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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027337
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】注水装置
(51)【国際特許分類】
   G21C 9/016 20060101AFI20240222BHJP
   G21C 15/18 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
G21C9/016
G21C15/18 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130062
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 充
(72)【発明者】
【氏名】三ツ川 文彦
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊哉
【テーマコード(参考)】
2G002
【Fターム(参考)】
2G002BA07
2G002CA08
(57)【要約】
【課題】冷却水をキャビティ室に確実に注水すること。
【解決手段】原子炉容器101の下方で炉心溶融物を受けるキャビティ室102Aに設けられた溶融体1と、キャビティ室102Aとは隔壁102Cを介した別室102Bに設けられる一方で溶融体1と繋がって設けられ、キャビティ室102Aに冷却水が送られる冷却水管51を開閉可能に構成されて、溶融体1が溶融した場合に冷却水管51を開放する弁機構2と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉格納容器の下方で炉心溶融物を受けるキャビティ室に設けられた溶融体と、
前記キャビティ室とは隔壁を介した別室に設けられる一方で前記溶融体と繋がって設けられ、前記キャビティ室に冷却水が送られる冷却水管を開閉可能に構成されて、前記溶融体が溶融した場合に前記冷却水管を開放する弁機構と、
を含む、注水装置。
【請求項2】
前記弁機構は、前記冷却水管を開閉する開閉弁と、前記溶融体に前記隔壁を通して接続されて前記溶融体が溶融した場合に前記開閉弁を開放作動させる弁開放部と、を含み、
弁開放部は、前記開閉弁を開放状態とする荷重を生じる錘を有し、
前記溶融体は、前記開閉弁を閉塞状態とするように前記錘の荷重に抗して前記錘を吊り上げ支持する、
請求項1に記載の注水装置。
【請求項3】
弁開放部は、前記錘を上下移動可能に支持する駆動ケーシングと、前記駆動ケーシングの内部であって前記錘の下方に収容された粘性体と、を含む、
請求項2に記載の注水装置。
【請求項4】
前記弁機構は、前記開閉弁を閉鎖状態とするように支持する一方、前記開閉弁を開放状態とするように支持を解除する補助機構をさらに含む、
請求項2に記載の注水装置。
【請求項5】
前記弁機構は、前記開閉弁の開閉を支持する作動軸の両端に固定され前記錘がそれぞれ取り付けられる各レバーと、各前記レバーまたは各前記錘を連結する連結部材と、をさらに含む、
請求項2に記載の注水装置。
【請求項6】
前記弁機構は、前記冷却水管を開閉する開閉弁と、前記溶融体に前記隔壁を通して接続されて前記溶融体が溶融した場合に前記開閉弁を開放作動させる弁開放部と、を含み、
弁開放部は、前記開閉弁を開放状態とする弾性力を生じる弾性部材を有し、
前記溶融体は、前記開閉弁を閉塞状態とするように前記弾性部材の弾性力に抗して前記弾性部材を圧縮状態で支持する、
請求項1に記載の注水装置。
【請求項7】
前記弁機構は、前記開閉弁を閉鎖状態とするように前記弾性部材を圧縮状態で支持する一方、前記開閉弁を開放状態とするように当該圧縮状態を解除する補助機構をさらに含む、
請求項6に記載の注水装置。
【請求項8】
前記弁機構は、冷却水を通過させる弁ケーシングの内部に弁体および弁座が収容される、
請求項1に記載の注水装置。
【請求項9】
前記弁機構は、前記弁体がバタフライ弁からなる、
請求項8に記載の注水装置。
【請求項10】
前記弁機構は、前記弁体が逆止弁からなる、
請求項8に記載の注水装置。
【請求項11】
前記弁機構は、前記弁座の開口径が、前記弁ケーシングの入口の開口径よりも小さく形成される、
請求項10に記載の注水装置。
【請求項12】
前記弁機構は、前記弁体が仕切弁からなる、
請求項8に記載の注水装置。
【請求項13】
前記弁機構は、弁体と弁座の間に設けられた止水部材をさらに含む、
請求項1に記載の注水装置。
【請求項14】
前記冷却水管の前記弁機構より上流側に設けられた開閉機構をさらに含む、
請求項1に記載の注水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、注水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントにおいては、シビアアクシデントとして、炉心溶融物が原子炉容器から流出する事故が想定される。炉心溶融物が原子炉格納容器のキャビティ室に落下する場合、そのキャビティ室を形成する構造物に重大な損傷が発生すると、被害が拡大する可能性がある。そのため、原子炉格納容器の重大な損傷の発生が抑制されるように対策を行う必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、原子炉格納容器内に注水を行う注水装置が示されている。この注水装置は、冷却水を供給する流路と、流路を閉止するディスクと、ディスクに連結されディスクによる流路の閉止および開放を行うスイングアームと、スイングアームにスイングレバーを介して連結されるウェイトと、ウェイトを支持する低融点合金からなる支持部材と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6753773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示されるような注水装置は、上記構成の全てが炉心溶融物の落下するキャビティ室(下部ドライウェル)に配置されている。このため、例えば、ディスク、スイングアーム、スイングレバー、ウェイトなどが炉心溶融物の熱の影響を受けて作動が阻害されると、冷却水をキャビティ室に注水することができなくなるおそれがある。
【0006】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、冷却水をキャビティ室に確実に注水することのできる注水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本開示の一態様に係る注水装置は、原子炉格納容器の下方で炉心溶融物を受けるキャビティ室に設けられた溶融体と、前記キャビティ室とは隔壁を介した別室に設けられる一方で前記溶融体と繋がって設けられ、前記キャビティ室に冷却水が送られる冷却水管を開閉可能に構成されて、前記溶融体が溶融した場合に前記冷却水管を開放する弁機構と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、冷却水をキャビティ室に確実に注水できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、注水装置を表す概略図である。
図2図2は、実施形態1の注水装置を表す概略側面図である。
図3図3は、実施形態1の注水装置における弁機構の開閉弁の断面図である。
図4図4は、実施形態1の注水装置における弁機構の弁開放部の断面図である。
図5図5は、実施形態2の注水装置における弁機構の開閉弁の断面図である。
図6図6は、実施形態2の注水装置における弁機構の弁開放部の断面図である。
図7図7は、実施形態3の注水装置における弁機構の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの開示が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
図1は、注水装置を表す概略図である。
【0012】
注水装置10は、原子力プラントのシビアアクシデントにおいて、原子炉容器101から炉心溶融物が流出する事象に対し、当該炉心溶融物を冷却水によって冷却するためのものである。
【0013】
原子炉容器101は、気密性の高い堅牢な原子炉格納容器102の内部に格納される。原子炉格納容器102は、原子炉容器101の下方にキャビティ室102Aが画成される。また、原子炉格納容器102は、原子炉容器101の下方から逸れた位置にキャビティ室102Aとは隔壁102Cを介して原子炉容器101とは隔離された別室102Bが画成される。当該別室102Bは、原子炉容器101とは隔離されているため、炉心溶融物の影響が極めて低い。
【0014】
注水装置10は、溶融体1と、弁機構2,1002,2002と、を含む。
【0015】
溶融体1は、炉心溶融物によって溶融する材質で構成され、線状、棒状、または鎖状のような長尺体として形成される。溶融体1は、一端がキャビティ室102Aに配置され、例えば、キャビティ室102Aの床に固定された固定部11に固定される。溶融体1は、隔壁102Cを通過して他端が別室102Bに至り、弁機構2,1002,2002に接続される。
【0016】
弁機構2,1002,2002は、キャビティ室102Aに冷却水が送られる冷却水管51を開閉可能に構成される。冷却水管51は、主に別室102Bに配置され、図示しないタンクに接続される。タンクには、冷却水が貯留される。冷却水管51は、隔壁102Cを通過して注水口51aがキャビティ室102Aに配置される。従って、冷却水管51は、タンクの冷却水を注水口51aからキャビティ室102Aに送ることができる。また、冷却水管51は、開閉機構52が設けられ、注水口51aへの冷却水の供給が開閉される。弁機構2,1002,2002は、この冷却水管51に対し、開閉機構52よりも冷却水の下流側に設けられる。言い換えると、開閉機構52は、冷却水管51において弁機構2,1002,2002より冷却水の上流側に設けられる。開閉機構52は、通常は冷却水管51を開放する状態にあり、弁機構2,1002,2002のメンテナンス時など必要に応じて冷却水管51を閉塞する状態とされる。そして、弁機構2,1002,2002は、キャビティ室102Aにおいて炉心溶融物によって溶融体1が溶融した場合に冷却水管51を開放し、キャビティ室102Aに冷却水を送るように構成される。
【0017】
なお、弁機構2は実施形態1の注水装置10の構成例であり、弁機構1002は実施形態2の注水装置10の構成例であり、弁機構2002は実施形態3の注水装置10の構成例である。以下、各実施形態の弁機構2,1002,2002の詳細を説明する。
【0018】
[実施形態1]
図2は、実施形態1の注水装置を表す概略側面図である。図3は、実施形態1の注水装置における弁機構の開閉弁の断面図である。図4は、実施形態1の注水装置における弁機構の弁開放部の断面図である。
【0019】
弁機構2は、開閉弁21と、弁開放部22と、を含む。
【0020】
開閉弁21は、冷却水管51に設けられ、当該冷却水管51を開閉するものである。開閉弁21は、冷却水管51に介在される弁ケーシング211を有する。弁ケーシング211は、冷却水が流入できる入口211Aと、冷却水が流出できる出口211Bと、を有する。弁ケーシング211は、その内部において入口211Aと出口211Bとの間に弁座211Cを有する。また、開閉弁21は、弁座211Cに当接または離隔することが可能な弁体212Aを有する。実施形態1の弁体212Aは、バタフライ弁からなる。即ち、弁体212Aは、円形状の弁座211Cの内面に接触できるように、円板状に形成される。弁体212Aは、その中央に径方向に延びる支持軸212Aaが設けられる。弁体212Aは、支持軸212Aaが弁ケーシング211に回転自在に支持される。このように構成された開閉弁21は、弁ケーシング211に対して支持軸212Aaが回転することで、弁体212Aが支持軸212Aaを中心に回転移動し、弁座211Cを閉塞する位置と開放する位置とに変位する。開閉弁21は、弁体212Aが弁座211Cを閉塞することで、弁ケーシング211の内部で冷却水の通過が止められて冷却水管51を閉塞する。一方、開閉弁21は、弁体212Aが弁座211Cを開放することで、弁ケーシング211の内部で冷却水の通過が許容されて冷却水管51を開放する。また、開閉弁21は、弁体212Aと弁座211Cの間に止水部材213が設けられる。止水部材213は、耐候性・耐寒性・耐オゾン性・耐老化性・溶剤性に優れるエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)からなり、弁体212Aと弁座211Cとの接触および離隔を円滑に行わせることができる。
【0021】
弁開放部22は、開閉弁21に接続され、当該開閉弁21を閉塞状態に維持する一方、開放作動させる。弁開放部22は、駆動機構221と、開放機構222と、補助機構223と、を含む。
【0022】
開放機構222は、上述した開閉弁21を作動させるものである。即ち、開放機構222は、開閉弁21の支持軸212Aaを回転させる。開放機構222は、作動ケーシング222Aに作動軸222Bが回転自在に支持される。作動ケーシング222Aは、弁ケーシング211に接続され、作動軸222Bは、支持軸212Aaと同方向に延びて支持軸212Aaに接続される。開放機構222は、作動ケーシング222Aの内部において、作動軸222Bに作動レバー222Cが固定される。作動軸222Bは、自身を中心として作動レバー222Cが移動されることで回転する。開閉弁21は、作動軸222Bの回転に伴い支持軸212Aaが回転し弁体212Aが回転移動する。
【0023】
駆動機構221は、開放機構222を駆動するものである。即ち、駆動機構221は、作動レバー222Cを移動させる。駆動機構221は、駆動ケーシング221Aの内部に、錘221Bが配置される。駆動ケーシング221Aは、上下方向に連なる筒状の側壁221Aaの上下の開口を上板221Abと下板221Acとで塞いで構成される。錘221Bは、主錘221Baと、副錘221Bbと、接続部材221Bcと、で構成される。主錘221Baは、駆動ケーシング221Aの内部に収容され、上下方向に移動可能に設けられる。副錘221Bbは、主錘221Baの下部に固定されて下方に棒状に延びて形成され、駆動ケーシング221Aの下板221Acを貫通してさらに下方に延びて設けられる。副錘221Bbが下板221Acを貫通する部分は、シールリング221Adで封止される。接続部材221Bcは、主錘221Baの上部に固定されて上方に棒状に延びて形成され、駆動ケーシング221Aの上板221Abを貫通してさらに上方に延びて設けられる。接続部材221Bcが上板221Abを貫通する部分は、シールリング221Adで封止される。接続部材221Bcは、駆動ケーシング221Aの外部に延び出た先端に、溶融体1の他端が接続されるアイボルトが固定される。
【0024】
主錘221Baは、上述したように、駆動ケーシング221Aの内部で上下方向に移動可能に設けられる。主錘221Baの上下方向の移動に伴い、副錘221Bbも上下方向に移動する。副錘221Bbは、自身の移動において、常に下板221Acを貫通した状態にある。副錘221Bbは、下板221Acを貫通した部分が開放機構222の作動ケーシング222Aを上下方向に貫通する。副錘221Bbは、作動ケーシング222Aに対してシールリング222Aaで封止される。副錘221Bbは、作動ケーシング222Aの内部に位置する部分に支持ピン221Bbaが設けられる。支持ピン221Bbaは、開放機構222における作動レバー222Cに形成された長孔222Caに挿通される。従って、作動レバー222Cは、主錘221Baおよび副錘221Bbの上下方向の移動に伴い、図2に矢印Rで示すように上下に揺動する。そして、作動レバー222Cの移動によって作動軸222Bが回転し、開閉弁21が開閉される。
【0025】
また、主錘221Baの上下方向の移動に伴い、接続部材221Bcも上下方向に移動する。接続部材221Bcは、自身の移動において、常に上板221Abを貫通した状態にある。接続部材221Bcは、上板221Abを貫通した先端のアイボルトに溶融体1が接続される。溶融体1は、作動待機の通常時に、主錘221Baおよび副錘221Bbの荷重に抗し主錘221Baおよび副錘221Bbを上方に吊り上げ支持するように、キャビティ室102Aにおいて一端が固定部11に固定される。また、主錘221Baおよび副錘221Bbが上方に吊り上げられた形態では、開閉弁21が閉塞状態にある。従って、シビアアクシデント時に、キャビティ室102Aにおいて炉心溶融物によって溶融体1が溶融した場合、主錘221Baおよび副錘221Bbが下方に移動する。主錘221Baおよび副錘221Bbが下方に移動すると、開閉弁21が開放状態となり、冷却水管51を開放し、キャビティ室102Aに冷却水が送られる。
【0026】
ここで、駆動機構221は、駆動ケーシング221Aの内部であって、主錘221Baの下方にオイルなどの粘性体221Cが収容される。粘性体221Cは、主錘221Baおよび副錘221Bbが下方に移動する際の衝撃を吸収し、開閉弁21に係る衝撃を和らげる。
【0027】
また、駆動機構221は、駆動ケーシング221Aの上板221Abに形成された貫通孔を介して栓部材221Dまたは支持部材221Eが設けられる。栓部材221Dは、貫通孔を塞ぐものである。栓部材221Dは、使用しないときに駆動ケーシング221Aから離れないように連結紐221Daで駆動ケーシング221Aに連結される。支持部材221Eは、貫通孔に貫通されて主錘221Baに捩じ込まれるボルトであり、主錘221Baを駆動ケーシング221Aの上板221Abに支持させるものである。支持部材221Eは、使用しないときに駆動ケーシング221Aから離れないように連結紐221Eaで駆動ケーシング221Aに連結される。栓部材221Dは、作動待機の通常時に用いられる。支持部材221Eは、メンテナンス時などにおいて、錘221Bが上方に位置した状態で駆動ケーシング221Aに支持させ、主錘221Baおよび副錘221Bbが下方に移動しないようにする。
【0028】
ところで、駆動機構221は、主錘221Baの大きさ(重さ)を様々に仕様変更することができる。主錘221Baの大きさ(重さ)の仕様変更に伴い、駆動ケーシング221Aも仕様変更される。また、主錘221Baの仕様変更に伴い、副錘221Bbの長さ(重さ)を変更する必要がある場合、副錘221Bbの上下方向の移動範囲の変更に基づいて、作動ケーシング222Aおよび作動レバー222Cの形状を変更する。
【0029】
補助機構223は、開放機構222の作動ケーシング222Aに連通するように接合された補助ケーシング223aを有し、かつ補助ケーシング223aの内部に配管223cを介して作動油を出し入れするポンプ223bを有する。作動ケーシング222Aを貫通する副錘221Bbの下端部は、補助ケーシング223aの内部に至る。従って、補助ケーシング223aに作動油が供給されると、副錘221Bbを上方に押し上げ、当該副錘221Bbを介して開閉弁21が閉塞状態となる。この補助機構223は、作動待機の通常時には作動油が補助ケーシング223aに供給されない状態とする。補助機構223は、注水装置10のメンテナンス時に、溶融体1の他端を外し、主錘221Baを取り外した状態でも、作動油を補助ケーシング223aに供給したり排出したりして副錘221Bbを上下に移動させ開閉弁21を開閉操作することができる。即ち、補助機構223は、開閉弁21を閉鎖状態とするように副錘221Bbを支持する一方、開閉弁21を開放状態とするように副錘221Bbの支持を解除する。
【0030】
このように、実施形態1の注水装置10は、原子炉容器101の下方で炉心溶融物を受けるキャビティ室102Aに設けられた溶融体1と、キャビティ室102Aとは隔壁102Cを介した別室102Bに設けられる一方で溶融体1と繋がって設けられ、キャビティ室102Aに冷却水が送られる冷却水管51を開閉可能に構成されて、溶融体1が溶融した場合に冷却水管51を開放する弁機構2と、を含む。
【0031】
この実施形態1の注水装置10によれば、キャビティ室102Aとは隔壁102Cを介した別室102Bに弁機構2を設けることで、炉心溶融物に弁機構2が晒される事態を防ぎ、炉心溶融物によって弁機構2の作動が阻害されることを防ぎ、溶融体1の溶融によって弁機構2を作動させることができる。この結果、実施形態1の注水装置10は、冷却水をキャビティ室102Aに確実に注水できる。
【0032】
また、実施形態1の注水装置10では、弁機構2は、冷却水管51を開閉する開閉弁21と、溶融体1に隔壁102Cを通して接続されて溶融体1が溶融した場合に開閉弁21を開放作動させる弁開放部22と、を含み、弁開放部22は、開閉弁21を開放状態とする荷重を生じる錘221Bを有し、溶融体1は、開閉弁21を閉塞状態とするように錘221Bの荷重に抗して錘221Bを吊り上げ支持する。
【0033】
この実施形態1の注水装置10によれば、炉心溶融物によって溶融体1が溶融することで、錘221Bが下方に移動し開閉弁21を開放状態にできる。
【0034】
また、実施形態1の注水装置10では、弁機構2は、開閉弁21を閉鎖状態とするように支持する一方、開閉弁21を開放状態とするように支持を解除する補助機構223をさらに含む。
【0035】
この実施形態1の注水装置10によれば、例えば、錘221Bの設置時やメンテンナンス時に、錘221Bの荷重が効いていない状態で、補助機構223によって開閉弁21を閉鎖状態で保持できる。
【0036】
また、実施形態1の注水装置10では、弁開放部22は、錘221Bを上下移動可能に支持する駆動ケーシング221Aと、駆動ケーシング221Aの内部であって錘221Bの下方に収容された粘性体221Cと、を含む。
【0037】
この実施形態1の注水装置10によれば、粘性体221Cによって錘221Bが落下する際の衝撃を吸収し、開閉弁21に係る衝撃を和らげることができる。
【0038】
また、実施形態1の注水装置10では、弁機構2は、弁体212Aおよび弁座211Cが冷却水を通過させる弁ケーシング211の内部に収容される。
【0039】
この実施形態1の注水装置10によれば、弁ケーシング211によって弁体212Aおよび弁座211Cが保護されるため、弁体212Aおよび弁座211Cの作用および動作を常に確保できる。
【0040】
また、実施形態1の注水装置10では、弁機構2は、弁体212Aがバタフライ弁からなる。
【0041】
この実施形態1の注水装置10によれば、弁体212Aにバタフライ弁を適用できる。
【0042】
また、実施形態1の注水装置10では、弁機構2は、弁体212Aと弁座211Cの間に設けられた止水部材213をさらに含む。
【0043】
この実施形態1の注水装置10によれば、止水部材213によって弁体212Aおよび弁座211Cの作用および動作を常に確保できる。実施形態1の注水装置10は、シビアアクシデント時に作動するものであり、通常時は開閉弁21を閉塞状態で維持しなければならず、シビアアクシデント時には開閉弁21を確実に開放状態にしなければならないため、弁体212Aおよび弁座211Cの作用および動作を常に確保することが必要である。
【0044】
また、実施形態1の注水装置10では、冷却水管51の弁機構2より上流側に設けられた開閉機構52をさらに含む。
【0045】
この実施形態1の注水装置10によれば、弁機構2のメンテナンス時に開閉機構52によって冷却水を閉止することができる。
【0046】
[実施形態2]
図5は、実施形態2の注水装置における弁機構の開閉弁の断面図である。図6は、実施形態2の注水装置における弁機構の弁開放部の断面図である。
【0047】
弁機構1002は、開閉弁1021と、弁開放部1022と、を含む。
【0048】
開閉弁1021は、冷却水管51に設けられ、当該冷却水管51を開閉するものである。開閉弁1021は、冷却水管51に介在される弁ケーシング1211を有する。弁ケーシング1211は、冷却水が流入できる入口1211Aと、冷却水が流出できる出口1211Bと、を有する。弁ケーシング1211は、その内部において入口1211Aと出口1211Bとの間に弁座1211Cを有する。また、開閉弁1021は、弁座1211Cに当接または離隔することが可能な弁体1212Aを有する。実施形態2の弁体1212Aは、逆止弁からなる。即ち、弁体1212Aは、円筒状の弁座1211Cの開口端に接触できるように、円板状に形成される。弁体1212Aは、弁ケーシング1211に対して回転自在に貫通する作動軸1222Bに固定される支持部1212Aaが設けられる。支持部1212Aaは、弁体1212Aにおいて弁座1211Cに対向する面とは反対側に設けられた支時アーム1212Abと一体に設けられる。このように構成された開閉弁1021は、弁ケーシング1211に対して作動軸1222Bが回転することで、支持部1212Aaおよび支時アーム1212Abを介して弁体1212Aが作動軸1222Bを中心に回転移動し、弁座1211Cを閉塞する位置と開放する位置とに変位する。開閉弁1021は、弁体1212Aが弁座1211Cを閉塞することで、弁ケーシング1211の内部で冷却水の通過が止められて冷却水管51を閉塞する。一方、開閉弁1021は、弁体1212Aが弁座1211Cを開放することで、弁ケーシング1211の内部で冷却水の通過が許容されて冷却水管51を開放する。また、開閉弁1021は、弁体1212Aが弁座1211Cを閉塞する位置で、弁ケーシング1211の入口1211Aから流入する冷却水の圧力によって弁座1211Cを閉塞する方向に押し付けられ、閉塞状態が維持される。また、開閉弁1021は、弁体1212Aと弁座1211Cの間に止水部材1213が設けられる。止水部材1213は、耐候性・耐寒性・耐オゾン性・耐老化性・溶剤性に優れるエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)からなり、弁体1212Aと弁座1211Cとの接触および離隔を円滑に行わせることができる。また、開閉弁1021は、弁ケーシング1211において、弁座1211Cの開口径D1が入口1211Aの開口径D2よりも小さく形成される。
【0049】
また、弁ケーシング1211は、弁座1211Cを臨める位置に開口部1211Dが形成される。開口部1211Dは、蓋部材1211Eで開閉される。開口部1211Dは、作動待機の通常時に蓋部材1211Eで閉塞される。また、開口部1211Dは、メンテナンス時などにおいて蓋部材1211Eが外されて開放され、弁体1212Aや弁座1211Cが点検される。また、弁ケーシング1211は、その内部に弁体1212Aが弁座1211Cを開放したときに弁体1212Aを当接させて必要以上の移動を規制する突当1211Fが設けられる。
【0050】
弁開放部1022は、開閉弁1021に接続され、当該開閉弁1021を閉塞状態に維持する一方、開放作動させる。弁開放部1022は、駆動機構1221と、開放機構1222と、を含む。
【0051】
開放機構1222は、上述した開閉弁1021を作動させるものである。即ち、開放機構1222は、開閉弁1021の支持部1212Aaおよび支時アーム1212Abを介して弁体1212Aを回転移動させる。開放機構1222は、作動軸1222Bを有する。作動軸1222Bは、弁ケーシング1211を貫通し、回転自在に設けられる。開放機構1222は、作動軸1222Bが弁ケーシング1211を貫通する両端に基端が固定された各レバー1222Cの先端に各錘1221Bが固定されて構成される。また、開放機構1222は、各レバー1222Cを連結する連結部材1222Dを有する。連結部材1222Dは、各レバー1222Cに固定された各錘1221Bを連結してもよい。この開放機構1222は、各レバー1222Cが作動軸1222Bを中心に回転する。開閉弁1021は、作動軸1222Bの回転に伴い支持部1212Aaおよび支時アーム1212Abを介して弁体1212Aが回転移動する。従って、開閉弁1021の弁体1212Aは、作動軸1222Bの回転に伴い、図5に矢印Rで示すように揺動する。そして、弁体1212Aの揺動によって、開閉弁1021が開閉される。
【0052】
駆動機構1221は、上記各錘1221Bで構成される。各錘1221Bは、自身の荷重によって、各レバー1222Cを下方に回転させることができる。各錘1221Bまたは各レバー1222Cは、溶融体1の他端が接続される。
【0053】
溶融体1は、作動待機の通常時に、錘1221Bの荷重に抗し錘1221Bを上方に吊り上げ支持するように、キャビティ室102Aにおいて一端が固定部11に固定される。また、錘1221Bが上方に吊り上げられた形態では、開閉弁1021が閉塞状態にある。従って、シビアアクシデント時に、キャビティ室102Aにおいて炉心溶融物によって溶融体1が溶融した場合、錘1221Bが下方に移動する。錘1221Bが下方に移動すると、開閉弁1021が開放状態となり、冷却水管51を開放し、キャビティ室102Aに冷却水が送られる。
【0054】
このように、実施形態2の注水装置10は、原子炉容器101の下方で炉心溶融物を受けるキャビティ室102Aに設けられた溶融体1と、キャビティ室102Aとは隔壁102Cを介した別室102Bに設けられる一方で溶融体1と繋がって設けられ、キャビティ室102Aに冷却水が送られる冷却水管51を開閉可能に構成されて、溶融体1が溶融した場合に冷却水管51を開放する弁機構1002と、を含む。
【0055】
この実施形態2の注水装置10によれば、キャビティ室102Aとは隔壁102Cを介した別室102Bに弁機構1002を設けることで、炉心溶融物に弁機構1002が晒される事態を防ぎ、炉心溶融物によって弁機構1002の作動が阻害されることを防ぎ、溶融体1の溶融によって弁機構1002を作動させることができる。この結果、実施形態2の注水装置10は、冷却水をキャビティ室102Aに確実に注水できる。
【0056】
また、実施形態2の注水装置10では、弁機構1002は、冷却水管51を開閉する開閉弁1021と、溶融体1に隔壁102Cを通して接続されて溶融体1が溶融した場合に開閉弁1021を開放作動させる弁開放部1022と、を含み、弁開放部1022は、開閉弁1021を開放状態とする荷重を生じる錘1221Bを有し、溶融体1は、開閉弁1021を閉塞状態とするように錘1221Bの荷重に抗して錘1221Bを吊り上げ支持する。
【0057】
この実施形態2の注水装置10によれば、炉心溶融物によって溶融体1が溶融することで、錘1221Bが下方に移動し開閉弁1021を開放状態にできる。
【0058】
また、実施形態2の注水装置10では、弁機構1002は、開閉弁1021の開閉を支持する作動軸1222Bの両端に固定され錘1221Bがそれぞれ取り付けられる各レバー1222Cと、各レバー1222Cまたは各錘1221Bを連結する連結部材1222Dと、をさらに含む。
【0059】
この実施形態2の注水装置10によれば、連結部材1222Dによって各レバー1222Cまたは各錘1221Bを連結することで、作動軸1222Bへの捩じりの発生を防止できる。この結果、実施形態2の注水装置10は、開閉弁1021の開閉を確実に行え、冷却水をキャビティ室102Aに確実に注水できる。
【0060】
また、実施形態2の注水装置10では、弁機構1002は、弁体1212Aおよび弁座1211Cが冷却水を通過させる弁ケーシング1211の内部に収容される。
【0061】
この実施形態2の注水装置10によれば、弁ケーシング1211によって弁体1212Aおよび弁座1211Cが保護されるため、弁体1212Aおよび弁座1211Cの作用および動作を常に確保できる。
【0062】
また、実施形態2の注水装置10では、弁機構1002は、弁体1212Aが逆止弁からなる。
【0063】
この実施形態2の注水装置10によれば、弁体1212Aに逆止弁を適用できる。
【0064】
また、実施形態2の注水装置10では、弁機構1002は、弁座1211Cの開口径D1が、弁ケーシング1211の入口1211Aの開口径D2よりも小さく形成される。
【0065】
この実施形態2の注水装置10によれば、弁ケーシング1211の入口1211Aから流入する冷却水による水圧を、弁座1211Cの位置で比較的小さくすることができる。この結果、実施形態2の注水装置10は、弁体1212Aを開放させる作動力(錘1221Bの荷重)を小さく設定でき、装置の小型化を図れる。
【0066】
また、実施形態2の注水装置10では、弁機構1002は、弁体1212Aと弁座1211Cの間に設けられた止水部材1213をさらに含む。
【0067】
この実施形態2の注水装置10によれば、止水部材1213によって弁体1212Aおよび弁座1211Cの作用および動作を常に確保できる。実施形態2の注水装置10は、シビアアクシデント時に作動するものであり、通常時は開閉弁1021を閉塞状態で維持しなければならず、シビアアクシデント時には開閉弁1021を確実に開放状態にしなければならないため、弁体1212Aおよび弁座1211Cの作用および動作を常に確保することが必要である。
【0068】
また、実施形態2の注水装置10では、冷却水管51の弁機構2より上流側に設けられた開閉機構52をさらに含む。
【0069】
この実施形態2の注水装置10によれば、弁機構1002のメンテナンス時に開閉機構52によって冷却水を閉止することができる。
【0070】
[実施形態3]
図7は、実施形態3の注水装置における弁機構の断面図である。
【0071】
弁機構2002は、開閉弁2021と、弁開放部2022と、を含む。
【0072】
開閉弁2021は、冷却水管51に設けられ、当該冷却水管51を開閉するものである。開閉弁2021は、冷却水管51に介在される弁ケーシング2211を有する。弁ケーシング2211は、冷却水が流入できる入口2211Aと、冷却水が流出できる出口2211Bと、を有する。弁ケーシング2211は、その内部において入口2211Aと出口2211Bとの間に弁座2211Cを有する。また、開閉弁2021は、弁座2211Cに当接または離隔することが可能な弁体2212Aを有する。実施形態3の弁体2212Aは、仕切弁からなる。即ち、弁体2212Aは、弁ケーシング2211の内周に形成された弁座2211Cに接触して弁ケーシング2211を仕切るように形成される。弁体2212Aは、その一側部に弁ケーシング2211の径方向に延びる支持軸2212Aaが設けられる。弁体2212Aは、支持軸2212Aaが弁ケーシング2211に対して径方向にスライド移動自在に支持される。このように構成された開閉弁2021は、弁ケーシング2211に対して支持軸2212Aaがスライド移動することで、弁体2212Aが径方向に移動し、弁座2211Cを閉塞する位置と開放する位置とに変位する。開閉弁2021は、弁体2212Aが弁座2211Cを閉塞することで、弁ケーシング2211の内部で冷却水の通過が止められて冷却水管51を閉塞する。一方、開閉弁2021は、弁体2212Aが弁座2211Cを開放することで、弁ケーシング2211の内部で冷却水の通過が許容されて冷却水管51を開放する。また、開閉弁2021は、弁体2212Aと弁座2211Cの間に止水部材2213が設けられる。止水部材2213は、耐候性・耐寒性・耐オゾン性・耐老化性・溶剤性に優れるエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)からなり、弁体2212Aと弁座2211Cとの接触および離隔を円滑に行わせることができる。
【0073】
弁開放部2022は、開閉弁2021に接続され、当該開閉弁2021を閉塞状態に維持する一方、開放作動させる。弁開放部2022は、駆動機構2221と、開放機構2222と、補助機構2223と、を含む。
【0074】
開放機構2222は、上述した開閉弁2021を作動させるものである。即ち、開放機構2222は、開閉弁2021の支持軸2212Aaをスライド移動させる。開放機構2222は、作動ケーシング2222Aに作動軸2222Bがスライド移動自在に支持される。作動ケーシング2222Aは、弁ケーシング2211に接続され、作動軸2222Bは、支持軸2212Aaと同方向に延びて支持軸2212Aaに接続される。開放機構2222は、作動ケーシング2222Aの外部にセンサ2211Ga,2211Gbが設けられる。作動軸2222Bは、作動ケーシング2222Aの外部に突出し、センサ2211Ga,2211Gbに検出される検出片2222Baが設けられる。従って、作動軸2222Bの一方へのスライド移動がセンサ2211Gaで検出され、作動軸2222Bの他方へのスライド移動がセンサ2211Gbで検出され、当該検出によって支持軸2212Aaのスライド移動位置、即ち開閉弁2021の開閉状態を検知できる。
【0075】
駆動機構2221は、開放機構2222を駆動するものである。即ち、駆動機構2221は、作動軸2222Bをスライド移動させる。駆動機構2221は、駆動ケーシング2221Aの内部に、弾性部材2221Bが配置される。弾性部材2221Bは、実施形態では圧縮コイルバネとして構成され、作動軸2222Bのスライド移動方向に伸縮可能に設けられる。弾性部材2221Bは、伸縮方向の一方端(上端)が押圧部材2221Eに当接可能に設けられ、伸縮方向の他方端(下端)が駆動ケーシング2221Aの底板2221Aaに当接可能に設けられる。弾性部材2221Bは、押圧部材2221Eと底板2221Aaとの間に挟まれるように設けられる。押圧部材2221Eは、板状に形成され、弾性部材2221Bが当接される反対側の面に上方に突出する棒状の支持部2221Eaが形成される。支持部2221Eaは、駆動ケーシング2221Aの上板2221Abに形成された案内凹部2221Abaに挿通され、駆動ケーシング2221Aの内部で弾性部材2221Bの伸縮方向である作動軸2222Bのスライド移動方向にスライド移動可能に設けられる。また、駆動機構2221は、作動レバー2221Cを有する。作動レバー2221Cは、棒状に形成され、基端2221Caが駆動ケーシング2221Aの内部に配置されて押圧部材2221Eに対してピンなどで接続されて軸支され、途中が支点2221Ccとなって駆動ケーシング2221Aに軸支される。作動レバー2221Cは、先端2221Cbに接続部材2221Dが軸支される。接続部材2221Dは、溶融体1の他端が接続されるアイボルトが固定される。
【0076】
駆動ケーシング2221Aの内部において、作動軸2222Bは、開閉弁2021とは反対方向に延びる先端部が駆動ケーシング2221Aの底板2221Aaを貫通して駆動ケーシング2221Aの内部に至り、弾性部材2221Bを伸縮方向で貫通して設けられる。駆動機構2221は、この作動軸2222Bの先端に押圧部材2221Eが捩じ込みなどで接続される。このため、弾性部材2221Bは、伸長する弾性力によって、押圧部材2221Eを介し、作動レバー2221Cを基端2221Caが開閉弁2021から離隔する方向(上方)に付勢し、かつ作動軸2222Bを開閉弁2021から離隔する方向(上方)に付勢する。一方、弾性部材2221Bは、溶融体1の他端が接続される作動レバー2221Cの先端2221Cbが上方に移動するように荷重を付加された場合、押圧部材2221Eを介して弾性力に抗して圧縮される。この場合、作動軸2222Bは、開閉弁2021に近づく方向(下方)にスライド移動し、かつ作動レバー2221Cは、基端2221Caが開閉弁2021に近づく方向(下方)に揺動する。そして、作動レバー2221Cの移動に伴って作動軸2222Bが移動し、図7に矢印Rで示すように上下に開閉弁2021が開閉される。
【0077】
作動レバー2221Cは、先端2221Cbの接続部材2221Dのアイボルトに溶融体1が接続される。溶融体1は、作動待機の通常時に、作動レバー2221Cの先端2221Cbを上方に吊り上げ支持するように、キャビティ室102Aにおいて一端が固定部11に固定される。また、作動レバー2221Cの先端2221Cbが上方に吊り上げられた形態では、弾性部材2221Bの弾性力に抗して作動軸2222Bが支持軸2212Aaを伴って下方にスライド移動し、開閉弁2021が閉塞状態にある。従って、シビアアクシデント時に、キャビティ室102Aにおいて炉心溶融物によって溶融体1が溶融した場合、弾性部材2221Bの弾性力によって、作動レバー2221Cの基端2221Ca、作動軸2222Bおよび支持軸2212Aaが上方に引き上げられる。支持軸2212Aaが上方に引き上げられると、開閉弁2021が開放状態となり、冷却水管51を開放し、キャビティ室102Aに冷却水が送られる。
【0078】
補助機構2223は、駆動機構2221の駆動ケーシング2221Aの上端に連通するように接合された補助ケーシング2223aを有する。補助ケーシング2223aは、その内部に上下方向に移動可能に作動棒2223bが収容される。作動棒2223bは、駆動ケーシング2221Aの上板2221Abの案内凹部2221Abaを通じて駆動ケーシング2221Aの内部に貫通可能であり、押圧部材2221Eの支持部2221Eaに当接可能に設けられる。また、補助ケーシング2223aは、作動棒2223bを上下方向に移動させるように回転操作される操作ハンドル2223dが設けられる。例えば、操作ハンドル2223dが回転操作されると、ギヤの噛み合いによって作動棒2223bが上下方向に移動される。従って、補助機構2223は、操作ハンドル2223dが回転操作され、作動棒2223bが下方に移動されると、作動棒2223bが押圧部材2221Eに当接して押圧部材2221Eを下方に移動させる。すると、駆動機構2221は、押圧部材2221Eによって弾性部材2221Bが圧縮され、開放機構2222の作動軸2222Bが支持軸2212Aaを伴って下方にスライド移動し、開閉弁2021を閉塞状態とする。一方、補助機構2223は、操作ハンドル2223dが回転操作され、作動棒2223bが上方に移動されると、作動棒2223bが押圧部材2221Eから離れ、押圧部材2221Eのスライド移動を自由にする。すると、駆動機構2221は、弾性部材2221Bが弾性力によって伸長し、開放機構2222の作動軸2222Bが支持軸2212Aaを伴って上方にスライド移動し、開閉弁2021を開放状態とする。補助機構2223は、注水装置10のメンテナンス時に、溶融体1の他端を外した状態でも、操作ハンドル2223dの操作で作動軸2222Bおよび支持軸2212Aaを上下に移動させ開閉弁2021を開閉操作することができる。即ち、補助機構2223は、開閉弁2021を閉鎖状態とするように弾性部材2221Bの弾性力に抗して弾性部材2221Bを圧縮状態で支持する一方、開閉弁1021を開放状態とするように弾性部材2221Bの圧縮を解除する。
【0079】
このように、実施形態3の注水装置10は、原子炉容器101の下方で炉心溶融物を受けるキャビティ室102Aに設けられた溶融体1と、キャビティ室102Aとは隔壁102Cを介した別室102Bに設けられる一方で溶融体1と繋がって設けられ、キャビティ室102Aに冷却水が送られる冷却水管51を開閉可能に構成されて、溶融体1が溶融した場合に冷却水管51を開放する弁機構2002と、を含む。
【0080】
この実施形態3の注水装置10によれば、キャビティ室102Aとは隔壁102Cを介した別室102Bに弁機構2002を設けることで、炉心溶融物に弁機構2002が晒される事態を防ぎ、炉心溶融物によって弁機構2002の作動が阻害されることを防ぎ、溶融体1の溶融によって弁機構2002を作動させることができる。この結果、実施形態3の注水装置10は、冷却水をキャビティ室102Aに確実に注水できる。
【0081】
また、実施形態3の注水装置10では、弁機構2002は、冷却水管51を開閉する開閉弁2021と、溶融体1に隔壁102Cを通して接続されて溶融体1が溶融した場合に開閉弁2021を開放作動させる弁開放部2022と、を含み、弁開放部2022は、開閉弁2021を開放状態とする弾性力を生じる弾性部材2221Bを有し、溶融体1は、開閉弁2021を閉塞状態とするように弾性部材2221Bの弾性力に抗して弾性部材2221Bを圧縮状態で支持する。
【0082】
この実施形態3の注水装置10によれば、炉心溶融物によって溶融体1が溶融することで、弾性部材2221Bが圧縮状態から伸長し開閉弁2021を開放状態にできる。
【0083】
また、実施形態3の注水装置10では、弁機構2002は、開閉弁2021を閉鎖状態とするように弾性部材2221Bを圧縮状態で支持する一方、開閉弁2021を開放状態とするように当該圧縮状態を解除する補助機構2223をさらに含む。
【0084】
この実施形態3の注水装置10によれば、例えば、溶融体1の接続時やメンテンナンス時に、補助機構2223によって開閉弁2021を閉鎖状態で保持できる。
【0085】
また、実施形態3の注水装置10では、弁機構2002は、弁体2212Aおよび弁座2211Cが冷却水を通過させる弁ケーシング2211の内部に収容される。
【0086】
この実施形態3の注水装置10によれば、弁ケーシング2211によって弁体2212Aおよび弁座2211Cが保護されるため、弁体2212Aおよび弁座2211Cの作用および動作を常に確保できる。
【0087】
また、実施形態3の注水装置10では、弁機構2002は、弁体2212Aが仕切弁からなる。
【0088】
この実施形態3の注水装置10によれば、弁体2212Aに仕切弁を適用できる。
【0089】
また、実施形態3の注水装置10では、弁機構2002は、弁体2212Aと弁座2211Cの間に設けられた止水部材2213をさらに含む。
【0090】
この実施形態3の注水装置10によれば、止水部材2213によって弁体2212Aおよび弁座2211Cの作用および動作を常に確保できる。実施形態3の注水装置10は、シビアアクシデント時に作動するものであり、通常時は開閉弁2021を閉塞状態で維持しなければならず、シビアアクシデント時には開閉弁2021を確実に開放状態にしなければならないため、弁体2212Aおよび弁座2211Cの作用および動作を常に確保することが必要である。
【0091】
また、実施形態3の注水装置10では、冷却水管51の弁機構2002より上流側に設けられた開閉機構52をさらに含む。
【0092】
この実施形態3の注水装置10によれば、弁機構2002のメンテナンス時に開閉機構52によって冷却水を閉止することができる。
【0093】
本開示は以下の発明を包含する。
[発明1]
原子炉格納容器の下方で炉心溶融物を受けるキャビティ室に設けられた溶融体と、
前記キャビティ室とは隔壁を介した別室に設けられる一方で前記溶融体と繋がって設けられ、前記キャビティ室に冷却水が送られる冷却水管を開閉可能に構成されて、前記溶融体が溶融した場合に前記冷却水管を開放する弁機構と、
を含む、注水装置。
[発明2]
前記弁機構は、前記冷却水管を開閉する開閉弁と、前記溶融体に前記隔壁を通して接続されて前記溶融体が溶融した場合に前記開閉弁を開放作動させる弁開放部と、を含み、
弁開放部は、前記開閉弁を開放状態とする荷重を生じる錘を有し、
前記溶融体は、前記開閉弁を閉塞状態とするように前記錘の荷重に抗して前記錘を吊り上げ支持する、
発明1に記載の注水装置。
[発明3]
弁開放部は、前記錘を上下移動可能に支持する駆動ケーシングと、前記駆動ケーシングの内部であって前記錘の下方に収容された粘性体と、を含む、
発明2に記載の注水装置。
[発明4]
前記弁機構は、前記開閉弁を閉鎖状態とするように支持する一方、前記開閉弁を開放状態とするように支持を解除する補助機構をさらに含む、
発明2または3に記載の注水装置。
[発明5]
前記弁機構は、前記開閉弁の開閉を支持する作動軸の両端に固定され前記錘がそれぞれ取り付けられる各レバーと、各前記レバーまたは各前記錘を連結する連結部材と、をさらに含む、
発明2に記載の注水装置。
[発明6]
前記弁機構は、前記冷却水管を開閉する開閉弁と、前記溶融体に前記隔壁を通して接続されて前記溶融体が溶融した場合に前記開閉弁を開放作動させる弁開放部と、を含み、
弁開放部は、前記開閉弁を開放状態とする弾性力を生じる弾性部材を有し、
前記溶融体は、前記開閉弁を閉塞状態とするように前記弾性部材の弾性力に抗して前記弾性部材を圧縮状態で支持する、
発明1に記載の注水装置。
[発明7]
前記弁機構は、前記開閉弁を閉鎖状態とするように前記弾性部材を圧縮状態で支持する一方、前記開閉弁を開放状態とするように当該圧縮状態を解除する補助機構をさらに含む、
発明6に記載の注水装置。
[発明8]
前記弁機構は、冷却水を通過させる弁ケーシングの内部に弁体および弁座が収容される、
発明1から7のいずれか1つに記載の注水装置。
[発明9]
前記弁機構は、前記弁体がバタフライ弁からなる、
発明8に記載の注水装置。
[発明10]
前記弁機構は、前記弁体が逆止弁からなる、
発明8に記載の注水装置。
[発明11]
前記弁機構は、前記弁座の開口径が、前記弁ケーシングの入口の開口径よりも小さく形成される、
発明10に記載の注水装置。
[発明12]
前記弁機構は、前記弁体が仕切弁からなる、
発明8に記載の注水装置。
[発明13]
前記弁機構は、弁体と弁座の間に設けられた止水部材をさらに含む、
発明1から12のいずれか1つに記載の注水装置。
[発明14]
前記冷却水管の前記弁機構より上流側に設けられた開閉機構をさらに含む、
発明1から13のいずれか1つに記載の注水装置。
【符号の説明】
【0094】
1 溶融体
2 弁機構
10 注水装置
21 開閉弁
22 弁開放部
51 冷却水管
52 開閉機構
101 原子炉容器
102A キャビティ室
102B 別室
102C 隔壁
211 弁ケーシング
211C 弁座
212A 弁体
213 止水部材
221A 駆動ケーシング
221B 錘
221C 粘性体
223 補助機構
1002 弁機構
1021 開閉弁
1022 弁開放部
1211 弁ケーシング
1211C 弁座
1212A 弁体
1213 止水部材
1221B 錘
1222C レバー
1222D 連結部材
2002 弁機構
2021 開閉弁
2022 弁開放部
2211 弁ケーシング
2211C 弁座
2212A 弁体
2213 止水部材
2221B 弾性部材
2223 補助機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7