(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002737
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】タイマー回路、オシレータ回路、半導体装置
(51)【国際特許分類】
H03K 3/02 20060101AFI20231228BHJP
H03K 3/354 20060101ALI20231228BHJP
H03K 3/355 20060101ALI20231228BHJP
H03K 17/28 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
H03K3/02 C
H03K3/354
H03K3/355
H03K3/02 P
H03K17/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102126
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】杉江 尚
【テーマコード(参考)】
5J055
5J300
【Fターム(参考)】
5J055AX39
5J055BX24
5J055DX22
5J055EX07
5J055EY01
5J055EY10
5J055EY17
5J055EY21
5J055EZ03
5J055EZ04
5J055EZ28
5J055EZ55
5J055EZ58
5J300AA02
5J300BB01
5J300DD02
5J300DD15
(57)【要約】
【課題】タイマー回路の電源電圧変動に起因する測定時間の変動を抑制する。
【解決手段】第1電流源CS1は、キャパシタC1を充電する。第2電流源CS2は、インバータ120の入力ノード122に電流I
2を供給する。カレントミラー回路110は、出力ノード114がインバータ120の入力ノード122と接続される。抵抗R1は、カレントミラー回路110の入力ノード112とキャパシタC1の間に接続される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャパシタと、
前記キャパシタを充電する第1電流源と、
インバータと、
前記インバータの入力ノードに電流を供給する第2電流源と、
出力ノードが前記インバータの前記入力ノードと接続されたカレントミラー回路と、
前記カレントミラー回路の入力ノードと前記キャパシタの間に接続された抵抗と、
を備える、タイマー回路。
【請求項2】
前記カレントミラー回路は、電界効果トランジスタで構成される、請求項1に記載のタイマー回路。
【請求項3】
チャンネル幅Wとチャンネル長Lの比W/Lは、前記インバータの出力が反転するときの前記カレントミラー回路の入力側トランジスタのゲートソース間電圧の変動が、動作保証温度範囲内で温度を変化させたときに、0.05V以内に収まるように規定される、請求項2に記載のタイマー回路。
【請求項4】
前記カレントミラー回路は、バイポーラトランジスタで構成される、請求項1に記載のタイマー回路。
【請求項5】
ひとつの半導体基板に一体集積化される、請求項1から4のいずれかに記載のタイマー回路。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載の2個のタイマー回路を備え、
前記2個のタイマー回路は、お互いの出力によってリセットされる、オシレータ回路。
【請求項7】
請求項1から4のいずれかに記載のタイマー回路と、
前記タイマー回路の前記インバータの出力に応答して、前記キャパシタを放電するリセット回路と、
を備える、オシレータ回路。
【請求項8】
請求項6に記載のオシレータ回路と、
前記オシレータ回路の出力信号によって駆動されるチャージポンプ回路と、
NMOSトランジスタを含むリニアレギュレータと、
前記チャージポンプ回路の出力電圧を受け、前記NMOSトランジスタのゲートにバイアス電圧を発生させる起動バイアス回路と、
を備える、半導体装置。
【請求項9】
請求項7に記載のオシレータ回路と、
前記オシレータ回路の出力信号によって駆動されるチャージポンプ回路と、
NMOSトランジスタを含むリニアレギュレータと、
前記チャージポンプ回路の出力電圧を受け、前記NMOSトランジスタのゲートにバイアス電圧を発生させる起動バイアス回路と、
を備える、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイマー回路に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路において、時間測定のためのタイマー回路が使用される。タイマー回路は、キャパシタと、キャパシタを充電する電流源と、キャパシタの電圧を所定のしきい値電圧と比較する電圧コンパレータを含む。
【0003】
電圧コンパレータとして、差動増幅器を含むオペアンプを利用すると、回路規模が大きくなり、また消費電力が増大する。小面積、低消費電力が要求されるアプリケーションでは、電圧コンパレータとして、インバータが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インバータを電圧コンパレータとして利用する場合、そのしきい値電圧は、インバータの電源電圧の中点電圧となる。したがって、電源電圧が変化するとしきい値電圧も変化する。この電圧コンパレータをオシレータに使用する場合、電源電圧が低下すると、発振周波数が上昇するという問題がある。
【0006】
本開示は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、電源電圧変動に起因する測定時間の変動が抑制されたタイマー回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の態様は、タイマー回路に関する。タイマー回路は、キャパシタと、キャパシタを充電する第1電流源と、インバータと、インバータの入力ノードに電流を供給する第2電流源と、出力ノードがインバータの入力ノードと接続されたカレントミラー回路と、カレントミラー回路の入力ノードとキャパシタの間に接続された抵抗と、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明あるいは本開示の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0009】
本開示のある態様によれば、電源電圧変動に起因する測定時間の変動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係るタイマー回路の回路図である。
【
図3】
図3は、比較技術に係るタイマー回路の回路図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るオシレータの回路図である。
【
図6】
図6は、MOSFETの温度特性を模式的に説明する図である。
【
図7】
図7は、入力側トランジスタのサイズが不適切であるときの、入力側トランジスタの電圧-電流特性を示す図である。
【
図8】
図8は、入力側トランジスタのサイズを最適化したときの、入力側トランジスタの電圧-電流特性を示す図である。
【
図9】
図9は、変形例に係るオシレータの回路図である。
【
図11】
図11は、オシレータを備える半導体装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用:いる場合がある。
【0012】
一実施形態に係るタイマー回路は、キャパシタと、キャパシタを充電する第1電流源と、インバータと、インバータの入力ノードに電流を供給する第2電流源と、出力ノードがインバータの入力ノードと接続されたカレントミラー回路と、カレントミラー回路の入力ノードとキャパシタの間に接続された抵抗と、を備える。
【0013】
キャパシタの電圧をVC1、カレントミラー回路の入力側トランジスタのしきい値電圧をVTH、抵抗の抵抗値をR1とするとき、抵抗およびカレントミラー回路の入力ノードに流れる電流I3は、
I3=(VC1-VTH)/R1
となる。カレントミラー回路のミラー比をKとするとき、カレントミラー回路の出力電流I4は、
I4=K×I3=K×(VC1-VTH)/R1
となる。第2電流源が生成する電流I2が、カレントミラー回路の出力電流I4と等しくなるとき、インバータの出力が反転する。したがって、インバータの出力が反転するときのキャパシタの電圧VC1(TH)、
VC1(TH)=I2×R1/K+VTH
となる。この電圧VC1(TH)は、インバータの電源電圧に依存しない一定値となる。したがって、このタイマー回路によれば、電源電圧に依存しない時間測定が可能となる。
【0014】
一実施形態において、カレントミラー回路は、電界効果トランジスタ(FET)で構成されてもよい。
【0015】
一実施形態において、チャンネル幅Wとチャンネル長Lの比W/Lは、インバータの出力が反転するときのカレントミラー回路の入力側トランジスタのゲートソース間電圧が、動作保証温度範囲内で温度を変化させたときに、0.1V以内、より好ましくは0.05V以内の変動に収まるように規定される。これにより、測定時間の温度依存性を小さくできる。
【0016】
一実施形態において、カレントミラー回路は、バイポーラトランジスタで構成されてもよい。
【0017】
一実施形態において、タイマー回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0018】
一実施形態に係るオシレータ回路は、上述のいずれかのタイマー回路と、タイマー回路のインバータの出力に応答して、キャパシタを放電するリセット回路と、を備えてもよい。
【0019】
一実施形態に係るオシレータ回路は、2個のタイマー回路を備え、2個のタイマー回路は、お互いの出力によってリセットされてもよい。
【0020】
一実施形態に係る半導体装置は、上述のいずれかのオシレータ回路と、オシレータ回路の出力信号によって駆動されるチャージポンプ回路と、チャージポンプ回路の出力電圧を制御電極に受けるN型のトランジスタと、を備えてもよい。
【0021】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0022】
また図面に記載される各部材の寸法(厚み、長さ、幅など)は、理解の容易化のために適宜、拡大縮小されている場合がある。さらには複数の部材の寸法は、必ずしもそれらの大小関係を表しているとは限らず、図面上で、ある部材Aが、別の部材Bよりも厚く描かれていても、部材Aが部材Bよりも薄いこともあり得る。
【0023】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0024】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に接続された(設けられた)状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0025】
また本明細書において、電圧信号、電流信号などの電気信号、あるいは抵抗、キャパシタ、インダクタなどの回路素子に付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値、あるいは回路定数(抵抗値、容量値、インダクタンス)を表すものとする。
【0026】
図1は、実施形態に係るタイマー回路100の回路図である。タイマー回路100は、スタート信号\START(\は論理反転を表す)がアサート(たとえばロー)されてから、所定時間(測定時間)τ
MEASの経過後に、出力端子(出力ライン)104の信号OUTをアサート(たとえばハイ)する。
【0027】
タイマー回路100は、キャパシタC1、第1電流源CS1、第2電流源CS2、カレントミラー回路110、抵抗R1、インバータ120およびリセットトランジスタM3を備える。タイマー回路100の電源ライン102には、電源電圧VDDが供給されている。
【0028】
キャパシタC1は、一端が接地される。第1電流源CS1は、キャパシタC1の他端と接続されており、定電流I1をキャパシタC1にソースし、キャパシタC1を充電する。
【0029】
インバータ120は、電源ライン102と接地の間に接続されるハイサイドトランジスタM21およびローサイドトランジスタM22を含む。具体的には、ハイサイドトランジスタM21は、電源ライン102と出力ライン104の間に接続され、ローサイドトランジスタM22は、出力ライン104と接地の間に接続される。
【0030】
第2電流源CS2は、インバータ120の入力ノード122と接続される。第2電流源CS2は、インバータ120の入力ノード122に、電流I2をソースする。
【0031】
カレントミラー回路110は、入力ノード112に流れる電流をK倍(Kをミラー比という)し、折り返して出力ノード114からシンクする。カレントミラー回路110は、入力側トランジスタM11および出力側トランジスタM12を含む。カレントミラー回路110の出力ノード114は、インバータ120の入力ノード122と接続されている。
【0032】
抵抗R1は、カレントミラー回路110の入力ノード112とキャパシタC1の間に接続される。
【0033】
リセットトランジスタM3は、キャパシタC1と並列に接続されている。リセットトランジスタM3は、スタート信号\STARTがネゲート(ハイ)の間、オンであり、キャパシタC1を放電する。スタート信号\STARTがアサート(ロー)の間、リセットトランジスタM3はオフとなり、キャパシタC1が、第1電流源CS1によって充電可能な状態となる。
【0034】
以上がタイマー回路100の構成である。続いてその動作を説明する。
【0035】
図2は、
図1のタイマー回路100の動作波形図である。
図2には、スタート信号\START、キャパシタC1の電圧V
C1、抵抗R1に流れる電流I
3およびカレントミラー回路110の出力電流I
4、出力信号OUTが示される。
【0036】
時刻t0より前において、スタート信号\STARTがネゲートされており、リセットトランジスタM3がオンとなっている。これにより、キャパシタ電圧VC1は0Vに固定される。
【0037】
時刻t0にスタート信号\STARTがアサートされると、第1電流源CS1が生成する電流I1によってキャパシタC1が充電され、キャパシタ電圧VC1が時間とともに上昇する。
【0038】
キャパシタ電圧VC1が、カレントミラー回路110の入力側トランジスタM11のゲートソース間しきい値電圧VGS(th)を超えると、抵抗R1およびカレントミラー回路110の入力側に、電流I3が流れ始める。この電流I3は、以下の式で表される。
I3=(VC1-VGS(th))/R1
【0039】
図2では、説明の簡潔化のために、t
0~t
1の間、電流I
3をゼロとして示すが、実際には電流が流れてもよい。カレントミラー回路110の出力ノード114には、入力電流I
3のK倍の電流I
4が流れる。また、説明の簡潔化のために、キャパシタ電圧V
C1および電流I
3の傾きを一定として示すが、実際には、キャパシタ電圧V
C1は、電流I
1とI
3の差分によって充電されるため、直線とはならない。
【0040】
時刻t2より前では、I4<I2となっている。そのため、インバータ120の入力ノード122の電圧VINVはハイ(VDD)であり、したがってインバータ120の出力、つまりタイマー回路100の出力OUTは、ローである。
【0041】
時刻t3に、電流I4が電流I2を超えると(I4>I2)、インバータ120の入力ノード122の電圧VINVがロー(0V)となる。これにより、インバータ120の出力、つまりタイマー回路100の出力OUTがハイに遷移する。
【0042】
時刻t0~t2の時間が、タイマー回路100による測定時間τMEASとなる。時刻t2におけるキャパシタ電圧VC1(TH)は、
VC1(TH)=I2×R1/K+VGS(TH)
となる。
【0043】
キャパシタC1に着目すると、キャパシタ電圧VC1は、充電電流ICHG=I1-I3で充電される。したがって、
C1×(I2×R1/K+VGS(TH))=∫τICHG(t)dt
となる積分時間τが、測定時間τMEASとなる。
【0044】
以上がタイマー回路100の動作である。タイマー回路100の利点は、比較技術との対比によって明確となる。
【0045】
図3は、比較技術に係るタイマー回路100Rの回路図である。タイマー回路100Rは、キャパシタC1、第1電流源CS1、リセットトランジスタM3およびインバータ120を備える。
【0046】
キャパシタC1は、電流源CS1が生成する電流I1によって充電され、時間の経過とともに一定の傾きで増大する。そして、キャパシタ電圧VC1が、インバータ120のしきい値電圧まで達すると、出力OUTがハイからローに変化する。
【0047】
ここで、インバータ120のしきい値電圧は、電源電圧V
DDの1/2である。したがって、
図3のタイマー回路100Rでは、電源電圧V
DDが変動すると、測定時間τ
MEASが変化してしまう。
【0048】
これに対して、
図1のタイマー回路100は、測定時間τ
MEASが電源電圧V
DDに依存しないという利点を有する。
【0049】
続いてタイマー回路100の用途を説明する。タイマー回路100は、オシレータ回路に用いることができる。
【0050】
図4は、実施形態に係るオシレータ200Aの回路図である。オシレータ200Aは、第1タイマー回路100_1、第2タイマー回路100_2およびコントローラ回路210を備える。
【0051】
第1タイマー回路100_1および第2タイマー回路100_2は、上述のタイマー回路100と同じ構成を有している。第1タイマー回路100_1と第2タイマー回路100_2それぞれの測定時間τMEAS1,τMEAS2は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0052】
コントローラ回路210は、第1タイマー回路100_1の出力OUT1のアサートに応答して、第2タイマー回路100_2に対する第2スタート信号\START2をアサートし、第2タイマー回路100_2の出力OUT2のアサートに応答して、第1タイマー回路100_1に対する第1スタート信号\START1をアサートする。コントローラ回路210の出力CLKは、第1スタート信号\START1と第2スタート信号\START2の一方がアサートされる期間、第1レベル(たとえばハイ)、他方がアサートされる期間、第2レベル(たとえばロー)をとる。
【0053】
図5は、
図4のオシレータ200Aの動作波形図である。オシレータ200Aは、第1タイマー回路100_1と第2タイマー回路100_2が交互にアクティブとなり、2つの測定時間の和(τ
MEAS1+τ
MEAS2)を周期とするクロック信号CLKが生成される。
【0054】
続いてタイマー回路100の温度特性について説明する。タイマー回路100の測定時間τMEASは、カレントミラー回路110の温度特性の影響を受ける。
【0055】
図6は、MOSFETの温度特性を模式的に説明する図である。
図6には高低2つの温度における電圧-電流特性が示される。MOSFETのゲートドレイン間は結線され、ゲートソース間電圧Vgsは、ゲートドレイン間電圧Vdsと等しいものとする。横軸はゲートソース間電圧Vgs、縦軸はドレイン電流Idである。
【0056】
MOSFETは、以下の特性を有する。
(i)MOSFETのゲートソース間しきい値電圧V
GS(th)は、温度が高いほど、低くなり、したがってドレイン電流は流れやすくなる。
図6において、V
GS(th)はGmmax法で規定される電圧として説明している。
【0057】
(ii)MOSFETのコンダクタンスGm、すなわちゲート電圧Vgsに対するドレイン電流Idの傾き(dId/dVgs)は、温度が高いほど小さくなる。
【0058】
したがって、カレントミラー回路110の入力側トランジスタM11の動作点(ゲートソース間電圧すなわちゲートドレイン間電圧、すなわちカレントミラー回路110の入力ノード112の電圧)を定め、その動作点において、(i)と(ii)の温度特性がキャンセルするように、入力側トランジスタM11のチャンネル幅Wとチャンネル長Lの比W/Lを決めればよい。
【0059】
たとえば、インバータ120の出力が反転するときの入力側トランジスタのゲートソース間電圧Vgsが、動作保証温度範囲内で温度を変化させたときに、0.1V以内、より好ましくは0.05V以内の変動に収まるように規定することができる。
【0060】
図7は、入力側トランジスタM11のサイズが不適切であるときの、入力側トランジスタM11の電圧-電流特性を示す図である。動作点(すなわちインバータ120の出力が反転する点)は、I
3=5μAである。入力側トランジスタM11のサイズは、W/L=10μm/1μmである。このようにサイズが不適切であると、温度を-50℃、25℃、150℃と変化させたときに、動作点におけるゲートソース間電圧Vgsが、0.25~0.4V程度と0.1Vよりも広い範囲で変動してしまう。
【0061】
図8は、入力側トランジスタM11のサイズを最適化したときの、入力側トランジスタM11の電圧-電流特性を示す図である。動作点は、I
3=5μAである。入力側トランジスタM11のサイズは、W/L=10μm/10μmである。このようにサイズを最適化すると、温度を-50℃、25℃、150℃と変化させたときに、動作点におけるゲートソース間電圧Vgsの変動は、0.1Vの範囲となっており、具体的には0.05Vより小さい狭い範囲に収めることができる。
【0062】
図9は、変形例に係るオシレータ200Bの回路図である。オシレータ200Bは、上述のタイマー回路100と、リセット回路210Bを備える。リセット回路210Bは、たとえばワンショット回路であり、タイマー回路100の出力OUTがアサート(たとえばハイ)をトリガとして、所定のパルス幅T
ONを有するリセットパルスRSTを発生する。このリセットパルスRSTは、タイマー回路100にスタート信号\STARTとして入力される。
【0063】
図10は、
図9のオシレータ200Bの動作波形図である。リセットパルスRSTの周期Tpは、タイマー回路100の測定時間τ
MEASとリセットパルスRSTのパルス幅T
ONの和となる。
【0064】
なお、タイマー回路100を利用したオシレータ200の構成は、
図4や
図9のものに限定されない。続いて、タイマー回路100を利用して構成されるオシレータ200の用途を説明する。
【0065】
図11は、オシレータ200を備える半導体装置300の回路図である。半導体装置300は、低電圧保護(UVP:Under Voltage Protection)回路310、チャージポンプ回路320、レギュレータ回路330、起動バイアス回路340、基準電流源350、バンドギャップリファレンス回路352などを備える。
【0066】
半導体装置300の電源端子VCCには、外部の電源回路から外部電源電圧VCCが供給される。レギュレータ回路330は、外部電源電圧VCCを入力電圧として受け、所定の目標レベル(たとえば5V)に安定化される内部電源電圧VREG5を生成する。内部電源電圧VREG5は、基準電流源350やバンドギャップリファレンス回路352などの負荷回路に供給される。
【0067】
レギュレータ回路330は、ソースフォロア回路であり、NMOSトランジスタ332およびバイアス回路334を含む。バイアス回路334は、ツェナーダイオードDLZおよび抵抗R11を含む。バイアス回路334は、NMOSトランジスタ332のゲートに、ツェナーダイオードDLZのツェナー電圧Vzを発生させる。内部電源電圧VREG5は、
VREG5(REF)=Vz-VGS
を目標レベルとして安定化される。VGSは、NMOSトランジスタ332のゲートソース間電圧である。たとえばツェナー電圧Vzは、VREG5(REF)=5Vとなるように定められる。
【0068】
外部電源電圧VCCが、内部電源電圧VREG5の目標レベル(5V)、言い換えると、ツェナーダイオードDLZのツェナー電圧Vzよりも低い状態では、バイアス回路334は動作できない。この状態で、NMOSトランジスタ332を適切にバイアスするために、UVP回路310、オシレータ200およびチャージポンプ回路320が設けられる。
【0069】
UVP回路310は、外部電源電圧VCCを低電圧しきい値VUVPと比較し、VCC<VUVPである場合に、UVP信号をアサート(たとえばハイ)する。
【0070】
オシレータ200は、UVP信号がアサートされると、動作状態となり、クロック信号CLKを生成する。またUVP信号は、チャージポンプ回路320のイネーブル端子に供給される。チャージポンプ回路320は、UVP信号がアサートされるとイネーブル状態となり、クロック信号CLKと同期して、内部電源電圧VREG5を昇圧し、チャージポンプ電圧VCPを生成する。チャージポンプ電圧VCPは、内部電源電圧VREG5の目標レベルより高い。
【0071】
起動バイアス回路340は、チャージポンプ電圧VCPを電源として動作する。起動バイアス回路340は、NMOSトランジスタ332のゲートに起動電流ISTARTをソースする。起動電流ISTARTがツェナーダイオードDLZに流れることで、外部電源電圧VCCが低い状態でも、NMOSトランジスタ332のゲートに、ツェナー電圧Vzを発生させることができる。
【0072】
チャージポンプ回路320にクロック信号CLKを供給するオシレータ200を、実施形態に係るタイマー回路100を利用して構成することで、安定した周波数のクロック信号CLKを生成できる。
【0073】
(変形例)
実施形態では、カレントミラー回路110をMOSFETで構成したが、バイポーラトランジスタで構成してもよい。カレントミラー回路110以外の回路ブロック、たとえばインバータ120やリセットトランジスタM3、第1電流源CS1、第2電流源CS2などを、バイポーラトランジスタで構成してもよい。
【0074】
実施の形態にもとづき、具体的な用語を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0075】
100 タイマー回路
C1 キャパシタ
CS1 第1電流源
CS2 第2電流源
110 カレントミラー回路
112 入力ノード
114 出力ノード
M11 入力側トランジスタ
M12 出力側トランジスタ
120 インバータ
122 入力ノード
M21 ハイサイドトランジスタ
M22 ローサイドトランジスタ
R1 抵抗
M3 リセットトランジスタ
200 オシレータ
210 コントローラ
100_1 第1タイマー回路
100_2 第2タイマー回路
300 半導体装置
310 UVP回路
320 チャージポンプ回路
330 レギュレータ回路