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  • 特開-哺乳びん用キャップ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027340
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】哺乳びん用キャップ
(51)【国際特許分類】
   A61J 11/04 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
A61J11/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130068
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000107284
【氏名又は名称】ジェクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100095647
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】平岡 勝之
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047PP08
4C047PP19
4C047PP26
(57)【要約】
【課題】装着時に人工乳首のフランジ部が歪むことなく、正確に中心合わせした状態で哺乳びんに取り付けることができる哺乳びん用キャップを開示する。
【解決手段】下部にフランジ部を有すると共に、このフランジ部の上面全周にわたって環状に凹溝を設けた人工乳首を哺乳びん本体に取り付けるキャップである。そして、人工乳首を装着する中心孔の周囲に哺乳びん本体の口部とでフランジ部を挟持する内向きフランジを形成すると共に、この内向きフランジの下面には凹溝に嵌入可能な突条リブを設ける。また、内向きフランジは下面が水平であり、突条リブは内向きフランジの下面に対して垂直な外周面を有した逆直角三角形状の断面をなす。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部にフランジ部を有すると共に、該フランジ部の上面全周にわたって環状に凹溝を設けた人工乳首を哺乳びん本体に取り付けるキャップであって、前記人工乳首を装着する中心孔の周囲に前記哺乳びん本体の口部とで前記フランジ部を挟持する内向きフランジを形成すると共に、該内向きフランジの下面には前記凹溝に嵌入可能な突条リブを設け、前記内向きフランジは前記下面が水平であり、前記突条リブは前記下面に対して垂直な外周面を有した逆直角三角形状の断面をなすことを特徴とした哺乳びん用キャップ。
【請求項2】
突条リブの内周面は、凹溝を超えて中心孔寄りに伸びる緩斜面である請求項1記載の哺乳びん用キャップ。
【請求項3】
中心孔の直径は36mm以下である請求項1または2記載の哺乳びん用キャップ。
【請求項4】
中心孔の内壁下側の角部は半径1mm以下の円弧である請求項3記載の哺乳びん用キャップ。
【請求項5】
突条リブは、凹溝への嵌入先端部を平坦に形成した請求項1または2記載の哺乳びん用キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、哺乳びんに人工乳首を取り付けるキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
哺乳びんは、びん本体と、シリコン樹脂などの弾性素材からなる人工乳首と、キャップとからなり、人工乳首はその下端部に、キャップの中心孔よりも大径で、びん本体の口部に見合った円形のフランジ部(座板部)が形成されている。したがって、最初にフランジ部を中心孔に嵌め込んで人工乳首をキャップに装着し、その後、キャップを締め込むことで、フランジ部がキャップとびん本体の口部とで挟持され、フランジ部でびん本体の口部をシールしながら、人工乳首が抜け止めされる。
【0003】
そして、本出願人の出願に係る特許文献1や特許文献2には、人工乳首のフランジ部の上面に上向き開口の環状溝を形成すると共に、キャップの内面に前記環状溝に対応した環状の突条リブを形成した哺乳びんを開示している。
【0004】
その具体例として図4に示すものは、人工乳首10において乳首本体11の下側に括れ部12を介して一体成形されたフランジ部13の上面に断面矩形状の環状溝14を形成しており、キャップ20において中心孔21の周囲の内向きフランジ部22の内面(下面)には断面逆三角形状の突条リブ23を環状に周設しており、人工乳首10をキャップ20に装着する際、環状溝14に突条リブ23を嵌入させることで、両者10・20の中心が一致し、フランジ部22でびん本体30の口部31を確実にシールすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-215422号公報
【特許文献2】特開2020-44124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来は、キャップ20の中心孔21に人工乳首10を装着するための十分な余裕をもたせており、これが括れ部12との関係で「遊び」となって、キャップ20への装着後、人工乳首10に横から水平方向の力が作用して片方に変位すると、図5に示すように、突条リブ23が環状溝14から抜け出てしまい、授乳時にミルク漏れが生じることになる。
【0007】
より詳しくは、断面三角形状の突条リブ23について、(A)外側の辺23aが傾斜面であることで環状溝14の引っ掛かりが弱く突条リブ23が抜け出しやすく、いったん抜け出してしまうと、(B)内側の辺23bが垂直に近い急斜面であることでこれが障壁となり、しかも(C)内向きフランジ部22の下面が外側(突条リブ23側)に向かって上り勾配のテーパ面であることでフランジ部13が跳ね上がって、その周端縁が深みにはまってしまい、人口乳首10を正規の位置に復元させることが困難となる。
【0008】
本発明は上述した課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、装着時に人工乳首のフランジ部が歪むことなく、正確に中心合わせした状態で哺乳びんに取り付けることができる哺乳びん用キャップを開示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために本発明では、下部にフランジ部を有すると共に、該フランジ部の上面全周にわたって環状に凹溝を設けた人工乳首を哺乳びん本体に取り付けるキャップであって、前記人工乳首を装着する中心孔の周囲に前記哺乳びん本体の口部とで前記フランジ部を挟持する内向きフランジを形成すると共に、該内向きフランジの下面には前記凹溝に嵌入可能な突条リブを設け、前記内向きフランジは、前記下面が水平であり、前記突条リブは、前記下面に対して垂直な外周面を有した逆直角三角形状の断面をなすという手段を用いた。
【0010】
本発明のキャップは従来からある人工乳首と哺乳びん本体に適用でき、人工乳首への装着時に、頂部を下向きとした逆三角形状の突条リブを人工乳首の凹溝に嵌入させることで中心合わせを行うことも従来と同じである。しかし、本発明による突条リブは外周面が垂直な直角三角形状をなしているため、この垂直な外周面によって凹溝との引っ掛かりが強まり、突条リブが抜け出しにくくなっている。
【0011】
また、突条リブの外周面とは反対側(中心孔側)の内周面は凹溝を超えて中心孔寄りに伸びる緩斜面としたので、仮に突条リブが凹溝から抜け出したとしても、位置を修正すれば容易に内向きフランジが内周面を乗り越えて、再度、凹溝に嵌入させることができる。さらに、内向きフランジの下面が水平であるので、位置修正時に内向きフランジが跳ね上がる等の変形を起こすこともない。
【0012】
なお、中心孔の直径は36mm以下であることが好ましい。人工乳首を装着するのに最小限の直径とすることで、装着後の遊びを減らし、もって人工乳首のズレを抑制することができるからである。
【0013】
また、中心孔の内壁下側の角部を半径1mm以下の円弧であるとすることで、人工乳首を中心孔の下側から装着する際の抵抗を小さくしつつ、フランジ部の縒を抑制することができるからである。
【0014】
さらに、突条リブの凹溝への嵌入先端部を平坦に形成することで、この部分を従来品(図3・4)のように先鋭(鋭角)とするよりも凹溝を傷つけるおそれが低減する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のキャップによれば、突条リブが人工乳首の凹溝に嵌入した状態からの位置ズレが生じにくく、仮に突条リブが凹溝から抜け出たとしても位置修正が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るキャップと全体の分解図
図2】同、要部の組み立て断面図
図3】同、人工乳首が位置ズレを起こした状態の説明図
図4】従来の哺乳びんにおける要部断面図
図5】同、人工乳首が位置ズレを起こした状態の説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。図1は本発明の一実施形態に係るキャップ1と、これを適用する人工乳首2及び哺乳びん本体3の分解図である。このうち人工乳首2と哺乳びん本体3は従来公知のものを採用している。即ち、人工乳首2は、乳首本体2aの下部に括れ部2bを介してフランジ部2cを備えており、フランジ部2cの上面全周にわたって凹溝2dを環状に設けている。また、哺乳びん本体3はネック部3aにキャップ1を螺合する雄ネジ部3bを有し、ネック部3aの開口、即ち哺乳びん本体3の口部3cは人工乳首2のフランジ部2cによってシールされる。
【0018】
これに対してキャップ1は、上面側に人工乳首2を装着する中心孔4を有し、その周囲を内向きフランジ5とすると共に、この内向きフランジ5から哺乳びん本体3の雄ネジ部3bに対応した雌ネジ付き円筒部6を連設して袋ナット状としている。
【0019】
そして、このキャップ1の特徴は、(1)内向きフランジ5の下面5aが水平であること、(2)この下面5aから断面逆直角三角形状の突条リブ7を環状に突設していること、(3)突条リブ7は円筒部6側の外周面7aが下面5aに対して垂直面であること、(4)突条リブ7の中心孔4側の内周面7bは緩斜面であること、(5)突条リブ7の先端部7cを平坦としていること、そして、(6)中心孔4の直径(内径)Dは36mmであること、(7)中心孔4の内壁下側の角部4aは半径1mmの円弧であることにある。
【0020】
図2は、人工乳首2を装着したキャップ1を哺乳びん本体3に締め込んだ状態を示し、中心孔4には人工乳首2の括れ部2bが位置し、突条リブ7が凹溝2dに嵌入した状態でキャップ1を締め込むことで、人工乳首2のフランジ部2cが内向きフランジ5と哺乳びん本体3の口部3cとの間に挟み込まれ、前記口部3cがシールされると共に、人工乳首2が抜け止めされる。
【0021】
こうした基本的な作用は従来と変わりがないので、上記(1)~(7)の特徴点に基づいて、本発明のキャップ特有の作用効果を説明すると、まず(1)の特徴点によって人工乳首2のフランジ部2cが水平を保ち、(2)・(3)の特徴点によって突条リブ7の垂直な外周面7aが障壁となって凹溝2dが内側に移動しにくい。したがって、キャップ1を締め込んだ後はもちろん、これを締め込む前に人工乳首2に横から力が加わったとしても、突条リブ7が凹溝2dから抜け出るような位置ズレを起こしにくい。
【0022】
また、人工乳首2の装着後、キャップ1を締め込む前に、図3のように、人工乳首2が位置ズレを起こし、突条リブ7が凹溝2dから抜け出てしまったとしても、反対方向(図中の矢印方向)に人工乳首2を戻せば、そのフランジ部2cは特徴点(1)で述べた内向きフランジ5の水平な下面5aによって跳ね上がることなく水平のまま移動し、特徴点(2)(4)で述べた緩斜面である内周面7bを容易に乗り越えて、図2の状態に復元させることができる。
【0023】
なお、特徴点(4)において内周面7bが緩斜面であるとは、その角度を限定するものでなく、図2の状態において、内周面7bが凹溝2dを超えて中心孔寄りに伸びることを意味する。これを従来品と比較すれば、従来品は上記(B)や図4で示したように、内側の辺23bは凹溝14を超えず、垂直に近い急斜面である。
【0024】
また、特徴点(5)によって、突条リブ7の嵌入時に先端部7cが凹溝2dを傷つけることもない。
【0025】
さらに、特徴点(6)によって、中心孔4を人工乳首2の装着に必要な最小限の大きさとしつつ、装着後の人工乳首2の不用意な揺動を抑制することができ、したがって位置ズレも起こしにくい。
【0026】
そして、特徴点(7)によって、人工乳首2を下方から中心孔4に装着する際の抵抗が小さくなるため、装着後に乳首本体2aやフランジ部2cに応力が残存せず、部分的な縒が生じることでミルクの出に支障を来したり、ミルク漏れを起こすおそれもなくなる。
【符号の説明】
【0027】
1 キャップ
2 人工乳首
2c フランジ部
2d 凹溝
3 哺乳びん本体
3c 口部
4 中心孔
5 内向きフランジ
5a 内向きフランジの下面
7 突条リブ
7a 突条リブの外周面(垂直面)
7b 突条リブの内周面(緩斜面)
7c 突条リブの先端部(平坦)
図1
図2
図3
図4
図5