(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027362
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/015 20060101AFI20240222BHJP
B41J 2/045 20060101ALI20240222BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20240222BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
B41J2/015
B41J2/045
B41J2/14 611
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130104
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】風岡 健司
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056EB13
2C056EB37
2C056EC42
2C056EC73
2C056EC77
2C056ED03
2C056EE02
2C056FA04
2C056FA13
2C056FB10
2C056HA58
2C057AF30
2C057AG33
2C057AL22
2C057AM15
2C057AM16
2C057AR04
2C057AR08
2C057AR16
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】インクヘッドのノズル面と記録媒体との距離が変化する場合にインク滴の着弾位置のずれを抑制すること。
【解決手段】プリンタ10は、テーブル35に載置された記録媒体5とノズル65が形成されたノズル面68との距離である印刷距離Hを測定する高さ検出センサ50と、インクヘッド60を制御する制御装置80と、を備え、制御装置80は、駆動周期毎に、第1の駆動パルスP1と、第2の駆動パルスP2と、を少なくとも有する基準駆動信号SPを生成する駆動信号生成回路82と、高さ検出センサ50によって測定された印刷距離Hごとに、第2の駆動パルスP2の駆動電圧を増加して基準駆動信号SPを補正する駆動信号補正回路84と、印刷距離Hごとに、印刷距離Hに対応する補正された基準駆動信号の一部または全部をインクヘッド60の圧電素子66に供給する駆動信号供給回路86と、を備えている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体が載置される載置台と、
前記載置台に載置された前記記録媒体に向けてインク滴を吐出するノズルと、前記ノズルが形成されたノズル面とを有するインクヘッドと、
前記載置台に載置された前記記録媒体と前記ノズル面との距離である印刷距離を測定するセンサと、
前記インクヘッドを制御する制御装置と、を備え、
前記インクヘッドは、
内部にインクが貯留される圧力室が形成されたケースと、
前記ケースに設けられ、前記圧力室の一部を区画する区画板と、
前記区画板に連結され、電気信号が供給されると変形するアクチュエータと、
前記ケースに形成され、前記圧力室と連通する前記ノズルと、を備え、
前記制御装置は、
駆動周期毎に、前記圧力室を膨張および収縮させることにより第1のインク滴を吐出するための第1の駆動パルスと、前記圧力室を膨張および収縮させることにより前記第1のインク滴より小さい第2のインク滴を吐出するための第2の駆動パルスと、を少なくとも有する基準駆動信号を生成する駆動信号生成回路と、
前記センサによって測定された前記印刷距離ごとに、前記第2の駆動パルスの駆動電圧を増加して前記基準駆動信号を補正する駆動信号補正回路と、
前記印刷距離ごとに、前記印刷距離に対応する補正された前記基準駆動信号の一部または全部を前記アクチュエータに供給する駆動信号供給回路と、を備えている、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記駆動信号生成回路は、前記圧力室を膨張および収縮させることにより前記第2のインク滴より小さい第3のインク滴を吐出するための第3の駆動パルスを含み、
前記駆動信号補正回路は、前記センサによって測定された前記印刷距離ごとに、前記第3の駆動パルスの駆動電圧を増加して前記基準駆動信号を補正する、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記第3の駆動パルスは、前記第2の駆動パルスより前方に位置し、
前記第1の駆動パルスは、前記第2の駆動パルスより後方に位置する、請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記載置台は上下方向に移動可能に構成され、
前記制御装置は、
前記センサによって測定された前記印刷距離ごとに、前記載置台の上下方向の位置を調整する高さ調整回路と、
前記インクヘッドを制御して、調整された前記載置台に載置されたテスト用紙上に前記駆動電圧を補正する補正値が設定されたテストパターンを印刷するパターン印刷回路と、を備え、
前記駆動信号補正回路は、前記補正値を用いて前記基準駆動信号を補正する、請求項1から3のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記センサによって測定された前記印刷距離の数が4以上の場合には、前記駆動信号補正回路は、前記印刷距離のうち最も距離が短い最小印刷距離と、最も距離が長い最大印刷距離と、前記最小印刷距離と前記最大印刷距離との中間である中間印刷距離とでそれぞれ前記基準駆動信号を補正し、かつ、前記印刷距離が前記最小印刷距離、前記中間印刷距離および前記最大印刷距離以外のときには、前記最小印刷距離、前記中間印刷距離および前記最大印刷距離にそれぞれ対応する補正された前記基準駆動信号を線形補間することにより、前記基準駆動信号を補正し、
前記高さ調整回路は、前記中間印刷距離となるように前記載置台の上下方向の位置を調整する、請求項4に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記中間印刷距離は、前記最小印刷距離と前記最大印刷距離との中央である、請求項5に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載のように、インクが貯留される圧力室、圧力室の一部を区画する区画板、区画板に連結されたアクチュエータ、および、圧力室に連通するノズルを備えたインクヘッドと、アクチュエータに駆動信号を供給することによりアクチュエータを駆動する制御装置と、を備えたインクジェットプリンタが知られている。
【0003】
上記インクジェットプリンタでは、制御装置がアクチュエータに駆動パルス信号(以下、駆動パルスという。)を供給すると、アクチュエータが変形し、それに伴って区画板が変形する。これにより、圧力室の容積が増加または減少し、圧力室内のインクの圧力が変化する。この圧力の変化に伴い、ノズルからインクが吐出される。吐出されたインクはインク滴となって飛翔し、記録紙などの記録媒体に着弾する。その結果、記録紙上に1つのドットが形成される。そして、このようなドットを記録紙上に多数形成することにより、画像などが形成される。上記インクジェットプリンタでは、1つのドットを形成するための駆動周期内に複数の駆動パルスを有する駆動信号を生成する、所謂、マルチドット方式によってドットのサイズの調整が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-131677号公報
【特許文献2】特開2010-142978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記インクジェットプリンタで用いられる記録媒体は多岐にわたり、その厚みは様々である。このため、ノズルが形成されたノズル面と記録媒体との距離である印刷距離が記録媒体によって変化する場合がある。印刷距離が長くなると、ノズルから吐出されたインク滴の着弾位置がずれてしまい、形成される画像の品質が低下する虞がある。
【0006】
そこで、特許文献2に記載のように、印刷距離の変化に合わせて駆動パルスの生成タイミングをずらすことでインクの噴射のタイミングを変更し、インク滴の着弾位置を補正することが考えられる。ところが、特許文献1のようにマルチドット方式によってドットのサイズの調整が行われるインクジェットプリンタに対して特許文献2のように駆動パルスごとに印刷距離に応じて生成タイミングをずらすことを適用すると、インクの振動周期が変わるためインク滴の吐出が不安定になり画像の品質が低下する虞がある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、インクヘッドのノズル面と記録媒体との距離が変化する場合にインク滴の吐出が不安定になることなくインク滴の着弾位置のずれを抑制することができるインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は、ノズルから吐出されるインク滴のサイズ(即ち記録媒体に形成されるドットのサイズ)ごとに着弾可能距離が大きく違うこと、インク滴のサイズが小さいほど着弾位置のずれが大きいこと、インク滴のサイズが大きいほど着弾位置のずれが小さいこと、そして、駆動電圧を変化させることによりインクの振動周期が変わらず安定してインク滴を吐出することができることに着目し、印刷距離に応じてインク滴を吐出するための駆動電圧を増加することで、インク滴の吐出が不安定になることなく着弾位置のずれを抑制することができることを見出した。
【0009】
本発明に係るインクジェットプリンタは、記録媒体が載置される載置台と、前記載置台に載置された前記記録媒体に向けてインク滴を吐出するノズルと、前記ノズルが形成されたノズル面とを有するインクヘッドと、前記載置台に載置された前記記録媒体と前記ノズル面との距離である印刷距離を測定するセンサと、前記インクヘッドを制御する制御装置と、を備えている。前記インクヘッドは、内部にインクが貯留される圧力室が形成されたケースと、前記ケースに設けられ、前記圧力室の一部を区画する区画板と、前記区画板に連結され、電気信号が供給されると変形するアクチュエータと、前記ケースに形成され、前記圧力室と連通する前記ノズルと、を備えている。前記制御装置は、駆動周期毎に、前記圧力室を膨張および収縮させることにより第1のインク滴を吐出するための第1の駆動パルスと、前記圧力室を膨張および収縮させることにより前記第1のインク滴より小さい第2のインク滴を吐出するための第2の駆動パルスと、を少なくとも有する基準駆動信号を生成する駆動信号生成回路と、前記センサによって測定された前記印刷距離ごとに、前記第2の駆動パルスの駆動電圧を増加して前記基準駆動信号を補正する駆動信号補正回路と、前記印刷距離ごとに、前記印刷距離に対応する補正された前記基準駆動信号の一部または全部を前記アクチュエータに供給する駆動信号供給回路と、を備えている。
【0010】
本発明に係るインクジェットプリンタによると、載置台に載置された記録媒体とノズル面との距離である印刷距離をセンサによって測定することができる。そして、制御装置の駆動信号補正回路は、センサによって測定された印刷距離ごとに、第2のインク滴を吐出するための第2の駆動パルスの駆動電圧を増加して基準駆動信号を補正する。ここでは、第2のインク滴より大きい第1のインク滴は着弾位置のずれが相対的に小さいため、基準のインク滴として用いられている。そして、駆動信号供給回路は、印刷距離ごとに、印刷距離に対応する補正された基準駆動信号の一部または全部をアクチュエータに供給する。これにより、印刷距離が変化する場合であっても第2のインク滴の着弾位置のずれを抑制することができる。このように、駆動電圧を増加させることにより着弾位置のずれを抑制するため、インク滴の振動周期が変わらず安定してインクを吐出することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、インクヘッドのノズル面と記録媒体との距離が変化する場合にインク滴の吐出が不安定になることなくインク滴の着弾位置のずれを抑制することができるインクジェットプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るプリンタの斜視図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係るフロントカバーが開いた状態のプリンタの正面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係るフロントカバーおよびケースを取り外した状態のプリンタの平面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係るインクヘッドの一部の断面図である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係るプリンタの構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、一実施形態に係る基準駆動信号の波形図である。
【
図7】
図7は、一実施形態に係る記録媒体とノズル面との印刷距離を示す正面図である。
【
図8】
図8は、テスト用紙に印刷されたテストパターンを示す図である。
【
図9】
図9は、補正された基準駆動信号の波形図の一例である。
【
図10】
図10は、補正された基準駆動信号の波形図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るインクジェットプリンタ(以下プリンタとする)の実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0014】
図1は、本実施形態に係るプリンタ10の斜視図である。プリンタ10は、記録媒体5(
図2参照)に印刷を行う。以下の説明では、プリンタ10を正面から見たときに、プリンタ10から遠ざかる方を前方、プリンタ10に近づく方を後方とする。左、右、上、下とは、プリンタ10を正面から見たときの左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味するものとする。また、図面中の符号Yは主走査方向を示している。ここでは、主走査方向Yは左右方向である。符号Xは副走査方向を示している。ここでは、副走査方向Xは前後方向であり、平面視において主走査方向Yと直交している。符号Zは上下方向を示している。上下方向Zは、正面視において主走査方向Yと直交している。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0015】
本実施形態において用いられる記録媒体5は、例えば、記録紙や転写紙などの平面シートであってもよいし、携帯電話ケースなどの各種ケース、小型電子機器、キーホルダやフォトフレームやペンなどの部品小物、日用品、アクセサリなどの立体物であってもよい。記録媒体5を形成する材料は、普通紙やインクジェット用印刷紙などの紙類はもちろんのこと、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)共重合体などの樹脂類、アルミニウムやステンレス鋼などの金属類、カーボン、陶器、セラミック、ガラス、ゴム、皮革、木材などであってもよい。本実施形態のプリンタ10では、記録媒体5として凹凸形状を有する立体物が好ましく用いられる。
【0016】
図1に示すように、プリンタ10は、箱状に形成された筐体12を備えている。筐体12には、内部空間12Sが形成されている。筐体12は、ベース部材13と、ケース15と、フロントカバー23と、操作パネル25とを含む。
図2に示すように、ベース部材13は、底壁13Aと、左側壁13Lと、右側壁13Rと、支持壁13Tとを備えている。底壁13Aは、主走査方向Yおよび副走査方向Xに延びる。左側壁13Lは、上下方向Zおよび副走査方向Xに延びる。右側壁13Rは、上下方向Zおよび副走査方向Xに延びる。右側壁13Rは、左側壁13Lより右方に配置されている。左側壁13Lおよび右側壁13Rは、底壁13Aに設けられている。支持壁13Tは、主走査方向Yに延びる。支持壁13Tは、左側壁13Lおよび右側壁13Rに支持されている。ケース15は、ベース部材13に取り付けられている。ケース15の前部には、開口28が形成されている。フロントカバー23は、ケース15の開口28を開閉自在に設けられている。ここでは、フロントカバー23は、後端を軸に回転可能なように、ケース15に支持されている。フロントカバー23を上方に回転させることによって、筐体12の内部空間12Sと外部空間とが連通される。内部空間12Sは、後述するインクヘッド60(
図2参照)によって記録媒体5に印刷が行われると共に後述する高さ検出センサ50(
図2参照)によって印刷距離H(
図7参照)が測定される空間である。このように、内部空間12Sがケース15およびフロントカバー23によって囲まれて形成されていることによって、印刷中や測定中に外部空間の塵および埃が内部空間12Sに入り込み難く、かつ、後述する紫外線照射装置41、42(
図2参照)から照射された光が外部空間に漏れ難い。
【0017】
図1に示すように、フロントカバー23の前部および上部には、窓23Aが設けられている。窓23Aは、例えば、透明のアクリル板によって形成されている。窓23Aには、外部空間の光(例えば紫外線)が内部空間12Sに到達しないように処理が施されている。ユーザは、窓23Aから筐体12の内部を視認することが可能である。
【0018】
操作パネル25は、ケース15に設けられている。操作パネル25は、ケース15の上面右側に設けられている。操作パネル25は、ユーザが画像の印刷や紫外線照射装置41、42(
図2参照)から照射される光の照射強度の設定(変更)や後述するテストパターン印刷や印刷距離の測定や補正値の入力に関する操作を行うパネルである。操作パネル25には、例えば、光沢感の有無などの印刷の種類、解像度、印刷の状況などの印刷に関する情報等が表示される表示画面25A、および、印刷や記録媒体5に関する情報等を設定するための入力ボタン25Bなどが備えられている。
【0019】
次に、プリンタ10の内部の構成について説明する。
図2に示すように、プリンタ10は、ガイドレール18と、キャリッジ20と、インクヘッド60と、紫外線照射装置41、42と、高さ検出センサ50と、制御装置80とを備えている。ガイドレール18は、ケース15内に配置されている。
図3に示すように、ガイドレール18は、ベース部材13の支持壁13Tに固定され、主走査方向Yに延びている。高さ検出センサ50は、センサの一例である。
【0020】
図2に示すように、キャリッジ20には、インクヘッド60と、紫外線照射装置41、42と、高さ検出センサ50とが搭載される。キャリッジ20は、ガイドレール18に摺動自在に設けられている。プリンタ10は、キャリッジ移動機構21を備えている。キャリッジ20は、キャリッジ移動機構21により、ガイドレール18に沿って主走査方向Yに往復移動する。キャリッジ移動機構21は、制御装置80によって制御される。キャリッジ移動機構21は、左側のプーリ21Lと、右側のプーリ21Rと、左側のプーリ21Lおよび右側のプーリ21Rに巻きかけられた無端状のベルト21Aと、左側のプーリ21Lに接続されたキャリッジモータ21Bとを備えている。ベルト21Aは、主走査方向Yに延びる。ベルト21Aは、キャリッジ20の背面上部に固定されている。ここでは、キャリッジモータ21Bが駆動して、左側のプーリ21Lが回転することで、左側のプーリ21Lおよび右側のプーリ21R間においてベルト21Aが走行する。これにより、キャリッジ20は主走査方向Yに移動する。キャリッジ20が主走査方向Yに移動することに伴い、キャリッジ20に搭載されたインクヘッド60、紫外線照射装置41、42および高さ検出センサ50は主走査方向Yに移動する。
【0021】
図2に示すように、キャリッジ20には、複数のインクヘッド60が搭載されている。
図4に示すように、インクヘッド60は、後述するテーブル35(
図2参照)に載置された記録媒体5に光硬化性インク(即ち光硬化性を有するインク。例えば、紫外線硬化インク。)を吐出するノズル65と、ノズル65が形成されたノズル面68とを有する。インクヘッド60は、記録媒体5に向かってノズルからインク滴を吐出し、記録媒体5上にインクのドットを形成するものである。このドットが多数並べられることにより、記録媒体5上に画像などが形成される。インクヘッド60は、それぞれ、可撓性を有するインクチューブ(図示せず)によって、ケース15内に収容されたインクカートリッジ34(
図2参照)と連通されている。インクカートリッジ34には、それぞれ、光硬化性インクが貯留されている。ここでは、3つのインクヘッド60がキャリッジ20に搭載されている。ただし、インクヘッド60の個数は3個に限定されない。
【0022】
図4に示すように、インクヘッド60は、開口61aを有する中空のケース61と、開口61aを塞ぐようにケース61に取り付けられた区画板62とを備えている。ケース61には、内部にインクが貯留される圧力室63が形成されている。区画板62は圧力室63の一部を区画している。区画板62は、圧力室63の内側および外側に弾性変形可能なものである。区画板62は、圧力室63の容積を増加および減少させるように変形可能に構成されている。区画板62は、典型的には樹脂フィルムである。
【0023】
図4に示すように、ケース61の側壁には、インクが流入するインク流入口64が形成されている。なお、インク流入口64は圧力室63と連通していればよく、インク流入口64の位置は何ら限定されない。圧力室63には、インク流入口64を通じてインクカートリッジ34からインクが供給され、一時的に所定量のインクが貯留される。ノズル面68は、ケース61の下部に形成されている。ノズル65は、圧力室63と連通している。ノズル65内部のインクの液面(自由表面)がメニスカス65aを形成している。
【0024】
図4に示すように、インクヘッド60は、圧電素子66を備えている。圧電素子66は、アクチュエータの一例である。圧電素子66は、区画板62に連結されている。より詳細には、圧電素子66は、区画板62のうち圧力室63側の面と反対側の面に連結されている。圧電素子66の一部は、ケース61に設けられた固定部材69に固定されている。圧電素子66は、フレキシブルケーブル67を介して制御装置80に接続されている。圧電素子66には、フレキシブルケーブル67を介して電気信号が供給される。本実施形態において、圧電素子66は、圧電材料と導電層とを交互に積層した積層体である。圧電素子66は、制御装置80から電気信号を受けると膨張または収縮し、区画板62を圧力室63の外側または内側に弾性変形させるように機能する。ここでは、縦振動モードのピエゾ素子(PZT)を採用している。縦振動モードのPZTは、上記積層方向に伸縮自在であり、例えば放電すると収縮し、充電すると伸長するようになっている。ただし、圧電素子66の形式は特に限定されない。
【0025】
インクヘッド60では、例えば、圧電素子66の電位を基準電位(中間電位)から上昇させることによって、圧電素子66が積層方向に伸長(膨張)する。これにより、区画板62が圧力室63の内側に弾性変形し、圧力室63が収縮する。なお、圧力室63が収縮するとは、区画板62の変形により圧力室63の容積が小さくなることをいう。これにより、圧力室63内のインクが加圧され、インク滴となってノズル65から吐出される。その後、圧電素子66の電位を基準電位(中間電位)から下降させることによって、圧電素子66が収縮する。すると、これに追従して区画板62が圧力室63の外側に弾性変形し、圧力室63が膨張する。なお、圧力室63が膨張するとは、区画板62の変形により圧力室63の容積が大きくなることをいう。これにより、圧力室63内が減圧されてインク流入口64から圧力室63内にインクが流入する。なお、基準電位では、圧電素子66は駆動せず、ノズル65からインクは吐出しないし、圧力室63にインクは流入しない。
【0026】
紫外線照射装置41、42は、光(典型的には紫外線)を照射する。紫外線照射装置41、42は、記録媒体5に吐出された光硬化性インク(ここでは紫外線硬化インク)に向けて光(ここでは紫外線)を照射して光硬化性インクを硬化させる。照射強度は制御装置80によって制御される。光硬化性インクに紫外線照射装置41、42から光が照射されることによって光硬化性インクが硬化されて、記録媒体5上に画像が形成される。
図2に示すように、紫外線照射装置41、42は、後述するテーブル35より上方に配置されている。紫外線照射装置41は、インクヘッド60より左方に配置されている。紫外線照射装置42は、インクヘッド60より右方に配置されている。
【0027】
図2に示すように、プリンタ10は、所謂、フラットベッドタイプのプリンタである。プリンタ10は、キャリッジ20より下方に配置されたテーブル35と、第1テーブル移動機構37と、第2テーブル移動機構38とを備えている。テーブル35、第1テーブル移動機構37および第2テーブル移動機構38は、内部空間12Sに設けられている。テーブル35は、載置台の一例である。テーブル35には、記録媒体5が載置される。テーブル35は、第1テーブル移動機構37によって、上下方向Zに移動可能に構成されている。テーブル35は、第2テーブル移動機構38によって、副走査方向Xに移動可能に構成されている。テーブル35は、インクヘッド60より下方に配置される。テーブル35は、左側壁13Lより右方かつ右側壁13Rより左方に配置される。
【0028】
図2に示すように、第1テーブル移動機構37は、高さ調整部材37aと、第1モータ39A(
図5参照)とを備えている。高さ調整部材37aは、テーブル35の下面に設けられている。高さ調整部材37aは、第1モータ39Aに接続されている。第1モータ39Aは、制御装置80と電気的に接続されており、制御装置80によって制御される。第1モータ39Aが駆動すると、高さ調整部材37aの高さが変化して、テーブル35の高さが調整される。即ち、第1テーブル移動機構37は、テーブル35を上下方向Zに移動させる。
【0029】
図3に示すように、第2テーブル移動機構38は、スライドレール38a、38bと、搬送部材38cと、第2モータ39B(
図5参照)とを備えている。スライドレール38a、38bは、副走査方向Xに延びている。搬送部材38cは、スライドレール38a、38bに対して摺動自在に設けられている。搬送部材38cの上方には、高さ調整部材37a(
図2参照)を介してテーブル35が支持されている。第2モータ39Bは、制御装置80と電気的に接続されており、制御装置80によって制御される。第2モータ39Bが駆動すると、スライドレール38a、38bに沿って搬送部材38cが移動する。これにより、テーブル35が、副走査方向Xに移動する。即ち、第2テーブル移動機構38は、テーブル35に載置された記録媒体5を副走査方向Xに移動させる。
【0030】
高さ検出センサ50は、テーブル35に載置された記録媒体5の高さを測定する。即ち、高さ検出センサ50は、テーブル35に載置された記録媒体5とインクヘッド60のノズル面68との上下方向Zの距離である印刷距離H(
図7参照)を測定する。高さ検出センサ50は、例えば、非接触型のセンサである。高さ検出センサ50は、例えば、反射型のレーザ変位センサである。本実施形態では、高さ検出センサ50は、紫外線照射装置41の左方に配置されているが、高さ検出センサ50の配置位置は特に限定されない。
【0031】
図5に示すように、制御装置80は、操作パネル25と、キャリッジ移動機構21のキャリッジモータ21Bと、第1テーブル移動機構37の第1モータ39Aと、第2テーブル移動機構38の第2モータ39Bと、インクヘッド60と、紫外線照射装置41、42と、高さ検出センサ50と、通信可能に接続されている。制御装置80は、これらの動作を制御する。制御装置80は、典型的にはコンピュータである。制御装置80は、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器からの印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU)と、CPUが実行するプログラムを格納したROMと、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAMと、上記プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置とを備えている。
【0032】
図5に示すように、制御装置80は、駆動信号生成回路82と、駆動信号補正回路84と、駆動信号供給回路86と、印刷距離測定回路87と、高さ調整回路88と、パターン印刷回路90と、を備えている。駆動信号供給回路86が圧電素子66に供給する信号のことを、供給信号と称する。供給信号は、駆動信号生成回路82が生成する基準駆動信号の一部または全部、あるいは、駆動信号補正回路84によって補正された基準駆動信号の一部または全部からなる信号である。なお、駆動信号生成回路82、駆動信号補正回路84、駆動信号供給回路86、印刷距離測定回路87、高さ調整回路88およびパターン印刷回路90のハードウェア構成は何ら限定されず、従来のものと同じでよい。
【0033】
駆動信号生成回路82は、インクヘッド60を駆動するための基準駆動信号を生成する。基準駆動信号は、複数の駆動パルスを有する。駆動パルスは、典型的には、電圧を上昇させて圧力室63を収縮させる波形要素と、電圧を維持して圧力室63の状態を保つ波形要素と、電圧を降下させて圧力室63を膨張させる波形要素と、を含む波形である。
図6に示すように、本実施形態の基準駆動信号SPは、1つの駆動周期において、第1の駆動パルスP1と、第2の駆動パルスP2と、第3の駆動パルスP3とを含む。
【0034】
図6は、一実施形態に係る基準駆動信号SPの波形図である。横軸tは時間を表し、縦軸Vは電位を表す。txは1駆動周期を表す。駆動信号生成回路82は、
図6に示すような基準駆動信号SPを駆動周期tx毎に繰り返し生成するように構成されている。基準駆動信号SPは、1駆動周期tx内に、第1の駆動パルスP1、第2の駆動パルスP2および第3の駆動パルスP3を有する。第1の駆動パルスP1は、第2の駆動パルスP2より後方に位置する(生成される)。第3の駆動パルスP3は、第2の駆動パルスP2より前方に位置する(生成される)。本実施形態では、後述するように、基準駆動信号SPは、第1の駆動パルスP1を発生させて、ノズル65から第1のインク滴を吐出させる。これにより、記録媒体5上に1つの大ドットを形成することができる。また、基準駆動信号SPは、第2の駆動パルスP2を発生させて、ノズル65から第2のインク滴を吐出させる。これにより、記録媒体5上に1つの中ドットを形成することができる。第2のインク滴は、第1のインク滴より小さい。さらに、基準駆動信号SPは、第3の駆動パルスP3を発生させて、ノズル65から第3のインク滴を吐出させる。これにより、記録媒体5上に1つの小ドットを形成することができる。第3のインク滴は、第2のインク滴より小さい。
【0035】
図6に示すように、第1の駆動パルスP1は、基準電位V0から第1最大電位V1Aまで上昇する前側第1上昇波形T11と、第1最大電位V1Aを維持する第1最大電位維持波形T12と、第1最大電位V1Aから第1最小電位V1Bまで下降する第1下降波形T13と、第1最小電位V1Bを維持する第1最小電位維持波形T14と、第1最小電位V1Bから基準電位V0まで上昇する後側第1上昇波形T15とを含む。第1の駆動パルスP1によって、ノズル65から所定の吐出速度で第1のインク滴が吐出される。
【0036】
図6に示すように、第2の駆動パルスP2は、基準電位V0から第2最大電位V2Aまで上昇する前側第2上昇波形T21と、第2最大電位V2Aを維持する第2最大電位維持波形T22と、第2最大電位V2Aから第2最小電位V2Bまで下降する第2下降波形T23と、第2最小電位V2Bを維持する第2最小電位維持波形T24と、第2最小電位V2Bから基準電位V0まで上昇する後側第2上昇波形T25とを含む。第2の駆動パルスP2によって、ノズル65から所定の吐出速度で第2のインク滴が吐出される。第2最大電位V2Aは、第1最大電位V1Aより小さい。第2最小電位V2Bは、第1最小電位V1Bと同じである。第2の液滴をノズル65から吐出させるために圧電素子66に印加される駆動電圧は、第1の液滴をノズル65から吐出させるために圧電素子66に印加される駆動電圧よりも小さい。
【0037】
図6に示すように、第3の駆動パルスP3は、基準電位V0から第3最大電位V3Aまで上昇する前側第3上昇波形T31と、第3最大電位V3Aを維持する第3最大電位維持波形T32と、第3最大電位V3Aから第3最小電位V3Bまで下降する第3下降波形T33と、第3最小電位V3Bを維持する第3最小電位維持波形T34と、第3最小電位V3Bから基準電位V0まで上昇する後側第3上昇波形T35とを含む。第3の駆動パルスP3によって、ノズル65から所定の吐出速度で第3のインク滴が吐出される。第3最大電位V3Aは、第2最大電位V2Aより小さい。第3最小電位V3Bは、第2最小電位V2Bより大きい。第3の液滴をノズル65から吐出させるために圧電素子66に印加される駆動電圧は、第2の液滴をノズル65から吐出させるために圧電素子66に印加される駆動電圧よりも小さい。
【0038】
駆動信号補正回路84は、高さ検出センサ50によって測定された印刷距離Hごとに、第2の駆動パルスP2および第3の駆動パルスP3の少なくともいずれか一方の駆動電圧を増加して基準駆動信号SPを補正する。駆動信号補正回路84は、後述するテストパターンTP(
図8参照)の補正値を用いて基準駆動信号SPを補正する。後述するように、駆動信号補正回路84は、高さ検出センサ50によって測定された印刷距離Hの数が4以上の場合には、印刷距離Hのうち最も距離が短い最小印刷距離と、最も距離が長い最大印刷距離と、最小印刷距離と最大印刷距離との中間である中間印刷距離とでそれぞれ基準駆動信号SPを補正する。駆動信号補正回路84は、印刷距離Hが最小印刷距離、中間印刷距離および最大印刷距離以外のときには、最小印刷距離、中間印刷距離および最大印刷距離でそれぞれ補正された基準駆動信号を線形補間することにより、基準駆動信号SPを補正する。
【0039】
駆動信号供給回路86は、印刷距離Hごとに、基準駆動信号SPおよび印刷距離Hに対応する補正された基準駆動信号のいずれかの一部またはいずれかの全部をインクヘッド60の各圧電素子66に供給する。圧電素子66に供給する駆動パルスを適宜選択することにより、1駆動周期中にインクヘッド60のノズル65から吐出されるインクの液量(体積)を変更することができる。これにより、記録媒体5上に形成されるインクのドットのサイズを変更することができる。本実施形態に係るプリンタ10では、サイズの異なる3種類のドットを形成することができる。
【0040】
印刷距離測定回路87は、高さ検出センサ50によってテーブル35に載置された記録媒体5とインクヘッド60のノズル面68との印刷距離H(
図7参照)を測定する。印刷距離測定回路87は、キャリッジモータ21Bおよび第2モータ39Bを制御して、印刷距離Hを測定する。印刷距離Hの測定は、例えば、テストパターンTP(
図8参照)の印刷開始前に記録媒体5がテーブル35に載置された状態でキャリッジ20を主走査方向Yに移動させると共にテーブル35を副走査方向Xに移動させることによって行われる。これにより、高さ検出センサ50が記録媒体5の上を通過して印刷距離Hを測定することができる。
図7に示す記録媒体5では、高さ検出センサ50によって第1印刷距離HA、第2印刷距離HB、第3印刷距離HCおよび第4印刷距離HDの4つの印刷距離Hが測定される。
【0041】
高さ調整回路88は、高さ検出センサ50によって測定された印刷距離Hごとに、テーブル35の上下方向Zの位置を調整する。即ち、高さ調整回路88は、高さ検出センサ50によって測定された印刷距離Hごとに、ノズル面68とテーブル35に載置されたテスト用紙6(
図8参照)との上下方向Zの距離が印刷距離Hとなるように、テーブル35の上下方向Zの位置を調整する。高さ調整回路88は、第1モータ39Aを制御してテーブル35の高さを調整する。なお、高さ調整回路88は、テスト用紙6に後述するテストパターンTP(
図8参照)を印刷する際に印刷距離Hごとにテーブル35の上下方向Zの位置を調整するように構成されており、記録媒体5に画像等を印刷する際には印刷距離Hごとにテーブル35の上下方向Zの位置を調整しない。即ち、記録媒体5に画像等を印刷する際には、補正された基準駆動信号を使用することでインク滴の着弾位置のずれを抑制するのであり、印刷中はテーブル35の高さを変更しない。後述するように、高さ検出センサ50によって測定された印刷距離HごとにテストパターンTPを印刷するため、1つの印刷距離Hに対してテストパターンTPが印刷された後、他の1つの印刷距離Hとなるようにテーブル35の上下方向Zの位置を調整する。なお、高さ調整回路88は、測定された印刷距離Hが4つ以上の場合には、テストパターンTPを印刷するに際して、印刷距離Hのうち最も距離が短い最小印刷距離(例えば印刷距離HA)、最も距離が長い最大印刷距離(例えば印刷距離HD)、および、最小印刷距離と最大印刷距離との中間(好ましくは中央)である中間印刷距離(例えば印刷距離HM)となるように、テーブル35の上下方向Zの位置を調整する。即ち、
図7に示す例では、印刷距離HBおよび印刷距離HCではテストパターンTPの印刷を行わなくてもよい。
【0042】
パターン印刷回路90は、インクヘッド60を制御して、高さ調整回路88によって調整されたテーブル35に載置されたテスト用紙6(
図8参照)上に駆動電圧を補正する補正値が設定されたテストパターンTP(
図8参照)を印刷する。テストパターンTPは、基準駆動信号SPを用いて印刷される。パターン印刷回路90は、インクヘッド60、キャリッジモータ21Bおよび第2モータ39Bを制御する。なお、テスト用紙6は、凹凸のない記録紙等の平面シートである。なお、
図8に示すテストパターンTPは、印刷距離HDのときに印刷されたものである。ここで、本願発明者は、種々検討した結果、印刷距離Hごとに第2の液滴を吐出するための第2の駆動パルスP2の駆動電圧および第3の液滴を吐出するための第3の駆動パルスP3の駆動電圧を適宜増加させることで、第2の液滴および第3の液滴の着弾位置のずれを抑制することを見出した。
【0043】
図8に示すように、テストパターンTPは、複数の目盛り群C1~C5を含む。各目盛り群C1~C5は、それぞれ第1目盛り線L1と、第2目盛り線L2と、第3目盛り線L3とを有している。第1目盛り線L1は、キャリッジ20が主走査方向Yに右方から左方に移動しているときにノズル65から吐出される第2の液滴によって形成される。第2目盛り線L2は、キャリッジ20が主走査方向Yに右方から左方に移動しているときにノズル65から吐出される第1の液滴によって形成される。第3目盛り線L3は、キャリッジ20が主走査方向Yに右方から左方に移動しているときにノズル65から吐出される第3の液滴によって形成される。なお、
図8では、第1目盛り線L1が第2の液滴によって形成されたことを明確にするために「M」を、第2目盛り線L2が第1の液滴によって形成されたことを明確にするために「L」を、第3目盛り線L3が第3の液滴によって形成されたことを明確にするために「S」をそれぞれ表示しているが、実際には「M」「L」「S」は印刷されない。第2目盛り線L2を形成する第1の液滴は比較的着弾位置のずれが小さいため基準として適している。このため、第2目盛り線L2は、第1目盛り線L1より後方、かつ、第3目盛り線L3より前方に形成することが好ましい。第2目盛り線L2の前端は、第1目盛り線L1の後端より前方に位置する。第2目盛り線L2の後端は、第3目盛り線L3の前端より後方に位置する。即ち、第2目盛り線L2は、第1目盛り線L1および第3目盛り線L3と一部が重なり得るように印刷される。例えば、テスト用紙6が載置されたテーブル35を後方から前方に移動させる場合には、第1目盛り線L1、第2目盛り線L2および第3目盛り線L3の順に形成される。
【0044】
図8に示すように、目盛り群C1~C5ごとに、第1目盛り線L1、第2目盛り線L2および第3目盛り線L3における駆動電圧の増加量が異なる。本実施形態では、基準駆動信号SPの駆動電圧を基準としたときに、隣り合う目盛り群C1~C5において、駆動電圧が0.2V異なる。例えば、目盛り群C1は基準駆動信号SPの駆動電圧より0.2V高く、目盛り群C5は基準駆動信号SPの駆動電圧より1.0V高い。なお、駆動電圧の間隔は0.2Vに限定されない。目盛り群C1~C5の第1目盛り線L1の前方には、それぞれ異なる数字が印刷される。これらの数字は、目盛り群C1~C5の一部として印刷されるものである。これら数字は、駆動電圧の増加量を表す補正値である。ただし、これはプリンタ10における設定上のことであり、実際の駆動電圧の増加量のことではない。この数字における「1」は、例えば、駆動電圧を「0.2V」増加することに相当する。即ち、数字が「1」増えるごとに駆動電圧が「0.2V」増加する。例えば、数字が「5」の場合には、駆動電圧が「1.0V」増加する。
【0045】
図8に示す例では、目盛り群C4において、第3目盛り線L3と第2目盛り線L2とが主走査方向Yで同じ位置である。これにより、第3の液滴を吐出させる駆動パルスP3については、
図9に示すように、第3最大電位V3Aから電位を0.8V高くすることで、駆動パルスP3の駆動電圧を増加させる。また、目盛り群C3において、第1目盛り線L1と第2目盛り線L2とが主走査方向Yで同じ位置である。これにより、第2の液滴を吐出させる駆動パルスP2については、
図9に示すように、第2最大電位V2Aから電位を0.6V高くすることで、駆動パルスP2の駆動電圧を増加させる。上述のように、駆動信号補正回路84は、印刷距離HDについては駆動パルスP2の駆動電圧を0.6V、駆動パルスP3の駆動電圧を0.8V増加して基準駆動信号SPを補正する。このように、駆動信号補正回路84は、テスト用紙6に印刷されたテストパターンTPの補正値を用いて基準駆動信号SPを補正する。補正値は、例えばユーザが操作パネル25(
図1参照)を操作して入力される。
図9は、補正された基準駆動信号RSP1の一例である。なお、
図9には、参考として基準駆動信号SPの波形を破線で表示している。駆動信号供給回路86は、記録媒体5に画像等を印刷するときに、記録媒体5のうち印刷距離HDの部分については、補正された基準駆動信号RSP1をインクヘッド60の各圧電素子66に供給する。
【0046】
図10は、印刷距離HAのときに印刷されたテストパターン(図示せず)に基づいて補正された基準駆動信号RSP2を示す。
図10に示す例では、第3の液滴を吐出させる駆動パルスP3については、第3最大電位V3Aから電位を0.2V高くすることで、駆動パルスP3の駆動電圧を増加させ、第2の液滴を吐出させる駆動パルスP2については、第2最大電位V2Aから電位を0.4V高くすることで、駆動パルスP2の駆動電圧を増加させる。上述のように、駆動信号補正回路84は、印刷距離HAについては駆動パルスP2の駆動電圧を0.4V、駆動パルスP3の駆動電圧を0.2V増加して基準駆動信号SPを補正する。なお、
図10には、参考として基準駆動信号SPの波形を破線で表示している。駆動信号供給回路86は、記録媒体5に画像等を印刷するときに、記録媒体5のうち印刷距離HAの部分については、補正された基準駆動信号RSP2をインクヘッド60の各圧電素子66に供給する。
【0047】
駆動信号補正回路84は、
図7に示す例では、印刷距離HBおよび印刷距離HCについては、印刷距離HDに対応する補正された基準駆動信号RSP1と、印刷距離HAに対応する補正された基準駆動信号RSP2と、中間印刷距離HMに対応する補正された基準駆動信号(図示せず)とを線形補間することにより、基準駆動信号SPを補正する。駆動信号供給回路86は、記録媒体5に画像等を印刷するときに、記録媒体5のうち印刷距離HBおよび印刷距離HCの部分については、線形補間によって補正された基準駆動信号(図示せず)をインクヘッド60の各圧電素子66に供給する。なお、線形補間によって補正された基準駆動信号は印刷距離Hごとに異なる。
図7に示す例では、記録媒体5に画像等を印刷する際に、駆動信号供給回路86は、印刷距離HAに対応する部分には補正された基準駆動信号RSP2を供給し、印刷距離HBに対応する部分には線形補間によって補正された基準駆動信号を供給し、印刷距離HCに対応する部分には線形補間によって補正された基準駆動信号(印刷距離HBで使用する信号とは異なる)を供給し、印刷距離HDに対応する部分には補正された基準駆動信号RSP1を供給する。
【0048】
以上のように、本実施形態のプリンタ10によると、テーブル35に載置された記録媒体5とノズル面68との距離である印刷距離Hを高さ検出センサ50によって測定することができる。そして、制御装置80の駆動信号補正回路84は、高さ検出センサ50によって測定された印刷距離Hごとに、第2のインク滴を吐出するための第2の駆動パルスP2の駆動電圧を増加して基準駆動信号SPを補正する。ここでは、第2のインク滴より大きい第1のインク滴は着弾位置のずれが相対的に小さいため、基準のインク滴として用いられている。そして、駆動信号供給回路86は、印刷距離Hごとに、印刷距離Hに対応する補正された基準駆動信号SPの一部または全部を圧電素子66に供給する。これにより、印刷距離Hが変化する場合であっても第2のインク滴の着弾位置のずれを抑制することができる。このように、駆動電圧を増加させることにより着弾位置のずれを抑制するため、インクの振動周期が変わらず安定してインク滴を吐出することができる。
【0049】
本実施形態のプリンタ10では、駆動信号生成回路82は、圧力室63を膨張および収縮させることにより第2のインク滴より小さい第3のインク滴を吐出するための第3の駆動パルスP3を含み、駆動信号補正回路84は、高さ検出センサ50によって測定された印刷距離Hごとに、第3の駆動パルスP3の駆動電圧を増加して基準駆動信号SPを補正する。上記態様によれば、印刷距離Hが変化する場合であっても第3のインク滴の着弾位置のずれを抑制することができる。
【0050】
本実施形態のプリンタ10では、第3の駆動パルスP3は、第2の駆動パルスP2より前方に位置し、第1の駆動パルスP1は、第2の駆動パルスP2より後方に位置する。小さいインク滴は印刷距離が長くなるほど着弾が遅くなり着弾位置のずれが大きくなるため、駆動電圧を増大させる必要がある。このため、最も小さい第3のインク滴を吐出するための第3の駆動パルスP3を最も前に位置させることにより、吐出開始時間を早くして着弾を早くすることができるため、駆動電圧の増加量を比較的抑えることができる。
【0051】
本実施形態のプリンタ10では、テーブル35は上下方向Zに移動可能に構成され、制御装置80は、高さ検出センサ50によって測定された印刷距離Hごとに、テーブル35の上下方向Zの位置を調整する高さ調整回路88と、インクヘッド60を制御して、調整されたテーブル35に載置されたテスト用紙6上に駆動電圧を補正する補正値が設定されたテストパターンTPを印刷するパターン印刷回路90と、を備え、駆動信号補正回路84は、補正値を用いて基準駆動信号SPを補正する。上記態様によれば、より精度よく基準駆動信号SPを補正することができる。
【0052】
本実施形態のプリンタ10では、高さ検出センサ50によって測定された印刷距離Hの数が4以上の場合には、駆動信号補正回路84は、印刷距離Hのうち最も距離が短い最小印刷距離HAと、最も距離が長い最大印刷距離HDと、最小印刷距離HAと最大印刷距離HDとの中間である中間印刷距離HMとでそれぞれ基準駆動信号SPを補正し、かつ、印刷距離Hが最小印刷距離HA、中間印刷距離HMおよび最大印刷距離HD以外のときには、最小印刷距離HA、中間印刷距離HMおよび最大印刷距離HDにそれぞれ対応する補正された基準駆動信号を線形補間することにより、基準駆動信号SPを補正し、高さ調整回路88は、中間印刷距離HMとなるようにテーブル35の上下方向Zの位置を調整する。上記態様によれば、記録媒体5が複雑な形状を有するため印刷距離Hの数が複数ある場合であっても、最小印刷距離HA、中間印刷距離HMおよび最大印刷距離HDでそれぞれ補正された基準駆動信号を線形補間することにより、基準駆動信号SPを容易に補正することができる。特に、印刷距離Hの数が多ければ多いほど、全ての印刷距離HごとにテストパターンTPを印刷しなくてもよいため、インクの消費量を抑えたり、ユーザの調整負担を軽減したりすることができる。
【0053】
本実施形態のプリンタ10では、中間印刷距離HMは、最小印刷距離HAと最大印刷距離HDとの中央である。上記態様によれば、より精度よく基準駆動信号SPを補正することができる。
【0054】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0055】
上述した実施形態では、高さ検出センサ50によって測定された印刷距離Hの数が4以上の場合には、駆動信号補正回路84は、線形補間により基準駆動信号SPを補正していたが、全ての印刷距離HについてテストパターンTPを印刷して基準駆動信号SPをそれぞれ補正してもよい。
【0056】
上述した実施形態では、線形補間に際して、印刷距離HDと印刷距離HAとの中央である印刷距離HMにおいてテストパターンTPを印刷していたが、中間印刷距離は印刷距離HDと印刷距離HAとの中央に限定されず、印刷距離HDと印刷距離HAとの間の任意の位置であってもよい。
【0057】
上述した実施形態では、高さ検出センサ50は、非接触型のセンサであったが、接触型のセンサであってもよい。
【0058】
上述した実施形態では、基準駆動信号SPは3つの駆動パルスを有していたが、これに限定されない。基準駆動信号SPは、2つの駆動パルスを有していてもよいし、4つ以上の駆動パルスを有していてもよい。
【符号の説明】
【0059】
5 記録媒体
6 テスト用紙
10 プリンタ(インクジェットプリンタ)
35 テーブル(載置台)
37 第1テーブル移動機構
38 第2テーブル移動機構
39A 第1モータ
39B 第2モータ
50 高さ検出センサ(センサ)
60 インクヘッド
62 区画板
63 圧力室
65 ノズル
66 圧電素子(アクチュエータ)
68 ノズル面
80 制御装置
82 駆動信号生成回路
84 駆動信号補正回路
86 駆動信号供給回路
87 印刷距離測定回路
88 高さ調整回路
90 パターン印刷回路
SP 基準駆動信号
RSP1 補正された基準駆動信号(HD)
RSP2 補正された基準駆動信号(HA)
P1 第1の駆動パルス
P2 第2の駆動パルス
P3 第3の駆動パルス