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特開2024-27407情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027407
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/00 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
G09B9/00 M
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130180
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】596112790
【氏名又は名称】三徳コーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】松田 進
(57)【要約】
【課題】利用者に実施させる訓練を管理するための技術を提供する。
【解決手段】映像提示部120は、利用者に複数種類の災害の再現映像を提示する。災害体験提供部121は、複数種類の災害のうちの少なくとも1つの災害に関する仮想体験を利用者に提供する。発見機会提供部122は、映像提示部120が再現映像を利用者に提示し、かつ災害体験提供部121が仮想体験を利用者に提供したことを条件として、利用者に発見させるための危険箇所が隠された仮想環境を利用者に提供する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者に複数種類の災害の再現映像を提示する映像提示部と、
前記複数種類の災害のうちの少なくとも1つの災害に関する仮想体験を前記利用者に提供する災害体験提供部と、
前記映像提示部が前記再現映像を前記利用者に提示し、かつ前記災害体験提供部が前記仮想体験を前記利用者に提供したことを条件として、前記利用者に発見させるための危険箇所が隠された仮想環境を前記利用者に提供する発見機会提供部と、を備える、
情報処理装置。
【請求項2】
前記再現映像を前記利用者に提示する間隔として定められた映像提供間隔にしたがって前記映像提示部に前記再現映像を提示させる映像提示管理部と、
前記仮想体験を前記利用者に提供する間隔として定められ、前記映像提供間隔とは異なる間隔である仮想体験間隔にしたがって前記災害体験提供部に前記仮想体験を提供させる体験提供管理部と、をさらに備える、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記映像提示管理部は、エビングハウス忘却曲線に基づいて定められた前記映像提供間隔にしたがって前記映像提示部に前記再現映像を提示させる、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記再現映像を前記利用者に提示した回数と前記仮想体験を前記利用者に提供した回数とについて定められた条件を満たす場合に、前記発見機会提供部に前記仮想環境を提供させる機会提供管理部をさらに備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
複数の前記利用者それぞれについて、前記利用者への通知手段と前記再現映像を提示した日時と前記仮想体験を提供した日時とを紐づけて訓練履歴として記憶する履歴記憶部をさらに備え、
前記映像提示管理部は、前記訓練履歴を参照して、前記再現映像を提示すべきタイミングとなった利用者に前記再現映像の視聴を促すメッセージを通知する、
請求項2又は3に記載の情報処理装置。
【請求項6】
複数の前記利用者それぞれについて、前記利用者への通知手段と前記再現映像を提示した日時と前記仮想体験を提供した日時とを紐づけて訓練履歴として記憶する履歴記憶部をさらに備え、
前記体験提供管理部は、前記訓練履歴を参照して、前記仮想体験を提供すべきタイミングとなった利用者に前記仮想体験の実施を促すメッセージを通知する、
請求項2又は3に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記仮想体験間隔は、前記映像提供間隔よりも長く設定されている、
請求項2又は3に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記仮想体験を利用した利用者の属性を示す属性情報と当該利用者が利用することを選択した仮想体験と、を対応づけて格納する利用実績データベースと、
新規の利用者から当該利用者の属性情報を含む導入依頼を受け付ける依頼受付部と、
前記導入依頼に含まれる属性情報に基づいて前記利用実績データベースを参照することにより、前記新規の利用者に提供する1又は複数の仮想体験の候補を抽出する抽出部と、
抽出した仮想体験の候補を前記新規の利用者に提示する候補提示部と、
前記新規の利用者から導入を決定する仮想体験である決定体験を受け付ける決定受付部と、をさらに備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記抽出部は、
前記利用実績データベースに格納されている利用者の属性を示す属性情報と、前記導入依頼に含まれる属性情報との類似度を算出する類似度算出部と、
前記利用実績データベースにおいて前記類似度が大きい属性情報に対応づけられている仮想体験を優先して前記候補として抽出する体験抽出部と、をさらに備える、
請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
プロセッサが、
利用者に複数種類の災害の再現映像を提示するステップと、
前記複数種類の災害のうちの少なくとも1つの災害に関する仮想体験を前記利用者に提供するステップと、
前記再現映像を前記利用者に提示し、かつ前記仮想体験を前記利用者に提供したことを条件として、前記利用者に発見させるための危険箇所が隠された仮想環境を前記利用者に提供するステップと、実行する、
情報処理方法。
【請求項11】
コンピュータに、
利用者に複数種類の災害の再現映像を提示する機能と、
前記複数種類の災害のうちの少なくとも1つの災害に関する仮想体験を前記利用者に提供する機能と、
前記再現映像を前記利用者に提示し、かつ前記仮想体験を前記利用者に提供したことを条件として、前記利用者に発見させるための危険箇所が隠された仮想環境を前記利用者に提供する機能と、実現させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関し、特に安全教育のための訓練の実施を管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゲームや訓練を目的とするVR(Virtual Reality)技術が急速に発達してきている。例えば特許文献1には、VRを用いることにより、再現が難しい環境や危険な環境を、訓練のために簡便かつ安全に再現するための技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-44977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような技術により、利用者は安全な環境で災害等に対処するための危機管理に関する訓練を受けることができる。VR技術によって安全は確保されているものの、危機管理に関する訓練中に利用者は危険を感じる状況となることがしばしばある。精神面の安全を確保するために、人は経験したことを忘れる特性を持っており、安全訓練を利用者が漫然と受けるだけでは訓練内容の定着が図りにくいことを本願の発明者は見出した。
【0005】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、利用者に実施させる訓練を管理するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、情報処理装置である。この装置は、利用者に複数種類の災害の再現映像を提示する映像提示部と、前記複数種類の災害のうちの少なくとも1つの災害に関する仮想体験を前記利用者に提供する災害体験提供部と、前記映像提示部が前記再現映像を前記利用者に提示し、かつ前記災害体験提供部が前記仮想体験を前記利用者に提供したことを条件として、前記利用者に発見させるための危険箇所が隠された仮想環境を前記利用者に提供する発見機会提供部と、を備える。
【0007】
前記再現映像を前記利用者に提示する間隔として定められた映像提供間隔にしたがって前記映像提示部に前記再現映像を提示させる映像提示管理部と、前記仮想体験を前記利用者に提供する間隔として定められ、前記映像提供間隔とは異なる間隔である仮想体験間隔にしたがって前記災害体験提供部に前記仮想体験を提供させる体験提供管理部と、をさらに備えてもよい。
【0008】
前記映像提示管理部は、エビングハウス忘却曲線に基づいて定められた前記映像提供間隔にしたがって前記映像提示部に前記再現映像を提示させてもよい。
【0009】
前記再現映像を前記利用者に提示した回数と前記仮想体験を前記利用者に提供した回数とについて定められた条件を満たす場合に、前記発見機会提供部に前記仮想環境を提供させる機会提供管理部をさらに備えてもよい。
【0010】
前記情報処理装置は、複数の前記利用者それぞれについて、前記利用者への通知手段と前記再現映像を提示した日時と前記仮想体験を提供した日時とを紐づけて訓練履歴として記憶する履歴記憶部をさらに備えてもよく、前記映像提示管理部は、前記訓練履歴を参照して、前記再現映像を提示すべきタイミングとなった利用者に前記再現映像の視聴を促すメッセージを通知してもよい。
【0011】
前記情報処理装置は、複数の前記利用者それぞれについて、前記利用者への通知手段と前記再現映像を提示した日時と前記仮想体験を提供した日時とを紐づけて訓練履歴として記憶する履歴記憶部をさらに備えてもよく、前記体験提供管理部は、前記訓練履歴を参照して、前記仮想体験を提供すべきタイミングとなった利用者に前記仮想体験の実施を促すメッセージを通知してもよい。
【0012】
前記仮想体験間隔は、前記映像提供間隔よりも長く設定されていてもよい。
【0013】
前記情報処理装置は、前記仮想体験を利用した利用者の属性を示す属性情報と当該利用者が利用することを選択した仮想体験と、を対応づけて格納する利用実績データベースと、新規の利用者から当該利用者の属性情報を含む導入依頼を受け付ける依頼受付部と、前記導入依頼に含まれる属性情報に基づいて前記利用実績データベースを参照することにより、前記新規の利用者に提供する1又は複数の仮想体験の候補を抽出する抽出部と、抽出した仮想体験の候補を前記新規の利用者に提示する候補提示部と、前記新規の利用者から導入を決定する仮想体験である決定体験を受け付ける決定受付部と、をさらに備えてもよい。
【0014】
前記抽出部は、前記利用実績データベースに格納されている前記疑似体験を利用した利用者の属性を示す属性情報と、前記導入依頼に含まれる属性情報との類似度を算出する類似度算出部と、前記利用実績データベースにおいて前記類似度が大きい属性情報に対応づけられている仮想体験を優先して前記候補として抽出する体験抽出部と、をさらに備えてもよい。
【0015】
本発明の第2の態様は、情報処理方法である。この方法において、プロセッサが、利用者に複数種類の災害の再現映像を提示するステップと、前記複数種類の災害のうちの少なくとも1つの災害に関する仮想体験を前記利用者に提供するステップと、前記再現映像を前記利用者に提示し、かつ前記仮想体験を前記利用者に提供したことを条件として、前記利用者に発見させるための危険箇所が隠された仮想環境を前記利用者に提供するステップと、実行する。
【0016】
本発明の第3の態様は、プログラムである。このプログラムは、コンピュータに、利用者に複数種類の災害の再現映像を提示する機能と、前記複数種類の災害のうちの少なくとも1つの災害に関する仮想体験を前記利用者に提供する機能と、前記再現映像を前記利用者に提示し、かつ前記仮想体験を前記利用者に提供したことを条件として、前記利用者に発見させるための危険箇所が隠された仮想環境を前記利用者に提供する機能と、実現させる。
【0017】
このプログラムを提供するため、あるいはプログラムの一部をアップデートするために、このプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供されてもよく、また、このプログラムが通信回線で伝送されてもよい。
【0018】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、コンピュータプログラム、データ構造、記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、利用者に実施させる訓練を管理するための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1の実施の形態に係る情報処理装置が提供する安全教育の各段階を説明するための図である。
図2】第1の実施の形態に係る情報処理システムの構成の一例の概要を模式的に示す図である。
図3】第1の実施の形態に係る情報処理装置の機能構成を模式的に示す図である。
図4】エビングハウスの忘却曲線を模式的に示す図である。
図5】感受性の時間経過を示すグラフを模式的に示す図である。
図6】第1の実施の形態に係る履歴記憶部が記憶する訓練履歴のデータ構造の一例を模式的に示す図である。
図7】第1の実施の形態に係る情報処理装置が実行する情報処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図8】第2の実施の形態に係る情報処理装置の機能構成を模式的に示す図である。
図9】第2の実施の形態に係る利兵実績データベースのデータ構造を模式的に示す図である。
図10】第2の実施の形態に係る抽出部の機能構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1の実施の形態の前提となる思想>
第1の実施の形態に係る情報処理装置は、複数の利用者それぞれが実施するべき安全教育に関する訓練の時期及び種類を管理するための装置である。第1の実施の形態に係る情報処理装置を説明することに先立って、その前提となる思想について説明する。
【0022】
第1の実施の形態に係る情報処理装置は、自然災害に対処するための訓練、機械加工や化学プラント、倉庫における積みに作業等、種々の状況を想定した複数の訓練シナリオを記憶しており、利用者それぞれに適した安全教育を提供することができる。本願の発明者は、利用者に安全教育を施すには、複数の段階を順に経験させることが好ましいと考えている。
【0023】
図1は、第1の実施の形態に係る情報処理装置が提供する安全教育の各段階を説明するための図である。図1に示すように、第1の実施の形態に係る情報処理装置が提供する安全教育は、大きく分けて6つの段階を含んでいる。具体的には、「技能訓練」、「再現映像提示」、「災害体験提供」、「安全目覚め」、「災害対応力向上」、及び「訓練シミュレーション」の4つの段階である。
【0024】
「技能訓練」は、安全に立ち回るための行動を利用者の体に覚えさせる段階であり、例えば自動車の運転シミュレータや倉庫における作業、高所作業におけるシミュレータ等を利用者に実施させる段階である。「再現映像提示」は、様々なパターンの災害を知識として利用者に定着させる段階であり、一般公共災害、労働災害、自然災害、人的災害等の種々の災害をCG(Computer Graphics)で再現した映像をケーススタディとして利用者に繰り返し提示する段階である。
【0025】
「災害体験提供」は、職場環境などの利用者の置かれた環境に合わせ、例えば職場で発生しうる災害をVR(Virtual Reality)技術で利用者に体験させる段階である。この段階において災害が起こりうる環境をVR技術で再現し、利用者の視覚、聴覚、触覚、嗅覚等の三以上の感覚を刺激するように災害体験を提供する。災害体験提供は、災害は怖いことであり、起こしてはいけないこと、何をすれば災害を防げるかについて利用者に気づきを与えることを目指す。
【0026】
「安全目覚め」は、「再現映像提示」によって災害の知識を得て、「災害体験提供」を経験して危険に対する感受性が高い状態の利用者を対象として、パノラマVRを用いて災害が起こりうる箇所を指摘させる訓練を実施する段階である。「安全目覚め」の段階は、例えば、倉庫における崩れそうな場所や、曲がり角における衝突等、利用者にとって危険となり得る状況をVR技術によって再現しておき、利用者に危険箇所を指摘させることで安全意識を目覚めさせることを目的としている。
【0027】
「災害対応力向上」及び「訓練シミュレーション」は、一般的な利用者ではなく、例えば組織における上司に相当する人物等、他者を指導する立場にある者向けの訓練であり、「安全目覚め」の訓練段階を経た利用者向けの訓練段階である。具体的には、「災害対応力向上」は、シミュレーションによって利用者が既知の災害を学び、その対処方法を獲得するための段階である。「訓練シミュレーション」は、実際にあった災害のシーンを時系列的に模擬し、利用者に災害時の対処を仮想的に実行させる段階である。
【0028】
このように、第1の実施の形態に係る情報処理装置が提供する安全教育は複数の段階から構成されるが、この中でも、「再現映像提示」、「災害体験提供」、及び「安全目覚め」の3つの段階の重要性が高いことを本願の発明者は認識した。また、本願の発明者は、「再現映像提示」、「災害体験提供」、及び「安全目覚め」を漫然と利用者に経験させるだけではこれらの定着を図りづらく、利用者毎に各訓練のタイミングや回数を管理して適切に訓練させることの重要性を認識するに至った。
【0029】
危機管理に関する訓練は、時として利用者に心理的な負担を強いることもある。人は精神面の安全を確保するために、経験したことを忘れる特性があることが知られている。このため、様々なパターンの災害を知識として定着させるための再現映像提示段階においては、利用者が知識を忘れる前に繰り返し再現映像を提示することによって教育効果が向上する。危機に対する感受性も記憶と本質的には同様であり、「災害体験提供」においても利用者が危機に対する感受性を獲得しても時間とともに低下する。そのため、期間をおいて繰り返し災害体験を利用者に提供し続けることで利用者が常に危機感受性を持つようにすることが重要である。なお、本願の発明者は、利用者の危機感受性は、10ヶ月から12ヶ月程度で低下することを実験によって見出している。
【0030】
さらに、災害が起こりうる箇所を利用者に指摘させる「安全目覚め」の訓練は、知識として様々なパターンの災害を持っており、危機に対する感受性が高い状態の利用者に施すことではじめて高い効果が得られることも本願の発明者は見出した。以上を踏まえ、第1の実施の形態に係る情報処理装置は、複数の利用者それぞれが実施するべき安全教育に関する訓練の時期及び種類を管理し、訓練の定着を向上させることを目的としている。
【0031】
<第1の実施の形態の概要>
図2は、第1の実施の形態に係る情報処理システムSの構成の概要の一例を模式的に示す図である。具体的には、図2は、情報処理システムSが、組織に属する複数の従業員を利用者として危機管理に関する訓練を実施することを想定した場合の構成の概要を示す図である。
【0032】
図2に示す情報処理システムSは、情報処理装置1と複数の利用者端末2(図2に示す例では第1利用者端末2a、第2利用者端末2b)とモニタ3とを備えており、情報処理装置1は、インターネット等の通信ネットワークNを介して利用者端末2及びモニタ3と通信可能な態様で接続している。
【0033】
情報処理装置1は、利用者それぞれについて、少なくとも「再現映像提示」、「災害体験提供」、及び「安全目覚め」の3つの訓練の状況を訓練履歴として管理している。情報処理装置1は、訓練履歴を参照して、利用者がいずれかの訓練すべき時期が近づくとその利用者に訓練を受けるべき旨の通知を送信したり、利用者に対して訓練を提供したりする。
【0034】
再現映像提示の訓練は、情報が何らかの形で利用者に提示されればよく、必ずしも常に利用者がモニタに向かって集中して映像を見なくてはならないわけではない。このため、図2に示す例では、情報処理装置1は利用者が属する組織の社員食堂に設置されたモニタ3に再現映像を提示している。当然ながら、利用者が集中して映像を見ることを希望する場合、情報処理装置1は、利用者が所持するスマートフォンである第1利用者端末2aに個別に再現映像を配信する。また、災害体験提供のようにVR技術を用いる訓練においては、情報処理装置1は利用者が装着しているヘッドマウントディスプレイである第2利用者端末2bに対して訓練コンテンツを配信する。
【0035】
情報処理装置1は、各利用者に対して「再現映像提示」、「災害体験提供」、及び「安全目覚め」の3つの訓練を順に実施するが、各利用者が「災害体験提供」及び「安全目覚め」に進むための条件はあらかじめ定められている。具体的には、各利用者が「災害体験提供」に進む前に「再現映像提示」の訓練を受けるべき回数が定められており、また、再現映像提示の訓練を受けるべき周期も定められている。情報処理装置1は、各利用者について再現映像提示の訓練を最後に提示した日時から周期に相当する期間を経過した利用者に対して再度再現映像提示の訓練を実施する。そして、再現映像提示の訓練を定められた回数実施した利用者に対して、災害体験提供の訓練を実施する。利用者が「安全目覚め」の訓練に進むための条件も同様であるが、「安全目覚め」の訓練に進むためには、少なくとも「再現映像提示」と「災害体験提供」との訓練を受けることが好ましい。
【0036】
このように、情報処理装置1は、訓練履歴を参照してあらかじめ定められた条件にしたがって各利用者に訓練の通知及び実施をすることにより、複数の利用者それぞれが実施するべき安全教育に関する訓練の時期及び種類を管理する。これにより、情報処理装置1は、利用者に対して危機管理に関する訓練の成果を効率的に定着させることができる。
【0037】
<第1の実施の形態に係る情報処理装置1の機能構成>
図3は、第1の実施の形態に係る情報処理装置1の機能構成を模式的に示す図である。情報処理装置1は、記憶部10と通信部11と、制御部12とを備える。図3において、矢印は主なデータの流れを示しており、図3に示していないデータの流れがあってもよい。図3において、各機能ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、図3に示す機能ブロックは単一の装置内に実装されてもよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてもよい。機能ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてもよい。
【0038】
記憶部10は、情報処理装置1を実現するコンピュータのBIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)や情報処理装置1の作業領域となるRAM(Random Access Memory)、OS(Operating System)やアプリケーションプログラム、当該アプリケーションプログラムの実行時に参照される種々の情報を格納するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置であり、履歴記憶部100を含んでいる。
【0039】
通信部11は、情報処理装置1が利用者端末2等の外部の機器と通信するための通信インターフェースであり、既知の通信モジュールで実現されている。以下、情報処理装置1の各部が外部の機器と通信する場合は通信部11を仲介することを前提としてその記載を省略することがある。
【0040】
制御部12は、情報処理装置1のCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部10に記憶されたプログラムを実行することによって、映像提示部120、災害体験提供部121、発見機会提供部122、映像提示管理部123、体験提供管理部124、機会提供管理部125として機能する。
【0041】
なお、図3は、情報処理装置1が単一の装置で構成されている場合の例を示している。しかしながら、情報処理装置1は、例えばクラウドコンピューティングシステムのように複数のプロセッサやメモリ等の計算リソースによって実現されてもよい。この場合、制御部12を構成する各部は、複数の異なるプロセッサの中の少なくともいずれかのプロセッサがプログラムを実行することによって実現される。
【0042】
映像提示部120は、利用者に複数種類の災害の再現映像を提示する。また、災害体験提供部121は、複数種類の災害のうちの少なくとも1つの災害に関する仮想体験を利用者に提供する。発見機会提供部122は、映像提示部120が再現映像を利用者に提示し、かつ災害体験提供部121が仮想体験を利用者に提供したことを条件として、利用者に発見させるための危険箇所が隠された仮想環境を利用者に提供する。これにより、情報処理装置1は、災害に対する知識を得、危険に対する感受性を高めた利用者に対して安全性に対する目覚めの契機を提供することができる。
【0043】
上述したように、情報処理装置1は、利用者の記憶の定着を図るため、複数種類の災害の再現映像を利用者に周期的に提示する。これを実現するため、映像提示管理部123は、再現映像を利用者に提示する間隔として定められた映像提供間隔にしたがって映像提示部120に再現映像を提示させる。
【0044】
また、情報処理装置1は、利用者の危険に対する感受性を維持させるため、周期的に利用者に災害体験を提供する。これを実現するために、体験提供管理部124は、仮想体験を利用者に提供する間隔である仮想体験間隔にしたがって災害体験提供部121に仮想体験を提供させる。なお、仮想体験間隔は、映像提供間隔とは異なる間隔である。詳細は後述するが、仮想体験間隔は、映像提供間隔よりも長く設定される。より具体的胃は、仮想体験感覚は10ヶ月から12ヶ月であるのに対し、映像提供感覚は1日から数ヶ月程度である。
【0045】
このように、映像提示管理部123及び体験提供管理部124が、それぞれ災害の再現映像の提示のタイミングと災害体験の提供のタイミングとを管理することにより、利用者の訓練効果を高めることができる。
【0046】
(映像提示間隔)
映像提示間隔の詳細を説明する。第1の実施の形態に係る映像提示管理部123は、エビングハウスの忘却曲線に基づいて定められる映像提示間隔にしたがい、災害体験提供部121に指示して仮想体験を利用者に提供させる。既知の事項であるため詳細な説明は省略するが、エビングハウスの忘却曲線は、人が一度覚えた事柄を再度覚えるために要する時間をどの程度節約できるかを示す「節約率」の時間経過による減衰率を示している。
【0047】
図4は、エビングハウスの忘却曲線を模式的に示す図である。図4において横軸は時間の経過を示し、縦軸は節約率を示している。また、図4において破線は一度だけ再現映像を提示した場合における節約率の減衰を示しており、実線は期間をおいて繰り返し再現映像を提示した場合における節約率の減衰を示している。図4の破線に示すように、一度だけ再現映像を提示した場合、節約率は時間とともに単調減衰する。これは、利用者が再現映像の内容を覚えた後、その内容を再度覚えるために要する時間を節約できる時間が時間とともに減少すること、言い換えると、人は一度習ったことを再度覚えるために要する時間は時間とともに増加することを示している。
【0048】
一方、図4の実線に示すように、最初に再現映像を見た後に時間をおいて繰り返し再現映像を見ることにより、利用者の節約率は高い状態で維持される。一般に、利用者が1ヶ月以内に3回繰り返して復習することにより、長期記憶としての定着率が向上するといわれている。第1の実施の形態に係る情報処理装置1の記憶部10には、再現映像の紹介の提示から1日、1週間後、及び1ヶ月後に少なくとも再度再現映像を提示するようにあらかじめ設定された映像提示間隔が記憶されている。映像提示管理部123は、エビングハウス忘却曲線に基づいて定められた映像提供間隔にしたがって映像提示部120に再現映像を提示させることで、利用者に再現映像の定着を促進することができる。
【0049】
(仮想体験間隔)
仮想体験間隔の詳細を説明する。第1の実施の形態に係る体験提供管理部124は、利用者の危険に対する感受性を維持させるため、危険に対する感受性が下がるタイミングで災害体験を繰り返し提供させる。
【0050】
図5は、感受性の時間経過を示すグラフを模式的に示す図である。図5に示すグラフは本願の発明者が実験により見出したグラフであり、横軸は時間経過、縦軸は利用者の危険に対する感受性の高さを示している。図5に示す例では、利用者がT1の時点ではじめて災害が起こりうる環境を体験することにより、その後、危険に対する感受性が上昇し徐々に下降していることを示している。
【0051】
T1から12ヶ月ほど経過したT2の時点で、利用者の危険に対する感受性が低下したため、体験提供管理部124は災害体験提供部121を制御して利用者に再び災害が起こりうる環境を経験させた。これにより利用者の危険に対する感受性は再び上昇するが、その後、さらに10ヶ月ほど経過したT3の時点で利用者の危険に対する感受性が低下したため、体験提供管理部124は災害体験提供部121を制御して利用者に再び災害が起こりうる環境を経験させた。
【0052】
このように、災害が起こりうる環境を体験しても利用者の危険に対する感受性は徐々に低下するので、利用者の危険に対する感受性を維持させるために、機会提供管理部125は10ヶ月から12ヶ月の周期で利用者に災害が起こりうる環境を繰り返し経験させる。これにより、体験提供管理部124は、利用者の危険に対する感受性を維持させることができる。
【0053】
(訓練履歴に基づくメッセージの通知)
以上のように、再現映像の記憶の定着と危険に対する感受性の維持とを図るためには、利用者は、適切な時期において再現映像を見たり、災害が起こりうる環境を経験したりする必要がある。ここで、情報処理装置1の利用者の数が多い場合は、会場や訓練機器の確保、利用者の予定の調整等が煩雑となり、複数の利用者に対して一斉に訓練を施すことが難しくなることも起こりうる。
【0054】
そこで、履歴記憶部100は、複数の利用者それぞれについて、利用者への通知手段と再現映像を提示した日時と仮想体験を提供した日時とを紐づけて訓練履歴として記憶している。体験提供管理部124は、履歴記憶部100に記憶されている訓練履歴を参照して、仮想体験を提供すべきタイミングとなった利用者の利用者端末2に仮想体験の視聴を促すメッセージを通知する。
【0055】
図6は、第1の実施の形態に係る履歴記憶部100が記憶する訓練履歴のデータ構造の一例を模式的に示す図である。図6に示す訓練履歴は、利用者毎に割り当てられた利用者識別子に対応づけて、再現映像を提示した日時の履歴及びこれまで提示した再現映像の合計回数と、仮想体験を提供した日時の履歴及びこれまで提供した仮想体験の合計回数と、発見機会を提供した日時の履歴及びこれまで提供した発見機会の合計回数と、利用者への通知手段とを格納している。
【0056】
映像提示管理部123は、訓練履歴を参照することにより、利用者毎に再現映像を提示した日時の履歴を取得できる。この履歴と、図4に例示するエビングハウスの忘却曲線とに基づいて、利用者毎に次の再現映像を提示するタイミングを決定し、利用者に通知する。これにより、映像提示管理部123は、利用者毎に再現映像の提示のスケジュールを管理することができる。
【0057】
同様に、体験提供管理部124も、訓練履歴を参照することにより、利用者毎に仮想体験を提供した日時の履歴を取得できる。この履歴と、図5に例示する感受性の変動を示す曲線とに基づいて、利用者毎に仮想体験を提供するタイミングを決定し、利用者に通知する。これにより、体験提供管理部124は、利評者毎に仮想体験の提供のスケジュールを管理することができる。
【0058】
本願の発明者は、利用者が災害に対する知識を得、危険に対する感受性を高めた状態であることで、はじめて効果的に利用者の安全意識を目覚めさせることができることを実験により見出している。そこで、機会提供管理部125は、訓練履歴を参照することにより、再現映像を利用者に提示した回数と仮想体験を利用者に提供した回数とについて定められた条件を満たす場合に、発見機会提供部122に、利用者に発見させるための危険箇所が隠された仮想環境を提供させる。
【0059】
ここで、「再現映像を利用者に提示した回数と仮想体験を利用者に提供した回数とについて定められた条件」は、利用者に施す訓練の効果と訓練に要する期間とのバランスを校了して実験により定めればよい。一例として、再現映像を提示した回数が5回以上であり、仮想体験を提供した回数が3回以上であり、最後に再現映像を提示してから1週間以内であり、かつ最後に仮想体験を提供してから1ヶ月以内であることが所定の条件となる。これにより、機会提供管理部125は、災害に対する知識を得、危険に対する感受性を高めた利用者に対して安全性に対する目覚めの契機を提供することができる。
【0060】
<情報処理装置1が実行する情報処理方法の処理フロー>
図7は、第1の実施の形態に係る情報処理装置1が実行する情報処理の流れを説明するためのフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、例えば情報処理装置1が起動したときに開始する。
【0061】
映像提示部120は、利用者に複数種類の災害の再現映像を提示する(S2)。具体的には、映像提示管理部123が訓練履歴を参照して取得した再現映像を提示した日時と、エビングハウスの忘却曲線とに基づいて、利用者毎に次の再現映像を提示するタイミングを決定し、災害体験提供部121に再現映像を提示させる。
【0062】
発見機会提供部122は、複数種類の災害のうちの少なくとも1つの災害に関する仮想体験を利用者に提供する(S4)。具体的には、体験提供管理部124が、訓練履歴を参照して取得した仮想体験の提供日時と、危険に対する感受性の変化を示すグラフトに基づいて、利用者毎に次の仮想体験を提供するタイミングを決定し、発見機会提供部122に仮想体験を提供させる。
【0063】
再現映像を利用者に提示した回数と仮想体験を利用者に提供した回数とについて定められた条件を満たすまでの間(S6のNo)、情報処理装置1は、上述したステップS2及びステップS4の処理を繰り返す。再現映像を利用者に提示した回数と仮想体験を利用者に提供した回数とについて定められた条件を満たす場合(S6のYes)、発見機会提供部122は、利用者に発見させるための危険箇所が隠された仮想環境を提供する(S8)。具体的には、機会提供管理部125が訓練履歴を参照することにより条件を満たすか否かを確認し、条件を満たす場合に、発見機会提供部122を制御して仮想環境を利用者に提供させる。
【0064】
発見機会提供部122が利用者に仮想環境を提供すると本フローチャートにおける処理は終了する。情報処理装置1は、すべての利用者について上記処理を実行することにより、情報処理装置1は、利用者毎に訓練のスケジュールを管理し、危機管理に関する訓練の成果を効率的に定着させることができる。
【0065】
<実施の形態に係る情報処理装置1が奏する効果>
以上説明したように、実施の形態に係る情報処理装置1によれば、利用者に実施させる訓練を管理するための技術を提供することができる。
【0066】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態の概要を述べる。第2の実施の形態に係る情報処理装置は、第1の実施の形態に係る情報処理装置1が利用者に対して提供する訓練メニューを提案し、利用者が第1の実施の形態に係る情報処理装置1を導入する際の補助となる情報を提供する。第1の実施の形態において説明したように、「再現映像提示」は、様々なパターンの災害を知識として利用者に定着させる段階であり、一般公共災害、労働災害、自然災害、人的災害等の種々の災害をCGで再現した映像をケーススタディとして利用者に繰り返し提示する段階である。利用者の知識増加を目的としているため、利用者に提示する映像は利用者が属する組織の業種に依存しなくてもよい。
【0067】
これに対し、「災害体験提供」は、職場環境などの利用者の置かれた環境に合わせ、例えば職場で発生しうる災害をVR技術で利用者に体験させる段階である。したがって、利用者に提供する仮想体験は、利用者が属する組織の業種によって提供する仮想体験を合わせることが好ましい。例えば、高層ビルの建設に従事する利用者に対して化学プラントで起こりうる事例を仮想体験させても日々の業務に資する事柄は少ないと考えられるからである。
【0068】
そこで、第2の実施の形態に係る情報処理装置は、過去に第1の実施の形態に係る情報処理装置1を提供した顧客の業種とその際に導入した仮想体験とを解析し、新たに第1の実施の形態に係る情報処理装置1を導入することを希望している顧客に対して、その顧客に適した仮想体験を提案する。これにより、第2の実施の形態に係る情報処理装置は、第1の実施の形態に係る情報処理装置1を導入する顧客を補助することができる。
【0069】
第2の実施の形態に係る情報処理装置は、第1の実施の形態に係る情報処理装置1と同じ装置であってもよいし、異なる装置として実現されてもよい。以下では第1の実施の形態に係る情報処理装置1と第2の実施の形態に係る情報処理装置1とが同じ装置(情報処理装置1)であることを前提として説明する。説明の便宜上、以下では顧客に適した仮想体験を提案するための構成のみ記載し、第1の実施の形態に係る情報処理装置1と共通する機能構成は適宜省略又は簡略化して説明する。
【0070】
<第2の実施の形態に係る情報処理装置1の機能構成>
図8は、第2の実施の形態に係る情報処理装置1の機能構成を模式的に示す図である。情報処理装置1は、記憶部10と通信部11と、制御部12とを備える。
【0071】
記憶部10は、情報処理装置1を実現するコンピュータのBIOS等を格納するROMや情報処理装置1の作業領域となるRAM、OSやアプリケーションプログラム、当該アプリケーションプログラムの実行時に参照される種々の情報を格納するHDDやSSD等の大容量記憶装置であり、利用実績データベース101を含んでいる。通信部11は、情報処理装置1が新規の利用者が利用する利用者端末2等の外部の機器と通信するための通信インターフェースであり、既知の通信モジュールで実現されている。
【0072】
制御部12は、情報処理装置1のCPUやGPU等のプロセッサであり、記憶部10に記憶されたプログラムを実行することによって、依頼受付部126、抽出部127、候補提示部128、及び決定受付部129として機能する。
【0073】
利用実績データベース101は、第1の実施の形態に係る情報処理装置1を利用した利用者の属性を示す属性情報とその利用者が利用することを選択した仮想体験と、を対応づけて格納する。ここで「利用者の属性」とは、第1の実施の形態に係る情報処理装置1の特徴を示すパラメータであり、例えば利用者が属する組織の業種(例えば、小売業、接客業、製造業、建設業等)や産業の種別(例えば、農林漁業、鉱業、製造業、公益事業、運輸・通信・倉庫業、建設業、商業、金融・保険・不動産業、その他のサービス業等)を示す情報を含んでいる。
【0074】
依頼受付部126は、新規の利用者からその利用者の属性情報を含む導入依頼を受け付ける。抽出部127は、依頼受付部126が受け付けた導入依頼に含まれる属性情報に基づいて利用実績データベース101を参照することにより、新規の利用者に提供する1又は複数のシナリオの候補を抽出する。
【0075】
図9は、第2の実施の形態に係る利用実績データベース101のデータ構造を模式的に示す図である。図9に示すように、利用実績データベース101は、導入依頼をした依頼者を示す利用者識別子と紐づけて、導入日、依頼者の産業種別、依頼者の属性情報、導入した仮想体験の利用回数(起動回数の月平均)を記憶している。依頼主の属性情報は、依頼主の業種及び産業の種別、及び依頼主の組織の規模が含まれる。
【0076】
図9に示す利用実績データベース101の例では、利用者識別子がUID00001である利用者は産業識別子がIID020である産業(製造業)であり、業種識別子がIID021で示される業種(造船業)である。この利用者は、SID003-006、及びSID012で示される4種類の仮想体験を導入しており、それらの起動回数の月平均はそれぞれW回、X回、Y回、及びZ回である。図9に示す利用実績データベース101において、規模が「B」とは、従業員の数が100人以上1000人未満であることを示している。
【0077】
図10は、第2の実施の形態に係る抽出部127の機能構成を模式的に示す図である。ず10に示すように、抽出部127は、類似度算出部1270と、体験抽出部1271とを含んでいる。
【0078】
類似度算出部1270は、利用実績データベース101に格納されている利用者の属性を示す属性情報と、導入依頼に含まれる属性情報との類似度を算出する。例えば、新規の利用者の産業が製造業であり、業種が造船業、希望がBである場合、類似度算出部1270は、利用実績データベース101における利用者識別子がUID00001の利用者との類似度は高い値として算出する。
【0079】
一例として、類似度算出部1270は、利用実績データベース101に格納されている利用者の属性を示す属性情報と、導入依頼に含まれる属性情報との類似度を0から100までの実数値で算出し、数字の値が大きいほど高い数字として算出する。類似度算出部1270が実行する類似度算出の手法はどの方な物でよく、例えば、産業の種別、業種の種別、規模毎にそれぞれあらかじめ類似度を示すスコアを定めたテーブルを作成しておき、利用実績データベース101に格納されている利用者の属性を示す属性情報と、導入依頼に含まれる属性情報とのそれぞれから各スコアを集計して類似度を算出すればよい。
【0080】
体験抽出部1271は、利用実績データベース101において類似度が大きい属性情報に対応づけられている仮想体験を優先して候補として抽出する。特に、体験抽出部1271は、類似度が大きい属性情報に対応づけられている仮想体験のうち、起動回数が相対的に多い仮想体験を優先して候補として抽出してもよい。
【0081】
候補提示部128は、抽出部127が抽出した仮想体験の候補を新規の利用者に提示する。利用者は提示された候補を見ることで、最終的に導入する仮想体験を決定する。決定受付部129は、新規の利用者から導入を決定する仮想体験である決定体験を受け付ける。
【0082】
このように、第2の実施の形態に係る情報処理装置1は、第1の実施の形態に係る情報処理装置1を用いて危機管理に関する訓練を既に実施している利用者の利用実績を解析することにより、新たに危機管理に関する訓練を導入使用とする利用者に対して、導入することが適切な仮想体験を推奨することができる。これにより、第2の実施の形態に係る情報処理装置1は、利用者に実施させる訓練の効果をより高めることができる。
【0083】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果をあわせ持つ。
【符号の説明】
【0084】
1・・・情報処理装置
10・・・記憶部
100・・・履歴記憶部
101・・・利用実績データベース
11・・・通信部
12・・・制御部
120・・・映像提示部
121・・・災害体験提供部
122・・・発見機会提供部
123・・・映像提示管理部
124・・・体験提供管理部
125・・・機会提供管理部
126・・・依頼受付部
127・・・抽出部
1270・・・類似度抽出部
1271・・・体験抽出部
128・・・候補提示部
129・・・決定受付部
2・・・利用者端末
3・・・モニタ
N・・・通信ネットワーク
S・・・情報処理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10