(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002741
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】繊維構造体を形成する方法
(51)【国際特許分類】
D04H 1/542 20120101AFI20231228BHJP
【FI】
D04H1/542
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102131
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】505329808
【氏名又は名称】有限会社エルーチーリビング
(71)【出願人】
【識別番号】520113413
【氏名又は名称】安徽華興羽絨制品有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】傅賓榮
(72)【発明者】
【氏名】洪 宇
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA21
4L047AB02
4L047AB09
4L047BA09
4L047BB09
4L047CB02
4L047CC06
(57)【要約】
【課題】強度を保ちかつ所望の立体形状を得ることのできる繊維構造体を形成する。
【解決手段】主体繊維と、融点が前記主体繊維の融点より80度以上低い第2繊維と、融点が前記主体繊維の融点より40度以上低く前記第2繊維の融点より高い第1繊維とを備える繊維集合体を熱溶着させて繊維構造体を形成する方法であって、繊維集合体を第2繊維の融点よりも高く、第1繊維の融点よりも低い温度で加熱する第1加熱工程と、繊維集合体を所定の形状に裁断する裁断工程と、裁断された繊維集合体を型内に配置して、第1繊維の融点よりも高く、主体繊維の融点よりも低い温度で加熱する第2加熱工程と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主体繊維と、融点が前記主体繊維の融点より80度以上低い第2繊維と、融点が前記主体繊維の融点より40度以上低く前記第2繊維の融点より高い第1繊維とを備える繊維集合体を熱溶着させて繊維構造体を形成する方法であって、
前記繊維集合体を前記第2繊維の融点よりも高く、前記第1繊維の融点よりも低い温度で加熱する第1加熱工程と、
前記繊維集合体を所定の形状に裁断する裁断工程と、
裁断された前記繊維集合体を型内に配置して、前記第1繊維の融点よりも高く、前記主体繊維の融点よりも低い温度で加熱する第2加熱工程と、を含む繊維構造体を形成する方法。
【請求項2】
前記主体繊維はポリエステル系短繊維であり、前記第1繊維および前記第2繊維は熱可塑性エラストマーとポリエステルとからなる熱接着性複合短繊維である、請求項1に記載の繊維構造体を形成する方法。
【請求項3】
前記繊維集合体は、熱接着性を有しない繊維である第3繊維をさらに含む、請求項1に記載の繊維構造体を形成する方法。
【請求項4】
前記主体繊維、前記第1繊維、前記第2繊維の含有比率が異なる複数の繊維集合体または前記主体繊維、前記第1繊維、前記第2繊維の少なくとも一つの種類が異なる複数の繊維集合体を備え、
前記各繊維集合体をそれぞれ加熱する前記第1加熱工程と、
前記各繊維集合体をそれぞれ裁断する前記裁断工程と、
裁断された前記各繊維集合体を前記型内に重ねて配置して加熱する前記第2加熱工程とを含む、請求項1に記載の繊維構造体を形成する方法。
【請求項5】
前記主体繊維、前記第1繊維、前記第2繊維の含有比率が異なる複数の繊維集合体または前記主体繊維、前記第1繊維、前記第2繊維の少なくとも一つの種類が異なる複数の繊維集合体を熱溶着させ、
前記各繊維集合体をそれぞれ加熱する前記第1加熱工程と、
前記各繊維集合体を重ね合わせる工程と、
重ね合わせられた前記各繊維集合体をまとめて裁断する前記裁断工程と、
重ね合わされて裁断された前記各繊維集合体を前記型内に配置して加熱する前記第2加熱工程とを含む、請求項1に記載の繊維構造体を形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枕、寝具用マット、各種乗物用座席、クッション等に使用される繊維構造体を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、枕、寝具用マット、各種乗物用座席、クッション等の繊維構造体として、所定の立体形状に形成した袋体に綿等の充填材を充填したものや、モールド内でウレタンを発泡させ、所定形状に成型した発泡ウレタンフォームなどが提案されている。しかし、充填材によるものは充填時に充填材の量や偏りが生じて所望の立体形状になりにくい。また、発泡ウレタンフォームを用いる場合、通気性が悪く蒸れやすい、発泡ウレタン特有の臭気があるなどの問題がある。
【0003】
これらの問題を解決するために、特許文献1には、ポリエステル系短繊維と、短繊維より融点が40度以上低い低融点短繊維とから構成された混合繊維をモールド内に配置して加熱や加圧を行い、所望の繊維構造体を成型する方法が開示されている。特許文献1の成型方法においては、混合繊維をまず弱い融着条件で仮融着し、得られた混合繊維のシートをモールドに対応した形状にカットし、カットされた複数のシートをモールド内に積層し、圧縮し、弱い融着条件以上の強い融着条件で融着し、一体化している。弱い融着条件とは、該低融点繊維の融点-20度から融点+20度未満の温度での加熱であり、強い融着条件とは低融点短繊維の融点+10度からポリエステル系短繊維の融点以下の温度での加熱である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
低融点短繊維は加熱により溶融し、冷えて固化するまでの間に重力により下方向に移動する。特許文献1に記載の発明においては2回にわたり混合繊維が加熱され、少なくとも一部の低融点短繊維は2度溶融する。このように何度も低融点短繊維が溶融すると、低融点短繊維が下側に移動して繊維構造体の上側部分は低融点短繊維が少なくなり、特に上側部分の強度が弱くなったり、形状が保ちにくくなる。また、低融点短繊維は2度溶融と固化を繰り返すため、低融点短繊維が劣化して、繊維構造体が脆くなる、必要以上に硬くなる、弾力が小さくなるなど、所望の特性を有さない場合がある。
【0006】
本発明は、上記した課題に着目してなされたものであり、低融点の繊維が劣化せず、強度を保ちかつ所望の立体形状を得ることのできる繊維構造体を形成する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、次の項に記載の主題を包含する。
【0008】
項1:主体繊維と、融点が前記主体繊維の融点より80度以上低い第2繊維と、融点が前記主体繊維の融点より40度以上低く前記第2繊維の融点より高い第1繊維とを備える繊維集合体を熱溶着させて繊維構造体を形成する方法であって、
前記繊維集合体を前記第2繊維の融点よりも高く、前記第1繊維の融点よりも低い温度で加熱する第1加熱工程と、
前記繊維集合体を所定の形状に裁断する裁断工程と、
裁断された前記繊維集合体を型内に配置して、前記第1繊維の融点よりも高く、前記主体繊維の融点よりも低い温度で加熱する第2加熱工程と、を含む繊維構造体を形成する方法。
【0009】
項2:主体繊維はポリエステル系短繊維であり、第1繊維および第2繊維は熱可塑性エラストマーとポリエステルとからなる熱接着性複合短繊維である、請1に記載の繊維構造体を形成する方法。
【0010】
項3:前記繊維集合体は、熱接着性を有しない繊維である第3繊維をさらに含む、請1または2に記載の繊維構造体を形成する方法。
【0011】
項4:前記主体繊維、前記第1繊維、前記第2繊維の含有比率が異なる複数の繊維集合体または前記主体繊維、前記第1繊維、前記第2繊維の少なくとも一つの種類が異なる複数の繊維集合体を備え、
前記各繊維集合体をそれぞれ加熱する前記第1加熱工程と、
前記各繊維集合体をそれぞれ裁断する前記裁断工程と、
裁断された前記各繊維集合体を前記型内に重ねて配置して加熱する前記第2加熱工程とを含む、項1から3のいずれか1項に記載の繊維構造体を形成する方法。
【0012】
項5:前記主体繊維、前記第1繊維、前記第2繊維の含有比率が異なる複数の繊維集合体または前記主体繊維、前記第1繊維、前記第2繊維の少なくとも一つの種類が異なる複数の繊維集合体を備え、
前記各繊維集合体をそれぞれ加熱する前記第1加熱工程と、
前記各繊維集合体を重ね合わせる工程と、
重ね合わせられた前記各繊維集合体をまとめて裁断する前記裁断工程と、
重ね合わされて裁断された前記各繊維集合体を前記型内に配置して加熱する前記第2加熱工程とを含む、項1から4のいずれか1項に記載の繊維構造体を形成する方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、強度を保ちかつ所望の立体形状を得ることのできる繊維構造体を形成する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る繊維構造体を形成する方法を示すフローチャートである。
【
図4】繊維構造体である枕の(A)は平面図、(B)は(A)のA-A線に沿う断面図である。
【
図5】繊維構造体である枕の(A)は平面図、(B)は(A)のB-B線に沿う断面図である。
【
図6】繊維構造体である枕の(A)は平面図、(B)は(A)のC-C線に沿う断面図である。
【
図7】繊維構造体である枕の(A)は平面図、(B)は(A)のD-D線に沿う断面図である。
【
図8】繊維構造体であるクッションの(A)は平面図、(B)は(A)のE-E線に沿う断面図である。
【
図9】繊維構造体であるクッションの斜視図である。
【
図10】繊維構造体であるクッションの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。繊維構造体は、主体繊維と、融点が主体繊維の融点より80度以上低い第2繊維と、融点が主体繊維の融点より40度以上低く第2繊維の融点より高い第1繊維とを備える繊維集合体を熱溶着させて繊維構造体を熱溶着させたものである。なお、「繊維集合体」とは、特に指示しない限り、主体繊維と第1繊維と第2繊維とを備える繊維の集合体をいい、本明細書では、第1加熱工程が行われる前のもの、第1加熱工程が行われた後のもの、裁断工程において裁断された後のもの、第2加熱工程が行われた後であって繊維構造体を構成するもの、を含む。
【0016】
主体繊維は、第1繊維、第2繊維により互いに溶着され繊維構造体の骨組みとなるものであり、本実施形態では、主体繊維はポリエステル系短繊維である。本実施形態では、主体繊維の融点は200度以上、330度以下に設定されている。繊維集合体に対する主体繊維の含有比率は、25重量%以上、65重量%以下に設定される。「重量%」を単に「%」という場合もある。
【0017】
主体繊維であるポリエステル系短繊維は、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリ-1,4-ジメチルシクロヘキサンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリピバロラクトン、ポリ乳酸(PLA)、ステレオコンプレックスポリ乳酸等のポリエステル繊維がより好ましい。更にポリエステル繊維以外に、ポリオレフィンホモポリマー、もしくは各種オレフィンの共重合体を含む短繊維もしくはそれら短繊維の混綿体(混合体)、または上記の熱可塑性樹脂成分のうちの2種類以上からなる複合短繊維等を好ましく挙げることができる。複合繊維の複合の形態は、芯鞘型複合繊維、サイドバイサイド型複合繊維、海島型複合繊維のいずれであっても良い。かかる熱可塑性樹脂中には、着色剤、各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘分岐剤、艶消し剤、その他各種の改良剤等も必要に応じて配合されていても良い。これら短繊維のうち、リサイクルの容易さや繊維形成性等の観点からポリアルキレテレフタレート、ポリアルキレンナフタレートを含む短繊維が好ましく、ポリエチレンテレフタレートを含む短繊維が特に好ましい。また、主体繊維は吸放湿性を有するナイロン繊維を含んでいてもよい。
【0018】
主体繊維は捲縮短繊維であってもよく、捲縮数が3~40個/2.54cm、好ましくは7~15個/2.54cmである。
【0019】
前記の捲縮短繊維において、単繊維径が7~170μmの範囲内であることが好ましい。前記の捲縮短繊維の単繊維横断面形状(繊維軸に対して直角方向の断面)は、通常の丸断面でも良く、三角形、四角形、扁平楕円形、星形、更にこれらの断面形状に1つまたは2以上の中空孔を有する形状などの異型断面であってもよい。なお、単繊維横断面形状が異型の場合、前記単繊維径はその外接円の直径を使用するものとする。さらに、丸型中空断面の場合は外径寸法を測定するものとする。捲縮短繊維の繊維長としては30~150mmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは40~80mmの範囲内であることである。更により好ましくは50~75mmの範囲内であることである。
【0020】
第1繊維は熱接着性複合短繊維であり、主体繊維の融点より40度以上低く第2繊維の融点より高い融点を有する熱接着成分が少なくとも一部を構成し、加熱により少なくともその表面の一部が溶融し主体繊維、第2繊維、第1繊維同士と溶着しうる。第1繊維の熱接着成分の融点(「第1繊維の融点」ともいう)は、好ましくは180度以下であって、100度より大きくに設定され、より好ましくは、170度以下であって、150度より大きく設定され、より好ましくは160度に設定されている。繊維集合体に対する第1繊維の含有比率は、20重量%以上、55重量%以下に設定される。
【0021】
第1繊維の熱接着成分として配される熱可塑性樹脂としては、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、非弾性のポリエステル系ホモポリマーおよびその共重合物、ポリオレフィン系ホモポリマーおよびその共重合物、ポリビニルアルコ-ル系ポリマー等を挙げることができる。
【0022】
ポリウレタン系エラストマーとしては、数平均分子量が500~6000程度の低融点ポリオール、分子量500以下の有機ジイソシアネート、および分子量500以下の鎖伸長剤との反応により得られる熱可塑性樹脂である。上記化合物のうち、数平均分子量が500~6000程度の低融点ポリオールとしては、例えばジヒドロキシポリエーテル、ジヒドロキシポリエステル、ジヒドロキシポリカーボネート、ジヒドロキシポリエステルアミド等を挙げることができる。分子量500以下の有機ジイソシアネートとしては、例えばp,p'-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート、ヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。分子量500以下の鎖伸長剤としては、例えばグリコール、アミノアルコールあるいはトリオールを挙げることができる。
【0023】
これらの熱可塑性樹脂のうちで、特に好ましいのは低融点ポリオールとしてはポリテトラメチレングリコール、またはポリ-ε-カプロラクトンあるいはポリブチレンアジペートを用いたポリウレタンである。この場合の有機ジイソシアネート化合物としてはp,p'-ビスヒドロキシエトキシベンゼンおよび1,4-ブタンジオールのジヒドロキシル基をイソシアネート基に変えた化合物を挙げることができる。
【0024】
また、ポリエステル系エラストマーとしては熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールをソフトセグメントとして共重合してなるポリエーテルエステル共重合体である。より具体的にはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸、ナフタレン-1,5-ジカルボン酸、もしくはジフェニル-4,4'-ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸、もしくはアダマンタンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、もしくはダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体などからなる群より選ばれたジカルボン酸の少なくとも1種の化合物を、熱可塑性ポリエステルを構成するジカルボン酸成分として用いることが好ましい。また、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールネオペンチルグリコール、もしくはデカメチレングリコール等の脂肪族ジオール、1,1-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、もしくはトリシクロデカンメタノール等の脂環式ジオール、またはこれらのエステル形成性誘導体などからなる群より選ばれたジオール成分の少なくとも1種の化合物を、熱可塑性ポリエステルを構成するジオール成分(ジヒドロキシ化合物成分)として用いることが好ましい。更に、数平均分子量が約400~5000程度のポリエチレングリコール、ポリ(1,2-および1,3-ポリプロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体等のポリ(アルキレンオキサイド)クリコールなどからなる群より選ばれたジカルボン酸の少なくとも1種の化合物を、ソフト成分を形成するポリ(アルキレンオキシド)グリコールとして用いることが好ましい。これらの化合物から、当業者が通常行う方法で重合して得られる三元共重合体をポリエステル系エラストマーとして用いることが好ましい。
【0025】
特に、接着性や温度特性、強度の面からすればポリブチレンテレフタレートまたはポリヘキサメチレンテレフタレートをハード成分とし、ポリオキシブチレングリコール(ポリテトラメチレングリコール)をソフトセグメントとするブロック共重合ポリエーテルエステルが好ましい。この場合、ハードセグメントを構成するポリエステル部分は、主たる酸成分がテレフタル酸、主たるジオール成分がブチレングリコール成分であるポリブチレンテレフタレートである。むろん、この酸成分の一部(通常30モル%以下)は他のジカルボン酸成分やオキシカルボン酸成分で置換されていても良く、同様にグリコール成分の一部(通常30モル%以下)はブチレングリコール成分以外のジオール成分で置換されていても良い。また、ソフトセグメントを構成するポリエーテル部分はブチレングリコール以外のジオキシ成分で置換されたポリエーテルであってよい。
【0026】
非弾性の共重合ポリエステル系ホモポリマーおよびその共重合物としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、もしくはセバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、もしくはナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸類、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、もしくはトリシクロデカンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸類と、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、もしくはパラキシレングリコールなどの脂肪族や脂環式ジオール類を所定の割合で共重合させて得られるポリエステルを用いることが好ましい。また、所望に応じて更にパラヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸類を添加した共重合エステル等を挙げることができる。具体的には、例えばジカルボン酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸が30/70~70/30モル%の割合で、ジオール成分としてエチレングリコールとジエチレングリコールが90/10~10/90モル%の割合で共重合されたポリエステルであることが好ましく使用することができる。
【0027】
また、ポリオレフィンポリマーとしては、例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニルさらにはそれらを変性したポリオレフィン等を挙げることができる。
【0028】
上記の熱接着成分の中でも、共重合ポリエステルポリマーが特に好ましい。なお、上述の熱可塑性樹脂中には、各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘分岐剤、艶消し剤、着色材その他各種の改良剤等も必要に応じて配合されていても良い。
【0029】
第1繊維において、熱接着成分の相手側成分としては前記のような非弾性のポリエステルが好ましく例示される。より具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート(ポリブチレンテレフタレート)、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリテトラメチレンナフタレートである。その際、熱接着成分を構成する熱可塑性樹脂が、熱接着性複合短繊維の表面の少なくとも1/2の表面積を占めるものが好ましい。重量割合は、熱接着成分と相手側成分が、複合比率で90/10~10/90の範囲にあるよう配置されるのが好ましい。より好ましくは複合比率が70/30~30/70の範囲あるように配置されることであり、更により好ましくは60/40~40/60の範囲あるように配置されることである。この数値範囲とすることにより、繊維としての強度、弾性率、屈曲性を有し、かつ加熱処理により熱接着性複合短繊維同士、または熱接着性複合短繊維と捲縮短繊維の間で十分な強度を有する熱溶着した固着点を形成させることができる。熱接着性複合短繊維の形態としては、特に限定されないが、熱接着成分と相手側成分とが、サイドバイサイド型、芯鞘型または海島型の複合繊維であるのが好ましく、より好ましくは芯鞘型複合繊維であることである。この芯鞘型の熱接着性複合短繊維では、熱接着成分が鞘部となり、相手側成分が芯部となるが、この芯部は同心円状(同心芯鞘型複合短繊維)、または偏心状(偏心芯鞘型複合短繊維)にあってもよい。芯鞘型の複合形態を採用し、熱接着成分を鞘部に配置した複合短繊維は加熱処理により熱接着性複合短繊維同士、および/または熱接着性複合短繊維と捲縮短繊維が交差した状態で十分な強度を有する熱溶着した固着点を形成させることができるので好ましい。
【0030】
熱接着性複合短繊維において、単繊維径としては15~50μmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは20~40μmの範囲内であり、更により好ましくは24~30μmの範囲であることである。かかる熱接着性複合短繊維は、繊維長が3~100mmに裁断されていることが好ましい。より好ましくは10~60mmの範囲内である。
【0031】
第2繊維は熱接着性複合短繊維であり熱溶着成分が少なくとも一部を構成する。熱溶着成分の融点は、主体繊維の融点より80度低い温度以下、主体繊維の融点より120度低い温度以上に設定される。第2繊維は加熱により少なくともその表面の一部が溶融し主体繊維、第2繊維同士、第1繊維と溶着しうる短繊維である。第2繊維の熱溶着成分の融点(「第2繊維の融点」ともいう)は、好ましくは170度以下、60度以上、に設定され、より好ましくは140度以下、90度以上に設定され、さらに好ましくは120度以下、110度以上に設定されている。繊維集合体に対する第2繊維の含有比率は、5重量%以上、20重量%以下に設定される。その他の構成は第1繊維と同様であるため説明を省略する。
【0032】
(繊維構造体を形成する方法)
次に、繊維構造体を形成する方法について
図1を参照して説明する。まず、ウェブ化工程を行う。ウェブ化工程(ST10)では、主体繊維、第1繊維、第2繊維を重量比において所定の割合で撹拌機に投入し、これらの繊維を撹拌して混合し、カーディング機により繊維方向が揃ったシート状の繊維(ウェブ)を得る。シート状のウェブは平面からみた形状が略長方形状となるが、他の形状であってもよい。また、ウェブの厚みは、最も薄い箇所が10gsm(グラムパースクエアメーター)、厚い箇所で80gsm、平均値が35gsmとなるように設定されている。
【0033】
次に、積層工程(ST11)を行う。積層工程ではウェブ化工程により得られたウェブを所望の厚みとなるように厚み方向(高さ方向)に複数積層し、繊維集合体を形成する。なお、厚み方向(高さ方向)とは、繊維構造体を載置面に載置したときに載置面に対して直交する方向をいう。本実施形態では、繊維集合体は直方体形状となるが、形状は限定されない。なお、ウェブ化工程において所望の大きさのウェブ(繊維集合体)を得ることができる場合には、積層工程を行わなくてもよい。また、ウェブを厚み方向ではなく、横方向(載置面と平行であり、載置面と交わらない方向)に積層してもよい。
【0034】
次に、第1加熱工程(ST12)を行う。第1加熱工程では、繊維集合体を第2繊維の融点よりも高く、第1繊維の融点よりも低い温度で加熱する。加熱方法は特に限定されず、既知の加熱装置が用いられる。加熱温度は180度以下、60度以上に設定され、より好ましくは140度以下、100度以上に設定され、さらに好ましくは、120度以下、110度以上に設定される。加熱時間は、45秒以上、90秒以下に設定され、より好ましくは60秒に設定される。
【0035】
第1加熱工程により第2繊維の熱溶着成分が溶融する。第1加熱工程においては、第1繊維の熱溶着成分は溶融せず、繊維集合体に対して第2繊維の含有比率は小さい。このため、繊維集合体は仮溶着された状態となる。仮溶着とは、作業者が繊維集合体を運んでも崩れない程度に一体となるような溶着であるが、繊維構造体を枕やクッション、敷布団等として使用することが可能な程度の溶着ではない状態の溶着をいう。
【0036】
次に、裁断工程(ST13)を行う。第1加熱工程により一体となった繊維集合体を型に合わせた所定の形状、サイズに裁断する。裁断方法は特に限定されず、例えば裁断機が用いられる。
【0037】
さらに第2加熱工程(ST14)を行う。第2加熱工程においては、裁断された繊維集合体を型内に配置して、第1繊維の融点よりも高く、主体繊維の融点よりも低い温度で加熱する。加熱方法は特に限定されず、既知の加熱装置が用いられる。加熱温度は220度以下、100度以上に設定され、より好ましくは180度以下、140度以下に設定され、さらに好ましくは160度に設定される。加熱時間は、25秒以上、85秒以下に設定され、より好ましくは45秒に設定される。
【0038】
第2加熱工程により第2繊維および第1繊維の熱溶着成分が溶融し、繊維集合体は第1繊維、第2繊維、主体繊維が一体に溶着され、繊維集合体は熱溶着して繊維構造体が形成される。また、型を所望の形状とすることで、繊維構造体は所望の形状に形成される。
【0039】
本実施形態によれば、繊維集合体は主体繊維、第1繊維、第2繊維を備え、第1加熱工程、第2加熱工程の二回の加熱工程を経て繊維構造体として形成され、主体繊維は第1繊維、第2繊維により溶着される。第1繊維は第2加熱工程のみ溶融するので、従来技術のように複数回溶融する場合に比べて第1繊維が下方に移動しにくい。このため、繊維構造体の上側部分で第1繊維が少なくなって特に上側部分の強度が弱くなったり、形状が保ちにくくなることが防がれる。また、第1繊維は第2加熱工程のみ溶融するので、従来技術のように低融点繊維が溶融と固化とを繰り返す場合と比べ、第1繊維は劣化しにくくなる。このため、繊維構造体が所望の強度や弾力等の性能を保ちやすくなる。
【0040】
本実施形態では、第2繊維の熱溶着成分は第1、第2の各加熱工程において溶融するため、第1、第2の各加熱工程毎に重力により下方向に向けて移動する。しかし、第2繊維の含有比率を繊維集合体が仮溶着される程度にできるだけ少なくすることで、下方に向けて移動する量が少なくなる。このため、繊維構造体の上側部分には第1繊維が十分に存在し、強度が弱くなりにくい。
【0041】
また、融点の異なる第1繊維、第2繊維を備え、第1加熱工程では第2繊維が十分に溶融するため、繊維集合体を確実に仮溶着することができる。このため、第1加熱工程後に作業者が繊維集合体を移動させたり、次の裁断工程を行う際に、繊維集合体が崩れることがなく作業が容易である。
【0042】
(他の実施形態)
本発明の他の実施形態を示す。本実施形態においては、繊維集合体は、熱接着性を有しない繊維を含む第3繊維をさらに含み、この繊維集合体を熱溶着させて繊維構造体を形成する。第3繊維は、第1繊維、第2繊維とは異なり、第1、第2の各加熱工程により溶融する熱溶着成分を含まない繊維である。第3繊維の例として、ポリエステルや化繊、麻、綿系の天然セルロース系繊維、羊、アルパカなどの天然獣毛系繊維、レーヨンやリヨセルなどの再生繊維、吸放湿性を有するナイロン繊維、等が挙げられる。繊維集合体に対する第3繊維の含有比率は、5重量%以上、30重量%以下が好ましく、10重量%以上、20重量%以下がより好ましい。第1加熱工程において第2繊維の溶融により繊維構造体が仮溶着できる程度に設定される。その他の構成および繊維構造体を形成する方法は
図1の実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0043】
第3繊維を特に吸湿性を有する天然セルロース系繊維とした場合、繊維構造体に汗等の水分を吸収する機能を持たせることができる。また、第3繊維を天然獣毛系繊維とした場合、繊維構造体に保温性の機能を持たせることができる。
【0044】
(他の実施形態)
本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態の繊維構造体を形成する方法においては、複数の(例えば2つの)繊維集合体A、Bを熱溶着させるものである。各繊維集合体A、Bは、主体繊維、第1繊維、第2繊維の素材は共通するが、重量比において含有比率が異なっているものであってもよい。また、各繊維集合体A、Bは、主体繊維、第1繊維、第2繊維の少なくとも一つの繊維において、種類が異なる素材が用いられていてもよい。
【0045】
図2に本実施形態の繊維構造体を形成する方法を示す。ウェブ化工程(ST20)、積層工程(ST21)、第1加熱工程(ST22)、裁断工程(ST23)は、各繊維集合体A、Bそれぞれに対して個別に行われる。第2加熱工程(ST24)において、裁断された各繊維集合体A、Bを型内に重ねて配置して加熱する。これにより、複数の繊維集合体が層として重ね合わされた繊維構造体が形成される。その他の繊維構造体および形成方法については、
図1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0046】
上記の実施形態によれば、各繊維集合体A、Bは、主体繊維、第1繊維、第2繊維の含有比率が異なっている、または、主体繊維、第1繊維、第2繊維に種類が異なる素材が用いられているため、各繊維集合体A、Bの機能を異ならせることができる。例えば、繊維構造体において繊維集合体Aからなる部分の硬さを硬くし、繊維集合体Bからなる部分の硬さを柔らかくしてもよい。
【0047】
また、
図3に示すように、ウェブ化工程(ST30)、積層工程(ST31)、第1加熱工程(ST32)は、各繊維集合体A、Bそれぞれに対して個別に行い、次に、各繊維集合体を重ね合わせる工程(ST33)を行ってもよい。その後、裁断工程(ST34)において、重ね合わせられた各繊維集合体A、Bをまとめて裁断し、第2加熱工程(ST35)において、重ね合わされて裁断された各繊維集合体A、Bは型内に配置されて加熱されてもよい。
【0048】
(実施例)
本発明の繊維構造体を形成する方法により製造された繊維構造体の実施例を表1~表3に示す。実施例1~8は繊維構造体を枕10として用いたものであり、表1に詳細を示す。なお、枕10は使用時にカバー(図示せず)が被せられてもよい。
【0049】
実施例1の繊維構造体である枕10は、
図4(A)、
図4(B)に示すように、平面から形状が四角形の略直方体形状であり、縦、横、高さがそれぞれ40cm、60cm、12cmに設定されている。
図4(B)に示すように、側面視において両端縁が外側に向けて凸状に形成されている。繊維集合体11は主体繊維、第1繊維、第2繊維を含む。第1繊維、第2繊維の素材は熱可塑性エラストマーとポリエステルとからなる熱接着性複合短繊維であり、主体繊維は15Dのポリエステル繊維である。なお、「D」とは「デニール」を意味する。また、主体繊維は1穴中空糸または中実糸で構成されている。第1繊維、第2繊維、主体繊維の重量比による含有比率は45%、10%、45%である。繊維構造体の密度は1600g/m
2であり、枕10の硬さは高である。実施例1の枕10は、
図1に示す方法を用いて作成される。
【0050】
なお、「硬さ」とは繊維構造体に力を加えられたときの形や状態の変わりやすさをいい、硬さが「高」とは形や状態が変わりにくいことをいい、枕10に頭部を載置したときに、頭部載置箇所の高さが、頭部が載置されていないときの高さの90%以上である場合をいう。硬さが「低」とは、形や状態が変わりやすいことをいい、枕10に頭部を載置したときに、頭部載置箇所の高さが、頭部が載置されていないときの高さの60%以下である場合をいう。「中」とは形や状態の変わりやすさが「高」と「低」の間であり、枕10に頭部を載置したときに、頭部載置箇所の高さが、頭部が載置されていないときの高さの60%より大きく、90%未満である場合をいう。
【0051】
以下の実施例2~8の説明においては、実施例1と異なる点のみを説明する。実施例2は、主体繊維として防ダニ機能を有する6Dのポリエステル繊維を用いている。これにより、枕10に防ダニ機能が付与される。第1繊維、第2繊維、主体繊維の重量比による含有比率は40%、10%、50%であり、繊維構造体の密度は1200g/m2、枕10の硬さは中となる。
【0052】
実施例3は実施例1とは含有比率が異なっており、第1繊維、第2繊維、主体繊維の重量比による含有比率は35%、10%、55%であり、繊維構造体の密度は1200g/m2、枕10の硬さは中となる。なお、実施例3においては、第2加熱工程において、繊維集合体11の上下面に織物生地を配置し、繊維構造体の上に織物生地を貼り付けてもよい。
【0053】
実施例4は繊維集合体11に主体繊維、第1繊維、第2繊維、第3繊維を含む。主体繊維は3Dのポリエステル繊維であり、第3繊維はリネンである。第1繊維、第2繊維、主体繊維、第3繊維の重量比による含有比率は45%、5%、25%、30%である。繊維構造体の密度は1000g/m2、枕10の硬さは中となる。第3繊維として天然繊維であるリネンを用いているので、枕10は吸放湿性の機能を有し、蒸れにくくなる。
【0054】
実施例5は繊維集合体11に主体繊維、第1繊維、第2繊維、第3繊維を含む。主体繊維は3Dのポリエステル繊維であり、第3繊維はリヨセルである。第1繊維、第2繊維、主体繊維、第3繊維の重量比による含有比率は35%、10%、25%、30%である。繊維構造体の密度は1200g/m2、枕10の硬さは中となる。第3繊維として再生セルロース系繊維であるリヨセルを用いているので、枕10は吸放湿性の機能を有し、蒸れにくくなる。また、再生セルロース系繊維は天然素材からなるため、肌への刺激が少ない。
【0055】
実施例6に示す繊維構造体である枕10は、
図5(A)、
図5(B)に示すように、平面形状が長方形状、断面形状が上に凸となる半楕円形状であり、平坦な底面が載置面に載置されて使用される。
図5(A)に示す平面からみた形状は、縦、横の長さが20cm、60cmであり、高さ、すなわち載置面から最も高い位置までの距離は12cmである。枕10は、2つの繊維集合体11A、11Bが熱溶着されるものであり、
図5(B)に示す断面図において、中芯層である繊維集合体11Bの側面が外層である繊維集合体11Aに覆われている。
【0056】
外層である繊維集合体11Aは、主体繊維、第1繊維、第2繊維、第3繊維を含む。主体繊維は3Dのポリエステル繊維であり、第3繊維はリヨセルである。第1繊維、第2繊維、主体繊維、第3繊維の重量比による含有比率は30%、5%、35%、30%である。繊維構造体が形成されたときの繊維集合体11Aの密度は1200g/m
2、硬さは中である。中芯層である繊維集合体11Bは、主体繊維、第1繊維、第2繊維を含む。主体繊維は15Dのポリエステル繊維である。第1繊維、第2繊維、主体繊維の重量比による含有比率は35%、10%、55%である。繊維構造体が形成されたときの繊維集合体11Bの密度は1600g/m
2、硬さは高である。実施例6の枕10は、
図2に示す方法を用いて作成される。
【0057】
実施例6の枕10は、使用者は硬さが中である外層の上に頭部を載置するので、使用者は枕10が硬すぎると感じず、かつ、中心層の硬さは高であるため、使用者が頭部を載置しても枕10が沈み込み過ぎることがない。
【0058】
実施例7に示す繊維構造体である枕10は、
図6(A)、
図6(B)に示すように、平面形状が長方形状であって、断面形状において、幅方向の上側両端側に凸状部12、13が形成され、中央部に凹部14が形成されている。他方側の凸部13は一方側の凸部12よりも高さが高く形成されており、高さは12cmである。使用者は、一例では、高さが低い凸部12に首を載置し、凹部14に頭部を載置することで枕10を使用する。枕10は、2つの繊維集合体11A、11Bが熱溶着されるものであり、
図6(B)に示す断面図において、中芯層である繊維集合体11Bの周囲全体を外層である繊維集合体11Aが覆っており、繊維集合体11Bは外部に露出していない。
【0059】
外層である繊維集合体11Aは、主体繊維、第1繊維、第2繊維、第3繊維を含む。主体繊維は3Dのポリエステル繊維であり、第3繊維はリヨセルである。第1繊維、第2繊維、主体繊維、第3繊維の重量比による含有比率は35%、10%、25%、30%である。繊維構造体が形成されたときの繊維集合体11Aの密度は1200g/m
2、硬さは中である。中芯層である繊維集合体11Bは、主体繊維、第1繊維、第2繊維を含む。主体繊維は15Dのポリエステル繊維である。第1繊維、第2繊維、主体繊維の重量比による含有比率は45%、10%、45%である。繊維構造体が形成されたときの繊維集合体11Bの密度は1600g/m
2、硬さは高である。実施例7の枕10は、
図2に示す方法を用いて作成される。
【0060】
実施例7の枕10は、使用者は硬さが中である外層の上に頭部を載置するので、使用者は枕10が硬すぎると感じず、かつ、中心層の硬さは高であるため、使用者が頭部を載置しても枕10が沈み込み過ぎることがない。
【0061】
実施例8に示す繊維構造体である枕10は、
図7(A)、
図7(B)に示すように直方体形状を有している。枕10は、3つの繊維集合体11A~11Cが熱溶着されるものであり、繊維集合体11A~11Cは高さ方向に積層されている。各層の厚み(高さ)はそれぞれ等しく、実施例8ではそれぞれ4cmに設定されている。
【0062】
図7(B)において上層である繊維集合体11Aは、主体繊維、第1繊維を含む。主体繊維は3Dのポリエステル繊維であり、第1繊維、主体繊維の重量比による含有比率は30%、70%である。繊維構造体が形成されたときの繊維集合体11Aの密度は1000g/m
2、硬さは低である。中層である繊維集合体11Bは、主体繊維、第1繊維、第2繊維を含む。主体繊維は15Dのポリエステル繊維である。第1繊維、第2繊維、主体繊維の重量比による含有比率は55%、5%、40%である。繊維構造体が形成されたときの繊維集合体11Bの密度は1600g/m
2、硬さは高である。上層である繊維集合体11Cは、主体繊維、第1繊維、を含む。主体繊維は3Dのポリエステル繊維であり、第1繊維、主体繊維の重量比による含有比率は40%、60%である。繊維構造体が形成されたときの繊維集合体11Cの密度は1000g/m
2、硬さは低である。実施例8の枕10は、
図2に示す方法を用いて作成される。
【0063】
【0064】
実施例9~13は繊維構造体を敷布団(図示せず)として用いたものであり、表2に詳細を示す。なお、敷布団は使用時にカバーが被せられてもよい。実施例9の繊維構造体である敷布団は、平面から形状が四角形の略直方体形状であり、横、縦、高さがそれぞれ100cm、200cm、8cmに設定されている。繊維集合体11は主体繊維、第1繊維、第2繊維を含む。第1繊維、第2繊維の素材は熱可塑性エラストマーとポリエステルとからなる熱接着性複合短繊維であり、主体繊維は15Dのポリエステル繊維である。第1繊維、第2繊維、主体繊維の重量比による含有比率は45%、10%、45%である。繊維構造体の密度は2500g/m
2であり、敷布団の硬さは高であり実施例1の枕10と比較してより硬い。実施例9の敷布団は、
図1に示す方法を用いて作成される。
【0065】
以下の実施例10~13の説明においては、実施例9と異なる点のみを説明する。実施例10は、高さが12cmに設定されており、第1繊維、第2繊維、主体繊維の重量比による含有比率は25%、10%、65%である。繊維構造体の密度は1600g/m2であり、敷布団の硬さは高である。
【0066】
実施例11に示す敷布団は、上層、中層、下層である繊維集合体11A、11B、11Cが高さ方向に順に積層されている。敷布団の高さは12cmであり、繊維集合体11A、11B、11Cの高さはそれぞれ4cmである。上層である繊維集合体11Aは、主体繊維、第1繊維を含み、主体繊維は3Dのポリエステル繊維である。第1繊維、主体繊維の重量比による含有比率は30%、70%である。繊維構造体が形成されたときの繊維集合体11Aの密度は1000g/m
2、硬さは低である。中層である繊維集合体11Bは、主体繊維、第1繊維、第2繊維を含む。主体繊維は15Dのポリエステル繊維である。第1繊維、第2繊維、主体繊維の重量比による含有比率は35%、10%、55%である。繊維構造体が形成されたときの繊維集合体11Bの密度は1600g/m
2、硬さは高である。下層である繊維集合体11Cは上層である繊維集合体11Aと同一の構成であり説明を省略する。実施例11の敷布団は、
図2に示す方法を用いて作成される。
【0067】
実施例12に示す敷布団は、上層、下層である繊維集合体11A、11Bが高さ方向に積層されている。敷布団の高さは12cmであり、繊維集合体11A、11Bの高さはそれぞれ6cmである。上層である繊維集合体11Aは、主体繊維、第1繊維、第2繊維、第3繊維を含む。主体繊維は3Dのポリエステル繊維であり、第3繊維はリヨセルである。第1繊維、第2繊維、主体繊維、第3繊維の重量比による含有比率は25%、10%、35%、30%である。繊維構造体が形成されたときの繊維集合体11Aの密度は1200g/m
2、硬さは中である。下層である繊維集合体11Bは、主体繊維、第1繊維、第2繊維を含む。主体繊維は15Dのポリエステル繊維である。第1繊維、第2繊維、主体繊維の重量比による含有比率は35%、10%、55%である。繊維構造体が形成されたときの繊維集合体11Bの密度は1600g/m
2、硬さは高である。実施例12の敷布団は、
図2に示す方法を用いて作成される。
【0068】
実施例13に示す敷布団は、表層、体圧分散層、芯層、体圧分散層、表層である繊維集合体11A~11Eの5層が高さ方向に順に積層されている。敷布団の高さは12cmであり、繊維集合体11A、11B、11D、11Eの高さはそれぞれ2cmであり、芯層である繊維集合体11Cの高さは4cmである。表層である繊維集合体11Aは、主体繊維、第1繊維、第2繊維、第3繊維を含む。主体繊維は3Dのポリエステル繊維であり、第3繊維はリヨセルである。第1繊維、第2繊維、主体繊維、第3繊維の重量比による含有比率は25%、10%、35%、30%である。繊維構造体が形成されたときの繊維集合体11Aの密度は200g/m
2、硬さは低であり他の層に比べて相当に柔らかい。
体圧分散層である繊維集合体11Bは、2種類の主体繊維と第1繊維とを含む。一方の主体繊維は、0.8Dの極細のポリエステル繊維であり、他方の主体繊維は2Dのポリエステル繊維である。第1繊維、一方の主体繊維、他方の主体繊維の重量比による含有比率は30%、30%、40%である。繊維構造体が形成されたときの繊維集合体11Bの密度は500g/m
2、硬さは低であり、表層である繊維集合体11Aよりは硬いが後述の芯層よりは柔らかい。
芯層である繊維集合体11Cは主体繊維、第1繊維、第2繊維を含む。主体繊維は15Dのポリエステル繊維である。第1繊維、第2繊維、主体繊維の重量比による含有比率は35%、10%、55%である。繊維構造体が形成されたときの繊維集合体11Cの密度は1200g/m
2、硬さは中である。
体圧分散層である繊維集合体11Dの構成は体圧分散層である繊維集合体11Bの構成と同様であり、表層である繊維集合体11Eの構成は表層である繊維集合体11Aの構成と同様であるため、説明を省略する。実施例12の敷布団は、
図2に示す方法を用いて作成される。
【0069】
なお、敷布団は上記サイズに限定されず、シングルサイズ、セミダブルサイズ、ダブルサイズ、クイーンサイズ、キングサイズ等、一般に流通する敷布団のサイズであってもよい。
【0070】
【0071】
実施例14~16は繊維構造体をクッション20として用いたものであり、表3に詳細を示す。なお、クッションは使用時にカバーが被せられてもよい。実施例14の繊維構造体であるシートクッションは、
図8(A)に示すように、平面からみた形状が円形状であり、直径が40cmである。平面からみたときに中心部分が最も高く形成されており、最も高い部分の高さは6cmである。シートクッション20は上層、中層である繊維集合体11A、11Bから構成されており、最も高い部分の上層の繊維集合体11A、11Bの厚みはそれぞれ3cmである。
図8(B)に示すように、中層の繊維集合体11Bは断面形状が上に凸となる半楕円形状であり、繊維集合体11Bの上面は、上層である繊維集合体11Aが覆っている。
【0072】
上層である繊維集合体11Aは、主体繊維、第1繊維を含み、第1繊維の素材は熱可塑性エラストマーとポリエステルとからなる熱接着性複合短繊維であり、主体繊維は3Dのポリエステル繊維である。第1繊維、主体繊維の重量比による含有比率は30%、70%である。繊維構造体が形成されたときの繊維集合体11Aの密度は1000g/m
2、硬さは低である。
中層である繊維集合体11Bは、主体繊維、第1繊維、第2繊維を含む。第1繊維、第2繊維の素材は熱可塑性エラストマーとポリエステルとからなる熱接着性複合短繊維であり、主体繊維は15Dのポリエステル繊維である。第1繊維、第2繊維、主体繊維の重量比による含有比率は40%、10%、50%である。繊維構造体が形成されたときの繊維集合体11Bの密度は1600g/m
2、硬さは高である。実施例14のクッションは、
図2に示す方法を用いて作成される。
【0073】
実施例15のクッション20は、主に使用者の背中や腰に当てて使用するものであり、
図9に示すように、両側部22が中央部21よりも厚み(高さ)が大きく形成されている。クッション20は、横、縦の長さがそれぞれ33cm、33cmであり、最も高い箇所の高さが10cm、最も低い箇所の高さが約2.5cmである。繊維集合体11は主体繊維、第1繊維、第2繊維を含む。第1繊維、第2繊維の素材は熱可塑性エラストマーとポリエステルとからなる熱接着性複合短繊維であり、主体繊維は15Dのポリエステル繊維である。第1繊維、第2繊維、主体繊維の重量比による含有比率は35%、10%、55%である。繊維構造体の密度は1400g/m
2であり、クッション20の硬さは中である。実施例15のクッション20は、
図1に示す方法を用いて作成される。
【0074】
実施例16のクッション20は、
図10に示すように、本体部23の長さ方向の中央部に窪み24が形成され、本体部23の長さ方向に沿う一方の側縁の中央部から突出する突部25を備えている。クッション20は、横、縦の長さがそれぞれ59cm、29cmであり、最も高い箇所の高さが11cm、最も低い箇所の高さが約4cmである。繊維集合体11は主体繊維、第1繊維、第2繊維を含む。第1繊維、第2繊維の素材は熱可塑性エラストマーとポリエステルとからなる熱接着性複合短繊維であり、主体繊維は15Dのポリエステル繊維である。第1繊維、第2繊維、主体繊維の重量比による含有比率は20%、20%、60%である。繊維構造体の密度は1000g/m
2であり、クッション20の硬さは低である。実施例16のクッション20は、
図1に示す方法を用いて作成される。
【0075】
【0076】
上記の実施例1~16は枕10、敷布団、クッション20であったが、繊維構造体は寝具用マット、各種乗物用座席、クッションとして用いられてもよく、形状は上記の実施例に限定されず、型に応じて所望の形状を形成することができる。また、繊維集合体11は1つでもよく、複数の繊維集合体11を備え、高さ方向に積層されていてもよい。積層する繊維集合体11の数は特に限定されず、4層であってもよく、5層以上であってもよい。
【0077】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。実施形態として記載され又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0078】
10 枕(繊維構造体)
11(11A~11C) 繊維集合体
20 クッション