生じる。この際、“V2=V1
SHT”が成立するよう、分圧抵抗R1及びR2の抵抗値比が設定される。
【0044】
図14にステップS3の逐次比較動作のフローチャートを示す。上述の説明から理解されるよう、逐次比較動作が行われる逐次比較期間においてスイッチS
Gはオフ状態に維持され且つスイッチS
RCは電源接続状態に維持される。
図15にレジスタ31(
図1参照)の構造を示す。レジスタ31はNビット分の記憶容量を有し、値Rg[1]~Rg[N]を格納する。値Rg[1]~Rg[N]は夫々に“0”又は“1”である。任意の整数iに関し、値Rg[i+1]は値Rg[i]の上位側ビットの値である。逐次比較動作において値Rg[1]~Rg[N]が上位ビット側から1ビットずつ決定され、決定された値Rg[i]がデジタル出力信号Doutにおける第i番目のビットの値となる。
【0045】
逐次比較期間においてスイッチS[1]~S[N]が個別に電源接続状態又はグランド接続状態に設定される。サンプリング期間中にキャパシタアレイ11に蓄積された電荷が逐次比較期間中にキャパシタC[1]~C[N]及びCRCに分配される。分配の状態は逐次比較期間中のスイッチS[1]~S[N]の状態に依存し、故に逐次比較期間中のスイッチS[1]~S[N]の状態に依存して比較電圧V1が変化する。制御回路30は、逐次比較動作において(換言すれば逐次比較期間において)、比較結果信号SCMPに基づきバイナリサーチによりスイッチアレイ12の状態を順次切り替えながら値Rg[1]~Rg[N](即ちデジタル出力信号Doutの値)をビットごとに決定する。
【0046】
図14の逐次比較動作では、まずステップS31にて、制御回路30にて管理される変数jに対しNの値が代入される。その後、ステップS32に進む。ステップS32において、制御回路30はスイッチS[j]を電源接続状態に制御し且つスイッチS[1]~S[j-1]を全てグランド接続状態に制御する。但し、“j=1”の状態でステップS32の処理が実行される場合にあっては、スイッチS[1]~S[j-1]は存在しないので、ステップS32にて単にスイッチS[1]が電源接続状態に制御される。例として
図16に、“j=N”であるときにおけるステップS32での各スイッチの状態を示す。
【0047】
ステップS32に続くステップS33において、制御回路30は、現時点の比較結果信号SCMPの値を取得する(即ち直近のステップS32の状態にてコンパレータ20から出力される比較結果信号SCMPの値を取得する)。取得した値が“1”であれば(ステップS33のY)ステップS34に進んで制御回路30はステップS34及びS35の処理を行う一方、取得した値が“0”であれば(ステップS33のN)ステップS36に進んで制御回路30はステップS36及びS37の処理を行う。
【0048】
ステップS34において制御回路30は値Rg[j]を“1”に決定する。続くステップS35において制御回路30はスイッチS[j]を電源接続状態で維持する。以後、
図14の逐次比較動作が終了するまでスイッチS[j]は電源接続状態で維持される。ステップS35の後、ステップS38に進む。ステップS35では実質的に何も実行されないので、ステップS35は省略されても良い。
【0049】
ステップS36において制御回路30は値Rg[j]を“0”に決定する。続くステップS37において制御回路30はスイッチS[j]の状態を電源接続状態からグランド接続状態に切り替える。以後、
図14の逐次比較動作が終了するまでスイッチS[j]はグランド接続状態で維持される。ステップS37の後、ステップS38に進む。
【0050】
ステップS38において制御回路30は変数jが1であるかを確認する。変数jが1でない場合には(ステップS38のN)、ステップS39に進み、変数jより1を減算してからステップS32に戻ってステップS32及びそれ以降の処理を繰り返す。例えば、2回目のステップS32の処理では、スイッチS[N-1]が電源接続状態に設定され且つスイッチS[1]~S[N-1]がグランド接続状態に設定されることになる。この際、1回目のステップS33にて“SCMP=1”であったならば2回目のステップS32にてスイッチS[N]は電源接続状態とされ、1回目のステップS33にて“SCMP=0”であったならば2回目のステップS32にてスイッチS[N]はグランド接続状態とされる。
【0051】
ステップS32~S37から成る処理を単位比較動作と称する。そうすると、逐次比較動作は第1~第N単位比較動作を含む。“j=N”のときに実行される単位比較動作が第N単位比較動作であり、“j=N-1”のときに実行される単位比較動作が第(N-1)単位比較動作であり、・・・、“j=1”のときに実行される単位比較動作が第1単位比較動作である。第j単位比較動作において値Rg[j]が決定される、即ちデジタル出力信号Doutの第j番目のビットの値が決定される。
【0052】
ステップS38において“j=1”である場合(ステップS38のY)、
図14の逐次比較動作を終了する。この段階では、値Rg[1]~Rg[N]が全て決定済みである。
【0053】
ステップS4(
図7参照)の結果出力動作において、制御回路30は、ステップS3の逐次比較動作にて決定された値Rg[1]~Rg[N]を有するデジタル信号をデジタル出力信号Doutとして出力する。デジタル出力信号Doutを利用する任意の回路(不図示)に対してデジタル出力信号Doutが出力される。
【0054】
ここで、
図17に参考ADコンバータ901の構成を示す。参考ADコンバータ901は、キャパシタアレイ911及びスイッチアレイ912を有するDAC910と、コンパレータ920と、制御回路930と、電圧生成回路940と、基準電圧源950と、スイッチ960と、を有する。キャパシタアレイ911中のキャパシタの各第1端は配線WR1’に共通接続される。配線WR1’に比較電圧V1’が加わる。コンパレータ920の反転入力端子に配線WR1’が接続される。電圧生成回路940はコンパレータ920の非反転入力端子に比較電圧V2’を供給する。基準電圧源950は配線WR1’に対しスイッチ960を介して接続され、スイッチ960がオンのときに配線WR1’に対して正の基準電圧V
REFを供給する。
【0055】
参考ADコンバータ901では、サンプリング動作において、
図17に示す如くアナログ入力信号Ainが加わる配線をスイッチアレイ912を介してキャパシタアレイ911の各キャパシタの第2端に接続することでアナログ入力信号Ainに応じた電荷をキャパシタアレイ911の各キャパシタに蓄積させる。この際、スイッチ960がオンとされるため、キャパシタアレイ911中の各キャパシタは基準電圧V
REFを基準にしてアナログ入力信号Ainにより充電される。その後、逐次比較動作では、スイッチ960をオフに維持した状態で、スイッチアレイ912を用いてキャパシタアレイ911中の各キャパシタの第2端に対し電源電圧VDD’又はグランド電圧を供給する(
図18参照)。逐次比較動作において、制御回路930はコンパレータ920による電圧V1’及びV2’の比較結果に基づきスイッチアレイ912の状態を順次切り替えながらバイナリサーチによりアナログ入力信号Ain’をデジタル信号に変換する。
【0056】
参考ADコンバータ901ではサンプリング動作が行われるときに基準電圧源950を作動させ続ける必要があり、その分、消費電力が増える。参考ADコンバータ901から基準電圧源950を削除し、0Vを基準電圧VREFとして用いる方法もあるが、この方法では、逐次比較動作にて比較電圧V1’の極性が負となるため、コンパレータ920に負電源(負の電源電圧)が必要となる。負電源が必須であるとき、負電源を生成する回路が必要になるなど回路構成が複雑化する。このため負電源は不要とされることが望ましい。
【0057】
これに対し、
図1のADコンバータ1では、グランドに対してアナログ入力信号Ainをサンプリングした後に基準電圧V
REFに相当する分だけ比較電圧V1を上昇させることができる。詳細には、ADコンバータ1では、サンプリング期間にてグランド電圧を基準にアナログ入力信号Ainに応じた電荷をキャパシタアレイ11の各キャパシタに蓄積させる。その後、基準変更回路(キャパシタC
RC及びスイッチS
RC)を用い、比較電圧V1を必要な分だけ上昇させた状態で、逐次比較動作を行う。これにより、
図1のADコンバータ1では基準電圧源950に相当する回路が不要であり、参考ADコンバータ901と比べてサンプリング期間での消費電力を低減できる。
【0058】
<<第2実施形態>>
本開示の第2実施形態を説明する。第2実施形態並びに後述の第3及び第4実施形態は第1実施形態を基礎とする実施形態であり、第2~第4実施形態において特に述べない事項に関しては、矛盾の無い限り、第1実施形態の記載が第2~第4実施形態にも適用される。但し、第2実施形態の記載を解釈するにあたり、第1及び第2実施形態間で矛盾する事項については第2実施形態の記載が優先されて良い(後述の第3及び第4実施形態についても同様)。矛盾の無い限り、第1~第4実施形態の内、任意の複数の実施形態を組み合わせても良い。
【0059】
第1実施形態におけるDAC10に1以上のスケーリングキャパシタが設けられていて良い。スケーリングキャパシタを用いることにより、キャパシタアレイにおいて、最大の静電容量値を有するキャパシタと最小の静電容量値を有するキャパシタとの間における容量比を低く抑えることができ、実用性が高まる。
【0060】
図19に示すDAC10_1は、スケーリングキャパシタCsを追加する変形が施されたDAC10である。即ち、第1実施形態に係るDAC10に対してスケーリングキャパシタCsを追加することでDAC10_1が得られる。DAC10_1は、スケーリングキャパシタCsを有し、且つ、キャパシタアレイ11_1及びスイッチアレイ12_1を有する。DAC10_1において、N及びMは“N>M≧1”を満たす整数であり、典型的には例えば“M≧2”且つ“N≧M+2”が満たされる。
【0061】
キャパシタアレイ11_1は第1実施形態のキャパシタアレイ11と同様にキャパシタC[1]~C[N]を備える。スイッチアレイ12_1は第1実施形態のスイッチアレイ12と同様にスイッチS[1]~S[N]を備える。キャパシタアレイ11_1は、以下の相違点DP2A及びDP2Bを除き、第1実施形態のキャパシタアレイ11と同様である。
【0062】
相違点DP
2Aとして、DAC10_1において、キャパシタC[1]~C[N]の内、キャパシタC[1]~C[M]の各第1端は配線WR1ではなく配線WR_sに接続される。キャパシタC[M+1]~C[N]の各第1端が配線WR1に接続される点は第1実施形態と同様である。また、キャパシタC[1]~C[M]の第2端が夫々スイッチS[1]~S[M]の共通端子T
COMに接続され、キャパシタC[M+1]~C[N]の第2端が夫々スイッチS[M+1]~S[N]の共通端子T
COMに接続される点も第1実施形態と同様である(
図2参照)。
【0063】
DAC10_1において、スケーリングキャパシタCsは配線WR1及びWR_s間に直列に挿入される。即ち、DAC10_1において、スケーリングキャパシタCsの第1端は配線WR1に接続され、スケーリングキャパシタCsの第2端は配線WR_sに接続される。
【0064】
相違点DP
2Bとして、キャパシタC[1]~C[N]が有する静電容量値は、DAC10_1と第1実施形態のDAC10とで異なる。
図20を参照する。DAC10_1において、“1≦i≦M”を満たす整数iに関し、キャパシタC[i]は“2
i-1・C
UNT”の静電容量値を有する。DAC10_1において、“M+1≦i≦N”を満たす整数iに関し、キャパシタC[i]は“2
i-M-1・C
UNT”の静電容量値を有する。
【0065】
DAC10_1において、キャパシタC[1]~C[M]及びスケーリングキャパシタCsの合成容量の値(即ちキャパシタC[1]~C[M]の並列接続回路とスケーリングキャパシタCsとが直列接続されることで形成される回路の静電容量値)は、単位容量値CUNTに等しい。
【0066】
キャパシタアレイ11_1に関する相違点DP2A及びDP2Bを除き、DAC10に代えてADコンバータ1にDAC10_1が用いられるときの構成及び動作は、第1実施形態と同様である。
【0067】
DAC10に対するスケーリングキャパシタCsの追加数(直列段数)は1以上であれば任意である。例として、
図21に2つのスケーリングキャパシタCsが追加されたDAC10としてDAC10_2を示す。DAC10_2において2つのスケーリングキャパシタCsをスケーリングキャパシタCs1及びCs2と称する。第1実施形態に係るDAC10に対してスケーリングキャパシタCs1及びCs2を追加することでDAC10_2が得られる。DAC10_2は、スケーリングキャパシタCs1及びCs2を有し、且つ、キャパシタアレイ11_2及びスイッチアレイ12_2を有する。DAC10_2において、N、M及びLは“N>L+M”、“L≧1”且つ“M≧1”を満たす整数であり、典型的には例えば“L≧2”、“M≧2”且つ“N≧L+M+2”が満たされる。
【0068】
キャパシタアレイ11_2は第1実施形態のキャパシタアレイ11と同様にキャパシタC[1]~C[N]を備える。スイッチアレイ12_2は第1実施形態のスイッチアレイ12と同様にスイッチS[1]~S[N]を備える。キャパシタアレイ11_2は、以下の相違点DP2C及びDP2Dを除き、第1実施形態のキャパシタアレイ11と同様である。
【0069】
相違点DP
2Cとして、DAC10_2において、キャパシタC[1]~C[N]の内、キャパシタC[1]~C[L]の各第1端は配線WR1ではなく配線WR_s2に接続され、且つ、キャパシタC[L+1]~C[L+M]の各第1端は配線WR1ではなく配線WR_s1に接続される。キャパシタC[L+M+1]~C[N]の各第1端が配線WR1に接続される点は第1実施形態と同様である。また、キャパシタC[1]~C[L]の第2端が夫々スイッチS[1]~S[L]の共通端子T
COMに接続され、キャパシタC[L+1]~C[L+M]の第2端が夫々スイッチS[L+1]~S[L+M]の共通端子T
COMに接続され、且つ、キャパシタC[L+M+1]~C[N]の第2端が夫々スイッチS[L+M+1]~S[N]の共通端子T
COMに接続される点も第1実施形態と同様である(
図2参照)。
【0070】
DAC10_2において、スケーリングキャパシタCs1は配線WR1及びWR_s1間に直列に挿入される。即ち、DAC10_2において、スケーリングキャパシタCs1の第1端は配線WR1に接続され、スケーリングキャパシタCs1の第2端は配線WR_s1に接続される。DAC10_2において、スケーリングキャパシタCs2は配線WR1及びWR_s2間に直列に挿入される。即ち、DAC10_2において、スケーリングキャパシタCs2の第1端は配線WR1に接続され、スケーリングキャパシタCs2の第2端は配線WR_s2に接続される。
【0071】
相違点DP
2Dとして、キャパシタC[1]~C[N]が有する静電容量値は、DAC10_2と第1実施形態のDAC10とで異なる。
図22を参照する。DAC10_2において、“1≦i≦L”を満たす整数iに関し、キャパシタC[i]は“2
i-1・C
UNT”の静電容量値を有する。DAC10_2において、“L+1≦i≦L+M”を満たす整数iに関し、キャパシタC[i]は“2
i-L-1・C
UNT”の静電容量値を有する。DAC10_2において、“L+M+1≦i≦N”を満たす整数iに関し、キャパシタC[i]は“2
i-L-M-1・C
UNT”の静電容量値を有する。
【0072】
DAC10_2において、キャパシタC[1]~C[L+M]並びにスケーリングキャパシタCs1及びCs2の合成容量の値は、単位容量値CUNTに等しい。また、スケーリングキャパシタCs1よりもスケーリングキャパシタCs2の方が大きな静電容量値を持つ。
【0073】
キャパシタアレイ11_2に関する相違点DP2C及びDP2Dを除き、DAC10に代えてADコンバータ1にDAC10_2が用いられる場合の構成及び動作は、第1実施形態と同様である。
【0074】
<<第3実施形態>>
本開示の第3実施形態を説明する。第1実施形態に示したADコンバータ1の構成及び動作を、差動入力構成を持つADコンバータに適用しても良い。当該適用が施されたADコンバータ2の全体構成を
図23に示す。ADコンバータ2は、上述のADコンバータ1と同様、逐次比較型A/D変換回路である。ADコンバータ2に対してアナログ入力信号AinP及びAinNが入力される。ADコンバータ2はアナログ入力信号AinP及びAinN間の差信号ADifに対してAD変換動作を行う。差信号ADifはアナログ入力信号AinNの電位から見たアナログ入力信号AinPの電位を有するアナログ信号であるとする。
【0075】
差信号Adifに対するAD変換動作では、差信号Adifをバイナリサーチによってデジタル信号に変換し、得られたデジタル信号をデジタル出力信号Doutとして出力する。デジタル出力信号Doutは第1実施形態と同様にNビットのデジタル信号である。“AinP=AinN”であるときにデジタル出力信号Doutは所定の中間値を持ち、“AinP>AinN”であるときに差信号Adifの大きさの増大につれてデジタル出力信号Doutの値が中間値から増大し、“AinP<AinN”であるときに差信号Adifの大きさの増大につれてデジタル出力信号Doutの値が中間値から減少するものであって良い。
【0076】
ADコンバータ2は2つの比較電圧生成ブロックを備える。各比較電圧生成ブロックは第1実施形態にて述べたDAC10、スイッチSG、スイッチSRC及びキャパシタCRCを備える。各比較電圧生成ブロックにおけるDAC10、スイッチSG、スイッチSRC及びキャパシタCRCの構成は、第1実施形態にて述べたDAC10、スイッチSG、スイッチSRC及びキャパシタCRCの構成と同じである。故に、各比較電圧生成ブロックにおいて、DAC10はキャパシタC[1]~C[N]から成るキャパシタアレイ11及びスイッチS[1]~S[N]から成るスイッチアレイ12を備える。各比較電圧生成ブロックにおけるキャパシタC[1]~C[N]及びスイッチS[1]~S[N]間の接続関係は、第1実施形態におけるキャパシタC[1]~C[N]及びスイッチS[1]~S[N]間の接続関係と同じである。各比較電圧生成ブロックにおけるキャパシタCRC及びスイッチSRC間の接続関係は第1実施形態におけるキャパシタCRC及びスイッチSRC間の接続関係と同じである。
【0077】
以下では、ADコンバータ2に設けられる2つの比較電圧生成ブロックの内、一方の比較電圧生成ブロックに設けられるDAC10、スイッチSG、スイッチSRC及びキャパシタCRCを、夫々、特に、DAC10P、スイッチSGP、スイッチSRCP及びキャパシタCRCPと称し、他方の比較電圧生成ブロックに設けられるDAC10、スイッチSG、スイッチSRC及びキャパシタCRCを、夫々、特に、DAC10N、スイッチSGN、スイッチSRCN及びキャパシタCRCNと称する。
【0078】
配線WR_AinPはアナログ入力信号AinPが加わるアナログ入力配線であり、配線WR_AinNはアナログ入力信号AinNが加わるアナログ入力配線である。第1実施形態と同様、配線WR_VDDは所定の電源電圧VDDが加わる電源配線であり、配線WR_GNDはグランド電圧が加わるグランド配線である。アナログ入力信号AinP、AinNは、夫々、DAC10P、10Nに対するアナログ入力信号Ainに相当する。
【0079】
図23の構成では、DAC10PのキャパシタC[1]~C[N]の第1端が全て比較配線WR1に接続され、DAC10NのキャパシタC[1]~C[N]の第1端が全て比較配線WR2に接続される。比較配線WR1に加わる電圧が比較電圧V1であって且つ比較配線WR2に加わる電圧が比較電圧V2である点は第1実施形態と同様である。DAC10P及び10Nの夫々において、キャパシタC[i]に対応してスイッチS[i]が設けられる。DAC10P及び10Nの夫々において、キャパシタC[i]はデジタル出力信号Doutにおける第i番目のビットに対応する。
【0080】
スイッチS[1]~S[N]は各々に共通端子T
COM及び切替端子Ta、Tb及びTcを備える(
図2参照)。DAC10P及び10Nの夫々において、スイッチS[i]の共通端子T
COMはキャパシタC[i]の第2端に接続される。DAC10PにおけるスイッチS[1]~S[N]の各切替端子Taは配線WR_AinPに接続されてアナログ入力信号AinPを受ける。故にDAC10Pにおいて、スイッチS[i]の信号入力状態ではアナログ入力信号AinPがキャパシタC[i]の第2端に加わる。DAC10NにおけるスイッチS[1]~S[N]の各切替端子Taは配線WR_AinNに接続されてアナログ入力信号AinNを受ける。故にDAC10Nにおいて、スイッチS[i]の信号入力状態ではアナログ入力信号AinNがキャパシタC[i]の第2端に加わる。DAC10P及び10Nの夫々において、スイッチS[1]~S[N]の各切替端子Tbは配線WR_VDDに接続されて電源電圧VDDを受ける。DAC10P及び10Nの夫々において、スイッチS[1]~S[N]の各切替端子Tcは配線WR_GNDに接続されてグランド電圧を受ける。
【0081】
DAC10Pにおいて、スイッチS[i]の信号入力状態、電源接続状態、グランド状態では、夫々、アナログ入力信号AinP、電源電圧VDD、グランド電圧がキャパシタC[i]の第2端に加わる(
図3参照)。DAC10Nにおいて、スイッチS[i]の信号入力状態、電源接続状態、グランド状態では、夫々、アナログ入力信号AinN、電源電圧VDD、グランド電圧がキャパシタC[i]の第2端に加わる(
図3参照)。尚、
図23では、例として、DAC10P及び10NにおけるスイッチS[1]~S[N]が全て信号入力状態とされる様子が示されている。
【0082】
スイッチSGP及びSGNはグランド短絡用スイッチである。スイッチSGPは比較配線WR1及びグランド間に直列に設けられる。即ち、スイッチSGPの第1端は比較配線WR1に接続され、スイッチSGPの第2端はグランドに接続される(換言すれば配線WR_GNDに接続される)。スイッチSGNは比較配線WR2及びグランド間に直列に設けられる。即ち、スイッチSGNの第1端は比較配線WR2に接続され、スイッチSGNの第2端はグランドに接続される(換言すれば配線WR_GNDに接続される)。
【0083】
制御回路30によりスイッチS
GP及びS
GNがオン状態又はオフ状態に制御される。スイッチS
GPがオンであるとき、スイッチS
GPの第1端及び第2端間が導通し、比較配線WR1の電圧(即ち比較電圧V1)は0Vに固定される。スイッチS
GPがオフであるとき、スイッチS
GPの第1端及び第2端間は遮断され(非導通となり)、スイッチS
GPは比較電圧V1に影響を与えない。スイッチS
GNがオンであるとき、スイッチS
GNの第1端及び第2端間が導通し、比較配線WR2の電圧(即ち比較電圧V2)は0Vに固定される。スイッチS
GNがオフであるとき、スイッチS
GNの第1端及び第2端間は遮断され(非導通となり)、スイッチS
GNは比較電圧V2に影響を与えない。尚、
図23では、例として、スイッチS
GP及びS
GNがオフとされる様子が示されている。
【0084】
キャパシタCRCP及びCRCNは基準変更用キャパシタであり、スイッチSRCP及びSRCNは基準変更用スイッチである。キャパシタCRCP及びスイッチSRCPにて第1基準変更回路が構成され、キャパシタCRCN及びスイッチSRCNにて第2基準変更回路が構成される。アナログ入力信号AinP及びAinNのサンプリングの後、第1及び第2基準変更回路により比較電圧V1及びV2の基準となる電圧が高レベル側に変更(シフト)される。
【0085】
図4のスイッチS
RCと同様、スイッチS
RCP及びS
RCNは各々に切替端子T
1及びT
2並びに共通端子T
3を備える。キャパシタC
RCPの第1端は比較配線WR1に接続される。キャパシタC
RCPの第2端はスイッチS
RCPの共通端子T
3は接続される。キャパシタC
RCNの第1端は比較配線WR2に接続される。キャパシタC
RCNの第2端はスイッチS
RCNの共通端子T
3は接続される。スイッチS
RCP及びS
RCNの各切替端子T
1は配線WR_VDDに接続されて電源電圧VDDを受ける。スイッチS
RCP及びS
RCNの各切替端子T
2は配線WR_GNDに接続されてグランド電圧を受ける。
【0086】
制御回路30の制御の下、スイッチS
RCP及びS
RCNの夫々において、共通端子T
3が切替端子T
1又はT
2に選択的に接続される(但し共通端子T
3が切替端子T
1及びT
2の何れとも接続されないことがあっても良い)。スイッチS
RCPの電源接続状態、グランド状態では、夫々、電源電圧VDD、グランド電圧がキャパシタC
RCPの第2端に加わる(
図5参照)。スイッチS
RCNの電源接続状態、グランド状態では、夫々、電源電圧VDD、グランド電圧がキャパシタC
RCNの第2端に加わる。尚、
図23では、例として、スイッチS
RCP及びS
RCNがグランド接続状態とされる様子が示されている。
【0087】
コンパレータ20は比較配線WR1及びWR2に接続される。第1実施形態と同様、DAC2のコンパレータ20は比較電圧V1及びV2を比較し、比較電圧V1及びV2の比較結果(高低関係)を示す比較結果信号SCMPを生成及び出力する。但し、ADコンバータ2では比較電圧V2がDAC10Nから出力される。比較結果信号SCMPは“0”又は“1”の値を有する二値化信号である。コンパレータ20は非反転入力端子、反転入力端子及び出力端子を有し、ここでは、反転入力端子が比較配線WR1に接続され且つ非反転入力端子が比較配線WR2に接続されるものとする。コンパレータ20は、“V1<V2”の成立時において“1”の値を有する比較結果信号SCMPを自身の出力端子から出力し、“V1>V2”の成立時において“0”の値を有する比較結果信号SCMPを自身の出力端子から出力する。“V1=V2”の成立時において比較結果信号SCMPは“0”又は“1”の値を有する。
【0088】
制御回路30は比較結果信号SCMPを受ける。制御回路30はAD変換動作を全体的に制御し、AD変換動作によって得られたデジタル出力信号Doutを出力する。第1実施形態と同様、制御回路30にはレジスタ31が設けられ、レジスタ31にデジタル出力信号Doutの値を格納することができる。制御回路30はDAC10P及び10Nに対して制御信号CNTDAC(DAC入力信号)を供給することで、DAC10P及び10NにおけるスイッチS[1]~S[N]の状態を個別に制御する。制御回路30は、スイッチSGP及びSGNに対して制御信号CNTGを供給することでスイッチSGP及びSGNの状態を制御し、スイッチSRCP及びSRCNに対して制御信号CNTRCを供給することでスイッチSRCP及びSRCNの状態を制御する。
【0089】
DAC10P及び10Nの夫々において、キャパシタC[1]~C[n]の静電容量値は第1実施形態と同様に設定される(
図6参照)。
【0090】
ADコンバータ2におけるAD変換動作では、第1実施形態と同様に、ステップS1~S4の動作が順次実行される(
図7参照)。
【0091】
図24はサンプリング期間におけるADコンバータ2の状態を示す。サンプリング期間は所定時間長さを有する。サンプリング期間において、制御回路30は、DAC10P及び10N内の全スイッチS[1]~S[N]を信号入力状態に制御し、且つ、スイッチS
GP及びS
GNをオンに制御し、且つ、スイッチS
RCP及びS
RCNをグランド接続状態に制御する。
【0092】
サンプリング期間では、配線WR_AinPがDAC10P内でスイッチアレイ12を介してキャパシタアレイ11に接続され、これによってアナログ入力信号AinPに応じた電荷がDAC10Pのキャパシタアレイ11中の各キャパシタ(C[1]~C[N])に蓄積される。同様に、サンプリング期間では、配線WR_AinNがDAC10N内でスイッチアレイ12を介してキャパシタアレイ11に接続され、これによってアナログ入力信号AinNに応じた電荷がDAC10Nのキャパシタアレイ11中の各キャパシタ(C[1]~C[N])に蓄積される。
【0093】
サンプリング期間において、比較配線WR1及びWR2はスイッチSGP及びSGNを介してグランドに接続される。このため、DAC10Pにおけるキャパシタアレイ11中の各キャパシタ(C[1]~C[N])はグランド電圧を基準にしてアナログ入力信号AinPにより充電され、DAC10Nにおけるキャパシタアレイ11中の各キャパシタ(C[1]~C[N])はグランド電圧を基準にしてアナログ入力信号AinNにより充電される。また、サンプリング期間においてスイッチSRCP及びSRCNはグランド接続状態とされるため、キャパシタCRCP及びCRCNの夫々の両端間電圧は0Vである。尚、サンプリング期間においてコンパレータ20の動作は停止していて良い。
【0094】
ステップS2における状態遷移動作では、第1実施形態に示す状態遷移動作と同様の動作が、2つの比較電圧生成ブロックの夫々に対して実行される。状態遷移動作において、ステップS21、S22、S23、S24の動作が、この順番で実行されて良い(
図9参照)。
【0095】
ステップS21の接続解消動作では、DAC10P及び10Nの夫々におけるスイッチS[1]~S[N]の状態が全て信号入力状態から開放状態に切り替えられる。ステップS22の第1遷移切替動作では、スイッチSGP及びSGNの夫々の状態がオンからオフに切り替えられる。ステップS22の後、ステップS3の逐次比較動作が完了するまでスイッチSGP及びSGNはオフ状態に維持される。ステップS23の第2遷移切替動作では、スイッチSRCP及びSRCNの夫々の状態がグランド接続状態から電源接続状態に切り替えられる。ステップS23の後、ステップS3の逐次比較動作が完了するまでスイッチSRCP及びSRCNは電源接続状態に維持される。ステップS24の逐次比較準備動作では、DAC10P及び10Nの夫々のスイッチS[1]~S[N]の状態が電源接続状態又はグランド接続状態に切り替えられる。
【0096】
図25に、ステップS21~S24の動作を経た後のADコンバータ2の状態を示す。
図25の例では、ステップS24にてDAC10P及び10Nの夫々のスイッチS[1]~S[N]の状態が全てグランド接続状態に切り替えられることが想定されている。
【0097】
状態遷移動作において各スイッチの状態の遷移タイミングが様々に変更可能である点は第1実施形態にて述べた通りであり、この点に関して第1実施形態の記載が本実施形態にも適用される。故に例えば、第3実施形態に係る状態遷移動作において、ステップS21~S23の動作を同時に行っても良いし、ステップS21及びS22の動作を同時に行ってからステップS23の動作を行っても良いし、ステップS21の動作を行ってからステップS22及S23の動作を同時に行っても良い。この際、ステップS24の動作はステップS23の動作と同時に又はステップS23の動作の後に実行される。或いはステップS24の動作は省略され得る。
【0098】
DAC10PにおけるスイッチS[1]~S[N]のグランド接続状態において、スイッチSGPがオフとされた上でスイッチSRCPの状態がグランド接続状態から電源接続状態に切り替えられると、比較配線WR1における比較電圧V1が所定の電圧量V1SFTだけ上昇する。同様に、DAC10NにおけるスイッチS[1]~S[N]のグランド接続状態において、スイッチSGNがオフとされた上でスイッチSRCNの状態がグランド接続状態から電源接続状態に切り替えられると、比較配線WR2における比較電圧V2が所定の電圧量V2SFTだけ上昇する。
【0099】
第1実施形態で述べたように、キャパシタCRCPの静電容量値の調整により電圧量V1SFTを任意に調整でき、キャパシタCRCNの静電容量値の調整により電圧量V2SFTを任意に調整できる。ここで、DAC10PとDAC10Nは互いに同じ構成を有し、且つ、キャパシタCRCP及びCRCNも互いに同じ構成を有する(故に互いに静電容量値を有する)。故に、“V1SFT=V2SFT”である。アナログ入力信号AinP及びAinNの変動範囲を考慮しつつ、逐次比較動作においてDAC10P及び10Nの夫々におけるスイッチS[1]~S[N]が全てグランド接続状態であるときにも比較電圧V1及びV2が常に0V以上となるよう、上述の電圧量V1SFT及びV2SFTが決定される(換言すればキャパシタCRCP及びCRCNの静電容量値が決定される)。このため、コンパレータ20に負電源は必要ない。即ち、コンパレータ20はグランド電圧を電源電圧VDD(又は他の正の直流電圧)に基づき駆動する。
【0100】
ステップS3(
図7参照)の逐次比較動作が行われる逐次比較期間において、スイッチS
GP及びS
GNはオフ状態に維持され且つスイッチS
RCP及びS
RCNは電源接続状態に維持される。逐次比較動作においてレジスタ31の値Rg[1]~Rg[N]が上位ビット側から1ビットずつ決定され、決定された値Rg[i]がデジタル出力信号Doutにおける第i番目のビットの値となる。制御回路30は、逐次比較動作において(換言すれば逐次比較期間において)、比較結果信号S
CMPに基づきバイナリサーチによりDAC10P及び10Nのスイッチアレイ12の状態を順次切り替えながら値Rg[1]~Rg[N](即ちデジタル出力信号Doutの値)をビットごとに決定する。
【0101】
ADコンバータ2において、ステップS3における逐次比較動作のフローチャートは
図14のそれと同じであり、第1実施形態における逐次比較動作が本実施形態にも適用される。但し、第1実施形態にてスイッチS[j]の状態が電源接続状態に制御、設定、維持、切り替えられる場合、第3実施形態ではDAC10P及びDAC10Nの夫々におけるスイッチS[j]の状態が電源接続状態に制御、設定、維持、切り替えられると解される。同様に、第1実施形態にてスイッチS[j]の状態がグランド接続状態に制御、設定、維持、切り替えられる場合、第3実施形態ではDAC10P及びDAC10Nの夫々におけるスイッチS[j]の状態がグランド接続状態に制御、設定、維持、切り替えられると解される。
【0102】
ステップS4(
図7参照)の結果出力動作において、制御回路30は、ステップS3の逐次比較動作にて決定された値Rg[1]~Rg[N]を有するデジタル信号をデジタル出力信号Doutとして出力する。
【0103】
差動入力構成を持つADコンバータ2においても、基準電圧源950(
図17参照)に相当する回路が不要となるため、サンプリング期間での消費電力を低減できる。
【0104】
<<第4実施形態>>
本開示の第4実施形態を説明する。第1実施形態に対して第2実施形態を適用できるのと同様に、第3実施形態に対して第2実施形態を適用しても良い。第3実施形態に対して第2実施形態を適用したものが第4実施形態に相当する。この適用の際、第2実施形態の記述における“第1実施形態”は“第3実施形態”に読み替えられて良い。
【0105】
即ち例えば、第3実施形態に係るADコンバータ2において、DAC10P及び10Nの夫々として、第2実施形態で述べたDAC10_1(
図19参照)を用いるようにしても良い。但し、この際、DAC10PとしてのDAC10_1内のスイッチS[1]~S[N]の切替端子Taは配線WR_AinPに接続され、且つ、DAC10NとしてのDAC10_1内のスイッチS[1]~S[N]の切替端子Taは配線WR_AinNに接続されるものとする(
図3及び
図23も参照)。
【0106】
DAC10P及び10Nに対するスケーリングキャパシタCsの追加数(直列段数)は1以上であれば任意である。即ち例えば、第3実施形態に係るADコンバータ2において、DAC10P及び10Nの夫々として、第2実施形態で述べたDAC10_2(
図21参照)を用いるようにしても良い。但し、この際、DAC10PとしてのDAC10_2内のスイッチS[1]~S[N]の切替端子Taは配線WR_AinPに接続され、且つ、DAC10NとしてのDAC10_2内のスイッチS[1]~S[N]の切替端子Taは配線WR_AinNに接続されるものとする(
図3及び
図23も参照)。
【0107】
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【0108】
<<付記>>
上述の実施形態にて具体的構成例が示された本開示について付記を設ける。
【0109】
本開示の一側面に係る逐次比較型AD変換回路は、アナログ入力信号(Ain)をデジタル出力信号(Dout)に変換するよう構成される逐次比較型AD変換回路(例えばADコンバータ1)において、キャパシタアレイ(11)及び前記キャパシタアレイに接続されるスイッチアレイ(12)を有し、サンプリング期間にて前記アナログ入力信号が加わる配線を前記スイッチアレイを介して前記キャパシタアレイに接続することで前記アナログ入力信号に応じた電荷を前記キャパシタアレイ中の各キャパシタに蓄積させ、前記サンプリング期間後の逐次比較期間において所定の電源電圧又はグランド電圧を前記スイッチアレイを介し前記キャパシタアレイ中の各キャパシタに供給した状態で前記キャパシタアレイの蓄積電荷に基づく第1比較電圧(V1)を第1比較配線(WR1)に発生するよう構成されるキャパシタ型DAC(10)と、前記第1比較配線と第2比較電圧(V2)が加わる第2比較配線(WR2)に接続され、前記逐次比較期間において前記第1比較電圧と前記第2比較電圧を比較して比較結果信号(SCMP)を生成するよう構成されるコンパレータ(20)と、前記逐次比較期間において前記比較結果信号に基づき前記スイッチアレイの状態を制御しつつ前記デジタル出力信号の値を決定するよう構成される制御回路(30)と、前記第1比較配線とグランドとの間に設けられるグランド短絡用スイッチ(SG)と、前記第1比較配線に接続された第1端を有する基準変更用キャパシタ(CRC)と、前記基準変更用キャパシタの第2端に対し、前記電源電圧又は前記グランド電圧を選択的に与えるよう構成された基準変更用スイッチ(SRC)と、を備える構成(第1の構成)である。
【0110】
本構成によりサンプリング期間にて基準電圧源に相当する回路を動作させる必要がなくなり、以って消費電力を低減できる。
【0111】
上記第1の構成に係る逐次比較型AD変換回路において、前記制御回路は、前記サンプリング期間にて前記グランド短絡用スイッチをオンにすることで前記第1比較配線に前記グランド電圧を与え、前記逐次比較期間にて前記グランド短絡用スイッチをオフとし、前記制御回路は、前記基準変更用スイッチの制御を通じて、前記基準変更用キャパシタの第2端に対し、前記サンプリング期間にて前記グランド電圧を与え、前記逐次比較期間にて前記電源電圧を与える構成(第2の構成)であっても良い。
【0112】
これにより、アナログ入力信号のサンプリングの後、基準変更用スイッチ及び基準変更用キャパシタにより第1比較電圧の基準となる電圧を高レベル側に変更(シフト)させることができる。このため、サンプリング期間にて基準電圧源に相当する回路を動作させなくとも、単電源(負電源を持たない電源)にてコンパレータを駆動させることできる。
【0113】
上記第2の構成に係る逐次比較型AD変換回路において、前記基準変更用キャパシタの第2端に与えられる電圧が前記グランド電圧から前記電源電圧に切り替えられることで前記第1比較配線の電圧が所定電圧量(V1SHT)だけ上昇し、前記逐次比較期間において前記第2比較電圧は前記所定電圧量を電圧値として持つ構成(第3の構成)であっても良い。
【0114】
上記第2又は第3の構成に係る逐次比較型AD変換回路において、前記基準変更用スイッチは、前記電源電圧が加わる第1切替端子(T1)、前記グランド電圧が加わる第2切替端子(T2)及び前記基準変更用キャパシタの第2端に接続される共通端子(T3)を有し、前記制御回路は、前記サンプリング期間から前記逐次比較期間へ遷移させる際、前記グランド短絡用スイッチをオンからオフに切り替える第1遷移切替動作(S22)と、前記基準変更用スイッチにおける前記共通端子の接続先を前記第2切替端子から前記第1切替端子に切り替える第2遷移切替動作(S23)とを同時行う、又は、前記第1遷移切替動作を行ってから前記第2遷移切替動作を行う構成(第4の構成)であっても良い。
【0115】
上記第1~第4の構成の何れかに係る逐次比較型AD変換回路において、前記制御回路は、前記逐次比較期間において前記比較結果信号に基づき、バイナリサーチにより前記スイッチアレイの状態を順次切り替えながら前記デジタル出力信号の値をビットごとに決定する構成(第5の構成)であっても良い。
【0116】
上記第5の構成に係る逐次比較型AD変換回路において、前記デジタル出力信号は第1~第N番目のビットを有するNビットのデジタル信号であり、前記キャパシタアレイは、第1~第N番目のビットに対応し、各々に第1端及び第2端を有する第1~第Nキャパシタ(C[1]~C[N])を有し、前記スイッチアレイは、第1~第Nキャパシタに対応する第1~第Nスイッチ(S[1]~S[N])を有し、前記第1比較配線は前記第1~第Nキャパシタの各第1端側に設けられ、第iスイッチは、第1切替端子(Ta)、第2切替端子(Tb又はTc)、第3切替端子(Tb又はTc)及び第iキャパシタの第2端に接続される共通端子(TCOM)を有し、前記第1~第Nスイッチの夫々において、前記第1切替端子に前記アナログ入力信号が加わり、前記第2切替端子及び前記第3切替端子の何れか一方に前記電源電圧が加わり且つ他方に前記グランド電圧が加わり、前記制御回路は、前記サンプリング期間において前記第1~第Nスイッチの夫々における前記共通端子に前記第1切替端子を接続させ、その後の前記逐次比較期間において、前記第1~第Nスイッチの夫々における前記共通端子に前記第2又は第3切替端子を選択的に接続させた状態での前記比較結果信号に基づき、バイナリサーチにより前記デジタル出力信号の各ビットの値を決定し、Nは2以上の整数を表し、iはN以下の自然数を表す構成(第6の構成)であっても良い。
【0117】
上記第6の構成に係る逐次比較型AD変換回路において、前記第1~第Nキャパシタの第1端は全て前記第1比較配線に接続される、或いは、前記第1~第Nキャパシタの内、一部のキャパシタの第1端は前記第1比較配線に接続される一方で残りのキャパシタの第1端と前記第1比較配線との間にスケーリングキャパシタ(例えばCs;
図19参照)が直列に設けられる構成(第7の構成)であっても良い。
【0118】
本開示の一側面に係る他の逐次比較型AD変換回路は、第1アナログ入力信号(AinP)及び第2アナログ入力信号(AinN)間の差信号(Sdif)をデジタル出力信号(Dout)に変換するよう構成される逐次比較型AD変換回路(2)において、第1キャパシタアレイ及び前記第1キャパシタアレイに接続される第1スイッチアレイを有し、サンプリング期間にて前記第1アナログ入力信号が加わる配線を前記第1スイッチアレイを介して前記第1キャパシタアレイに接続することで前記第1アナログ入力信号に応じた電荷を前記第1キャパシタアレイ中の各キャパシタに蓄積させ、前記サンプリング期間後の逐次比較期間において所定の電源電圧又はグランド電圧を前記第1スイッチアレイを介し前記第1キャパシタアレイ中の各キャパシタに供給した状態で前記第1キャパシタアレイの蓄積電荷に基づく第1比較電圧(V1)を第1比較配線(WR1)に発生するよう構成される第1キャパシタ型DAC(10P)と、第2キャパシタアレイ及び前記第2キャパシタアレイに接続される第2スイッチアレイを有し、前記サンプリング期間にて前記第2アナログ入力信号が加わる配線を前記第2スイッチアレイを介して前記第2キャパシタアレイに接続することで前記第2アナログ入力信号に応じた電荷を前記第2キャパシタアレイ中の各キャパシタに蓄積させ、前記逐次比較期間において前記電源電圧又は前記グランド電圧を前記第2スイッチアレイを介し前記第2キャパシタアレイ中の各キャパシタに供給した状態で前記第2キャパシタアレイの蓄積電荷に基づく第2比較電圧(V2)を第2比較配線(WR2)に発生するよう構成される第2キャパシタ型DAC(10N)と、前記第1比較配線及び前記第2比較配線に接続され、前記逐次比較期間において前記第1比較電圧と前記第2比較電圧を比較して比較結果信号(SCMP)を生成するよう構成されるコンパレータ(20)と、前記逐次比較期間において前記比較結果信号に基づき前記第1スイッチアレイ及び前記第2スイッチアレイの各状態を制御しつつ前記デジタル出力信号の値を決定するよう構成される制御回路(30)と、前記第1比較配線とグランドとの間に設けられる第1グランド短絡用スイッチ(SGP)と、前記第1比較配線に接続された第1端を有する第1基準変更用キャパシタ(CRCP)と、前記第1基準変更用キャパシタの第2端に対し、所定の電源電圧又はグランド電圧を選択的に与えるよう構成された第1基準変更用スイッチ(SRCP)と、前記第2比較配線とグランドとの間に設けられる第2グランド短絡用スイッチ(SGN)と、前記第2比較配線に接続された第1端を有する第2基準変更用キャパシタ(CRCN)と、前記第2基準変更用キャパシタの第2端に対し、前記電源電圧又は前記グランド電圧を選択的に与えるよう構成された第2基準変更用スイッチ(SRCN)と、を備える構成(第8の構成)である。
【0119】
本構成によりサンプリング期間にて基準電圧源に相当する回路を動作させる必要がなくなり、以って消費電力を低減できる。
【0120】
上記第8の構成に係る逐次比較型AD変換回路において、前記制御回路は、前記サンプリング期間にて前記第1グランド短絡用スイッチ及び第2グランド短絡用スイッチをオンにすることで前記第1比較配線及び前記第2比較配線に前記グランド電圧を与え、前記逐次比較期間にて前記第1グランド短絡用スイッチ及び第2グランド短絡用スイッチをオフとし、前記制御回路は、前記第1基準変更用スイッチ及び第2基準変更用スイッチの制御を通じて、前記第1基準変更用キャパシタ及び前記第2基準変更用キャパシタの各第2端に対し、前記サンプリング期間にて前記グランド電圧を与え、前記逐次比較期間にて前記電源電圧を与える構成(第9の構成)であっても良い。
【0121】
これにより、アナログ入力信号のサンプリングの後、各基準変更用スイッチ及び各基準変更用キャパシタにより各比較電圧の基準となる電圧を高レベル側に変更(シフト)させることができる。このため、サンプリング期間にて基準電圧源に相当する回路を動作させなくとも、単電源(負電源を持たない電源)にてコンパレータを駆動させることできる。
【0122】
上記第9の構成に係る逐次比較型AD変換回路において、前記第1基準変更用キャパシタの第2端に与えられる電圧が前記グランド電圧から前記電源電圧に切り替えられることで前記第1比較配線の電圧が所定電圧量だけ上昇し、前記第2基準変更用キャパシタの第2端に与えられる電圧が前記グランド電圧から前記電源電圧に切り替えられることで前記第2比較配線の電圧が前記所定電圧量だけ上昇する構成(第10の構成)であっても良い。
【0123】
上記第9又は第10の構成に係る逐次比較型AD変換回路において、前記第1基準変更用スイッチは、前記電源電圧が加わる第1切替端子(T1)、前記グランド電圧が加わる第2切替端子(T2)及び前記第1基準変更用キャパシタの第2端に接続される共通端子(T3)を有し、前記第2基準変更用スイッチは、前記電源電圧が加わる第1切替端子(T1)、前記グランド電圧が加わる第2切替端子(T2)及び前記第2基準変更用キャパシタの第2端に接続される共通端子(T3)を有し、前記制御回路は、前記サンプリング期間から前記逐次比較期間へ遷移させる際、前記第1及び第2グランド短絡用スイッチをオンからオフに切り替える第1遷移切替動作(S22)と、前記第1及び第2基準変更用スイッチの夫々において前記共通端子の接続先を前記第2切替端子から前記第1切替端子に切り替える第2遷移切替動作(S23)とを同時行う、又は、前記第1遷移切替動作を行ってから前記第2遷移切替動作を行う構成(第11の構成)であっても良い。
【0124】
上記第8~第11の構成の何れかに係る逐次比較型AD変換回路において、前記制御回路は、前記逐次比較期間において前記比較結果信号に基づき、バイナリサーチにより前記第1及び第2スイッチアレイの状態を順次切り替えながら前記デジタル出力信号の値をビットごとに決定する構成(第12の構成)であっても良い。
【0125】
上記第12の構成に係る逐次比較型AD変換回路において、前記デジタル出力信号は第1~第N番目のビットを有するNビットのデジタル信号であり、各キャパシタアレイは、第1~第N番目のビットに対応し、各々に第1端及び第2端を有する第1~第Nキャパシタ(C[1]~C[N])を有し、各スイッチアレイは、第1~第Nキャパシタに対応する第1~第Nスイッチ(S[1]~S[N])を有し、前記第1比較配線は前記第1キャパシタアレイにおける前記第1~第Nキャパシタの各第1端側に設けられ、前記第2比較配線は前記第2キャパシタアレイにおける前記第1~第Nキャパシタの各第1端側に設けられ、各スイッチアレイにおいて、第iスイッチは、第1切替端子(Ta)、第2切替端子(Tb又はTc)、第3切替端子(Tb又はTc)及び第iキャパシタの第2端に接続される共通端子(TCOM)を有し、前記第1スイッチアレイにおける前記第1~第Nスイッチの夫々において、前記第1切替端子に前記第1アナログ入力信号が加わり、前記第2切替端子及び前記第3切替端子の何れか一方に前記電源電圧が加わり且つ他方に前記グランド電圧が加わり、前記第2スイッチアレイにおける前記第1~第Nスイッチの夫々において、前記第1切替端子に前記第2アナログ入力信号が加わり、前記第2切替端子及び前記第3切替端子の何れか一方に前記電源電圧が加わり且つ他方に前記グランド電圧が加わり、前記制御回路は、前記サンプリング期間において各スイッチアレイの前記第1~第Nスイッチの夫々における前記共通端子に前記第1切替端子を接続させ、その後の前記逐次比較期間において、各スイッチアレイの前記第1~第Nスイッチの夫々における前記共通端子に前記第2又は第3切替端子を選択的に接続させた状態での前記比較結果信号に基づき、バイナリサーチにより前記デジタル出力信号の各ビットの値を決定し、Nは2以上の整数を表し、iはN以下の自然数を表す構成(第13の構成)であっても良い。
【0126】
上記第13の構成に係る逐次比較型AD変換回路において、前記第1キャパシタアレイにおける前記第1~第Nキャパシタの第1端は全て前記第1比較配線に接続され、且つ、前記第2キャパシタアレイにおける前記第1~第Nキャパシタの第1端は全て前記第2比較配線に接続される、或いは、前記第1キャパシタアレイにおける前記第1~第Nキャパシタの内、一部のキャパシタの第1端は前記第1比較配線に接続される一方で残りのキャパシタの第1端と前記第1比較配線との間にスケーリングキャパシタが直列に設けられ、且つ、前記第2キャパシタアレイにおける前記第1~第Nキャパシタの内、一部のキャパシタの第1端は前記第2比較配線に接続される一方で残りのキャパシタの第1端と前記第2比較配線との間に他のスケーリングキャパシタが直列に設けられる構成(第14の構成)であっても良い。
【符号の説明】
【0127】
1、2 ADコンバータ
10、10_1、10_2、10P、10N DAC
11、11_1、11_2 キャパシタアレイ
12、12_1、12_2 スイッチアレイ
20 コンパレータ
30 制御回路
31 レジスタ
40、40a、40b 電圧生成回路
C[1]~C[N] キャパシタ
S[1]~S[N] スイッチ
SG、SGP、SGN スイッチ(グランド短絡用スイッチ)
CRC、CRCP、CRCN キャパシタ(基準変更用キャパシタ)
SRC、SRCP、SRCN スイッチ(基準変更用スイッチ)
WR1、WR2 比較配線
V1、V2 比較電圧
Ain、AinP、AinN アナログ入力信号
Dout デジタル出力信号
Adif 差信号
WR_Ain、WR_AinP、WR_AinN、WR_VDD、WR_GND 配線
WR_s、WR_s1、WR_s2 配線
Cs、Cs1、Cs2 スケーリングキャパシタ
Ta、Tb、Tc、T1、T2 切替端子
TCOM、T3 共通端子
CREF、CRC’ キャパシタ
SG’、SRC’ スイッチ