(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027308
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】棒金収納装置
(51)【国際特許分類】
G07D 11/13 20190101AFI20240222BHJP
G07D 11/23 20190101ALI20240222BHJP
【FI】
G07D11/13
G07D11/23
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129997
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 夏子
(74)【代理人】
【識別番号】100190942
【弁理士】
【氏名又は名称】風間 竜司
(72)【発明者】
【氏名】田端 直人
(72)【発明者】
【氏名】金井 拓也
【テーマコード(参考)】
3E141
【Fターム(参考)】
3E141AA08
3E141FC12
3E141KA07
3E141LA44
3E141LA54
(57)【要約】
【課題】棒金の挿入および取り出しの操作性を向上させることを可能とする。
【解決手段】所定方向に沿って形成された棒金収納空間の列を有する棒金トレイと、前記棒金収納空間の列に収納される各棒金の側面に対向するように前記所定方向に沿って設けられた棒金検出基板と、を備え、前記棒金検出基板は、前記棒金収納空間の列に含まれる各棒金収納空間に対応する位置に、棒金の有無に応じて出力が変化するセンサを有し、前記各棒金収納空間は、前記棒金検出基板が設けられる側の第1側壁と、当該第1側壁に対向する第2側壁と、底面と、を有し、前記第2側壁は、前記棒金収納空間において前記棒金が挿抜される挿抜口に向かって前記第1側壁との距離が広がる方向に傾斜する傾斜部と、前記傾斜部と前記底面との間に形成される垂直部と、を有する、棒金収納装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に沿って形成された棒金収納空間の列を有する棒金トレイと、
前記棒金収納空間の列に収納される各棒金の側面に対向するように前記所定方向に沿って設けられた棒金検出基板と、
を備え、
前記棒金検出基板は、前記棒金収納空間の列に含まれる各棒金収納空間に対応する位置に、棒金の有無に応じて出力が変化するセンサを有し、
前記各棒金収納空間は、
前記棒金検出基板が設けられる側の第1側壁と、当該第1側壁に対向する第2側壁と、底面と、を有し、
前記第2側壁は、前記棒金収納空間において前記棒金が挿抜される挿抜口に向かって前記第1側壁との距離が広がる方向に傾斜する傾斜部と、前記傾斜部と前記底面との間に形成される垂直部と、を有する、
棒金収納装置。
【請求項2】
前記第2側壁は、前記垂直部の長さより前記傾斜部の長さが長くなるよう形成される、請求項1に記載の棒金収納装置。
【請求項3】
所定方向に沿って形成された棒金収納空間の列を有する棒金トレイと、
前記棒金収納空間の列に収納される各棒金の側面に対向するように前記所定方向に沿って設けられた棒金検出基板と、
を備え、
前記棒金検出基板は、前記棒金収納空間の列に含まれる各棒金収納空間に対応する位置に、棒金の有無に応じて出力が変化するセンサを有し、
前記棒金収納空間の列に含まれる棒金収納空間は、
前記棒金検出基板が設けられる側の第1側壁と、当該第1側壁に対向する第2側壁と、底面と、前記棒金が載置されるL字部材と、前記L字部材を第2側壁の方向へ回転させる付勢部材と、を有し、
前記第2側壁は、前記棒金収納空間において棒金が挿抜される挿抜口に向かって前記第1側壁との距離が広がる方向に傾斜し、
前記L字部材は、L字が前記第1側壁に対して開く向きに設置され、前記L字部材に前記棒金が載置された際に前記棒金の側面を支える背側部材と、前記棒金が載置される載置面と、前記L字部材の回転軸上に設けられ、前記L字部材を前記棒金トレイに接続する接続部材を有する、
棒金収納装置。
【請求項4】
前記L字部材は、前記棒金が載置されていない状態では、前記付勢部材により、前記接続部材を軸として、前記背側部材が前記第2側壁に沿う姿勢に傾く、請求項3に記載の棒金収納装置。
【請求項5】
前記L字部材は、前記棒金が載置された状態では、前記棒金の重みにより、前記接続部材を軸として、前記棒金が垂直方向となる姿勢に回転する、請求項3に記載の棒金収納装置。
【請求項6】
前記接続部材は、前記L字部材の前記背側部材と前記載置面から成る角部を、前記L字部材の幅方向に沿う方向に貫通する棒状の部材である、請求項3に記載の棒金収納装置。
【請求項7】
前記第1側壁は、前記棒金検出基板と平行であり、かつ、垂直に形成される、請求項1~6のいずれか1項に記載の棒金収納装置。
【請求項8】
前記底面の径は、少なくとも、前記棒金収納空間に対応する金種の棒金の径と同程度のサイズである、請求項1~6のいずれか1項に記載の棒金収納装置。
【請求項9】
前記棒金トレイは、前記棒金を立位状態で収納する、請求項1~6のいずれか1項に記載の棒金収納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒金収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小売店やスーパーマーケットなどの流通施設および商業施設において、売上金を入金し、釣銭準備金を出金する現金処理装置が設置されている。現金処理装置の一例として、同一金種の所定枚数の硬貨を棒状に包装して得られる棒金の収納機能を備える現金処理装置も知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、棒金収納部を備え、当該棒金収納部に収納される棒金の有無を、センサを用いて判定する現金収納装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
棒金収納部の各棒金収納空間が棒金を立位状態で収納する構造であって、棒金収納空間を形成する側壁が棒金収納空間の底面に対して全て垂直の場合、利用者が棒金を棒金収納空間の底面に対して垂直に挿入または取り出さないと棒金が側壁にぶつかり、挿入または取り出しの操作が困難となる。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、棒金の挿入および取り出しの操作性を向上させることが可能な、新規かつ改良された棒金収納装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、所定方向に沿って形成された棒金収納空間の列を有する棒金トレイと、前記棒金収納空間の列に収納される各棒金の側面に対向するように前記所定方向に沿って設けられた棒金検出基板と、を備え、前記棒金検出基板は、前記棒金収納空間の列に含まれる各棒金収納空間に対応する位置に、棒金の有無に応じて出力が変化するセンサを有し、前記各棒金収納空間は、前記棒金検出基板が設けられる側の第1側壁と、当該第1側壁に対向する第2側壁と、底面と、を有し、前記第2側壁は、前記棒金収納空間において前記棒金が挿抜される挿抜口に向かって前記第1側壁との距離が広がる方向に傾斜する傾斜部と、前記傾斜部と前記底面との間に形成される垂直部と、を有する、棒金収納装置が提供される。
【0008】
前記第2側壁は、前記垂直部の長さより前記傾斜部の長さが長くなるよう形成されてもよい。
【0009】
また、上記課題を解決するために本発明の別の観点によれば、所定方向に沿って形成された棒金収納空間の列を有する棒金トレイと、前記棒金収納空間の列に収納される各棒金の側面に対向するように前記所定方向に沿って設けられた棒金検出基板と、を備え、前記棒金検出基板は、前記棒金収納空間の列に含まれる各棒金収納空間に対応する位置に、棒金の有無に応じて出力が変化するセンサを有し、前記棒金収納空間の列に含まれる棒金収納空間は、前記棒金検出基板が設けられる側の第1側壁と、当該第1側壁に対向する第2側壁と、底面と、前記棒金が載置されるL字部材と、前記L字部材を第2側壁の方向へ回転させる付勢部材と、を有し、前記第2側壁は、前記棒金収納空間において棒金が挿抜される挿抜口に向かって前記第1側壁との距離が広がる方向に傾斜し、前記L字部材は、L字が前記第1側壁に対して開く向きに設置され、前記L字部材に前記棒金が載置された際に前記棒金の側面を支える背側部材と、前記棒金が載置される載置面と、前記L字部材の回転軸上に設けられ、前記L字部材を前記棒金トレイに接続する接続部材を有する、棒金収納装置が提供される。
【0010】
前記L字部材は、前記棒金が載置されていない状態では、前記付勢部材により、前記接続部材を軸として、前記背側部材が前記第2側壁に沿う姿勢に傾いてもよい。
【0011】
前記L字部材は、前記棒金が載置された状態では、前記棒金の重みにより、前記接続部材を軸として、前記棒金が垂直方向となる姿勢に回転してもよい。
【0012】
前記接続部材は、前記L字部材の前記背側部材と前記載置面から成る角部を、前記L字部材の幅方向に沿う方向に貫通する棒状の部材であってもよい。
【0013】
前記第1側壁は、前記棒金検出基板と平行であり、かつ、垂直に形成されてもよい。
【0014】
前記底面の径は、少なくとも、前記棒金収納空間に対応する金種の棒金の径と同程度のサイズであってもよい。
【0015】
前記棒金トレイは、前記棒金を立位状態で収納してもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、棒金の挿入および取り出しの操作性を向上させることを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施形態による現金処理装置100の外観を示す斜視図である。
【
図2】第1の実施形態による棒金収納部114の構成を示す斜視図である。
【
図3】第1の実施形態による棒金が収納された棒金収納部114の状態を示す斜視図である。
【
図4】第1の実施形態による棒金収納部114の平面図である。
【
図5】
図3に示したA-A断面、すなわち、棒金収納部114の棒金収納列Rに沿った断面を示した説明図である。
【
図6】第1の実施形態によるコイルLの構成を示す説明図である。
【
図7】比較例による棒金トレイ80に含まれる棒金収納空間82の側面断面図である。
【
図8】第1の実施形態による棒金トレイ120に含まれる棒金収納空間Sの側面断面図である。
【
図9】第1の実施形態による棒金収納空間Sへの棒金Cの挿入または取り出し動作について説明する図である。
【
図10】第1の実施形態による棒金収納空間Sへの棒金Cの挿入または取り出し動作について説明する図である。
【
図11】第2の実施形態による棒金トレイ122に含まれる棒金収納空間Sの側面断面図である。
【
図12】第2の実施形態によるL字部材180の外観斜視図である。
【
図13】第2の実施形態による棒金収納空間Sへの棒金Cの挿入または取り出し動作について説明する図である。
【
図14】第2の実施形態による棒金収納空間Sへの棒金Cの挿入または取り出し動作について説明する図である。
【
図15】第2の実施形態の変形例によるL字部材181について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合もある。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。
【0020】
<1.はじめに>
本発明の実施形態は、小売店やスーパーマーケットなどの流通施設および商業施設に設置される現金処理装置に適用される。本実施形態による現金処理装置は、例えば、レジで用いられる釣銭準備金として紙幣および硬貨を出金する釣銭出金、およびレジから回収された紙幣および硬貨を入金する売上入金などの処理を実行可能である。さらに、本実施形態による現金処理装置は、硬貨を棒状に包装して得られる棒金を収納する棒金収納装置としての機能を包含する。以下、このような本実施形態による現金処理装置の構成を詳細に説明する。
【0021】
<2.第1の実施形態>
(2-1.現金処理装置の構成)
図1は、本発明の第1の実施形態による現金処理装置100の外観を示す斜視図である。
図1に示したように、現金処理装置100は、操作表示部102、硬貨入金口104、硬貨処理部106、硬貨出金口108、紙幣入出金口110、紙幣処理部112および棒金収納部114を備える。
【0022】
操作表示部102は、オペレータ操作を検出する操作部としての機能、および各種画面を表示する表示部としての機能を包含する。表示部としての機能は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ(LCD)装置、OLED(Organic Light Emitting Diode)装置により実現される。また、操作部としての機能は例えば静電容量方式または抵抗膜方式のタッチパネルにより実現される。
【0023】
硬貨入金口104は、硬貨の投入を受け付ける。例えば、硬貨入金口104は、複数の硬貨を同時に投入可能な大きさを有し、
図1に示したように硬貨処理部106および硬貨出金口108よりも上部に配置される。なお、硬貨入金口104は開閉されるシャッタを有してもよく、硬貨が投入される際に当該シャッタが開かれ得る。
【0024】
硬貨処理部106は、硬貨の入出金処理を行う。具体的には、硬貨処理部106は、硬貨入金口104に投入される硬貨を収納し、オペレータ操作によって指示される金種および枚数の硬貨を硬貨出金口108に送出する。
【0025】
硬貨出金口108は、硬貨を現金処理装置100の外部に放出する。例えば、硬貨出金口108は、複数の硬貨を同時に保留可能な大きさを有し、
図1に示したように硬貨処理部106よりも下部に配置される。また、硬貨出金口108は開閉されるシャッタを有し、硬貨が放出される際に当該シャッタが開かれる。
【0026】
紙幣入出金口110は、入金される紙幣の投入を受け付け、出金される紙幣を現金処理装置100の外部に放出する。例えば、紙幣入出金口110は、複数の紙幣を同時に保留可能な大きさを有し、
図1に示したように紙幣処理部112よりも上部に配置される。また、紙幣入出金口110は開閉されるシャッタを有し、紙幣が投入され、または放出される際に当該シャッタが開かれる。
【0027】
紙幣処理部112は、紙幣の入出金処理を行う。具体的には、紙幣処理部112は、紙幣入出金口110に投入される紙幣を収納し、ユーザ操作によって指示される金種および枚数の紙幣を紙幣入出金口110に放出する。
【0028】
棒金収納部114は、棒金を収納するための構成であり、現金処理装置100から引き出し可能に構成される。オペレータは、棒金収納部114を現金処理装置100から引き出すことにより、棒金収納部114に収納された棒金を取り出すことが可能である。以下、
図2および
図3を参照し、棒金収納部114の構成について説明する。
【0029】
(2-2.棒金収納部の構成)
図2は、第1の実施形態による棒金収納部114の構成を示す斜視図である。
図2に示したように、棒金収納部114は、棒金を立位状態で収納するための棒金トレイ120を有する。棒金トレイ120は、複数の棒金収納列Rを含み、各棒金収納列Rは、棒金を収納するための複数の棒金収納空間により形成される。各棒金収納列Rは、棒金収納空間の列の一例である。
【0030】
例えば、各棒金収納列Rは、
図2に示したように、一円玉の棒金を収納するための2つの棒金収納空間S1、五円玉の棒金を収納するための1つの棒金収納空間S2、十円玉の棒金を収納するための3つの棒金収納空間S3、五十円玉の棒金を収納するための1つの棒金収納空間S4、百円玉の棒金を収納するための3つの棒金収納空間S5、および五百円玉の棒金を収納するための1つの棒金収納空間S6により形成される。すなわち、棒金収納列Rは、異なる金種の棒金を収納するための棒金収納空間S1~S6により形成される。一方、棒金収納部114の引き出し方向上には、同一金種の棒金を収納するための棒金収納空間が形成される。
【0031】
上述した棒金収納空間S1~S6の平面視における大きさは、棒金収納空間S1~S6の各々に対応する金種に応じて異なる。具体的には、平面視における棒金収納空間S1~S6の引き出し方向上の径は、少なくとも棒金収納空間S1~S6の各々に対応する金種の棒金の径より大きいサイズに設計される。詳細については
図8を参照して後述するが、本実施形態による棒金収納空間Sを形成する側面は一部が傾斜し、棒金挿抜口の径が、棒金収納空間Sの底面の径より大きくなっている。棒金収納空間Sの底面の径は、棒金収納空間Sに対応する金種の棒金の径と同程度のサイズであってもよい。なお、各金種の棒金収納空間S1~S6を特に区別する必要が無い場合には、各金種の棒金収納空間S1~S6を単に棒金収納空間、または棒金収納空間Sと総称する。
【0032】
図3は、第1の実施形態による棒金が収納された棒金収納部114の状態を示す斜視図である。
図3に示したように、上述した棒金トレイ120の各棒金収納空間Sに、各棒金収納空間Sに対応する金種の棒金が収納されることにより、棒金トレイ120において棒金が格子状に配列される。なお、
図3においては、棒金収納空間S1~S5に収納される一円玉~百円玉の棒金が50枚の硬貨からなり、棒金収納空間S6に収納される五百円玉の棒金が20枚の硬貨からなる例を示しているが、棒金収納空間S6には50枚の硬貨からなる五百円玉の棒金を収納することも可能である。
【0033】
(2-3.棒金検出基板の構成)
現金処理装置100の棒金収納部114には、各棒金収納空間Sにおける棒金の有無を判定するために棒金検出基板が設けられる。この棒金検出基板は、各棒金収納空間Sに収納された棒金の側面と対向するように、棒金収納列Rの列方向に沿って設けられる。以下、
図4~
図6を参照し、棒金検出基板130の構成をより具体的に説明する。
【0034】
図4は、第1の実施形態による棒金収納部114の平面図である。
図5は、
図3に示したA-A断面、すなわち、棒金収納部114の棒金収納列Rに沿った断面を示した説明図である。
図5に示したように、棒金収納部114においては、棒金収納列Rの各々に対して棒金検出基板130が設けられる。なお、棒金検出基板130は、
図4に示すように、棒金トレイ120に覆われる位置に設けられる。
【0035】
また、棒金検出基板130は、
図5に示したように、コネクタ140を介して制御基板150と接続される。さらに、棒金検出基板130は、
図4および
図5に示したように、棒金収納列Rに含まれる各棒金収納空間Sに対応する位置に、棒金の有無に応じて出力が変化するセンサとしてコイルLを有する。
図6は、第1の実施形態によるコイルLの構成を示す説明図である。コイルLは、
図6に示したように、棒金検出基板130に配線パターンで形成される。このコイルLのインダクタンスは、コイルLに対応する棒金収納空間Sにおける棒金の有無に応じて変化する。なお、コイルLは、センサの一例であって、本発明によるセンサは、コイルLに限定されない。
【0036】
制御基板150は、棒金の有無を判定する判定部としての機能を有し、具体的には、当該棒金検出基板130から入力されるコイルLの出力に基づき、各棒金収納空間Sにおける棒金の有無を判定することが可能である。棒金の有無の判定は、棒金収納部114が、現金処理装置100内に収納されている状態で行われる。
【0037】
また、棒金検出基板130においてコイルLが設けられる高さは特に限定されない。例えば、
図5に示したように、各コイルLを棒金収納空間Sの底面から離れた高さに設けてもよい。
【0038】
(2-4.棒金収納部の内部の構造の詳細)
続いて、棒金収納部114の内部の構造の詳細について説明する。より具体的には、棒金収納部114が有する棒金トレイ120に含まれる、棒金を収納するための複数の棒金収納空間Sの構造の詳細について説明する。
【0039】
ここで、当該構造の詳細な説明に先立ち、当該構造の技術的意義がより明らかになるよう、比較例による棒金収納空間の構造を説明する。
図7は、比較例による棒金トレイ80に含まれる棒金収納空間82の側面断面図である。
図7に示す側面断面図は、現金処理装置の正面に対して右側面の方向から見た断面図である。
図7に示すように、棒金収納空間82の後方には、棒金収納空間82内における棒金の有無を検出するコイルLが設けられる棒金検出基板83が位置する。また、
図7に示すように、棒金収納空間82を形成する側壁84および側壁86は、棒金収納空間82の底面に対していずれも垂直に形成され、棒金収納空間82は、棒金を立位状態で収納する構造となっている。
【0040】
この場合、現金処理装置の正面に位置する利用者は、棒金収納空間82の底面に対して棒金を垂直に挿入または取り出さなければならず、例えば棒金を斜めの状態で挿入しようとした場合、棒金の下面が側壁86にぶつかり、挿入操作が困難となる。また、棒金の下面が側壁86の下方に引っ掛かった斜めの姿勢で棒金が収納されると、棒金収納空間82の比較的上方に位置するコイルLに対する棒金の位置が遠くなり、棒金有無の判定が正確に行われない場合がある。
【0041】
そこで、本件発明者は、上記事情を一着眼点にして本発明の第1の実施形態による現金処理装置100を創作するに至った。本発明の第1の実施形態によれば、棒金の挿入および取り出しの操作性を向上させることが可能である。以下、このような効果を実現するために本発明の第1の実施形態による現金処理装置100に設けられる棒金収納部114の内部の構造、すなわち棒金収納空間Sの構造の詳細について説明する。
【0042】
図8は、第1の実施形態による棒金トレイ120に含まれる棒金収納空間Sの側面断面図である。棒金収納空間Sは、棒金検出基板130が設けられる側に位置する第1側壁161と、当該第1側壁161に対向する側に位置する第2側壁162と、底面163と、を有する。
【0043】
第1側壁161は、棒金検出基板130と平行であり、かつ、垂直に形成される。また、第2側壁162は、棒金収納空間Sにおいて棒金が挿抜される挿抜口160に向かって第1側壁161との距離が広がる方向に傾斜する傾斜部1621と、当該傾斜部1621と底面163との間に形成される垂直部1622と、を有する。
図8に示すように、第2側壁162において、底面163に接する箇所に垂直部1622が設けられ、垂直部1622の上方に、傾斜部1621が設けられている。
【0044】
傾斜部1621を設けることで、棒金収納空間Sへの棒金の挿入および取り出しの操作性が向上する。棒金の挿入および取り出しの動作について、
図9および
図10を参照して説明する。
図9および
図10は、第1の実施形態による棒金収納空間Sへの棒金Cの挿入または取り出し動作について説明する図である。まず、
図9に示すように、棒金収納空間Sに棒金Cを挿入する際、利用者は、傾斜部1621に沿って棒金Cを傾けた姿勢で、棒金収納空間Sの下部まで挿入させることができる。
【0045】
次いで、利用者が棒金Cから手を離す、若しくは棒金収納空間Sの底面に近い位置まで棒金Cを押し込むと、棒金Cが、垂直部1622に沿って垂直状態になる。ここで、底面163の引き出し方向上の径は、挿抜口160の引き出し方向上の径より小さく、例えば棒金収納空間Sに対応する金種の棒金の径と同程度のサイズであってもよい。これにより、棒金収納空間S内で垂直部1622により棒金Cが垂直状態すなわち立位状態になると、棒金Cが第2側壁162に近接し、棒金検出基板130に近付く。
【0046】
一方、棒金Cを棒金収納空間Sから取り出す場合、利用者は、
図10に示す状態にある棒金Cを、手で
図9に示すように傾斜部1621に沿う斜めの姿勢に傾け、棒金収納空間Sから抜き取る。
【0047】
このように、第1の実施形態によれば、第2側壁162に傾斜部1621を設けることで、棒金Cを斜めの姿勢でも挿入または取り出しができるようにして操作性を向上させる。さらに、第2側壁162の下方に垂直部1622を設けることで、棒金Cを第1側壁161に近い位置で立位状態にし、棒金検出基板130のコイルLにより検出できるようにし、棒金有無の判定精度を低下させないようにすることができる。
【0048】
なお、第2側壁162における傾斜部1621と垂直部1622の長さは特に限定しない。傾斜部1621の長さがより長いと棒金の挿抜がより容易になり、垂直部1622の長さがより長いと棒金検出基板130による検出精度がより高くなる。例えば、第2側壁162は、垂直部1622の長さより傾斜部1621の長さが長くなるよう形成されてもよい。
【0049】
また、傾斜部1621の傾斜角度は任意で構わない。例えば、傾斜部1621の傾斜角度は、挿抜口160の引き出し方向上の径が所定の長さになるよう設計されてもよい。また、傾斜部1621の傾斜角度は、棒金Cを挿入し易い角度に設計されてもよい。また、傾斜部1621の傾斜角度は、底面163の引き出し方向上の径に応じて、斜めで挿入した際に棒金Cの下面が第1側壁161に引っ掛からない角度に設計されてもよい。
【0050】
以上のように、第1の実施形態によれば、棒金トレイ120に傾斜部1621と垂直部1622を設け、棒金収納空間Sの上部(挿抜口160を含む領域)を底部(底面163を含む領域)より広くし、傾斜部1621に沿った斜めの姿勢で棒金Cの挿入および取り出しができるようにすることで、棒金の挿抜を容易にする。また、棒金Cが棒金収納空間Sの底面163に近い位置まで挿入されると、第2側壁162の下方に設けられる垂直部1622に沿って棒金Cが垂直状態になり、棒金検出基板130に近付くため、棒金検出精度が高くなる。
【0051】
<3.第2の実施形態>
第1の実施形態においては、傾斜部1621と垂直部1622を第2側壁162に設けることで、棒金Cの挿入および取り出しにおける操作性の向上について説明した。これに対し、本発明の第2の実施形態は、L字状の部材を用いて棒金Cの挿入および取り出しにおける操作性を向上させることが可能である。以下、このような本発明の第2の実施形態について説明する。
【0052】
なお、本発明の第2の実施形態による現金処理装置100は、第1の実施形態で説明した棒金トレイ121に代えて、上記L字状の部材が各棒金収納空間Sに設けられる棒金トレイ122を有する点で主に第1の実施形態と相違し、他の構成については第1の実施形態で説明した通りであるので、ここでの詳細な説明を省略する。棒金トレイ122は、複数の棒金収納列Rを含み、各棒金収納列Rは、第1の実施形態において説明したように、棒金を収納するための棒金収納空間S1~S6により形成される。
【0053】
図11は、第2の実施形態による棒金トレイ122に含まれる棒金収納空間Sの側面断面図である。棒金収納空間Sは、棒金検出基板130が設けられる側に位置する第1側壁161と、当該第1側壁161に対向する側に位置する第2側壁164と、底面163と、を有する。第2側壁164は、棒金収納空間Sにおいて棒金が挿抜される挿抜口160に向かって第1側壁161との距離が広がる方向に傾斜して形成される。さらに、棒金収納空間Sは、L字状の載置部材の一例であるL字部材180と、L字部材180を第2側壁164の方向へ付勢する付勢部材の一例であるバネ200と、を有する。
【0054】
L字部材180は、
図11に示すように、L字が第1側壁161に対して開く向きに設置される。
図12は、第2の実施形態によるL字部材180の外観斜視図である。L字部材180は、棒金Cが載置される載置面1802と、棒金の側面を支える背側部材1801と、接続部材190と、を有する。接続部材190は、背側部材1801および載置面1802から成る略直角部分に、L字部材180の幅方向に沿う方向に貫通して設けられる棒状の部材である。L字部材180は、
図11に示すように、背側部材1801が第2側壁164に沿うよう、接続部材190により棒金トレイ122に取り付けられる。また、L字部材180は、接続部材190により回転可能に棒金トレイ122に取り付けられる。なお、接続部材190は、背側部材1801および載置面1802から成る略直角部分に貫通して設けられる部材に限定されず、L字部材180を回転可能に棒金トレイ122に取り付ける部材であればよい。
【0055】
また、L字部材180は、板が折れ曲がった形状をしている。
図12に示すL字部材180は直角に折れ曲がった形状になっているが、本実施形態によるL字部材180の折れ曲がる角度は直角に限定されない。接続部材190は、L字部材180の折れ部分を貫通するよう取り付けられ、L字部材180から飛び出した部分が棒金トレイ122に回転可能に接続される。
【0056】
また、L字部材180は、金属以外の材質、すなわち棒金検出基板のセンサ(例えばコイルL)で検出されない材質が望ましい。また、L字部材180は、棒金Cの重さで変形しないような、強度が一定以上の素材が望ましい。
【0057】
図11に戻って説明を続ける。L字部材180は、接続部材190を回転軸として、バネ200の付勢によりL字部材180の背側部材1801が第2側壁164に沿う姿勢と、棒金CがL字部材180に載置された際に、棒金Cの重さにより背側部材1801が棒金収納空間S内で垂直方向となる姿勢に回転し得る。
【0058】
また、
図11に示すように、L字部材180と棒金収納空間Sの底面163の間には、バネ200が設けられる。棒金収納空間Sに何も入っていない場合、L字部材180は、バネ200によって第2側壁164の傾斜面に沿うように傾く状態となる。なお、バネ200の材質が金属の場合であっても、棒金を検出するセンサの一例であるコイルLは棒金収納空間Sの比較的に上方に対応する位置に設けられるため、棒金収納空間Sの下方(底面163付近)に位置するバネ200による誤検出は回避される。
【0059】
続いて、棒金の挿入および取り出しの動作について、
図13および
図14を参照して説明する。
図13および
図14は、第2の実施形態による棒金収納空間Sへの棒金Cの挿入または取り出し動作について説明する図である。まず、
図13に示すように、棒金収納空間Sに棒金Cを挿入する際、利用者は、L字部材180の背側部材1801に沿って棒金Cを傾けた姿勢で、棒金収納空間Sの下部まで挿入させることができる。L字部材180は、上述したようにバネ200により、傾斜している第2側壁164に沿った傾斜姿勢となっている。
【0060】
次いで、利用者が棒金Cから手を離す、若しくはL字部材180の載置面1802まで棒金Cを押し込むと、
図14に示すように、L字部材180が接続部材190を軸に棒金検出基板130の方向に傾くよう回転する。これに伴い棒金Cが棒金検出基板130の方向に傾いて垂直状態となり、棒金Cが第2側壁164に近接し、また、棒金検出基板130にも近付く。
【0061】
一方、棒金Cを棒金収納空間Sから取り出す場合、利用者は、
図14に示す状態にある棒金Cを、手で
図13に示すように傾けることで、棒金Cに伴ってL字部材180も第2側壁164に沿うように傾く姿勢となる。棒金Cを取り出した後は、L字部材180は、バネ200により棒金収納空間Sの底面方向から力が加わり、
図11に示すように、第2側壁164に沿うよう傾いた状態に保たれる。
【0062】
このように、第2の実施形態によれば、第2側壁164を傾斜形状にし、第2側壁164側に傾くL字部材180を設けることで、棒金Cを斜めの姿勢で挿入または取り出しできるようにして操作性を向上させる。さらに、棒金C収納時に棒金Cの重さでL字部材180が第1側壁161側に回転するようにすることで、棒金Cを第1側壁161に近い位置で立位状態にし、棒金検出基板130のコイルLにより検出できるようにして、棒金有無の判定精度を低下させないようにすることができる。
【0063】
なお、第2側壁164の傾斜角度は任意で構わない。例えば、第2側壁164の傾斜角度は、挿抜口160の引き出し方向上の径が所定の長さになるよう設計されてもよい。また、第2側壁164の傾斜角度は、棒金Cを挿入し易い角度に設計されてもよい。また、第2側壁164の傾斜角度は、底面163の引き出し方向上の径に応じて、斜めで挿入した際に棒金Cの下面が第1側壁161に引っ掛からない角度に設計されてもよい。
【0064】
(変形例)
上述した第2の実施形態では、L字部材の載置面1802の長さが、棒金Cの径より短く、棒金Cが載置された状態では、
図14に示すように、棒金Cの下面の半分近くが載置面1802からはみ出した状態となっている。ここで、載置面1802の長さは、
図11~
図14に示す例に限定されない。以下、
図15を参照して変形例について説明する。
【0065】
図15は、第2の実施形態の変形例によるL字部材181について説明する図である。
図15に示すように、L字部材181は、背側部材1801と、載置面1803を有する。載置面1803の長さは、棒金Cの径と同程度であってもよいし、棒金Cの径より長くてもよい。
【0066】
なお、以上説明した第2の実施形態および第2の実施形態の変形例において、バネ200の設置位置は、
図11~
図14に示す例、および
図15に示す例に限定されず、底面163上において、L字部材180またはL字部材181を第2側壁164の方向に付勢できる位置であればよい。
【0067】
<4.補足>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属すると了解される。
【0068】
例えば、上記棒金は、硬貨(現金)を棒状に包装して得られる棒金に限られず、例えばアーケードゲームで用いられるメダルを棒状に包装した物体であってもよい。
【0069】
また、現金処理装置100に内蔵されるCPU、ROM、およびRAM等のハードウェアに、現金処理装置100の機能を発揮させるための1以上のコンピュータプログラムも作成可能である。また、当該1以上のコンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体も提供される。
【符号の説明】
【0070】
100 現金処理装置
102 操作表示部
104 硬貨入金口
106 硬貨処理部
108 硬貨出金口
110 紙幣入出金口
112 紙幣処理部
114 棒金収納部
120、122 棒金トレイ
130 棒金検出基板
140 コネクタ
150 制御基板
160 挿抜口
161 第1側壁
162、164 第2側壁
1621 傾斜部
1622 垂直部
163 底面
180 L字部材
190 接続部材
200 バネ
S 棒金収納空間
C 棒金