(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027404
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】2,5-フランジカルボン酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 307/68 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
C07D307/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130171
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000189659
【氏名又は名称】上野製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】本岡 良太
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 久美子
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、安価で生産性が高く、環境負荷の小さいFDCAの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、炭素原子数8以上の1つ以上のアルキル基で置換された芳香族化合物および/または軽油を含有する溶媒中、式(1)
[式中、Mはセシウム、カリウム、リチウムまたはルビジウムを示す]で表される2-フランカルボン酸アルカリ金属塩と二酸化炭素とを、有機酸のアルカリ金属塩の存在下で反応させる工程を含む、式(2)
で表される2,5-フランジカルボン酸の製造方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素原子数8以上の1つ以上のアルキル基で置換された芳香族化合物および/または軽油を含有する溶媒中、式(1)
【化1】
[式中、Mはセシウム、カリウム、リチウムまたはルビジウムを示す]
で表される2-フランカルボン酸アルカリ金属塩と二酸化炭素とを、
有機酸のアルカリ金属塩の存在下で反応させる工程を含む、
式(2)
【化2】
で表される2,5-フランジカルボン酸の製造方法。
【請求項2】
Mはカリウムおよび/またはセシウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶媒は軽油を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記反応工程は、二酸化炭素圧力0.1~8MPaの条件下で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記反応工程は、温度100~300℃の条件下で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
有機酸のアルカリ金属塩は炭酸セシウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記反応工程は、前記式(2)で表される2,5-フランジカルボン酸を含む粗組成物を得る工程である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記粗組成物をさらに精製する工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記精製工程は懸濁洗浄、再結晶、および再沈殿からなる群から選択される1種以上の工程を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記精製工程は懸濁洗浄工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記精製工程は、水、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、2-エチルヘキサノール、エチレングリコール、グリセリン、酢酸、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン、クロロホルム、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸プロピルおよび酢酸ブチルからなる群から選択される1種以上の溶媒を用いて行う、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2,5-フランジカルボン酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2,5-フランジカルボン酸(以降、FDCAとも称する)は、グルコースやフルクトースのような炭水化物から合成することが可能であるため、バイオマス由来の化合物として近年注目されている。
【0003】
FDCAは、その構造的な特徴からテレフタル酸のような芳香族ジカルボン酸の代替として期待されており、FDCAをジカルボン酸とするポリエステル(特許文献1)やポリアミド(特許文献2)等が提案されている。
【0004】
FDCAの製造方法としては、金属触媒による5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-HMF)の酸化による方法が知られている。例えば、白金族の金属少なくとも1種を含有する触媒の存在下に、酸素を用いて水性媒体中にて5-HMFを酸化する方法(特許文献3)や、5-HMFをアルカリ性環境下で過マンガン酸金属塩により酸化する方法(特許文献4)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2020-502355号公報
【特許文献2】特開2017-101180号公報
【特許文献3】特開平2-88569号公報
【特許文献4】特開2009-13079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3に記載の方法は高価な貴金属触媒を大量に使用しなければならず、また、触媒が劣化し易く、リサイクル性にも乏しいものであった。特許文献4に記載の方法は環境負荷が大きい重金属を使用するため、工業的なスケールでの生産には適さない方法であった。したがって、安価で生産性が高く、環境負荷の小さいFDCAの製造方法が求められていた。
【0007】
本発明の目的は、安価で生産性が高く、環境負荷の小さいFDCAの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、炭素原子数8以上の1つ以上のアルキル基で置換された芳香族化合物および/または軽油を含有する溶媒中、有機酸のアルカリ金属塩の存在下で、2-フランカルボン酸アルカリ金属塩と二酸化炭素とを反応させることにより、高収率でFDCAが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち本発明は、以下の好適な態様を包含する。
〔1〕炭素原子数8以上の1つ以上のアルキル基で置換された芳香族化合物および/または軽油を含有する溶媒中、式(1)
【化1】
[式中、Mはセシウム、カリウム、リチウムまたはルビジウムを示す]
で表される2-フランカルボン酸アルカリ金属塩と二酸化炭素とを、
有機酸のアルカリ金属塩の存在下で反応させる工程を含む、
式(2)
【化2】
で表される2,5-フランジカルボン酸の製造方法。
[2]Mはカリウムおよび/またはセシウムである、[1]に記載の方法。
[3]溶媒は軽油を含有する、[1]~[2]のいずれかに記載の方法。
[4]前記反応工程は、二酸化炭素圧力0.1~8MPaの条件下で行う、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]前記反応工程は、温度100~300℃の条件下で行う、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]有機酸のアルカリ金属塩は炭酸セシウムである、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]前記反応工程は前記式(2)で表される2,5-フランジカルボン酸を含む粗組成物を得る工程である、[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]前記粗組成物をさらに精製する工程を含む、[7]に記載の方法。
[9]前記精製工程は懸濁洗浄、再結晶、および再沈殿からなる群から選択される1種以上の工程を含む、[8]に記載の方法。
[10]前記精製工程は懸濁洗浄工程を含む、[8]または[9]に記載の方法。
[11]前記精製工程は、水、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、2-エチルヘキサノール、エチレングリコール、グリセリン、酢酸、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン、クロロホルム、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸プロピルおよび酢酸ブチルからなる群から選択される1種以上の溶媒を用いて行う、[8]~[10]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、貴金属や重金属を含む触媒を使用せずに高収率でFDCAを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の式(2)で表されるFDCAの製造方法は、式(1)で表される2-フランカルボン酸アルカリ金属塩を二酸化炭素と反応させることにより行われる。本発明において、反応は通常撹拌下で行われる。
[式中、Mはセシウム、カリウム、リチウムまたはルビジウムを示す。]
【0012】
本発明において使用される反応装置としては、コルベ・シュミット反応において使用される反応装置を用いることができる。例えば、撹拌機を備え、高圧反応に対応可能なオートクレーブが好適に使用できる。さらに、温度制御機能を有し、炭酸ガスや不活性ガスの導入管、温度計支持管、圧力計および排気管などを有するものがより好ましい。
【0013】
本発明において使用される式(1)で表される2-フランカルボン酸アルカリ金属塩としては、2-フランカルボン酸セシウム塩、2-フランカルボン酸カリウム塩、2-フランカルボン酸リチウム塩または2-フランカルボン酸ルビジウム塩、が挙げられる。反応性に優れる点で2-フランカルボン酸カリウム塩および/または2-フランカルボン酸セシウム塩が好ましい。
【0014】
2-フランカルボン酸アルカリ金属塩は、2-フランカルボン酸を、アルカリ金属tert-ブトキシド、アルカリ金属メトキシド、アルカリ金属エトキシド、アルカリ金属iso-プロポキシドなどのアルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属水酸化物、有機酸のアルカリ金属塩などを用いて、アルカリ金属塩とすることにより得ることができる。
【0015】
より具体的には、2-フランカルボン酸セシウム塩は、2-フランカルボン酸を、tert-ブトキシセシウム、メトキシセシウム、エトキシセシウム、iso-プロポキシセシウムなどのセシウムアルコキシド、水酸化セシウム、炭酸セシウム、酢酸セシウムなどを用いて、セシウム塩とすることにより得ることができる。
【0016】
本発明では、2-フランカルボン酸アルカリ金属塩と二酸化炭素との反応は、有機酸のアルカリ金属塩の存在下で行われる。
【0017】
有機酸としては、炭酸、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタミン酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、酒石酸およびクエン酸からなる群から選択される1種以上が挙げられる。反応性に優れる点で炭酸および/または酢酸が好ましく、さらに炭酸が好ましい。
【0018】
有機酸のアルカリ金属塩としては、有機酸カリウム、有機酸リチウム、有機酸ルビジウムおよび有機酸セシウムからなる群から選択される1種以上が挙げられる。反応性に優れる点で有機酸カリウムおよび/または有機酸セシウムが好ましい。より具体的には、炭酸セシウム、炭酸カリウムおよび酢酸カリウムからなる群から選択される1種以上が挙げられ、炭酸セシウムを含むのが最も好ましい。
【0019】
有機酸のアルカリ金属塩は、2-フランカルボン酸アルカリ金属塩1モル当たり通常0.01~10.0モル、好ましくは0.1~8.0モル、より好ましくは0.2~5.0モル、さらに好ましくは0.5~3.0モル存在させるのがよい。
【0020】
本発明の方法においては、出発原料として2-フランカルボン酸を用い、上述した有機酸のアルカリ金属塩を2-フランカルボン酸をアルカリ金属塩とするための塩基として使用し、余剰(未反応)の有機酸のアルカリ金属塩の存在下で、引き続き2-フランカルボン酸アルカリ金属塩と二酸化炭素を反応させてもよい。この場合、有機酸のアルカリ金属塩の使用量は2-フランカルボン酸1モル当たり通常1.01~11.0モル、好ましくは1.1~9.0モル、より好ましくは1.2~6.0モル、さらに好ましくは1.5~4.0モル存在させるのがよい。
【0021】
本発明では、2-フランカルボン酸アルカリ金属塩と二酸化炭素との反応は、炭素原子数8以上の1つ以上のアルキル基で置換された芳香族化合物および/または軽油を含有する溶媒中で実施される。溶媒として上記溶媒を用いることによって得られるFDCAの生成率が大幅に向上し、中でも軽油が最も好ましい。
【0022】
炭素原子数8以上の1つ以上のアルキル基で置換された芳香族化合物の具体例としては、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、デシルベンゼン、ウンデシルベンゼン、ドデシルベンゼン、トリデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ペンタデシルベンゼン、ヘキサデシルベンゼン、ジオクチルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジデシルベンゼン、ジウンデシルベンゼン、ジドデシルベンゼン、ジトリデシルベンゼン、ジテトラデシルベンゼン、ジペンタデシルベンゼンおよびジヘキサデシルベンゼンからなる群から選択される1種以上が挙げられる。
【0023】
本発明に使用される溶媒の使用量は、出発原料である2-フランカルボン酸アルカリ金属塩または2-フランカルボン酸100質量部に対して100~3000質量部(2-フランカルボン酸アルカリ金属塩または2-フランカルボン酸に対して1~30質量倍)が好ましく、150~2000質量部がより好ましく、200~1500質量部がさらに好ましく、300~1000質量部が特に好ましい。溶媒の使用量が上記範囲内にあると、効率よくFDCAの生成率を向上させることができる。
【0024】
2-フランカルボン酸アルカリ金属塩と二酸化炭素との反応は、通常100~300℃で行われ、好ましくは150~290℃、より好ましくは200~280℃の温度下で行うことができる。100℃より低温では、反応が進行し難い傾向があり、300℃より高温では、反応が頭打ちとなりエネルギーが損失するとともに、分解などの副反応が生じるおそれがある。
【0025】
2-フランカルボン酸アルカリ金属塩と二酸化炭素との反応は、通常10MPa以下、好ましくは0.1~8MPa、より好ましくは2~6MPaの圧力下、好適には二酸化炭素による圧力下で行なわれる。反応時の圧力が10MPaを超えると高圧に耐える装置が必要となるなど、工業的に有利ではない場合がある。
【0026】
反応時間は、通常30分~24時間、好ましくは1時間~20時間、より好ましくは2時間~16時間、特に好ましくは3~12時間の間で適宜選択することができる。
【0027】
かかる反応により得られたFDCAのジアルカリ金属塩は、酸析などの当業者に既知の手段によって酸に変換することにより、目的のFDCAを得ることができる。
【0028】
酸析の前に、必要により、FDCAのジアルカリ金属塩を水溶性溶媒に溶解させた状態での有機溶媒による洗浄や、不溶性の異物を除去するためのろ過処理、着色性物質、金属などを除去するための活性炭などによる吸着剤処理を行ってもよい。
【0029】
式(1)で表される2-フランカルボン酸アルカリ金属塩と二酸化炭素とを、有機酸のアルカリ金属塩の存在下で反応させる工程によって、FDCAを含む反応液が得られる。
【0030】
FDCAを含む反応液に水を添加し、分液することにより水層が得られる。得られた水層を塩酸、硫酸などの酸で酸析することにより、FDCAを含む粗組成物が得られる。FDCAを含む粗組成物とは、目的物であるFDCA以外に、出発原料や触媒および反応副生物などの不純物を含む組成物を意味する。不純物の含有量は反応方法によっても異なるが、通常は粗組成物中1~70質量%であり、別の場合には5~50質量%である。尚、本明細書において、FDCAを含む粗組成物のことを単に「粗FDCA」とも称する。
【0031】
得られたFDCAを含む粗組成物は、さらに精製工程に供することによって、より高純度のものとすることが可能である。
【0032】
精製工程は、懸濁洗浄、再結晶および再沈殿からなる群から選択される1種以上の工程を含むのが好ましい。
【0033】
精製工程で使用する溶媒としては、水、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、2-エチルヘキサノール、エチレングリコール、グリセリン、酢酸、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン、クロロホルム、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸プロピルおよび酢酸ブチルからなる群から選択される1種以上が挙げられる。
【0034】
懸濁洗浄工程は、FDCAを含む粗組成物に懸濁洗浄溶媒を加えて、懸濁状態で撹拌することによって行われる。
【0035】
懸濁洗浄における溶媒の量は、溶媒の種類によっても異なるが、FDCAを含む粗組成物に対し上記溶媒が1~50質量倍であることが好ましく、3~40質量倍であることがより好ましく、5~30質量倍であることが最も好ましい。
【0036】
懸濁洗浄する際の温度は、用いる溶媒の種類および混合比率によっても異なるため特に限定されないが、好ましくは15℃~200℃、より好ましくは20℃~150℃、さらに好ましくは30℃~100℃である。
【0037】
再結晶工程は、FDCAを含む粗組成物を再結晶溶媒で溶解させた後、晶析させることによって行われる。
【0038】
再結晶工程における溶媒の量は、溶媒の種類によっても異なるが、FDCAを含む粗組成物に対し上記溶媒が1~50質量倍であることが好ましく、3~40質量倍であることがより好ましく、5~30質量倍であることが最も好ましい。
【0039】
再結晶において、FDCAを含む粗組成物を溶媒に溶解する際の温度は、用いる溶媒の種類および混合比率によって異なるため特に限定されないが、好ましくは30~200℃、より好ましくは40~170℃、さらに好ましくは50~150℃である。
【0040】
再結晶工程における晶析は、好ましくは0~80℃、より好ましくは、5~60℃、さらに好ましくは10~40℃の温度下で攪拌しながら行われる。尚、晶析の前に不溶物をろ過して除去するのが好ましい。
【0041】
再沈殿工程は、FDCAを含む粗組成物を良溶媒で溶解させた溶液中に貧溶媒を添加し、FDCAの固体を析出させることによって行われる。
【0042】
再沈殿工程で用いられる良溶媒および貧溶媒は上記精製工程で使用する溶媒の中からそれぞれ適宜選択することができる。
【0043】
上記精製工程後、濾過等の常套手段により固液分離し、目的物であるFDCAを回収する。固液分離に際し、適宜有機溶媒または水を注いで結晶を洗浄するのが好ましい。固液分離における洗浄に用いる溶媒は、粗FDCAに対して、1~50質量倍であることが好ましく、3~40質量倍であることがより好ましく、5~30質量倍であることが最も好ましい。
【0044】
固液分離によって回収された結晶は、常圧下において通風乾燥するか、あるいは減圧下で乾燥し、溶媒を留去することによって、高純度のFDCAを得ることができる。
【実施例0045】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0046】
各化合物は、以下の方法によって分析した。
<高速液体クロマトグラフ(HPLC)>
装置:Waters アライアンス 2690/2996
カラム型番:L-Column ODS C18 4.6φ×150mm
液量:1.0mL/分
溶媒比:メタノール/H2O(pH2.3)=20/80-40/60(10分)→5分→90/10(15分)、グラジエント分析
波長:254nm
カラム温度:40℃
120mLのオートクレーブ中に、2-フランカルボン酸カリウム塩(2-FCK)7.1g(0.05モル)、炭酸セシウム15.4g(1.0当量/2-FCK)および軽油67.2gを加えて密閉し、撹拌しながら280℃まで昇温した。280℃到達後、二酸化炭素圧力5.0MPa条件下にて、5時間反応した。反応終了後40℃まで冷却し、水410.0gを加え、撹拌した後、静置・分液し、反応水層を得た。
得られた反応水層をHPLCにてFDCA(2,5-フランジカルボン酸)への転化率、ならびに2-FC(2-フランカルボン酸)の残存率について、定量分析を行った。結果を表1に示す。