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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027344
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】非水系二次電池用電極
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20240222BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240222BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240222BHJP
   C08F 220/12 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M4/36 C
C08F220/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130073
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】森 悠輔
(72)【発明者】
【氏名】石賀 渉
(72)【発明者】
【氏名】草野 亮介
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
【テーマコード(参考)】
4J100
5H050
【Fターム(参考)】
4J100AJ02R
4J100AL04P
4J100AL04Q
4J100AL62S
4J100CA03
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA25
4J100DA39
4J100FA03
4J100FA19
4J100JA43
4J100JA45
5H050AA19
5H050BA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA05
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CA20
5H050CA22
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB20
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA23
5H050FA18
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】
【課題】各種電極部材への接着性、電解液との親和性に優れたバインダーを含有する非水系二次電池用電極を提供する。
【解決手段】分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を少なくとも2種と、カルボン酸含有ビニル化合物とを必須構成単位とする(メタ)アクリル系重合体を含有する非水系二次電池用電極。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を少なくとも2種と、
カルボン酸含有ビニル化合物と、を必須構成単位とする(メタ)アクリル系重合体を含有する非水系二次電池用電極。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位の合計含有量が、前記(メタ)アクリル系重合体の重量を基準として91~97重量%である請求項1に記載の非水系二次電池用電極。
【請求項3】
前記カルボン酸含有ビニル化合物由来の構成単位の合計含有量が、前記(メタ)アクリル系重合体の重量を基準として3~9重量%である請求項1に記載の非水系二次電池用電極。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系重合体の含有量が、前記非水系二次電池用電極の重量を基準として0.1~10重量%である請求項1に記載の非水系二次電池用電極。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量が、65,000~200,000である請求項1に記載の非水系二次電池用電極。
【請求項6】
電極活物質粒子の表面の少なくとも一部を被覆層で被覆してなる被覆電極活物質粒子と導電助剤とを含有する非結着体からなり、前記被覆層が前記(メタ)アクリル系重合体を含む請求項1に記載の非水系二次電池用電極。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系二次電池用電極に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池に代表される非水系二次電池は、一般に、正極又は負極活物質とバインダーと溶媒とを含むスラリーを正極用又は負極用集電体にそれぞれ塗布して電極を構成している。
バインダーには活物質、導電助剤及び集電体との密着性、電解液との親和性並びに耐高電圧分解性等が必要であり、正極で用いられる耐高電圧分解性に優れたバインダーとしてはポリフッ化ビニリデン(以下、PVdFと略記する)があり、負極ではバインダーとしてスチレン‐ブタジエンゴム(以下、SBRと略記する)及びカルボキシメチルセルロース(以下、CMCと略記する)が使用されている。
【0003】
しかしながら、PVdF、SBR及びCMCは活物質等の各種電極部材への接着性、親和性が充分ではなく剥離して電池の内部抵抗増加の原因となることがあった。バインダーの剥離を防止するためにバインダーの添加量を増やすことが考えられるが、バインダーが増えることで電池の内部抵抗が増加し、電池内の活物質量が減少することで電池容量も減少してしまう。
そのためバインダー量を増やすことなく、各種電極部材への接着性、親和性を維持できる非水系二次電池用電極が望まれている。
【0004】
特許文献1には、充放電サイクル時の活物質の膨張と収縮によるストレスを受けにくい正極として、活物質の表面が導電剤とバインダーとの複合被覆により被覆された正極活物質材料を用いた正極が知られている(特許文献1参照)。
また、特許文献2には、電池の内部抵抗が低くサイクル特性を良好に維持できる非水系二次電池を製造可能な非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物及びそれを用いて被覆した活物質が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-265668号公報
【特許文献2】特開2017-160294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、バインダーの各種電極部材への接着性、電解液との親和性の観点から、これらの検討は改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであり、各種電極部材への接着性、電解液との親和性に優れたバインダーを含有する非水系二次電池用電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
本発明は、分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を少なくとも2種と、カルボン酸含有ビニル化合物とを必須構成単位とする(メタ)アクリル系重合体を含有する非水系二次電池用電極に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、各種電極部材への接着性、電解液との親和性に優れたバインダーを含有する非水系二次電池用電極を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、非水系二次電池用電極に関する。以下では、「非水系二次電池用電極」を「電極」と記載することがある。
非水系二次電池としては、リチウムイオン電池のほか、ナトリウムイオン電池等が挙げられる。以下では非水系二次電池がリチウムイオン電池である場合について詳述するが、本発明の電極はリチウムイオン電池用に限定されない。
【0011】
[(メタ)アクリル系重合体]
本発明の非水系二次電池用電極は、分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を少なくとも2種と、カルボン酸含有ビニル化合物とを必須構成単位とする(メタ)アクリル系重合体を含有する。本発明の非水系二次電池用電極は、上記(メタ)アクリル系重合体を含有することにより、各種電極部材への接着性、電解液との親和性に優れている。本明細書において、(メタ)アクリル系重合体は、アクリル系重合体又はメタクリル系重合体を意味する。また、本明細書において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0012】
(分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体)
分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体として、例えば下記一般式(1)で表されるモノマー(a1)が挙げられる。
CH=C(R)COOR (1)
[式(1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数4~36の分岐アルキル基である。]
【0013】
炭素数4~36の分岐アルキル基としては、1-メチルプロピル基(sec-ブチル基)、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルエチル基(tert-ブチル基)、イソブチル基、1-メチルブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基(ネオペンチル基)、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1-エチルペンチル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、1,1-ジメチルペンチル基、1,2-ジメチルペンチル基、1,3-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2-エチルペンチル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、6-メチルヘプチル基、1,1-ジメチルヘキシル基、1,2-ジメチルヘキシル基、1,3-ジメチルヘキシル基、1,4-ジメチルヘキシル基、1,5-ジメチルヘキシル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、1-メチルオクチル基、2-メチルオクチル基、3-メチルオクチル基、4-メチルオクチル基、5-メチルオクチル基、6-メチルオクチル基、7-メチルオクチル基(イソノニル基)、1,1-ジメチルヘプチル基、1,2-ジメチルヘプチル基、1,3-ジメチルヘプチル基、1,4-ジメチルヘプチル基、1,5-ジメチルヘプチル基、1,6-ジメチルヘプチル基、1-エチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、1-メチルノニル基、2-メチルノニル基、3-メチルノニル基、4-メチルノニル基、5-メチルノニル基、6-メチルノニル基、7-メチルノニル基、8-メチルノニル基(イソデシル基)、1,1-ジメチルオクチル基、1,2-ジメチルオクチル基、1,3-ジメチルオクチル基、1,4-ジメチルオクチル基、1,5-ジメチルオクチル基、1,6-ジメチルオクチル基、1,7-ジメチルオクチル基、1-エチルオクチル基、2-エチルオクチル基、1-メチルデシル基、2-メチルデシル基、3-メチルデシル基、4-メチルデシル基、5-メチルデシル基、6-メチルデシル基、7-メチルデシル基、8-メチルデシル基、9-メチルデシル基、1,1-ジメチルノニル基、1,2-ジメチルノニル基、1,3-ジメチルノニル基、1,4-ジメチルノニル基、1,5-ジメチルノニル基、1,6-ジメチルノニル基、1,7-ジメチルノニル基、1,8-ジメチルノニル基、1-エチルノニル基、2-エチルノニル基、1-メチルウンデシル基、2-メチルウンデシル基、3-メチルウンデシル基、4-メチルウンデシル基、5-メチルウンデシル基、6-メチルウンデシル基、7-メチルウンデシル基、8-メチルウンデシル基、9-メチルウンデシル基、10-メチルウンデシル基、1,1-ジメチルデシル基、1,2-ジメチルデシル基、1,3-ジメチルデシル基、1,4-ジメチルデシル基、1,5-ジメチルデシル基、1,6-ジメチルデシル基、1,7-ジメチルデシル基、1,8-ジメチルデシル基、1,9-ジメチルデシル基、1-エチルデシル基、2-エチルデシル基、1-メチルドデシル基、1-ブチルエイコシル基、1-ヘキシルオクタデシル基、1-オクチルヘキサデシル基、1-デシルテトラデシル基、1-ウンデシルトリデシル基等、2-メチルドデシル基、2-ヘキシルオクタデシル基、2-オクチルヘキサデシル基、2-デシルテトラデシル基、2-ウンデシルトリデシル基、2-ドデシルヘキサデシル基、2-トリデシルペンタデシル基、2-デシルオクタデシル基、2-テトラデシルオクタデシル基、2-ヘキサデシルオクタデシル基、2-テトラデシルエイコシル基、2-ヘキサデシルエイコシル基等、並びに、プロピレンオリゴマー(7~11量体)、エチレン/プロピレン(モル比16/1~1/11)オリゴマー、イソブチレンオリゴマー(7~8量体)及びα-オレフィン(炭素数5~20)オリゴマー(4~8量体)等から得られるオキソアルコールから水酸基を除いた残基のような1又はそれ以上の分岐アルキル基を含有する混合アルキル基等が挙げられる。
【0014】
少なくとも2種の上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の組み合わせとしては、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート及びイソデシル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも2種の化合物の組み合わせが好ましい。より好ましくは、2-エチルヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、iso-ブチルメタクリレート、iso-ブチルアクリレート、イソノニルアクリレート及びイソデシルアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種の化合物との組み合わせである。更に好ましくは、(i)2-エチルヘキシルメタクリレートと、2-エチルヘキシルアクリレートとの組み合わせ、(ii)2-エチルヘキシルメタクリレートと、2-エチルヘキシルアクリレートと、iso-ブチルメタクリレートとの組み合わせ、(iii)iso-ブチルメタクリレートと、iso-ブチルアクリレートとの組み合わせ、(iv)2-エチルヘキシルメタクリレートと、イソノニルアクリレートとの組み合わせ、又は、(iv)2-エチルヘキシルメタクリレートと、イソデシルアクリレートとの組み合わせである。
【0015】
(メタ)アクリル系重合体は、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位の合計含有量が、(メタ)アクリル系重合体の重量を基準として91~97重量%であることが好ましい。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位の合計含有量が上記の範囲であると、(メタ)アクリル系重合体を用いて作製される電極の強度が高く、かつ電極の電解液浸透性が適切になる。また、(メタ)アクリル系重合体の金属箔との密着性に優れる。より好ましくは92~96.5重量%である。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の重量割合(重量%)は、超臨界流体中に重合体を溶解させ、得られたオリゴマー成分をガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)法で解析する等の方法で測定することができる。
【0016】
(カルボン酸含有ビニル化合物)
カルボン酸含有ビニル化合物としては、例えば公知のカルボン酸含有ビニル化合物のうち、炭素数が3~9のもの、2エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。このようなカルボン酸含有ビニル化合物としては、(メタ)アクリル酸、ブタン酸(2-メチルブタン酸及び3-メチルブタン酸等の置換ブタン酸を含む)、ペンテン酸(2-メチルペンテン酸及び3-メチルペンテン酸等の置換ペンテン酸を含む。)、ヘキセン酸(2-メチルヘキセン酸及び3-メチルヘキセン酸等の置換ヘキセン酸を含む。)、ヘプテン酸(2-メチルヘプテン酸及び3-メチルヘプテン酸等の置換ヘプテン酸を含む。)及びオクテン酸(2-メチルオクテン酸及び3-メチルオクテン酸等の置換オクテン酸を含む。)等が挙げられる。カルボン酸含有ビニル化合物としては、メタクリル酸又はアクリル酸が好ましい。
【0017】
(メタ)アクリル系重合体は、カルボン酸含有ビニル化合物由来の構成単位の合計含有量が、(メタ)アクリル系重合体の重量を基準として3~9重量%であることが好ましい。上記カルボン酸含有ビニル化合物由来の構成単位の合計含有量が上記の範囲であると、電池内で生成する水酸化リチウム等の副生成物を中和し、電極の腐食を防止することができる。より好ましくは、3.5~7.0重量%である。カルボン酸含有ビニル化合物の重量割合(重量%)は、上述と同様にオリゴマー成分をガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)法で解析する等の方法で測定することができる。
【0018】
(メタ)アクリル系重合体の構成単位として、分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体とカルボン酸含有ビニル化合物以外に、分岐アルキル基を有さない(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が使用されていてもよい。分岐アルキル基を有さない(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、炭素数4~12の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、炭素数2~12のジオールのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
炭素数4~12の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
炭素数2~12のジオールのジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
分岐アルキル基を有さない(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、ブチル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましく、ブチルアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレートが更に好ましい。
【0020】
電極の強度の観点から、上記分岐アルキル基を有さない(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を構成単位に含む場合、その重量割合は、(メタ)アクリル系重合体の重量を基準として0.1~5重量%であることが好ましい。
【0021】
(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量は、65,000~200,000であることが好ましい。(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量が上記の範囲であると、電極の機械的強度が向上する。より好ましくは、75,000~185,000である。後述する(メタ)アクリル系重合体を得る方法において、その重合条件を調整することで、重量平均分子量を所望の範囲にすることができる。
【0022】
なお、本明細書における(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量は、以下の条件で測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下、GPCと略記する)により測定される。
<GPCの測定条件>
装置:Alliance GPC V2000(Waters社製)
溶媒:オルトジクロロベンゼン
標準物質:ポリスチレン
サンプル濃度:3mg/ml
カラム固定相:PLgel 10μm、MIXED-B 2本直列(ポリマーラボラトリーズ社製)
カラム温度:135℃
【0023】
(メタ)アクリル系重合体は、そのSP値が9.10~9.30であることが好ましい。本明細書における(メタ)アクリル系重合体のSP値は、溶解度パラメータ[単位は(cal/cm1/2である]であり、Fedorsらが提案した下記の文献に記載の方法によって計算されるものである。
「POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE,February,1974,Vol.14,No.2,Robert F. Fedors(147~154頁)」
【0024】
(メタ)アクリル系重合体のガラス転移点[以下Tgと略記、測定法:DSC(走査型示差熱分析)法]は、好ましくは20℃以下、より好ましくは-30~0℃であり、各単量体の種類、重量により、適宜調整できる。
【0025】
(メタ)アクリル系重合体は、分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を少なくとも2種及びカルボン酸含有ビニル化合物を必須成分とし、任意で分岐アルキル基を有さない(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体等を構成成分とする単量体組成物を重合することで得ることができる。重合方法としては、公知の重合方法(塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等)を用いることができる。
重合に際しては、公知の重合開始剤{アゾ系開始剤[2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等]、パーオキシド系開始剤(ベンゾイルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド及びラウリルパーオキシド等)等}を使用して行うことができる。
重合開始剤の使用量は、単量体組成物に含まれる単量体成分の合計重量に基づいて好ましくは0.01~5重量%、より好ましくは0.05~2重量%である。
【0026】
溶液重合の場合に使用される溶媒としては、エステル溶剤[好ましくは炭素数2~8のエステル化合物(例えば酢酸エチル及び酢酸ブチル)]、アルコール[好ましくは炭素数1~8の脂肪族アルコール(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール及びオクタノール)]、炭素数5~8の直鎖、分岐又は環状構造を持つ炭化水素(例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、トルエン及びキシレン)、アミド溶剤[例えばN,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記)及びジメチルアセトアミド]及びケトン溶剤[好ましくは炭素数3~9のケトン化合物(例えばメチルエチルケトン)]等が挙げられ、使用量は単量体組成物に含まれる単量体成分の合計重量に基づいて通常50~200重量%であり、単量体組成物の濃度としては、通常30~70重量%である。
【0027】
乳化重合及び懸濁重合の場合に使用される溶媒(分散媒)としては、水、アルコール(例えばエタノール)、エステル溶剤(例えばプロピオン酸エチル)及び軽ナフサ等が挙げられ、乳化剤としては、高級脂肪酸(炭素数10~24)金属塩(例えばオレイン酸ナトリウム及びステアリン酸ナトリウム)、高級アルコール(炭素数10~24)硫酸エステル金属塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム)、エトキシ化テトラメチルデシンジオール、メタクリル酸スルホエチルナトリウム及びメタクリル酸ジメチルアミノメチル等が挙げられる。更に安定剤としてポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドン等を加えてもよい。
乳化重合又は懸濁重合における単量体組成物の濃度は通常5~95重量%、重合開始剤の使用量は、単量体組成物の合計重量に基づいて通常0.01~5重量%、粘着力及び凝集力の観点から好ましくは0.05~2重量%である。
重合に際しては、公知の連鎖移動剤、例えばメルカプト化合物(ドデシルメルカプタン及びn-ブチルメルカプタン等)及びハロゲン化炭化水素(四塩化炭素、四臭化炭素及び塩化ベンジル等)を使用することができる。使用量は単量体組成物に含まれる単量体成分の合計重量に基づいて通常2重量%以下、樹脂強度等の観点から好ましくは0.5重量%以下である。
【0028】
また、重合反応における系内温度は通常-5~150℃、好ましくは30~120℃、反応時間は通常0.1~50時間、好ましくは2~24時間であり、重合反応の終点は、未反応単量体の量が、単量体組成物に含まれる単量体成分の合計重量に基づいて通常5重量%以下、好ましくは1重量%以下となる点であり、未反応単量体の量はガスクロマトグラフィー等の公知の単量体含有量の定量方法により確認できる。
【0029】
本発明の非水系二次電池用電極は、(メタ)アクリル系重合体の含有量が、非水系二次電池用電極の重量を基準として0.1~10重量%であることが好ましい。より好ましくは3~9.5重量%である。非水系二次電池用電極が正極である場合は、(メタ)アクリル系重合体の含有量が、非水系二次電池用電極の重量を基準として1.0~7.0重量%であることが好ましい。非水系二次電池用電極が負極である場合は、(メタ)アクリル系重合体の含有量が、非水系二次電池用電極の重量を基準として5.0~9.5重量%であることが好ましい。(メタ)アクリル系重合体の含有量が上記範囲であると、電池の内部抵抗増加を抑制しつつ、電池容量を維持することができる。本明細書において、(メタ)アクリル系重合体の含有量の基準である「非水系二次電池用電極」の重量とは、被覆電極活物質粒子及び導電助剤の合計重量であり、電解液の重量は含まない。
【0030】
本発明の非水系二次電池用電極における(メタ)アクリル系重合体の用途は特に限定されず、例えば、電極活物質粒子の表面を被覆する高分子化合物として使用することや、電極活物質層と集電体との一体性を維持するためのバインダーとして使用すること等が挙げられる。
本発明の非水系二次電池用電極は、電極活物質粒子の表面の少なくとも一部を被覆層で被覆してなる被覆電極活物質粒子と導電助剤とを含有する非結着体からなり、上記被覆層が上記(メタ)アクリル系重合体を含むことが好ましい。
【0031】
本発明の非水系二次電池用電極が正極の場合、電極活物質粒子としては正極活物質粒子を用いる。正極活物質粒子としては、リチウムと遷移金属との複合酸化物{遷移金属が1種である複合酸化物(LiCoO、LiNiO、LiAlMnO、LiMnO及びLiMn等)、遷移金属元素が2種である複合酸化物(例えばLiFeMnO、LiNi1-xCo、LiMn1-yCo、LiNi1/3Co1/3Al1/3及びLiNi0.8Co0.15Al0.05)及び金属元素が3種以上である複合酸化物[例えばLiMM’M’’(M、M’及びM’’はそれぞれ異なる遷移金属元素であり、a+b+c=1を満たす。例えばLiNi1/3Mn1/3Co1/3)等]等}、リチウム含有遷移金属リン酸塩(例えばLiFePO、LiCoPO、LiMnPO及びLiNiPO)、遷移金属酸化物(例えばMnO及びV)、遷移金属硫化物(例えばMoS及びTiS)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン及びポリ-p-フェニレン及びポリビニルカルバゾール)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
なお、リチウム含有遷移金属リン酸塩は、遷移金属サイトの一部を他の遷移金属で置換したものであってもよい。
【0032】
正極活物質粒子の体積平均粒子径は、電池の電気特性の観点から、0.01~100μmであることが好ましく、0.1~35μmであることがより好ましく、2~30μmであることが更に好ましい。
本明細書において体積平均粒子径は、マイクロトラック法(レーザー回折・散乱法)によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(Dv50)を意味する。マイクロトラック法とは、レーザー光を粒子に照射することによって得られる散乱光を利用して粒度分布を求める方法である。なお、体積平均粒子径の測定には、日機装(株)製のマイクロトラック等を用いることができる。
【0033】
本発明の非水系二次電池用電極が負極の場合、電極活物質粒子としては負極活物質粒子を用いる。負極活物質粒子としては、炭素系材料[黒鉛(グラファイト)、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、アモルファス炭素、樹脂焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)及び炭素繊維等]、珪素系材料[珪素、酸化珪素(SiO)、珪素-炭素複合体(炭素粒子の表面を珪素及び/又は炭化珪素で被覆したもの、珪素粒子又は酸化珪素粒子の表面を炭素及び/又は炭化珪素で被覆したもの並びに炭化珪素等)及び珪素合金(珪素-アルミニウム合金、珪素-リチウム合金、珪素-ニッケル合金、珪素-鉄合金、珪素-チタン合金、珪素-マンガン合金、珪素-銅合金及び珪素-スズ合金等)等]、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリピロール等)、金属(スズ、アルミニウム、ジルコニウム及びチタン等)、金属酸化物(チタン酸化物及びリチウム・チタン酸化物等)及び金属合金(例えばリチウム-スズ合金、リチウム-アルミニウム合金及びリチウム-アルミニウム-マンガン合金等)等及びこれらと炭素系材料との混合物等が挙げられる。
上記負極活物質粒子のうち、内部にリチウム又はリチウムイオンを含まないものについては、予め負極活物質粒子の一部又は全部にリチウム又はリチウムイオンを含ませるプレドープ処理を施してもよい。
【0034】
負極活物質粒子の体積平均粒子径は、電池の電気特性の観点から、0.01~100μmであることが好ましく、0.1~60μmであることがより好ましく、2~40μmであることが更に好ましい。
【0035】
上記電極活物質粒子表面の少なくとも一部を被覆する被覆層は、高分子化合物を含む。高分子化合物としては、非水系二次電池に使用可能なものであれば特に限定されないが、本発明においては、高分子化合物として上記の(メタ)アクリル系重合体を用いることが好ましい。
【0036】
被覆層は、高分子化合物の他に、更に導電性フィラーとセラミック粒子とを含んでいてもよい。
導電性フィラーとしては、金属[アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト(薄片状黒鉛(UP))、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック及びサーマルランプブラック等)及びカーボンナノファイバー(CNF)等]、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0037】
被覆層が導電性フィラーを含む場合、被覆層を構成する高分子化合物と導電性フィラーの比率は特に限定されるものではないが、電池の内部抵抗等の観点から、重量比率で被覆層を構成する高分子化合物(樹脂固形分重量):導電性フィラーが1:0.01~1:50であることが好ましく、1:0.2~1:3.0であることがより好ましい。
【0038】
セラミック粒子としては、金属炭化物粒子、金属酸化物粒子、ガラスセラミック粒子等が挙げられる。
【0039】
金属炭化物粒子としては、例えば、炭化ケイ素(SiC)、炭化タングステン(WC)、炭化モリブデン(MoC)、炭化チタン(TiC)、炭化タンタル(TaC)、炭化ニオブ(NbC)、炭化バナジウム(VC)、炭化ジルコニウム(ZrC)等が挙げられる。
【0040】
金属酸化物粒子としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム(Al)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化スズ(SnO)、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)、酸化インジウム(In)、Li、LiTi12、LiTi、LiTaO、LiNbO、LiAlO、LiZrO、LiWO、LiTiO、LiPO、LiMoO、LiBO、LiBO、LiCO、LiSiOや、ABO(但し、Aは、Ca、Sr、Ba、La、Pr及びYからなる群より選択される少なくとも1種であり、Bは、Ni、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Mo、Ru、Rh、Pd及びReからなる群より選択される少なくとも1種である)で表されるペロブスカイト型酸化物粒子等が挙げられる。
金属酸化物粒子としては、電解液と被覆電極活物質粒子との間で起こる副反応を好適に抑制する観点から、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム(Al)、二酸化ケイ素(SiO)、及び、四ほう酸リチウム(Li)が好ましい。
【0041】
ガラスセラミック粒子としては、菱面体晶系を有するリチウム含有リン酸化合物であることが好ましく、その化学式は、LiM”12(X=1~1.7)で表される。
ここでM”はZr、Ti、Fe、Mn、Co、Cr、Ca、Mg、Sr、Y、Sc、Sn、La、Ge、Nb、Alからなる群より選ばれた1種以上の元素である。また、Pの一部をSi又はBに、Oの一部をF、Cl等で置換してもよい。例えば、Li1.15Ti1.85Al0.15Si0.052.9512、Li1.2Ti1.8Al0.1Ge0.1Si0.052.9512等を用いることができる。
また、異なる組成の材料を混合又は複合してもよく、ガラス電解質等で表面をコートしてもよい。又は、熱処理によりNASICON型構造を有するリチウム含有リン酸化合物の結晶相を析出するガラスセラミック粒子を用いることが好ましい。
ガラス電解質としては、特開2019-96478号公報に記載のガラス電解質等が挙げられる。
【0042】
ここで、ガラスセラミック粒子におけるLiOの配合割合は酸化物換算で8質量%以下であることが好ましい。
NASICON型構造でなくとも、Li、La、Mg、Ca、Fe、Co、Cr、Mn、Ti、Zr、Sn、Y、Sc、P、Si、O、In、Nb、Fからなり、LISICON型、ぺロブスカイト型、β-Fe(SO型、LiIn(PO型の結晶構造を、持ち、Liイオンを室温で1×10-5S/cm以上伝導する固体電解質を用いても良い。
【0043】
上述したセラミック粒子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
セラミック粒子の体積平均粒子径は、エネルギー密度の観点及び電気抵抗値の観点から、1~1000nmであることが好ましく、1~500nmであることがより好ましく、1~150nmであることが更に好ましい。
【0045】
被覆層がセラミック粒子を含む場合、セラミック粒子の重量割合は、被覆電極活物質粒子の重量を基準として0.5~5.0重量%であることが好ましい。
セラミック粒子を上記範囲で含有することにより、電解液と被覆電極活物質粒子との間で起こる副反応を好適に抑制することができる。
セラミック粒子の重量割合は、被覆電極活物質粒子の重量を基準として2.0~4.0重量%であることがより好ましい。
【0046】
被覆電極活物質粒子は、被覆層が2層以上であってもよい。被覆層が2層以上である場合、各被覆層に含まれる高分子化合物の組成は同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、被覆層に導電性フィラー、セラミック粒子が含まれる場合、各被覆層に含まれる導電性フィラーとセラミック粒子の種類は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0047】
被覆電極活物質粒子の製造方法は、例えば、電極活物質粒子、高分子化合物、任意で使用する導電性フィラー、任意で使用するセラミック粒子及び有機溶剤を混合した後に脱溶剤する工程を有することが好ましい。
【0048】
有機溶剤としては高分子化合物を溶解可能な有機溶剤であれば特に限定されず、公知の有機溶剤を適宜選択して用いることができる。
【0049】
被覆電極活物質粒子の製造方法では、まず、電極活物質粒子、被覆層を構成する高分子化合物、任意で使用する導電性フィラー及び任意で使用するセラミック粒子を有機溶剤中で混合する。
電極活物質粒子、被覆層を構成する高分子化合物、導電性フィラー及びセラミック粒子を混合する順番は特に限定されず、例えば、事前に混合した被覆層を構成する高分子化合物と導電性フィラーとセラミック粒子とからなる樹脂組成物を電極活物質粒子と更に混合してもよいし、電極活物質粒子、被覆層を構成する高分子化合物、導電性フィラー及びセラミック粒子を同時に混合してもよいし、電極活物質粒子に被覆層を構成する高分子化合物を混合し、更に導電性フィラー及びセラミック粒子を混合してもよい。
【0050】
被覆電極活物質粒子は、電極活物質粒子を、高分子化合物と任意で使用する導電性フィラーと任意で使用するセラミック粒子とを含む被覆層で被覆することで得ることができ、例えば、電極活物質粒子を万能混合機に入れて30~500rpmで撹拌した状態で、被覆層を構成する高分子化合物を含む樹脂溶液を1~90分かけて滴下混合し、導電性フィラー及びセラミック粒子を使用する場合はこれらを混合し、撹拌したまま50~200℃に昇温し、0.007~0.04MPaまで減圧した後に10~150分保持して脱溶剤することにより得ることができる。
【0051】
被覆電極活物質粒子の被覆層が2層である場合、例えば上記の方法に従って第1の被覆層を形成した後、第2の被覆層を構成する高分子化合物を含む樹脂溶液、導電性フィラー及びセラミック粒子を用いて、上記の方法と同じ手順で第1の被覆層の上に第2の被覆層が設けられた被覆電極活物質粒子を得ることができる。被覆電極活物質粒子の被覆層が3層以上である場合も同様の方法で、電極活物質粒子の表面に被覆層を形成することによって被覆電極活物質粒子を得ることができる。
【0052】
電極活物質粒子と、被覆層を構成する高分子化合物、任意で使用する導電性フィラー及び任意で使用するセラミック粒子とを含む樹脂組成物との配合比率は特に限定されるものではないが、重量比率で電極活物質粒子:樹脂組成物=1:0.001~0.1であることが好ましい。
【0053】
電極活物質粒子は、表面の少なくとも一部が被覆層で被覆されている。
電極活物質粒子は、サイクル特性の観点から、下記計算式で得られる被覆率が30~95%であることが好ましい。
被覆率(%)={1-[被覆電極活物質粒子のBET比表面積/(被覆前の電極活物質粒子のBET比表面積×被覆電極活物質粒子中に含まれる電極活物質粒子の重量割合+導電性フィラーのBET比表面積×被覆電極活物質粒子中に含まれる導電性フィラーの重量割合+セラミック粒子のBET比表面積×被覆電極活物質粒子中に含まれるセラミック粒子の重量割合)]}×100
【0054】
なお、高分子化合物が(メタ)アクリル系重合体である場合、該(メタ)アクリル系重合体をカルボキシル基と反応する反応性官能基を有する架橋剤(A’){好ましくはポリエポキシ化合物(a’1)[ポリグリシジルエーテル(ビスフェノールAジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル及びグリセリントリグリシジルエーテル等)及びポリグリシジルアミン(N,N-ジグリシジルアニリン及び1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル))等]及び/又はポリオール化合物(a’2)(エチレングリコール等)}で架橋してなる架橋重合体であってもよい。
【0055】
架橋剤(A’)を用いて(メタ)アクリル系重合体を架橋する方法としては、電極活物質粒子を、被覆層を構成する(メタ)アクリル系重合体で被覆した後に架橋する方法が挙げられる。具体的には、電極活物質粒子と被覆層を構成する(メタ)アクリル系重合体を含む樹脂溶液を混合し脱溶剤することにより、被覆電極活物質粒子を製造した後に、架橋剤(A’)を含む溶液を該被覆電極活物質粒子に混合して加熱することにより、脱溶剤と架橋反応を生じさせて、被覆層を構成する(メタ)アクリル系重合体が架橋剤(A’)によって架橋される反応を電極活物質粒子の表面で起こす方法が挙げられる。
加熱温度は、架橋剤の種類に応じて調整されるが、架橋剤としてポリエポキシ化合物(a’1)を用いる場合は好ましくは70℃以上であり、ポリオール化合物(a’2)を用いる場合は好ましくは120℃以上である。
【0056】
本発明の非水系二次電池用電極は、上記の被覆電極活物質粒子と導電助剤とを含有する非結着体からなることが好ましい。
ここで、非結着体とは、被覆電極活物質粒子と導電助剤とが結着剤(バインダーともいう)により位置を固定されていないことを意味する。すなわち、被覆電極活物質粒子と導電助剤は、それぞれ外力に応じて移動できる状態である。
【0057】
電極が非結着体からなる場合、被覆電極活物質粒子と導電助剤とが結着剤によって不可逆的に固定されていない。不可逆的な固定とは、被覆電極活物質粒子と導電助剤とが下記の公知の溶剤乾燥型の結着剤によって接着固定されていることを意味し、接着固定された被覆電極活物質粒子と導電助剤が分離するためには被覆電極活物質粒子と導電助剤の界面を機械的に破壊する必要がある。一方、非結着体の場合は、被覆電極活物質粒子と導電助剤は不可逆的な接着固定がされていないため、被覆電極活物質粒子と導電助剤の界面を機械的に破壊することなく分離することができる。
【0058】
本発明の電極においては、溶剤乾燥型結着剤を含まないことが好ましい。
溶剤乾燥型結着剤としてはデンプン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン及びポリプロピレン等の公知の非水系二次電池用結着剤等が挙げられる。これらの結着剤は溶剤に溶解又は分散して用いられ、溶剤を揮発、留去することで表面が粘着性を示すことなく固体化して、被覆電極活物質粒子と導電助剤同士、及び、被覆電極活物質粒子と導電助剤と集電体とを強固に固定するものである。
【0059】
本発明の電極は、被覆電極活物質粒子と、導電助剤と、電解質及び溶媒を含有する電解液とを含む電極活物質層を備えていることが好ましい。
【0060】
電解質としては、公知の電解液に用いられている電解質が使用でき、例えば、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiClO及びLiN(FSO等の無機アニオンのリチウム塩、LiN(CFSO、LiN(CSO及びLiC(CFSO等の有機アニオンのリチウム塩が挙げられる。これらの内、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのはLiN(FSOである。
【0061】
溶媒としては、公知の電解液に用いられている非水溶媒が使用でき、例えば、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン及びこれらの混合物を用いることができる。
【0062】
ラクトン化合物としては、5員環(γ-ブチロラクトン及びγ-バレロラクトン等)及び6員環(δ-バレロラクトン等)のラクトン化合物等が挙げられる。
【0063】
環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート(EC)及びブチレンカーボネート(BC)等が挙げられる。
鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチル-n-プロピルカーボネート、エチル-n-プロピルカーボネート及びジ-n-プロピルカーボネート等が挙げられる。
【0064】
鎖状カルボン酸エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル及びプロピオン酸メチル等が挙げられる。
【0065】
環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン及び1,4-ジオキサン等が挙げられる。鎖状エーテルとしては、ジメトキシメタン及び1,2-ジメトキシエタン等が挙げられる。
【0066】
リン酸エステルとしては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリ(トリフルオロメチル)、リン酸トリ(トリクロロメチル)、リン酸トリ(トリフルオロエチル)、2-エトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン、2-トリフルオロエトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン及び2-メトキシエトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン等が挙げられる。
【0067】
ニトリル化合物としては、アセトニトリル等が挙げられる。アミド化合物としては、DMF等が挙げられる。スルホンとしては、ジメチルスルホン及びジエチルスルホン等が挙げられる。
【0068】
これらの溶媒は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0069】
電解液中の電解質の濃度は、1.2~5.0mol/Lであることが好ましく、1.5~4.5mol/Lであることがより好ましく、1.8~4.0mol/Lであることが更に好ましく、2.0~3.5mol/Lであることが特に好ましい。
このような電解液は、適当な粘性を有するので、被覆電極活物質粒子間に液膜を形成することができ、被覆電極活物質粒子に潤滑効果(被覆電極活物質粒子の位置調整能力)を付与することができる。
【0070】
本発明の電極は、上述した被覆電極活物質粒子の被覆層中に含まれる導電性フィラーとは別に、導電助剤を含んでいる。被覆層中に含まれる導電性フィラーが被覆電極活物質粒子と一体であるのに対し、導電助剤は被覆電極活物質粒子と別々に含まれている点で区別できる。
導電助剤は、被覆層に含まれる導電性フィラーと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
本発明の電極が含んでいてもよい導電助剤としては、導電性フィラーとして例示したものと同じものを用いることができる。
【0071】
電極中に含まれる導電助剤と被覆層中に含まれる導電性フィラーの合計含有量は、特に限定されないが、電極活物質層から電解液を除いた重量を基準として0.5~20重量%であることが好ましい。
【0072】
本発明の電極が正極である場合、正極活物質層の厚みは、電池性能の観点から、150~470μmであることが好ましく、200~460μmであることがより好ましい。
【0073】
本発明の電極が負極である場合、負極活物質層の厚みは、電池性能の観点から、150~650μmであることが好ましく、200~620μmであることがより好ましい。
【0074】
本発明の電極は、例えば、被覆電極活物質粒子と、導電助剤と、電解液とを含む電極スラリーを集電体に塗布した後、乾燥させることによって作製することができる。具体的には、電極スラリーを、集電体上にバーコーター等の塗工装置で塗布後、不織布を活物質上に静置して吸液すること等で、溶媒を除去し、必要によりプレス機でプレスする方法等が挙げられる。
【0075】
本発明の電極において、集電体を構成する材料としては、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル及びこれらの合金等の金属材料、並びに、焼成炭素、導電性高分子材料、導電性ガラス等が挙げられる。
集電体の形状は特に限定されず、上記の材料からなるシート状の集電体、及び、上記の材料で構成された微粒子からなる堆積層であってもよい。
集電体の厚さは、特に限定されないが、50~500μmであることが好ましい。
【0076】
このように、本発明の電極は、集電体を更に備え、上記集電体の表面に上記電極活物質層が設けられていることが好ましい。例えば、本発明の電極は、導電性高分子材料からなる樹脂集電体を備えていてもよい。
【0077】
樹脂集電体を構成する導電性高分子材料としては例えば、樹脂に導電剤を添加したものを用いることができる。
導電性高分子材料を構成する導電剤としては、被覆層の導電性フィラーと同様のものを好適に用いることができる。
導電性高分子材料を構成する樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又はこれらの混合物等が挙げられる。
電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、更に好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
樹脂集電体は、特開2012-150905号公報及び再表2015/005116号等に記載された公知の方法で得ることができる。
【0078】
なお、本明細書には以下の発明が記載されている。
〔1〕分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を少なくとも2種と、カルボン酸含有ビニル化合物とを必須構成単位とする(メタ)アクリル系重合体を含有する非水系二次電池用電極。
〔2〕上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位の合計含有量が、上記(メタ)アクリル系重合体の重量を基準として91~97重量%である上記〔1〕に記載の非水系二次電池用電極。
〔3〕上記カルボン酸含有ビニル化合物由来の構成単位の合計含有量が、上記(メタ)アクリル系重合体の重量を基準として3~9重量%である上記〔1〕又は〔2〕に記載の非水系二次電池用電極。
〔4〕上記(メタ)アクリル系重合体の含有量が、上記非水系二次電池用電極の重量を基準として0.1~10重量%である上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の非水系二次電池用電極。
〔5〕上記(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量が、65,000~200,000である上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の非水系二次電池用電極。
〔6〕電極活物質粒子の表面の少なくとも一部を被覆層で被覆してなる被覆電極活物質粒子と導電助剤とを含有する非結着体からなり、上記被覆層が上記(メタ)アクリル系重合体を含む上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の非水系二次電池用電極。
【実施例0079】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り部は重量部、%は重量%を意味する。
【0080】
製造例1 (メタ)アクリル系重合体(C1)の作製
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口コルベンに、2-エチルヘキシルメタクリレート70部、2-エチルヘキシルアクリレート25部、メタクリル酸5部、トルエン150部を仕込み75℃に昇温した。トルエン10部及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.200部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.200部を混合した。得られた単量体混合液をコルベン内に窒素を吹き込みながら、重合開始剤混合液を滴下ロートで4時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.800部をトルエン12.4部に溶解した溶液を滴下ロートを用いて、重合を開始してから6~8時間目にかけて連続的に追加した。更に、重合を2時間継続し、トルエンを150部加えて樹脂濃度25重量%の(メタ)アクリル系重合体(C1)溶液を得た。得られた(メタ)アクリル系重合体(C1)の分子量をGPCにて測定したところ、Mwは110,000であった。得られた(メタ)アクリル系重合体(C1)のTgは-15.4℃、SP値は9.23であった。結果を表1に示す。
【0081】
製造例2~10及び比較製造例1~2
使用する単量体の種類及び配合量を表1の記載に従って変更した以外は、上記の「(メタ)アクリル系重合体(C1)の作製」と同様に重合を行い、樹脂濃度25重量%の(メタ)アクリル系重合体(C2)~(C10)及び(C’1)~(C’2)溶液を得た。各重合体のMw、Tg及びSP値を表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
製造例及び比較製造例で使用した表1に記載の単量体は以下の通りである。
EHMA:2-エチルヘキシルメタクリレート
EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
iso-BMA:イソブチルメタクリレート
iso-BA:イソブチルアクリレート
INAA:イソノニルアクリレート
IDAA:イソデシルアクリレート
MAA:メタクリル酸
AA:アクリル酸
BA:ブチルアクリレート
1,6-HGDMA:1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート
【0084】
[被覆正極活物質粒子1の作製]
正極活物質粒子(LiNi0.8Co0.15Al0.05粉末、体積平均粒子径4μm)90部を万能混合機ハイスピードミキサーFS25[(株)アーステクニカ製]に入れ、室温、720rpmで撹拌した状態で、(メタ)アクリル系重合体(C1)溶液16部(固形分換算で4部)を2分かけて滴下し、更に5分撹拌した。
次いで、撹拌した状態で導電性フィラーであるグラファイト(UP)[薄片状黒鉛、体積平均粒子径4.5μm]3部及びカーボンナノファイバー(CNF)[昭和電工(株)製、商品名「VGCF」]3部、並びに、セラミック粒子であるSiO(商品名「AEROSIL200 PE」、日本アエロジル(株)製、体積平均粒子径12nm)2部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。
その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を140℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。
得られた粉体を目開き200μmの篩いで分級し、被覆正極活物質粒子1を得た。
【0085】
[被覆正極活物質粒子2~12の作製]
(メタ)アクリル系重合体(C1)溶液に代えて、(メタ)アクリル系重合体(C2)~(C10)又は(C’1)~(C’2)の溶液を用いた以外は、上記の「被覆正極活物質粒子1の作製」と同様にして被覆正極活物質粒子2~12を作製した。
【0086】
実施例1
[第一混合工程]
上記被覆正極活物質粒子1を99.25部と、導電助剤としてケッチェンブラック(KB)[ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名「EC300J」]0.50部とを遊星撹拌型混合混練装置{あわとり練太郎[(株)シンキー製]}を用いて2000rpmで5分間混合して、正極用粉体を作製した。
【0087】
[第二混合工程]
上記正極用粉体99.75部と、導電助剤としてカーボンナノファイバー2(CNF2)[大阪ガスケミカル(株)製、商品名「ドナカーボ・ミルドS-243」]0.25部とを遊星撹拌型混合混練装置{あわとり練太郎[(株)シンキー製]}を用いて2000rpmで5分間混合して、非水系二次電池用正極組成物を作製した。
【0088】
上記で得られた非水系二次電池用正極組成物100部をロールプレス機にセットされた粉体投入口に入れ、以下の条件で成形を行った。ロールプレス機から排出された正極活物質層は、厚みは均一で426μmであり、目視で表面に割れは確認されなかった。なお、正極活物質層の厚みは、マイクロメータにより測定した。正極活物質層における(メタ)アクリル系重合体の含有量は、3.9重量%であった。
ロールプレス機の条件は以下の通りである。
ロールサイズ:250mmφ×400mm
ロール回転速度:1m/分
ロールの間隔(ギャップ):350μm
圧力:10kN(線圧:25kN/m)
【0089】
実施例2~10及び比較例1~2
被覆正極活物質粒子1の代わりに被覆正極活物質粒子2~12を用いた以外は実施例1と同様にして正極活物質層を作製した。
【0090】
[被覆負極活物質粒子1の作製]
(第1の被覆層の形成)
負極活物質粒子(ハードカーボン粉末、体積平均粒子径25μm、JFEケミカル(株)製)83部を万能混合機ハイスピードミキサーFS25[(株)アーステクニカ製]に入れ、室温、720rpmで撹拌した状態で、(メタ)アクリル系重合体(C1)溶液36部(固形分換算で9部)を2分かけて滴下し、更に5分撹拌した。次いで、撹拌した状態で導電性フィラーであるグラファイト(UP)[薄片状黒鉛、体積平均粒子径4.5μm]6部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。
【0091】
(第2の被覆層の形成)
更に、撹拌した状態で、導電性フィラーであるアセチレンブラック(AB)[デンカ(株)製、商品名「デンカブラック」、体積平均粒子径35nm]2部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。
その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を140℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。
得られた粉体を目開き200μmの篩いで分級し、被覆負極活物質粒子1を得た。
【0092】
[被覆負極活物質粒子2~12の作製]
(メタ)アクリル系重合体(C1)溶液に代えて、(メタ)アクリル系重合体(C2)~(C10)又は(C’1)~(C’2)の溶液を用いた以外は、上記の「被覆負極活物質粒子1の作製」と同様にして被覆負極活物質粒子2~12を作製した。
【0093】
実施例11
[第一混合工程]
上記被覆負極活物質粒子1を97.85部と、導電助剤としてグラファイト(UP)[薄片状黒鉛]1.25部とを遊星撹拌型混合混練装置{あわとり練太郎[(株)シンキー製]}を用いて2000rpmで5分間混合して、負極用粉体を作製した。
【0094】
[第二混合工程]
上記負極用粉体99.10部と、導電助剤としてカーボンナノファイバー(CNF)[大阪ガスケミカル(株)製、商品名「ドナカーボ・ミルドS-243」]0.90部とを遊星撹拌型混合混練装置{あわとり練太郎[(株)シンキー製]}を用いて2000rpmで5分間混合して、非水系二次電池用負極組成物を作製した。
【0095】
上記で得られた非水系二次電池用負極組成物100部をロールプレス機にセットされた粉体投入口に入れ、以下の条件で成形を行った。ロールプレス機から排出された負極活物質層は、厚みは均一で605μmであり、目視で表面に割れは確認されなかった。なお、負極活物質層の厚みは、マイクロメータにより測定した。負極活物質層における(メタ)アクリル系重合体の含有量は、9.0重量%であった。
ロールプレス機での成形条件は実施例1と同じである。
【0096】
実施例12~20及び比較例3~4
被覆負極活物質粒子1の代わりに被覆負極活物質粒子2~12を用いた以外は実施例11と同様にして負極活物質層を作製した。
【0097】
<電極強度測定>
電極の強度の測定は下記の通り行った。
上記で得られた正極活物質層と負極活物質層(サンプルサイズ:15×0.42mm)の降伏応力をISO178(プラスチック-曲げ特性の求め方)に準拠して、オートグラフ[(株)島津製作所製]を用いて測定し、以下の基準で電極強度を評価した。
まず、正極活物質層のサンプルを支点間距離5mmの治具にセットし、オートグラフにセットされたロードセル(定格荷重:20N)を1mm/minの速度で電極に向かって降下させ、降伏点での降伏応力を算出した。
負極活物質層についても同様の手順で降伏応力を算出した。結果を表2に示す。正極活物質層については、電極強度100kPa以上を〇、100kPa未満を×として表2に記載した。負極活物質層については、電極強度40kPa以上を〇、40kPa未満を×として表2に記載した。
【0098】
<電解液浸透性評価>
得られた電極に、液塗布方式にて電解液を塗布した後の、電極への電解液の染み込み(浸透≒液滴消失)時間をもって、電解液浸透性評価を行った。
アルゴン雰囲気下、25℃で、上記で作製した正極活物質層の中央に混合溶液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒(重量比3:7))を5mmの高さからマイクロシリンジで70μL滴下した。滴下終了から溶液が正極活物質層の内部に吸収されて、見掛け上表面から消失するまでの時間を測定し、10個の試験片について測定した時間の平均を液滴消失時間とした。負極活物質層についても同様の手順で測定を行った。結果を表2に示す。電解液浸透性は、150~250sを〇、100s以上150s未満、又は、250sを超えて300s未満を△、100s未満、300s以上を×として表2に記載した。液滴消失時間が150~250s程度であると、円滑に次工程に進めることができる。
【0099】
【表2】
【0100】
実施例1~10の電極(正極活物質層)及び実施例11~20の電極(負極活物質層)は、比較例1~4の電極と比較して、電極強度が高く、電解液浸透性が適切であった。また、本発明の電極に使用する(メタ)アクリル系重合体(C1)は、金属箔との密着性が高かった。(メタ)アクリル系重合体(C’1)を用いた比較例1及び3の電極は、実施例の電極と比較して電極強度が充分でなかった。(メタ)アクリル系重合体(C’2)を用いた比較例2及び4の電極は、(メタ)アクリル系重合体(C’2)のSP値が低いため、電解液の浸透が遅かった。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の非水系二次電池用電極は、特に、定置用電源、携帯電話、パーソナルコンピューター、ハイブリッド自動車及び電気自動車用等に用いられるリチウムイオン電池等の非水系二次電池を作製するために有用である。