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  • 特開-光ファイバリボン 図1
  • 特開-光ファイバリボン 図2
  • 特開-光ファイバリボン 図3
  • 特開-光ファイバリボン 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027349
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】光ファイバリボン
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
G02B6/44 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130082
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 文一
【テーマコード(参考)】
2H201
【Fターム(参考)】
2H201AX18
2H201BB06
2H201BB18
2H201BB23
2H201BB24
2H201DD04
2H201DD14
2H201DD23
2H201DD32
2H201KK26B
2H201KK33B
2H201KK34B
2H201KK63
2H201MM03
2H201MM17
(57)【要約】
【課題】複数の光ファイバ心線同士を連結するための塗布剤の位置のずれを検知することが可能であり、かつ光ファイバ心線の識別性および視認性の低下を防ぐ。
【解決手段】光ファイバリボンは、複数の光ファイバ心線と、互いに隣接する複数の前記光ファイバ心線を間欠的に連結する連結部材と、を備え、前記連結部材は、可視光に対して無色透明であり、かつ可視光領域以外の特定の波長帯域の光に対して不透明である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバ心線と、
互いに隣接する複数の前記光ファイバ心線を間欠的に連結する連結部材と、を備え、
前記連結部材は、可視光に対して無色透明であり、かつ可視光領域以外の特定の波長帯域の光に対して不透明である、光ファイバリボン。
【請求項2】
前記連結部材は、紫外線に対して不透明な接着剤または紫外線硬化樹脂である、請求項1に記載の光ファイバリボン。
【請求項3】
前記連結部材は、アクリル樹脂である、請求項2に記載の光ファイバリボン。
【請求項4】
前記連結部材は、赤外線に対して不透明な接着剤または紫外線硬化樹脂である、請求項1に記載の光ファイバリボン。
【請求項5】
前記連結部材は、ポリプロピレンまたはポリエチレンを含む樹脂である、請求項4に記載の光ファイバリボン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバリボンに関する。
【0002】
従来、複数の光ファイバ心線を備える光ファイバリボンが開発されている。例えば、特許文献1には、4本以上の光ファイバ心線が平行一列に配列された光ファイバリボンであって、隣り合う光ファイバ心線間に連結部と非連結部とが間欠的に形成されている間欠型の光ファイバリボンが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-228688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような間欠型の光ファイバリボンでは、複数の光ファイバ心線を連結するために紫外線硬化樹脂などの接着剤や塗布剤が用いられる。このような塗布剤は、光ファイバ心線への塗布の際に正確な位置からずれた位置に塗布されることがあり、塗布剤の位置がずれることにより、光ファイバリボンが正常な構造を保つことができないことが考えられる。
【0005】
しかしながら、塗布剤の位置のずれを検知しようとしても、塗布剤は一般的に無色透明であるため、位置のずれを検知することは難しい。一方、着色された塗布剤を用いると、塗布剤の位置のずれを目視でも検知することはできるが、一般的に光ファイバ心線には色が付されているため、光ファイバ心線の色と塗布剤の色とが紛らわしくなり、光ファイバ心線の視認性を損なう可能性がある。さらに、光ファイバ心線の表面に、光ファイバ心線を識別するための印字(マーキング)が付されることがある。このような場合において、着色された塗布剤を用いると、マーキングが塗布剤に隠れて見えなくなり、光ファイバ心線の識別性を損なう可能性がある。
【0006】
本開示は、複数の光ファイバ心線同士を連結するための塗布剤の位置のずれを検知することが可能であり、かつ光ファイバ心線の識別性および視認性の低下を防ぐことができる光ファイバリボンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の光ファイバリボンは、複数の光ファイバ心線と、互いに隣接する複数の前記光ファイバ心線を間欠的に連結する連結部材と、を備え、前記連結部材は、可視光に対して無色透明であり、かつ可視光領域以外の特定の波長帯域の光に対して不透明である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、複数の光ファイバ心線同士を連結するための塗布剤の位置のずれを検知することが可能であり、かつ光ファイバ心線の識別性および視認性の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の実施の形態に係る光ファイバリボンの一例を示す図である。
図2図2は、光ファイバリボンの比較例を示す図である。
図3図3は、図2に示す光ファイバリボンの連結部材の一部の塗布位置がずれている状態を示す図である。
図4図4は、図2に示す光ファイバリボンの連結部材の一部の塗布位置がずれている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本開示の実施形態の説明>
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示の実施の形態に係る光ファイバリボンは、
(1)複数の光ファイバ心線と、
互いに隣接する複数の前記光ファイバ心線を間欠的に連結する連結部材と、を備え、
前記連結部材は、可視光に対して無色透明であり、かつ可視光領域以外の特定の波長帯域の光に対して不透明である。
【0011】
このような構成により、例えば、特定の波長帯域の光を照射することにより連結部材の位置のずれを検知することができる。また、特定の波長帯域の光を照射していない状態においては連結部材が無色透明であるため、光ファイバリボンを構成する光ファイバ心線の視認性の低下を防ぐことができる。また、印字(マーキング)が付されている箇所に連結部材が塗布されている場合であっても、印字された文字等を確認することが可能であるため、光ファイバ心線の識別性の低下を防ぐことができる。
【0012】
(2)上記(1)の光ファイバリボンにおいて、
前記連結部材は、紫外線に対して不透明な接着剤または紫外線硬化樹脂であってもよい。
【0013】
このような構成により、連結部材を塗布後の光ファイバリボンに対して紫外線を照射することにより、当該連結部材の位置のずれを検知することができる。
【0014】
(3)上記(2)の光ファイバリボンにおいて、
前記連結部材は、アクリル樹脂であってもよい。
【0015】
このような構成により、透明性および耐久性に優れた、紫外線に対して不透明な連結部材を備える光ファイバリボンを実現することができる。
【0016】
(4)上記(1)光ファイバリボンにおいて、
前記連結部材は、赤外線に対して不透明な接着剤または紫外線硬化樹脂であってもよい。
【0017】
このような構成により、連結部材を塗布後の光ファイバリボンに対して赤外線を照射することにより、当該連結部材の位置のずれを検知することができる。
【0018】
(5)上記(4)の光ファイバリボンにおいて、
前記連結部材は、ポリプロピレンまたはポリエチレンを含む樹脂であってもよい。
【0019】
このような構成により、赤外線に対して不透明な連結部材を安価に提供することができる。
【0020】
<本開示の実施形態の詳細>
本開示の光ファイバリボンの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0021】
[光ファイバリボンの全体構成]
図1は、本開示の実施の形態に係る光ファイバリボン1の一例を示す図である。図1を参照して、本開示の実施の形態に係る光ファイバリボン1は、複数の光ファイバ心線10と、これら複数の光ファイバ心線10を連結する連結部材20とを備える。以下、光ファイバ心線10の延在方向をY方向とし、複数の光ファイバ心線10の並ぶ方向をX方向とする。
【0022】
各光ファイバ心線10は、例えばシングルコアファイバ(SCF(Single Core Fiber))であり、1つのコア11と、当該コア11を覆うクラッド12と、クラッド12を覆う被覆層14とを含む。各光ファイバ心線10の外径は、例えば160μmから255μmである。
【0023】
コア11は、クラッド12の屈折率よりも高い屈折率を有し、光を導波させることができる。被覆層14には、例えば、2層の紫外線硬化型樹脂層および着色層が含まれる。
【0024】
連結部材20は、並列されて隣り合う光ファイバ心線10を間欠的に連結するように塗布される。連結部材20は、例えば、隣り合う光ファイバ心線10の外周の間に形成される凹部へ塗布されて硬化されている。具体的には、連結部材20は、上面視で長方形状を有し、例えば、長手方向の長さが10mmから40mm程度であり、短手方向の長さが0.10mmから0.25mm程度である。
【0025】
また、連結部材20は、Y方向に沿って延在するように塗布される。図1に示す例では、光ファイバリボン1は、光ファイバ心線10として、4本の光ファイバ心線10a,10b,10c,10dを備える。また、光ファイバリボン1は、連結部材20として、5つの連結部材20a,20b,20c,20d,20eを備える。
【0026】
連結部材20a,20bは、光ファイバ心線10aと光ファイバ心線10bとを間欠的に連結する。連結部材20cは、光ファイバ心線10bと光ファイバ心線10cとを間欠的に連結する。連結部材20d,20eは、光ファイバ心線10cと光ファイバ心線10dとを間欠的に連結する。また、連結部材20a,20b,20c,20d,20eは、可視光に対して無色透明であり、かつ可視光領域以外の特定の波長帯域の光に対して不透明である。
【0027】
連結部材20aおよび連結部材20bは、Y方向に並ぶように塗布され、連結部材20dおよび連結部材20eも同様に、Y方向に並ぶように塗布される。また、連結部材20aおよび連結部材20dは、例えばX方向に並ぶように塗布され、連結部材20bおよび連結部材20eも同様に、例えばX方向に並ぶように塗布される。また、連結部材20cは、X方向において連結部材20aと連結部材20dとの間であり、かつY方向において連結部材20aと連結部材20bとの間の位置に塗布される。
【0028】
なお、図1に示す連結部材20の位置および大きさは一例であり、連結部材20の位置および大きさは図1に示すものに限定されない。
【0029】
また、光ファイバリボン1は、4本の光ファイバ心線10を備える構成に限定されず、例えば、8本、12本または24本などの他の本数の光ファイバ心線10を備えてもよい。
【0030】
また、光ファイバ心線10は、図1に示すようなSCFに限定されず、例えばマルチコアファイバ(MCF(Multi Core Fiber))であってもよい。
【0031】
[課題の説明]
図2は、光ファイバリボンの比較例を示す図である。図2を参照して、比較例に係る光ファイバリボン51は、図1に示す光ファイバリボン1と同様に、4つの光ファイバ心線10a,10b,10c,10dを備える。また、光ファイバリボン51は、図1に示す5つの連結部材20a,20b,20c,20d,20eの代わりに、5つの連結部材60a,60b,60c,60d,60eを備える。以下、連結部材60a,60b,60c,60d,60eの各々を「連結部材60」とも称する。
【0032】
連結部材60は、並列されて隣り合う光ファイバ心線10を間欠的に連結するように塗布される。より詳細には、連結部材60a,60b,60c,60d,60eの塗布位置は、それぞれ図1に示す連結部材20a,20b,20c,20d,20eの塗布位置と同じである。また、連結部材60は、図1に示す連結部材20と同じ大きさおよび形状を有する。但し、連結部材60は、連結部材20とは異なり、可視光、赤外光、紫外光の何れの光に対しても、無色透明の接着剤または紫外線硬化樹脂である。
【0033】
ところで、連結部材60は、光ファイバ心線10への塗布の際に、正確な位置からずれた位置に塗布されることがある。図3および図4は、図2に示す光ファイバリボンの連結部材の一部の塗布位置がずれている状態を示す図である。ここでは、図2に示す各連結部材60の位置が正しい塗布位置であるとする。
【0034】
例えば、図3では、図2と比較して、枠Aで示すように、連結部材60aの塗布位置が連結部材60bに近づくように、X方向にずれている。また、例えば、図4では、図2と比較して、枠Bで示すように、連結部材60aの塗布位置がY方向にずれることにより、連結部材60aと連結部材60cとが重なっている。また、連結部材60aの一部がY方向に沿って湾曲するようにずれる場合もある。
【0035】
このように、連結部材60の塗布位置がずれる場合、光ファイバリボン1の全体的な一体感や柔軟性が損なわれることが考えられる。一体感が無くなると、融着時に光ファイバリボン1に含まれる複数の光ファイバ心線10を一列に並べにくい等の取り扱い性に問題が生じるおそれがあり、柔軟性が損なわれると、伝送損失が増加するなどの悪影響が出る可能性がある。しかしながら、連結部材60は無色透明であるため、光ファイバリボン1の撮像画像、または光ファイバリボン1に対する色識別センサのセンサ結果などを用いて連結部材60の位置がずれていることを検知しようとしても、位置のずれを検知することが難しい。
【0036】
一方、無色透明の連結部材60の代わりに、着色された連結部材を用いることが考えられる。この場合、当該連結部材の位置がずれていることを検知することはできるが、光ファイバ心線10の被覆層14における着色層の色と当該連結部材の色とが紛らわしくなり、光ファイバ心線10の視認性を損なう可能性がある。
【0037】
さらに、光ファイバ心線10の表面に、光ファイバ心線10を識別するための印字等のマーキングが付されることがある。このような場合において、着色された連結部材を用いると、マーキングが見えなくなり、光ファイバ心線10の識別性を損なう可能性がある。
【0038】
以上のような課題に対して、本開示の実施形態に係る光ファイバリボン1は、後述のような構成により、連結部材20の位置のずれを検知することが可能であり、かつ光ファイバ心線10の識別性および視認性の低下を防ぐことができる。
【0039】
[連結部材の詳細]
(例1)
再び図1を参照して、連結部材20は、可視光に対して無色透明であり、かつ可視光領域以外の特定の波長帯域の光に対して不透明である。すなわち、図2から図4に示す比較例に係る連結部材60は、照射される光の波長帯域に関わらず無色透明であるのに対して、図1に示す連結部材20は、特定の波長帯域の光に対して不透明である。
【0040】
特定の波長帯域は、例えば、紫外線の波長帯域である10nmから400nmの帯域であり、好ましくは315nmから400nmの帯域である。
【0041】
連結部材20の無色透明には、当該連結部材20が塗布された光ファイバ心線10の識別性および視認性を妨げない程度の有色透明を含む。また、連結部材20は、特定の波長帯域の光を照射された場合において、連結部材20の位置が確認できる程度の光の透過率であればよく、光の透過を100%妨げるものに限定されない。
【0042】
連結部材20は、特定の波長帯域の光に対して不透明な接着剤または紫外線硬化樹脂により成形される。具体的には、連結部材20は、紫外線によって硬化するアクリル樹脂(例えばウレタンアクリレート樹脂)などにより成形される。
【0043】
このような構成によれば、例えば、連結部材20を塗布した後の光ファイバリボン1を紫外線カメラで撮像し、撮像画像に基づいて、連結部材20の位置のずれを検知することができる。具体的には、すべての連結部材20が正しい位置に塗布された光ファイバリボン1の撮像画像(以下、「基準画像」と称する。)を予め取得しておき、検知対象である光ファイバリボン1の撮像画像と、基準画像とを比較する画像処理を行うことにより、当該光ファイバリボン1に塗布された各連結部材20の位置が正しい位置であるか否かを検知することができる。
【0044】
(例2)
特定の波長帯域は、例1において説明した紫外線の波長帯域に限らず、例えば、赤外線の波長帯域である780nm以上の帯域であってもよい。好ましくは、特定の波長帯域は、780nmから1500nmの帯域である。
【0045】
特定の波長帯域が上記のような帯域である場合、連結部材20は、当該特定の波長帯域の光に対して不透明な接着剤または紫外線硬化樹脂により成形される。具体的には、連結部材20は、溶融したポリプロピレンまたはポリエチレンを含む樹脂である。
【0046】
このような構成によれば、例えば、連結部材20を塗布した後の光ファイバリボン1を赤外線カメラで撮像し、撮像画像に基づいて、連結部材20の位置のずれを検知することができる。具体的には、検知対象である光ファイバリボン1の撮像画像と基準画像とを比較する画像処理を行うことにより、当該光ファイバリボン1に塗布された各連結部材20の位置が正しい位置であるか否かを検知することができる。
【0047】
また、上記の例1または例2のような連結部材20を用いる場合、光ファイバリボン1における識別用の印字を有する面と同じ面に連結部材20を設けたとしても、可視光が連結部材20を透過するので、印字を識別することができる。すなわち、印字を覆わないように連結部材20を配置する必要が無く、製造工程において好都合である。
【0048】
なお、連結部材20は、紫外線または赤外線に対して不透明であるものに限定されず、可視光に対して透明であり、かつ可視光領域以外の特定の波長帯域の光に対して不透明なものであればよい。また、連結部材20は、特定の波長帯域の光に対して不透明となるように着色されたものであってもよい。
【0049】
以上、特定の実施形態に基づいて本開示を説明したが、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
1,51 光ファイバリボン
10,10a,10b,10c,10d 光ファイバ心線
11 コア
12 クラッド
14 被覆層
20,20a,20b,20c,20d,20e 連結部材
60,60a,60b,60c,60d,60e 連結部材
A、B 枠
図1
図2
図3
図4