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  • 特開-空気入りタイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027322
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20240222BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
B60C11/03 A
B60C11/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130031
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐倉 誠章
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BC13
3D131BC34
3D131BC44
3D131CB06
3D131EB05U
3D131EB10X
3D131EB22V
3D131EB31X
3D131EB46V
3D131EB48V
3D131EB81X
3D131EB82V
3D131EB86X
3D131EB91X
3D131EC12V
3D131EC12X
(57)【要約】
【課題】パターンノイズの低減を図りながら、ショルダーブロックにおける偏摩耗の発生を抑制できる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド3のショルダー領域SAに設けられ、タイヤ周方向にバリアブルピッチで配列された複数のショルダーブロック13を備える。複数のショルダーブロック13の各々には、タイヤ軸方向に沿って延びる少なくとも1本のサイプ21が形成されている。タイヤ周方向長さが最小となるショルダーブロック13に形成されたサイプ21の本数は、タイヤ周方向長さが最大となるショルダーブロック13に形成されたサイプ21の本数よりも小さい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドのショルダー領域に設けられ、タイヤ周方向にバリアブルピッチで配列された複数のショルダーブロックを備え、
複数の前記ショルダーブロックの各々には、タイヤ軸方向に沿って延びる少なくとも1本のサイプが形成されており、
タイヤ周方向長さが最小となる前記ショルダーブロックに形成された前記サイプの本数が、タイヤ周方向長さが最大となる前記ショルダーブロックに形成された前記サイプの本数よりも小さい空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、特にブロックパターンを採用している場合において、車両走行時にパターンノイズと呼ばれる特有の騒音を発生する。それに対して、例えば特許文献1に記載されているように、タイヤ周方向長さを異ならせた複数種のブロックをバリアブルピッチで配列することが行われている。これによれば、ノイズを広い周波数領域に分散(ホワイトノイズ化)して、パターンノイズの低減を図ることができる。
【0003】
しかし、ブロックをバリアブルピッチで配列すると、各ブロックのタイヤ周方向長さが異なることに起因して、タイヤ周方向におけるブロック剛性が不均一となる。ブロック剛性が不均一であると、相対的に剛性の低いブロックが優先的に摩耗するなど、ブロック単位での偏摩耗が発生しやすい。かかる傾向は、ショルダー領域に設けられるショルダーブロックにおいて顕著であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2021/241296号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、パターンノイズの低減を図りながら、ショルダーブロックにおける偏摩耗の発生を抑制できる空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の空気入りタイヤは、トレッドのショルダー領域に設けられ、タイヤ周方向にバリアブルピッチで配列された複数のショルダーブロックを備え、複数の前記ショルダーブロックの各々には、タイヤ軸方向に沿って延びる少なくとも1本のサイプが形成されており、タイヤ周方向長さが最小となる前記ショルダーブロックに形成された前記サイプの本数が、タイヤ周方向長さが最大となる前記ショルダーブロックに形成された前記サイプの本数よりも小さいものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態の空気入りタイヤを概略的に示すタイヤ子午線断面図
図2】本実施形態の空気入りタイヤのトレッドの平面展開図
図3図2右側のショルダー領域を示す拡大図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0009】
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤT(以下、単に「タイヤT」と呼ぶ場合がある)は、一対のビード部1と、そのビード部1の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール2と、そのサイドウォール2の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド3とを備える。タイヤTは、更に、一対のビード部1の間に設けられたカーカス4と、そのカーカス4のタイヤ径方向外側に積層されたベルト5と、タイヤ内面に配設されたインナーライナー6とを備える。
【0010】
ここで、タイヤ径方向は、タイヤTの直径に沿った方向であり、図1の上下方向に相当する。図1において上側がタイヤ径方向外側となり、下側がタイヤ径方向内側となる。タイヤ軸方向は、タイヤTの回転軸と平行な方向であり、図1の左右方向に相当する。タイヤ赤道TCに近付く側がタイヤ軸方向内側となり、タイヤ赤道TCから離れる側がタイヤ軸方向外側となる。タイヤ赤道TCは、タイヤTのタイヤ軸方向中央に位置し、平面視においてタイヤ回転軸に直交する仮想線である。タイヤ周方向は、タイヤTの回転軸周りの方向である。
【0011】
ビード部1には、環状のビードコア1aが埋設されている。ビードコア1aは、鋼線などの収束体をゴムで被覆して形成されている。ビードコア1aのタイヤ径方向外側には、ビードフィラー1bが配置されている。ビードフィラー1bは、ビードコア1aからタイヤ径方向外側に延びた断面三角形状のゴムにより形成されている。ビードコア1a及びビードフィラー1bのタイヤ軸方向外側には、ビード部1の外表面を形成するリムストリップゴム7が設けられている。
【0012】
カーカス4は、一対のビード部1の間に跨ってトロイド状に延在している。カーカス4は、ビードコア1a及びビードフィラー1bを挟み込むようにしてタイヤ軸方向の内側から外側に巻き上げられている。カーカス4は、カーカスコードをゴム被覆して形成されたカーカスプライにより形成されている。カーカスコードは、タイヤ周方向に対して交差する方向(例えば、タイヤ周方向に対して75~90度の角度となる方向)に引き揃えられている。カーカス4のタイヤ軸方向外側には、サイドウォール2の外表面を形成するサイドウォールゴム8が設けられている。
【0013】
ベルト5は、互いに積層された複数のベルトプライ5a,5bにより形成されている。ベルトプライ5a,5bは、それぞれ、タイヤ周方向に対して傾斜する方向に引き揃えられたベルトコードをゴム被覆して形成されている。ベルトプライ5a,5bは、それらの間でベルトコードが互いに逆向きに交差するように積層されている。ベルト5のタイヤ径方向外側には、トレッド3の外表面を形成するトレッドゴム9が設けられている。インナーライナー6は、ブチルゴムなどの空気遮蔽性に優れたゴムにより形成されている。インナーライナー6は、タイヤTの内圧を保持する。
【0014】
トレッド3は、タイヤ周方向に沿って連続して延びる複数の主溝11を含む。本実施形態では3本の主溝11が設けられているが、トレッド3が4本以上の主溝を含んでいても構わない。複数の主溝11のうち、タイヤ軸方向最外側に位置するものはショルダー主溝11sと呼ばれ、ショルダー主溝11sよりもタイヤ軸方向内側に位置するものはセンター主溝11cと呼ばれる。一対のショルダー主溝11sは、タイヤ赤道TCを挟むように配置されている。トレッド3は、ショルダー主溝11sの溝幅中心を基準として、タイヤ軸方向外側のショルダー領域SAと、タイヤ軸方向内側のセンター領域CAとに区分されている(図2参照)。
【0015】
トレッド3の外周面には、図2に示すトレッドパターンが形成されている。本実施形態では、タイヤ赤道TCに関して非対称なトレッドパターンが採用されている。タイヤTは、車両に対する装着方向が指定された装着方向指定型タイヤである。タイヤ赤道TCに対して図2右側は車両内側となり、図2左側は車両外側となる。装着方向の指定は、例えば、サイドウォール2の外表面に「OUTSIDE」または「INSIDE」などの表示を付すことにより行われる。尚、タイヤTのトレッドパターンは特に限定されず、対称パターンであってもよい。例えば、タイヤ赤道TC上に中心点を有する点対称に形成されたトレッドパターンでも構わない。
【0016】
図3に拡大して示すように、トレッド3のショルダー領域SAには、タイヤ周方向にバリアブルピッチで配列された複数のショルダーブロック13が設けられている。ショルダーブロック13の各々は、ラグ溝12によって区分されている。本実施形態において、ラグ溝12は、ショルダー主溝11sからタイヤ軸方向外側に向かって延び、接地端TEを横切っている。接地端TEは、正規リムに装着したタイヤTを、正規内圧を充填した状態で平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えたときの接地面のタイヤ軸方向の最外位置である。
【0017】
正規リムとは、JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、又はETRTO規格における「Measuring Rim」である。正規内圧とは、JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の「最大値」、又はETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」である。正規荷重とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば上記の表に記載の最大値、ETRTOであれば"LOAD CAPACITY"であるが、タイヤが乗用車用である場合には前記荷重の88%に相当する荷重とする。
【0018】
タイヤ周方向長さを異ならせた複数種のショルダーブロック13が配列されていることにより、ショルダーブロック13に起因したパターンノイズを低減できる。本実施形態では、ショルダーブロック13が、3種のタイヤ周方向長さLa,Lb,Lcのうち何れかを有している。説明の便宜上、長さLa,Lb,Lcを有するショルダーブロック13を、それぞれショルダーブロック13a,13b,13cとして区別する。このショルダー領域SAにおいて、ショルダーブロック13aは、タイヤ周上で最小となるタイヤ周方向長さLaを有し、ショルダーブロック13cは、タイヤ周上で最大となるタイヤ周方向長さLcを有する。長さLa,Lb,Lcは、例えばショルダーブロック13のタイヤ軸方向中央の位置Pで測定される。
【0019】
複数のショルダーブロック13の各々には、タイヤ軸方向に沿って延びる少なくとも1本のサイプ21が形成されている。サイプ21は、幅1.0mm以下の切り込みにより形成されている。サイプ21はショルダー主溝11sに開口しているが、これに限られない。本実施形態では、サイプ21がラグ溝12と略平行に延びている。サイプ21は、ショルダーブロック13の表面上で屈曲線状に延びているが、直線状や波線状に延びた形態でも構わない。サイプ21は、深さ方向に沿って形状が変化しない二次元サイプでもよく、深さ方向に沿って形状が変化する部分を含む三次元サイプでもよい。
【0020】
複数のショルダーブロック13の各々にサイプ21が形成されていることにより、ラグ溝12に隣接したショルダーブロック13の縁部だけでなく、サイプ21によってもエッジ効果を発揮できるため、操縦安定性が向上する。ショルダーブロック13には、タイヤ周方向に対して(例えば45度未満の角度で)傾斜して延びるサイプ22や、タイヤ周方向に対して平行に延びるサイプ23(図2参照)が形成されていてもよい。かかる構成によれば、サイプ22,23によってタイヤ軸方向に沿ったエッジ効果が発揮されるため、旋回時の操縦安定性を向上することができる。
【0021】
各ショルダーブロック13のタイヤ周方向長さが異なることにより、タイヤ周方向におけるブロック剛性が不均一となるため、ブロック単位での偏摩耗の発生が懸念される。そこで、本実施形態では、タイヤ周方向長さが最小となるショルダーブロック13aに形成されたサイプ21の本数(図2の例では1本)を、タイヤ周方向長さが最大となるショルダーブロック13cに形成されたサイプ21の本数(図2の例では2本)よりも小さくしている。かかる構成によれば、ショルダーブロック13における単位面積あたりの接地面積の差異が小さくなり、ブロック剛性の不均一が軽減されるため、偏摩耗の発生を抑制することができる。
【0022】
図3を参照して説明した上記の如き構成は、一対のショルダー領域SAのうち片方に適用されていればよいが、より良好に偏摩耗を抑制するうえでは、両方に適用されていることが好ましい。図2の例では、左側のショルダー領域SAにおいても、複数のショルダーブロック13がタイヤ周方向にバリアブルピッチで配列され、その複数のショルダーブロック13の各々に少なくとも1本のサイプ21が形成されており、タイヤ周方向長さが最小となるショルダーブロック13におけるサイプ21の本数が、タイヤ周方向長さが最大となるショルダーブロック13におけるサイプ21の本数よりも小さい。
【0023】
センター領域CAには、タイヤ赤道TCを通るように並べられた複数のセンターブロック15が設けられている。複数のセンターブロック15は、タイヤ周方向にバリアブルピッチで配列されている。センターブロック15は、ショルダー主溝11sと、センター主溝11cと、それらを連通させる横溝14とによって区分されている。横溝14は屈曲線状に延びている。センターブロック15には、主溝11に比べて幅狭で且つ深さの小さい周方向細溝31が形成されている。周方向細溝31は、センターブロック15のタイヤ軸方向中央部においてタイヤ周方向に沿って延びている。周方向細溝31は、後述するサイプ24,25を縦断して横溝14同士を連通させている。
【0024】
センターブロック15には、タイヤ軸方向に沿って延びるサイプ24,25が形成されている。サイプ24は、ショルダー主溝11sとセンター主溝11cとを連通させている。サイプ24は、横溝14と略平行に延びている。サイプ25は、センターブロック15の両側に形成された一対の切欠溝32を連通させている。サイプ25及び一対の切欠溝32は、それら全体として横溝14と略平行に延びている。サイプ24は、タイヤ周方向に間隔を設けて複数配置されている。そのサイプ24の間隔に対して、横溝14とサイプ25(及び一対の切欠溝32)とが交互に配置されている。
【0025】
センター領域CAには、センターブロック15とセンター主溝11cを挟んで隣接した複数のセンターブロック17が設けられている。複数のセンターブロック17は、タイヤ周方向にバリアブルピッチで配列されている。センターブロック17は、ショルダー主溝11sと、センター主溝11cと、それらを連通させる横溝16とによって区分されている。センターブロック17のタイヤ軸方向中央部には、タイヤ周方向に沿った周方向サイプ27が形成されている。周方向サイプ27は、タイヤ周方向に対して傾斜して延びている。
【0026】
センターブロック17の両側には、互いに向かい合うようにして配置された一対の切欠溝33が形成されている。周方向サイプ27は、その一対の切欠溝33のうち片方からタイヤ周方向の一方側に延びていると共に、もう片方からタイヤ周方向の他方側に延びており、その各々が横溝16に開口している。センターブロック17には、タイヤ軸方向に沿って延びるサイプ26が形成されている。サイプ26は、主溝11からセンターブロック17のタイヤ軸方向中央部に向かって延在し、周方向サイプ27を横断している。サイプ26は、全体として横溝16と略平行に延びている。
【0027】
本実施形態の空気入りタイヤTが備えるトレッド3には、主溝11で区分された複数のブロック列の各々がバリアブルピッチで配列された複数のブロックからなるブロックパターンが採用されているため、パターンノイズの低減効果に優れる。しかも、ショルダー領域SAに設けられた複数のショルダーブロック13を上記の如く構成していることにより、ショルダーブロック13における偏摩耗の発生を抑制できる。尚、トレッド3のセンター領域CAの形態は特に限定されるものではなく、例えばリブを含むパターンであっても構わない。
【0028】
本実施形態の空気入りタイヤTは、ショルダー領域SAに設けられる複数のショルダーブロック13を上記の如く構成したこと以外は、通常の空気入りタイヤと同等であり、従来公知の材料、形状、構造などが何れも採用できる。
【0029】
上記の通り、本実施形態の空気入りタイヤTは、トレッド3のショルダー領域SAに設けられ、タイヤ周方向にバリアブルピッチで配列された複数のショルダーブロック13を備える。複数のショルダーブロック13の各々には、タイヤ軸方向に沿って延びる少なくとも1本のサイプ21が形成されている。タイヤ周方向長さが最小となるショルダーブロック13aに形成されたサイプ21の本数は、タイヤ周方向長さが最大となるショルダーブロック13cに形成されたサイプ21の本数よりも小さい。かかる構成によれば、パターンノイズの低減を図りながら、ショルダーブロック13における偏摩耗の発生を抑制できる。
【0030】
本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、この実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、更に、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0031】
本開示の空気入りタイヤは、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。本開示の空気入りタイヤは、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 ビード部
2 サイドウォール
3 トレッド
11 主溝
11s ショルダー主溝
12 ラグ溝
13 ショルダーブロック
13a タイヤ周方向長さが最小となるショルダーブロック
13c タイヤ周方向長さが最大となるショルダーブロック
21 サイプ
SA ショルダー領域
図1
図2
図3