(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027306
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】伸縮波形被覆管及び複合管
(51)【国際特許分類】
F16L 11/11 20060101AFI20240222BHJP
F16L 11/20 20060101ALI20240222BHJP
F16L 11/12 20060101ALI20240222BHJP
F16L 59/153 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
F16L11/11
F16L11/20
F16L11/12 L
F16L59/153
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129995
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金平 豊
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 孝輔
(72)【発明者】
【氏名】湯川 雅己
【テーマコード(参考)】
3H036
3H111
【Fターム(参考)】
3H036AA01
3H036AB32
3H111AA02
3H111BA15
3H111CA14
3H111CB14
3H111CB22
3H111DA15
3H111DB03
(57)【要約】
【課題】保持突起を確実に避けてカットすることができる伸縮波形被覆管とこれを備えた複合管を提供すること
【解決手段】可撓性の内管10を被覆する伸縮波形被覆管20は、管軸方向に交互に配置された環状の山部21及び環状の谷部22と、管軸方向と周方向に分散し互いに独立して配置されるとともに前記谷部22よりも径方向内方向に突出し、その先端により前記内管10を管軸と実質的に同心に保持する保持突起23と、を備え、前記保持突起23は、その一部が前記山部21に形成され、山部21に凹状の切り欠き部21aを有している。また、複合管1は、伸縮波形被覆管20と内管10を備え、前記伸縮波形被覆管20には、谷部22よりも管内側へ突出する複数の保持突起23が互いに分散して形成されており、伸縮波形被覆管20の内面と内管10の外面との間に前記保持突起23により空気層が形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の内管を被覆する伸縮波形被覆管であって、
管軸方向に交互に配置された環状の山部及び環状の谷部と、
管軸方向と周方向に分散し互いに独立して配置されるとともに前記谷部よりも径方向内方向に突出し、その先端により前記内管を管軸と実質的に同心に保持する保持突起と、
を備え、
前記保持突起は、その一部が前記山部に形成され、山部に凹状の切り欠き部を有することを特徴とする伸縮波形被覆管。
【請求項2】
外面から視認した前記切り欠き部の軸方向の最大幅は、前記谷部の軸方向の幅の110%以上であることを特徴とする請求項1に記載の伸縮波形被覆管。
【請求項3】
前記切り欠き部は、3辺以上で構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の伸縮波形被覆管。
【請求項4】
前記切り欠き部は、円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の伸縮波形被覆管。
【請求項5】
前記保持突起は、少なくとも1つの前記谷部と、1つの前記山部の一部を管軸方向に横切るように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の伸縮波形被覆管。
【請求項6】
前記保持突起の前記谷部との接続部に、管軸方向に平行なフラット部を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の伸縮波形被覆管。
【請求項7】
発泡倍率1.05倍~4倍の発泡樹脂を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の伸縮波形被覆管。
【請求項8】
低密度ポリエチレンを主成分とすることを特徴とする請求項1または2に記載の伸縮波形被覆管。
【請求項9】
請求項1または2に記載の伸縮波形被覆管と内管を備え、前記伸縮波形被覆管には、谷部よりも管内側へ突出する複数の内管保持突起が互いに分散して形成されており、伸縮波形被覆管の内面と内管の外面との間に前記内管保持突起により空気層が形成されていることを特徴とする複合管。
【請求項10】
前記谷部の内周部と前記内管の外周部との間に、平均値が4mm以上の径方向隙間が形成されていることを特徴とする請求項9に記載の複合管。
【請求項11】
前記内管が、架橋ポリエチレン、ポリブテン、耐熱ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレンから選択された1以上の樹脂を含み、または前記1以上の樹脂と金属を含むことを特徴とする請求項9に記載の複合管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体輸送に好適な可撓性の内管に被せる伸縮波形被覆管及びこの伸縮波形被覆管と内管を備えた複合管に関する。
【背景技術】
【0002】
給水給湯用の可撓管(内管)を保護する可撓性の被覆管として、山部と谷部が交互に配置された波形被覆管は公知である。この波形被覆管は、内管を継手に接続する際に内管を露出させる必要があるため、管軸方向に伸縮し易くなっている。
【0003】
このような伸縮波形被覆管を用いた複合管では、継手先端ないしは継手外径と伸縮波形被覆管外径の大きさの関係により、伸縮波形被覆管の端部は、継手の外面と接触(特許文献1参照)ないしは先端のテーパ部を隠蔽する形で継手の半ばまで覆ったり、継手全体を覆う形態となる場合がある。何れにしても、継手の外周面と伸縮波形被覆管の内面が密着すると、伸縮波形被覆管内の空気の出入りを効果的に抑制することができる。
【0004】
また、継手の外周面と伸縮波形被覆管の内周面との密着を図るため、継手に専用のアダプターを取り付けて両者を密着させる方法も過去には提案されている(特許文献2参照)。費用アップをしても継手と被覆管を密着させることに価値がある証左である。
【0005】
この継手と伸縮波形被覆管との密着に関して、近年研究されている伸縮波形被覆管では不安定となり得る事象が考えられる。それは、特許文献3,4に示されるような、内管を保持する保持突起により伸縮波形被覆管と内管との間での音の発生を防ぐ工夫のものとの組み合わせである。
【0006】
不安定となる状況とは、特許文献3,4に記載されたものは、外面からは保持突起の位置がよく分からないために、保持突起の直前で複合管を切断ないしは斜め切断した場合に、伸縮波形被覆管の端が継手外周面にうまく密着されない場合がある。
【0007】
さらに、特許文献3,4に記載されたものは、全周に谷部が突出しているため、突出部分は、他の山谷部分よりも表面積が広くなる。
【0008】
上記特許文献において提案されたものは、音対策として伸縮波形被覆管と内管の隙間がそもそも狭いものであって、一定間隔でさらに隙間を狭くするものであるために成立するが、呼び径25以下の可撓管に巻く伸縮波形被覆管で、空気断熱層を4mm程度確保する目的の保持突起の場合では、この部分の肉厚が薄くなり過ぎて破れ易くなるために不適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4190923号公報
【特許文献2】特開2005-180546号公報
【特許文献3】特開2010-210041号公報
【特許文献4】特許第4587735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者は、保温性能を向上させる工夫として、伸縮波形被覆管に保持突起を設け、内管全周に効果的な空気層を形成する新システムを考案した。この方式は、過去の伸縮波形被覆管よりも保温性に優れる長所を有するが、反面、この保持突起が管端に位置する状態で切断された場合、伸縮波形被覆管と継手との密着性が逆に妨げられ、末端の保温性能が落ちてしまう可能性が考えられる。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、保持突起を確実に避けてカットすることができる伸縮波形被覆管とこれを備えた複合管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するための本発明は、可撓性の内管を被覆する伸縮波形被覆管であって、管軸方向に交互に配置された環状の山部及び環状の谷部と、管軸方向と周方向に分散し互いに独立して配置されるとともに前記谷部よりも径方向内方向に突出し、その先端により前記内管を管軸と実質的に同心に保持する保持突起と、を備え、前記保持突起は、その一部が前記山部に形成され、山部に凹状の切り欠き部を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る複合管は、前記伸縮波形被覆管と内管を備え、前記伸縮波形被覆管には、谷部よりも管内側へ突出する複数の保持突起が互いに分散して形成されており、伸縮波形被覆管の内面と内管の外面との間に前記保持突起により空気層が形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明者は、伸縮波形被覆管の保持突起部分の軸方向の幅を、谷の軸方向の幅よりも大きくすることによって、外面から保持突起の位置に当たる切り欠き部を視認し易くし、施工者に突起の位置を認識させるシステムを考案した。突起を認識した施工者が、切断時に突起部を含めて切り落とすことによって、突起が妨げとなる継手との密着不良を容易に回避することができる。具体的には、保持突起周囲の切り欠き部を谷幅より部分的に大きくするというものである。
【0015】
保持突起が延設され、全周に亘って設置されると、谷幅が多少広くても、または狭くて保持突起を見過ごしてしまうおそれがある。また、突起状としても谷の幅以内に納まるとやはり見過ごされるおそれがある。
【0016】
しかし、外面から見た谷の幅に乱れがあれば、視認性が非常に向上することが分かった。
そして、この突起は軸方向での設置間隔を10mm以上200mm以下とすることが好適である。最小値の10mmは、保持突起が確実に連続でないための下限値であり、上限値とした200mmとは、作業中に一瞥で視野に入る範囲であるから、必ずこの範囲には保持突起があるとして作業者に保持突起の位置を確認しようとする意識を持たせることができるためである。
【0017】
また、保持突起を示す外面上の切り欠き部が円周上に3点ないし4点あれば、伸縮波形被覆管を一方向から確認しても容易に保持突起の位置を認識することができる。
【0018】
好ましくは、保持突起の幅は、谷部の幅よりも110%以上広く、山部の部分も切り欠いて設置することで視認することが可能となる。
【0019】
山部に形成される切り欠き部は、2つの辺を有する三角形としても良く、さらに好ましくは3つの辺を有する四角形とすると視認性をより向上させることができる。
【0020】
また、山部に形成される切り欠き部は、円弧状または円弧と辺の組み合わせとしても良い。
【0021】
さらに、山部に形成される切り欠き部は、谷部に接する片側でも、谷部を挟む2つの山部の両側に切り欠き部を設ける方法でも良い。好ましくは、山部の両側を切り欠く形態の方がより一層視認性を向上させることができる。
【0022】
また、型からの抜き勾配を考慮し、側壁の角度を変更したり、扁平強度を高めるために側壁にフラット部を設けても良い。なお、保持突起の軸方向は、先端はR面取りを有する略V字形状であるが、この部分にもフラット部があってもよく、鉛直方向との傾斜角が左右で異なってもよい。
【0023】
また、伸縮波形被覆管は、伸縮性を向上させるため、発泡樹脂とすることが好適である。好ましくは、発泡倍率は1.05倍~4倍、さらに好ましくは1.2倍~2.5倍である。
【0024】
さらに、伸縮波形被覆管は、伸縮性を向上させるため、ポリエチレンを主成分とすることが望ましい。さらに好ましくは、低密度ポリエチレンを主成分にすると、より柔軟性を高めることが容易である。
【0025】
伸縮波形被覆管は、内管との組み合わせで複合管として使用することを想定しており、複合管として製品化することも可能である。この複合管では、保持突起が内管全周に効果的な空気断熱層を形成するが、保持突起を設ける効果を発揮するため、好ましくは伸縮波形管の谷部内径と可撓性の内管の外周部との間に、平均値が4mm以上の径方向隙間が形成されることが望ましい。
【0026】
また、内管は架橋ポリエチレン、ポリブテン、耐熱ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレンなど、可撓性を有する樹脂単体またはこれらの組み合わせを用いることが可能であり、さらにはこれらと金属との複合による多層管とすることも好適である。さらに、内管は密着されず積層された複数の樹脂層を含む多層管であっても良い。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、伸縮波形被覆管の山部に形成された保持突起を外面から容易に視認することができ、これにより施工者が保持突起を確実に避けて伸縮波形被覆管をカットすることができ、該伸縮波形被覆管と継手との接触部において両者の効果的な密着を図って複合管の保温ロスを小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る伸縮波形被覆管を含む複合管の半裁部分断面図である。
【
図5】(a)~(e)は本発明に係る伸縮波形被覆管の保持突起に形成された切り欠き部の種々の形態を示す
図4と同様の図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る複合管の半裁部分断面図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る複合管の横断面図である。
【
図8】本発明の第4実施形態に係る複合管の半裁部分断面図である。
【
図9】本発明の第5実施形態に係る複合管の半裁部分断面図である。
【
図10】本発明の第6実施形態に係る複合管の半裁部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を
図1~
図3を参照しながら説明する。
【0030】
図1に示すように、複合管1は、可撓性の内管10と、この内管10を覆う可撓性の伸縮波形被覆管(コルゲート管)20を備えており、この複合管1は、例えば給水・給湯用の配管として利用される。この場合、内管10の内部が、水、湯などの流体が通る流体通路となる。
【0031】
内管10は、全長にわたって一定の円形断面に形成され、かつ、可撓性を有している。この内管10としては、架橋ポリエチレン(PE-X)管、ポリブテン(PB)管、ポリエチレン(PE)管、耐熱性ポリエチレン(PE-RT)管、またはこれらの樹脂のうち2以上の樹脂を含む樹脂管を用いることができる。また、上記樹脂のうちの少なくとも1つと金属を含む金属強化樹脂管を用いることもできる。なお、上記は例示であり、可撓性、流体流通性などの所要の性能を確保し得るものであれば、内管10の材質に特に制限はない。
【0032】
伸縮波形被覆管20は、単層の樹脂管からなり、ポリエチレン(PE)管、架橋ポリエチレン(PE-X)管、ポリブテン(PB)管、耐熱性ポリエチレン(PE-RT)管、またはこれら樹脂のうち2以上の樹脂を含む樹脂管を用いることができる。また、発泡化により伸縮波形被覆管20の可撓性を向上させてもよい。この場合、ポリエチレン(PE)を主成分とし、発泡倍率を1.05倍~4倍の低発泡とすることが好ましい。なお、上記は例示であり、可撓性、内管10に対する保護性などの所要の性能を確保し得るものであれば、伸縮波形被覆管20の材質として特に制限はない。
【0033】
図1及び
図2に示すように、伸縮波形被覆管20は、環状の山部21と環状の谷部22を管軸方向に同一ピッチで交互に配することにより、波形断面になっている。
図2に示すように、山部21は径が一定の短円筒形状をなしており、谷部22の断面形状はU字形ないしはV字形をなしている。ここで、1ピッチPは、1つの山部21と1つの谷部22を含む管軸方向寸法として定義される。
【0034】
伸縮波形被覆管20は、さらに管軸方向と周方向に分散配置され互いに独立した保持突起23を有している。本実施形態では、保持突起23は、管軸方向に等間隔おきの形成箇所において、4つの保持突起23が周方向に等間隔をなして形成されている。ここで、保持突起23は、谷部22よりも径方向内方に突出しており、その先端部230は、内管10の外周に接触ないしは接近しており、これにより内管10を伸縮波形被覆管20の管軸と実質的に同心に保持している。
【0035】
保持突起23は、
図2に示すように、管軸方向に対峙する一対の第1側壁231,231を有するとともに、
図3に示すように、周方向に対峙する一対の第2側壁232,232を有している。一対の第1側壁231,231は、径方向内方向に向かって互いに近づくように傾斜しており、これにより保持突起23の管軸方向に沿う断面はV字形をなしている。同様に第2側壁232,232は、径方向内方向に向かって互いに近づくように傾斜しており、これにより保持突起23は、管軸と直交する断面がほぼV字形をなしている。本実施形態では、管軸方向から見た保持突起23の先端230の形状は、凸曲線をなしている。
【0036】
図2に示すように、保持突起23の管軸方向寸法Lは、1ピッチPより長く、本実施形態では、約1.5Pに設定されている。保持突起23は、1つの山部21と2つの谷部22を管軸方向に横切るようにして形成されている。保持突起23の管軸方向の中心は、上記1つの山部21の管軸方向位置と一致している。一対の第1側壁231は、保持突起23の管軸方向中心に対して対称をなし、同一角度で傾斜している。管軸と直交する平面に対する第1側壁231の傾斜角度θ1は20°以上であり、本実施形態では、約30°に設定されている。そして、保持突起23の一対の第1側壁231の根元231aは、上記の横切った2つの谷部22に隣接する2つの山部21にそれぞれ連なっている。
【0037】
図3に示すように、保持突起23の一対の第2側壁232は、該保持突起23の周方向中心に対して対称をなし、同一角度で傾斜している。管軸を含む平面に対する第2側壁232の傾斜角度θ2は20°以上であり、本実施形態では、約45°に設定されている。第2側壁232の根元232aは、保持突起23が横切った1つの山部21と2つの谷部22に連なり、波形を描いている。
【0038】
伸縮波形被覆管20は、保持突起23が内管10を同心に保持することによって、内管10のバタツキを抑えて音鳴りを抑制することができるとともに、保温性を向上させることができる。保持突起23は、管軸方向に分散されているために伸縮波形被覆管20の管軸方向の伸縮性に影響を与えない。また、保持突起23は、周方向に分散されているため、構造物が引っ掛かるリスクを低減することができる。
【0039】
保持突起23は、山部21と谷部22の1ピッチPより長い管軸方向寸法Lを有しており、本実施形態では、約1.5Pの寸法を有しているため、径方向の圧縮強度を高めることができ、延いては伸縮波形被覆管20の径方向の圧縮強度を高めることができる。その結果、内管10に伸縮波形被覆管20を被せた複合管1を積載する場合に、伸縮波形被覆管20が潰れることなく積載可能な荷重を増大させることができる。
【0040】
しかも、一対の第1側壁231が20°より大きな傾斜角度θ1(本実施形態では、約30°)を有してV字形の断面をなし、その根元231aが山部21に連接しており、一対の第2壁部232が20°より大きな傾斜角度θ2(本実施形態では、約45°)を有してV字形の断面をなし、その根元232aが1つの山部21と2つの谷部22に連接しているため、当該伸縮波形被覆管20の径方向の圧縮強度をより一層高めることができる。
【0041】
上述したように、保持突起23は、谷部22の溝幅とは無関係に設定される。換言すれば、保持突起23の管軸方向の寸法Lを広げるために谷部22の溝幅を無理に広げないで済む。そのため、谷部22の溝幅を構造物の角が入り込んで引っ掛かるのを抑制できる幅に制限することができ、例えば、谷部22の溝幅を1ピッチPの35%以下とする。ただし、谷部22は、管軸方向の伸縮性を確保するため(圧縮代を確保するため)に、谷部22の溝幅は1ピッチPの25%以上とする。本実施形態では、谷部22の溝幅は、1ピッチPの約30%に設定されている。これにより、200mmの伸縮波形被覆管20を容易に50mm以上縮めることができる。
【0042】
構造物の角が谷部22の奥まで入らないようにするため、谷部22の溝深さは、溝幅より大とする。また、ほぼ四角錐をなす保持突起23の凹部の深さは、谷部22の溝幅より大とする。
【0043】
ところで、本実施の形態に係る複合管1においては、
図4に示すように、伸縮波形被覆管20に形成された複数の各保持突起23の周方向4箇所(
図4には、2箇所のみ図示)には、山部21の外周部に跨って三角状に切り欠かれた(つまり、2辺が切り欠かれた)凹状の切り欠き部21aが周方向に等角度ピッチ(90°ピッチ)でそれぞれ形成されている。ここで、各切り欠き部21aは、これを外面から視認したとき、その軸方向の最大幅が谷部22の軸方向の幅の110%以上に設定されている。
【0044】
上述のように、伸縮波形被覆管20の各保持突起23の周方向4箇所に、山部21の外周部に跨って三角状に切り欠かれた凹状の切り欠き部21aをそれぞれ形成することによって、これらの切り欠き部21aによって保持突起23を作業者が外部から容易に視認することができ、これにより施工者が保持突起23を確実に避けて伸縮波形被覆管20をカットすることができる。このため、伸縮波形被覆管20と継手との接触部において両者の効果的な密着と複合管1の保温ロスを小さく抑えることができる。
【0045】
また、伸縮波形被覆管20と内管10を備えた複合管1においては、伸縮波形被覆管20に、谷部22よりも管内側へ突出する複数の保持突起23が互いに分散して形成されているため、伸縮波形被覆管20の内面と内管10の外面との間に保持突起23によって空気層が形成されている。このため、空気層の断熱効果によって複合管1の保温性が高められ、この複合管1の内管10を流れる水や温水などの流体の保温性が高められる。
【0046】
ここで、伸縮波形被覆管20の各保持突起23に形成される複数の切り欠き部の種々の形態を
図5(a)~(e)にそれぞれ示す。
【0047】
図5(a)に示す形態では、三角状に切り欠かれた(つまり、2辺が切り欠かれた)凹状の切り欠き部21aが隣接する2つの山部21の外周部に跨って形成されており、
図5(b)に示す形態では、矩形に切り欠かれた(つまり3辺が切り欠かれた)凹状の切り欠き部21bが周方向に等角度ピッチ(90°ピッチ)でそれぞれ形成されている。
【0048】
また、
図5(c)に示す形態では、矩形に切り欠かれた(つまり、3辺が切り欠かれた)凹状の切り欠き部21bが隣接する2つの山部21の外周部に跨って形成されており、
図5(d)に示す形態では、円弧状に切り欠かれた凹状の切り欠き部21cが形成されている。そして、
図5(e)に示す形態では、円弧状に切り欠かれた凹状の切り欠き部21cが隣接する2つの山部21の外周部に跨って形成されている。
【0049】
これらの
図5(a)~(e)に示す種々の形態に係る切り欠き部21a,21b,21cを伸縮波形被覆管10の各保持突起23にそれぞれ形成することによって、これらの切り欠き部21a~21cによって保持突起23を作業者が外部から容易に視認することができ、これにより施工者が保持突起23を確実に避けて伸縮波形被覆管20をカットすることができる。このため、伸縮波形被覆管20と継手との接触部において両者の効果的な密着を図るとともに、複合管1の保温ロスを小さく抑えることができるという前述と同様の効果が得られる。
【0050】
次に、複合管1の他の実施形態について説明する。これらの実施形態においては、第1実施形態に対応する構成部には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0051】
<第2実施形態>
図6に示す第2実施形態の保持突起23の管軸寸法Lは、第1実施形態より長く、保持突起23は、2つの山部21と3つの谷部22を管軸方向に横切るように形成されている。すなわち、一対の第2側壁232の根元232aは、2つの山部21と3つの谷部22にそれぞれ連なっている。一対の第1壁部231の根元231aは、上記2つの山部21と3つの谷部22の管軸方向両側に位置する2つの山部21にそれぞれ連なっている。本実施形態の第1側壁231の傾斜角度θ1は、約45°である。
【0052】
第2実施形態では、保持突起23の管軸寸法Lを第1実施形態よりさらに長くし、第1側壁231の傾斜角θ1を大きくすることにより、伸縮波形被覆管20の径方向の圧縮強度をさらに高めることができる。
【0053】
<第3実施形態>
図7に示す第3実施形態では、管軸方向から見た保持突起23の先端230の形状が内管10に対応した円弧(凹曲線)を描いており、内管10の保持をより安定して行うことができるようになっている。また、径方向外側から圧縮荷重を受けたときに、保持突起23の先端230が滑ることなく内管10の外周に当たるため、圧縮荷重に対する強度を高めることができる。
【0054】
<第4実施形態>
図8に示す第4実施形態では、保持突起23の軸方向断面において、突起を構成する一対の第1側壁231A,231Bの垂直面に対する傾斜角(管断面との傾斜角)を途中でそれぞれ変更している。すなわち、一方(
図8の左側)の第1側壁231Aの傾斜角をα1とα2に2段階に変更しており、傾斜角α2を傾斜角α1よりも大きく設定している(α2>α1)。同様に、他方(
図8の右側)の第1側壁231Bの傾斜角をβ1とβ2に2段階に変更しており、傾斜角β2を傾斜角β1よりも大きく設定している(β2>β1)。なお、本実施の形態では、α1=β1、α2=β2に設定されている。
【0055】
以上のように、保持突起23の軸方向断面において、一対の第1側壁231A,231Bの垂直面に対する傾斜角を途中でそれぞれ変更することによって、伸縮波形被覆管20の径方向の圧縮強度をさらに高めることができる。
【0056】
<第5実施形態>
図9に示す第5実施形態では、保持突起23の軸方向断面において、突起を構成する一対の第1側壁231A,231Bの垂直面に対する傾斜角(管断面との傾斜角)α3とβ3とは同一に設定されており(α3=β3)、これらの第1側壁231A,231Bの谷部22との接続部に、水平な面によるフラット部231A1,231B1がそれぞれ形成されている。
【0057】
以上のように、第1側壁231A,231Bの谷部22との接続部に、水平な面によるフラット部231A1,231B1をそれぞれ形成することによっても、伸縮波形被覆管20の径方向の圧縮強度をさらに高めることができる。
【0058】
<第6実施形態>
図10に示す第6実施形態においては、保持突起23の軸方向断面において、突起を構成する一対の第1側壁231A,231Bの垂直面に対する傾斜角(管断面との傾斜角)α4とβ4とを互いに異ならせている。具体的には、一方(
図10の左側)の第1側壁231Aの傾斜角α4を他方(
図10の右側)の第1側壁231Bの傾斜角β4よりも小さく設定している(α4<β4)。なお、これとは逆に、一方(
図10の左側)の第1側壁231Aの傾斜角α4を他方(
図10の右側)の第1側壁231Bの傾斜角β4よりも大きく設定してもよい(α4>β4)。
【0059】
以上のように、一対の第1側壁231A,231Bの垂直面に対する傾斜角(管断面との傾斜角)α4とβ4とを互いに異ならせることによっても、伸縮波形被覆管20の径方向の圧縮強度をさらに高めることができる。
【0060】
なお、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、例えば給水給湯管に対して適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 複合管
10 内管
20 被覆管
21 山部
22 谷部
23 保持突起
23a~23c 切り欠き部
231 第1側壁
231A,231B 第1側壁
231A1,231B1 フラット部
231a 第1側壁の根元
232 第2側壁
232a 第2側壁の根元
P ピッチ
L 保持突起の管軸方向の寸法
θ1 第1側壁の傾斜角度
α1~α4 第1側壁の傾斜角度
β1~β4 第1側壁の傾斜角度
θ2 第2側壁の傾斜角度