(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027318
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/16 20060101AFI20240222BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
B60C11/16 Z
B60C11/03 100B
B60C11/03 300D
B60C11/03 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130026
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐倉 誠章
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB11
3D131BC12
3D131BC18
3D131BC49
3D131CB05
3D131EB11X
3D131ED03V
3D131ED03X
(57)【要約】
【課題】スタッドピンの取り付けに伴うユニフォミティの悪化を抑えることができる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド3は、タイヤ周方向に沿って連続して延びる複数の主溝11と、複数の主溝11のうちタイヤ軸方向最外側に位置するショルダー主溝11sを横切って延在し、その延在範囲においてトレッド3を複数の帯状区域に区画する横溝12と、を含む。トレッド3は、ショルダー主溝11sよりもタイヤ軸方向外側のショルダー領域SAと、ショルダー主溝11sよりもタイヤ軸方向内側のセンター領域CAとに区分される。タイヤ赤道TCで区分される一対のトレッド半部のうち少なくとも一方において、ショルダー領域SAに形成された取付穴10を含む帯状区域と、センター領域CAに形成された取付穴10を含む帯状区域とが、タイヤ周方向に沿って交互に配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタッドピンを取り付けるための取付穴が形成されたトレッドを備え、
前記トレッドは、タイヤ周方向に沿って連続して延びる複数の主溝と、複数の前記主溝のうちタイヤ軸方向最外側に位置するショルダー主溝を横切って延在し、その延在範囲において前記トレッドを複数の帯状区域に区画する横溝と、を含み、
前記トレッドは、前記ショルダー主溝の溝幅中心を基準として、タイヤ軸方向外側のショルダー領域と、タイヤ軸方向内側のセンター領域とに区分され、
タイヤ赤道で区分される一対のトレッド半部のうち少なくとも一方において、前記ショルダー領域に形成された前記取付穴を含む前記帯状区域と、前記センター領域に形成された前記取付穴を含む前記帯状区域とが、タイヤ周方向に沿って交互に配置されている、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ショルダー領域に形成された前記取付穴の個数が、前記センター領域に形成された前記取付穴の個数よりも多い、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
タイヤ回転方向が指定され、
前記センター領域に形成された前記取付穴の間隔中央地点と、その間隔中央地点の蹴り出し側に隣接する前記取付穴とで挟まれたタイヤ周方向の区間に、前記ショルダー領域に形成された前記取付穴が配置されている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記センター領域のうち、タイヤ赤道を中心とした接地幅の28%の領域を赤道直下領域とし、前記赤道直下領域と前記ショルダー主溝との間の領域を赤道隣接領域としたとき、
前記赤道直下領域には、タイヤ周方向に連続して延びるリブ、または、複数のブロックが配列されたブロック列が設けられている、請求項1~3いずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記センター領域に形成された前記取付穴は、前記赤道直下領域を避けて前記赤道隣接領域に配置されている、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スタッドピンを取り付けるための取付穴がトレッドに形成された空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
トレッドにスタッドピンが取り付けられた空気入りタイヤは、スタッドタイヤやスパイクタイヤとも称され、主として氷雪路での走行に供される。一般にスタッドピンは金属材で形成されているため、多数のスタッドピンを取り付けることによってタイヤのユニフォミティを悪化させる恐れがある。したがって、その点を考慮した構造を採用することが望まれるものの、それに適した具体的な構成は提案されていなかった。
【0003】
特許文献1では、タイヤ赤道線上における間隔がタイヤ周長の0.8%となるように配置された一対のタイヤ子午線の間に区画される領域を帯状領域とし、複数の帯状領域をタイヤ周方向に沿って1度ずつずらしてタイヤ全周に亘って配列したときに、複数の帯状領域が、スタッドピンが4本以上となる集中領域と、スタッドピンが3本以下となる点在領域とを含み、その集中領域がタイヤ周方向に沿って間欠的に存在するスタッドタイヤが提案されている。しかし、そのような集中領域を間欠的に存在させることは、タイヤのユニフォミティの悪化を招来すると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、スタッドピンの取り付けに伴うユニフォミティの悪化を抑えることができる空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の空気入りタイヤは、スタッドピンを取り付けるための取付穴が形成されたトレッドを備え、前記トレッドは、タイヤ周方向に沿って連続して延びる複数の主溝と、複数の前記主溝のうちタイヤ軸方向最外側に位置するショルダー主溝を横切って延在し、その延在範囲において前記トレッドを複数の帯状区域に区画する横溝と、を含み、前記トレッドは、前記ショルダー主溝の溝幅中心を基準として、タイヤ軸方向外側のショルダー領域と、タイヤ軸方向内側のセンター領域とに区分され、タイヤ赤道で区分される一対のトレッド半部のうち少なくとも一方において、前記ショルダー領域に形成された前記取付穴を含む前記帯状区域と、前記センター領域に形成された前記取付穴を含む前記帯状区域とが、タイヤ周方向に沿って交互に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態の空気入りタイヤを概略的に示すタイヤ子午線断面図
【
図2】本実施形態の空気入りタイヤのトレッドの平面展開図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0009】
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤT(以下、単に「タイヤT」と呼ぶ場合がある)は、一対のビード部1と、そのビード部1の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール2と、そのサイドウォール2の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド3とを備える。タイヤTは、更に、一対のビード部1の間に設けられたカーカス4と、そのカーカス4のタイヤ径方向外側に積層されたベルト5と、タイヤ内面に配設されたインナーライナー6とを備える。
【0010】
ここで、タイヤ径方向は、タイヤTの直径に沿った方向であり、
図1の上下方向に相当する。
図1において上側がタイヤ径方向外側となり、下側がタイヤ径方向内側となる。タイヤ軸方向は、タイヤTの回転軸と平行な方向であり、
図1の左右方向に相当する。タイヤ赤道TCに近付く側がタイヤ軸方向内側となり、タイヤ赤道TCから離れる側がタイヤ軸方向外側となる。タイヤ赤道TCは、タイヤTのタイヤ軸方向中央に位置し、平面視においてタイヤ回転軸に直交する仮想線である。タイヤ周方向は、タイヤTの回転軸周りの方向である。
【0011】
ビード部1には、環状のビードコア1aが埋設されている。ビードコア1aは、鋼線などの収束体をゴムで被覆して形成されている。ビードコア1aのタイヤ径方向外側には、ビードフィラー1bが配置されている。ビードフィラー1bは、ビードコア1aからタイヤ径方向外側に延びた断面三角形状のゴムにより形成されている。ビードコア1a及びビードフィラー1bのタイヤ軸方向外側には、ビード部1の外表面を形成するリムストリップゴム7が設けられている。
【0012】
カーカス4は、一対のビード部1の間に跨ってトロイド状に延在している。カーカス4は、ビードコア1a及びビードフィラー1bを挟み込むようにしてタイヤ軸方向の内側から外側に巻き上げられている。カーカス4は、カーカスコードをゴム被覆して形成されたカーカスプライにより形成されている。カーカスコードは、タイヤ周方向に対して交差する方向(例えば、タイヤ周方向に対して75~90度の角度となる方向)に引き揃えられている。カーカス4のタイヤ軸方向外側には、サイドウォール2の外表面を形成するサイドウォールゴム8が設けられている。
【0013】
ベルト5は、互いに積層された複数のベルトプライ5a,5bにより形成されている。ベルトプライ5a,5bは、それぞれ、タイヤ周方向に対して傾斜する方向に引き揃えられたベルトコードをゴム被覆して形成されている。ベルトプライ5a,5bは、それらの間でベルトコードが互いに逆向きに交差するように積層されている。ベルト5のタイヤ径方向外側には、トレッド3の外表面を形成するトレッドゴム9が設けられている。インナーライナー6は、ブチルゴムなどの空気遮蔽性に優れたゴムにより形成されている。インナーライナー6は、タイヤTの内圧を保持する。
【0014】
トレッド3には、スタッドピンを取り付けるための取付穴10が形成されている。タイヤTは、図示しないスタッドピンを取付穴10の各々に取り付けることにより、スタッドタイヤ(スパイクタイヤとも呼ばれる)として構成される。一般に、スタッドピンは、金属製の円柱状部材により形成される。タイヤTに取り付けるスタッドピンの形状や材質、サイズなどは特に限定されない。本実施形態では、取付穴10がフラスコ状の断面形状を有しているが、これに限られるものではない。
【0015】
トレッド3の外周面には、
図2に示すトレッドパターンが形成されている。本実施形態では、タイヤ赤道TCに関して線対称をなし且つタイヤ周方向に位相をずらしたトレッドパターンが採用されている。タイヤTは、タイヤ回転方向が指定された回転方向指定型タイヤである。矢印RDは、前進時のタイヤ回転方向を示す。回転方向前方RD1は踏み込み側とも呼ばれ、回転方向後方RD2は蹴り出し側とも呼ばれる。タイヤTは、このような方向性パターンに限られず、非方向性パターンであってもよい。例えば、タイヤ赤道TC上に中心点を有する点対称に形成されたトレッドパターンでもよい。
【0016】
トレッド3は、タイヤ周方向に沿って連続して延びる複数の主溝11を含む。トレッド3の外周面における主溝11の溝幅W11は、例えば10mm以上である。複数の主溝11のうちタイヤ軸方向最外側に位置するものはショルダー主溝11sと呼ばれる。本実施形態では、トレッド3に含まれる主溝11の本数が2本であり、これらがショルダー主溝11sに該当する。尚、トレッド3が3本以上の主溝を含んでいても構わない。トレッド3は、ショルダー主溝11sの溝幅中心を基準として、タイヤ軸方向外側のショルダー領域SAと、タイヤ軸方向内側のセンター領域CAとに区分される。
【0017】
一対のショルダー主溝11sは、タイヤ赤道TCを挟むように配置されている。ショルダー主溝11sの溝幅中心からタイヤ赤道TCまでの距離D11は、例えば接地半幅HWの52~62%である。接地半幅HWは、タイヤ赤道TCから接地端TEまでのタイヤ軸方向の距離である。接地端TEは、正規リムに装着したタイヤTを、正規内圧を充填した状態で平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えたときの接地面のタイヤ軸方向の最外位置である。接地幅TWは、一対の接地端TE間のタイヤ軸方向の距離であり、その接地幅TWの半分が接地半幅HWとなる。
【0018】
正規リムとは、JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、又はETRTO規格における「Measuring Rim」である。正規内圧とは、JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の「最大値」、又はETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」である。正規荷重とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば上記の表に記載の最大値、ETRTOであれば"LOAD CAPACITY"であるが、タイヤが乗用車用である場合には前記荷重の88%に相当する荷重とする。
【0019】
図2及び3に示すように、トレッド3は、ショルダー主溝11sを横切って延在し、その延在範囲においてトレッド3を複数の帯状区域BAに区画する横溝12を含む。主溝11との接続箇所における横溝12の溝幅W12は、例えば5mm以上である。横溝12は、タイヤ周方向に間隔を設けて複数形成されている。横溝12は、センター領域CAに位置する一端からタイヤ軸方向外側に向かって延び、ショルダー主溝11sを横切って接地端TEにまで到達している。横溝12は、タイヤ軸方向に対して傾斜して延びている。横溝12は、全体として、蹴り出し側(回転方向後方RD2)に凸となる向きに緩やかに湾曲している。
【0020】
図3は、
図2の要部拡大図であり、横溝12で区画された帯状区域BAを模式的に示している。かかる帯状区域BAは、タイヤ赤道TCで区分される一対のトレッド半部の各々に含まれているが、
図3では、そのうちの片方(
図2右側に位置するトレッド半部)に含まれる帯状区域BAを示す。既述の通り、横溝12は、その延在範囲においてトレッド3を複数の帯状区域BAに区画している。帯状区域BAは、センター領域CAからショルダー領域SAに亘って帯状に延びている。帯状区域BAは、横溝12に沿って湾曲している。帯状区域BAの各々には、後述するショルダーブロック13及びブロック状陸部14が1つずつ含まれている。
【0021】
帯状区域BAは、ショルダー領域SAに形成された取付穴10を含む帯状区域BAsと、センター領域CAに形成された取付穴10を含む帯状区域BAcとを備える。帯状区域BAsは、センター領域CAに形成された取付穴10を含んでおらず、帯状区域BAcは、ショルダー領域SAに形成された取付穴10を含んでいない。このタイヤTでは、タイヤ赤道TCで区分される一対のトレッド半部のうち少なくとも一方において、ショルダー領域SAに形成された取付穴10を含む帯状区域BAsと、センター領域CAに形成された取付穴10を含む帯状区域BAcとが、タイヤ周方向に沿って交互に配置されている。
【0022】
かかる構成によれば、トレッド3における取付穴10の偏在を防いで、スタッドピンの取り付けに伴うユニフォミティの悪化を抑えることができる。特にタイヤ周方向におけるタイヤ形状としてのユニフォミティの悪化を抑制できるため、燃費性能(転がり抵抗)やノイズ性能の低下を良好に抑えられる。また、スタッドピンがトレッド3に満遍なく配置されることにより、氷雪路に対するスタッドピンの引っ掻き効果が高められる。本実施形態では、上記の如き帯状区域BAsと帯状区域BAcとの交互配置が一対のトレッド半部の各々に適用されており、上述した改善効果に優れたものとなる。
【0023】
図3では、帯状区域BAsと帯状区域BAcとが1つずつ交互に配置されている例を示したが、これに限られない。例えば、
図4のように、タイヤ周方向において帯状区域BAcと帯状区域BAcとの間に複数の帯状区域BAsが配置されていてもよい。逆に、タイヤ周方向において帯状区域BAsと帯状区域BAsとの間に複数の帯状区域BAcが配置されていてもよい。その場合、連続して並ぶ帯状区域BAsまたは帯状区域BAcの個数は3以下であることが好ましい。即ち、帯状区域BAsと帯状区域BAcとは1~3個ずつ交互に配置されていることが好ましい。
【0024】
帯状区域BAは、ショルダー領域SA及びセンター領域CAの両方に取付穴10が形成された帯状区域や、ショルダー領域SA及びセンター領域CAの両方に取付穴10が形成されていない帯状区域を備えていてもよい。但し、トレッド半部において、そのような帯状区域の個数は、タイヤ全周における帯状区域BAの個数の30%未満であることが好ましく、20%未満であることがより好ましい。即ち、トレッド半部において、タイヤ全周における帯状区域BAのうち70%以上は、帯状区域BAs及び帯状区域BAcで占められていることが好ましい。
【0025】
ショルダー領域SAに形成された取付穴10の個数は、センター領域CAに形成された取付穴10の個数よりも多いことが好ましい。これにより、旋回走行時に負荷の高いショルダー領域SAでの引っ掻き効果を高めて、操縦安定性を向上することができる。かかる関係は、トレッド半部の少なくとも一方(好ましくは両方)をタイヤ全周に沿って見たときに満たされていればよい。トレッド半部において、ショルダー領域SAに形成された取付穴10の個数と、センター領域CAに形成された取付穴10の個数との差は、例えば3以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。
【0026】
図5に示すように、本実施形態では、センター領域CAに形成された取付穴10の間隔中央地点CP(中点)と、その間隔中央地点CPの蹴り出し側(回転方向後方RD2)に隣接する取付穴10とで挟まれたタイヤ周方向の区間Sに、ショルダー領域SAに形成された取付穴10(厳密には取付穴10の中心)が配置されている。かかる構成によれば、氷雪路での駆動時における引っ掻き効果を高めて、グリップ力を良好に高めることができる。
【0027】
ショルダー領域SAでは、横溝12によって区分された複数のショルダーブロック13がタイヤ周方向に配列されている。これにより、ショルダーブロック13のブロック縁によるエッジ効果を奏して、氷雪路での走行性能が向上する。ショルダー領域SAでは、取付穴10が形成されたショルダーブロック13と、取付穴10が形成されていないショルダーブロック13とが、タイヤ周方向に交互に配置されている。これらは1つずつ交互に配置されているが、1~3個ずつ交互に配置されていてもよい。ユニフォミティの悪化を抑える観点から、1つのショルダーブロック13に形成される取付穴10の個数は1つ以下であることが好ましい。
【0028】
センター領域CAでは、横溝12によって区分された複数のブロック状陸部14がタイヤ周方向に配列されている。これにより、ブロック状陸部14のブロック縁によるエッジ効果を奏して、氷雪路での走行性能が向上する。センター領域CAでは、取付穴10が形成されたブロック状陸部14と、取付穴10が形成されていないブロック状陸部14とが、タイヤ周方向に交互に配置されている。これらは1つずつ交互に配置されているが、1~3個ずつ交互に配置されていてもよい。ユニフォミティの悪化を抑える観点から、1つのブロック状陸部14に形成される取付穴10の個数は1つ以下であることが好ましい。
【0029】
図2のように、センター領域CAのうち、タイヤ赤道TCを中心とした接地幅TWの28%の領域を赤道直下領域RAとし、その赤道直下領域RAとショルダー主溝11sとの間の領域を赤道隣接領域NAとする。赤道直下領域RAには、タイヤ周方向に連続して延びるリブ15が設けられている。これにより、氷雪路での駆制動時に高い負荷が作用する赤道直下領域RAの接地面を確保し、グリップ力を良好に高めることができる。赤道直下領域RAには、リブ15の代わりに、複数のブロックが配列されたブロック列が設けられていてもよい。
【0030】
センター領域CAに形成された取付穴10は、赤道直下領域RAを避けて赤道隣接領域NAに配置されている。スタッドピンを赤道直下領域RAに配置しないことにより、氷雪路での駆制動時に高い負荷が作用する赤道直下領域RAの接地面を確保するうえで都合がよい。更に、赤道直下領域RAの接地面を確保する観点から、赤道直下領域RAには主溝が設けられていないことが好ましい。
【0031】
ショルダーブロック13、ブロック状陸部14及びリブ15には、それぞれ複数のサイプ16が形成されている。サイプ16は、幅1.0mm以下の切り込みにより形成されている。サイプ16は、深さ方向に沿って形状が変化しない二次元サイプでもよく、深さ方向に沿って形状が変化する部分を含む三次元サイプでもよい。各ショルダーブロック13には、タイヤ軸方向に沿って延びるサイプ16が形成されている。サイプ16は、ショルダーブロック13を区分する横溝12と略平行に延び、その厚み方向に間隔を設けて複数形成されている。ショルダーブロック13には、タイヤ周方向に対して平行に延びるサイプや、傾斜して延びるサイプが形成されていてもよい。
【0032】
ショルダーブロック13がタイヤ周方向にバリアブルピッチで配列されている場合、即ちパターンデザインの繰り返しの基本となるピッチ要素のピッチ長(タイヤ周方向長さ)を種々に異ならせている場合において、タイヤ周方向長さが最小となるショルダーブロック13におけるサイプ16の本数は、タイヤ周方向長さが最大となるショルダーブロック13におけるサイプ16の本数よりも小さいことが好ましい。かかる構成によれば、ピッチの違いによる、ショルダーブロック13における単位面積あたりの接地面積の差異が小さくなるため、ブロック単位での偏摩耗を抑制するうえで都合がよい。
【0033】
センター領域CAには、中央に位置するリブ15と、その両側に位置するブロック状陸部14の配列体とを備えた陸部が設けられている。センター領域CAでは、略直線状に延びた横溝12とL字状に屈曲した横溝12とがタイヤ周方向に交互に配置され、それらによってブロック状陸部14が区分されている。赤道隣接領域NAには、ブロック状陸部14を区分する横溝12と同じ向きに傾斜したサイプ16を含むブロック状陸部14と、それとは逆向きに傾斜したサイプ16を含むブロック状陸部14とが、タイヤ周方向に交互に配置されている。リブ15には、タイヤ軸方向と略平行に延びたサイプ16が形成されている。
【0034】
図6は、
図2の要部拡大図であり、センター領域CAに設けられた陸部を抽出して描いている。
図6のように、タイヤ軸方向一方側の赤道隣接領域NAに形成された取付穴10と、タイヤ軸方向他方側の赤道隣接領域NAに形成された取付穴10とは、タイヤ周方向に沿って千鳥状に配置されている。これにより、トレッド3のセンター領域CAにおける取付穴10の偏在を防いで、スタッドピンの取り付けに伴うユニフォミティの悪化を効果的に抑制できる。
【0035】
タイヤ軸方向一方側の赤道隣接領域NAに形成された取付穴10の間隔中央地点CPと、タイヤ軸方向他方側の赤道隣接領域NAに形成された取付穴10の間隔中央地点CPとは、それらをタイヤ周方向に沿って順次に結んだ線が波型(ジグザグ形状)を描くように、タイヤ周方向に互いにずらして配置されている。
【0036】
また、
図2に示すように、赤道隣接領域NAに形成された取付穴10と、その赤道隣接領域NAにショルダー主溝11sを挟んで隣り合うショルダー領域SAに形成された取付穴10とが、タイヤ周方向に沿って千鳥状に配置されている。本実施形態では、そのような取付穴10の千鳥状配置が一対のトレッド半部の各々に適用されており、上述した改善効果に優れたものとなる。
【0037】
本実施形態の空気入りタイヤTは、上記の如く取付穴10を配置すること以外は、通常のスタッドタイヤ(但し、取付穴10にスタッドピンを取り付ける前の状態)と同等であり、従来公知の材料、形状、構造などが何れも採用できる。空気入りタイヤTは、トレッド3の取付穴10にスタッドピンが取り付けられたものであってもよい。
【0038】
[1]
上記の通り、本実施形態の空気入りタイヤTは、スタッドピンを取り付けるための取付穴10が形成されたトレッド3を備える。トレッド3は、タイヤ周方向に沿って連続して延びる複数の主溝11と、複数の主溝11のうちタイヤ軸方向最外側に位置するショルダー主溝11sを横切って延在し、その延在範囲においてトレッド3を複数の帯状区域BAに区画する横溝12と、を含む。トレッド3は、ショルダー主溝11sの溝幅中心を基準として、タイヤ軸方向外側のショルダー領域SAと、タイヤ軸方向内側のセンター領域CAとに区分される。タイヤ赤道TCで区分される一対のトレッド半部のうち少なくとも一方において、ショルダー領域SAに形成された取付穴10を含む帯状区域BAsと、センター領域CAに形成された取付穴10を含む帯状区域BAcとが、タイヤ周方向に沿って交互に配置されている。これにより、スタッドピンの取り付けに伴うユニフォミティの悪化を抑えることができる。
【0039】
[2]
上記[1]の空気入りタイヤTにおいて、ショルダー領域SAに形成された取付穴10の個数が、センター領域CAに形成された取付穴10の個数よりも多いことが好ましい。これにより、旋回走行時に負荷の高いショルダー領域SAでの引っ掻き効果を高めて、操縦安定性を向上できる。
【0040】
[3]
上記[1]または[2]の空気入りタイヤTにおいて、タイヤ回転方向が指定され、センター領域CAに形成された取付穴10の間隔中央地点CPと、その間隔中央地点CPの蹴り出し側に隣接する取付穴10とで挟まれたタイヤ周方向の区間Sに、ショルダー領域SAに形成された取付穴10が配置されていることが好ましい。かかる構成によれば、氷雪路での駆動時における引っ掻き効果を高めて、グリップ力を良好に高めることができる。
【0041】
[4]
上記[1]~[3]いずれか1つの空気入りタイヤTにおいて、センター領域CAのうち、タイヤ赤道TCを中心とした接地幅TWの28%の領域を赤道直下領域RAとし、赤道直下領域RAとショルダー主溝11sとの間の領域を赤道隣接領域NAとしたとき、赤道直下領域RAには、タイヤ周方向に連続して延びるリブ15、または、複数のブロックが配列されたブロック列が設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、氷雪路での駆制動時に高い負荷が作用する赤道直下領域RAの接地面を確保し、グリップ力を良好に高めることができる。
【0042】
[5]
上記[1]~[4]いずれか1つの空気入りタイヤTにおいて、センター領域CAに形成された取付穴10は、赤道直下領域RAを避けて赤道隣接領域NAに配置されていることが好ましい。かかる構成によれば、氷雪路での駆制動時に高い負荷が作用する赤道直下領域RAの接地面を確保するうえで都合がよい。
【0043】
本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、この実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、更に、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0044】
本開示の空気入りタイヤは、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。本開示の空気入りタイヤは、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 ビード部
2 サイドウォール
3 トレッド
10 取付穴
11 主溝
11s ショルダー主溝
12 横溝
13 ショルダーブロック
14 ブロック状陸部
15 リブ
16 サイプ