(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027396
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】出力プログラム、出力方法および情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G06F 17/17 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
G06F17/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130163
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 健
(72)【発明者】
【氏名】引間 泰成
(72)【発明者】
【氏名】梅田 裕平
【テーマコード(参考)】
5B056
【Fターム(参考)】
5B056BB52
(57)【要約】
【課題】適切な解の選択を支援する。
【解決手段】実施形態の出力プログラムは、取得する処理と、フィッティングさせる処理と、計算する処理と、出力する処理とをコンピュータに実行させる。取得する処理は、パレートフロント上の複数の解を取得する。フィッティングさせる処理は、取得した複数の解に対してベジエ単体をフィッティングさせる。計算する処理は、フィッティングさせたベジエ単体上の複数のデータ点におけるベジエ単体上の勾配を計算する。出力する処理は、生成した複数のデータ点それぞれについて、計算した勾配に基づいたデータ点に対応する解の頑健性の評価情報を出力する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パレートフロント上の複数の解を取得し、
取得した前記複数の解に対してベジエ単体をフィッティングさせ、
フィッティングさせた前記ベジエ単体上の複数のデータ点における前記ベジエ単体上の勾配を計算し、
生成した前記複数のデータ点それぞれについて、計算した前記勾配に基づいた前記データ点に対応する解の頑健性の評価情報を出力する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする出力プログラム。
【請求項2】
前記出力する処理は、前記複数のデータ点をプロットした可視化画像において、前記複数のデータ点それぞれを前記評価情報に対応する表示態様で表示出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載の出力プログラム。
【請求項3】
前記出力する処理は、前記評価情報に対応した解の頑健性の強さを前記データ点の濃淡または前記データ点の大きさの表示態様で表示出力する、
ことを特徴とする請求項2に記載の出力プログラム。
【請求項4】
パレートフロント上の複数の解を取得し、
取得した前記複数の解に対してベジエ単体をフィッティングさせ、
フィッティングさせた前記ベジエ単体上の複数のデータ点における前記ベジエ単体上の勾配を計算し、
生成した前記複数のデータ点それぞれについて、計算した前記勾配に基づいた前記データ点に対応する解の頑健性の評価情報を出力する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする出力方法。
【請求項5】
パレートフロント上の複数の解を取得し、
取得した前記複数の解に対してベジエ単体をフィッティングさせ、
フィッティングさせた前記ベジエ単体上の複数のデータ点における前記ベジエ単体上の勾配を計算し、
生成した前記複数のデータ点それぞれについて、計算した前記勾配に基づいた前記データ点に対応する解の頑健性の評価情報を出力する、
処理を実行する制御部を含むことを特徴とする情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、出力プログラム、出力方法および情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、航空機やエンジン等の設計分野では、多目的最適化問題を解いて得られた解(設計候補)をもとに、設計値を選ぶ場合がある。多目的最適化問題は、複数の目的関数を同時に最適化する問題であり、各目的関数について適切なトレードオフ関係を与える最適解は1つに決まらない。このため、多目的最適化問題を解いて得られた解の中から設計値を選ぶ場合には、複数の解を多次元の空間にプロットした場合に得られる最適トレードオフ曲面(パレートフロント)を求めることが目標となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Bezier Simplex Fitting: Describing Pareto Fronts of´ Simplicial Problems with Small Samples in Multi-Objective Optimization、インターネット<URL:https://www.aaai.org/ojs/index.php/AAAI/article/view/4069>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、目的関数が多数ある場合、次元の呪いによってデータ(解)がスパースに分布する。このように解がスパースに分布する場合、パレートフロント上の複数の解をプロットするだけでは、ノイズなどによる値の変動に対する頑健性を見極めることが困難である。このため、ノイズに対して頑健な解を選ぶことが困難であるという問題がある。
【0005】
1つの側面では、適切な解の選択を支援できる出力プログラム、出力方法および情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの案では、出力プログラムは、取得する処理と、フィッティングさせる処理と、生成する処理と、計算する処理と、出力する処理とをコンピュータに実行させる。取得する処理は、パレートフロント上の複数の解を取得する。フィッティングさせる処理は、取得した複数の解に対してベジエ単体をフィッティングさせる。計算する処理は、フィッティングさせたベジエ単体上の複数のデータ点におけるベジエ単体上の勾配を計算する。出力する処理は、生成した複数のデータ点それぞれについて、計算した勾配に基づいたデータ点に対応する解の頑健性の評価情報を出力する。
【発明の効果】
【0007】
適切な解の選択を支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、多目的最適化の結果からの設計候補(解)の選択を説明する説明図である。
【
図2】
図2は、パレートフロントの可視化ができていない場合の問題点を説明する説明図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかる情報処理装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、入力情報の一例を説明する説明図である。
【
図5】
図5は、パレートフロントが単体的であることを説明する説明図である。
【
図6】
図6は、ベジエ単体の一例を説明する説明図である。
【
図7】
図7は、パレートフロントへのベジエ単体のフィッティングを説明する説明図である。
【
図8】
図8は、ベジエ単体のフィッティングの一例を説明する説明図である。
【
図9】
図9は、データ点の生成例を説明する説明図である。
【
図11】
図11は、可視化画像の一例を説明する説明図である。
【
図12】
図12は、可視化画像の一例を説明する説明図である。
【
図13】
図13は、実施形態にかかる情報処理装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、コンピュータ構成の一例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態にかかる出力プログラム、出力方法および情報処理装置を説明する。実施形態において同一の機能を有する構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、以下の実施形態で説明する出力プログラム、出力方法および情報処理装置は、一例を示すに過ぎず、実施形態を限定するものではない。また、以下の各実施形態は、矛盾しない範囲内で適宜組みあわせてもよい。
【0010】
図1は、多目的最適化の結果からの設計候補(解)の選択を説明する説明図である。
図1に示すように、設計分野において、ユーザは、多目的最適化問題を解いて得られたパレートフロント(図中の点線)上の解A1、A2(設計候補)の中から所望の解を選んで設計値として選択する。図示例では、評価指標(1)、評価指標(2)に関する2つの目的関数の最適化問題を解いて解A1、A2が得られている。
【0011】
解の選択において、評価指標(1)、評価指標(2)にノイズが含まれることがあることから、これらのノイズに対して頑健な解を選びたいというユーザからの要請がある。
【0012】
例えば、解A1は、評価指標(2)の値が少しずれると評価指標(1)の値は大きく悪化することから、ノイズに対してあまり頑健な解ではない。これに対し、解A2は、一方の評価指標が少しずれても、もう一方の評価指標があまり影響を受けないことから、ノイズに対して頑健な解である。
【0013】
図2は、パレートフロントの可視化ができていない場合の問題点を説明する説明図である。
図2に示すように、目的関数が多数ある場合、次元の呪いによってデータ(解)がスパースに分布する。このため、単に解をプロットして可視化した図では、一方の評価指標のずれに対して、もう一方の評価指標がどの程度影響を受けるかが分かりづらく、解の頑健性を評価することは難しい。
【0014】
実施形態にかかる情報処理装置では、パレートフロント上の複数の解に対してベジエ単体をフィッティングさせ、そのベジエ単体上に複数のデータ点を生成する。ついで、実施形態にかかる情報処理装置では、生成した複数のデータ点におけるベジエ単体上の勾配を計算し、生成した複数のデータ点それぞれについて、計算した勾配に基づいたデータ点に対応する解の頑健性の評価情報を出力する。これにより、実施形態にかかる情報処理装置では、解の頑健性を容易に判別することができ、適切な解の選択を支援可能となる。
【0015】
図3は、実施形態にかかる情報処理装置の機能構成例を示すブロック図である。
図3に示すように、情報処理装置1は、通信部10、入力部20、表示部30、記憶部40および制御部50を有する。この情報処理装置1としては、例えばPC(Personal Computer)などを適用できる。
【0016】
通信部10は、ネットワークを介して外部装置から各種のデータを受信する。通信部10は、通信装置の一例である。たとえば、通信部10は、後述する入力情報41の一部または全部を、外部装置から受信してもよい。
【0017】
入力部20は、情報処理装置1の制御部50に各種の情報を入力する入力装置である。入力部20は、キーボードやマウス、タッチパネル等に対応する。たとえば、入力部20は、ユーザからの入力操作により、後述する入力情報41の一部または全部を受け付ける。
【0018】
表示部30は、制御部50から出力される情報を表示する表示装置である。たとえば、表示部30は、情報処理装置1における処理結果などを表示する。
【0019】
記憶部40は、入力情報41および演算情報42を格納する。記憶部40は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)などの半導体メモリ素子や、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置に対応する。
【0020】
入力情報41は、情報処理装置1への入力に関する情報である。例えば、入力情報41には、多目的最適化問題の計算結果であり、パレートフロント上の複数の解が含まれる。
【0021】
図4は、入力情報41の一例を説明する説明図である。
図4に示すように、入力情報41には、f
1、f
2、f
3の3つの目的関数(評価指標)の最適化問題を解いたパレートフロント上の複数の解41aが含まれる。
【0022】
評価指標については、例えば、航空機の主翼形状に関する2目的最適化問題の場合は、空力抵抗係数、構造重量などが含まれる。また、ディーゼルエンジンの環境排出物に関する3目的最適化問題の場合は、NOx(窒素酸化物)、SFC(燃料消費率)、Soot(スス)が評価指標に含まれる。
【0023】
演算情報42は、情報処理装置1の演算処理により得られた各種データである。例えば、演算情報42には、入力情報41をもとにフィッティング部52、データ点生成部53、勾配計算部54等の処理により得られた結果が含まれる。具体的には、演算情報42には、ベジエ単体、ベジエ単体上の複数のデータ点、ベジエ単体上の勾配を示す勾配情報などが含まれる(詳細は後述する)。
【0024】
制御部50は、取得部51と、フィッティング部52と、データ点生成部53と、勾配計算部54と、出力部55とを有する。制御部50は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードワイヤードロジック等によって実現される。
【0025】
取得部51は、通信部10または入力部20を介して入力される、分析対象となる多目的最適化問題について解いたパレートフロント上の複数の解を取得する処理部である。パレートフロント上の複数の解は、例えば遺伝的アルゴリズム等の多目的最適化アルゴリズムを適用することにより求められたものである。取得部51は、取得したパレートフロント上の複数の解の情報(座標値など)を入力情報41として記憶部40に格納する。
【0026】
フィッティング部52は、取得部51により取得されたパレートフロント上の複数のベジエ単体42aに対して、ベジエ単体をフィッティングさせる処理部である。ここで、ベジエ単体とは、複数の制御点を用いて規定されるベジエ曲線を高次元に一般化したものを意味する。
【0027】
現実に現れるパレートフロントは、しばしば単体的である。
図5は、パレートフロントが単体的であることを説明する説明図である。
【0028】
図5に示すように、パレートフロントは、曲がった「目的関数の数-1」次元三角形の単体で表現することができる。この場合、一部の目的関数を最適化する問題の解は、三角形の頂点、辺、面、・・・をなす。このような単体的な多目的最適化問題は、飛行機やディーゼルエンジンの設計、施設配置問題、純交換経済、水循環モデルなどの様々な分野で頻出することが知られている。
【0029】
したがって、フィッティング部52は、ベジエ単体を用いることで、上記の三角形の頂点、辺、面、・・・に相当する解の境界を考慮して、パレートフロント上の複数の解にフィッティングすることが可能である。具体的には、フィッティング部52は、下記(1)式で定義される、次数DのM-1次元ベジエ単体を用いてフィッティングを行う。
【0030】
【0031】
(1)式において、b(t)はベジエ単体(写像)に相当する。tはM次元実ベクトルの媒介変数である。(D d)は多項係数である。tdはD次の単項式(多重指数)である。pdはM次元実ベクトルの制御点である。ΔM-1はM-1次元単体を表す。ベジエ単体の制御点は、次数D及び次元Mによって個数が決定する。
【0032】
図6は、ベジエ単体の一例を説明する説明図である。
図6に示すように、網掛け部分のベジエ単体は複数の制御点(p)により規定される。このベジエ単体の制御点(p)は、次数(D)と次元(M)によって個数が決定する。
【0033】
図示例では、D=3、及びM=3のベジエ単体を示している。各制御点p(i,j,k)(
図6中の丸印)の添え字は、それぞれ0以上の整数であり、i+j+k=D=3を満たす。特に、p(3,0,0)、p(0,3,0)、p(0,0,3)は、それぞれベジエ単体を示す三角形の頂点に相当する制御点である。図示例におけるベジエ単体のフィッティングでは、それぞれ1番目、2番目、3番目の目的関数を最適化した解と一致するように推定する。
【0034】
フィッティング部52は、例えば、帰納的骨格推定法により、各制御点を示す座標(ベクトル値)を推定する。帰納的骨格推定法は、低次元単体(骨格)を規定する制御点から順番に推定する手法であり、一度に調整する制御点の個数が目的関数の数に依存しない。そのため、帰納的骨格推定法では、高次元単体の近似でも一度に調整する制御点の数を抑制することができる。
【0035】
図7は、パレートフロントへのベジエ単体のフィッティングを説明する説明図である。
図7に示すように、フィッティング部52は、まず、頂点を推定する(S1)。具体的には、フィッティング部52は、p(3,0,0)を1番目の目的関数、p(0,3,0)を2番目の目的関数、p(0,0,3)を3番目の目的関数のそれぞれを最適化した解に一致させるように推定する。
【0036】
ついで、フィッティング部52は、辺を推定する(S2)。具体的には、フィッティング部52は、三角形の頂点を示す制御点p(3,0,0)、p(0,3,0)、p(0,0,3)を固定した状態で、三角形の辺の形状を定める制御点(S2の点線部)を推定する。
【0037】
ついで、フィッティング部52は、面を推定する(S3)。具体的には、フィッティング部52は、三角形の頂点及び辺に相当する制御点を固定した状態で、三角形の面の形状を定める制御点(S3の点線部)を推定する。
【0038】
図8は、ベジエ単体のフィッティングの一例を説明する説明図である。
図8に示すように、フィッティング部52は、パレートフロント上の複数の解41aをもとに、各制御点(p)を推定することでベジエ単体42aをフィッティングさせる。ついで、フィッティング部52は、このような推定によってフィッティングさせたベジエ単体42aを示す情報(複数の制御点の座標値等)を演算情報42に格納する。
【0039】
データ点生成部53は、フィッティング部52がフィッティングさせたベジエ単体42a上において複数のデータ点を生成する処理部である。
【0040】
図9は、データ点の生成例を説明する説明図である。
図9に示すように、データ点生成部53は、複数の制御点(p)で規定されたベジエ単体42a上において、格子状に複数のデータ点42bを生成する。データ点生成部53は、生成したデータ点42bに関する情報(例えば座標値)を演算情報42に格納する。
【0041】
ここで、格子状に生成するデータ点42bの間隔については、ユーザが予め設定してもよい。このように、情報処理装置1では、パレートフロント上の複数の解41aに対してフィッティングさせたベジエ単体42a上に複数のデータ点42bを生成することで、スパースな解を補完することができる。
【0042】
勾配計算部54は、データ点生成部53が生成した複数のデータ点42bにおけるベジエ単体42a上の勾配を計算する処理部である。具体的には、勾配計算部54は、ベジエ単体42aの全微分を計算することでベジエ単体42aの勾配(勾配ベクトルの長さ)を計算し、複数のデータ点42bそれぞれにおける勾配を求める。勾配計算部54は、複数のデータ点42bそれぞれにおける勾配を示す情報(勾配ベクトルの長さ)を演算情報42に格納する。
【0043】
ここで、次数DのM次元のベジエ単体42aの定義は次の式(2)のとおりである。
【0044】
【0045】
ここで、パラメータtmで偏微分したときの勾配ベクトルは次の式(3)のとおりになる。
【0046】
【0047】
これらの式(2)、(3)を用いると、パラメータt=(t1,t2,…,tM)におけるベジエ単体42aの全微分は次の式(4)のように計算される。
【0048】
【0049】
出力部55は、データ点生成部53が生成した複数のデータ点42bそれぞれについて、勾配計算部54が計算した勾配に基づいたデータ点42bに対応する解の頑健性の評価情報を出力する処理部である。
【0050】
パレートフロントにフィッティングさせたベジエ単体42aの勾配の大きさは、ノイズなどによる値の変動に対する頑健性を示している。一例として、ベジエ単体42aの勾配が大きいところのデータ点42bは、ノイズなどによる値の変動が大きくなり、その近傍の解41aは頑健性が小さい解となる。逆に、ベジエ単体42aの勾配が小さいところのデータ点42bは、ノイズなどによる値の変動が小さくなり、その近傍の解41aは頑健性が大きい解となる。
【0051】
例えば、出力部55は、複数のデータ点42bそれぞれについて、ベジエ単体42a上の勾配(勾配ベクトルの長さ)に対応した値(勾配の大きさ)を評価情報として列挙して出力する。また、出力部55は、目的関数空間において複数のデータ点42bをプロットした可視化画像を生成し、この複数のデータ点42bそれぞれを評価情報に対応する表示態様で表示部30より表示出力してもよい。
【0052】
図10は、表示出力の一例を説明する説明図である。
図10に示すように、出力部55は、パレートフロント上の点(解41a)にベジエ単体42aをフィッティングした目的関数空間を可視化して表示出力する。
【0053】
具体的には、出力部55は、4つ以上の目的関数(評価指標)から選択された2つ又は3つの目的関数に対応する2次元空間又は3次元空間において、ベジエ単体42aと、演算情報42上の42bをプロットした可視化画像を生成する。ついで、出力部55は、このベジエ単体42a上に生成した複数のデータ点42bについては、勾配計算部54が計算した勾配の大きさに応じた表示態様で表示出力する。
【0054】
例えば、出力部55は、勾配が所定の閾値より小さく、ノイズ(値変動)に対して頑健な領域に含まれるデータ点42baについては、濃いグラデーションで表示する。また、出力部55は、勾配が所定の閾値より大きく、ノイズ(値変動)に対して頑健でない領域に含まれるデータ点42bbについては、薄いグラデーションで表示する。
【0055】
これにより、ユーザは、解41a近傍にあるデータ点42bの表示態様により、解41aの頑健性を容易に確認することができる。
【0056】
図11、
図12は、可視化画像の一例を説明する説明図である。
図11に示すように、3つの評価指標(f1,f2,f3)の目的関数空間における可視化画像G1においては、データ点42bの濃淡により、ノイズ(値変動)に対して頑健であるか否か(頑健性の強さ)を表示してもよい。例えば、出力部55は、勾配が所定の閾値より小さく、頑健性が強い場合はデータ点42bを濃く表示する。また、出力部55は、勾配が所定の閾値より大きく、頑健性が弱い場合はデータ点42bを淡く表示する。
【0057】
また、
図12に示すように、3つの評価指標(f1,f2,f3)の目的関数空間における可視化画像G2においては、データ点42bの大きさによってノイズ(値変動)に対して頑健であるか否か(頑健性の強さ)を表示してもよい。例えば、出力部55は、勾配が所定の閾値より小さく、頑健性が強い場合はデータ点42bを大きく表示する。また、出力部55は、勾配が所定の閾値より大きく、頑健性が弱い場合はデータ点42bを小さく表示する。
【0058】
つぎに、情報処理装置1の動作の詳細を説明する。
図13は、実施形態にかかる情報処理装置1の動作例を示すフローチャートである。
【0059】
図13に示すように、処理が開始されると、取得部51は、分析対象となる多目的最適化問題について解いたパレートフロント上の点(複数の解41a)の入力を受け付ける(S10)。
【0060】
ついで、フィッティング部52は、取得部51により取得されたパレートフロント上の点に対してベジエ単体42aをフィッティングさせる(S11)。ついで、データ点生成部53は、ベジエ単体42a上のデータ点42bを格子状に複数生成する(S12)。
【0061】
ついで、勾配計算部54は、データ点生成部53が生成したベジエ単体42a上のデータ点42bそれぞれについてループ処理を実行する(S13~S15)。具体的には、勾配計算部54は、ベジエ単体42aの全微分を計算し、データ点42bでの接平面の勾配ベクトルの長さを計算する(S14)。
【0062】
ついで、出力部55は、入力部20による操作入力などを介して、多数の目的関数(評価指標)の中から表示する評価指標の指定を受け付ける(S16)。この評価指標の指定において、出力部55は、2次元で可視化する場合は2つの指定を受け付け、3次元で可視化する場合は3つの指定を受け付ける。
【0063】
ついで、出力部55は、指定された評価指標の2次元または3次元の空間において、ベジエ単体42aと、演算情報42上の42bをプロットした可視化画像を生成する。ついで、出力部55は、このベジエ単体42a上の各データ点42bの勾配ベクトルの長さ、すなわち評価情報を可視化して表示出力し(S17)、処理を終了する。
【0064】
以上のように、情報処理装置1は、パレートフロント上の複数の解を取得する。情報処理装置1は、取得した複数の解に対してベジエ単体42aをフィッティングさせる。情報処理装置1は、フィッティングさせたベジエ単体42a上に複数のデータ点42bを生成する。情報処理装置1は、生成した複数のデータ点42bにおけるベジエ単体42a上の勾配を計算する。情報処理装置1は、生成した複数のデータ点42bそれぞれについて、計算した勾配に基づいたデータ点42bに対応する解の頑健性の評価情報を出力する。これにより、情報処理装置1のユーザは、出力された評価情報をもとに、解の頑健性を容易に見極めることができる。このように、情報処理装置1は、ユーザにおける適切な解の選択を支援できる。
【0065】
また、情報処理装置1は、複数のデータ点42bをプロットした可視化画像G1において、複数のデータ点42bそれぞれを評価情報に対応する表示態様で表示出力する。これにより、情報処理装置1のユーザは、可視化画像G1にプロットされたデータ点42bの表示態様をもとに、データ点42bに対応する解の頑健性を容易に確認することができる。
【0066】
また、情報処理装置1は、評価情報に対応した解の頑健性の強さをデータ点42bの濃淡またはデータ点42bの大きさの表示態様で表示出力する。これにより、情報処理装置1のユーザは、データ点42bの濃淡またはデータ点42bの大さをもとに、データ点42bに対応する解の頑健性を容易に確認することができる。
【0067】
なお、図示した各装置の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0068】
また、情報処理装置1の制御部50で行われる取得部51、フィッティング部52、データ点生成部53、勾配計算部54および出力部55の各種処理機能は、CPU(またはMPU、MCU(Micro Controller Unit)等のマイクロ・コンピュータ)上で、その全部または任意の一部を実行するようにしてもよい。また、各種処理機能は、CPU(またはMPU、MCU等のマイクロ・コンピュータ)で解析実行されるプログラム上、またはワイヤードロジックによるハードウエア上で、その全部または任意の一部を実行するようにしてもよいことは言うまでもない。また、情報処理装置1で行われる各種処理機能は、クラウドコンピューティングにより、複数のコンピュータが協働して実行してもよい。
【0069】
ところで、上記の実施形態で説明した各種の処理は、予め用意されたプログラムをコンピュータで実行することで実現できる。そこで、以下では、上記の実施形態と同様の機能を有するプログラムを実行するコンピュータ構成(ハードウエア)の一例を説明する。
図14は、コンピュータ構成の一例を説明する説明図である。
【0070】
図14に示すように、コンピュータ200は、各種演算処理を実行するCPU201と、データ入力を受け付ける入力装置202と、モニタ203と、スピーカ204とを有する。また、コンピュータ200は、記憶媒体からプログラム等を読み取る媒体読取装置205と、各種装置と接続するためのインタフェース装置206と、有線または無線により外部機器と通信接続するための通信装置207とを有する。また、情報処理装置1は、各種情報を一時記憶するRAM208と、ハードディスク装置209とを有する。また、コンピュータ200内の各部(201~209)は、バス210に接続される。
【0071】
ハードディスク装置209には、上記の実施形態で説明した機能構成(例えば取得部51、フィッティング部52、データ点生成部53、勾配計算部54および出力部55)における各種の処理を実行するためのプログラム211が記憶される。また、ハードディスク装置209には、プログラム211が参照する各種データ212が記憶される。入力装置202は、例えば、操作者から操作情報の入力を受け付ける。モニタ203は、例えば、操作者が操作する各種画面を表示する。インタフェース装置206は、例えば印刷装置等が接続される。通信装置207は、LAN(Local Area Network)等の通信ネットワークと接続され、通信ネットワークを介した外部機器との間で各種情報をやりとりする。
【0072】
CPU201は、ハードディスク装置209に記憶されたプログラム211を読み出して、RAM208に展開して実行することで、上記の機能構成(例えば取得部51、フィッティング部52、データ点生成部53、勾配計算部54および出力部55)に関する各種の処理を行う。なお、プログラム211は、ハードディスク装置209に記憶されていなくてもよい。例えば、コンピュータ200が読み取り可能な記憶媒体に記憶されたプログラム211を読み出して実行するようにしてもよい。コンピュータ200が読み取り可能な記憶媒体は、例えば、CD-ROMやDVDディスク、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の可搬型記録媒体、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、ハードディスクドライブ等が対応する。また、公衆回線、インターネット、LAN等に接続された装置にこのプログラム211を記憶させておき、コンピュータ200がこれらからプログラム211を読み出して実行するようにしてもよい。
【0073】
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0074】
(付記1)パレートフロント上の複数の解を取得し、
取得した前記複数の解に対してベジエ単体をフィッティングさせ、
フィッティングさせた前記ベジエ単体上の複数のデータ点における前記ベジエ単体上の勾配を計算し、
生成した前記複数のデータ点それぞれについて、計算した前記勾配に基づいた前記データ点に対応する解の頑健性の評価情報を出力する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする出力プログラム。
【0075】
(付記2)前記出力する処理は、前記複数のデータ点をプロットした可視化画像において、前記複数のデータ点それぞれを前記評価情報に対応する表示態様で表示出力する、
ことを特徴とする付記1に記載の出力プログラム。
【0076】
(付記3)前記出力する処理は、前記評価情報に対応した解の頑健性の強さを前記データ点の濃淡または前記データ点の大きさの表示態様で表示出力する、
ことを特徴とする付記2に記載の出力プログラム。
【0077】
(付記4)パレートフロント上の複数の解を取得し、
取得した前記複数の解に対してベジエ単体をフィッティングさせ、
フィッティングさせた前記ベジエ単体上の複数のデータ点における前記ベジエ単体上の勾配を計算し、
生成した前記複数のデータ点それぞれについて、計算した前記勾配に基づいた前記データ点に対応する解の頑健性の評価情報を出力する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする出力方法。
【0078】
(付記5)前記出力する処理は、前記複数のデータ点をプロットした可視化画像において、前記複数のデータ点それぞれを前記評価情報に対応する表示態様で表示出力する、
ことを特徴とする付記4に記載の出力方法。
【0079】
(付記6)前記出力する処理は、前記評価情報に対応した解の頑健性の強さを前記データ点の濃淡または前記データ点の大きさの表示態様で表示出力する、
ことを特徴とする付記5に記載の出力方法。
【0080】
(付記7)パレートフロント上の複数の解を取得し、
取得した前記複数の解に対してベジエ単体をフィッティングさせ、
フィッティングさせた前記ベジエ単体上の複数のデータ点における前記ベジエ単体上の勾配を計算し、
生成した前記複数のデータ点それぞれについて、計算した前記勾配に基づいた前記データ点に対応する解の頑健性の評価情報を出力する、
処理を実行する制御部を含むことを特徴とする情報処理装置。
【0081】
(付記8)前記出力する処理は、前記複数のデータ点をプロットした可視化画像において、前記複数のデータ点それぞれを前記評価情報に対応する表示態様で表示出力する、
ことを特徴とする付記7に記載の情報処理装置。
【0082】
(付記9)前記出力する処理は、前記評価情報に対応した解の頑健性の強さを前記データ点の濃淡または前記データ点の大きさの表示態様で表示出力する、
ことを特徴とする付記8に記載の情報処理装置。
【符号の説明】
【0083】
1…情報処理装置
10…通信部
20…入力部
30…表示部
40…記憶部
41…入力情報
42…演算情報
42a…ベジエ単体
42b、42ba、42bb、42bc、42bd…データ点
50…制御部
51…取得部
52…フィッティング部
53…データ点生成部
54…勾配計算部
55…出力部
200…コンピュータ
201…CPU
202…入力装置
203…モニタ
204…スピーカ
205…媒体読取装置
206…インタフェース装置
207…通信装置
208…RAM
209…ハードディスク装置
210…バス
211…プログラム
212…各種データ
41a、A1、A2…解
G1、G2…可視化画像
p…制御点