IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シンフォニアテクノロジー株式会社の特許一覧

特開2024-27358パレットの位置検出方法及びパレットの位置検出システム
<>
  • 特開-パレットの位置検出方法及びパレットの位置検出システム 図1
  • 特開-パレットの位置検出方法及びパレットの位置検出システム 図2
  • 特開-パレットの位置検出方法及びパレットの位置検出システム 図3
  • 特開-パレットの位置検出方法及びパレットの位置検出システム 図4
  • 特開-パレットの位置検出方法及びパレットの位置検出システム 図5
  • 特開-パレットの位置検出方法及びパレットの位置検出システム 図6
  • 特開-パレットの位置検出方法及びパレットの位置検出システム 図7
  • 特開-パレットの位置検出方法及びパレットの位置検出システム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027358
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】パレットの位置検出方法及びパレットの位置検出システム
(51)【国際特許分類】
   B61B 13/00 20060101AFI20240222BHJP
   B61D 47/00 20060101ALI20240222BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240222BHJP
【FI】
B61B13/00 V
B61D47/00 A
G05D1/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130098
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】宮下 裕司
【テーマコード(参考)】
3D101
5H301
【Fターム(参考)】
3D101BB26
3D101BB28
3D101BB52
5H301BB05
5H301GG08
(57)【要約】
【課題】パレットの位置を高い精度で検出可能とする。
【解決手段】搬送車10が進入空間24に進入する前に、光学センサ14から複数の柱部23に向けて光を照射し、複数の測定点Pの位置データを取得する位置データ取得工程と、複数の測定点Pから、柱部23の進入空間24に面する面23a上の点である内法点を抽出する内法点抽出工程と、内法点抽出工程で抽出された内法点の位置データに基づいて、パレット20の位置を演算するパレット位置演算工程と、を備える。内法点抽出工程では、複数の柱部23のそれぞれについて、複数の測定点Pから内法点の候補点群を選び出し、候補点群に含まれる測定点が内法点として妥当か否かを所定条件に基づいて判断する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の柱部を有する左右の脚部で台部を支持するように構成されたパレットの位置を、前記左右の脚部の間の進入空間に進入可能な搬送車に設けられた光学センサを利用して検出するパレットの位置検出方法であって、
前記搬送車が前記進入空間に進入する前に、前記光学センサから前記複数の柱部に向けて光を照射し、複数の測定点の位置データを取得する位置データ取得工程と、
前記複数の測定点から、前記柱部の前記進入空間に面する面上の点である内法点を抽出する内法点抽出工程と、
前記内法点抽出工程で抽出された前記内法点の前記位置データに基づいて、前記パレットの位置を演算するパレット位置演算工程と、
を備え、
前記内法点抽出工程では、前記複数の柱部のそれぞれについて、前記複数の測定点から前記内法点の候補点群を選び出し、前記候補点群に含まれる前記測定点が前記内法点として妥当か否かを所定条件に基づいて判断することを特徴とするパレットの位置検出方法。
【請求項2】
前記所定条件は、前記候補点群に含まれる前記測定点のうち最も離れている2つの測定点の間の距離が所定値以上という条件であることを特徴とする請求項1に記載のパレットの位置検出方法。
【請求項3】
前記所定条件は、前記候補点群に含まれる前記測定点の数が所定数以上という条件であることを特徴とする請求項1に記載のパレットの位置検出方法。
【請求項4】
前記複数の柱部のそれぞれに対して柱部を含む第1領域を前記パレットの位置情報に基づいて設定し、前記第1領域から前記候補点群を選び出すことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のパレットの位置検出方法。
【請求項5】
前記第1領域に含まれる前記測定点のうち最も前記進入空間に近い測定点を含むように第2領域を設定し、前記第2領域に含まれる前記測定点を前記候補点群として選び出すことを特徴とする請求項4に記載のパレットの位置検出方法。
【請求項6】
複数の柱部を有する左右の脚部で台部を支持するように構成されたパレットの位置を検出するパレットの位置検出システムであって、
前記左右の脚部の間の進入空間に進入可能な搬送車に設けられた光学センサと、
前記光学センサを利用して前記パレットの位置を演算する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記搬送車が前記進入空間に進入する前に、前記光学センサから前記複数の柱部に向けて照射された光に基づいて、複数の測定点の位置データを取得する位置データ取得処理と、
前記複数の測定点から、前記柱部の前記進入空間に面する面上の点である内法点を抽出する内法点抽出処理と、
前記内法点抽出処理で抽出された前記内法点の前記位置データに基づいて、前記パレットの位置を演算するパレット位置演算処理と、
を実行可能であり、
前記内法点抽出処理では、前記複数の柱部のそれぞれについて、前記複数の測定点から前記内法点の候補点群を選び出し、前記候補点群に含まれる前記測定点が前記内法点として妥当か否かを所定条件に基づいて判断することを特徴とするパレットの位置検出システム。
【請求項7】
前記光学センサは、前記搬送車の幅方向において前記搬送車の中心からずれた位置に配置されていることを特徴とする請求項6に記載のパレットの位置検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送車によって搬送されるパレットの位置を検出するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、製鉄所の構内では、大型のコイルや鋼材等の重量物をパレットに載置し、このパレットを搬送車によって搬送することが従来より行われている。一般的なパレットは、重量物が載置される台部を左右の脚部で支持する構成を有する。そして、搬送車をパレットの左右の脚部の間の進入空間に進入させてから、搬送車の荷台を上昇させることにより、パレットを荷台で下から支持した状態でパレットを搬送することが可能となっている。
【0003】
近年、搬送車の自動化が図られており、そのためには搬送車がパレットの進入空間に自動で適切に進入できるように、パレットの位置を精度よく検出する必要がある。通常、パレットの脚部は、形鋼のトラス構造又はラーメン構造からなり、複数の柱部を有している。特許文献1では、これらの柱部に向けて、搬送車に設けられた光学センサ(アプローチセンサ)から光を照射し、その反射光に基づいて、光が照射された測定点の位置データを取得している。そして、複数の測定点の中から内法点(柱部の進入空間に面する面上の点)を抽出し、内法点の位置データに基づいて、パレットの位置を演算している。
【0004】
詳細には、特許文献1では、次の手順1~4によって内法点の抽出が行われている。
1.左柱部の測定点と右柱部の測定点との全組み合わせに関して距離を算出
2.右柱部の測定点A(i)から最短距離にある左柱部の測定点の番号をP(i)とする
3.左柱部の測定点B(j)から最短距離にある右柱部の測定点の番号をQ(j)とする
4.右柱部の測定点番号iについて、式i=Q(P(i))が成立していれば、測定点A(i)と測定点B(P(i))を内法点のペアとして抽出
以下では、このような内法点の抽出処理をペアリングと呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4427360号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のようにペアリングによって内法点を抽出する場合、次のような問題があった。例えば、光学センサの位置が左右方向においてパレットの中心からずれていると、左柱部と右柱部とで測定点の数が大きく異なる場合がある。ペアリングによって抽出できる内法点のペア数は、測定点の数が少ないほうの柱部における測定点の数が上限となる。このため、測定点の数が多いほうの柱部については、全ての測定点の位置データを有効に活用することができず、パレットの位置を演算するのに利用できる内法点のデータ数が少なくなってしまう。
【0007】
また、光学センサから遠く離れた柱部においては、光を照射する角度の関係から測定点が少なくなる傾向がある。ペアリングでは互いに距離が最小となる左右の測定点のペアが見つかれば、内法点として抽出される。したがって、測定点が少ない状態でペアリングを行うと、実際には内法点ではなくても互いに距離が最小となる測定点のペアが内法点として抽出されてしまう。
【0008】
以上のような問題から、ペアリングを前提としたパレットの位置検出では、データ数の少なさや内法点の誤抽出が原因で、パレットの位置を検出する際に誤差が大きくなることがあった。
【0009】
本発明は、上述の課題を鑑みてなされたものであり、パレットの位置を高い精度で検出可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るパレットの位置検出方法は、複数の柱部を有する左右の脚部で台部を支持するように構成されたパレットの位置を、前記左右の脚部の間の進入空間に進入可能な搬送車に設けられた光学センサを利用して検出するパレットの位置検出方法であって、前記搬送車が前記進入空間に進入する前に、前記光学センサから前記複数の柱部に向けて光を照射し、複数の測定点の位置データを取得する位置データ取得工程と、前記複数の測定点から、前記柱部の前記進入空間に面する面上の点である内法点を抽出する内法点抽出工程と、前記内法点抽出工程で抽出された前記内法点の前記位置データに基づいて、前記パレットの位置を演算するパレット位置演算工程と、を備え、前記内法点抽出工程では、前記複数の柱部のそれぞれについて、前記複数の測定点から前記内法点の候補点群を選び出し、前記候補点群に含まれる前記測定点が前記内法点として妥当か否かを所定条件に基づいて判断することを特徴とする。
【0011】
本発明に係るパレットの位置検出システムは、複数の柱部を有する左右の脚部で台部を支持するように構成されたパレットの位置を検出するパレットの位置検出システムであって、前記左右の脚部の間の進入空間に進入可能な搬送車に設けられた光学センサと、前記光学センサを利用して前記パレットの位置を演算する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記搬送車が前記進入空間に進入する前に、前記光学センサから前記複数の柱部に向けて照射された光に基づいて、複数の測定点の位置データを取得する位置データ取得処理と、前記複数の測定点から、前記柱部の前記進入空間に面する面上の点である内法点を抽出する内法点抽出処理と、前記内法点抽出処理で抽出された前記内法点の前記位置データに基づいて、前記パレットの位置を演算するパレット位置演算処理と、を実行可能であり、前記内法点抽出処理では、前記複数の柱部のそれぞれについて、前記複数の測定点から前記内法点の候補点群を選び出し、前記候補点群に含まれる前記測定点が前記内法点として妥当か否かを所定条件に基づいて判断することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、複数の測定点から内法点を抽出する際に、まず、柱部ごとに内法点の候補点群を選び出した後、各候補点群に含まれる測定点が内法点として妥当か否かを所定条件に基づいて判断する。つまり、内法点を抽出する際に左右の柱部でペアリングを行うわけではなく、各柱部の候補点群について個別に内法点として妥当かどうかを判断することになる。このため、測定点の数が左右の柱部で異なる場合でも利用できるデータ数が減るわけではなく、取得したデータを最大限に活用することができる。また、測定点が少ない状態でペアリングを行ったときに、誤った測定点を内法点として抽出してしまうという問題も回避できる。したがって、パレットの位置を高い精度で検出可能となる。
【0013】
本発明において、前記所定条件は、前記候補点群に含まれる前記測定点のうち最も離れている2つの測定点の間の距離が所定値以上という条件であるとよい。
【0014】
内法点の位置データに基づいてパレットの位置を演算する際には、例えば、内法点として抽出された測定点から内法線(内法点を結ぶ直線)を近似的に求めることがある。このように近似的に内法線を求める場合には、測定点は適度に散らばっていることが好ましく、測定点が密集していると近似の際に誤差が大きくなりやすい。そこで、上述のような条件を設けることにより、測定点がある程度散らばっていることを担保でき、内法線を精度よく求めることができる。
【0015】
本発明において、前記所定条件は、前記候補点群に含まれる前記測定点の数が所定数以上という条件であるとよい。
【0016】
上述のように、内法点として抽出された測定点から内法線を近似的に求める場合には、測定点の数が少なすぎると近似の際に誤差が大きくなりやすい。そこで、上述のような条件を設けることにより、測定点の数を十分に確保でき、内法線を精度よく求めることができる。
【0017】
本発明において、前記複数の柱部のそれぞれに対して柱部を含む第1領域を前記パレットの位置情報に基づいて設定し、前記第1領域から前記候補点群を選び出すとよい。
【0018】
このように、候補点群を選び出す範囲を予め第1領域に限定しておくことで、柱部とは無関係な測定点を演算から除外することができ、演算負荷を低減することができる。
【0019】
本発明において、前記第1領域に含まれる前記測定点のうち最も前記進入空間に近い測定点を含むように第2領域を設定し、前記第2領域に含まれる前記測定点を前記候補点群として選び出すとよい。
【0020】
こうすれば、第1領域に含まれる測定点の中から、内法点である可能性が高い測定点を容易に選び出すことができる。
【0021】
本発明において、前記光学センサは、前記搬送車の幅方向において前記搬送車の中心からずれた位置に配置されているとよい。
【0022】
本発明ではペアリングが不要なので、左右の柱部のうちどちらかで十分な数の測定点が得られればよい。上述のように、あえて光学センサの位置をずらしておくことによって、少なくとも左右一方の柱部については多くの測定点が得られるという利点がある。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ペアリングを行わずに内法点を抽出することで、パレットの位置を高い精度で検出可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】搬送車及びパレットの外観を示す斜視図である。
図2】パレットの位置検出処理を示すフローチャートである。
図3】パレットの位置検出処理を示すフローチャートである。
図4】パレットの位置検出処理を説明するための模式的な平面図である。
図5】パレットの位置検出処理を説明するための模式的な平面図である。
図6】パレットの位置検出処理を説明するための模式的な平面図である。
図7】パレットの位置検出処理を説明するための模式的な平面図である。
図8】ペアリングを利用した従来技術において抽出された内法点を示す模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
(搬送車)
図1は、搬送車10及びパレット20の外観を示す斜視図である。搬送車10は、パレット20を搬送するための車両である。搬送車10は、全球測位衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)による自車の位置情報等に基づいて、自動走行可能に構成されている。搬送車10は、運転室11、複数の車輪12、荷台13、光学センサ14、制御装置15を有する。光学センサ14及び制御装置15によって、本発明に係る「パレットの位置検出システム」が構成されている。なお、搬送車10を自動走行可能とするため、GNSSを利用する方法に代えて又は加えて、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)を用いた方法、所定のタグを画像認識する方法、磁気マーカー(RFID:Radio Frequency Identifier)を利用した方法、光学センサ14を自車の位置検出に利用する方法等を採用してもよい。
【0027】
運転室11は、運転者が搬送車10を操作する必要が生じた場合に、運転者が乗り込んで操作を行うための部屋である。例えば、搬送車10の自動走行機能に支障が生じた場合等に運転室11が利用される。なお、本実施形態では、搬送車10が無人で自動走行を行っている場合について説明しており、運転室11は特に使用されないものとする。また、運転室11を設けることは必須ではなく、運転室11を省略することも可能である。
【0028】
荷台13は、昇降可能に構成されており、パレット20を下方から持ち上げた状態で支持することができる。
【0029】
光学センサ14は、投光器(図示省略)から光を物体に向けて照射し、その物体からの反射光を受光器(図示省略)で受光することで、その物体までの距離を測定することのできるセンサである。光学センサ14は搬送車10の前後両側に設けられており、場面に応じて何れかの光学センサ14が使用される。光学センサ14は、搬送車10の幅方向の中心に配置されており、水平に円弧を描くように広い範囲をスキャンすることが可能である。なお、本実施形態の光学センサ14は、レーザー光を利用しているが、レーザー光以外の光を利用したセンサを用いることも可能である。また、光学センサ14を荷台13に配置してもよい。
【0030】
制御装置15は、搬送車10に関する各種制御を行う。制御装置15は、自動走行制御部16、パレット位置演算部17、記憶部18を有する。自動走行制御部16は、操舵装置及び駆動装置等(何れも図示省略)を適切に制御することで、搬送車10の自動走行を実行する。パレット位置演算部17は、後で詳細に説明するように、光学センサ14によるスキャンによって取得したデータに基づいて、パレット20の位置を演算する。記憶部18は、自動走行制御部16及びパレット位置演算部17による演算処理で必要になる各種データ(例えば、地図情報、パレット20の寸法情報等)を記憶している。
【0031】
(パレット)
パレット20は、重量物が載置される台部21を左右の脚部22で支持する構成を有する。脚部22は、H形鋼を用いたトラス構造からなり、前後に並ぶ複数の柱部23を有している。ただし、脚部22をH形鋼のトラス構造とすることは必須ではなく、他の形鋼を用いてもよいし、トラス構造ではなくラーメン構造であってもよい。左右の脚部22の間には、搬送車10が進入可能な進入空間24が形成されている。換言すると、進入空間24は、台部21と左右の脚部22と地面とによって囲まれた空間である。搬送車10は、荷台13を下降させた状態で進入空間24に進入し、進入後に荷台13を上昇させることで荷台13によってパレット20の台部21を下から持ち上げることができる。その結果、パレット20及びパレット20に載置された重量物を搬送車10によって搬送可能となる。
【0032】
搬送車10が進入空間24に自動走行で適切に進入できるようにするためには、パレット20の位置を正確に検出する必要がある。搬送車10は、光学センサ14によってパレット20の左右の脚部22、より具体的には、左右の各柱部23を検出することによって、パレット20の位置を検出する。以下では、パレット20の位置検出処理について詳細に説明する。
【0033】
(パレットの位置検出処理)
図2及び図3は、パレット20の位置検出処理を示すフローチャートである。図4図7は、パレット20の位置検出処理を説明するための模式的な平面図である。なお、図4図7においては、紙面の都合上、左右の脚部22のそれぞれについて4つの柱部23のみを図示している。また、説明を簡潔にするため、図4図7で図示している測定点Pの数は実際よりも少ない。
【0034】
自動走行制御部16は、GNSSによる自車の位置情報及び記憶部18に記憶されている地図情報等に基づいて、搬送車10を搬送対象(以下、単に対象と言う)のパレット20に向かって自動走行させる。そして、搬送車10が対象のパレット20の近傍の所定位置に到達すると、自動走行制御部16は搬送車10を停止させる。この所定位置は、搬送車10に設けられた光学センサ14によって、対象のパレット20の左右の各柱部23にレーザー光を照射できる位置として設定されている。以下のパレット20の位置検出処理(ステップS1~S13の処理)は、パレット位置演算部17によって実行される。
【0035】
搬送車10が所定位置で停止すると、光学センサ14によるスキャンが開始される。パレット位置演算部17は、レーザー光が照射された各測定点P(図4参照)の位置データ(位置座標)を取得する(ステップS1、本発明の位置データ取得工程及び位置データ取得処理に相当)。図4に示すように、光学センサ14によるスキャンは、光学センサ14を前方180度の範囲において水平に回動させ、一定間隔(等角度間隔)でレーザー光を照射することで実行される。各測定点Pの位置座標は、光学センサ14から測定点Pまでの距離及びレーザー光の照射角度から算出することができる。なお、各測定点Pの位置座標の算出は、パレット位置演算部17ではなく、光学センサ14のコントローラ(図示省略)で行うようにしてもよい。
【0036】
ここで、H形鋼からなる各柱部23は、進入空間24側のフランジ面23a、進入空間24の反対側のフランジ面23b、及び、フランジ面23a、23bをつなぐウェブ面23cを有する。本実施形態のパレット20の位置検出処理では、進入空間24に面するフランジ面23a上の点である内法点の位置データに基づいて、パレット20の位置を演算する。このため、複数の測定点Pから内法点を抽出する必要がある。ステップS2~S11では、複数の測定点Pから内法点を抽出するための各処理を行っており、本発明の内法点抽出工程及び内法点抽出処理に相当する。
【0037】
測定点Pのうち測定点P0(図5参照)は、光学センサ14のレーザー光が各柱部23には照射されず、対象のパレット20以外の物体に照射されることで得られた測定点である。このような測定点P0の位置データは、パレット20の位置を検出する上で特に必要はない。そこで、図5に示すように、パレット位置演算部17は、各柱部23に対して、柱部23を含む第1領域A1を設定する(ステップS2)。なお、ステップS2をステップS1の前に実行してもよい。各第1領域A1は、GNSSによるパレット20の位置情報及び記憶部18に記憶されているパレット20の寸法情報等に基づいて、柱部23を確実に含むことができるように柱部23よりも広めに設定される。
【0038】
各第1領域A1に含まれない測定点P0(図5では白丸で図示)を排除し、各第1領域A1に含まれる測定点P1(図5では黒丸で図示)のみを演算対象とすることで、演算負荷を低減することができる。なお、パレット20の置き場は基本的に決まっていることが多いので、第1領域A1は以前に設定したデータを流用できる場合がある。このような場合に備えて、第1領域A1に関する設定データを記憶部18に記憶しておき、次回以降はこの設定データを流用するようにしてもよい。あるいは、一度パレット20の位置検出に成功した後は、2回目以降の第1領域A1の設定は、前回のパレット20の位置検出結果に基づいて行ってもよい。
【0039】
内法点の抽出は、各第1領域A1を順番に探索することによって行われる。探索が済んでいない第1領域A1が残っている場合は(ステップS3でNO)、未探索の第1領域A1の中から1つの第1領域A1を選択する(ステップS4)。
【0040】
図6に示すように、パレット位置演算部17は、選択した第1領域A1内で、最も進入空間24側の測定点P1を含むように第2領域A2を設定し(ステップS5)、第2領域A2内の測定点P1からなる点群を内法点の候補となる候補点群Gとする(ステップS6)。図6では、第1領域A1内の測定点P1のうち候補点群Gに含まれる測定点に符号P2を付しており、黒丸で図示している。
【0041】
第1領域A1内の測定点P1には、フランジ面23a上の内法点だけでなく、フランジ面23b上の点やウェブ面23c上の点も含まれる。そこで、第1領域A1内の測定点P1のうち、内法点である可能性が高い最も進入空間24に近い測定点P1を基準として第2領域A2を設定することで、候補点群Gを効率よく選び出しやすくなる。本実施形態では、第2領域A2は、最も進入空間24に近い測定点P1を中心とする、縦横が所定の長さの長方形の領域として設定される。例えば、縦(前後)の長さがLmax(フランジ面23aの前後の長さ)の2.5倍程度、横(左右)の長さがW(ウェブ面23cの左右の長さ)の0.5倍程度とすればよい。ただし、第2領域A2をどのように設定するかは適宜変更が可能である。
【0042】
次に、パレット位置演算部17は、候補点群Gに含まれる測定点P2の数Nが所定数N1(本実施形態ではN1=3)以上であるか否かを判断する(ステップS7)。N≧N1であった場合は(ステップS7でYES)、続けて、候補点群Gに含まれる測定点P2間の最大距離L、すなわち、候補点群Gに含まれる測定点P2のうち最も離れている2つの測定点P2の間の距離Lが所定値L1(本実施形態ではL1=Lmax/2)以上であるか否かを判断する(ステップS8)。L≧L1であった場合は(ステップS8でYES)、その候補点群Gに含まれる測定点P2を内法点として採用し(ステップS9)、後にパレット20の位置演算で利用するものとする。図7では、候補点群Gに含まれる測定点P2のうち、内法点として採用された測定点に符号P3を付しており、黒丸で図示している。
【0043】
N<N1であった場合(ステップS7でNO)、又は、L<L1であった場合(ステップS8でNO)は、その候補点群Gに含まれる測定点P2を内法点として採用せず(ステップS10)、パレット20の位置演算で利用しないものとする。N≧N1及びL≧L1という条件は、それぞれ本発明の所定条件に相当する。なお、上記のN1、L1は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
【0044】
ステップS4~S10の処理が完了したら、パレット位置演算部17は、その第1領域A1を探索済みとし(ステップS11)、ステップS3に戻る。未探索の第1領域A1が残っていれば(ステップS3でNO)、未探索の第1領域A1についてステップS4~S11を繰り返す。一方、全ての第1領域A1の探索が済んでいれば(ステップS3でYES)、内法点として採用された測定点P3から内法線(内法点を結ぶ直線)を近似直線として算出し(ステップS12)、その内法線に基づいてパレット20の位置を演算する(ステップS13)。ステップS12、S13は、本発明のパレット位置演算工程及びパレット位置演算処理に相当する。自動走行制御部16は、パレット位置演算部17によって算出されたパレット20の位置を参照しながら、搬送車10が進入空間24に適切に進入できるように自動走行制御を行う。
【0045】
(効果)
本実施形態では、複数の測定点Pから内法点を抽出する際に、まず、柱部23ごとに内法点の候補点群Gを選び出した後、各候補点群Gに含まれる測定点P2が内法点として妥当か否かを所定条件に基づいて判断する。つまり、内法点を抽出する際に左右の柱部23でペアリングを行うわけではなく、各柱部23の候補点群Gについて個別に内法点として妥当かどうかを判断することになる。このため、測定点Pの数が左右の柱部23で異なる場合でも利用できるデータ数が減るわけではなく、取得したデータを最大限に活用することができる。また、測定点Pが少ない状態でペアリングを行ったときに、誤った測定点を内法点として抽出してしまうという問題も回避できる。したがって、パレット20の位置を高い精度で検出可能となる。
【0046】
具体的に、図7及び図8を参照しつつ説明する。図7では、本実施形態で内法点として抽出された測定点P3を黒丸で図示している。一方、図8では、図4と同様に測定点Pが得られた場合に、従来のペアリングによって内法点として抽出された測定点P4を黒丸で図示している。
【0047】
図8から明らかなように、ペアリングを行うことにより、左右の柱部23で同数の測定点P4しか内法点として抽出されない。例えば、図8の右側の下から1番目~3番目の柱部23においては、ペアリングの相手となる左側の柱部23の測定点が少ないため、内法点として採用される測定点P4が限定されてしまっている。一方、本実施形態では、図7に示すように、各柱部23において個別に内法点が抽出されるので、多くの測定点P3を内法点として採用できる。また、従来だとペアリングさえ成立すれば内法点として採用されていたので、例えば、図8の一番右上の柱部23では、ウェブ面23c上の測定点P4が誤って内法点として採用されている。一方、本実施形態では、所定条件を課すことにより、内法点として不適切な測定点が採用されるのを抑えられる。
【0048】
本実施形態では、上記所定条件は、候補点群Gに含まれる測定点P2のうち最も離れている2つの測定点P2の間の距離Lが所定値L1以上という条件である。内法点として抽出された測定点P3から近似的に内法線を求める場合には、測定点P3は適度に散らばっていることが好ましく、測定点P3が密集していると近似の際に誤差が大きくなりやすい。そこで、上述のような条件を設けることにより、測定点P3がある程度散らばっていることを担保でき、内法線を精度よく求めることができる。
【0049】
本実施形態では、上記所定条件は、候補点群Gに含まれる測定点P2の数Nが所定数N1以上という条件である。内法点として抽出された測定点P3から内法線を近似的に求める場合には、測定点P3の数が少なすぎると近似の際に誤差が大きくなりやすい。そこで、上述のような条件を設けることにより、測定点P3の数を十分に確保でき、内法線を精度よく求めることができる。
【0050】
本実施形態では、複数の柱部23のそれぞれに対して柱部23を含む第1領域A1をパレット20の位置情報に基づいて設定し、第1領域A1から候補点群Gを選び出す。このように、候補点群Gを選び出す範囲を予め第1領域A1に限定しておくことで、柱部23とは無関係な測定点P0を演算から除外することができ、演算負荷を低減することができる。
【0051】
本実施形態では、第1領域A1に含まれる測定点P1のうち最も進入空間24に近い測定点P1を含むように第2領域A2を設定し、第2領域A2に含まれる測定点P2を候補点群Gとして選び出す。こうすれば、第1領域A1に含まれる測定点P1の中から、内法点である可能性が高い測定点P2を容易に選び出すことができる。
【0052】
(他の実施形態)
上記実施形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。
【0053】
上記実施形態では、第1領域A1及び第2領域A2を設定して、複数の測定点Pから候補点群Gを選び出した。しかし、候補点群Gを選び出すのに、第1領域A1及び第2領域A2を設定することは必須ではなく、他の方法で候補点群Gを選び出してもよい。
【0054】
上記実施形態では、候補点群Gに含まれる測定点P2を内法点として採用するのに妥当か否かを判断するための所定条件として、L≧L1及びN≧N1という2つの条件を課した。しかしながら、上記所定条件として、L≧L1及びN≧N1という2つの条件のうち何れか1つのみを課すようにしてもよいし、他の条件を採用してもよい。
【0055】
上記実施形態では、搬送車10に設けられた制御装置15で自動走行に関する制御及びパレット20の位置検出が行われるものとした。しかしながら、搬送車10の動作を制御する上位システムを別に設け、この上位システムによって自動走行に関する制御及び/又はパレット20の位置検出を行うようにしてもよい。この場合、制御装置15が、地図情報、パレット20の寸法情報等をオンタイムで上位システムから受信できるように構成してもよい。
【0056】
上記実施形態では、全ての第1領域A1の探索が終わってから、内法線を算出し、それに基づいて搬送車10をパレット20に進入させるものとした。しかしながら、例えば、手前からいくつかまでの第1領域A1のみを探索し、その結果から内法線を算出し、搬送車10を多少前進させてから、奥側の第1領域A1の探索を行うようにしてもよい。
【0057】
上記実施形態では、搬送車10が幅方向においてパレット20の中心からずれた状態、すなわち、光学センサ14が幅方向においてパレット20の中心からずれた状態で、パレット20の位置検出処理が実行される例について説明した。この場合、図4から明らかなように、光学センサ14から照射されるレーザー光の角度の関係で、一方(左側)の柱部23では得られる測定点Pが少なくなるものの、他方(右側)の柱部23では得られる測定点Pが多くなる。その結果、右側の柱部23については、多くの内法点を抽出でき、内法線をより正確に算出できた。これと同様の効果を狙って、光学センサ14を搬送車10の幅方向の中心ではなく、中心からずれた位置に配置してもよい。あえて光学センサ14の位置を幅方向においてずらしておくことによって、少なくとも左右一方の柱部23については、上述のように多くの内法点を抽出しやすくなる。少なくとも左右何れか一方の内法線を精度よく算出できれば、パレット20の位置検出精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0058】
10:搬送車
15:制御装置
20:パレット
21:台部
22:脚部
23:柱部
24:進入空間
P、P1、P2、P3:測定点
A1:第1領域
A2:第2領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8