(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027397
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】入浴介助用椅子装置
(51)【国際特許分類】
A61H 33/00 20060101AFI20240222BHJP
A61G 5/02 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
A61H33/00 310K
A61H33/00 310M
A61G5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130164
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細田 良造
【テーマコード(参考)】
4C094
【Fターム(参考)】
4C094AA01
4C094CC05
4C094GG02
(57)【要約】
【課題】高い防水処理が不要で、かつ感電を防止しつつ、過荷重を検知して安全を確保できる入浴介助用椅子装置を提供する。
【解決手段】入浴介助用椅子装置3の椅子10を昇降させる昇降駆動ユニット20の底部に荷重受け部材31を設ける。荷重受け部材31の両端の移乗ガイド33がキャリーレール4及び框上レール5aに移乗可能に接する。荷重受け部材31に歪センサ41を設ける。歪センサ41による検出値に基づいて、過荷重か否かを判定部42にて判定する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリーのキャリーレールと浴槽框の上に設置される框上レールとに移乗可能に支持される入浴介助用椅子装置であって、
座部及び背凭れを有する椅子と、
前記キャリーレール及び前記框上レールに移乗可能に搭載されるとともに、前記背凭れと上下スライド可能に係合されて前記椅子を昇降させる昇降駆動ユニットと、
前記昇降駆動ユニットの底部に設けられた荷重受け部材と、
前記荷重受け部材に設けられるとともに、前記キャリーレール及び前記框上レールと接して案内される移乗ガイドと、
前記荷重受け部材に設けられた歪センサと、
前記歪センサによる検出値に基づいて、過荷重か否かを判定する判定部と、
を備えたことを特徴とする入浴介助用椅子装置。
【請求項2】
前記荷重受け部材のほぼ水平に向けられた長手方向の中央部が連結部を介して前記昇降駆動ユニットと連結され、前記荷重受け部材の前記長手方向の両端部にそれぞれ前記移乗ガイドが設けられており、
前記荷重受け部材の上面部と下面部にそれぞれ前記歪センサが設けられ、
前記判定部が、これら上下の歪センサの検出値を合算して前記判定を行なうことを特徴とする請求項1に記載の入浴介助用椅子装置。
【請求項3】
前記昇降駆動ユニットの底部の左右両端部にそれぞれ前記荷重受け部材が前記長手方向を左右方向へ向けて設けられており、
各荷重受け部材における前記連結部よりも前記昇降駆動ユニットの左右方向の中央側の部分に前記歪センサが設けられていることを特徴とする請求項2に記載の入浴介助用椅子装置。
【請求項4】
前記荷重受け部材が片持ち状の検知突片を有し、前記検知突片の先端部には前記キャリーレール及び前記框上レールと接触される接触体が設けられ、前記検知突片に前記歪センサが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の入浴介助用椅子装置。
【請求項5】
前記荷重受け部材には肉抜き部が形成されていることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の入浴介助用椅子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、要介助者の入浴介助に使用する入浴介助用椅子装置に関し、特に、移動用のキャリーから浴槽框上のレールへ移して浴槽に入れたり浴槽から上げてキャリーへ戻したりできる入浴介助用椅子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
要介助者を着座させて入浴介助に用いる椅子装置は公知である(特許文献1、2等参照)。特許文献1、2の椅子装置においては、椅子の背凭れの背部に昇降駆動ユニットが設けられている。該昇降駆動ユニットがキャリーのキャリーレールに搭載されることによって椅子がキャリーに支持されている。昇降駆動ユニットによって、椅子が昇降される。
【0003】
入浴介助の際は、キャリーレールが、浴槽框の上に設置した框上レールと一直線に連結される。そして、昇降駆動ユニットがキャリーレールから框上レールへスライドされることによって、椅子が浴槽上へ移される。続いて、昇降駆動ユニットによって椅子が下降される。これによって、要介助者を着座させたまま、入浴させることができる。入浴後、逆の操作によって要介助者が浴槽から出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-058054号公報
【特許文献2】特開2021-029617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の入浴介助用椅子装置において、着座者の体重オーバー等によって椅子の耐荷重を超えた荷重が加えられたり、座面に過度な外力や衝撃が加えられたりすることも考えられる。従来は、耐荷重に安全率を上乗せした強度が確保されるように設計製造されていた。一方、製品を強固にすると重量が重くなる傾向があり、操作性が低下する。
【0006】
椅子にセンサを設けることで過荷重を検知することも考えられる。しかし、椅子は浴槽に入れられて没水されるため、センサ及び電気配線に高い防水処理を施す必要があるうえに感電のおそれもある。
本発明は、かかる事情に鑑み、高い防水処理が不要で、かつ感電を防止しつつ、過荷重を検知して安全を確保するとともに機器の破損を防止できる入浴介助用椅子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、キャリーのキャリーレールと浴槽框の上に設置される框上レールとに移乗可能に支持される入浴介助用椅子装置であって、
座部及び背凭れを有する椅子と、
前記キャリーレール及び前記框上レールに移乗可能に搭載されるとともに、前記背凭れと上下スライド可能に係合されて前記椅子を昇降させる昇降駆動ユニットと、
前記昇降駆動ユニットの底部に設けられた荷重受け部材と、
前記荷重受け部材に設けられるとともに、前記キャリーレール及び前記框上レールと接して案内される移乗ガイドと、
前記荷重受け部材に設けられた歪センサと、
前記歪センサによる検出値に基づいて、過荷重か否かを判定する判定部と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
椅子に荷重が加わると、その荷重が、昇降駆動ユニットに伝わり、該昇降駆動ユニットの底部の荷重受け部材及び移乗ガイドを介してキャリーレール又は框上レールに受け渡される。荷重受け部材は、前記荷重に応じた歪変形を来す。これを歪センサにて検出し、判定部によって過荷重か否かを判定する。過荷重と判定されたときは、例えばランプやブザーで過荷重を報知したり、昇降やスライドが出来ないようにロックしたりすることで、利用者の安全性を確保するとともに入浴介助用椅子装置の破損を防止できる。荷重受け部材が浴槽に入れられて没水することはないから、歪センサに対して高い防水性が要求されず、配線が万が一、断線したとしても、感電のおそれが低い。
判定部は、昇降駆動ユニットの内部の制御基板に組み込むことができる。
【0009】
好ましくは、前記荷重受け部材のほぼ水平に向けられた長手方向の中央部が連結部を介して前記昇降駆動ユニットと連結され、前記荷重受け部材の前記長手方向の両端部にそれぞれ前記移乗ガイドが設けられており、
前記荷重受け部材の上面部と下面部にそれぞれ前記歪センサが設けられ、
前記判定部が、これら上下の歪センサの検出値を合算して前記判定を行なう。
入浴介助用椅子装置に荷重が加えられると、荷重受け部材の上面部には圧縮応力が作用し、下面部には引張応力が作用する。これら応力による歪みを合算することによって検出精度が上がる。
好ましくは、前記荷重受け部材が、連結部を中心にして回転可能である。
【0010】
好ましくは、前記昇降駆動ユニットの底部の左右両端部にそれぞれ前記荷重受け部材が前記長手方向を左右方向へ向けて設けられており、
各荷重受け部材における前記連結部よりも前記昇降駆動ユニットの左右方向の中央側の部分に前記歪センサが設けられている。
通常、入浴介助用椅子装置の左右方向の中央部が荷重の負荷中心になるから、それに近い位置に歪センサを配置することで、荷重に対する感度が高まる。
【0011】
好ましくは、前記荷重受け部材が片持ち状の検知突片を有し、前記検知突片の先端部には前記キャリーレール及び前記框上レールと接触される接触体が設けられ、前記検知突片に前記歪センサが設けられている。
好ましくは、前記検知突片は、弾性を有している。
椅子への荷重によって荷重受け部材が沈み込むように変位したとき、検知突片が撓む。これによって、前記荷重を検出できる。
【0012】
好ましくは、前記荷重受け部材には、肉抜き部が形成されている。肉抜き部として、孔部、幅小部、凹部、薄肉部等が挙げられる。肉抜き部を設けることで、荷重に対して荷重受け部材が撓みやすくなり、荷重に対する検出感度が上がる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る入浴介助用椅子装置によれば、センサの高い防水処理が不要で、かつ感電を防止しつつ、過荷重を検知して安全を確保できるとともに装置の破損を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態を示し、同図(a)は、入浴介助用椅子装置を含む入浴用車椅子の側面図である。同図(b)は、前記入浴用車椅子の斜視図である。
【
図2】
図2は、前記入浴用車椅子及び浴槽側の浴槽側レール機構を配置した浴室の平面図である
【
図3】
図3(a)は、前記入浴介助用椅子装置を前記浴槽側レール機構の框上レールに支持させて浴槽の上方に配置した状態の側面図である。
図3(b)は、前記入浴介助用椅子装置の椅子を浴槽内に降ろした状態の側面図である。
【
図4】
図4(a)は、前記入浴介助用椅子装置の昇降駆動ユニットを正面側から見た斜視図である。
図4(b)は、前記昇降駆動ユニットを背面側から見た斜視図である。
【
図5】
図5(a)は、前記昇降駆動ユニットのユニットベースの平面図である。
図5(b)は、前記ユニットベースの正面図である。
図5(c)は、前記ユニットベースの斜視図である。
【
図6】
図6(a)は、前記ユニットベースに設けられた受け機構の平面図である。
図6(b)は、前記受け機構の正面図である。
図6(c)は、前記受け機構の斜視図である。
【
図7】
図7は、荷重検出システムを含む前記昇降駆動ユニットの底部をキャリーレールに搭載された状態で示す側面断面図である。
【
図8】
図8は、椅子に荷重がかかったときの前記受け機構における力の作用方向を解説した正面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第2実施形態を示し、同図(a)は、受け機構の底面図である。同図(b)は、受け機構の斜視図である。
【
図10】
図10は、前記第2実施形態に係る受け機構の正面図である。
【
図11】
図11は、本発明の第3実施形態に係る受け機構の正面図である。
【
図12】
図12は、本発明の第4実施形態に係る受け機構の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態(
図1~
図8)>
図1は、入浴用車椅子1を示したものである。
図1(a)に示すように、入浴用車椅子1は、手押し移動式のキャリー2と、入浴介助用椅子装置3を備えている。キャリー2の上端部には、キャリーレール4が水平に設けられている。キャリー2に入浴介助用椅子装置3が搭載されて運搬される。
【0016】
図2に示すように、入浴用車椅子1は、浴槽側レール機構5と組み合わせて、要介助者Aの入浴介助に用いられる。
図3(a)に示すように、浴槽側レール機構5は、浴室6の浴槽7の側部に据え付けられている。浴槽側レール機構5が展開されることによって、その框上レール5aが浴槽框7aの上に水平に配置される。
図2に示すように、該框上レール5aとキャリーレール4が一直線に連結される。キャリーレール4及び框上レール5aは、互いに同一の凹字状の断面形状に形成されている。入浴介助用椅子装置3が、キャリーレール4及び框上レール5aの間を移乗可能である。
【0017】
図1(b)に示すように、入浴介助用椅子装置3は、椅子10と、昇降駆動ユニット20を備えている。椅子10は、座部11と、背凭れ12を有している。背凭れ12の背部には、昇降駆動ユニット20が設けられている。昇降駆動ユニット20に背凭れ12が上下スライド可能に係合されている。背凭れ12の背面には上下に延びるラック13が設けられている。
図4(a)に示すように、昇降駆動ユニット20にはラック13と噛み合うピニオン21が設けられている。昇降駆動ユニット20内のモータ(図示せず)の駆動によってピニオン21が回転されることによって、背凭れ12ひいては椅子10が昇降される。
【0018】
図3(a)~
図3(b)に示すように、入浴介助用椅子装置3が浴槽框7a上の框上レール5aに配置された状態で、椅子10が昇降されることによって、椅子10が浴槽7に出入りされる。これによって、要介助者Aを着座させたままで入浴させることができる。
【0019】
図4(b)に示すように、昇降駆動ユニット20の底部には左右へ延びるユニットベース22が設けられている。
図5(a)~同図(c)に示すように、ユニットベース22の左右両端部にそれぞれ昇降駆動ユニット20の荷重を受ける受け機構30が設けられている。
図6(a)~同図(c)に示すように、受け機構30は、前後(
図6(a)において上下)に一対をなす荷重受け部材31と、連結軸32(連結部)と、移乗ガイドローラ33(移乗ガイド)を含む。連結軸32の軸線は、前後方向(
図6(a)において上下方向)へ向けられている。連結軸32の両端部にそれぞれ荷重受け部材31が設けられている。
図5(a)に示すように、ユニットベース22の左右両端部における前後両側部に合計4つの荷重受け部材31が設けられている。
【0020】
図6(c)に示すように、各荷重受け部材31は、連結軸32に対して直交する板状に形成されている。荷重受け部材31の長手方向は、ほぼ水平をなして左右へ向けられている。荷重受け部材31の中央部が連結軸32の端部と連結されている。
図6(b)に示すように、荷重受け部材31における連結軸32を挟んで左右両側の板部分34,35は、それぞれ先端へ向かって少し下へ傾けられている。
図6(a)に示すように、各板部分34,35の先端部すなわち荷重受け部材31の両端部に、移乗ガイドローラ33が回転可能に連結されている。移乗ガイドローラ33の回転軸は、前後方向へ向けられている。
【0021】
図5(c)に示すように、荷重受け部材31は、連結軸32を介して、ユニットベース22(昇降駆動ユニット20の底部)と連結されている。ユニットベース22に対して、荷重受け部材31が連結軸32の軸線を中心にして回転可能である。これによって、キャリーレール4と框上レール5aとの間に多少の段差があっても乗り越えることができる。
【0022】
図7に示すように、入浴介助用椅子装置3がキャリー2(
図1)に搭載されているときは、ユニットベース22及び受け機構30が、キャリーレール4の凹溝状の内部に収容されている。移乗ガイドローラ33が、キャリーレール4の底板4bに着地している。荷重受け部材31は、底板4bの上方に離れ、キャリーレール4と直接には接していない。入浴介助用椅子装置3の荷重は、荷重受け部材31及び移乗ガイドローラ33を含む受け機構30を介してキャリーレール4に受け渡される。
【0023】
キャリーレール4と框上レール5aとが一直線に連結された状態(
図2)で、移乗ガイドローラ33がこれらレール4,5aに案内されるように転動可能である。
【0024】
詳細な図示は省略するが、入浴介助用椅子装置3が浴槽側レール機構5(
図3)に支持されているときは、ユニットベース22及び受け機構30が框上レール5aの内部に収容されている。移乗ガイドローラ33が、框上レール5aの底板5bに着地している。荷重受け部材31は、框上レール5aと直接には接していない。入浴介助用椅子装置3の荷重は、荷重受け部材31及び移乗ガイドローラ33を含む受け機構30を介して框上レール5aに受け渡される。
【0025】
図7に示すように、入浴介助用椅子装置3は、荷重検出システム40を更に備えている。荷重検出システム40は、歪センサ41と、判定部42を含む。
【0026】
図5(a)に示すように、入浴介助用椅子装置3の各荷重受け部材31に歪センサ41が設けられている。歪センサ41は、歪ゲージによって構成されており、接着剤を介して荷重受け部材31に貼り付けられている。好ましくは、
図5(b)に示すように、荷重受け部材31の両側の板部分34,35のうち、昇降駆動ユニット20の左右方向の中央側を向く板部分34に歪センサ41が設けられている。更に好ましくは、
図6(b)に示すように、板部分34の上面部と下面部にそれぞれ歪センサ41が設けられている。これら上下の歪センサ41を互いに区別するときは、上面部のものを歪センサ41aと称し、下面部のものを歪センサ41bと称す。
【0027】
歪センサ41aは、荷重受け部材31の上端面に貼り付けられているが、荷重受け部材31の側面の上側部に貼り付けられていてもよい。歪センサ41bは、荷重受け部材31の下端面に貼り付けられているが、荷重受け部材31の側面の下側部に貼り付けられていてもよい。これら歪センサ41は、荷重受け部材31の外部に露出されているが、露出しないように荷重受け部材31内に埋め込まれていてもよい。
【0028】
図7に示すように、各歪センサ41からのリード線43が、昇降駆動ユニット20内の制御ユニット24に接続されている。図示は省略するが、制御ユニット24には、歪センサ41の微細な抵抗値の変化を電圧変化に変換するホイートストンブリッジ回路と、その出力電圧をデジタルの歪検知信号に変換する信号変換器が設けられている。
【0029】
さらに、制御ユニット24に判定部42と過荷重時安全作動部44が組み込まれている。判定部42は、制御ユニット24のマイクロコンピュータのCPUによって構成されている。判定部42は、前記歪検知信号(歪センサ41による検出値)に基づいて、椅子10への過荷重の有無を判定する。前記マイクロコンピュータの記憶部には、判定のためのプログラム及び閾値が格納されている。閾値は、椅子10の耐荷重を考慮して設定されている。
【0030】
過荷重時安全作動部44は、判定部42において過荷重と判定されたときに作動される駆動回路であり、例えばアラーム発出回路、ロック作動回路等を含む。
【0031】
利用者が椅子10に座る等して、椅子10に荷重が印加されと、その荷重が、背凭れ12から昇降駆動ユニット20に伝わり、更に受け機構30に伝わる。受け機構30の荷重受け部材31は、前記荷重に応じた歪変形を来す。この歪みが歪センサ41にて検出される。
【0032】
詳しくは、
図8に示すように、前記荷重によって、連結軸32に押し下げ力F
1が作用する。該押し下げ力F
1が、荷重受け部材31を介して移乗ガイドローラ33に伝わり、移乗ガイドローラ33がキャリーレール4の底板4b(又は框上レール5aの底板5b)に押し付けられることで、移乗ガイドローラ33が底板4b(又は5b)から反力F
2を受ける。これによって、板部分34の上面部においては、圧縮応力F
3が作用し、圧縮歪みが起きる。該圧縮歪みが歪センサ41aによって検出される。板部分34の下面部においては、引張応力F
4が作用し、引張歪みが起きる。該引張歪みが歪センサ41bによって検出される。
【0033】
これら歪センサ41による検出信号が判定部42に送られ、判定部42において過荷重か否かの判定がなされる。すなわち、加えられた荷重が、椅子10の耐荷重を超えていないかが判定される。具体的には、歪センサ41によって検知した歪み量が閾値を超えていないか否かが判定される。
【0034】
好ましくは、各荷重受け部材31の上下の歪センサ41a、41bによる検出歪み量が合算される。これによって、前記圧縮応力と引張応力の絶対値どうしを合算することになり、検出精度を高めることができる。
更に、入浴介助用椅子装置3の左右方向の中央部が荷重の負荷中心になるから、荷重受け部材31の板部分34,35のうち装置中央側を向く板部分34に歪センサ41を配置しておくことで、荷重に対する感度が高まる。
【0035】
さらに好ましくは、入浴介助用椅子装置3における4つ(複数)の荷重受け部材31の検出歪み量を合算し、その合算値が合算閾値を超えていないかを判定する。又は、4つ(複数)の荷重受け部材31の検出歪み量の平均値を求め、その平均値が平均閾値を超えていないかを判定する。これによって、荷重検出システム40の誤動作を抑制できる。
4つ(複数)の荷重受け部材31のうち1つでも検出歪み量が閾値を超えていないかを判定してもよい。
【0036】
例えば着座者の体重オーバー等によって椅子10の耐荷重を超える過積載があったときは、判定部42において閾値を超えたと判定される。すなわち、過荷重と判定される。すると、過荷重時安全作動部44によってランプやブザーが作動して過荷重であることが報知されたり、椅子10の昇降やスライドが出来ないようにロックされたりする。これによって、利用者の安全性を確保できるとともに、入浴介助用椅子装置3の破損を防止することができる。
【0037】
荷重受け部材31が浴槽7(
図3(b))に入れられて没水されることはないから、歪センサ41及びリード線43に対して高い防水性が要求されない。これによって、入浴介助用椅子装置3の製造時等における防水処理作業を軽減できる。
歪センサ41及びリード線43が万が一、断線したとしても、手に触れにくい場所(椅子10の背部の昇降駆動ユニット20の底部)に在り、没水されることもないから、感電するおそれが低い。
【0038】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態(
図9~
図10)>
図9に示すように、本発明の第2実施形態においては、荷重受け部材31に片持ち状の検知突片36が設けられている。検知突片36は、荷重受け部材31の長手方向の中央部における連結軸32の直下部から前後外側方向へ突出されている。好ましくは、検知突片36は、弾性を有している。検知突片36の先端部には垂下片37が下方へ突出されるように設けられている。
図10に示すように、垂下片37の下端部にコロ38(接触体)が回転可能に設けられている。コロ38の回転軸は、前後方向へ向けられている、コロ38が、キャリーレール4の底板4b(又は框上レール5aの底板5b)に転動可能に接触される。
【0039】
第2実施形態における歪センサ41は、検知突片36に設けられている。検知突片36の上面に歪センサ41が設けられているが、検知突片36の下面に歪センサ41が設けられていてもよい。
【0040】
椅子10に荷重が加えられたときは、荷重受け部材31の中央部が沈み込むように変形されるのに伴って、検知突片36が撓み、歪センサ41が感応する。これによって、荷重を感度良く検出できる。
【0041】
<第3実施形態(
図11)>
図11に示すように、本発明の第3実施形態においては、荷重受け部材31の板部分34に孔部34cからなる肉抜き部が形成されている。これによって、板部分34が荷重に対して撓みやすくなり、歪センサ41による荷重の検出感度を高めることができる。
【0042】
<第4実施形態(
図12)>
図12に示すように、本発明の第4実施形態においては、荷重受け部材31の板部分34の幅(高さ方向の寸法)が、板部分35の幅より小さくなっている。言い換えると、板部分34に幅小部34dからなる肉抜き部が形成されている。これによって、荷重に対して板部分34が撓みやすくなり、荷重に対する検出感度を高めることができる。
【0043】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、移乗ガイドは、キャリーレール4及び框上レール5aに沿って転動される移乗ガイドローラ33に限らず、キャリーレール4及び框上レール5aに沿って摺動される摺動体(スライダー)であってもよい。
荷重受け部材の長手方向が、入浴介助用椅子装置3の前後方向へ向けられていてもよい。
第3、第4実施形態(
図11、
図12)の変形例として、荷重受け部材31の板部分34の全体又は一部を板部分35より薄肉にすることで、薄肉部からなる肉抜き部を形成してもよい。板部分34に凹部からなる肉抜き部を形成してもよい。第2実施形態(
図9~
図10)の検知突片36を有する荷重受け部材31に肉抜き部を形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、要介助者の入浴介助機器に適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
A 要介助者
1 入浴用車椅子
2 キャリー
3 入浴介助用椅子装置
4 キャリーレール
4b 底板
5 浴槽側レール機構
5a 框上レール
5b 底板
6 浴室
7 浴槽
7a 浴槽框
10 椅子
11 座部
12 背凭れ
13 ラック
20 昇降駆動ユニット
21 ピニオン
22 ユニットベース
24 制御ユニット
30 受け機構
31 荷重受け部材
32 連結軸(連結部)
33 移乗ガイドローラ(移乗ガイド)
34 板部分(連結部よりも昇降駆動ユニットの左右方向の中央側の部分)
34c 孔部(肉抜き部)
34d 幅小部(肉抜き部)
35 板部分
36 検知突片
37 垂下片
38 コロ(接触体)
40 荷重検出システム
41 歪センサ
41a 上側の歪センサ
41b 下側の歪センサ
42 判定部
43 検出信号線
44 過荷重時安全作動部