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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027366
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】設置型電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20240222BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
H02M3/00 Y
H05K7/20 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130110
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加古 有史
(72)【発明者】
【氏名】西村 桂
【テーマコード(参考)】
5E322
5H730
【Fターム(参考)】
5E322BA01
5E322BA03
5E322BA05
5E322BB03
5E322EA10
5H730AA15
5H730AS17
5H730BB81
5H730ZZ01
5H730ZZ07
5H730ZZ12
(57)【要約】
【課題】生産の複雑化および高コスト化を招くことなく、電気回路部品を冷却することが可能な設置型電力変換装置を提供する。
【解決手段】筐体と、筐体の内部空間の上下中央に配置され、交流電力を直流電力に変換して出力する電源ユニット部9と、を備える設置型電力変換装置であって、内部空間を、電源ユニット部9が配置された第1空間と、電源ユニット部9の上方の上方空間S2、電源ユニット部9の下方の下方空間S1、および接続空間S3、S4からなる第2空間と、に分離する隔壁部29と、第1空間に外部空気を取り込み、外部空気により電源ユニット部9を空冷させる空冷手段と、を備え、第2空間は、隔壁部29と筐体とで囲まれた密閉空間であり、第2空間には、内部空気を循環させる循環手段13、30が配置されていることを特徴とする。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面に設置される箱型の筐体と、
前記筐体の内部空間の上下中央に配置され、交流電力を直流電力に変換して出力する電源ユニット部と、
を備える設置型電力変換装置であって、
前記内部空間を、前記電源ユニット部が配置された第1空間と、前記電源ユニット部の上方の上方空間、前記電源ユニット部の下方の下方空間、および前記上方空間と前記下方空間とを接続する接続空間からなる第2空間と、に分離する隔壁部と、
前記第1空間に外部空気を取り込み、前記外部空気により前記電源ユニット部を空冷させる空冷手段と、を備え、
前記第2空間は、前記隔壁部と前記筐体とで囲まれた空間であり、前記第2空間には、内部空気を循環させる循環手段が配置されている
ことを特徴とする設置型電力変換装置。
【請求項2】
前記空冷手段は、
前記筐体の下部に設けられた吸気口と、
前記電源ユニット部の下方に設けられた空冷用ファンと、
前記筐体の上部に設けられた排気口と、を含み、
前記空冷用ファンは、前記電源ユニット部の下方に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の設置型電力変換装置。
【請求項3】
前記循環手段は、
前記接続空間に設けられた、前記上方空間と前記下方空間とを連通させるダクト部と、
前記下方空間の内部空気を前記上方空間に移動させる循環用ファンと、を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の設置型電力変換装置。
【請求項4】
前記筐体の外部に設けられた複数の充電ケーブルと、
前記直流電力を前記複数の充電ケーブルに分配するためのリレー回路が実装されたリレー基板と、を備え、
前記リレー基板は、前記上方空間に配置される
ことを特徴とする請求項3に記載の設置型電力変換装置。
【請求項5】
前記循環用ファンは、送出した前記内部空気が前記リレー基板の実装部品に直接当たるように、前記上方空間と前記接続空間との境界部分に配置される
ことを特徴とする請求項4に記載の設置型電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設置型電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気自動車やプラグインハイブリッド車等の電動車の車載バッテリを充電するために、充電スタンドと呼ばれる設置型電力変換装置が使用される。設置型電力変換装置は、設置面に設置される筐体と、筐体内に収容された電力変換のための電気回路部品とを備える。
【0003】
筐体内に収容された電気回路部品の冷却方法としては、空冷が一般的である。空冷を行うために、筐体には、外部から空気を取り入れるための吸気口と、電気回路部品によって暖められた空気を外部に排気するための排気口とが設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
空冷は、電気回路部品の冷却効果に優れている反面、筐体の内部に埃、水分、塩分等を取り込むことになるため、電気回路部品に悪影響(例えば、性能や信頼性の低下)を及ぼすおそれがある。
【0005】
この対策として、電気回路部品が搭載された基板全面にシリコンボンド等の封止材料を塗布することで、埃、水分、塩分等から電気回路部品を保護することができる。しかしながら、電気回路部品が搭載された全ての基板に対して上記の対策を行うことは、生産が複雑になり、コストアップを招くという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-50380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、生産の複雑化および高コスト化を招くことなく、電気回路部品を冷却することが可能な設置型電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る設置型電力変換装置は、
設置面に設置される箱型の筐体と、
前記筐体の内部空間の上下中央に配置され、交流電力を直流電力に変換して出力する電源ユニット部と、
を備える設置型電力変換装置であって、
前記内部空間を、前記電源ユニット部が配置された第1空間と、前記電源ユニット部の上方の上方空間、前記電源ユニット部の下方の下方空間、および前記上方空間と前記下方空間とを接続する接続空間からなる第2空間と、に分離する隔壁部と、
前記第1空間に外部空気を取り込み、前記外部空気により前記電源ユニット部を空冷させる空冷手段と、を備え、
前記第2空間は、前記隔壁部と前記筐体とで囲まれた空間であり、前記第2空間には、内部空気を循環させる循環手段が配置されていることを特徴とする。
【0009】
設置型電力変換装置の電気回路部品では、通常、電源ユニット部が最も発熱量が大きくなる。そこで、この構成では、電源ユニット部を第1空間に配置して空冷させる一方、隔壁部により第1空間とは分離した第2空間を形成し、第2空間に電源ユニット部以外の電気回路部品を配置可能にする。第2空間には、内部空気を循環させる循環手段が配置されているため、電気回路部品を冷却することが可能となり、当該電気回路部品にシリコンボンド等の封止材料を塗布する必要はなくなる。
【0010】
前記設置型電力変換装置において、
前記空冷手段は、
前記筐体の下部に設けられた吸気口と、
前記電源ユニット部の下方に設けられた空冷用ファンと、
前記筐体の上部に設けられた排気口と、を含み、
前記空冷用ファンは、前記電源ユニット部の下方に配置されるよう構成できる。
【0011】
前記設置型電力変換装置において、
前記循環手段は、
前記接続空間に設けられた、前記上方空間と前記下方空間とを連通させるダクト部と、
前記下方空間の内部空気を前記上方空間に移動させる循環用ファンと、を含むよう構成できる。
【0012】
前記設置型電力変換装置は、
前記筐体の外部に設けられた複数の充電ケーブルと、
前記直流電力を前記複数の充電ケーブルに分配するためのリレー回路が実装されたリレー基板と、を備え、
前記リレー基板は、前記上方空間に配置されるよう構成できる。
【0013】
前記設置型電力変換装置において、
前記循環用ファンは、送出した前記内部空気が前記リレー基板の実装部品に直接当たるように、前記上方空間と前記接続空間との境界部分に配置されるよう構成できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、生産の複雑化および高コスト化を招くことなく、電気回路部品を冷却することが可能な設置型電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る設置型電力変換装置の外観図であって、(A)は正面図、(B)は背面図、(C)は左側面図、(D)は右側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る設置型電力変換装置の電気回路部品のブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る設置型電力変換装置の筐体内部の斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る設置型電力変換装置の内部構造を示す背面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る設置型電力変換装置の第1空間(空冷空間)の説明図であって、(A)は正面図、(B)は背面図、(C)は左側面図、(D)は右側面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る設置型電力変換装置の第2空間(密閉空間)の説明図であって、(A)は正面図、(B)は背面図、(C)は左側面図、(D)は右側面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る循環用ファンとリレー基板との位置関係を示す図であって、(A)は左側面図、(B)は斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る設置型電力変換装置の実施形態について説明する。
【0017】
図1に、本発明の一実施形態に係る設置型電力変換装置1の外観図を示す。設置型電力変換装置1は、電気自動車やプラグインハイブリッド車等の電動車の車載バッテリを充電するための充電スタンドであって、設置面に設置される箱型の筐体2と、筐体2の内部空間に収容された電気回路部品と、複数(本実施形態では、2つ)の充電ケーブル3、4とを備える。
【0018】
筐体2は、設置面に設置される台座部2aと、台座部2a上に設けられた正面パネル2b、背面パネル2c、左側面パネル2d、右側面パネル2eおよび天井パネル2fを備える。充電ケーブル3は、左側面パネル2dの上部から筐体2の外部に引き出されている。充電ケーブル4は、右側面パネル2eの上部から筐体2の外部に引き出されている。充電ケーブル3、4の先端に設けられた充電コネクタは、正面パネル2bに収納される。
【0019】
正面パネル2bには、ユーザが操作可能に構成されたユーザインタフェース5が設けられている。ユーザインタフェース5は、操作ボタン等の操作部と、ディスプレイ等の表示部と、課金部とを備える。課金部は、設置型電力変換装置1の利用料金(充電料金)に関する課金の受付を行う。
【0020】
右側面パネル2eの下部には、筐体2内に外部の空気(以下、外部空気という。)を取り込むためのスリット状の吸気口6が設けられている。背面パネル2cの上部には、取り込んだ外部空気を排気するためのスリット状の排気口7が設けられている。背面パネル2cには、排気口7を覆うようにコの字型の金属板8が取り付けられており、排気口7から排気された外部空気は、金属板8の上下から排気される。
【0021】
筐体2の内部空間は、外部空気が通過する第1空間(空冷空間)と、第1空間から分離された第2空間(密閉空間)とに分けられる。第1空間は、第2空間よりも電気回路部品の冷却に適している。このため、設置型電力変換装置1では、発熱量が大きい電気回路部品を第1空間に配置し、発熱量が小さい電気回路部品を第2空間に配置する。
【0022】
図2に、設置型電力変換装置1の電気回路部品のブロック図を示す。設置型電力変換装置1は、入力端T1~T3と、出力端T4~T7と、電源ユニット部9と、入力部10と、リレー基板11とを備える。
【0023】
入力端T1~T3は外部の交流電源に接続され、外部の交流電源から交流電力が入力される。出力端T4、T5は充電ケーブル3に接続され、出力端T6、T7は充電ケーブル4に接続される。入力端T1~T3は筐体2の下部に設けられ、出力端T4~T7は筐体2の上部に設けられる。図2では、入力端T1~T3および出力端T4~T7を筐体2上に示しているが、入力端T1~T3は筐体2と入力部10の間に設けられてもよいし、出力端T4~T7は筐体2とリレー基板11の間に設けられてもよい。
【0024】
電源ユニット部9は、並列接続された複数(本実施形態では、5つ)の電源ユニット9-1~9-5で構成される。電源ユニット9-1は、矩形状の金属ケース内に収容された電気回路部品(AC/DC変換回路、DC/DC変換回路およびこれらを駆動させる各駆動回路)で構成され、入力された交流電力を直流電力に変換して出力する。AC/DC変換回路は、入力された交流電力の力率を改善しつつ、当該交流電力を直流電力に変換してDC/DC変換回路に出力する。DC/DC変換回路は、AC/DC変換回路から入力された直流電力を、所望の(例えば、電動車側から要求された)直流電力に変換する。DC/DC変換回路は、例えば、1次側スイッチング回路と、絶縁トランスと、2次側整流回路とで構成される。電源ユニット9-2~9-5は、電源ユニット9-1と同様の構成である。電源ユニット9-1~9-5は、それぞれ最大20[kW]の直流電力を出力可能に構成され、電源ユニット部9は、最大100[kW]の直流電力を出力可能に構成される。
【0025】
電源ユニット部9は、電気回路部品の中で発熱量が最も大きくなるため、第1空間に配置される。電源ユニット9-1~9-5において、電気回路部品(AC/DC変換回路、DC/DC変換回路および各駆動回路)が搭載された基板は、全面にシリコンボンド等の封止材料が塗布された状態で、金属ケース内に収容される。
【0026】
入力部10は、入力端T1~T3と電源ユニット部9との間に設けられた電気回路部品で構成され、少なくともブレーカ(例えば、漏電遮断器)を含む。入力部10は、電源ユニット部9よりも発熱量が小さくなる。入力部10は、第2空間に配置される。
【0027】
リレー基板11は、リレー回路を構成する複数のリレーが実装された回路基板である。リレー基板11のリレー回路は、電源ユニット部9と出力端T4~T7とを接続する電力線に介装され、電源ユニット部9の出力を充電ケーブル3、4の2系統に分配する。リレー基板11は、電源ユニット部9よりは発熱量が小さくなり、入力部10よりも発熱量が大きくなる。リレー基板11は、第2空間に配置される。
【0028】
設置型電力変換装置1は、2つの空冷用ファン12(12-1、12-2)と、1つの循環用ファン13とを備える。空冷用ファン12は第1空間に配置され、循環用ファン13は第2空間に配置される。空冷用ファン12、吸気口6および排気口7は、本発明の「空冷手段」に相当する。循環用ファン13は、第2空間内の空気(以下、内部空気という。)を循環させる。
【0029】
設置型電力変換装置1は、他の電気回路部品として、制御用電源14と、第1制御基板15と、第2制御基板16と、第3制御基板17と、パソコン18とを備える。これらの電気回路部品は、発熱量が小さいため、第2空間に配置される。
【0030】
制御用電源14は、直流の制御用電圧を生成し、生成した制御用電圧を第1制御基板15、第2制御基板16、第3制御基板17およびパソコン18に供給する。図2では、制御用電源14から直接、第1制御基板15、第2制御基板16、第3制御基板17およびパソコン18に制御用電圧を供給しているが、例えば、制御用電源14から第1制御基板15を経由して、第2制御基板16、第3制御基板17およびパソコン18に制御用電圧を供給してもよい。
【0031】
第1制御基板15は、メイン制御回路が実装された回路基板である。メイン制御回路は、電源ユニット9-1~9-5の割り当て制御を行う。具体的には、メイン制御回路は、電動車側から要求された指令値(例えば、充電電流指令値)および充電ケーブル3、4の使用状況に応じて、電源ユニット9-1~9-5の駆動/駆動停止の制御に関する第1制御信号と、リレー基板11のリレーのオン/オフ制御に関する第2制御信号とを、第2制御基板16に出力する。また、メイン制御回路は、空冷用ファン12の駆動制御も行う。
【0032】
第2制御基板16は、出力制御回路が実装された回路基板である。出力制御回路は、第1制御信号に基づいて電源ユニット9-1~9-5の駆動/駆動停止の制御を行うとともに、第2制御信号に基づいてリレー基板11のリレーのオン/オフ制御を行う。例えば、出力制御回路は、電源ユニット部9の出力が充電ケーブル3のみに分配されるようにリレー基板11のリレーを制御するとともに、電源ユニット9-1~9-5の少なくとも1つの電源ユニットを駆動させ、駆動中の電源ユニットに対して、充電ケーブル3から出力される充電電流の電流値を目標値(充電電流指令値)に一致させるための充電電流制御を行う。また、出力制御回路は、循環用ファン13の駆動制御も行う。
【0033】
第3制御基板17は、UI制御回路が実装された回路基板である。UI制御回路は、ユーザインタフェース5の制御、および電動車との通信(例えば、充電ケーブル3、4を介した電動車とのCAN通信)を行う。
【0034】
パソコン18は、記憶部と、演算部と、通信部(入出力部)と、これらを制御する制御部とで構成される。パソコン18は、ユーザインタフェース5との通信を行い、ユーザインタフェース5の動作状態のログ(例えば、操作部における操作のログ、課金部における課金のログ)を記憶する。
【0035】
図3に示すように、筐体2は、台座部2a上に設けられたフレーム19を備える。フレーム19は、台座部2aの上面に設けられた矩形状の下枠20と、下枠20の四隅に立設された4つの支柱21~24と、支柱21~24の上端に設けられた矩形状の上枠25とを備える。支柱21、22側に正面パネル2bが取り付けられ、支柱23、24側に背面パネル2cが取り付けられ、支柱21、23側に左側面パネル2dが取り付けられ、支柱22、24側に右側面パネル2eが取り付けられ、上枠25の上面側に天井パネル2fが取り付けられる。
【0036】
筐体2は、第1ダクト部26および第2ダクト部27を備える。第1ダクト部26は、フレーム19内の右下部に設けられ、吸気口6から取り込んだ外部空気の流路となる。第2ダクト部27は、第1ダクト部26の左側面の上部において、第1ダクト部26と連通する。第2ダクト部27は、左側面が支柱21、23に固定され、第1ダクト部26と同様に外部空気の流路となる。第2ダクト部27の上面には、2つの空冷用ファン12が設けられている。吸気口6から取り込まれた外部空気は、第1ダクト部26および第2ダクト部27を経由して空冷用ファン12に吸い込まれる。
【0037】
筐体2は、空冷用ファン12よりも上方の支柱23、24間に、第1支持部材28aおよび第2支持部材28bを備える。第1支持部材28aは、電源ユニット9-1~9-5の下面の背面側端部を支持し、第2支持部材28bは、電源ユニット9-1~9-5の背面の上面側端部を支持する。第2支持部材28bの上方に、背面パネル2cの排気口7が設けられる。
【0038】
第1ダクト部26および第2ダクト部27の上方には、筐体2の内部空間を、外部空気が通過する第1空間と、外部空気が通過しない第2空間とに分離する隔壁部29が設けられている。隔壁部29は、複数の隔壁29a~29gで構成される。複数の隔壁29a~29gは、一枚の金属板を折り曲げ加工したものでもよいし、複数枚の金属板を接合したものでもよい。
【0039】
隔壁29aは、排気口7よりも上方に位置し、第1空間の上端を画定する。隔壁29aの背面側の端面は、空気が通過しないように、シール部材を介して背面パネル2cに接している。隔壁29b、29cは、第2支持部材28bよりも上方に位置し、正面側において、循環用ファン13やリレー基板11を配置するためのスペースを確保し、背面側において、電源ユニット9-1~9-5とリレー基板11とを接続する電力線を配置するためのスペースを確保する。当該電力線は隔壁29cを貫通しているが、貫通部分には空気が通過しないようにシール部材が設けられている。
【0040】
隔壁29dは、電源ユニット9-1~9-5の正面側に位置する。隔壁29dの正面側の右側端部には、循環用ダクト部30(本発明の「ダクト部」に相当)が設けられている。循環用ダクト部30は、循環用ファン13の上端から隔壁29dの下端近傍まで延びている。循環用ダクト部30と、隔壁29dの循環用ダクト部30が設けられた部分(以下、隔壁29d’という。)により、第2空間の内部空気の流路が形成される。また、隔壁29dと正面パネル2bとの間も、内部空気の流路となる。循環用ダクト部30および循環用ファン13は、本発明の「循環手段」に相当する。
【0041】
隔壁29e~29gは、空冷用ファン12の正面側において、隔壁29dの下端と第1ダクト部26および第2ダクト部27の上面との間に位置する。隔壁29gの下端は、空気が通過しないように、第1ダクト部26および第2ダクト部27の上面に接している。また、隔壁部29の左側面は、空気が通過しないようにシール部材を介して左側面パネル2dに接し、隔壁部29の右側面は、同様にシール部材を介して右側面パネル2eに接している。
【0042】
このように、隔壁部29によって、筐体2の内部空間が第1空間と第2空間とに分離される。第2空間は、隔壁部29と筐体2とで囲まれた密閉空間であるが、完全な密閉空間である必要はない。例えば、隔壁29a~29gの境界部分や第1ダクト部26および第2ダクト部27の角部等に、設計上の寸法の誤差や組み立て加工時の誤差等による隙間が生じていてもよい。
【0043】
図4に、設置型電力変換装置1の内部構造の背面図を示す。同図に示すように、電気回路部品の中で発熱量が最も大きくなる電源ユニット9-1~9-5は、筐体2の内部空間の上下中央に配置される。より詳しくは、電源ユニット9-1~9-5は、第1支持部材28aと第2支持部材28bとの間において、第1空間に配置される。
【0044】
電源ユニット9-1~9-5の下方の第2空間(本発明の「下方空間」に相当)には、入力部10、制御用電源14、第1制御基板15、第3制御基板17およびパソコン18を含む電気回路部品が配置される。これらの電気回路部品は、第1ダクト部26の外周面または第2ダクト部27の外周面に取り付けられたり、第2ダクト部27の下方に設けられた保持部材31に取り付けられたりする。
【0045】
電源ユニット9-1~9-5の上方の第2空間(本発明の「上方空間」に相当)には、リレー基板11および第2制御基板16を含む電気回路部品が配置される。これらの電気回路部品は、隔壁部29またはフレーム19に取り付けられる。また、充電ケーブル3、4は、電源ユニット9-1~9-5の上方の第2空間から筐体2の外部に引き出されている。
【0046】
次に、図5を参照して、空冷空間である第1空間の冷却について説明する。図5において、ハッチングを施した部分は第1空間を示している。
【0047】
第1空間では、空冷用ファン12が駆動することにより、右側面下部(吸気口6)から取り込まれた外部空気が、第1ダクト部26および第2ダクト部27を経由して、空冷用ファン12に吸い込まれる。空冷用ファン12は電源ユニット部9の下方に配置されているため、空冷用ファン12から送出された外部空気は、電源ユニット部9に直接当たり、電源ユニット部9の冷却効果を高める。電源ユニット部9(電源ユニット9-1~9-5間の隙間を含む)を通過した外部空気は、背面上部(排気口7)から排気される。
【0048】
次に、図6を参照して、密閉空間である第2空間の冷却について説明する。図6において、ハッチングを施した部分は第2空間を示している。なお、循環用ダクト部30については、ハッチングを施すと見づらくなるため、ハッチングを施していない。
【0049】
第2空間は、電源ユニット部9の下方空間S1と、電源ユニット部9の上方空間S2と、電源ユニット部9の正面側の空間であって循環用ダクト部30内の第1接続空間S3と、電源ユニット部9の正面側の空間であって循環用ダクト部30外の第2接続空間S4とで構成される。第1接続空間S3および第2接続空間S4は、本発明の「接続空間」に相当し、下方空間S1と上方空間S2と接続する(連通させる)空間である。
【0050】
上方空間S2は、電源ユニット部9で発生した熱の影響を受けやすく、しかも、電源ユニット部9の次に発熱量が大きいリレー基板11が配置されている。このため、上方空間S2は下方空間S1よりも高温になる。換言すれば、下方空間S1の内部空気は、上方空間S2の内部空気よりも低温になる。また、下方空間S1は上方空間S2よりも容積が大きいため、下方空間S1の冷えた内部空気を循環させることで、電気回路部品(特に、リレー基板11)の冷却が可能となる。
【0051】
第2空間では、循環用ファン13が駆動することにより、下方空間S1の冷えた内部空気が、循環用ダクト部30内の第1接続空間S3を経由して、循環用ダクト部30の上端に設けられた循環用ファン13に吸い込まれる。循環用ファン13から上方空間S2に送出された内部空気は、上方空間S2に配置された電気回路部品(リレー基板11および第2制御基板16)を冷却する。上方空間S2の内部空気は、第2接続空間S4を経由して下方空間S1に移動する。このように、第2空間の内部空気は、下方空間S1→第1接続空間S3→上方空間S2→第2接続空間S4→下方空間S1と循環する。
【0052】
図7に、上方空間S2に配置されたリレー基板11と循環用ファン13との位置関係を示す。図7の(A)は左側面図であり、(B)は斜視図である。
【0053】
リレー基板11は、循環用ファン13の羽根の回転軸の近傍に、隔壁29bと平行に配置される。リレー基板11は、隔壁29bに設けられ複数の第1軸部材32の先端に取り付けられている。リレー基板11の正面側には、リレー回路を構成する複数のリレーRLが実装されるとともに、四隅に第2軸部材33が取り付けられている。第2軸部材33の先端には、リレー基板11よりも大きい基板34がリレー基板11と並行に取り付けられている。このようなリレー基板11と循環用ファン13との位置関係により、循環用ファン13から送出された内部空気をリレー基板11の実装部品(特に、リレーRL)に直接当てることができ、リレー回路の冷却効果を高めることができる。
【0054】
上記のとおり、設置型電力変換装置1では、電源ユニット部9を第1空間に配置して空冷させる一方、隔壁部29により第1空間とは分離した第2空間を形成し、第2空間に電源ユニット部9以外の電気回路部品を配置している。第2空間では、循環用ファン13により、下方空間S1の冷えた内部空気を上方空間S2に循環させるため、上方空間S2に配置したリレー基板11を含む電気回路部品を冷却することができる。また、第2空間に配置した電気回路部品にシリコンボンド等の封止材料を塗布する必要はなくなる。したがって、設置型電力変換装置1によれば、生産の複雑化および高コスト化を招くことなく、電気回路部品を冷却することができる。
【0055】
なお、電源ユニット部9は、設置型電力変換装置1の電気回路部品の中で、発熱量が最も大きいだけでなく、重量も最も大きい。このため、電源ユニット部9を筐体2の上部に配置すると、設置型電力変換装置1の耐震性が低下する。一方で、電源ユニット部9を筐体2の下部に配置すると、電源ユニット部9の上方の全ての電気回路部品が電源ユニット部9の熱の影響を受けるため、冷却の効果が低下してしまう。この点、設置型電力変換装置1では、電源ユニット部9を筐体2の上下中央に配置しているため、耐震性を低下させることなく、下方空間S1の冷えた内部空気により上方空間S2に配置したリレー基板11を含む電気回路部品を冷却することができる。
【0056】
以上、本発明に係る設置型電力変換装置の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0057】
本発明に係る設置型電力変換装置は、設置面に設置される箱型の筐体と、筐体の内部空間の上下中央に配置され、交流電力を直流電力に変換して出力する電源ユニット部と、を備える設置型電力変換装置であって、内部空間を、電源ユニット部が配置された第1空間と、電源ユニット部の上方の上方空間、電源ユニット部の下方の下方空間、および上方空間と下方空間とを接続する接続空間からなる第2空間と、に分離する隔壁部と、第1空間に外部空気を取り込み、外部空気により電源ユニット部を空冷させる空冷手段と、を備え、第2空間は、隔壁部と筐体とで囲まれた空間であり、第2空間には、内部空気を循環させる循環手段が配置されているのであれば、適宜構成を変更することができる。
【0058】
例えば、上記実施形態において、循環用ファン13の位置および個数は変更できる。例えば、複数の循環用ファン13を、第2接続空間S4と上方空間S2との境界に配置し、下方空間S1の冷えた内部空気を、第2接続空間S4を経由して上方空間S2に移動させてもよい。この場合、複数の循環用ファン13は、空冷用ファン12と同様にファンの羽根の回転軸が上下方向になるように配置することが好ましい。また、循環用ファン13の位置の変更に伴い、循環用ダクト部30の大きさも適宜変更することができる。
【0059】
本発明に係る設置型電力変換装置は、単一の充電ケーブルを備えていてもよいし、3つ以上の充電ケーブルを備えていてもよい。単一の充電ケーブルを備える場合、電源ユニット部の出力を分配するためのリレー回路が実装されたリレー基板は不要となる。
【0060】
第2空間における電気回路部品の配置は、適宜変更してもよいが、電気回路部品にリレー基板が含まれる場合、リレー基板を第2空間の上方空間に配置することが好ましい。また、第1空間に、電源ユニット部とともに他の電気回路部品を配置してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 設置型電力変換装置
2 筐体
2a 台座部
2b 正面パネル
2c 背面パネル
2d 左側面パネル
2e 右側面パネル
2f 天井パネル
3、4 充電ケーブル
5 ユーザインタフェース
6 吸気口
7 排気口
8 金属板
9 電源ユニット部
9-1~9-5 電源ユニット
10 入力部
11 リレー基板
12 空冷用ファン
13 循環用ファン
14 制御用電源
15 第1制御基板
16 第2制御基板
17 第3制御基板
18 パソコン
19 フレーム
20 下枠
21~24 支柱
25 上枠
26 第1ダクト部
27 第2ダクト部
28a 第1支持部材
28b 第2支持部材
29 隔壁部
29a~29g 隔壁
30 循環用ダクト部
31 保持部材
32 第1軸部材
33 第2軸部材
34 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7