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特開2024-27338電力供給ネットワークおよび電力供給方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027338
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】電力供給ネットワークおよび電力供給方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20240222BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20240222BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
H02J3/38 180
H02J3/38 110
H02J3/32
H02J3/38 130
H02J13/00 311S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130064
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】上野 翔平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大
(72)【発明者】
【氏名】吉村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 慶一
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AA01
5G064AA04
5G064AC09
5G064CB08
5G064CB11
5G064DA03
5G064DA05
5G066HA11
5G066HA13
5G066HB01
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA02
5G066JB03
(57)【要約】
【課題】配電用遮断器の下位側において、マイクログリッドをより速やかに構築する。
【解決手段】配電用遮断器4を介した電力供給ネットワーク5_1~5_nへの電力供給が停止した場合に、電力供給ネットワーク5_1~5_nにおいて、複数の開閉器7_1~7_mが開状態となるとともに、電力供給制御装置8が分散型電源装置10から配電線6_1~6_mに電力を供給させ、開閉器7_1~7_mは、当該開閉器の一次側に接続されている配電線6_1~6_mに分散型電源装置10等からの電力が供給された場合に、所定時間の経過後に開状態から閉状態に順次切り替わることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位系統から配電用遮断器を介して電力が供給される電力供給ネットワークであって、
複数の配電線と、
隣り合う前記配電線間に接続された複数の開閉器と、
少なくとも一つの前記配電線に接続された分散型電源装置と、
前記分散型電源装置の起動および停止を制御する電力供給制御装置と、
前記配電線から電力供給を受ける複数の需要家設備と、を備え、
前記配電用遮断器を介した前記電力供給ネットワークへの電力供給が停止した場合に、前記複数の開閉器が開状態となるとともに、前記電力供給制御装置が前記分散型電源装置を起動して、前記分散型電源装置に接続された前記配電線に電力を供給させ、
前記開閉器は、当該開閉器の一次側に接続されている前記配電線に前記分散型電源装置からの電力が供給された場合に、所定時間の経過後に開状態から閉状態に順次切り替わる
電力供給ネットワーク。
【請求項2】
請求項1に記載の電力供給ネットワークにおいて、
前記他の開閉器は、時限式事故捜査方式に基づく開閉機能に基づいて、開状態から閉状態に切り替わる
電力供給ネットワーク。
【請求項3】
請求項1に記載の電力供給ネットワークにおいて、
前記分散型電源装置からの電力が前記配電線に供給された場合に、当該配電線に接続されている前記需要家設備の消費電力が抑制される
電力供給ネットワーク。
【請求項4】
請求項3に記載の電力供給ネットワークにおいて、
前記需要家設備は、前記配電線から電力供給を受けて動作する負荷と、前記負荷への電力供給を制御する負荷制御装置と、を含み、
前記負荷制御装置は、前記需要家設備の負荷容量を制限することにより、前記負荷の消費電力を抑制する
電力供給ネットワーク。
【請求項5】
請求項3に記載の電力供給ネットワークにおいて、
前記需要家設備は、前記配電線から電力供給を受けて動作する負荷と、前記負荷への電力供給を制御する負荷制御装置と、を含み、
前記負荷制御装置は、前記負荷への電力供給を停止することにより、前記負荷の消費電力を抑制する
電力供給ネットワーク。
【請求項6】
請求項1に記載の電力供給ネットワークにおいて、
前記配電用遮断器の二次側に接続されている前記配電線への電力供給が再開された場合に、前記電力供給制御装置は、前記分散型電源装置から出力される電力と前記配電用遮断器の二次側に接続されている前記配電線に供給される電力との位相差および電圧差が所定の基準値以内となるように、前記分散型電源装置から出力される電力を調整し、
前記分散型電源装置から出力される電力と前記配電用遮断器の二次側の前記配電線に供給される電力との位相差および電圧差が前記所定の基準値以内となった場合に、前記配電用遮断器の二次側に接続されている前記配電線に接続されている前記開閉器が、開状態から閉状態に切り替わる
電力供給ネットワーク。
【請求項7】
複数の配電線と、隣り合う前記配電線間に接続された複数の開閉器と、少なくとも一つの前記配電線に接続された分散型電源装置と、前記分散型電源装置の起動および停止を制御する電力供給制御装置と、前記配電線から電力供給を受ける複数の需要家設備と、を備えた電力供給ネットワークにおける電力供給方法であって、
上位系統から配電用遮断器を介した前記電力供給ネットワークへの電力供給が停止した場合に、前記複数の開閉器が開状態となる第1ステップと、
前記第1ステップの後に、前記電力供給制御装置が前記分散型電源装置を起動して、前記分散型電源装置に接続された前記配電線に電力を供給する第2ステップと、
前記複数の開閉器のうち、当該開閉器の一次側に接続されている前記配電線に前記分散型電源装置からの電力が供給された場合に、所定時間の経過後に当該開閉器が開状態から閉状態に順次切り替わる第3ステップと、
前記分散型電源装置からの電力が前記配電線に供給された場合に、当該配電線に接続されている前記需要家設備の消費電力を抑制する第4ステップと、
を含む電力供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給ネットワークおよび電力供給方法に関し、例えば、配電用遮断器の下位側に形成される電力供給ネットワークに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一定の地域において、複数の需要家に対して小規模な複数の発電設備から電力を供給する小規模な電力供給ネットワークとして、マイクログリッドが注目されている。マイクログリッドは、限られた地域内において、複数の電源を組み合わせて需要家への電力供給を制御することにより、大規模発電所の電力供給に頼らずに地産地消を目指す電力供給ネットワークである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-36502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上位系統において事故等が発生し、上位系統から下位系統への電力供給が停止した場合、下位系統において速やかにマイクログリッドを構築し、上位系統が復旧するまで、マイクログリッドを運用することが望ましい。
本願発明者は、上位系統からの電力供給が停止した場合に、配電用遮断器の下位側において、マイクログリッドをより速やかに構築するための技術が必要であると考えた。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、配電用遮断器の下位側において、マイクログリッドをより速やかに構築することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の代表的な実施の形態に係る電力供給ネットワークは、上位系統から配電用遮断器を介して電力が供給される電力供給ネットワークであって、複数の配電線と、隣り合う前記配電線間に接続された複数の開閉器と、少なくとも一つの前記配電線に接続された分散型電源装置と、前記分散型電源装置の起動および停止を制御する電力供給制御装置と、前記配電線から電力供給を受ける複数の需要家設備と、を備え、前記配電用遮断器を介した前記電力供給ネットワークへの電力供給が停止した場合に、前記複数の開閉器が開状態となるとともに、前記電力供給制御装置が前記分散型電源装置を起動して、前記分散型電源装置に接続された前記配電線に電力を供給させ、前記開閉器は、当該開閉器の一次側に接続されている前記配電線に前記分散型電源装置からの電力が供給された場合に、所定時間の経過後に開状態から閉状態に順次切り替わることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る電力供給ネットワークによれば、配電用遮断器の下位側において、マイクログリッドをより速やかに構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係る電力供給ネットワークを含む電力供給システムの構成を示す図である。
図2】電力供給ネットワークにおけるマイクログリッドの構築の流れの一例を示すフローチャートである。
図3A】マイクログリッドを構築するときの電力供給ネットワークの状態を模式的に示す図である。
図3B】マイクログリッドを構築するときの電力供給ネットワークの状態を模式的に示す図である。
図3C】マイクログリッドを構築するときの電力供給ネットワークの状態を模式的に示す図である。
図3D】マイクログリッドを構築するときの電力供給ネットワークの状態を模式的に示す図である。
図3E】マイクログリッドを構築するときの電力供給ネットワークの状態を模式的に示す図である。
図4】上位系統の事故解消後における各電力供給ネットワークの復旧の流れの一例を示すフローチャートである。
図5A】マイクログリッドの運用を停止するときの電力供給ネットワークの状態を模式的に示す図である。
図5B】マイクログリッドの運用を停止するときの電力供給ネットワークの状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0010】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係る電力供給ネットワーク(5_1~5_n)は、上位系統(3)から配電用遮断器(4_1~4_n)を介して電力が供給される電力供給ネットワークであって、複数の配電線(6_0~6_m)と、隣り合う前記配電線間に接続された複数の開閉器(7_1~7_m)と、少なくとも一つの前記配電線に接続された分散型電源装置(10,11,12)と、前記分散型電源装置の起動および停止を制御する電力供給制御装置(8)と、前記配電線から電力供給を受ける複数の需要家設備(14_1~14_p)と、を備え、前記配電用遮断器を介した前記電力供給ネットワークへの電力供給が停止した場合に、前記複数の開閉器が開状態となるとともに、前記電力供給制御装置が前記分散型電源装置を起動して、前記分散型電源装置に接続された前記配電線に電力を供給させ、前記開閉器(7_1~7_m)は、当該開閉器の一次側に接続されている前記配電線に電力が供給された場合に、所定時間の経過後に開状態から閉状態に順次切り替わることを特徴とする。
【0011】
〔2〕上記〔2〕に記載の電力供給ネットワークにおいて、前記他の開閉器は、時限式事故捜査方式に基づく開閉機能に基づいて、開状態から閉状態に切り替わってもよい。
【0012】
〔3〕上記〔1〕または〔2〕に記載の電力供給ネットワークにおいて、前記分散型電源装置からの電力が前記配電線に供給された場合に、当該配電線に接続されている前記需要家設備の消費電力が抑制されてもよい。
【0013】
〔4〕上記〔3〕に記載の電力供給ネットワークにおいて、前記需要家設備は、前記配電線から電力供給を受けて動作する負荷(16_1~16_p)と、前記負荷への電力供給を制御する負荷制御装置(15_1~15_p)と、を含み、前記負荷制御装置は、前記需要家設備の負荷容量を制限することにより、前記負荷の消費電力を抑制してもよい。
【0014】
〔5〕上記〔3〕に記載の電力供給ネットワークにおいて、前記需要家設備は、前記配電線から電力供給を受けて動作する負荷(16_1~16_p)と、前記負荷への電力供給を制御する負荷制御装置(15_1~15_p)と、を含み、前記負荷制御装置は、前記負荷への電力供給を停止することにより、前記負荷の消費電力を抑制してもよい。
【0015】
〔6〕上記〔1〕乃至〔5〕の何れかに記載の電力供給ネットワークにおいて、前記配電用遮断器の二次側に接続されている前記配電線への電力供給が再開された場合に、前記電力供給制御装置は、前記分散型電源装置から出力される電力と前記配電用遮断器の二次側に接続されている前記配電線(6_0)に供給される電力との位相差および電圧差が所定の基準値以内となるように、前記分散型電源装置から出力される電力を調整し、前記分散型電源装置から出力される電力と前記配電用遮断器の二次側の前記配電線に供給される電力との位相差および電圧差が前記所定の基準値以内となった場合に、前記配電用遮断器の二次側に接続されている前記配電線に接続されている前記開閉器が、開状態から閉状態に切り替わってもよい。この際、開閉器の一次側に接続されている配電線に電力が供給された場合に、所定時間の経過後に開状態から閉状態に順次切り替わる、開閉器の機能は停止されている。
【0016】
〔7〕本発明の代表的な実施の形態に係る方法は、複数の配電線(6_0~6_m)と、隣り合う前記配電線間に接続された複数の開閉器(7_1~7_m)と、少なくとも一つの前記配電線に接続された分散型電源装置(10,11,12)と、前記分散型電源装置の起動および停止を制御する電力供給制御装置(8)と、前記配電線から電力供給を受ける複数の需要家設備(14_1~14_p)と、を備えた電力供給ネットワーク(5)における電力供給方法である。当該方法は、上位系統(3)から配電用遮断器(4)を介した前記電力供給ネットワークへの電力供給が停止した場合に、前記複数の開閉器が開状態となる第1ステップ(S1)と、前記第1ステップの後に、前記電力供給制御装置が前記分散型電源装置を起動して、前記分散型電源装置に接続された前記配電線に電力を供給する第2ステップ(S3~S5)と、前記開閉器(7_1~7_m)が、当該開閉器の一次側に接続されている前記配電線(6_1~6_m)に前記分散型電源装置からの電力が供給された場合に、所定時間の経過後に開状態から閉状態に順次切り替わる第3ステップ(S6,S12)と、前記分散型電源装置からの電力が前記配電線に供給された場合に、当該配電線に接続されている前記需要家設備の消費電力を抑制する第4ステップ(S6,S7,S10,S11)と、を含むことを特徴とする。
【0017】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0018】
≪実施の形態≫
図1は、本発明の実施の形態に係る電力供給ネットワークを含む電力供給システム100の構成を示す図である。
【0019】
図1に示す電力供給システム100は、通常時においては、配電用変電所1を含む上位系統から配電用遮断器4_1~4_n(nは2以上の整数)を介して配電系統5_1~5_n(nは2以上の整数)に電力を供給し、上位系統における事故等による停電発生時には、配電系統5_1~5_n毎にマイクログリッドを構築して、配電系統内の複数の需要家に電力を供給するシステムである。
【0020】
なお、本明細書では、配電用遮断器4_1~4_n等の構成要素について説明する際に、各構成要素を区別しない場合には、接尾辞を付さずに「配電用遮断器4」のように記載することがある。
【0021】
図1に示すように、電力供給システム100は、例えば、配電用変電所1、二次側母線3、配電用遮断器4_1~4_n、配電系統としての電力供給ネットワーク5_1~5_n、および情報処理装置20~22を備えている。
【0022】
配電用変電所1は、火力発電所等の大規模発電所から一次側母線(不図示)に供給された電力を変圧して、二次側母線3(例えば、6kV母線)に出力する。二次側母線3には、複数の配電用遮断器4_1~4_nが接続されている。配電用遮断器4_1~4_nが閉状態となることにより、配電用遮断器4_1~4_nの一次側に接続された二次側母線3から配電用遮断器4_1~4_nの二次側に接続された配電系統である電力供給ネットワーク5_1~5_nへ電力が供給され、配電用遮断器4_1~4_nが開状態となることにより、二次側母線3から電力供給ネットワーク5_1~5_nへの電力供給が停止する。
【0023】
各配電用遮断器4_1~4_nは、個別に制御可能にされている。配電用遮断器4_1~4_nは、例えば、配電用変電所1内に設置された情報処理装置(例えば、光中央装置2)によって開閉が制御される。また、各配電用遮断器4_1~4_nは、上位系統における事故等によって配電用遮断器4_1~4_nの一次側への電力供給が停止したことを検出した場合に、自動的に開状態となってもよい。
【0024】
配電用変電所1は、例えば、光中央装置2を有している。光中央装置2は、後述する情報処理装置20と通信を行うとともに、後述する、各電力供給ネットワーク5_1~5_n内に設置されている開閉器7_1~7_m(mは2以上の整数)と通信を行う通信装置である。換言すれば、光中央装置2は、情報処理装置20と開閉器7_1~7_mとの間の通信を実現するための通信装置として機能する。光中央装置2は、例えば、二次側母線3からの給電により動作可能となる。
【0025】
情報処理装置20は、電力供給システム100内の配電系統(上位系統および下位系統)を監視し、配電系統における電力の供給および停止を制御する装置である。情報処理装置20は、サーバ等のプログラム処理装置であり、例えば、配電制御システムである。以下、情報処理装置20を「配電制御システム20」とも称する。
【0026】
配電制御システム20は、遠隔制御により、後述する電力供給ネットワーク5_1~5_n内に設置された開閉器7_1~7_mの開閉を制御する。例えば、配電制御システム20は、配電用変電所1に設けられた光中央装置2を経由して開閉器7_1~7_mと通信を行うことにより、指定した開閉器7_1~7_mの開閉を制御する。また、配電制御システム20は、後述する各電力供給ネットワーク5_1~5_n内の電力供給制御装置8と、情報処理装置21,22と、有線または無線による通信が可能となっている。
【0027】
情報処理装置21は、サーバ等のプログラム処理装置であり、例えば、スマートメータシステムである。以下、情報処理装置21を「スマートメータシステム21」とも称する。
【0028】
スマートメータシステム21は、配電制御システム20と、情報処理装置22と、後述する電力供給ネットワーク5_1~5_n内に設置された負荷制御装置15_1~15_p(pは2以上の整数)と、有線または無線による通信が可能となっている。
【0029】
例えば、スマートメータシステム21は、負荷制御装置15_1~15_pとの間で通信を行い、負荷制御装置15_1~15_pの管理下にある負荷16_1~16_pの状態(使用電力量や契約容量等)に関する情報を取得する。
【0030】
また、詳細は後述するが、スマートメータシステム21は、負荷抑制(消費電力の抑制)の指示を情報処理装置22から受信した場合に、負荷制御装置15_1~15_pに対して負荷16_1~16_pの消費電力の抑制を指示する。
【0031】
情報処理装置22は、電力供給ネットワーク5_1~5_n内の電力の需給を管理する装置である。情報処理装置22は、例えば、リソースアグリゲーター(RA)としてのサーバやVPP(Virtual Power Plant)を管理するサーバ等のプログラム処理装置であり、所謂RA/VPPシステムである。以下、情報処理装置22を「RA/VPPシステム22」とも称する。
【0032】
RA/VPPシステム22は、配電制御システム20と、スマートメータシステム21と、後述する各電力供給ネットワーク5_1~5_n内の電力供給制御装置8と、一部の負荷制御装置15_2と、有線または無線による通信が可能となっている。詳細は後述するが、RA/VPPシステム22は、電力供給制御装置8からの負荷抑制指示に基づいて、スマートメータシステム21および一部の負荷制御装置15_2に対して、負荷における消費電力の抑制を指示する。
【0033】
配電制御システム20、スマートメータシステム21、およびRA/VPPシステム22は、例えば、各電力供給ネットワーク5_1~5_nとは異なるエリアに設置されており、電力供給ネットワーク5_1~5_n内で停電が発生した場合であっても、別の経路から電力が供給されて動作可能であるとする。
【0034】
図1に示すように、配電用遮断器4_1~4_nの下位側において、下位系統としての電力供給ネットワーク5_1~5_nが配電用遮断器4_1~4_n毎に形成されている。
【0035】
電力供給ネットワーク5_1~5_nは、例えば、配電線6_0~6_m、開閉器7_1~7_m、電力供給制御装置8、無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)9、分散型電源装置10,13、需要家設備14_1~14_pと、を備えている。各電力供給ネットワーク5_1~5_nは同様の構成要素を有している。
【0036】
説明の便宜上、図1には電力供給ネットワーク5_3の構成のみを代表的に図示し、電力供給ネットワーク5_3の構成について、以下に詳細に説明する。
【0037】
配電線6_0~6_mは、上位系統(二次側母線3)から配電用遮断器4_3を介して供給された電力を、電力供給ネットワーク5_3内の需要家設備14_1~14_p等に送電する。
【0038】
開閉器7_1~7_mは、隣り合う配電線6_0_6_m間に接続され、配電線間の送電を制御する装置である。例えば、開閉器7_1~7_mは、自動開閉器である。具体的には、開閉器7_1において、開閉器7_1の一次側に配電線6_0が接続され、開閉器7_1の二次側に配電線6_1が接続されている。開閉器7_2において、開閉器7_2の一次側に配電線6_1が接続され、開閉器7_2の二次側に配電線6_2が接続されている。開閉器7_3において、開閉器7_3の一次側に配電線6_2が接続され、開閉器7_3の二次側に配電線6_3が接続されている。開閉器7_mにおいて、開閉器7_mの一次側に配電線6_m-1が接続され、開閉器7_mの二次側に配電線6_mが接続されている。
【0039】
開閉器7_1~7_mは、配電制御システム20による遠隔操作によって開閉が可能となっている。例えば、配電制御システム20が、配電用変電所1の光中央装置2を介して、閉状態である開閉器7_1に対して“開”の指示を送信した場合、開閉器7_1は閉状態から開状態となる。
【0040】
開閉器7_1~7_mは、当該開閉器7_1~7_mの一次側に接続されている配電線への電力供給が停止したことを検出した場合に、“閉状態”から“開状態”になる。例えば、配電線6_0への電力供給が停止した場合、開閉器7_1は“閉状態”から“開状態”になる。これにより、配電線6_0と配電線6_1とが電気的に分離される。なお、充電されている箇所に他から電力が供給されると短絡等が発生する虞があるため、開状態を維持する必要がある場合には、開状態が維持される。
【0041】
詳細は後述するが、複数の開閉器7_1~7_mのうち、配電用遮断器4_3から電力供給を受ける配電線6_0に接続されている開閉器7_1を除く他の開閉器7_2~7_mは、当該開閉器7_2~7_mの一次側に接続されている配電線6_1~6_m-1に分散型電源装置10からの電力が供給された場合に、所定時間の経過後に開状態から閉状態に順次切り替わる。
【0042】
具体的には、開閉器7_1~7_mは、例えば、時限式事故捜査方式に基づく開閉機能を有していてもよい。すなわち、開閉器7_2~7_mは、時限式事故捜査方式に基づく開閉機能により、電力が供給された後の所定時間の経過後に、開状態から閉状態に自動的に切り替わってもよい。
【0043】
分散型電源装置10,13は、発電または蓄電した電力を出力する装置である。分散型電源装置10,13は、配電系統(配電線6_1~6_m)に連係されており、分散型電源装置10,13が発電または蓄電した電力は、配電系統に供給可能となっている。
【0044】
例えば、分散型電源装置10は、電力供給ネットワーク5_3に連系された、主たる非常用電源装置である。分散型電源装置10は、例えば、発電機11を含む。発電機11は、機械的エネルギーに基づいて電力を生成する装置である。発電機11は、例えば、ディーゼル発電機(非常用DG)である。分散型電源装置10は、系統用蓄電池12を含んでいてもよい。
【0045】
分散型電源装置13は、電力供給ネットワーク5_3に連系された電源装置であり、例えば、大規模太陽光発電機(PV:Photovoltaics)である。
【0046】
電力供給制御装置8は、電力供給ネットワーク5_3内に設置されている分散型電源装置10を制御することにより、電力供給ネットワーク5_3内の電力の需給を制御する装置である。また、電力供給制御装置8は、分散型電源装置13に発電抑制の制御を行い、系統安定維持(周波数維持等)も可能である。電力供給制御装置8は、例えば、親機としてのEMS(Energy Management System)である。以下、電力供給制御装置8を「EMS8」とも称する。
【0047】
EMS8は、制御対象の分散型電源装置の起動と停止を制御する。本実施の形態では、分散型電源装置10がEMS8の制御対象の装置であるとする。EMS8は、配電制御システム20、RA/VPPシステム22、およびスマートメータシステム21と、有線または無線による通信が可能となっている。
【0048】
上位系統から配電用遮断器4_3を介して電力が供給される通常時において、EMS8は、配電線6_1から供給された電力によって動作する。一方、上位系統からの電力供給が停止した停電時において、EMS8は、無停電電源装置(UPS)9からの電力供給を受けて動作するとともに、制御対象の分散型電源装置10を起動させる。分散型電源装置10の起動後は、無停電電源装置9に代えて、分散型電源装置10から電力を受けて動作する。
【0049】
需要家設備14_1~14_pは、需要家の施設内に設定された設備である。ここで、需要家とは、例えば、一般家庭のみならず、ビルや工場等も含む。
【0050】
図1における需要家設備14_1,14_pは、一般家庭における設備の一例である。需要家設備14_1,14_pは、例えば、負荷制御装置15_1,15_pと負荷16_1,16_pをそれぞれ有している。
【0051】
負荷16_1,16_pは、例えば、需要家の施設(一般家庭)内に設置された低圧で動作する電気機器である。負荷16_1は、配電線6_1(第1区間)から電力供給を受け、負荷16_pは、配電線6_m(第m区間)から電力供給を受ける。
【0052】
負荷制御装置15_1,15_pは、負荷16_1,16_pへの電力供給を制御する装置である。負荷制御装置15_1,15_pは、例えば、制御対象の負荷16_1,16_pの消費電力を監視するとともに、負荷16_1,16_pへの電力供給を制御する。負荷制御装置15_1,15_pは、外部装置(スマートメータシステム21等)との有線または有線による通信が可能なスマートメータやスマート分電盤等である。以下、負荷制御装置15_1,15_pを「スマートメータ15_1,15_p」とも称する。
【0053】
例えば、スマートメータ15_1,15_pは、定期的にスマートメータシステム21と通信を行うことにより、制御対象の負荷16_1,16_pの使用電力(例えば、30分毎の使用電力)の情報をスマートメータシステム21に送信する。また、スマートメータ15_1,15_pは、RA/VPPシステム22からの負荷抑制の指示をスマートメータシステム21を介して受信した場合に、制御対象の負荷16_1,16_pの消費電力を抑制する。
【0054】
需要家設備14_2は、ビルや工場等における設備の一例であり、負荷制御装置15_2と負荷16_2をそれぞれ有している。負荷16_2は、例えば、ビルや工場等に設置された、高圧の電力で動作する電気機器である。負荷16_2は、配電線6_2(第2区間)から電力供給を受ける。
【0055】
負荷制御装置15_2は、負荷16_2への電力供給を制御する装置である。負荷制御装置15_2は、例えば、制御対象の負荷16_2の消費電力を監視するとともに、負荷16_2への電力供給を制御するBEMS(Building Energy Management System)やFEMS(Factory Energy Management System)等の電力供給制御装置である。以下、負荷制御装置15_2を「xEMS15_2」とも称する。
【0056】
なお、上述した需要家設備14_1~14_pには、配電系統に連系されたPV等の分散型電源装置が含まれていてもよく、系統安定維持(周波数維持等)のために、電力供給制御装置8が発電抑制の制御を実施する場合もある。また、上述した需要家設備14_1,14_2,14_pはあくまで一例であり、電力供給ネットワーク5_3の各配電線6_1~6_mには需要家設備14_1,14_2,14_p以外の需要家設備が接続されていてもよい。
【0057】
上述したように、各電力供給ネットワーク5_1~5_nは、通常時において、上位系統(二次側母線3)から各配電用遮断器4_1~4_nを介して電力供給を受ける。一方、上位系統における事故等により停電が発生し、配電用遮断器4_1~4_nが開状態となった場合には、電力供給ネットワーク5_1~5_nは、電力供給ネットワーク5_1~5_n毎にマイクログリッドを構築する。
以下、電力供給ネットワーク5におけるマイクログリッドの構築の流れについて説明する。
【0058】
図2は、電力供給ネットワーク5におけるマイクログリッドの構築の流れの一例を示すフローチャートである。
【0059】
図3A図3Eは、マイクログリッドを構築するときの電力供給ネットワーク5の状態を模式的に示す図である。
【0060】
例えば、図3Aに示すように、上位系統(二次側母線3)において発生した事故により、配電用変電所1からの電力供給が停止し、配電用遮断器4_1~4_nが開状態となり、下位系統である電力供給ネットワーク5_1~5_nへの上位系統からの電力供給が停止したとする。このとき、配電用変電所1内に設置されている光中央装置2への電力供給も停止するため、配電制御システム20は、各電力供給ネットワーク5_1~5_n内の開閉器7_1~7_mに対する、光中央装置2を経由した遠隔制御を行うことができない。
【0061】
開閉器7_1~7_mは、自身の一次側に接続されている配電線6からの電力供給が停止したことを検出すると、図3Aに示すように、自動的に“開状態”となる(ステップS1)。これにより、需要家設備14_1~14_pへの電力供給も停止する。
【0062】
このとき、各電力供給ネットワーク5_1~5_n内のEMS8は、無停電電源装置9からの給電によって動作可能な状態となっている。EMS8は、先ず、監視下にある電力供給ネットワーク5内が停電となったことを示す停電情報を配電制御システム20から取得する(ステップS2)。
【0063】
次に、EMS8は、自身の監視下にある分散型電源装置10を起動する(ステップS3)。分散型電源装置10は、EMS8からの指示に応じて、発電機11による発電、および(または)系統用蓄電池12の放電を開始する(ステップS4)。
【0064】
分散型電源装置10は、第1区間としての配電線6_1に接続されているため、図3Bに示すように、分散型電源装置10からの電力は、先ず、第1区間(配電線6_1)に供給される(ステップS5)。これにより、EMS8は、無停電電源装置9に代えて、配電線6_1からの給電により動作を継続する。また、配電線6_1に接続されている需要家設備14_1も起動し、需要家設備14_1内のスマートメータ15_1がスマートメータシステム21と通信可能となる(ステップS6)。
【0065】
次に、第1区間(配電線6_1)の負荷抑制が実行される(ステップS7)。
具体的には、先ず、EMS8が、分散型電源装置10からの電力が供給された第1区間(配電線6_1)に接続されている一部または全部の需要家設備14における消費電力の抑制を、RA/VPPシステム22に対して指示する。RA/VPPシステム22は、EMS8からの指示に応じて、例えば、需要家設備14_1のスマートメータ15_1に対し、消費電力の抑制を指示する。
【0066】
スマートメータ15_1は、RA/VPPシステム22からの指示に応じて、制御対象の負荷16_1の消費電力を抑制する。例えば、スマートメータ15_1は、需要家設備14_1の負荷容量を制限する(例えば、需要家設備14_1の契約容量を下げる)ことにより、負荷16_1の消費電力を抑制する。あるいは、スマートメータ15_1は、需要家設備14_1内の負荷16_1としての電気機器の一部または全部への電力供給を停止することにより、負荷16_1の消費電力を抑制する。なお、病院等のように負荷抑制をすることが適切ではない需要家設備14に対しては、負荷抑制を指示しなくてもよい。
【0067】
開閉器7_2は、時限式事故捜査方式の開閉機能により、分散型電源装置10から第1区間(配電線6_1)へ電力が供給されてから所定時間の経過後に、“開状態”から“閉状態”となる(ステップS8)。これにより、図3Cに示すように、開閉器7_2の二次側に接続されている第2区間としての配電線6_2に、分散型電源装置10からの電力が供給される(ステップS9)。
【0068】
第2区間(配電線6_2)への電力供給により、第2区間(配電線6_2)に接続されている需要家設備14_2が起動し、需要家設備14_2内のxEMS15_2が、RA/VPPシステム22と通信可能となる(ステップS10)。また、分散型電源装置13からの電力も第2区間に供給可能となる。
【0069】
次に、第2区間の負荷抑制が実行される(ステップS11)。
具体的には、先ず、EMS8が、電力が供給された第2区間(配電線6_2)に接続されている需要家設備14における消費電力の抑制を、RA/VPPシステム22に対して指示する。RA/VPPシステム22は、EMS8からの指示に応じて、第2区間(配電線6_2)に接続されている需要家設備14_2のxEMS15_2に対して、消費電力の抑制を指示する。xEMS15_2は、RA/VPPシステム22からの指示に応じて、例えば、需要家設備14_2内の負荷16_2としての電気機器の一部または全部への電力供給を停止することにより、負荷16_2の消費電力を抑制する。
【0070】
開閉器7_3は、時限式事故捜査方式の開閉機能により、分散型電源装置10等から第2区間(配電線6_2)へ電力が供給されてから所定時間の経過後に、“開状態”から“閉状態”となる(ステップS12)。これにより、図3Dに示すように、開閉器7_3の二次側に接続されている第3区間としての配電線6_3に、分散型電源装置10等からの電力が供給される。
【0071】
その後の処理は上述の処理(ステップS8~S11)と同様であり、開閉器7_4~7_mの一次側へ電力が供給された順に、開閉器7_4~7_mが順次“閉状態”となって各区間に電力が供給され、区間毎に負荷抑制が実行される。
【0072】
最終的に、図3Eに示すように、分散型電源装置10,13等からの電力が電力供給ネットワーク5_3内の全ての区間(配電線6_1~6_m)に供給され、電力供給ネットワーク5_3において、上位系統や他の電力供給ネットワーク5から独立した一つのマイクログリッドが構築される(ステップS13)。
【0073】
マイクログリッド構築後、開閉器7_1は配電制御システム20からの遠隔制御により“開状態”がロックされ、上位系統6_0が充電されても“閉状態”とならないように、“開状態”が維持される(ステップS14)。
【0074】
次に、上位系統における事故解消後の各電力供給ネットワーク5_1~5_nの復旧の流れについて説明する。
【0075】
図4は、上位系統の事故解消後における各電力供給ネットワーク5_1~5_nの復旧の流れの一例を示すフローチャートである。
【0076】
図5Aおよび図5Bは、マイクログリッドの運用を停止するときの電力供給ネットワーク5の状態を模式的に示す図である。
【0077】
例えば、上述した図2のフローチャートにしたがって、電力供給ネットワーク5_3においてマイクログリッドが構築された後に、配電用変電所1を含む上位系統が復電し、配電用変電所1から二次側母線3への電力供給が再開されたとする。
これにより、配電用変電所1内の光中央装置2が復旧し、配電制御システム20は、光中央装置2を介した開閉器7_1~7_mの遠隔制御が可能になる(ステップS21)。
【0078】
また、図5Aに示すように、二次側母線3への電力供給の再開に伴い、各配電用遮断器4_1~4_nが“開状態”から“閉状態”になる(ステップS22)。これにより、例えば、電力供給ネットワーク5_3における開閉器7_1の一次側に接続された第0区間としての配電線6_0に、二次側母線3から電力が供給される(ステップS23)。このとき、開閉器7_1は、配電制御システム20からの遠隔制御により、依然として“開状態”が維持される。
【0079】
次に、配電制御システム20は、上位系統からの電力供給が再開されたことを電力供給ネットワーク5_3内のEMS8に通知し、EMSは、その通知に応じて、分散型電源装置10(発電機11および系統用蓄電池12)から出力されている電力の調整を開始する(ステップS24)。具体的には、EMS8は、分散型電源装置10から出力される電力と第0区間(配電線6_0)に供給されている電力との位相差および電圧差が所定の基準値以内となるように、分散型電源装置10から出力される電力を調整する。
【0080】
EMS8は、分散型電源装置10から出力される電力と配電線6_0に供給されている電力との位相差および電圧差が所定の基準値以内であるか否かを判定する(ステップS25)。分散型電源装置10から出力される電力と配電線6_0に供給されている電力との位相差および電圧差が所定の基準値以内でない場合(ステップS25:NO)、EMS8は、引き続き、分散型電源装置10から出力される電力を調整する(ステップS24)。
【0081】
分散型電源装置10から出力される電力と配電線6_0に供給される電力との位相差および電圧差が所定の基準値以内となった場合(ステップS25:YES)、EMS8が、電力調整が完了したことを配電制御システム20に通知し、図5Bに示すように、配電制御システム20が、光中央装置2を介した遠隔制御により、開閉器7_1を“開状態”から“閉状態”に切り替える(ステップS26)。これにより、電力供給ネットワーク5_3内には、分散型電源装置10,13および上位系統から電力が供給されることになる。この状況をループ投入と言う。
【0082】
次に、配電制御システム20は、ループ投入が完了したことをEMS8に通知し、配電制御システム20は、その通知に応じて、分散型電源装置10を停止させる(ステップS27)。これにより、電力供給ネットワーク5_3内には、上位系統のみから電力が供給されることになる。
【0083】
その後、電力供給ネットワーク5_3内の負荷抑制が停止する(ステップS28)。具体的には、先ず、EMS8が、RA/VPPシステム22に対して負荷抑制の停止を指示する。RA/VPPシステム22は、EMS8からの指示に応じて、電力供給ネットワーク5_3内の負荷制御装置15_1~15_pに対して、直接またはスマートメータシステム21を介して、負荷抑制の停止を指示する。これにより、各負荷制御装置15_1~15_pは、制御対象の負荷16_1~16_pに対する消費電力を抑制する制御を停止する。
以上の処理により、電力供給ネットワーク5_3は通常状態に復旧する。
【0084】
以上、本実施の形態に係る電力供給ネットワーク5において、配電用遮断器4を介した電力供給ネットワーク5への電力供給が停止した場合に、複数の開閉器7_1~7_mが開状態となるとともに、電力供給制御装置(EMS)8が分散型電源装置10(発電機11および系統用蓄電池12)を起動して、分散型電源装置10に接続された配電線6に電力を供給させる。複数の開閉器7_1~7_mのうち、当該開閉器の一次側に接続されている配電線6_1~6_mに分散型電源装置10等からの電力が供給された場合に、所定時間の経過後に開状態から閉状態に順次切り替わる。
【0085】
これによれば、上位系統における事故によって上位系統から下位系統としての各電力供給ネットワーク5への電力供給が停止した場合であっても、配電用遮断器4の下位側にある各電力供給ネットワーク5において、分散型電源装置10からの電力が供給された順に開閉器7_2~7_mが順次投入されることにより、配電用遮断器4の下位側の各電力供給ネットワーク5において、マイクログリッドを速やかに構築することができる。
【0086】
また、開閉器7_2~7_mは、時限式事故捜査方式に基づく開閉機能に基づいて、開状態から閉状態に切り替わる。これによれば、停電によって配電制御システム20による開閉器7_2~7_mの遠隔制御ができない状況であっても、開閉器7_2~7_mの一次側に分散型電源装置10からの電力が供給された順に、開閉器7_2~7_mが自動投入されて電力供給される区間が順次拡大し、より安全且つ速やかにマイクログリッドを構築することができる。
【0087】
また、電力供給ネットワーク5において、分散型電源装置10からの電力が配電線6に供給された場合に、当該配電線6に接続されている需要家設備14の消費電力が抑制される。これによれば、各区間(配電線6_1~6_m)への電力供給の後に区間毎に負荷抑制が行われるので、電力供給ネットワーク5内の電力の需給バランスが調整され、長期にわたるマイクログリッドの運用が可能となる。
【0088】
また、電力供給ネットワーク5において、負荷制御装置15は、需要家設備14の負荷容量を制限することにより、負荷16の消費電力を抑制してもよい。これによれば、各需要家設備14の負荷抑制を容易に実現することができる。
【0089】
また、電力供給ネットワーク5において、負荷制御装置15は、負荷16への電力供給を停止することにより、負荷16の消費電力を抑制してもよい。これによれば、各需要家設備14の負荷抑制を容易に実現することができる。
【0090】
また、電力供給ネットワーク5において、配電用遮断器4の二次側に接続されている配電線6_0への電力供給が再開された場合に、電力供給制御装置(EMS)8は、分散型電源装置10等から出力される電力と配電用遮断器4の二次側に接続されている配電線6_0に供給される電力との位相差および電圧差が所定の基準値以内となるように、分散型電源装置10から出力される電力を調整する。そして、分散型電源装置10等から出力される電力と配電用遮断器4の二次側の配電線6_0に供給される電力との位相差および電圧差が所定の基準値以内となった場合に、配電用遮断器4の二次側に接続されている配電線6_0に接続されている開閉器7_1が、開状態から閉状態に切り替わる。
これによれば、上位系統が復旧した場合に、上位系統から電力供給ネットワーク5への電力供給を、一時的に停電することなく、より安全かつ安定的に再開させることができる。
【0091】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0092】
例えば、上述のフローチャートは、動作を説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。すなわち、フローチャートの各図に示したステップは具体例であって、このフローに限定されるものではない。例えば、一部の処理の順番が変更されてもよいし、各処理間に他の処理が挿入されてもよいし、一部の処理が並列に行われてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1…配電用変電所、2…光中央装置、3…二次側母線、4_1~4_n…配電用遮断器、5_1~5_n…電力供給ネットワーク(配電系統)、6_0~6_m…配電線、7_1~7_m…開閉器、8…電力供給制御装置、9…無停電電源装置、10…分散型電源装置、11…発電機、12…系統用蓄電池、13…分散型電源装置、14_1~14_p…需要家設備、15_1~15_p…負荷制御装置、16_1~16_p…負荷、20…情報処理装置(配電制御システム)、21…情報処理装置(スマートメータシステム)、22…情報処理装置(RA/VPPシステム)。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5A
図5B