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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027296
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】椅子式マッサージ機
(51)【国際特許分類】
   A61H 7/00 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
A61H7/00 322D
A61H7/00 323H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129980
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000136491
【氏名又は名称】株式会社フジ医療器
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 敏久
【テーマコード(参考)】
4C100
【Fターム(参考)】
4C100AD02
4C100AD12
4C100AD21
4C100BA03
4C100BB03
4C100BB05
4C100BB06
4C100BC13
4C100CA06
4C100CA07
4C100CA08
4C100CA09
4C100DA04
4C100DA05
4C100DA10
4C100DA11
(57)【要約】
【課題】施療強度の微調整が可能な椅子式マッサージ機を提供する。
【解決手段】背凭れ部において、ベース部は、座部の後端部から長手方向に延びる。パッド部は、施療ユニットを挟んで左右方向に並んでベース部の前側に配置され、被施療者の胴部を支持する。パッド部の前側には、被施療者を押圧可能な移動部が長手方向に複数並んで配置される。少なくとも一部の移動部は、被施療者の被押圧部分を前後方向において独立に移動させることが可能である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被施療者の臀部を支持する座部と、
前記座部の後端部に配置される背凭れ部と、
被施療者の胴部を施療可能な施療ユニットと、
を有し、
前記施療ユニットは、被施療者の臀部から頭部に向かう前記背凭れ部の長手方向に昇降可能であって、
前記背凭れ部は、
前記座部の後端部から前記長手方向に延びるベース部と、
前記施療ユニットを挟んで左右方向に並んで前記ベース部の前側に配置され、被施療者の胴部を支持するパッド部と、
前記長手方向に複数並んで前記パッド部の前側に配置され、被施療者を押圧可能な移動部と、
を有し、
少なくとも一部の前記移動部は、被施療者の被押圧部分を前後方向において独立に移動させることが可能である、椅子式マッサージ機。
【請求項2】
各々の前記移動部は、膨縮可能なエアバッグを有する、請求項1に記載の椅子式マッサージ機。
【請求項3】
各々の前記移動部は、
被施療者の前記被押圧部分と前後方向に対向する板状部材と、
前記板状部材を前後方向に移動させるアクチュエータと、
を有する、請求項1に記載の椅子式マッサージ機。
【請求項4】
前記長手方向に並ぶ前記移動部は、
被施療者の肩部を押圧可能な第1移動部と、
被施療者の肩部よりも下側且つ腰部よりも上側の部分を押圧可能な第2移動部と、
被施療者の腰部を押圧可能な第3移動部と、
を有する、請求項1~請求項3のいずれかに記載の椅子式マッサージ機。
【請求項5】
左右方向から見て少なくとも一部が前記施療ユニットと重なる前記移動部により被施療者を押圧する、請求項1~請求項3のいずれかに記載の椅子式マッサージ機。
【請求項6】
前記施療ユニットが被施療者の肩部を施療する際、腰部を押圧可能な前記移動部により被施療者を押圧する、請求項1~請求項3のいずれかに記載の椅子式マッサージ機。
【請求項7】
前記施療ユニットが被施療者の腰部を施療する際、肩部を押圧可能な前記移動部により被施療者を押圧する、請求項1~請求項3のいずれかに記載の椅子式マッサージ機。
【請求項8】
入力操作を受け付ける入力部をさらに備え、
前記入力部により指定された前記移動部で被施療者を押圧する、請求項1~請求項3のいずれかに記載の椅子式マッサージ機。
【請求項9】
前記長手方向における被施療者の胴部の背面に沿う曲線の形状を検知する検知モードを有し、
前記検知モードでの検知結果に基づいて、各々の前記移動部は、被施療者の被押圧部分を前後方向に移動させる、請求項1~請求項3のいずれかに記載の椅子式マッサージ機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子式マッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、揉み玉の駆動により、被施療者の胴部を施療する椅子式マッサージ機が知られている。たとえば、特許文献1の椅子式マッサージ機では、人体に対して左右方向に延びて人体を支持する短冊状シート織物が、枠体の上面に配置される。椅子式マッサージ機は、短冊状シート織物の張力又は長さを調整することにより、短冊状シート織物の背面に配置されたマッサージ施療手段が人体に掛ける負荷を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-136562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、短冊状シート織物が人体に対して左右方向に延びる。そのため、短冊状シート織物が人体を支持する力が、人体の左右方向両側では強く作用し、人体の左右方向中央部では弱く作用する。そのため、人体の左右方向両部が中央部に向かって押され易く、人体の左右方向中央部が後方に沈み易い。すなわち、左右方向において人体が丸まった姿勢になり易い。従って、短冊状シート織物の張力又は長さを調整する際、人体の左右方向中央部は両端部よりも大きく移動する。よって、楽な姿勢で施療を受け難く、人体の左右方向中央部に掛けるマッサージ施療手段の負荷を微調整することが難しい。
【0005】
本発明は、上記の状況を鑑みて、施療強度の微調整が可能な椅子式マッサージ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の一の態様による椅子式マッサージ機は、座部と、背凭れ部と、施療ユニットと、を有する。前記座部は、被施療者の臀部を支持する。前記背凭れ部は、前記座部の後端部に配置される。前記施療ユニットは、被施療者の胴部を施療可能である。前記施療ユニットは、被施療者の臀部から頭部に向かう前記背凭れ部の長手方向に昇降可能である。前記背凭れ部は、ベース部と、パッド部と、移動部と、を有する。前記ベース部は、前記座部の後端部から前記長手方向に延びる。前記パッド部は、前記施療ユニットを挟んで左右方向に並んで前記ベース部の前側に配置され、被施療者の胴部を支持する。前記移動部は、前記長手方向に複数並んで前記パッド部の前側に配置され、被施療者を押圧可能である。各々の少なくとも一部の前記移動部は、被施療者の被押圧部分を前後方向において独立に移動させることが可能である。
【0007】
本発明の更なる特徴や利点は、以下に示す実施形態によって一層明らかにされる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、施療強度の微調整が可能な椅子式マッサージ機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】椅子式マッサージ機の構成例を示す概略的な斜視図
図2】椅子式マッサージ機の動作を制御する制御系を示すブロック図
図3】外装を外した椅子式マッサージ機の概略的な斜視図
図4】パッド部に対する移動部の配置例を示す斜視図
図5A】移動部の構成例を示す断面図
図5B】移動部の構成例を示す断面図
図6】第1施療例を示す概略図
図7】第2施療例を示す概略図
図8】第3施療例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図1を参照して、本発明の実施形態を説明する。図1は、椅子式マッサージ機100の構成例を示す概略的な斜視図である。また、以下では、椅子式マッサージ機100を「マッサージ機100」と称することがある。
【0011】
以下の説明において、後述する背凭れ部102が起立した状態のマッサージ機100に着座した被施療者Uから見て前側(正面側)を「前側」といい、後側(背面側)を「後側」という。なお、背凭れ部102、及び、背凭れ部102に凭れる被施療者Uに関して、背凭れ部102が傾倒した状態においても、背凭れ部102の被施療者U側、及び、被施療者Uの正面側を「前側」ということがある。また、背凭れ部102の被施療者Uとは反対側、及び、被施療者Uの背面側を「後側」ということがある。また、背凭れ部102が起立した状態のマッサージ機100に着座した被施療者Uから見て上側(頭側)を「上側」といい、下側(脚側)を「下側」という。また、背凭れ部102が起立した状態のマッサージ機100に着座した被施療者Uから見て右側を「右側」といい、左側を「左側」という。
【0012】
<1.マッサージ機100>
マッサージ機100は、座部101と、背凭れ部102と、施療ユニット103と、左右一対の立設部104と、左右一対の肘掛け部105と、オットマン106と、を備える。
【0013】
座部101は、被施療者Uの臀部及び太腿部を支持する。
【0014】
背凭れ部102は、座部101の後端部に配置される。背凭れ部102は、被施療者Uの頭、胴部(たとえば肩部、腰部、及び背中)などを支持する。背凭れ部102は、座部101の後端部に接続され、左右方向に沿って延びる回転軸Jを中心にして回転可能である。背凭れ部102は、回転軸Jを中心とする回転により、後側に倒したり前側に起き上がったりすることが可能である。背凭れ部102は、図1に示すように、枕部1021を有する。枕部1021は、背凭れ部102の上端部に配置され、被施療者Uの頭部、首部などを支持する。
【0015】
施療ユニット103は、被施療者Uの胴部及び首部を施療可能である。施療ユニット103は、背凭れ部102に配置される。施療ユニット103は、背凭れ部102に沿って左右方向と垂直な方向に移動可能である。たとえば、施療ユニット103は、背凭れ部102に設けられる左右一対のガイドレール1031によって案内される。施療ユニット103は、背凭れ部102の長手方向に昇降可能である。長手方向は、たとえば背凭れ部102に凭れ掛かる被施療者Uの臀部(又は腰部)から頭部に向かう方向である。
【0016】
立設部104は、座部101の左右方向の両側に立設して設けられ、肘掛け部105を支持する。
【0017】
肘掛け部105は、立設部104の上部に配置される。一対の肘掛け部105は、座部101の左右方向における両側に配置され、被施療者Uの前腕部及び手を支持する。左右一対の肘掛け部105は、互いに左右対称の形状である。
【0018】
オットマン106は、座部101の前端部に回転可能に支持され、被施療者Uの下腿部及び足部を収容する。オットマン106は、座部101の前端部の下側において左右方向に沿って延びる回転軸(図示省略)を中心にして回転可能である。
【0019】
<1-1,マッサージ機100の制御系>
次に、図2を参照して、マッサージ機100の制御系の構成例を説明する。図2は、マッサージ機100の動作を制御する制御系を示すブロック図である。
【0020】
図2に示すように、マッサージ機100は、入力部1071と、記憶部1072と、制御部108と、アクチュエータ群1091と、ポンプ1092と、電磁弁群1093と、をさらに備える。
【0021】
入力部1071は、被施療者Uなどの入力操作を受け付け、入力操作に基づく信号を制御部108に出力する。入力操作は、後述する移動部4の駆動、施療パターンの選択、施療の強弱調整などを含む。入力部1071はコード線を介して制御部108に接続される。入力部1071は、スタンド(符号省略)に対して装着及び取り外しが可能である。スタンドは、座部101の左側に配置された肘掛け部105に固定される。
【0022】
記憶部1072は、電力供給が停止しても記憶した情報を保持する非一過性の記憶媒体である。記憶部1072は、たとえば、制御部108がマッサージ機100の動作を制御するために必要なプログラム及びデータを記憶している。
【0023】
制御部108は、たとえば座部101の下側に配置され、入力部1071から出力される信号などに基づいて、マッサージ機100の各部を制御する。たとえば、制御部108は、施療ユニット103の駆動及び昇降、アクチュエータ群1091、ポンプ1092、及び、電磁弁群1093を制御する。
【0024】
アクチュエータ群1091は、複数のアクチュエータを含む。たとえば、アクチュエータ群1091は、背凭れ部102を回動させる背凭れ部用アクチュエータと、オットマン106を回動させるオットマン用アクチュエータとを含む。また、アクチュエータ群1091は、後述するアクチュエータ404をさらに含む。
【0025】
電磁弁群1093は、マッサージ機100に設けられるエアバッグ群に設けられる電磁弁を含む。ポンプ1092は、電磁弁群1093を介してエアバッグ群に給気する。なお、上述のエアバッグ群は、後述するエアバッグ401を含む。
【0026】
電磁弁は、エアバッグ群の膨張,膨縮状態の維持,収縮を切り替える。詳細には、電磁弁は、ポンプ1092とエアバッグ群との間の連通/遮断を切り替える。たとえば、電磁弁の動作によりポンプ1092とエアバッグとが連通すると、ポンプ1092から電磁弁を介してエアバッグに空気が供給される。これにより、エアバッグが膨張する。また、電磁弁は、エアバッグ群と外部との間の連通/遮断を切り替える。たとえば、電磁弁の動作により外部とエアバッグとが連通すると、エアバッグが電磁弁を介して外部に開放される。これにより、エアバッグ内の空気が排出され、エアバッグが収縮する。また、電磁弁の動作により、エアバッグがポンプ1092とも外部とも連通しなくなると、エアバッグ内の空気の量が保持され、つまり、エアバッグの膨縮状態が維持される。
【0027】
<1-2.背凭れ部102>
次に、図3を参照して、背凭れ部102の詳細な構成を説明する。図3は、表面に配置される布製又は革製のカバー、緩衝材などの外装を外した椅子式マッサージ機100の概略的な斜視図である。
【0028】
背凭れ部102は、ベース部1と、パッド部2と、バックカバー部3と、移動部4と、を有する。
【0029】
<1-2-1.ベース部1>
ベース部1は、座部101の後端部から背凭れ部102の長手方向に延びる。ベース部1の下端部は、座部101の後端部に対して回転可能に接続される。ベース部1は、金属製の部材、又は、金属製のフレームに樹脂が一体成型された部材である。ベース部1の背面は、バックカバー部3で覆われる。
【0030】
ベース部1は、左右一対の縦フレーム部11と、横フレーム部12と、を有する。左右一対の縦フレーム部11は、それぞれ左右方向に広がる板状であって長手方向に延び、左右方向に離れて並ぶ。左右一対の縦フレーム部11の下端部はそれぞれ、座部101の後端部に接続され、回転軸J回りに回転可能である。横フレーム部12は、左右方向に延び、左右一対の縦フレーム部11の上端部間を接続する。
【0031】
左右方向において、一対の縦フレーム部11間には、長手方向に移動可能な施療ユニット103が配置される。施療ユニット103の前端部は、一対の縦フレーム部11、後述する一対の第1パッド部21よりも前側に突出する。これにより、施療ユニット103は、背凭れ部102に接する被施療者Uを施療できる。
【0032】
<1-2-2.パッド部2>
パッド部2は、施療ユニット103を挟んで左右方向に並んでベース部1の前側に配置され、被施療者Uの胴部及び頭部を支持する。パッド部2は、左右一対の第1パッド部21と、第2パッド部22と、被覆部23と、左右一対のサイド支持部24と、頭首受け部25と、を有する。第1パッド部21、第2パッド部22(及び頭首受け部25)はそれぞれ、たとえば、ベース部1よりも軟質の材料(高反発発泡ウレタンなど)で形成される。但し、この材料は、被施療者Uの後述する被押圧部分に対する移動部4の押圧の吸収を十分に抑制又は防止できる程度の硬さを有する。言い換えると、後述するように移動部4が被押圧部分を押圧しても、第1パッド部21、第2パッド部22(及び頭首受け部25)は、それぞれ形状を維持でき、移動部4の沈み込みを十分に抑制又は防止できる程度の硬さを有する。
【0033】
一対の第1パッド部21は、それぞれ左右方向に広がる板状である。一対の第1パッド部21は、長手方向に延び、施療ユニット103を挟んで左右方向に離れて並ぶ。左側の第1パッド部21は、左側の縦フレーム部11の前側に配置される。右側の第1パッド部21は、右側の縦フレーム部11の前側に配置される。
【0034】
各々の第1パッド部21の上部は、被施療者Uの肩部を支持する。第1パッド部21の中間部は、被施療者Uの肩部よりも下側且つ腰部よりも上側を支持する。第1パッド部21の下部は、上部よりも前側に突出し、被施療者Uの腰部を支持する。
【0035】
第2パッド部22は、左右方向に延びて、一対の第1パッド部21の上端部間を接続する。第2パッド部22は、横フレーム部12の前側に配置される。
【0036】
被覆部23は、一対の第1パッド部21間に配置される。被覆部23は、たとえば一対の第1パッド部21間に配置される伸縮性を有する布地であり、施療ユニット103及びガイドレール1031よりも前方に配置される。被覆部23は、施療ユニット103とともに、一対の第1パッド部21及び第2パッド部22で囲まれた開口(符号省略)を覆う。被覆部23は、施療ユニット103の施療子1030の形状及び動作に合わせて伸縮する。該施療子1030は、背凭れ部102の外装、被覆部23などを介して施療部位に接する。従って、被覆部23は、施療ユニット103の施療を十分に被施療者Uの施療部位に伝達することができる。但し、本実施形態の例示は、被覆部23が省略される構成を排除しない。
【0037】
左右一対のサイド支持部24は、第1パッド部21の左右方向両端部にそれぞれ配置される。左側のサイド支持部24は、左側の第1パッド部21の左端部において、被施療者Uよりも左側に配置される。左側のサイド支持部24は、左側の第1パッド部21よりも前側に突出し、背凭れ部102の長手方向に広がる。右側のサイド支持部24は、右側の第1パッド部21の右端部において、被施療者Uよりも右側に配置される。右側のサイド支持部24は、右側の第1パッド部21よりも前側に突出し、背凭れ部102の長手方向に広がる。
【0038】
頭首受け部25は、被施療者Uの頭部又は首部を支持する。詳細には、頭首受け部25は、凹部221を有する。凹部221は、第2パッド部22の下端部から上側に凹むとともに、第2パッド部22の前端部から後側に凹む。また、頭首受け部25の前側には、枕部1021(図1参照)が配置される。たとえば、枕部1021の上端部は、第2パッド部22の上端部に装脱着可能に取り付けられる。被施療者Uの頭部が枕部1021に凭れる際、枕部1021の後端部は、後側に沈み込んで、頭首受け部25内に配置される。但し、本実施形態の例示は、頭首受け部25が省略される構成を排除しない。
【0039】
<1-3.移動部4>
次に、図3図5Bを参照して、移動部4を説明する。図4は、パッド部2に対する移動部4の配置例を示す斜視図である。図5Aは、移動部4の構成例を示す断面図である。図5Bは、移動部4の他の構成例を示す断面図である。
【0040】
移動部4は、パッド部2の前側に配置され、被施療者Uを押圧可能である。各々の移動部4は、被施療者Uの身体のうち、該移動部4と前後方向に対向する部位を押圧できる。なお、以下では、この部位を「被押圧部分」と呼ぶ。少なくとも一部の移動部4は、被施療者Uの被押圧部分を前後方向において独立に移動させることができる。また、本実施形態では、移動部4の前面は、布製又は革製のカバーで直接に覆われる。こうすれば、移動部4は、被押圧部分に作用する圧力の緩衝を抑制でき、被施療者Uを十分に押圧できる。従って、被施療者Uの被押圧部分を効率良く移動させることができる。但し、この例示は、移動部4の前面とカバーとの間に緩衝材が配置される構成を排除しない。この場合、緩衝材は、移動部4による押圧の吸収を十分に抑制又は防止できる程度に薄く、硬くされる。
【0041】
移動部4が被施療者Uの被押圧部分を前後方向に移動させることにより、施療ユニット103に対する前後方向の被施療者Uの位置が可変される。これにより、施療ユニット103の強度設定では調整しきれない程度の施療強度を微調整できる。また、施療ユニット103での施療強度設定のみの場合と比べて、施療ユニット103の施療子1030の突出範囲及びその駆動機構を大きくしなくても、施療強度の調整範囲をより広くできる。従って、背凭れ部102の大型化を防止でき、その美観も維持できる。また、各々の移動部4を独立して移動させることにより、被施療者Uと接する背凭れ部102の前面の形状を部分的に変化させることができる。これにより、被施療者の背中の形状に背凭れ部102の前面の形状をよりフィットさせることができる。従って、被施療者Uに心地よい凭れ心地を提供できる。
【0042】
なお、椅子式マッサージ機には、背凭れ部102の前面にクッションシート(図示省略)が配置される機種がある。クッションシートは、緩衝材を内包した背パッドであり、背凭れ部102の前面を覆う。このような機種では、クッションシートの厚さ、背凭れ部102の前面に重ねられる枚数などを適宜変更することのみでも、施療ユニット103の施療強度の調整を実施することはできる。しかしながら、この場合、たとえばクッションシートの取り外し、めくりあげなどを所望の施療強度になるまで手動で行う必要があり、大変に面倒である。また、クッションシートの厚さ、枚数の変更のみでは、移動部4を用いた場合と比べて、施療強度を大きく調整できるが、施療強度の微調整は難しい。また、背凭れ部102に対するクッションシートの装着手段が複雑になり、マッサージ機100の美観が低下する虞がある。また、背凭れ部102の前面の形状を部分的に変化させることができないので、背凭れ部102の前面の形状を被施療者の背中の形状に合わせて適宜変化させることができない。
【0043】
対して、本実施形態のマッサージ機100では、クッションシートの厚さ、枚数の変更に依らずとも、移動部4により施療ユニット103の施療強度を容易に調整できる。ここで、本実施形態では、マッサージ機100の背凭れ部102には、クッションシートは装着されない。こうすれば、移動部4は、クッションシートの厚さ、枚数、柔軟性で圧力が軽減されることなく、被施療者Uを十分に押圧できる。従って、被施療者Uの被押圧部分を効率良く移動させることができる。但し、この例示は、マッサージ機100がクッションシートを有する構成を排除しない。この場合、背凭れ部102に装着されるクッションシートは、移動部4による押圧の吸収を十分に抑制又は防止できる程度に薄く、硬くされる。また、クッションシートの枚数は、移動部4による押圧の吸収を十分に抑制又は防止できる程度に少なくされる。好ましくは、クッションシートは背凭れ部102に対して装脱着可能である。また、好ましくは、マッサージ機100は、背凭れ部102からクッションシートをめくりあげて使用できる。
【0044】
各々の移動部4は、予め定められた施療プログラムなどに基づいて自動で駆されてもよい。但し、この例示に限定されず、マッサージ機100は、入力部1071により指定された移動部4で被施療者Uを押圧してもよい。こうすれば、手動の入力操作に応じて、所望の移動部4を駆動できる。従って、被施療者Uは、施療ユニット103の施療強度設定を変化させることなく、施療ユニット103での施療強度を任意に調整できる。
【0045】
本実施形態では、図5Aに示すように、各々の移動部4は、膨縮可能なエアバッグ401を有する。こうすれば、マッサージ機100は、エアバッグ401の膨縮により被施療者Uの被押圧部分を前後方向に移動させることができる。たとえば、エアバッグ401の膨張により被押圧部分を前側に移動させることができる。一方、エアバッグ401を取縮させることにより、被施療者Uの自重によって被押圧部分は後側(背凭れ部102側)に移動する。被押圧部分の前後方向における移動量は、エアバッグ401の膨張量により微調整できる。
【0046】
また、各々の移動部4は、エアバッグ401の前側に配置される板状部材402をさらに有する。板状部材402は、長手方向及び左右方向に広がり、被施療者Uの被押圧部分と前後方向に対向する。こうすれば、エアバッグ401の膨張により被押圧部分を広い範囲で押圧できる。従って、被押圧部分を前側に移動させ易くなる。但し、この例示は、図4において少なくとも一部の移動部4が板状部材402を有さない構成を排除しない。
【0047】
なお、移動部4の構成は、本実勢形態の例示に限定されない。図5Bに示すように、各々の移動部4は、板状部材403と、アクチュエータ404と、を有してもよい。板状部材403は、長手方向及び左右方向に広がり、被施療者Uの被押圧部分と前後方向に対向する。アクチュエータ404は、板状部材403を前後方向に移動させる。
【0048】
詳細には、板状部材403は、背凭れ部102の外装などを介して、被施療者Uの被押圧部分と前後方向に対向する。パッド部2の表面上には、アクチュエータ404の支持板4041が配置される。シリンダ4042は、支持板4041の法線方向に延びる筒状であって、支持板4041上に固定される。アクチュエータ404は、シリンダ4042内に収納されたロッド4043を板状部材403とともに、支持板4041の法線方向に進退させる。
【0049】
なお、法線方向は、支持板4041のうちのシリンダ4042の固定面と垂直な方向である。また、アクチュエータ404の駆動手段は、特に限定しない。たとえば、アクチュエータ404は、エアアクチュエータであってよいし、電動アクチュエータであってもよい。
【0050】
アクチュエータ404が板状部材403を被施療者Uに対して進退させることにより、被施療者Uの被押圧部分を前後方向に移動させることができる。たとえば、アクチュエータ404が板状部材403を被施療者Uに向かって前進させることにより、被押圧部分を前側に移動させることができる。一方、アクチュエータ404が板状部材403を被施療者Uから後退させることにより、被施療者Uの自重によって被押圧部分は後側(背凭れ部102側)に移動する。被押圧部分の前後方向における移動量は、アクチュエータ404の駆動量により調整できる。
【0051】
なお、全ての移動部4が図5Aの構成であってもよく、全ての移動部4が図5Bの構成であってもよい。或いは、一部の移動部4が図5Aの構成であり、他の一部の移動部4が図5Bの構成であってもよい。
【0052】
次に、長手方向に並ぶ移動部4は、第1移動部41と、第2移動部42と、第3移動部43と、を有する。第1移動部41~第3移動部43は、背凭れ部102の長手方向に複数並んでパッド部2の前側に配置され、被施療者Uを押圧可能である。なお、第1移動部41~第3移動部43は、本発明の「移動部」の一例である。第1移動部41は、各々の第1パッド部21の上部の前側に配置される。第1移動部41は、被施療者Uの肩部を押圧可能である。第2移動部42は、各々の第1パッド部21の中間部の前側に配置される。第2移動部42は、被施療者Uの肩部よりも下側且つ腰部よりも上側の部分を押圧可能である。第3移動部43は、各々の第1パッド部21の下部の前側に配置される。第3移動部43は、被施療者Uの腰部を押圧可能である。
【0053】
こうすれば、背凭れ部102の前面のうち、被施療者Uの肩部、腰部、及び両者間の中間部と接する部分の前後方向における位置をそれぞれ独立に調整できる。さらに、被施療者Uの肩部から腰部までを含む胴部全体を移動させることもできる。なお、一の第1パッド部21に配置される第1移動部41~第3移動部43はそれぞれ、単数であってもよいし、複数であってもよい。また、後者の場合、各々が独立に駆動されてもよい。
【0054】
<1-4.移動部4を用いた施療例>
次に、移動部4を用いたマッサージ機100の施療例を説明する。
【0055】
<1-4-1.第1施療例>
図6は、第1施療例を示す概略図である。マッサージ機100は、左右方向から見て少なくとも一部が施療ユニット103と重なる移動部4により被施療者Uを押圧する。こうすれば、上述の移動部4の押圧により、施療ユニット103の施療強度を簡易且つ迅速に調整できる。
【0056】
たとえば、施療ユニット103による肩部の施療強度が強いと感じた場合、被施療者Uは、入力部1071の操作などによって、第1移動部41により被施療者Uの肩部を前側に移動させる。これにより、施療ユニット103の施療部位も前側に移動する。従って、施療ユニット103に掛かる施療部位の自重が軽くなるので、その施療強度を弱めることができる。一方、肩部の施療強度が弱いと感じた場合、被施療者Uは、入力部1071の操作などによって、第1移動部41により被施療者Uの肩部を後側に移動させる。これにより、施療ユニット103の施療部位も後側に移動する。従って、施療ユニット103に掛かる施療部位の自重が重くなるので、その施療強度を強めることができる。
【0057】
なお、マッサージ機100は、他の施療部位(腰部、背中の中間部など)でも同様に、施療強度を調整できる。また、施療強度の変化量は、被押圧部分の移動量により調整できる。たとえば、移動量を短くすれば、施療強度を微調整できる。また、移動量を長くすれば、施療強度を大きく調整できる。
【0058】
また、上述の施療強度調整では、左右方向から見て少なくとも一部が施療ユニット103と重なる移動部4のみを駆動する。一方で、他の移動部4は駆動しない。但し、この例示は、他の移動部4も駆動される構成を排除しない。
【0059】
たとえば、左右方向から見て少なくとも一部が施療ユニット103と重なる移動部4と長手方向に隣接する移動部4がさらに駆動されてもよい。こうすれば、被施療者Uの施療部位のみが前側に突出又は後退することを防止できる。従って、被施療者Uは、楽な姿勢で施療を受け続けることができる。
【0060】
又は、第1パッド部21に配置される第1移動部41~第3移動部43が同様に駆動されてもよい。こうすれば、被施療者Uは、胴部の姿勢を変えることなく、楽に施療を受け続けることができる。
【0061】
或いは、施療ユニット103で胴部の長手方向における端部(肩部、腰部など)を施療する場合、マッサージ機100は、胴部の反対側の端部を前後方向に移動させてもよい。
【0062】
<1-4-2.第2施療例>
図7は、第2施療例を示す概略図である。施療ユニット103が被施療者Uの肩部を施療する際、腰部を押圧可能な移動部4により被施療者Uを押圧してもよい。第3移動部43の押圧により腰部を前側に移動させることで、被施療者Uの肩部は、後側に移動して、施療ユニット103に強く押し付けられる。また、第3移動部43の押圧を弱めて腰部を後側に移動させることで、被施療者Uの肩部は、前側に移動する。これにより、施療ユニット103に対する肩部の押し付けが軽くなる。従って、施療ユニット103の施療強度設定を変化させることなく、施療ユニット103での肩部の施療強度を強めることができる。
【0063】
<1-4-3.第3施療例>
図8は、第3施療例を示す概略図である。施療ユニット103が被施療者Uの腰部を施療する際、肩部を押圧可能な移動部4により被施療者Uを押圧してもよい。第1移動部41の押圧により肩部を前側に移動させることで、被施療者の腰部は、後側に突き出され、施療ユニット103に強く押し付けられる。また、第1移動部41の押圧を弱めて肩部を後側に移動させることで、被施療者Uの腰部は、前側に戻る。これにより、施療ユニット103に対する腰部の押し付けが軽くなる。従って、施療ユニット103の施療強度設定を変化させることなく、施療ユニット103での腰部の施療強度を強めることができる。
【0064】
<1-4-4.第4施療例>
このほか、マッサージ機100は、施療プログラムの開始時に実施される体形検知モードを有する。体形検知モードは、本発明の「検知モード」の一例であり、長手方向における被施療者Uの胴部の背面に沿う曲線の形状を検知する。たとえば、施療プログラムの開始時において、マッサージ機100は、被施療者Uの背面を施療子1030にて一定の圧力で押圧した状態で、施療ユニット103を頭部又は首部から腰部に向かって下降させる。この際、施療子1030は、被施療者Uに対する圧力が弱まると前進して被施療者Uに近付き、被施療者Uに対する圧力が強まると後退して被施療者Uから遠ざかる。従って、マッサージ機100は、施療ユニット103の下降中における施療子1030の前後方向に位置の変化に基づいて、被施療者Uの背面形状を検知できる。
【0065】
マッサージ機100は、体形検知モードでの検知結果に基づいて、各々の移動部4は、被施療者Uの被押圧部分を前後方向に移動させてもよい。こうすれば、体形検知モードでの検知結果に基づいて、被施療者Uと接する背凭れ部102の前面の形状を変化させることができる。従って、背凭れ部102の前面の形状を被施療者の胴部及び首部の背面にフィットさせることができる。また、この状態を初期状態として任意の移動部4を駆動することにより、各々の移動部4の基準位置を決定することができる。従って、施療ユニット103の施療強度をより適切に調整できる。
【0066】
<1-4-5.第5施療例>
また、一部の移動部4は、第1パッド部21以外の前側の部分に配置されてもよい。たとえば移動部4は、第2パッド部22の前側に配置される第4移動部44を有してもよい。第4移動部44は、被施療者Uの頭部又は首部を前後方向に移動させることが可能であってもよい。図2及び図4では、第4移動部44は、第2パッド部22の凹部221内に配置される。第4移動部44により、施療ユニット103での首部の施療強度を微調整できる。なお、この例示は、第4移動部44が省略される構成を排除しない。
【0067】
<2.備考>
上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0068】
<3.総括>
以下では、これまでに説明してきた実施形態について総括的に述べる。
【0069】
例えば、本明細書中に開示されている椅子式マッサージ機は、
被施療者の臀部を支持する座部と、
前記座部の後端部に配置される背凭れ部と、
被施療者の胴部を施療可能な施療ユニットと、
を有し、
前記施療ユニットは、被施療者の臀部から頭部に向かう前記背凭れ部の長手方向に昇降可能であって、
前記背凭れ部は、
前記座部の後端部から前記長手方向に延びるベース部と、
前記施療ユニットを挟んで左右方向に並んで前記ベース部の前側に配置され、被施療者の胴部を支持するパッド部と、
前記長手方向に複数並んで前記パッド部の前側に配置され、被施療者を押圧可能な移動部と、
を有し、
少なくとも一部の前記移動部は、被施療者の被押圧部分を前後方向において独立に移動させることが可能である構成(第1の構成)とされる。
【0070】
上記第1の構成の椅子式マッサージ機は、各々の前記移動部は、膨縮可能なエアバッグを有する構成(第2の構成)であってもよい。
【0071】
或いは、上記第1の構成の椅子式マッサージ機は、
各々の前記移動部は、
被施療者の前記被押圧部分と前後方向に対向する板状部材と、
前記板状部材を前後方向に移動させるアクチュエータと、
を有する構成(第3の構成)であってもよい。
【0072】
上記第1~第3のいずれかの構成の椅子式マッサージ機は、
前記長手方向に並ぶ前記移動部は、
被施療者の肩部を押圧可能な第1移動部と、
被施療者の肩部よりも下側且つ腰部よりも上側の部分を押圧可能な第2移動部と、
被施療者の腰部を押圧可能な第3移動部と、
を有する構成(第4の構成)であってもよい。
【0073】
上記第1~第4のいずれかの構成の椅子式マッサージ機は、左右方向から見て少なくとも一部が前記施療ユニットと重なる前記移動部により被施療者を押圧する構成(第5の構成)であってもよい。
【0074】
上記第1~第5のいずれかの構成の椅子式マッサージ機は、前記施療ユニットが被施療者の肩部を施療する際、腰部を押圧可能な前記移動部により被施療者を押圧する構成(第6の構成)であってもよい。
【0075】
上記第1~第6のいずれかの構成の椅子式マッサージ機は、前記施療ユニットが被施療者の腰部を施療する際、肩部を押圧可能な前記移動部により被施療者を押圧する構成(第7の構成)であってもよい。
【0076】
上記第1~第7のいずれかの構成の椅子式マッサージ機は、
入力操作を受け付ける入力部をさらに備え、
前記入力部により指定された前記移動部で被施療者を押圧する構成(第8の構成)であってもよい。
【0077】
上記第1~第8のいずれかの構成の椅子式マッサージ機は、
前記長手方向における被施療者の胴部の背面に沿う曲線の形状を検知する検知モードを有し、
前記検知モードでの検知結果に基づいて、各々の前記移動部は、被施療者の被押圧部分を前後方向に移動させる構成(第9の構成)であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
100 (椅子式)マッサージ機
101 座部
102 背凭れ部
1021 枕部
103 施療ユニット
1030 施療子
1031 ガイドレール
104 立設部
105 肘掛け部
106 オットマン
1071 入力部
1072 記憶部
108 制御部
1091 アクチュエータ群
1092 ポンプ
1093 電磁弁群
1 ベース部
11 縦フレーム部
12 横フレーム部
2 パッド部
21 第1パッド部
22 第2パッド部
221 凹部
23 被覆部
24 サイド支持部
25 頭首受け部
3 バックカバー部
4 移動部
41 第1移動部
42 第2移動部
43 第3移動部
44 第4移動部
401 エアバッグ
402,403 板状部材
404 アクチュエータ
4041 支持板
4042 シリンダ
4043 ロッド
U 被施療者
J 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8